JPH1180902A - 耐高温エロージョン・コロージョン性に優れた高Cr合金および高Cr合金部材 - Google Patents

耐高温エロージョン・コロージョン性に優れた高Cr合金および高Cr合金部材

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JPH1180902A
JPH1180902A JP23842097A JP23842097A JPH1180902A JP H1180902 A JPH1180902 A JP H1180902A JP 23842097 A JP23842097 A JP 23842097A JP 23842097 A JP23842097 A JP 23842097A JP H1180902 A JPH1180902 A JP H1180902A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 使用温度が500 ℃以上の耐高温エロージョン
・コロージョン性に優れた、特にごみ焼却炉ボイラ用の
高Cr合金および高Cr合金部材を提供する。 【解決手段】 高Cr合金および高Cr合金部材の合金の組
成を、C:0.5 〜1.5%、Si:1.0〜4.0%、Mn:0.5〜2.0%、C
r:35 〜60% 、必要によりNi:3〜15% を含有し、残部Co
および/ またはFeおよび不可避的不純物からなり、かつ
35≦Cr/C≦90とすることである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐高温エロージョン・
コロージョン性に優れた高Cr合金乃至高Cr合金部材に関
し、特にごみ焼却炉ボイラ用に好適な耐高温エロージョ
ン・コロージョン性に優れた高Cr合金乃至高Cr合金部材
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】都市ごみ焼却炉では、燃焼によって生じ
る廃熱をエネルギー源として有効利用するために、廃熱
を熱源としたボイラを設置して、発電を行う例が多い。
このごみ焼却炉ボイラのうちでも、特に流動床式ごみ焼
却炉のボイラは、焼却炉内の流動層内に鋼管製の伝熱管
を直接装入して熱回収を行うので、焼却炉から出る排ガ
スから熱回収を行うよりも、エネルギー効率を格段に高
くできる点で優れている。しかし、この流動床式ごみ焼
却炉は、けい砂などの固体粒子を流動化させて形成した
流動床乃至流動層の内部で、ごみの焼却を行う形式の焼
却炉である。したがって、焼却炉の流動層内に直接装入
された伝熱管などのボイラ部材は、ごみの焼却に伴い発
生するHCl ガスや溶融塩化物塩および/ またはSOx ガス
や溶融硫化物塩の存在によって、非常に過酷な高温腐食
(高温コロージョン) 環境下にある。また、流動層内
は、この高温コロージョンだけではなく、高温の流動砂
が常に循環しており、特に流動砂の流速の大きい場合に
は、その流速の2 〜3 乗に比例して、流動砂により伝熱
管が激しい磨耗、即ち高温エロージョンを受ける。
【0003】したがって、このような用途に用いられ
る、ごみ焼却炉ボイラ用合金乃至伝熱管を含めたごみ焼
却炉ボイラ用部材には、前記高温エロージョンおよび高
温コロージョンの両方に対する耐磨耗性および耐食性
(以下、耐高温エロージョン・コロージョン性と言う)
を有することが必要である。
【0004】この耐高温エロージョン性や、耐高温コロ
ージョン性を高めた合金は、従来から種々提案されてい
る。例えば、特公昭58-6779 号公報では、耐磨耗性およ
び溶接性鉄−ニッケル−コバルトベース合金として、10
% までのMo、W 、20〜33%Cr、0.6 〜1.7%Si、0.9 〜1.5
%C 、1.0%以下B を含む合金が提案されている。特公昭6
4-7145 号公報では、耐磨耗性および耐食性ニッケルベ
ース合金として、20〜35%Cr 、1 〜8%Si、1.7 〜3.5%C
を含みM7C3型の炭化物を形成させたNi合金が提案されて
いる。特開昭55-154542 号公報では、ニッケル−コバル
ト−クロム合金として、基本的に20〜47%Ni 、6 〜35%C
o 、18〜36%Cr 、0.6 〜2.5%C 、0.5 〜2.5%Siを含むFe
合金が提案されている。また、特公平2-36359 号公報で
は、6.0〜14.0%Cr 、0.8 〜2.4%B 、0.5 〜5.0%Si、0.5
〜15%W、10〜40%Co を含むFe−Co合金が提案されてい
る。更に、特開昭61-169174 号公報では、20% 以上のCr
を含有するCo基合金の肉盛り層を備えたボイラ用部材が
提案されている。また、特開昭63-10097号公報では、0.
