JPH1175918A - 装飾具、金具およびその製造方法 - Google Patents

装飾具、金具およびその製造方法

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JPH1175918A
JPH1175918A JP23970497A JP23970497A JPH1175918A JP H1175918 A JPH1175918 A JP H1175918A JP 23970497 A JP23970497 A JP 23970497A JP 23970497 A JP23970497 A JP 23970497A JP H1175918 A JPH1175918 A JP H1175918A
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JP
Japan
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metal
thin film
test piece
gold
oxide
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JP23970497A
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English (en)
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Yutaka Hibino
豊 日比野
Yasuo Suzuki
泰雄 鈴木
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ION KOGAKU KENKYUSHO KK
Original Assignee
ION KOGAKU KENKYUSHO KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属の持つ質感や光沢を損なわずに優れた耐
久性を保持しつつ接触アレルギーを起こさないように改
質された装飾具、金具およびその製造方法を提供するこ
とである。 【解決手段】 装飾具または金具の下地金属の表面にイ
オン注入またはイオン照射を含む成膜方法を用いて膜厚
0.1μm〜5μmのTiO2 、Al2 3 、SiO2
等の金属酸化物系セラミックス薄膜、TiN等の金属窒
化物系セラミックス薄膜または高結晶金、高結晶白金、
高結晶銀等の高結晶金属薄膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製もしくは金
属被覆製の装飾具または金具およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ニッケル、クロム、錫、亜鉛、ステンレ
ス、真鍮(黄銅)、金、銀等の金属製またはプラスチッ
ク成形品への上記金属めっき製の腕時計、眼鏡フレー
ム、ネックレス、指輪、ピアス等の装飾具や下着用等の
金具によって接触アレルギーを起こすことがあり、アレ
ルギー反応に敏感な体質の人にとってその防止策は重要
な課題である。
【0003】接触(金属)アレルギーとは、ニッケル、
クロム、ステンレス、真鍮、金等の金属と、生体内の蛋
白質との反応により、生成するエピトープ(抗原決定
基)と呼ばれる免疫反応が皮膚表面層で起きることを言
う。
【0004】よって、生体内代謝産物の中で、反応基を
持つハプテン( 単純化学物質) と呼ばれる物質と、アレ
ルゲンとなる金属とが異常反応を起こさないようにする
ために、アレルゲンとなる金属側の溶出を防止すること
が有用と考えられている。
【0005】従来は、接触アレルギーを防止するため、
装飾具や金具の材料をアレルギーを起こさないプラスチ
ック等の樹脂材料に切り替えたり、接触アレルギーを起
こす金属の表面に樹脂コーティングを施したりしてい
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方法で
は、金属の持つ重量感などの質感や光沢が損なわれ、ま
た樹脂は傷つきやすく長期間の使用に耐えられなかっ
た。
【0007】本発明の目的は、金属の持つ質感や光沢を
損なわずに優れた耐久性を保持しつつ接触アレルギーを
起こさないように改質された装飾具およびその製造方法
を提供することである。
【0008】本発明の他の目的は、金属の持つ質感や光
沢を損なわずに優れた耐久性を保持しつつ接触アレルギ
ーを起こさないように改質された金具およびその製造方
法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記の
ハプテンとアレルゲンとなる金属とが異常反応を起こさ
ないようにするためには、アレルゲンとなる金属側の溶
出を防止することが有用である。本発明者は、金属の質
感や光沢などを変化させずに金属の溶出を防止するため
には、透明で無機質な薄膜材料で金属表面を覆うか、下
地金属と同様の高純度金属を金属表面に形成し、汗や体
液によって金属が溶出することを防止することが最も有
用であると考え、種々の方法を検討した結果、以下の発
明を案出した。
【0010】第1の発明に係る装飾具の製造方法は、下
地金属の表面にイオン注入またはイオン照射を含む成膜
方法を用いて金属酸化物系もしくは金属窒化物系セラミ
ックスまたは高結晶金属からなる薄膜を形成するもので
ある。
【0011】本発明に係る製造方法によれば、下地金属
の表面に高い密着性、緻密性および平坦性を有する薄膜
が形成される。それにより、下地金属の溶出および薄膜
の剥離が防止されるとともに、下地金属の質感や光沢を
反映した外観が得られる。したがって、下地金属の持つ
質感や光沢を損なわずに優れた耐久性を保持しつつ接触
アレルギーを防止することができる。
【0012】特に、薄膜の厚さが0.1μm以上5μm
以下であることが好ましい。これにより、薄膜が透明性
を有し、かつ下地金属からの薄膜の剥離および薄膜への
クラックの発生が防止される。
【0013】また、下地金属に対する薄膜の密着強度が
10kg/cm2 以上であることが好ましい。これによ
