JPH1180618A - 金属微粒子からなる透明導電膜とその形成用組成物 - Google Patents

金属微粒子からなる透明導電膜とその形成用組成物

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JPH1180618A
JPH1180618A JP9241410A JP24141097A JPH1180618A JP H1180618 A JPH1180618 A JP H1180618A JP 9241410 A JP9241410 A JP 9241410A JP 24141097 A JP24141097 A JP 24141097A JP H1180618 A JPH1180618 A JP H1180618A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ブラウン管等に適用する金属微粒子からなる
導電膜において、商品性に影響する膜ムラの発生を防止
し、表面抵抗値が1×103 Ω/□以下と低抵抗で、全可
視光透過率が60%以上の膜を形成する。 【解決手段】 一次粒子径が20 nm 以下の金属微粒子0.
20〜0.50wt%が分散した分散液からなり、分散媒がフッ
素含有界面活性剤0.0020〜0.080 wt%を含有するか、お
よび/または多価アルコールならびにポリアルキレング
リコールおよびそのモノアルキルエーテル誘導体を0.10
〜3.0 wt%含有する、バインダを含有しない組成物を基
体に塗布し、乾燥して金属微粒子膜を形成する。その上
にシリカ質の上層皮膜を形成し、好ましくはさらにスプ
レー法でシリカ質微細凹凸層を形成すると、膜が低反射
性になり、防眩性が付与される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラウン管や各種
のディスプレー装置の画像表示部といった透明基体に帯
電防止性、電磁波シールド性、防眩性といた機能を付与
するのに適した、金属微粒子からなる透明導電膜と、こ
の透明導電膜を形成するための導電膜形成用組成物とに
関する。
【0002】
【従来の技術】ブラウン管 (TV用およびディスプレイ
用のCRT管) や、プラズマディスプレー、EL (エレ
クトロルミネセンス) ディスプレー、液晶ディスプレー
といった各種ディスプレー装置の画像表示部 (スクリー
ン) を構成するガラスは、静電気により表面にほこりが
付着し易く、また防眩性が不十分であるため、外部の光
や外部映像の映り込みにより画像が不明瞭になるといっ
た問題点がある。さらに、最近ではブラウン管から出る
電磁波の人体に対する影響が懸念されるようになり、低
周波の漏洩電磁波に対する規格も各国で制定されるよう
になってきた。
【0003】ほこりの付着や電磁波の漏洩を防止する対
策として、帯電防止効果や電磁波シールド効果のある透
明導電膜をスクリーン外面に形成する手段が採用でき
る。防眩性の付与手段として、スクリーンのガラス表面
をフッ酸等を用いて微細凹凸処理して光を散乱させるノ
ングレアー処理が行われてきた。しかし、ノングレアー
処理は画像の解像度を悪化させ、視認性が低下するとい
う問題がある。
【0004】そのため、最近では高屈折率の透明導電膜
の上に低屈折率の透明オーバーコート膜を形成した2層
膜によって、帯電防止(ほこり付着防止)と映り込み防
止の両方の機能を付与することが試みられている。この
ような2層膜では、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率差
が大きければ、上層の低屈折率膜表面からの反射光が下
層の高屈折率膜との界面からの反射光の干渉によって打
ち消され、結果として防眩性が改善される。この透明導
電膜の導電性が高い場合には、電磁波シールド効果も同
時に付与される。
【0005】例えば、特開平5−290634号公報には、Sb
ドープ酸化錫 (ATO) 微粉末を界面活性剤を用いて分
散させたアルコール分散液をガラス基体に塗布し、乾燥
して、高屈折率の導電膜を形成し、その上にフッ化マグ
ネシウムを含有していてもよいアルコキシシランから形
成されたシリカの低屈折率膜を形成することによって、
反射率を0.7 %まで低減させた2層膜が提案されてい
る。
【0006】特開平6−12920 号公報には、基体上に形
成した高屈折率層−低屈折率層の光学的膜厚nd (n:
膜厚、d:屈折率)をそれぞれ 1/2λ−1/4λ (λ=入
射光の波長) とした場合に低反射性となることが記載さ
れている。この公報によれば、高屈折率層はATOまた
はSnドープ酸化インジウム (ITO) 微粉末を含有する
シリカ質の膜であり、低屈折率層はシリカ膜である。
【0007】特開平6−234552号公報にもITO含有シ
リケート高屈折率導電膜−シリケートガラス低屈折率膜
からなる2層膜が開示されている。特開平5−107403号
公報には、導電性微粉末とTi塩を含有する液を塗布して
形成した高屈折率導電膜と低屈折率膜との2層膜が記載
されている。
【0008】特開平6−344489号公報には、ATO微粉
末と黒色導電性微粉末 (好ましくはカーボンブラック微
粉末) とからなる、固形分が密に充填された高屈折率の
第1層膜と、その上に形成したシリカ質の低屈折率膜と
からなる、黒色味を帯びた2層膜が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ATOやIT
Oといった半導体性の導電性粉末を使用した塗料型の導
