JPH1176770A - 中空糸膜モジュールの運転方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ろ過運転における逆洗を特徴とする洗浄処理
頻度の最適化を行い、被処理液が変化してもろ過性能が
該洗浄処理により回復する許容範囲を容易に見出すこと
により、ろ過運転を効率的に行うことができる中空糸膜
モジュールの運転方法を提供する。 【解決手段】 中空糸膜モジュールのろ過において、ケ
ークろ過の範囲で液体又は気体を中空糸膜の内側から外
側へ透過させて逆洗すること、あるいはろ過時間と対応
するろ過圧力の関係を２変数統計計算による１次回帰直
線としたときに、その相関係数の絶対値が０．９５以上
１以下となる範囲において逆洗を行うものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、精密ろ過、限外ろ
過、透析などに用いられる中空糸膜モジュールの逆洗を
行う運転方法に関するもので、更に詳しくは逆洗を特徴
とする洗浄処理によりろ過性能が回復するろ過運転範囲
における運転方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】中空糸膜モジュールは、単位容積あたり
の膜面積を大きくすることができるため、コンパクトな
処理装置を構成することが可能で、各種の膜分離装置に
幅広く用いられている。しかし、この様な中空糸膜モジ
ュールにおいても、ろ過時間の経過と共に中空糸膜に除
去された物質の堆積、付着等によりろ過圧力の上昇等の
ろ過性能の低下が見られる。

【０００３】このような問題に対して中空糸膜をろ液に
より逆洗する方法（例えば特開昭５１−１１０４８２号
公報）、圧縮空気の逆洗により洗浄する方法（例えば特
開昭５３−１０８８８２号公報）及び気体又は液体の逆
洗と散気によるバブリングとを併用した方法（例えば特
公平６−５７３０２号公報）等の逆洗による中空糸膜の
洗浄方法が考案されている。しかし、上記の逆洗を特徴
とする洗浄処理をろ過運転中に行っても、ろ過圧力が上
昇し過ぎたり、ろ過流量が低下し過ぎた場合において
は、もはやろ過性能が回復しないことが多い。

【０００４】これは上記の逆洗を特徴とする洗浄処理に
よりろ過性能が完全に回復するろ過圧力やろ過流量の許
容範囲が明らかでなく、その許容範囲を越えてしまった
ためと考えられる。これらの点から中空糸膜のろ過性能
の回復性を考慮したろ過圧力やろ過流量の許容範囲を把
握した上で洗浄処理を効率的に組み合わせたろ過運転を
行う必要がある。

【０００５】しかしながら、これらの許容範囲を把握す
ることなくろ過運転を行う場合、ろ過運転に占める洗浄
処理の頻度を必要以上に多くするために、ろ過効率が悪
くなるという問題がある。また、そういったもの以外で
は経験的に洗浄処理によりろ過性能が完全に回復するろ
過圧力やろ過流量の許容範囲を見出し、ろ過運転を行っ
ているが、被処理液中の成分の含有率の変化や被処理液
そのものが変わった場合に対応するのは容易ではない。

【０００６】活性汚泥水や下水のように除去すべき物質
を多量に含んだ液体をろ過する場合に、ろ過運転を行う
ためのろ過方式として、加圧ろ過を採用すると中空糸膜
の目詰まりが激しくなるが、吸引ろ過を例えば散気をし
ながら行う方式を採用すると目詰まりはかなり改善され
ることから、通常は吸引ろ過方式によってろ過運転する
ことが多い。一方、水道水などのように除去すべき物質
を少量しか含まない液体をろ過する場合には加圧ろ過が
多く採用されている。このように被処理液の性状に応じ
てろ過方式が使い分けられている。しかしながら、被処
理液の性状にもよるが一般的に加圧ろ過の方が吸引ろ過
よりも膜面上のケークがろ過抵抗となるケークろ過の範
囲が狭く、逆洗を特徴とする洗浄処理を同様に行った場
合には加圧ろ過方式の方が洗浄処理頻度も多くなり、非
効率的である。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、ろ過運転における逆洗を特徴とする洗浄処
理頻度の最適化を行い、被処理液が変化してもろ過性能
が該洗浄処理により回復する許容範囲を容易に見出すこ
とにより、ろ過運転を効率的に行うことを目的としてい
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者はこれらの問題
点を鋭意検討した結果、本発明に至った。即ち、中空糸
膜に除去された物質の堆積、付着等の状態はろ過運転中
一定ではなく、ろ過時間の経過と共に変化しており、そ
の変化に対応して適した洗浄処理を行うべきであり、中
空糸膜表面上のケーク（cake、「ケーキ」とも言う）が
ろ過抵抗となるケークろ過（「ケーキろ過」とも言う）
の範囲のろ過運転において、逆洗を特徴とする洗浄処理
を行うことにより効率的なろ過運転を可能とした。