り、下地金属からの薄膜の剥離が十分に防止される。そ
の結果、接触アレルギーを確実に防止することができ
る。
【0014】下地金属は、ニッケル、クロム、錫、亜
鉛、ステンレス、黄銅、金および銀より選択された一ま
たは複数の金属材料を含んでもよい。また、薄膜は、酸
化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、窒化チタ
ン、高結晶金、高結晶白金および高結晶銀のいずれかか
らなることが好ましい。
【0015】第2の発明に係る金具の製造方法は、下地
金属の表面にイオン注入またはイオン照射を含む成膜方
法を用いて金属酸化物系もしくは金属窒化物系セラミッ
クスまたは高結晶金属からなる薄膜を形成するものであ
る。
【0016】本発明に係る製造方法によれば、下地金属
の表面に、高い密着性、緻密性および平坦性を有する薄
膜が形成される。それにより、下地金属の溶出および薄
膜の剥離が防止されるとともに、下地金属の質感や光沢
を反映した外観が得られる。したがって、金属の持つ質
感や光沢を損なわずに耐久性を保持しつつ接触アレルギ
ーを防止することができる。
【0017】特に、薄膜の厚みが0.1μm以上5μm
以下であることが好ましい。これにより、薄膜が透明性
を有し、かつ下地金属からの薄膜の剥離および薄膜への
クラックの発生が防止される。
【0018】また、下地金属に対する薄膜の密着強度が
10kg/cm2 以上であることが好ましい。これによ
り、下地金属からの薄膜の剥離が十分に防止される。そ
の結果、接触アレルギーを確実に防止することができ
る。
【0019】下地金属は、ニッケル、クロム、錫、亜
鉛、ステンレス、黄銅、金および銀より選択された一ま
たは複数の金属材料を含んでもよい。また、薄膜は、酸
化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、窒化チタ
ン、高結晶金、高結晶白金および高結晶銀のいずれかか
らなることが好ましい。
【0020】第3の発明に係る装飾具は、下地金属の表
面にイオン注入またはイオン照射を含む成膜方法を用い
て金属酸化物系もしくは金属窒化物系セラミックスまた
は高結晶金属からなる薄膜を形成したものである。
【0021】本発明に係る装飾具においては、下地金属
の表面に形成された薄膜により、下地金属の溶出が防止
され、かつ下地金属の耐久性が保持されるとともに、薄
膜を通して下地金属の質感や光沢を反映した外観が得ら
れる。したがって、金属の持つ質感や光沢を損なわずに
耐久性を保持しつつ接触アレルギーを防止することがで
きる。
【0022】第4の発明に係る金具は、下地金属の表面
にイオン注入またはイオン照射を含む成膜方法を用いて
金属酸化物もしくは金属窒化物系セラミックスまたは高
結晶金属からなる薄膜を形成したものである。
【0023】本発明に係る金具においては、下地金属の
表面に形成された薄膜により、下地金属の溶出が防止さ
れ、かつ下地金属の耐久性が保持されるとともに、薄膜
を通して下地金属の質感や光沢を反映した外観が得られ
る。したがって、金属の持つ質感や光沢を損なわずにか
つ耐久性を保持しつつ接触アレルギーを防止することが
できる。
【0024】上記の第1、第2、第3および第4の発明
によれば、下地金属の溶出量が薄膜を形成しない場合に
比べて数分の1から百分の1まで減少した。モルモット
によるアレルギー反応試験においても、金属溶出量とア
レルギー反応性との相関性を確認することができた。そ
れにより、第1、第2、第3および第4の発明により接
触アレルギー反応を防止できること、すなわち本発明の
有用性を証明した。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0026】装飾具としては、ニッケル、クロム、錫、
亜鉛、ステンレス、黄銅、金、銀等の金属製の腕時計、
眼鏡フレーム、ネックレス、指輪、ピアス等の装飾具、
またはプラスチック成形品の表面に上記金属のめっきを
施した装飾具を用いることができる。また、金具として
は、上記金属製の下着用金具、衣服用金具、靴用金具、
手袋用金具等の金具、またはプラスチック成形品の表面
に上記金属のめっきを施した金具を用いることができ
る。
【0027】このような金属製または金属めっき製の装
飾具または金具の表面に、複合イオンビーム装置または
イオン蒸着薄膜形成装置を用いてイオン注入またはイオ
ン照射を伴うスパッタ法または蒸着法により膜厚0.1
μm〜5μmのセラミックス薄膜または高結晶金属薄膜
を形成する。
【0028】セラミックス薄膜としては、TiO2 (酸
化チタン)、Al2 3 (酸化アルミニウム)、SiO
2 (酸化シリコン)、TiN(窒化チタン)、TiAl
N、TiC、SiC、Si3 4 等を用いることができ
る。また、高結晶金属薄膜としては、高結晶金、高結晶
白金、高結晶銀等を用いることができる。
【0029】このようにして、装飾具または金具の表面
に、高い密着性、緻密性および平坦性を有する薄膜が形
成される。この場合、装飾具または金具の表面に対する
薄膜の密着強度は10kg/cm2 以上となる。それに
より、装飾具または金具の下地金属の溶出量が薄膜を形
成しない場合に比べて3分の1以下に低減され、かつ薄
膜の剥離が防止されるとともに、下地金属の質感や光沢
を反映した外観が得られる。
【0030】その結果、汗、体液等による下地金属の溶
出が抑制されることにより接触アレルギーが防止される
とともに、高い耐久性が保持され、かつ下地金属の持つ
質感や光沢が得られる。
【0031】なお、金属製の装飾具または金属製の金具
の場合には、下地金属はそれらの装飾具または金具自体
の金属材料であり、金属めっき製の装飾具または金属め
っき製の金具の場合には、下地金属は金属めっき層であ
る。
【0032】
【実施例】金属接触によりアレルギー反応を示す材料に
は、種々な材料が報告されている。また、アレルギー反
応にも種々の型があり、金属によって発生の場所や発生
の形態が異なる。日用品の金属のうち接触アレルギーと
して最も問題になるのがニッケル、クロム、コバルト材
料などがあげられる。この中でもニッケル製品は、装飾