7 〜3.0%C 、2%以下Si、2%以下Mn、23〜32%Cr 、1〜7%M
o、3 〜6.5%W 、3%以下Ni、5%以下Feを含有する肉盛り
用耐熱Co基合金が提案されている。また、特開平1-2736
93号公報では、0.01〜0.50%C、0.1 〜2.0%Si、35〜60%C
r 、0.5 〜4.0%Al+Ti、0.01〜0.2%N に加えて、更にM
n、V 、Nb、Mo、W 、Feを含有するNi乃至Co基合金肉盛
り溶接材料が提案されている。更に、特許第2561567 号
公報では、0.02〜0.1%C 、1 〜5%Si、5%以下Mn、10〜20
%Cr 、30〜50%Ni 、0.5 〜3%Mo、10〜40%Co 、0.5 〜5%
W を含有するごみ焼却炉ボイラ用Fe合金が提案されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年、前記ご
み焼却に伴う廃熱を利用した発電の高効率化のために、
ボイラ部材の使用温度は500 ℃以上の高温になり、使用
環境が、より過酷になっている。このため、このような
環境下では、前記従来合金では後に詳述する通り、使用
寿命が短いことが問題となっている。例えば、前記特許
第2561567 号公報のごみ焼却炉ボイラ用Fe合金は、蒸気
温度で500 ℃まで使用可能(500℃以上は使用不可能) で
あることが明記されている。したがって、使用温度が50
0 ℃以上のより高温下での、耐高温エロージョン・コロ
ージョン性に優れるごみ焼却炉ボイラ用合金乃至ボイラ
用部材が求められていたが、この特性を有する合金が、
今まで実用化されておらず、ごみ焼却炉ボイラの効率を
高めることには限界があったというのが実情である。
【0006】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、使用温度が500 ℃以上の耐
高温エロージョン・コロージョン性に優れた、特にごみ
焼却炉ボイラ用の高Cr合金および高Cr合金部材を提供し
ようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明の要旨は、高Cr合金の組成を、C:0.5 〜1.5
%、Si:1.0〜4.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:35 〜60% 、必要
によりNi:3〜15% を含有し、残部Coおよび/ またはFeお
よび不可避的不純物からなり、かつCr量とC 量との比を
35≦Cr/C≦90とすることである。
【0008】また、この高Cr合金を、鋼材、特に熱伝達
用鋼管などの表面に被覆した高Cr合金部材とすれば、耐
高温エロージョン・コロージョン性に優れる、特にごみ
焼却炉ボイラなどの用途の高Cr合金部材とすることがで
きる。
【0009】本発明者らは、高Cr合金において、流動床
式ごみ焼却炉ボイラにおける耐高温エロージョン・コロ
ージョン性と、C およびCrとの関係について鋭意検討し
た結果、耐高温エロージョン性および耐高温コロージョ
ン性の両特性を満足するためには、Cr/Cの規定が重要で
あることを知見した。前記従来技術においても、C がCr
などとともにM7C3、M23C6 炭化物を形成して耐高温エロ
ージョン性に効果があるとともに、Crが耐高温コロージ
ョン性に効果があることは公知である。にも拘らず、こ
のC とCrとを共に含有させた前記従来技術において、耐
高温エロージョン・コロージョン性を満足することがで
きなかったのは、以下の理由による。即ち、従来の高Cr
合金のように耐高温エロージョン性を向上させるため
に、C 含有量を0.5%以上と高くした場合、C とCrがM
7C3、M23C6 炭化物を形成してCrが消費される。この
際、元々のCr含有量が低いと、合金マトリックス中の、