【０００９】更に詳しくは、本発明の中空糸膜モジュー
ルの運転方法は、定流量ろ過においてろ過時間と対応す
るろ過圧力の関係から、又は定圧ろ過においてろ過時間
を対応するろ液量で割ったものとそのろ液量の関係から
２変数統計計算による１次回帰直線を演算し、その相関
係数の絶対値が０．９５以上１以下となる範囲において
逆洗を行うことを特徴とし、ろ過運転において逆洗を特
徴とする洗浄処理を効率的に行うことを可能とした。

【００１０】

【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を添付図
面に基づいて更に詳細に説明する。図１は本発明におけ
る中空糸膜モジュールの逆洗を特徴とする洗浄処理を行
うろ過装置の簡略図である。

【００１１】本発明の運転方法を採用したろ過装置は、
被処理液が流入される膜分離槽８に浸漬した中空糸膜モ
ジュール１のろ過液の通路に弁３及び弁５とそれらを介
してそれぞれ連通した吸引ポンプ２及び逆洗ポンプ４と
散気孔が通じた空気の通路に弁７とそれを介して連通し
た散気ポンプ６を有して構成されている。

【００１２】本発明に用いられる中空糸膜モジュール１
の形状は特に限定されないが、吸引、加圧又は自然ろ過
により被処理水が中空糸膜の外側から内側へ透過して分
離膜として機能できるものであればよいが、図２の簡略
正面図及び図３の簡略側面図の様に多数の中空糸膜９を
束ねた両端が開口状態で集束固定された中空糸膜ユニッ
ト１０の両端部がそれぞれ異なる配置固定部材１１，１
２に配置され、各配置固定部材１１，１２内に中空糸膜
ユニット１０のろ過液の通路１３が連通されており、そ
の配置固定部材１１，１２と散気機構を持つ散気部材１
４及び支持接続部材１５とを積層状に組み合わせ、それ
らをフレーム１６に接続固定された構造の中空糸膜モジ
ュール１を用いることが好ましい。

【００１３】中空糸膜はろ過処理時及び逆洗時のろ過液
の圧力損失を考慮し、中空糸膜の内径が細い場合には中
空糸膜の長さを短く、太い場合には長くすべきであり、
本発明では内径が３００〜５００μｍの中空糸膜が使用
されるので、中空糸膜長さはおよそ２０〜１２０ｃｍで
ある。また、中空糸膜の孔径は０．１〜０．５μｍであ
り、公知のポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等からなる中空糸膜を本発明に用いることができる。

【００１４】図１における弁３、５及び７の様式は特に
限定されないが、機密性が高いもの、例えば電磁弁が好
ましい。また、任意に開閉できるものであれば弁以外の
手段でも良い。

【００１５】吸引ポンプ２、逆洗ポンプ４及び散気ポン
プ６の様式、ポンプ能力は特に限定されないが、吸引ポ
ンプ２は自吸式が好ましく、逆洗ポンプ４は加圧空気の
圧力範囲がおよそ０〜１０００ｋＰａで任意に調整でき
るものが好ましい。散気ポンプ６は空気供給量がおよそ
０〜４００Ｌ（リットル）／ｍｉｎであるものが好まし
い。これらのポンプの数は特に限定されないが、必要に
応じて任意に変更することが可能である。

【００１６】ろ過方式は、現実的に定流量ろ過が多くの
場合において採用されているので、本発明の実施例にお
いては定流量ろ過について述べるが、特に限定されるも
のでない。

【００１７】ろ過方式は、本発明の実施例においてケー
クろ過の範囲が、加圧ろ過方式よりも一般的に広い吸引
ろ過方式を採用しているが、特に限定されるものでな
い。

【００１８】また、被処理液によってはケークろ過を越
えた範囲で逆洗を特徴とする洗浄処理を行ってもろ過性
能が回復する場合がある。例えば、中空糸膜面上にゲル
状物質が堆積、繊密化すると、請求項２又は３記載の相
関係数、即ち定流量ろ過においてろ過時間と対応するろ
過圧力の関係から、又は定圧ろ過においてろ過時間を対
応するろ液量で割ったものとそのろ液量の関係から２変
数統計計算によって導き出した１次回帰直線の相関係数
の絶対値が０．９５未満の範囲において逆洗を特徴とす
る洗浄処理を行っても、ろ過性能は回復可能である。