具の表面めっきとして、また金めっきの下地処理として
多く使用されており、接触皮膚炎の発生事例が多い。
【0033】表1にアレルギー性皮膚炎の発生部位とそ
の原因となった装飾具の事例を示す。
【0034】
【表1】
【0035】そこで、装飾用として多く用いられ、金属
アレルギー反応が発生しやすい材料として純ニッケル材
料、真鍮(黄銅)材料、クロムめっきステンレス(以
下、クロムSUSと呼ぶ)材料、純金材料を選定した。
【0036】金属材料の表面に薄膜を形成する方法には
種々の方法があり、PVD(物理的気相蒸着法)やCV
D(化学的気相蒸着法)などが従来から一般的に利用さ
れている。
【0037】しかし、下地金属に薄膜を単に物理的に蒸
着したのみでは、付着した薄膜の密着性や緻密性がしば
しば問題になることがあり、多くの場合、使用中に薄膜
が剥離して長期間の使用に耐えなかった。
【0038】イオン工学技術を用いた薄膜の形成では、
イオン注入あるいはイオン照射によって装飾具または金
具の金属表面へセラミックス薄膜や高純度薄膜を形成す
ることにより、金属の溶出防止のみならず薄膜の密着性
や緻密性の向上が期待できる。
【0039】(1)薄膜の形成方法 次の成膜装置を用いて下地金属に種々の方法で薄膜を形
成し、薄膜の密着性や緻密性を検討した。
【0040】(A)複合イオンビーム装置 この複合イオンビーム装置は、4元のイオンビームスパ
ッタで多層の成膜や4元合金の成膜を行うと同時に、ア
シスト用イオン源を有し、各種の表面改質や成膜に用い
られる。
【0041】この複合イオンビーム装置を用いてセラミ
ックス薄膜として、TiO2 薄膜およびSiO2 薄膜を
形成した。
【0042】薄膜形成条件は、それぞれの金属材料に対
して、Arスパッタリングによる成膜速度、加速電圧お
よび電流値を最適化し、さらに酸素イオンアシストを行
い、透明性、密着性および緻密性が良好となる条件下で
実施した。
【0043】予備実験の結果、複合イオンビーム装置で
は、下記の条件の前後がピンホール発生密度および薄膜
密着力に優れていることが判った。
【0044】・TiO2 薄膜 電圧:1500V、電流:200mA、O+ イオン照射
あり、蒸着速度:0.2〜2Å/sec ・SiO2 薄膜 電圧:1500V、電流:150mA、O+ イオン照射
あり、蒸着速度:0.5〜5Å/sec (B)イオン蒸着薄膜形成装置(Ion and Vapor Deposi
tion) イオン蒸着薄膜形成装置は、付着させるターゲット材料
を電子ビームによって基板上に蒸着し、同時に酸素やア
ルゴン等のイオンビーム照射を行い、密着性の良い薄膜
を形成するものである。
【0045】このイオン蒸着薄膜形成装置では、多層の
薄膜は形成しにくいが、高純度な薄膜の形成に適してい
ることから、Al2 3 薄膜および高純度の高結晶銀
(Ag)および高結晶金(Au)の形成に用いた。
【0046】予備実験の結果、イオン蒸着薄膜形成装置
では、下記の条件の前後がピンホール発生密度および薄
膜密着力に優れていることが判った。
【0047】・Al2 3 薄膜 電圧:1000V、電流:15mA、O+ イオン照射あ
り、蒸着速度:0.5〜6 Å/sec ・高結晶銀薄膜 電圧:1000V、電流:4mA、Ar+ イオン照射あ
り、蒸着速度:0.5〜6 Å/sec ・高結晶金薄膜 電圧:1000V、電流:4mA、Ar+ イオン照射あ
り、蒸着速度:0.5〜6 Å/sec 図7は物理的蒸着法およびイオン蒸着法によりポリイミ
ドフィルム上に形成された銅薄膜のX線回折スペクトル
を示す図である。図7において、(a)は蒸着のみによ
り形成された銅薄膜のスペクトルを示し、(b)はイオ
ン蒸着により形成された銅薄膜のスペクトルを示す。
【0048】図7(a)に示すように、蒸着により形成
された銅薄膜では、(111)結晶面のピークが小さく
なっており、無定形の金属薄膜が形成されやすいことが
判る。これに対して、図7(b)に示すように、イオン
蒸着により形成された銅薄膜では、(111)結晶面の
ピークが大きく、高結晶性の金属薄膜が形成されること
がわかる。
【0049】図8はイオン蒸着法により種々の条件でシ
リコンラバー上に形成された銀薄膜のX線回折スペクト
ルを示す図である。
【0050】図8に示すように、銀の結晶性はイオン照
射の条件によって変化するが、高結晶の金属薄膜が得ら
れていることがわかる。図8の例では、条件Aで(11
1)結晶面のピークが大きく、高結晶性の金属薄膜が形
成されることが判る。
【0051】以上のことより、イオン蒸着薄膜形成装置
を用いると、高結晶性金属が得られることが判る。
【0052】(C)プラズマCVD装置 比較のために、イオン照射およびイオン注入を伴わない
方法としてプラズマCVD装置を用いた。
【0053】試料を反応槽内にセットし、薄膜を形成す
るための反応性ガスを導入し, ここに高周波電圧を印加
してプラズマ化させ、目的とする薄膜を金属表面に形成
する。
【0054】このプラズマCVD装置は比較的簡単な装
置であるが、目的とする薄膜を容易に形成できることを
特徴としており、メタンガスを用いてDLC(Diamond
LikeCarbon )薄膜を形成するために用いた。概略の成
膜条件は次の通りである。
【0055】・DLC薄膜 高周波電圧:1000V、イオン照射なし、蒸着速度:
0.5〜6Å/sec 上記(A),(B),(C)の装置を用いてニッケル、
クロムSUS、黄銅および金の4種の金属材料に対して
5種類の薄膜を形成した。5種類の薄膜としては下記に
示す材料を用いた。接触アレルギー防止効果を確認する
ため、薄膜の膜厚を各々複数の条件に設定し、上記金属
材料からなる金属板(試験片)の各薄膜を形成し、下記
の実施例および比較例のサンプル(試料)を作製した。
【0056】(a)実施例 TiO2 (酸化チタン)薄膜 薄膜の厚さ:0. 1μm 、0. 5μm 、1. 0μm…サ
ンプルNo.5〜No.16 SiO2 (酸化シリコン)薄膜 薄膜の厚さ:0. 1μm 、0. 5μm 、1. 0μm…サ
ンプルNo.17〜No.28 Al2 3 (酸化アルミナ)薄膜 薄膜の厚さ:0. 1μm 、0. 5μm 、1. 0μm…サ