電膜形成用組成物から形成した透明導電膜では、電磁波
シールド効果を生ずるように低抵抗化することが一般に
困難である。特に最近では、ブラウン管からの漏洩電磁
波に対する規格がより厳しくなってきているので、上述
した従来技術では電磁波シールド効果が不十分なために
対応が困難になっており、より低抵抗で電磁波シールド
効果の大きい透明導電膜が求められている。
【0010】スパッタリング等の気相法を採用すれば、
電磁波シールド効果の高い透明導電膜が形成できるが、
TVのように量産品を対象とする場合には、コスト面か
ら採用しにくい。
【0011】本発明者らは、ブラウン管の電磁波シール
ド性に対する最近の厳しい規格を考慮すると、ATOや
ITOといった半導体性の無機微粉末ではなく、より導
電性が高い金属微粉末を含有する塗料型の導電膜形成用
組成物の使用が望ましいと考え、金属コロイドと呼ばれ
るような金属微粒子を含有する分散液から、金属微粒子
質の導電膜 (金属微粒子膜) を試作してみた。
【0012】その結果、一次粒子径が20 nm 以下の金属
微粒子を使用し、膜厚を50 nm 以下に制限すれば、電磁
波シールド性の付与に十分な低抵抗と、全可視光透過率
が60%以上とブラウン管の視認性を妨げない程度の可視
光透過性とを備えた、金属微粒子膜が形成できることが
判明した。
【0013】金属それ自体は光反射性であって可視光を
透過させない。しかし、一次粒子径が100 nm以下の微粒
子は、可視光の最低波長の1/2より粒子径が小さくな
るため、どのような物質でも可視光が透過するようにな
る。即ち、金属微粒子からなる膜でも透明性が出てく
る。しかし、膜厚が厚くなると、金属微粒子の場合には
散乱による反射が多くなり、透過光の割合が少なくな
り、可視光透過率が低下する。そのため、金属微粒子質
の導電膜において60%以上の全可視光透過性を得るに
は、膜厚は50 nm 程度が限界である。
【0014】ところが、膜厚が50 nm 以下と超薄膜であ
ることと、金属に固有の高屈折率により、スピンコータ
ーといった成膜性に優れた塗布方法を採用しても、膜の
わずかな不均一性により、膜外観に色ムラ、放射状のス
ジ、スポットといった膜ムラが生じる。これは、ITO
やATOといった酸化物系の透明導電粉の微粒子を使用
した場合には見られない現象である。
【0015】一次粒子径が20 nm 以下という微細な金属
微粒子は活性が非常に高いため、凝集傾向が極めて強
く、分散液中ですぐに不均一に分布するようになる。そ
のため、上記の膜ムラが発生するようになる。この膜ム
ラは、後述するシリカ質オーバーコートを施しても非常
によく目立ち、例えばブラウン管の画像表示部にこれが
存在すると商品性がなくなる。従って、膜ムラの解消、
即ち、成膜性の向上が、金属微粒子質の透明導電膜の商
品化に当たっては是非とも必要であることが判明した。
【0016】本発明は、この商品性に影響する膜ムラの
発生を防止でき、しかも表面抵抗値が1×103 Ω/□以
下と低抵抗で、全可視光透過率が60%以上と可視光透過
性も満足できる透明導電膜を形成することができる、金
属微粒子を含有する導電膜形成用組成物と、この組成物
から形成された金属微粒子質の透明導電膜、特に低反射
性で防眩性に優れた透明導電膜を提供することを課題と
する。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決する目的で研究を重ねた結果、金属微粒子を分散
させる分散媒がフッ素系界面活性剤および/または特定
のアルコール系溶媒を少量含有していると、成膜性が向
上し、色ムラ、放射状のスジ、スポットといった膜ムラ
が目視では目につかない程度に軽減され、かつ透過性や
導電性も良好な導電膜が形成されることを見出し、本発
明に到達した。
【0018】本発明は、水を含有する有機溶媒中に一次
粒子径が20 nm 以下の金属微粒子0.20〜0.50wt%が分散
した分散液からなり、該溶媒が、(1) フッ素含有界面活
性剤を0.0020〜0.080 wt%、および/または(2) 多価ア
ルコールならびにポリアルキレングリコールおよびその
モノアルキルエーテル誘導体を合計0.10〜3.0 wt%、含
有することを特徴とする、金属微粒子含有導電膜形成用
組成物である。
【0019】本発明はまた、(a) 透明基体上に上記組成
物から形成された、全可視光透過率が60%以上の金属微
粒子質の透明導電膜、(b) この金属微粒子質導電膜を下
層とし、その上層にシリカ質皮膜がオーバーコートされ
ている、低反射性の2層型透明導電膜、および(c) この
2層型導電膜の上層の上に、さらにスプレー法で形成さ
れたシリカ質微細凹凸層を有する透明導電膜、もまた提
供される。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の導電膜形成用組成物は、
水を含有する有機溶媒からなる分散媒中に、一次粒子径
が20 nm 以下の金属微粒子0.20〜0.50wt%を分散させた
分散液からなり、分散媒が下記(1) および(2) の一方ま
たは両方を含有している点に特徴がある。 (1) フッ素含有界面活性剤0.0020〜0.080 wt%、(2)
多価アルコールならびにポリアルキレングリコールお
よびそのモノアルキルエーテル誘導体から選ばれた少な
くとも1種を合計で0.10〜3.0 wt%。
【0021】金属微粒子の金属種には特に制限はなく、
1種でも、また2種以上の金属微粒子の混合物でもよ
い。導電膜の形成に用いるのであるから、導電性が良好