特に粒界に析出した前記炭化物に沿った部分( 前記炭化
物にCrが消費された部分) のCr量が他の部分よりも減少
して、この炭化物に沿った部分の耐高温コロージョン性
を確保するためのCrの絶対量が不足することになる。こ
のため、特に粒界に析出した前記炭化物に沿った部分の
粒界腐食が生じることになる。そして、この粒界腐食が
生じた場合には、上記圧力を受け持つのに有効なボイラ
部材の肉厚が減少することになり、実際にボイラ部材の
肉厚を減肉したのと同じことになってしまい、ボイラ部
材の寿命を著しく縮めることとなる。
【0010】この現象を防止するためには、合金マトリ
ックス中の、特に粒界に析出した前記炭化物に沿った部
分( 前記炭化物にCrが消費された部分) のCr量を確保す
る必要があり、C 含有量乃至C とCrが炭化物を形成して
Crが消費される量に見合ったCr含有量が必要となる。し
たがって、本発明では、Cr含有量(35 〜60%)とともに、
Cr量とC 量との比Cr/Cを規定した(35 ≦Cr/C≦90) 。
【0011】例えば、前記特公昭64-7145 号公報の合金
では、C 含有量が1.7 % 以上であるにも拘らず、Cr含有
量が35% 以下と低いために、Cr/Cは最高でも21程度しか
なく、C とCrが形成する前記炭化物によって耐高温エロ
ージョン性は優れるものの、特に粒界に析出した前記炭
化物に沿った部分のCr量が不足して、この炭化物に沿っ
た部分の耐高温コロージョン性が劣ることとなる。ま
た、特開平1-273693号公報の合金では、逆に、Cr含有量
は35% 以上あるにも拘らず、C 含有量が0.50% 以下と低
いためにCr/Cは最低でも70程度となり、Crによる耐高温
コロージョン性は優れるものの、C とCrが形成する前記
炭化物量が不足して、耐高温エロージョン性が劣ること
となる。また、特公平2-36359 号公報では、Cr含有量自
体が6.0 〜14.0% と低く、耐高温エロージョン性と耐高
温コロージョン性の両方とも劣っている。
【0012】更に、前記C とCrとの関係に加えて、本発
明者らは、Ni、Mo、W のごみ焼却炉ボイラ用部材の使用
環境における挙動について検討した。そして、この結
果、ごみ焼却炉ボイラ用部材の500 ℃を越える高温域の
溶融塩化物塩と溶融硫化物塩の混在した非常に過酷な腐
食環境下では、これらの成分は、合金中に存在すると、
却って合金の耐高温コロージョン性を阻害することを知
見した。特にNiは、前記腐食環境下におけるS の濃度が
高い場合には、著しく耐食性を劣化させる。したがっ
て、本発明ではMo、W を含まず、不純物レベル以下に規
制するとともに、合金中のNiの量を適切に制御する。
【0013】この点、前記特公昭64-7145 号公報の合金
はNi基合金であり、特開昭55-154542 号公報の合金で
は、ニッケル−コバルト−クロム合金としてNiを20〜47
% と多量に含み、また、特開昭63-10097号公報の合金で
は、Moを1 〜7%、W を3 〜6.5%と多量に含んでいる。更
に、特許第2561567 号公報の合金でも、Niを30〜50% 、
Moを0.5 〜3%、W を0.5 〜5%含んでいる。したがって、
前記ごみ焼却炉ボイラ用部材の500 ℃を越える高温域の
溶融塩化物塩と溶融硫化物塩の混在した非常に過酷な腐
食環境下では、これら従来技術の合金は、必然的に耐高
温コロージョン性が劣ることとなる。
【0014】更に、本発明高Cr合金乃至高Cr合金部材の
500 ℃を越える高温使用環境では、高Cr-Fe-Co系合金で
問題となるσ脆化相の生成を防止する必要がある。この
点、本発明では、CrとC とのバランスの適正化(Cr/C ≦
90) と、σ脆化相の生成を促進するMo、W の規制によっ
て、また更に、必要により最低限のNi含有(3〜15%)によ