ンプルNo.29〜No.40 DLC(ダイヤモンドカーボン)薄膜 薄膜の厚さ:0. 1μm 、0. 5μm 、1. 0μm…サ
ンプルNo.41〜No.52 結晶金薄膜(高純度成膜) :黄銅試験片および金試
験片に対して薄膜の厚さ:0. 3μm 、1. 0μm 、
2. 0μm…サンプルNo.53〜No.58 結晶銀(高純度製膜) :ニッケルおよびクロムSU
S試験片に対して薄膜の厚さ:0. 3μm 、1. 0μm
、2. 0μm…サンプルNo.59〜No.64 (b)比較例 薄膜形成なし(未処理)…サンプルNo.1〜N
o.4 TiO2 薄膜 薄膜の厚さ:0.02μm、7.5μm、10.0μm
…サンプルNo.65〜No.76 以上の装置および試験評価用サンプルを作製し、接触ア
レルギー防止効果を検討した。
【0057】(2)評価方法 接触アレルギー防止効果の評価方法として、接触アレル
ギー反応を直接的に測定する方法は、人体実験となり困
難であることから、マウスやモルモット等の動物を用い
て、皮膚に反応性物質を注射したり、貼付けて、皮膚炎
の炎症度合いを調べる方法が考えられている。しかし、
この方法も非常に高濃度の金属塩でなければ評価しにく
く、試験に時間を要し、また再現性を得るのに細心の注
意を要する。
【0058】これらのことから、ここでは、装飾具に形
成した薄膜の外観を評価すると共に、薄膜の表面状態や
密着性より薄膜の良否を評価し、また薄膜が形成された
金属試験片を擬似汗溶液中で加熱抽出し金属溶出量を分
析した。
【0059】その後、金属が溶出された液を高濃度にな
るよう濃縮し、この濃縮液をアレルギー反応試験用に供
し、モルモットの皮膚に貼付け接触アレルギー防止効果
を評価する方法を採用した。以下にその評価方法を示
す。
【0060】(A)成膜品の色相および外観の調査 光学顕微鏡および目視にて調査し、装飾具としての付加
価値を検討した。外観観察に当たり、光線具合により色
相は変化したが、自然光線下で真上から見た状態で観察
した。
【0061】(B)高分解能走査電子顕微鏡 電子顕微鏡にて薄膜の外観を1000倍から数万倍に拡
大して、薄膜の粒子の粗さ、ピンホール、クラック等に
ついて調査した。分析に当たりチャージアップする薄膜
は極表層に50Åの白金蒸着を行い観察した。
【0062】(C)薄膜の密着強度 金属試験片の表面層に形成したセラミックス薄膜と下地
金属との密着強度を求めるため、薄膜表面に対して直径
5mmの鋼棒を垂直にして、エポキシ接着剤で薄膜と棒
鋼とを接着硬化した。その後、金属試験片を治具で固定
して掴み、鋼棒を垂直に引張り試験機で20mm/分で
引き剥がすときの力を求めた。得られた力を鋼棒の接着
断面積で割った値を薄膜の密着強度とした。
【0063】(D)金属溶出量分析 薄膜が形成された下地金属から、どの程度金属溶出が起
きるのか、また薄膜の耐酸性、密着性(温水による剥離
性)、スターラー(攪拌器)による耐摩耗性などを評価
するため、次の方法で試験を行った。
【0064】擬似汗としてPH3. 5の希薄塩酸(0.
2〜3%HC1をNaOHにてPH調整した液)水溶液
を使用し、薄膜が形成された金属試験片を浸漬した。
【0065】溶出液はホットスターラー上で約90℃に
加熱し、スターラーで撹拌しながら24時間金属の溶出
を行った。なお、この条件においては、金属試験片が高
温下でスターラーマグネット(撹拌子)と摩擦し、厳し
い条件下に曝されていることが判った。溶出液について
は、冷却後ICP- MS(イオンクロマト質量分析)法
にて、溶出元素の定量分析を実施した。本分析法の定量
限界は元素によって若干の違いはあるが、約0. 00数
PPMであり、上記の溶出条件下で定量できることを確
認した。
【0066】(E)動物によるアレルギー反応性試験 接触アレルギーは、接触した物質が生体内でその物質に
特異的な反応性を持つTリンパ球(白血球の一種)を刺
激し増殖させ、数日間経た後、再びその物質に触れたと
き、成熟して全身に分布したTリンパ球が過剰に刺激さ
れ、過敏な皮膚反応を起こさせる現象である。
【0067】すなわち、接触アレルギー反応は感作導入
期と発現期(誘発期)の二つの相からなっている。特異
リンパ球が全身に分布し、過剰な皮膚反応が起こりやす
い状態になったことを感作が成立したという。そして、
このような現象を起こさせる物質をアレルゲンと呼ぶ。
【0068】今までの研究から実験動物は人に比べてか
なり感作されにくく、すなわち感受性が劣るといわれて
いる。すなわち、実験動物は、アレルギーに罹りにく
い。
【0069】Maximization testという方法は、多種類
の方法でモルモットに多量に化学物質を与え、人と同じ
感度で化学物質の接触アレルギー感作性を検索できるよ
う開発された方法である。
【0070】この方法では、化学物質を強力な免疫増強
剤であるフロイントと呼ばれる完全アジュバントで乳化
して、皮内注射する感作方法、および化学物質をパッチ
テスト用絆創膏に含ませ皮膚に貼付けにする感作方法
(閉塞貼付法)の2段階の方法で感作を誘導する。そし
て、感作が十分成立した時期に閉塞貼付けによる誘発を
行う。
【0071】ここでは、接触アレルギーを起こしやすい
(感作性の強い)4種の金属からなる金属板(金属試験
片)にTiO2 、SiO2 等のセラミックスの物質で被
膜処理を施すことによって金属の溶出を低下させ、接触
アレルギーの誘発が防止できるかどうかテストする目的
で、擬似汗として塩酸を含む水溶液で未処理の金属試験
片および薄膜が形成された金属試験片から金属を溶出さ
せた。
【0072】未処理および薄膜が形成された試験片から
の金属溶出液は、全体の金属溶出量が多くても数百μg
/ml(PPM)であり、そのままではアレルギー反応
が起きにくい希薄濃度である。
【0073】そこで、数百倍に濃縮した後、Maximizat
ion testで各々の金属に対して十分な感作状態を誘導し
たモルモットに閉塞法で貼付けし、接触アレルギー皮膚
反応が誘発されるだけの量の金属が溶出されているかど
うか検討した。その後、各溶液に対してモルモットにて
アレルギー反応性を評価した。