な金属種が好ましい。適当な金属の例としては、Fe、C
o、Ni、Cu、Cr、W、Al、In、Zn、Pb、Sb、Bi、Sn、C
e、Cd、Pd、Rh、Ir、Os、Ru、Re、Pt、Ag、Au等が挙げ
られる。このうち、導電性や他の特性の点から好ましい
金属は、Ni、Cu、Pd、Rh、Ru、Pt、Ag、およびAuであ
る。
【0022】金属微粒子には、P、B、C、N、Sなど
の1種もしくは2種以上の非金属、またはNa、Kなどの
アルカリ金属および/もしくはMg、Caなどのアルカリ土
類金属の1種もしくは2種以上が固溶していてもよい。
【0023】金属微粒子は、不純物として微量のFeを含
有していることが好ましい。Feは、Fe以外の金属コロイ
ド生成時に金属微粒子中に混入する不純物元素である。
微量のFeが不純物として金属微粒子に混入していると、
形成された透明導電膜の表面での導電性の分布がより均
一かつ低抵抗になることが判明した。この効果を得るに
は、導電膜形成用組成物の全重量に対して0.0020〜0.01
5 wtの量でFe元素が不純物として存在していることが好
ましい。Feの量が0.015 wt%を超えると、成膜性に悪影
響が出ることがある。
【0024】金属微粒子は、一次粒子径が20 nm 以下の
ものを使用する。金属微粒子からなる導電膜は、前述し
たように、可視光透過性を確保するために膜厚を50 nm
以下と薄くする必要がある。そのため、金属微粒子の一
次粒子径は、この膜厚より十分に小さい必要がある。一
次粒子径20 nm を超える粒子が多量に存在すると、前述
した膜ムラが発生し易くなり、成膜性が低下する。
【0025】本明細書において「一次粒子径」とは、一
次粒子径の分布において、上位5%と下位5%の一次粒
子の粒子径を除外した一次粒子径の値を意味する。従っ
て、上位5%を除外した残りの微粒子のうち、最大の微
粒子の一次粒子径が20 nm 以下であればよい。
【0026】分散液中の微粒子の一次粒子径は、例え
ば、TEM (透過型電子顕微鏡 )により撮影した金属微
粒子の写真から測定することができる。この方法で、例
えば、ランダムに選択した100 個の金属微粒子の一次粒
子径を測定し、大きい方から5個の微粒子と小さい方か
ら5個の微粒子を除外した残りの微粒子の一次粒子径
を、一次粒子径の測定値とする。そして、この一次粒子
径の測定値のうちで最大の測定値が20 nm 以下であれば
よい。
【0027】金属微粒子の一次粒子径の上限は好ましく
は15 nm である。金属微粒子が一次粒子径15 nm を超え
る粒子を含有していないと、膜の透明性が向上する傾向
がある。金属微粒子の粒度分布については特に制限はな
い。金属微粒子の一次粒子径は、金属コロイド生成時の
反応条件により制御することができる。
【0028】一次粒子径が20 nm 以下という超微細な金
属微粒子は、従来より知られている金属コロイド生成の
手法 (例、保護コロイドの存在下で金属化合物を適当な
還元剤により金属に還元させる) を利用して製造するこ
とができる。還元反応で副生した塩は、遠心分離/リパ
ルプ法や透析法といった脱塩法により除去する。生成し
た金属微粒子は、金属コロイド、即ち、水系分散液 (分
散媒が水だけからなるか、または主に水からなる) の状
態で得られる。
【0029】この金属微粒子の水系分散液を、有機溶媒
または有機溶媒と水で希釈して、金属微粒子の含有量を
0.20〜0.50wt%にする。このように金属微粒子の含有量
を低くするのは、これから形成する膜の膜厚が50 nm 以
下と非常に薄いためである。金属微粒子の含有量が0.50
wt%を超えると、このように薄い膜の形成は困難とな
り、得られた膜の可視光透過性が低くなる上、成膜性も
劣化して、膜ムラの発生防止が困難となる。金属微粒子
の含有量が0.20wt%未満では、形成される膜が薄くなり
過ぎて、膜の導電性が大きく低下する。金属微粒子の含
有量は好ましくは0.25〜0.40wt%の範囲内である。
【0030】希釈後の溶媒中の水の含有量は特に制限さ
れるものではないが、組成物の重量に対して20wt%以
下、特に10wt%以下であることが好ましい。水が多過ぎ
ると、膜の乾燥に時間がかかり、作業性が低下する。
【0031】希釈に用いる有機溶媒は、希釈前の金属微
粒子の分散媒が水を含有していることから、少なくとも
一部は水混和性の有機溶媒とすることが好ましい。ま
た、成膜時の乾燥を早めるため、大部分 (例、溶媒の60
wt%以上) を沸点が85℃以下の溶媒から構成することが
好ましい。
【0032】特に好ましい水混和性有機溶媒は、メタノ
ール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコー
ルであるが、アセトン等のケトン類をはじめとする他の
水混和性有機溶媒を使用することもできる。また、炭化
水素、エーテル、エステル等を含む水不混和性の有機溶
媒も、好ましくは水混和性有機溶媒と一緒に、使用する
ことができる。希釈用有機溶媒として最も好ましいの
は、メタノール、エタノール、またはこれらの混合溶媒
である。中でも、揮発性の点から、メタノール単独、ま
たはメタノールとエタノールとの混合溶媒が好ましい。
【0033】しかし、前述したように、一次粒子径が20
nm 以下の金属微粒子を含有する水系コロイドを単に上
記のように揮発性の溶媒で希釈しただけでは、金属微粒
子が凝集し易く、その分布がすぐに不均一になり易いた
め、導電膜形成用組成物として使用した時に成膜性が不