って、このσ脆化相の生成を防止する。この点、Mo、W
を含む特公昭58-6779号公報、特公平2 -36359号公報、
特開昭63-10097号公報、特許第2561567 号公報、あるい
はNi含有量も少ない乃至含有しない特開昭61-169174 号
公報の合金では、前記環境においてσ脆化相が必然的に
生成し、使用中の熱応力または高温エロージョンによっ
て、合金材の割れの原因となるとともに、脆化によって
Crが前記炭化物と同様に消費されるため、耐食性も劣化
する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明高Cr合金におけ
る、C 、Si、Mn、Cr、およびNiの量的範囲の意義につい
て説明する。まず、C はCoおよび/ またはFe合金マトリ
ックス中で、CrとM7C3、M23C6 炭化物を形成して合金の
耐高温エロージョン・コロージョン性を向上させる。こ
の効果を発揮させるためには、C の含有量が0.5%以上必
要であるが、一方でC の含有量が1.5%を越えると、前記
炭化物量が過剰となって、却って合金の脆化を招く。し
たがって、C の含有量は0.5 〜1.5%の範囲とする。
【0016】Crは、Coおよび/ またはFe合金マトリック
ス中で、CrとM7C3、M23C6 炭化物を形成して合金の耐高
温エロージョン性を向上させる。Crが35% 未満では、C
の含有量が低い場合でも、生成炭化物の絶対量が不足し
て、耐高温エロージョン性が不足する。またCrの含有量
が60% を越えると、耐高温エロージョン性は却ってやや
低下するとともに、前記炭化物量が過剰となって合金の
脆化を招く。したがって、C の含有量は35〜60% の範囲
とする。更に、前記した通り、耐高温エロージョン性を
向上させるために、C 含有量を高くした場合、C とCrが
M7C3、M23C6 炭化物を形成してCrが消費されるが、この
時Cr含有量が低いと、合金マトリックス中の、特に粒界
に析出した前記炭化物に沿った部分のCr量が他の部分よ
りも減少して、この炭化物に沿った部分の耐高温コロー
ジョン性を確保するためのCrの絶対量が不足することに
なる。これを防止し、合金マトリックス中の、特に粒界
に析出した前記炭化物に沿った部分のCr量を確保するた
めに、C 含有量乃至C とCrが炭化物を形成してCrが消費
される量に見合ったCr含有量として、Cr量とC 量との比
Cr/Cを35以上とする必要がある。また、一方C の含有量
が低く、Cr含有量が高い場合には、前記σ脆化相が生成
しやすくなり、合金の脆化が顕著になるので、このσ脆
化相の生成を防止するために、Cr/Cの上限は90以下と規
定する。したがって、Cr/Cは35〜90の範囲とする。
【0017】Siは、使用中に合金表面に微細なサブスケ
ールを形成することにより、合金の耐高温コロージョン
性を向上させる。また、Co乃至Fe基合金溶製時の脱酸剤
としても必要である。この効果を発揮させるためには、
1.0 % 以上の含有が必要であるが、一方4.0%を越える含
有は、前記σ脆化相が生成しやすくなり、合金の脆化が
顕著になる。したがって、Siの含有量は1.0 〜4.0%の範
囲とする。
【0018】Mnは、合金溶製時の脱酸および合金の高温
硬さを向上させ、耐高温エロージョン性を向上させるた
めに有効である。この効果を発揮させるためには、0.5%
以上の含有が必要であるが、一方2%を越える含有は合金
の脆化を招く。したがって、Mnの含有量は0.5 〜2%の範
囲とする。
【0019】また、本発明高Cr合金の組成範囲におい
て、C 含有量を低くして、耐高温コロージョン性向上を
重視した合金組成にした場合には、σ脆化相が生成し合
金が脆化しやすくなる可能性がある。したがって、この
σ脆化相の生成を防止する必要がある場合には、Niを3