【0074】(3)評価結果 本発明による接触アレルギー防止効果は、以下の通りで
ある。
【0075】(A)成膜品の色相および外観の調査結果 表2および表3に実施例および比較例のサンプルにおけ
る外観および薄膜の密着強度の評価結果を示す。表2お
よび表3に示すように、各種条件下で薄膜が形成された
金属試験片の外観は、薄膜の材料によって着色するも
の、光の偏光によって虹色に輝くもの、金属光沢を示す
ものなど種々のものが得られた。
【0076】TiO2 薄膜の外観では、TiO2 の膜厚
によって色相が変化する。膜厚が0.1μmでは薄い金
色からグレー色(灰色)を示し、厚くなってくるとニッ
ケル試験片およびクロムSUS試験片では黄銅試験片お
よび金試験片では紫がかった色相を呈することが判っ
た。SiO2 薄膜の外観では、膜厚が薄いと大きな変化
はなく、厚くなってくるとやや青がかった色相を呈す
る。Al2 3 薄膜の外観では、全体として殆ど色相変
化がなく下地金属の本来の外観を呈し良好であった。
【0077】DLC薄膜の外観では、全体に黒ずんだ色
相となり、特に膜厚1. 0μmでは灰色から黒色を呈し
た。高結晶金属薄膜の色相では、金試験片および黄銅試
験片はゴールド色(金色)を示し、ニッケル試験片およ
びクロムSUS試験片はシルバー色(銀色)を示した。
【0078】上記の下地金属の本来の色相に対して、加
熱酸性溶液中での金属溶出試験後の外観は、TiO2
膜が形成された試験片では本来の色相と殆ど変化はなか
った。また、加熱酸性溶液中での金属溶出試験でも薄膜
の剥離もなく良好な密着性および耐久性を示した。
【0079】SiO2 薄膜が形成された試験片では、色
相として若干黒みがかり、やや薄膜の剥離が見られた。
【0080】Al2 3 薄膜が形成された試験片のう
ち、ニッケル試験片および金試験片では殆ど変化がなか
ったが、黄銅試験片とクロムSUS試験片においては、
薄膜の厚さが薄いほど変色し、やや剥離するする傾向に
あることが判った。
【0081】DLC薄膜が形成された試験片では、黒色
度がやや変化し、ニッケル試験片および黄銅試験片にお
いては剥離と変色が現れた。特に黄銅試験片の膜厚0.
5μmの薄膜では変色が著しかった。
【0082】高結晶金属薄膜が形成された試験片のう
ち、黄銅試験片および金試験片はゴールド色で変化なく
剥離もなく良好であった。しかし、ニッケル試験片およ
びクロムSUS試験片に形成された銀結晶薄膜は密着力
がやや不足し、剥離と変色が見られた。
【0083】以上の結果から、TiO2 薄膜、SiO2
薄膜およびAl2 3 薄膜は、膜厚が0. 1μmと薄い
と下地金属の質感をそのまま保持し良好であり、またや
や厚くなると下地金属とやや異なった高級感のある質感
を示し装飾具の材料として問題がないことが判った。色
相が変化しにくい薄膜の順序はAl2 3 >SiO2
TiO2 の順であった。さらに金および銀の高結晶金属
薄膜では、金属そのものの質感を示し良好であった。
【0084】一方、DLC薄膜は黒ずんだ色で用途によ
っては使用できるが、装飾具の材料としてはやや不向き
であった。
【0085】薄膜の膜厚が0.1μmよりも薄い場合、
外観の色相が下地金属の色相から大きく変化しないが、
薄膜の膜厚が5μmよりも厚くなると、外観の色相が下
地金属の色相を示さず、青色や茶色を示し、好ましくな
いことが判った。
【0086】(B)高分解能走査電子顕微鏡の観察結果 試験片に形成された薄膜の微細構造を高分解能走査電子
顕微鏡にて観察し、薄膜の良否を調査した。未処理のニ
ッケル試験片では、圧延時の微細なクラックやピンホー
ルが観察される。クラックはサブミクロンのものからピ
ンホールは数ミクロン径のものが見られた。
【0087】未処理の黄銅試験片では、圧延時に発生し
たと思われるサブミクロンのクラックが非常に多く観察
された。未処理のクロムSUS試験片では、比較的平滑
で僅かなピンホールらしきものが観察された。また未処
理の金試験片では、多くの圧延傷が観察された。
【0088】これら金属材料ごとに外観が異なっている
ことが判り、これを基に金属試験片の薄膜形成後の外観
を検討した。
【0089】TiO2 薄膜が形成された各金属試験片に
おいて、薄膜の厚さが厚くなるほど下地金属の影響は少
なくなった。膜厚0. 5μm以上の薄膜になると成膜材
料の組織が現れてきており、特にクロムSUS試験片で
はTiO2 の0. 5μm位の粒子がはっきり観察され
た。
【0090】SiO2 薄膜が形成された各金属試験片に
おいては、外観的にはTiO2 薄膜の場合と同様の傾向
を示した。クロムSUS試験片では粒子状の結晶ができ
やすいことが判った。ニッケル試験片では膜厚が薄いと
ピンホールが多いが、膜厚が1. 0μm位になるとピン
ホールは減少し、また金試験片ではロール傷が目立ちに
くくなることが判った。
【0091】Al2 3 薄膜が形成された各金属試験片
においては、比較的薄膜の厚さが薄い場合でも下地金属
の影響が出にくいことが判った。薄膜の厚さを厚くする
と各金属試験片共にAl2 3 結晶粒子が出やすくな
り、膜厚1. 0μmの場合にはニッケル試験片、黄銅試
験片およびクロムSUS試験片において0. 3〜2. 0
μmほどの結晶粒子になることが判った。金試験片で
は、非常に平滑な薄膜が得られ、良質な表面処理方法で
あることが判った。
【0092】DLC薄膜が形成された各金属試験片にお
いては、薄膜の厚さが0. 1μmと薄いとピンホールが
発生しやすいことが判った。特に、黄銅試験片では、各
結晶間に隙間が見られ好ましくないが、膜厚が厚くなる
と大きな粒子状の結晶が生成することが判った。金試験
片においては、このような現象が見られず、試験片ごと
に初期の表面状態が異なることから、結晶成長の度合い
が大きく変化することが判った。
【0093】金結晶薄膜が形成された黄銅試験片では下
地金属の悪い状態がそのまま反映されているように思わ
れ、2. 0μm程度の膜厚が必要と考えられる。金結晶
薄膜が形成された金試験片では、下地金属の影響が見え
るのみで大きな変化は観察されなかった。
【0094】銀結晶薄膜が形成されニッケル試験片およ
びクロムSUS試験片のうち、ニッケル試験片では下地