十分となる。そのため、この組成物を十分に攪拌し、す
ぐに基体の塗布に使用したとしても、得られた透明導電
膜は膜ムラが発生しがちである。
【0034】本発明によれば、この膜ムラの発生を、
(1) フッ素系界面活性剤、(2) 多価アルコールならびに
ポリアルキレングリコールおよびそのモノアルキルエー
テル誘導体から選んだ1種もしくは2種以上、の一方ま
たは両方を添加することにより効果的に防止することが
できる。その詳しい機構は不明であるが、これらの添加
剤により金属微粒子の分散状態が安定化され、凝集が起
こりにくくなるため、成膜性が向上するものと推測され
る。
【0035】さらに、成膜性が向上し、金属微粒子が均
一に分布した膜が形成されると、膜の導電性および可視
光透過性も向上し、表面抵抗値が1×103 Ω/□以下と
低抵抗で、全可視光透過率が60%以上と可視光透過性が
十分な透明導電膜を確実に形成することが可能になる。
【0036】フッ素系界面活性剤とは、パーフルオロア
ルキル基を含有する界面活性剤である。パーフルオロア
ルキル基としては、炭素数6〜9、特に7〜8のものが
好ましい。界面活性剤の種類は特に制限はないが、アニ
オン型のものが好ましい。
【0037】好ましいフッ素系界面活性剤の具体例は下
記一般式で示されるものである: [CnF2n+1SO2N(C3H7)CH2CH2O]2PO2Y (n=7または8, Y=HまたはNH4)、 CnF2n+1SO3X (n=7または8, X=H, Na, K, Li またはNH4)、 CnF2n+1SO2N(C3H7)CH2CO2X' (n=7または8, X'=NaまたはK)、または CnF2n+1CO2Z (n=7または8, Z=H, NaまたはNH4)。
【0038】フッ素系界面活性剤の添加量 (2種以上を
使用する場合には合計量) は、導電膜形成用組成物に対
して0.0020〜0.080 wt%の範囲内である。この量が0.
0020wt%を下回ると、膜ムラ発生の防止効果が不
十分となり、0.080 wt%を上回ると、界面活性
作用が強過ぎ、再び膜ムラの発生が起こるようになる。
膜ムラの発生により、場合によっては導電性も低下す
る。フッ素系界面活性剤の添加量は好ましくは0.0025〜
0.060 wt%であり、より好ましくは0.0025〜0.040 wt%
である。
【0039】多価アルコールならびにポリアルキレング
リコールおよびそのモノアルキルエーテル誘導体 (以
下、これらを便宜上グリコール系溶媒と総称する) は、
溶媒の1種として使用する。即ち、室温で液体のものを
使用する。しかし、この種の溶媒は沸点が高い (最も低
沸点のエチレングリコールモノメチルエーテルでも、沸
点は 124.5℃) ので、主溶媒としては不適切である。
【0040】本発明で使用できる上記グリコール系溶媒
の具体例を挙げると次の通りである。多価アルコールと
しては、エチレングリコール、プロピレングリコール、
トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4-ブ
タンジオール、2,3-ブタンジオール、およびグリセリン
が例示される。ポリアルキレングリコールおよびそのモ
ノアルキルエーテル誘導体としては、ジエチレングリコ
ール、ジプロピレングリコール、およびこれらのモノメ
チルエーテルおよびモノエチルエーテルが例示される。
【0041】このグリコール系溶媒の添加量 (2種以上
を使用する場合には合計量) は、導電膜形成用組成物に
対して0.10〜3.0wt %である。やはり、この範囲より少
なくても、多くても、成膜性が低下し、膜ムラの発生防
止が不十分となり、導電性も低下することがある。グリ
コール系溶媒の添加量は、好ましくは0.15〜2.5 wt%で
あり、より好ましくは0.50〜2.0 wt%である。
【0042】膜ムラの発生防止には、前述したフッ素系
界面活性剤とグリコール系溶媒のいずれか一方だけを添
加すれば十分に効果はあるが、その両者を一緒に添加す
ると効果はより確実となる。
【0043】本発明の導電膜形成用組成物の必須成分は
上記の通りであり、通常の塗料に存在させるバインダ
(皮膜形成性成分) は存在させない。即ち、この導電膜
形成用組成物は、代表的なバインダである有機樹脂や、
無機バインダとして使用される加水分解性の有機金属化
合物 (例、エチルシリケート等のアルコキシシラン類)
等を含有しない。これらが存在すると成膜性が阻害され
る。バインダが存在しなくても、金属微粒子が非常に微
細で凝集性が強いため、その凝集力だけで膜を形成する
ことができる。
【0044】ただし、バインダ以外の塗料添加剤は、成
膜性や膜特性に悪影響を及ぼさなければ組成物中に含有
させてもよい。このような添加剤の例としては、フッ素
系以外の界面活性剤、カップリング剤、キレート形成能
を利用したマスキング剤などがあり、いずれも金属微粒
子の分散を安定化させる保護剤として機能する。これら
も多量に添加すると成膜性に悪影響があるので、いずれ
も0.010 wt%以下とすることが好ましい。
【0045】フッ素系以外の界面活性剤は、アニオン
型、ノニオン型、カチオン型のいずれでもよい。カップ
リング剤としては、シランカップリング剤、チタネート
系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤から
選んだ1種もしくは2種以上が使用できる。マスキング
剤の例は、クエン酸、EDTA、酢酸、シュウ酸、またはこ
れらの塩である。
【0046】本発明の導電膜形成用組成物を基体に塗布