〜15% 選択的に含有させることが好ましい。このNiの効
果を発揮させるためには、3%以上のNiの含有が必要であ
るが、一方15% を越える含有は、前記した通り、S によ
る腐食が激しい環境下では、合金の耐高温コロージョン
性を劣化させる。したがって、Niを含有させる場合の含
有量は3 〜15% の範囲とする。
【0020】本発明高Cr合金マトリックスを構成するCo
乃至Feについて、Co基合金を選択した場合、Coの効果に
より、Fe基合金の場合よりも、耐高温エロージョン・コ
ロージョン性は向上する。しかし、本発明高Cr合金で
は、前記C 、Si、Mn、Cr、およびNiなどの成分調整によ
り、Fe基合金としても、従来合金より耐高温エロージョ
ン・コロージョン性は優れている。したがって、Coは高
価であるので、コストと耐高温エロージョン・コロージ
ョン性との兼ね合いで、即ち、例えばごみ焼却炉ボイラ
の耐高温エロージョン・コロージョン性の要求性能に応
じて、Co基合金かFe基合金かを選択するとともに、Coと
Feとを混合した合金とする場合には、CoとFeとの量的な
割合を調整する。
【0021】更に、前記以外の成分については、本発明
では基本的に不純物であり、できるだけ少ない方が好ま
しい。このうち、特にMo、W は、前記した通り、本発明
高Cr合金乃至高Cr合金部材の500 ℃を越える高温腐食環
境下では、合金の耐食性を著しく劣化させるとともに、
σ脆化相の生成を促進する作用があるので、可能な限り
低く抑えるべきである。
【0022】本発明高Cr合金の製造方法としては、公知
の溶解、鋳造方法が使用可能であるが、その中でも合金
の酸化を抑制しつつ、使用部材形状に近い形状( ニアネ
ットシェイプ) に鋳造可能な方法が好ましい。具体的に
は、公知の真空溶解乃至不活性ガス雰囲気下などの非酸
化性雰囲気下で、本発明成分範囲内に合金を溶製し、鋳
造のまま乃至必要に応じて加工を行い、直接ごみ焼却炉
ボイラなどの部材に適用することが可能である。
【0023】ただ、前記伝熱管など、加工率が大きい成
形加工が必要な形状乃至複雑な形状が必要な部材には、
コストや部材への成形性などを考慮して、本発明高Cr合
金を鋼管や鋼板などの鋼材の表面に被覆乃至外層を形成
して、クラッド (複合) 鋼管やクラッド鋼板などの高Cr
合金部材とするのが好ましい。耐高温エロージョン・コ
ロージョン性は、基本的にごみ焼却炉ボイラの部材の表
面部分の特性の問題であるので、前記高Cr合金部材とし
ても、耐高温エロージョン・コロージョン性の効果は十
分発揮できる。この本発明高Cr合金を鋼管や鋼板の表面
に被覆乃至外層を形成し、高Cr合金部材を製造する方法
は、溶射、肉盛り溶接、粉末押出、遠心鋳造+拡管など
の公知の手法が適宜選択できる。なお、粉末押出法によ
る場合は、鋼管や鋼板の周囲に本発明合金の粉末層を形
成した複合ビレットを形成して押し出す。また、遠心鋳
造+拡管法による場合は、本発明高Cr合金を遠心鋳造し
て外層を形成しておき、その中に鋼管 (伝熱管用) を挿
入して、マンドレルあるいは液圧などで拡管する。
【0024】
【実施例】表1 に示す組成の本発明例高Cr合金および比
較例合金を、真空溶解にて10kgのインゴットに溶製し
た。この鋳造したままのインゴットから、外径20φ×厚
さ10mmの試験片を切り出し、この試験片を用いて、ごみ
焼却炉ボイラの模擬環境下で耐高温エロージョン・コロ
ージョン性の試験を実施した。図1 に試験装置の概略を
模式的に示す。図1 において、試験装置は、平均粒子サ
イズ500 μm のけい砂6 を底部に堆積するとともに、模
擬ガス5 の吹き込み口4 を上部に有する炉1 と、この炉
1 を囲んで配置されて炉内を加熱するヒータ3a、3b、3
c、および炉1 の側面に設けられたモーター7 と、モー