金属のピンホールが観察されるが、クロムSUS試験片
では膜厚が厚くなると球状の銀結晶が観察され、ピンホ
ールも少ないことが判った。
【0095】なお、評価結果には記載していないが、実
施例の各種薄膜の成膜条件を大きくはみ出したものにつ
いては、ピンホールの数が比べものにならないほど多
く、実用的でないと判断した。
【0096】以上のことから、下地金属に全体として緻
密な薄膜を形成をするためには薄膜の膜厚さが0. 5〜
5. 0μm位必要と考えられるが、以下に述べる金属溶
出量やモルモットによるアレルギー反応性試験では膜厚
0. 1μmでも実用的には耐えられることが判った。よ
って、薄膜の蒸着速度をある一定範囲で制御して形成し
た緻密な薄膜は有用と判断した。
【0097】(C)薄膜の密着強度の評価結果 金属試験片の表面層に形成されたセラミックス薄膜の下
地金属に対する密着強度については、表2および表3か
らも判るように、未処理の金属試験片の表面がエポキシ
と最も接着しやすく接着強度が高い。この金属試験片の
表面にセラミックス薄膜を形成すると、未処理の場合に
比べてやや接着強度は低下する。その低下度合いが少な
い方が好ましいのであるが、TiO2 薄膜、SiO2
膜およびAl2 3 薄膜では、強度がやや低下し30〜
60kg/cm2 に留まっている。
【0098】次に、高結晶金薄膜や高結晶銀薄膜では、
密着強度が15〜30kg/cm2と低くなった。しか
し、少なくとも10kg/cm2 以上の密着強度は保持
されており、過激な金属溶出試験においても殆ど剥離す
ることがなかった。
【0099】一方、DLC薄膜では、密着強度が3〜9
kg/cm2 と低く、金属溶出試験でも剥離するものが
多く好ましくないことが判った。
【0100】薄膜の膜厚が0.1μmよりも薄い場合、
密着強度は40kg/cm2 となるが、薄膜の膜厚が5
μmよりも厚くなると、密着強度が同じ材料の金属試験
片に比べて半分以下に低下する。これは、薄膜の膜厚が
厚くなるほど成膜時の残留応力が大きくなるためである
と考えられる。さらに、薄膜の膜厚が厚くなるほど、成
膜時間が長くなり、加工コストが大幅に高くなるため好
ましくない。
【0101】(D)金属溶出量の分析結果 薄膜が形成される各金属試験片について、模擬生理食塩
水中で溶出試験を実施した。
【0102】金属溶出量の定量分析はICP−MS(イ
オンクロマト質量分析)法にて0.01μg/ml(P
PM)オーダーまで分析し、溶出金属の総量を求めた。
それぞれの下地金属の材料の金属元素と、薄膜の主材料
の金属元素について分析を行い、その総量を単位溶液当
たりおよび試験片の面積当たりについて算出した。
【0103】表4および表5に実施例および比較例のサ
ンプルにおける金属溶出試験による各種金属の溶出量の
分析結果を示す。また、表6および表7に実施例および
比較例のサンプルにおける金属溶出後の外観および金属
溶出量の分析結果を示す。
【0104】この結果、表6および表7に示すように、
未処理の黄銅試験片は金属溶出量が数百μg/mlと非
常に大きく、次にニッケル試験片では数十μg/mlと
なり、クロムSUS試験片および金試験片においては
0.数μg/mlと少なかった。特に、金試験片では定
量限界以下であり、殆ど溶出しなかった。
【0105】金属溶出量としては、下地金属(ベース金
属)の金属材料のみならず、薄膜が剥離して脱離した物
も含めて分析しており、トータル金属溶出量として算出
した。
【0106】図1に各種薄膜形成による試験片の面積当
たりの金属溶出量の変化を示す。未処理の黄銅試験片で
は特に亜鉛成分が非常に多く溶出し、次にニッケル試験
片が多いことが判った。これらの黄銅試験片およびニッ
ケル試験片に薄膜を形成することにより金属溶出量が大
幅に低下していることが判る。
【0107】図2に各種薄膜形成による単位溶液当たり
の金属溶出量の変化を示す。溶出重量で未処理の試験片
を除いて比較してみると、図2に示すように、TiO2
薄膜およびAl2 3 薄膜において数μg/mlと溶出
量が少ないことが判った。
【0108】なお、DLC薄膜において、カーボン成分
は本分析手法で測定できないため、全体に少な目にカウ
ントされているが、DLC薄膜の剥離が認められかつ色
相も黒色で本目的には適していないものと考えられた。
【0109】図3にTiO2 薄膜の形成による単位溶液
当たりの金属溶出量の変化を示す。図3に示すように、
TiO2 薄膜において、薄膜の厚さの影響を比較検討し
てみると、ニッケル試験片および黄銅試験片において、
薄膜0. 5μmで金属溶出量がやや大きい傾向にある
が、全体としては大きな有意差は認められなかった。他
のSiO2 薄膜およびAl2 3 薄膜でも同様の結果を
得た。
【0110】薄膜の膜厚が0.1μmよりも薄いと、金
属溶出量が未処理の場合と同程度に増大し、アレルギー
反応防止効果はないものと判断される。薄膜の厚さが5
μmよりも厚くなると金属溶出量は低下する。
【0111】以上の結果、未処理の金属試験片に比較し
てTiO2 薄膜、SiO2 薄膜、Al2 3 薄膜ならび
に高結晶金薄膜が形成された金属試験片では、下地金属
の溶出量が1/3から1/100まで減少し、薄膜の形
成が有効であることが判った。
【0112】このことから、アレルギー反応を起こしや
すい金属の表面にセラミックス薄膜または高結晶金属薄
膜を形成することにより、金属溶出量が大幅に低下し、
接触アレルギー防止に効果があると推定された。
【0113】(E)動物によるアレルギー反応試験の結
果 ハートレー系モルモット雌5週令を購入し、日本農産製
の製品名ラボGダイエットと水を自由に与え、購入後一
週間訓化の後実験に供した。また時々レタスを補給する
と共に、搬入時のストレスで衰弱が認められたモルモッ
トは試験から除外した。試験には各金属抽出液につき1
0匹づつ使用した。
【0114】表8および表9にアレルギー試験用サンプ
ルの金属濃度および接触アレルギー皮膚反応の評価結果
を示す。アレルギー反応試験に先立ち各試験液の容量を
測定した後、pHが極端に低い場合は1N NaOHを
用いてpHが3.5以上になるよう調整した後1. 9m