し、乾燥して溶媒を除去すると、実質的に金属微粒子の
みからなる (界面活性剤等の有機添加剤の一部は残留す
る)金属微粒子質の透明導電膜 (金属微粒子膜) が基体
上に形成される。
【0047】塗布法はスピンコート法が好ましいが、均
一に成膜できれば他の塗布法も採用できる。乾燥は、溶
媒の沸点により、加熱乾燥でも常温乾燥でもよい。溶媒
の沸点が低い場合には、回転時間を十分にとるか、およ
び/または基体を予熱しておくことにより、スピンコー
ト中に乾燥を終了させることができる。予熱する場合の
温度は25〜80℃程度が適当である。後述するように上層
を形成する場合には、溶媒は完全に除去する必要はな
く、一部が残っていてもよい。
【0048】この金属微粒子膜の膜厚は50 nm 以下とす
ることが好ましい。それにより、全可視光透過率が60%
以上という全可視光透過性を備えた透明導電膜が得られ
る。但し、この金属微粒子膜は、金属膜に固有の反射性
により、外観上は透明膜であるようには見えないので、
ブラウン管やディスプレーの画像表示部に適用するのに
は適していない。
【0049】この金属微粒子膜の好ましい膜厚は8〜50
nm の範囲であり、より好ましくは10〜30 nm である。
膜厚が薄すぎると、十分な導電性が確保できない。膜厚
は、組成物中の金属微粒子の一次粒子径および濃度、成
膜条件 (例、スピンコートの回転数) 、ならびに基体の
温度により制御することができる。
【0050】この金属微粒子膜の導電性は、上記のよう
に成膜しただけでは、表面抵抗値が1×103 Ω/□以下
にならず、多くは1×105 Ω/□以上と高くなる。表面
抵抗が1×103 Ω/□以下になるまで低抵抗化したい場
合には、この金属微粒子膜を250 ℃以上の温度で熱処理
すればよい。熱処理温度は好ましくは 250〜450 ℃であ
る。熱処理は通常は大気中で実施すればよいが、易酸化
性の金属の場合には、温度によっては不活性ガス等の非
酸化性雰囲気中で熱処理する必要がある。この熱処理に
より、金属微粒子間の導通が改善されて導電性が高ま
り、表面抵抗を1×103 Ω/□以下、好ましくは1×10
2 Ω/□以下に下げることができる。
【0051】こうして得られる金属微粒子膜は、例え
ば、窓ガラスや自動車ガラスに適用することができ、ま
たショーウインドウやガラス間仕切りの装飾等にも使用
できる。さらに、導電ペーストとして、ディスプレー用
透明電極の導電回路の作製等にも有用である。
【0052】この金属微粒子膜は、実質的に金属微粒子
だけから構成され、バインダで結合されていないため、
膜強度は十分ではない。また、金属微粒子膜は上記のよ
うに反射性が高いため、画像表示部に適用するのには適
していない。
【0053】これらの点は、この金属微粒子膜を下層と
し、その上層にシリカ質皮膜を形成した2層膜とするこ
とにより解決することができる。上層のシリカ質皮膜
は、シリカ前駆体溶液を金属微粒子膜に含浸させ、次い
で加熱による焼付けを行って、含浸させたシリカ前駆体
をシリカに転化させることにより形成できる。シリカ前
駆体溶液としては、加水分解によりシリカになる加水分
解性シラン化合物またはその部分加水分解物を含有する
溶液 (シリカゾルを含む) が使用できる。
【0054】この含浸も、スピンコート法により行うこ
とが好ましい。その場合、1台のスピンコータ上で、基
体の上に下層となる金属微粒子膜を形成する上記導電膜
形成用組成物と、上層となる上記のシリカ前駆体溶液を
順に滴下して塗布を行えばよく、2層膜といっても、塗
布作業は一度で済むので簡便である。なお、この場合
も、基体を予熱してからスピンコートすると、成膜が迅
速に終了する。
【0055】焼付け温度は、一般に140 ℃以上であれば
よく、上限は基体により異なる。例えば、ブラウン管の
場合には、寸法精度や蛍光体の脱落防止のため250 ℃以
下、特に200 ℃以下とすることが好ましい。他のディス
プレー装置の場合にも、同様に表示機能成分に悪影響を
生じないような温度とする必要がある。
【0056】含浸させたシリカ前駆体溶液の一部は、金
属微粒子膜の粒子間隙に浸透して金属微粒子を結合する
バインダの作用をするので、この膜の膜強度は著しく向
上する。但し、この含浸中に金属微粒子が動くことはな
いので、金属微粒子は密に接触した状態で、その隙間を
シリカ質バインダが埋めるだけであり、屈折率はやはり
高いままである。
【0057】一方、含浸により微粒子の隙間に浸透しき
れなかった残りの溶液は、金属微粒子膜の上で、上層と
なるシリカ質皮膜を形成する。このシリカ質皮膜は、従
来技術から知られるように低屈折率である。従って、得
られた2層膜は、上層と下層の屈折率差から低反射性を
示し、反射光が少なくなることで、膜の外観も透明性が
出てくる。即ち、シリカ質の上層をオーバーコートする
ことにより、金属微粒子膜の透明性をいかすことが可能
になる。
【0058】シリカ質皮膜の形成に用いるシリカ前駆体
として有用な加水分解シラン化合物は、アルコキシシラ
ンが好ましいが、ハロシランも使用できる。アルコキシ
シランには、テトラエトキシシラン (=エチルシリケー
ト) 、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキ
シシラン、クロルトリメトキシシラン等の加水分解性の
基以外の官能基を有しないものの他に、シランカップリ
ング剤として知られる官能基を含有するアルコキシシラ
ンも含まれる。
【0059】好ましいアルコキシシランは、価格面から