ター7 から炉1 内に挿入された回転軸8 と、この回転軸
8 の先端に設けられた試験片2 の固定治具9 とからな
る。図1 の試験装置を用いた試験方法乃至条件は、炉1
内の温度を600 ℃に加熱し (試験温度) 、試験片2 を5m
/secの回転速度で回転させ、底部に堆積したけい砂6 層
と炉内とを順次連続的に、繰り返し通過暴露させなが
ら、15%O2-5%CO2-2%H2O-2000ppmCO-1000ppmSO2-1000ppm
HCl-残部N2の模擬ガス5 を炉内に吹き込んで、流動床式
ごみ焼却炉の疑似炉内乃至流動層 (床) を形成した。こ
の条件での試験を連続して120hr 行い、試験後の試験片
の、減肉速度から耐高温エロージョン性を、粒界腐食状
況から耐高温コロージョン性を、またシャルピー試験か
ら合金の靱性 (脆化の程度) を評価した。この結果を表
2 に示す。
【0025】なお、減肉速度 (μm/hr) は、試験片の表
面スケールを除去した後、マイクロメーターで試験片の
外径を測定し、試験前の試験片の外径との比較で減肉量
を求めた上、この減肉量を試験時間で除して減肉速度を
求めた。また、粒界腐食 (μm)は、前記表面スケールを
除去した試験片の断面を光学顕微鏡で観察し、粒界腐食
の深さを測定した。更に、シャルピー試験は、ごみ焼却
炉ボイラ内 (前記試験装置の炉内) の高温に合わせ、60
0 ℃におけるシャルピー吸収エネルギー(J) を求めた。
【0026】表2 から明らかな通り、発明例No.13 〜19
は、減肉速度が0.19μm/hr以下であり、耐高温エロージ
ョン性に優れていることが分かる。また、粒界腐食は17
0 μm 以下であり、耐高温コロージョン性に優れている
ことが分かる。更に、シャルピー吸収エネルギーは14J
以上であり、合金の脆化が少なく靱性に優れていること
が分かる。この発明例の中でも、No.18 などのように、
他の発明例よりもC 含有量が高い例ほど減肉速度が小さ
く耐高温エロージョン性に優れている。また、No.13 な
どのように、他の発明例よりもCr/Cが高いほど粒界腐食
の深さが小さく耐高温コロージョン性に優れている。更
に、このNo.13 はNiを含有しているため、シャルピー吸
収エネルギーが高く、合金の脆化が少なく靱性に優れて
いる。
【0027】これに対し、表2 から明らかな通り、比較
例No.1〜12は、本発明高Cr合金組成範囲をはずれている
ため、耐高温エロージョン性、耐高温コロージョン性、
合金の靱性のいずれか乃至いずれにおいても、発明例よ
りも劣っている。より具体的には、比較例No.1、11、12
はC 含有量が本発明範囲の上限乃至下限よりはずれてい
る。比較例No.5はSi含有量が本発明範囲の上限をはずれ
ている。比較例No.1、2 、5 、8 、11、12はCr含有量が
本発明範囲の上限乃至下限よりはずれている。また、比
較例No.4、7 、10は本発明で規制すべきMo、W を実質量
含んでいる。更に、比較例No.1、3 、5 、8 〜10、12は
Cr/Cが本発明範囲の上限乃至下限よりはずれている。こ
れら比較例の中でも、特にCr/Cが高いNo.1、3 はσ脆化
相が生成し、特にC 含有量が高いNo.12 は炭化物量が多
くなりすぎ、各々特に靱性が著しく低くなっている。ま
た、特にCr/Cが低いNo.5、8 、10は、粒界のCr量が不足
し、粒界腐食の深さが大きく、特に耐高温コロージョン
性に劣っている。更に、特にC 含有量が低いNo.1は炭化
物量が少なすぎて、特に耐高温エロージョン性に劣って
いる。したがって、以上の結果から、本発明高Cr合金組
成の、C 、Si、Mn、Cr、Cr/CおよびNiの量的範囲規定の
意義が明らかである。
【0028】本発明高Cr合金乃至高Cr合金部材は、この
ように耐高温エロージョン・コロージョン性に優れてい