【００１９】

【実施例】

（実施例）内径６００μｍ、外径３００μｍ、孔径０．
１μｍのポリスルホン製中空糸膜からなる膜面積が約１
０ｍ² の中空糸膜モジュール１を膜分離槽８内に浸漬、
設置した。

【００２０】図１において膜分離槽８には流量調整槽か
らカルボキシメチルセルロース誘導体５００ｐｐｍ水溶
液を１．８Ｌ／ｍｉｎで供給しており、散気ポンプ６か
ら電磁弁７を介して空気をおよそ５０Ｌ／ｍｉｎでモジ
ュール下部の散気部材１４から連続的に散気を行った。

【００２１】次に、電磁弁３を開き、電磁弁５を閉じた
状態で吸引ポンプ２にて流量２Ｌ／ｍｉｎで吸引ろ過を
行った。ろ過時間とろ過圧力の関係を示したものが図４
である。運転開始からろ過圧力が１５ｋＰａまでのろ過
時間−ろ過圧力の２変数統計計算による１次回帰直線Ａ
は、相関係数が０．９９であったが、ろ過圧力が２０ｋ
Ｐａまでを同様に１次回帰直線Ｂとした場合は、その相
関係数が０．９５であった。ろ過圧力が２０ｋＰａとな
った時（運転開始から９分）に、電磁弁３を閉じ、電磁
弁５を開けた状態で吸引ポンプ２を停止し、逆洗ポンプ
４にて加圧空気を送り込み、ライン内のろ液を全て押し
出し空気に置換し、逆洗を行った。この時の逆洗圧力Ｐ
ｂは初期の５０ｋＰａから１０秒で逆洗ポンプ４の元圧
力１００ｋＰａに達し、その後５０秒間はそのままの状
態で保持した。この逆洗処理により、ろ過圧力は初期ろ
過圧力（５ｋＰａ）まで回復した。この後、ろ過と逆洗
を９回繰り返したが、全て初期ろ過圧力まで回復した。

【００２２】（比較例）前述の実施例においてろ過時間
−ろ過圧力の２変数統計計算による１次回帰直線Ｃにお
いてその相関係数が０．９２となった２５ｋＰａで逆洗
を行ったが、ろ過圧力は２０ｋＰａまでしか回復せず、
更にろ過圧力が２０ｋＰａの時に逆洗をおこなっても初
期ろ過圧力（５ｋＰａ）まで回復しなかった（図５参
照）。

【００２３】

【発明の効果】本発明の逆洗を用いた運転方法により、
逆洗を特徴とする洗浄処理頻度の最適化を行い、かつ該
洗浄処理によりろ過性能が回復する効率的なろ過運転を
行うことが可能となった。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の運転方法を採用したろ過装置の全体簡
略説明図である。

【図２】ろ過装置に用いた中空糸膜モジュールの簡略正
面図である。

【図３】ろ過装置に用いた中空糸膜モジュールの簡略側
面図である。

【図４】本発明の実施例におけるろ過時間とろ過圧力の
関係を示すグラフである。

【図５】比較例におけるろ過時間とろ過圧力の関係を示
すグラフである。

【符号の説明】 １ 中空糸膜モジュール ２ 吸引ポンプ ４ 逆洗ポンプ ６ 散気ポンプ ３、５、７ 電磁弁 ８ 膜分離槽 ９ 中空糸膜 １０ 中空糸膜ユニット １１，１２ 配置固定部材 １３ ろ過液の通路 １４ 散気部材 １５ 支持接続部材 １６ フレーム

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中空糸膜モジュールのろ過において、ケ
   ークろ過の範囲で液体又は気体を中空糸膜の内側から外
   側へ透過させて逆洗することを特徴とする中空糸膜モジ
   ュールの運転方法。
2. 【請求項２】 中空糸膜モジュールの定流量ろ過におい
   て、ろ過時間と対応するろ過圧力の関係を２変数統計計
   算による１次回帰直線としたときに、その相関係数の絶
   対値が０．９５以上１以下となる範囲において逆洗を行
   うことを特徴とする請求項１記載の中空糸膜モジュール
   の運転方法。
3. 【請求項３】 中空糸膜モジュールの定圧ろ過におい
   て、ろ過時間を対応するろ液量で割ったものとそのろ液
   量の関係を２変数統計計算による１次回帰直線としたと
   きに、その相関係数の絶対値が０．９５以上１以下とな
   る範囲において逆洗を行うことを特徴とする請求項１記
   載の中空糸膜モジュールの運転方法。
4. 【請求項４】 ろ過方式が吸引ろ過である請求項１、２
   又は３記載の中空糸膜モジュールの運転方法。