エチルシリケートであり、短時間で焼付けが終了するよ
うに、これを予め部分加水分解させ、シリカゾルと呼ば
れる状態で使用することが好ましい。加水分解性シラン
化合物をそのまま使用する場合には、加水分解を促進さ
せるため、溶液中に少量の加水分解触媒 (通常は酸)と
水を含有させることが好ましい。
【0060】この2層膜の好ましい膜厚は、下層は前述
したように8〜50 nm であり、上層は10〜150 nmであ
る。上層のより好ましい膜厚は30〜110 nmである。上層
の膜厚は、使用する溶液の粘度やスピンコート条件によ
り制御できる。シリカゾルを使用する場合、シリカゾル
の粘度は 0.8〜10 cps、特に1.0 〜4.0 cps の範囲内が
好ましい。
【0061】この2層膜は、上記のように低反射性であ
り、しかも金属微粒子膜による導電性と透明性とを備え
ている。導電性に関しては、シリカ質の上層が薄いため
上層による導電性の阻害は少なく、かえって上層の焼付
けによる収縮によって下層の金属微粒子に内部応力が加
わり、導通がよくなるため、熱処理していない金属微粒
子膜単独に比べて導電性は向上する。その結果、表面抵
抗が1×103 Ω/□以下と、電磁波シールドに望ましい
低抵抗の透明導電膜となる。また、透明性も、金属微粒
子膜の反射がなくなることで、むしろ向上する。
【0062】そのため、この2層膜は、電磁波シールド
機能と防眩機能 (外部映像や光源の映り込み防止) の両
機能を発揮することができ、ブラウン管や各種ディスプ
レー装置の画像表示部に適用するのに適している。但
し、反射スペクトルが平坦ではなく、可視域の短波長側
の反射率が高くなるため、画像の色調がやや青ないし青
紫に変化するので、画像品質がやや阻害される。
【0063】この2層膜の上に、さらにシリカ前駆体溶
液をスプレーしてシリカ質微細凹凸層を形成すると、反
射スペクトルが平坦になり、上記の画像の色調変化がな
くなり、表面の反射光の散乱により防眩性も改善される
ことが判明した。微細凹凸の高さ (凸部と凹部との高低
差) は50〜200 Å程度とすることが好ましい。
【0064】このスプレーの目的は表面に微細凹凸を形
成することであるから、被覆量はごく少量 (例、オーバ
ーコートの重量で1/4程度以下) でよい。スプレーに
用いるシリカ前駆体は、上層シリカ質皮膜のオーバーコ
ートに用いたものと同様でよく、やはりエチルシリケー
トまたはその部分加水分解物が最も好ましい。溶液中の
シリカ前駆体の濃度は、SiO2換算で好ましくは 0.5〜1.
0 wt%、より好ましくは 0.6〜0.8 wt%である。成膜を
促進するため、このスプレーの前に基体を予熱しておい
てもよい。
【0065】本発明の導電膜形成用組成物を適用する基
体は特に制限されず、必ずしも透明でなくてもよいが、
その上に形成するのが透明導電膜であるので、透明基体
を使用することが好ましい。代表的な透明基体はガラス
であるが、透明プラスチック等の基体上に本発明の透明
導電膜を形成することもできる。
【0066】好ましい透明基体は、防眩性と電磁波シー
ルド性の付与が求められているものであり、例えば、T
Vやコンピュータ等の表示装置に用いるブラウン管、さ
らにはプラズマディスプレー、ELディスプレー、液晶
ディスプレー等のディスプレー装置の画像表示部であ
り、この場合には前述したように、金属微粒子膜にシリ
カ質皮膜をオーバーコートした2層膜、またはさらに最
上層としてシリカ質微細凹凸膜を形成したものを適用す
る。全可視光透過率が60%以上あるので、画面はやや暗
くなるが、視認性は阻害されない。むしろ、画面がやや
暗くなることで画像の視認性はかえって向上する。さら
に、上記のシリカ質の上層やその上の微細凹凸層を形成
することにより防眩性を付与できるので、画面が非常に
見やすくなる。また、透明導電膜により電磁波シールド
性が付与されるので、周囲の放射線による装置の誤動作
や、装置から出る電磁波による人体や周囲機器への悪影
響を防止することができる。
【0067】
【実施例】
(実施例1)導電膜形成用組成物の調製 コロイド的手法 (保護コロイドの存在下で金属化合物を
還元剤と反応させて還元する方法) により各種金属微粒
子の水系分散液を調製し、金属微粒子の一次粒子径をT
EMにより測定した。
【0068】この金属微粒子の水系分散液を、フッ素系
界面活性剤を含有する有機溶媒と場合により水で希釈
し、プロペラ型攪拌機により十分に攪拌して、表1に示
す組成の導電膜形成用組成物を得た。この組成物中のFe
含有量を、ICP (高周波プラズマ発光分析法) により
測定した。有機溶媒は、主溶媒と少量のグリコール系溶
媒との混合溶媒であった。但し、一部の実施例では、フ
ッ素系界面活性剤とグリコール系溶媒の一方を省略し
た。
【0069】ここで、表1に示したフッ素系界面活性剤
および各溶媒の記号の意味は次の通りである。フッ素系界面活性剤 F1:[C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2O]2PO2H F2:C8F17SO3Li F3:C8F17SO2N(C3H7)CH2CO2K F4:C7F15CO2Naグリコール系溶媒 多価アルコール EG :エチレングリコール PG :プロピレングリコール G :グリセリン TMG :トリメチレングリコール ポリアルキレングリコールと誘導体 DEG :ジエチレングリコール DEGM:ジエチレングリコールモノメチルエーテル DEGE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル DPGM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル DPGE:ジプロピレングリコールモノエチルエーテル EGME:エチレングリコールモノメチルエーテル主溶媒 (%は重量%) S1:メタノール100 % S2:メタノール75%/エタノール25%の混合溶媒 S3:メタノール50%/エタノール50%の混合溶媒。