るので、特にごみ焼却炉ボイラ用、更には流動床式ごみ
焼却炉ボイラ用の伝熱管等に好適に用いられる。実施例
の結果からすると、例えば、流動床式ごみ焼却炉ボイラ
用の伝熱管(鋼製伝熱管の外側に被覆) とした場合、比
較例に比して、伝熱管の寿命を約1.5 〜3 倍延ばすこと
が可能となる。したがって、この用途以外にも、類似の
使用環境で、前記焼却炉ボイラと同様の耐高温エロージ
ョン・コロージョン性が求められる、鋳造金型、鋳造や
圧延ロール、ブロア、スクリューコンベア、バルブ、カ
ッターやパンチ刃先、等の各種用途に、好適に用いるこ
とが出来る。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】以上述べた通り、本発明に係る高Cr合金
乃至高Cr合金部材によれば、使用温度が500 ℃以上の、
より厳しい高温エロージョン乃至コロージョン環境下に
あっても、優れた耐高温エロージョン・コロージョン性
や靱性を発揮する。したがって、流動床式等のごみ焼却
炉ボイラ伝熱管などの部材を、著しく高寿命化すること
が可能で、ごみ焼却炉ボイラを従来よりも一層効率化す
ることができる等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ごみ焼却炉ボイラの模擬環境下での、耐高温エ
ロージョン・コロージョン性試験装置の概略を示す模式
図である。
【符号の説明】
1:炉 2:試験片 3a 、3b、3c:
ヒータ 4:吹き込み口 5:模擬ガス 6:
けい砂 7:モーター 8:回転軸 9:
固定治具
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F22B 37/04 F22B 37/04 F23G 5/30 F23G 5/30

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金成分として、C:0.5 〜1.5%、Si:1.0
    〜4.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:35 〜60% を含有し、残部Co
    および/ またはFeと不可避的不純物からなり、かつCr量
    とC 量との比が35≦Cr/C≦90であることを特徴とする耐
    高温エロージョン・コロージョン性に優れた高Cr合金。
  2. 【請求項2】 合金成分として、更にNi:3〜15% を含有
    する請求項1に記載の耐高温エロージョン・コロージョ
    ン性に優れた高Cr合金。
  3. 【請求項3】 前記高Cr合金がごみ焼却炉ボイラ用であ
    る請求項1または2に記載の耐高温エロージョン・コロ
    ージョン性に優れた高Cr合金。
  4. 【請求項4】 前記ごみ焼却炉ボイラが流動床式ごみ焼
    却炉ボイラである請求項1乃至3のいずれか1項に記載
    の耐高温エロージョン・コロージョン性に優れた高Cr合
    金。
  5. 【請求項5】 請求項1または2の高Cr合金を、鋼材の
    表面に被覆した耐高温エロージョン・コロージョン性に
    優れた高Cr合金部材。
  6. 【請求項6】 前記鋼材が鋼管である請求項5に記載の
    耐高温エロージョン・コロージョン性に優れた高Cr合金
    部材。
  7. 【請求項7】 前記部材がごみ焼却炉ボイラ用である請
    求項5または6に記載の耐高温エロージョン・コロージ
    ョン性に優れた高Cr合金部材。
  8. 【請求項8】 前記ごみ焼却炉ボイラが流動床式ごみ焼
    却炉ボイラである請求項7に記載の耐高温エロージョン
    ・コロージョン性に優れた高Cr合金部材。
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