lに濃縮し、水溶液と皮膚をなじませるために0. 1m
lのジメチルスルホキシド(DMSO;片山化学製)を
5%添加して試験に供した。表8および表9に濃縮後の
金属濃度を示す。
【0115】アレルギー反応試験では、貼付け感作のた
めの4種の金属化合物を調整した。硫酸ニッケルの場合
は40%DMSO水溶液に5%に溶解、三塩化銅の場合
は5%DMSO溶液に5%に溶解、重クロム酸カリウム
の場合は5%DMSO溶液に5%に溶解、三塩化金酸四
水和物の場合は5%DMSO溶液に5%に溶解した。各
0. 2mlの4種の金属化合物水溶液をパッチテスト用
ばん創膏(トリイ薬品製)のリント布に滴下し、電気バ
リカンで毛剃りした背中に貼付けし、テーピングテープ
(ニチバン製;50mm幅)で補強し、閉塞法で48時
間保持した。
【0116】一週間後に4種類の金属化合物の1%リン
酸緩衝液、1%金属化合物を含むフロイントの完全アジ
ュバント(Difco 社製;流動パラフィン、界面活性剤お
よび結核菌よりなり、注射された物質の周囲に感作誘導
の初期に関わる大食細胞を集積させ、物質の拡散を遅延
させる作用がある)とリン酸の乳化物(W/O型)、お
よびフロイントの完全アジュバントの乳化物のみを0.
05mlずつ各二箇所、モルモットの毛ぞりした背中に
皮内注射した。
【0117】さらに、一週間後に閉塞法で貼付けした金
属化合物と同じ濃度で各溶液0. 1mlを滴下し、感作
を補強した。
【0118】アレルギー反応試験における誘発および判
定は次のように行った。一週間後にモルモットの胴体を
電気バリカンおよび電気剃刀で毛剃りした。0. 2ml
の試料をパッチテスト用ばん創膏のリント布に滴下し、
それぞれ特異的な金属に感作されたモルモットに閉鎖貼
付けし、テーピングテープで補強し、24時間保持し
た。陽性対照の金属化合物は貼付けによる感作を行った
ときと同じ溶媒および同じ濃度で使用した。24時間後
にパッチをはがし付着物を水を含んだ綿で拭い落とし、
2時間(誘発26時間後)および24時間(誘発48時
間後)後に次の基準で皮膚反応の評価を行った。また陽
性率(陽性を示したモルモットの匹数)も記載した。
【0119】評点は次の通りである。 肉眼的に変化なし・・・・・・・・・・・・ 0点 軽度またはまばらな紅斑・・・・・・・ 1点 中等度の紅斑・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2点 強度の紅斑および浮腫・・・・・・・・・ 3点 以上の条件でアレルギー反応試験を行った結果、表8お
よび表9に示すように、硫酸ニッケル、三塩化銅、重ク
ロム酸カリウムおよび三塩化金酸四水和物に対する接触
アレルギーの感作は十分に誘導された。以下、モルモッ
トによるアレルギー反応状態を示す。
【0120】Maximization testのマニュアルでも24
時間後の反応を評価するよう求めている。
【0121】パッチ除去24時間後にはニッケルに対し
て70%(7/10)、銅に44.4%(4/9)、ク
ロムに対して100%(8/8)、金に対して77. 8
%(7/9)のモルモットが感作されていた。この比率
はMagnussonとKligmanの報告にまさるとも劣らないも
のである。
【0122】本試験において、特にクロムに対する感作
による反応の大きさは、平均2. 13、陽性率は100
%(8/8)となり強い感作状態が誘導されていた。
【0123】これによって、サンプルに対する接触アレ
ルギーの誘発試験を実施する十分な実験動物が作成でき
たものと考えられる。各サンプルを用いた接触アレルギ
ーの誘発テストでは、未処理のニッケル試験液からの溶
出物では、反応の大きさの平均は0. 3で、陽性率は3
/10であった。しかし、薄膜処理を施したニッケル試
験液の溶出物では全く皮膚反応は誘発されなかった。ニ
ッケルの溶出量は未処理液の方が薄膜処理液より一桁多
く、サンプル中に含まれるニッケル量と皮膚反応は相関
していた。
【0124】黄銅試験液の場合、金属溶出量が少ないに
もかかわらず、未処理および一部の薄膜処理液からの溶
出物でパッチ除去24時間後にわずかに陽性反応がみら
れた。すなわち、未処理液、SiO2 薄膜処理液および
Al2 3 薄膜処理液からの溶出物で反応の平均値が
0. 22、0. 11、0. 11となり陽性率はそれぞれ
2/9、1/9、1/9であった。クロムSUS試験液
の場合は、未処理液からの溶出物のみ陽性の皮膚反応が
誘発された。
【0125】すなわち、パッチ除去24時間後の皮膚反
応の平均は0. 25で陽性率は2/8であった。クロム
の量も未処理液からの溶出量が薄膜処理液より一桁多
く、金属量と皮膚反応誘発能との間に相関性が認められ
た。金試験液関連のすべての液で金の溶出量は極めて少
なく、陽性反応は見られなかった。以上、Maximizatio
n testによって予想以上に低濃度の金属を含有する水溶
液で接触アレルギ−が誘発されることが判明した。
【0126】このことは、人の生体でも汗によって溶出
した金属物質が、濃縮されると少量でも接触アレルギー
が誘発される。
【0127】図4に未処理金属のアレルギー陽性率と金
属溶出量との関係を示す。図4に示すように、未処理の
金属溶出量とアレルギー陽性率との関係では、金属溶出
量の多いものはアレルギー反応が起きやすいことが判
る。
【0128】図5に各種薄膜の形成法とモルモットのア
レルギー平均発生率(皮膚炎発生度)との関係を示す。
試験液の一部で若干高くなっているのが見られるが、大
幅に低下していることが判る。図6に各種薄膜の形成法
とモルモットのアレルギー陽性率との関係を示す。上記
と同様に、試験液の一部で若干高くなっているのが見ら
れるが、大幅に低下していることが判る。
【0129】以上の結果から、4種類の金属試験片(金
属板)に各種の薄膜処理を施すことによって、金属の溶
出量が大幅に低下し、接触アレルギーの誘発が抑えられ
ることが判った。
【0130】(F)評価結果の膜厚依存性 上記のように、薄膜の膜厚が0.1μmよりも薄いと、
色相は大きく変化しないが、金属溶出量が未処理の場合
と同程度に増大し、アレルギー反応防止効果はないもの
と判断される。