【0070】成膜方法 100 mm×100 mm×厚さ2.8 mmのガラス基体をオーブン中
で40℃に予熱した後、スピンコーターにセットして150
rpm で回転させ、上で調製した導電膜形成用組成物を2
cc滴下して90秒間回転させた後、再びオーブン中で40℃
に加熱し、上層形成用のシリカ前駆体溶液を同じ条件で
スピンコートした。その後、オーブン中で200 ℃に20分
間加熱して、下層が金属微粒子膜、上層がシリカ質皮膜
からなる2層膜を基体上に形成した。
【0071】上層の形成に用いたシリカ前駆体溶液は、
三菱マテリアル社製シリカコート液SC−100H (エチルシ
リケートの加水分解により得られたSiO2換算濃度1.00wt
%のシリカゾル) をメタノールでSiO2換算濃度が0.70wt
%になるように希釈した溶液であり、液の粘度は1.65 c
psであった。
【0072】得られた透明導電膜の断面をSEM (走査
式電子顕微鏡) で観察したところ、いずれも下層が金属
微粒子膜、上層がシリカ膜からなる2層膜であることを
確認した。このSEM写真から上層と下層の膜厚を測定
した結果と、この2層膜の膜特性を次のようにして測定
した結果を表1に併せて示す。
【0073】表面抵抗:四探針法 (ロレスタAP:三菱油
化製) により測定した。可視光透過率:自記分光光度計
(U-4000型:日立製作所製) により波長550 nmで光透過
率を測定した。なお、可視光透過率は550 nmでの測定値
を示した。本発明の金属微粒子の場合、550 nmの可視光
透過率が全可視光透過率とほぼ一致することが経験的に
確かめられている。
【0074】成膜性:透明導電膜の外観を目視観察し
て、色ムラ、放射状のスジ、スポットといった膜ムラの
有無について検査した。結果は、ガラス基体の背面に黒
色ビニルテープ (日東電工社製No.21)を貼り、30cmの距
離から目視観察して、上述したような膜ムラが認められ
ない場合を○、認められた場合を×と評価した。
【0075】総合判定として、表面抵抗が1×103 Ω/
□以下、全可視光透過率が60%以上、成膜性が○の全て
を満たす場合を○、この条件が1つでも欠けると×と判
定した。なお、表1には、金属微粒子の一次粒子径また
は導電膜形成用組成物の組成が本発明の範囲外である比
較例の結果も一緒に示す。
【0076】
【表1−1】
【0077】
【表1−2】
【0078】表1からわかるように、本発明の導電膜形
成用組成物は成膜性が改善され、金属微粒子膜に見られ
る商品性に影響するような膜ムラの発生が防止できる。
また、表面抵抗値は1×103 Ω/□以下と電磁波シール
ドに十分な低抵抗を有し、透明性についても全可視光透
過率が60%以上あるので、ブラウン管や他のディスプレ
ー装置の画像の視認性は十分に確保される。
【0079】これに対して、金属微粒子が20 nm を超え
る一次粒子を含有していると、成膜性が劣り、膜ムラが
発生するようになる上、膜の導電性も著しく低下する。
金属微粒子の含有量が少なすぎると膜の導電性が著しく
低下し、この含有量が多すぎると、成膜性と可視光透過
性が劣化する。
【0080】その他の比較例は、フッ素系界面活性剤お
よび/またはグリコール系溶媒の量が本発明の範囲外と
なった例であるが、いずれも成膜性が悪く、導電性にも
場合により悪影響がある。図1に成膜性が良好な場合
(試験No.9) の2層型透明導電膜の光学顕微鏡写真を、
図2に成膜性が不良の場合 (試験No.23)の2層型透明導
電膜の光学顕微鏡写真を示す (倍率はいずれも10倍) 。
【0081】また、図3に試験No.14 の2層膜の断面S
EM写真を、図4に試験No.14 の2層膜の反射スペクト
ルを示す。最低反射率が低く、低反射性であることがわ
かる。その他の本発明に係る2層型透明導電膜も、すべ
てほぼ同レベルの低反射性を備えていた。
【0082】(実施例2)実施例1で形成した2層型透明
導電膜を有するガラス基体を60℃に予熱し、その膜表面
にの表面に、エタノール/イソプロパノール/ブタノー
ル/0.05N 硝酸の重量比5/2/1/1の混合溶媒中の
0.5 wt%エチルシリケート溶液を2秒間スプレーし、16
0 ℃で10分間焼付けした。
【0083】試験No.14 の2層膜にスプレーした後の反
射スペクトルを図5に示す。図4と図5の比較から、ス
プレーにより2層膜の上に微細凹凸層を形成すると、可
視光短波長域 (400 nm以下) の反射率が著しく低減し、
反射スペクトルが平坦になったことがわかる。
【0084】(実施例3)実施例1と同様にして、試験
No. 3, 7, 14, 17の金属微粒子膜を単層でガラス基体上
に形成し、大気中で300 ℃に10分間加熱して熱処理し
た。熱処理前と熱処理後のこれらの金属微粒子膜の表面
抵抗の測定結果は次の通りであった。熱処理により低抵
抗になり、導電性が向上したことがわかる。
【0085】
【表2】
【0086】
【発明の効果】本発明の金属微粒子含有導電膜形成用組
成物は成膜性が改善されており、商品価値をなくしてし
まうような色ムラ、放射状のスジ、スポットといった膜
ムラを発生させずに、金属微粒子からなる透明導電膜を
容易に形成することができる。得られた透明導電膜は、
表面抵抗値が1×103 Ω/□以下と低抵抗で、帯電防止
性はもちろん、電磁波シールド機能も基体に付与するこ
とができる。
【0087】また、透明性に関しても、導電膜の膜厚が
50 nm 以下であれば、全可視光透過率が60%以上とな
り、基体がブラウン管や各種ディスプレーの画像表示部
であっても、画面を見にくくするほど暗くすることはな
い。さらに、この導電膜の上層にシリカ質皮膜を形成
し、好ましくはその上にさらにシリカ質の微細凹凸層を
形成すると、膜の反射性が低くなり、防眩性も付与され
るので、画面が非常に見やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電膜形成用組成物から形成した金属
微粒子膜の上にシリカ質皮膜をオーバーコートした透明
導電膜の外観を示す光学顕微鏡写真(a) およびその模式
図(b) 。
【図2】比較例の導電膜形成用組成物から形成した同様
の2層透明導電膜の外観を示す光学顕微鏡写真(a) およ
びその模式図(b) 。
【図3】本発明の導電膜形成用組成物から形成した金属
微粒子膜の上にシリカ質皮膜をオーバーコートした透明
導電膜の断面SEM写真(a) およびその模式図(b) 。
【図4】図3の透明導電膜の反射スペクトル。
【図5】図3と同じ2層透明導電膜の上にさらにシリカ
質微細凹凸層を形成した膜の反射スペクトル。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年9月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水を含有する有機溶媒中に一次粒子径が
    20 nm 以下の金属微粒子0.20〜0.50wt%が分散した分散
    液からなり、 該溶媒が、(1) フッ素含有界面活性剤を0.0020〜0.080
    wt%、および/または(2) 多価アルコールならびにポリ
    アルキレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル
    誘導体を合計0.10〜3.0 wt%、含有することを特徴とす
    る、金属微粒子含有導電膜形成用組成物。
  2. 【請求項2】 金属微粒子がNi、Cu、Pd、Rh、Ru、Pt、
    AgおよびAuよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金
    属の微粒子である、請求項2記載の導電膜形成用組成
    物。
  3. 【請求項3】 不純物のFe含有量が0.0020〜0.015 wt%
    である、請求項1または2記載の導電膜形成用組成物。
  4. 【請求項4】 フッ素系界面活性剤が、下記一般式: [CnF2n+1SO2N(C3H7)CH2CH2O]2PO2Y (n=7または8, Y=HまたはNH4)、 CnF2n+1SO3X (n=7または8, X=H, Na, K, Li またはNH4)、 CnF2n+1SO2N(C3H7)CH2CO2X' (n=7または8, X'=NaまたはK)、または CnF2n+1CO2Z (n=7または8, Z=H, NaまたはNH4) で示される化合物から選ばれた少なくとも1種である、
    請求項1ないし3のいずれか1項に記載の導電膜形成用
    組成物。
  5. 【請求項5】 多価アルコールがエチレングリコール、
    プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチ
    レングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオ
    ール、およびグリセリンよりなる群から選ばれ;ポリア
    ルキレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル誘
    導体がジエチレングリコール、ジプロピレングリコー
    ル、およびこれらのモノメチルエーテルおよびモノエチ
    ルエーテルよりなる群から選ばれる、請求項1ないし4
    のいずれか1項に記載の導電膜形成用組成物。
  6. 【請求項6】 透明基体上に、請求項1ないし5のいず
    れか1項に記載の導電膜形成用組成物から形成された、
    全可視光透過率が60%以上の、金属微粒子質透明導電
    膜。
  7. 【請求項7】 250 ℃以上で熱処理された請求項6記載
    の透明導電膜。
  8. 【請求項8】 請求項6記載の金属微粒子質導電膜を下
    層とし、その上層にシリカ質皮膜がオーバーコートされ
    ている、低反射性の2層型透明導電膜。
  9. 【請求項9】 下層の膜厚が8〜50 nm 、上層の膜厚が
    10〜150 nmである請求項8記載の透明導電膜。
  10. 【請求項10】 請求項8または9記載の2層型透明導
    電膜の上層の上に、さらにスプレー法で形成されたシリ
    カ質微細凹凸層を有する、透明導電膜。
  11. 【請求項11】 透明基体が、ブラウン管、プラズマデ
    ィスプレー、ELディスプレーまたは液晶ディスプレー
    の画像表示部である、請求項8ないし10のいずれか1項
    に記載の導電膜。
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