【0131】また、薄膜の膜厚が5μmよりも厚くなる
と、外観の色相が下地金属の色相を示さず、青色や茶色
を示し好ましくない。さらに、金属溶出量は減少する
が、薄膜の密着強度が低下し、同じ材料の薄膜と比べて
密着強度は半分以下になってしまう。また、薄膜の膜厚
が厚くなるほど成膜時間が長くなり、加工コストが大幅
に高くなるため好ましくない。
【0132】したがって、下地金属上に形成する薄膜の
膜厚は0.1μm〜5μmとすることが好ましい。
【0133】(G)まとめ 以上のことから、腕時計、眼鏡フレーム、ネックレス、
指輪、ピアス等の装飾具または下着用金具等の金具で接
触アレルギーを起こし、皮膚炎疾患に困っている人に対
して、イオン工学手法を取り入れた本発明に係る方法で
製造された高付加価値な装飾具および金具は非常に有効
であることが判った。
【0134】ステンレス、真鍮、ニッケル、クロム、金
等の各種金属材料に対して, TiO 2 薄膜、SiO2
膜、Al2 3 薄膜等のセラミックス薄膜や高結晶金、
高結晶銀等の高結晶性金属は、下地金属の溶出を大幅に
低減させ、接触アレルギー防止に有効であることが判っ
た。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
【表7】
【0141】
【表8】
【0142】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【図1】各種金属薄膜の形成による面積当たりの金属溶
出量の変化の測定結果を示す図である。
【図2】各種金属薄膜の形成による単位溶液当たりの金
属溶出量の変化の測定結果を示す図である。
【図3】TiO2 薄膜の形成による単位溶液当たりの金
属溶出量の変化の測定結果を示す図である。
【図4】未処理金属のアレルギー陽性率と金属溶出量と
の関係を示す図である。
【図5】各種薄膜の形成法とモルモットの皮膚炎発生度
との関係を示す図である。
【図6】各種薄膜の形成法とモルモットのアレルギー陽
性率との関係を示す図である。
【図7】物理的蒸着法およびイオン蒸着法によりポリイ
ミドフィルム上に形成された銅薄膜のX線回折スペクト
ルを示す図である。
【図8】イオン蒸着法により種々の条件でシリコンラバ
ー上に形成された銀薄膜のX線回折スペクトルを示す図
である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下地金属の表面にイオン注入またはイオ
    ン照射を含む成膜方法を用いて金属酸化物系もしくは金
    属窒化物系セラミックスまたは高結晶金属からなる薄膜
    を形成することを特徴とする装飾具の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記薄膜の厚さが0.1μm以上5μm
    以下であることを特徴とする請求項1記載の装飾具の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記下地金属は、ニッケル、クロム、
    錫、亜鉛、ステンレス、黄銅、金および銀より選択され
    た一または複数の金属材料を含み、前記薄膜は、酸化チ
    タン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、窒化チタン、
    高結晶金、高結晶白金および高結晶銀のいずれかからな
    ることを特徴とする請求項1または2記載の装飾具の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 下地金属の表面にイオン注入またはイオ
    ン照射を含む成膜方法を用いて金属酸化物系もしくは金
    属窒化物系セラミックスまたは高結晶金属からなる薄膜
    を形成することを特徴とする金具の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記薄膜の厚さが0.1μm以上5μm
    以下であることを特徴とする請求項4記載の金具の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 前記下地金属は、ニッケル、クロム、
    錫、亜鉛、ステンレス、黄銅、金および銀より選択され
    た一または複数の金属材料を含み、前記薄膜は、酸化チ
    タン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、窒化チタン、
    高結晶金、高結晶白金および高結晶銀のいずれかからな
    ることを特徴とする請求項4または5記載の金具の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 下地金属の表面にイオン注入またはイオ
    ン照射を含む成膜方法を用いて金属酸化物系もしくは金
    属窒化物系セラミックスまたは高結晶金属からなる薄膜
    を形成したことを特徴とする装飾具。
  8. 【請求項8】 下地金属の表面にイオン注入またはイオ
    ン照射を含む成膜方法を用いて金属酸化物系もしくは金
    属窒化物系セラミクックスまたは高結晶金属からなる薄
    膜を形成したことを特徴とする金具。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3940112A1 (fr) * 2020-07-16 2022-01-19 Richemont International Sa Procede d amelioration d'un materiau de piece horlogere

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EP3940112A1 (fr) * 2020-07-16 2022-01-19 Richemont International Sa Procede d amelioration d'un materiau de piece horlogere

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