JPH1171617A - 焼鈍分離材および珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

焼鈍分離材および珪素鋼板の製造方法

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JPH1171617A
JPH1171617A JP9895398A JP9895398A JPH1171617A JP H1171617 A JPH1171617 A JP H1171617A JP 9895398 A JP9895398 A JP 9895398A JP 9895398 A JP9895398 A JP 9895398A JP H1171617 A JPH1171617 A JP H1171617A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】SiとMnを含有する冷間圧延鋼板と焼鈍分離
材とを交互に積層して焼鈍し、脱炭、脱Mnさせて{1
00}集合組織を発達させた珪素鋼板の効率的な生産を
可能とする焼鈍分離材およびそれを用いる珪素鋼板の製
造方法を提供すること。 【解決手段】粉末状か繊維状の脱炭促進酸化物または脱
炭促進酸化物と脱Mn促進酸化物を有機質結合材を用い
て一体に成形した焼鈍分離材。SiO2 ≧20%、Al
23:0〜65%、TiO2 :0〜65%を含有し直径
20μm以下である酸化物繊維を15%以上含有する上
記焼鈍分離材。さらにTiO2 粉末を15〜60%含有
する焼鈍分離材。焼鈍分離材と素材鋼板とを交互に積層
して焼鈍する珪素鋼板の製造方法。焼鈍分離材を素材鋼
板間に積層する前に、焼鈍分離材を加熱して含有されて
いる有機質結合材を分解除去した後に素材鋼板と積層し
て焼鈍する製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、{100}面が板
面に平行である磁気特性に優れた珪素鋼板を製造する際
に用いられる焼鈍分離材、およびそれを用いる珪素鋼板
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より電動機、発電機、変圧器などの
磁心材料には珪素鋼板が用いられている。この珪素鋼板
に要求される特性は、交流磁界中で磁気的なエネルギー
損失が少ないことと、実用的な磁界中での磁束密度が高
いことである。このような特性を実現するには、磁化容
易方向である体心立方格子の<001>軸が使用磁界方
向に集積した集合組織を形成することが有効とされてい
る。
【0003】図2は珪素鋼板で形成される集合組織を模
式的に示す図である。図2(a)は{110}面が板面
に平行で<001>軸が圧延方向に平行に集積した組織
である。このような組織を持つ珪素鋼板は圧延方向への
磁化が容易であるから、巻き鉄心のように圧延方向のみ
に磁束が流れる用途に適する。このような集合組織を持
つ珪素鋼板は一方向性珪素鋼板と称される。
【0004】図2(b)は{100}面が板面に平行
で、<001>軸が板面内の特定の方向に向かない組織
である。このような組織を持つ珪素鋼板は、回転器機の
鉄心のように板面内の様々な方向に磁束が流れる用途に
好適である。図2(c)は、図2(b)と同じく{10
0}面が板面に平行であるが、<001>軸の向きが圧
延方向と幅方向に集積した組織である。このような組織
を持つ珪素鋼板は、例えばEI型鉄心のように、圧延方
向とそれに直交する方向との二方向に磁束が流れる用途
に好適である。無論巻き鉄心のように一方向にのみ磁束
が流れる用途にも適する。図2(c)に示されているよ
うに、圧延方向と幅方向に<001>軸が集積した集合
組織を持つ珪素鋼板は二方向性珪素鋼板と称される。
【0005】特開平7−173542号公報には、図2
(b)および図2(c)に示したような{100}面が
板面と平行な集合組織を持つ珪素鋼板の製造方法が開示
されている。これは、脱炭促進物質または、脱炭促進物
質と脱マンガン促進物質を、Siを含有した素材鋼板の
間に積層して焼鈍する方法である(以下、この方法を単
に「MRD法」、Manganese Removal Decarburizati
on Process と記す)。
【0006】MRD法の特徴は、素材鋼板を脱炭焼鈍す
る過程でγ→α変態が生じる際に、表面エネルギー的に
安定な{100}面が鋼板の表面に優先的に生成するこ
とを利用し、板面に平行な{100}面をもつ再結晶粒
を選択的に成長させることにある。また、鋼に含有され
るMnが焼鈍中に鋼板表面から昇華する(脱マンガンす
る)際に鋼板表層でγ→α変態が促進され、上述の{1
00}集合組織の発達が促進される。
【0007】MRD法では、これらの脱炭と脱マンガン
を効果的に進めるために、脱炭促進酸化物(例えばSi
2 やCr23)、または、脱炭促進酸化物と脱マンガ
ン促進酸化物(例えばTiO2 、以下、これらの脱炭促
進酸化物と脱マンガン促進酸化物を総称して「反応促進
材」とも記す)を、粉末や繊維の形態にしたり、これら
をさらに板状に成形して鋼板間に挟み込んで焼鈍する。
しかしながら、この様な方法では以下に記すような問題
がある。
【0008】SiO2 やTiO2 は、それら自体には粘
結性がない。このため、粉末状の反応促進材は、鋼板間
に挟み込んでも容易に脱落するため、これらを鋼板間に
安定して保持させるのは困難である。また、水のような
溶媒に粉末を懸濁させて鋼板に塗布して乾燥する湿式塗
布方法も考えられるが、この方法では厚膜塗布が困難で
あり、必要量の反応促進材を鋼板間に保持させることは
難しい。
【0009】セラミック繊維の製造と同様に、反応促進
材を溶融させてノズルから取り出す等の方法で繊維化
し、これを例えばフエルト状に集合させて一体化させる
方法も考えられる。しかしこの場合には、その厚みを相
当厚くしないと剛性が不足して取扱いが不便である。鋼
板間に厚い挿入物を介在させると積層体の鋼板の比率が
低下するために生産効率が悪くなる。反応促進材を長繊
維とし、これを織って布状にして鋼板間に巻き込む方法
も考えられるが、この方法においては織布の製作費用が
高く経済性に劣る。
【0010】以上述べたように、MRD法を実現する重
要な工程である焼鈍作業において、これまでに開示され
ている方法では反応促進材を鋼板間に挟み込む作業の安
定性と効率性に欠けるのが問題であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、上記の問題点を解決し、上記の鋼板の効率
的な生産を可能とする焼鈍分離材およびそれを用いる珪
素鋼板の効率的な製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は下記
(1)、(2)および(3)に記載の焼鈍分離材ならび
に(4)および(5)に記載の珪素鋼板の製造方法にあ
る。
【0013】(1)脱炭促進酸化物または脱炭促進酸化
物と脱マンガン促進酸化物を含有する粉末状および/ま
たは繊維状物質を有機質結合材を用いて一体に成形した
珪素鋼板用の焼鈍分離材。
【0014】(2)重量%で、SiO2 :20%以上、
Al23 :0〜65%、TiO2:0〜65%を含有し
平均直径が20μm以下である繊維状物質を15%以上
含有する上記(1)の焼鈍分離材。
【0015】(3)重量%で、粉末状のTiO2 を15
〜60%含有する上記(1)または(2)の焼鈍分離
材。
【0016】(4)上記(1)、(2)または(3)に
記載の焼鈍分離材と素材鋼板とを交互に積層して焼鈍す
る磁気特性に優れた珪素鋼板の製造方法。
【0017】(5)焼鈍分離材を加熱し、焼鈍分離材に
含有されている有機質結合材の一部または全部を分解除
去した後、素材鋼板間に積層することを特徴とする上記
(4)の珪素鋼板の製造方法。
【0018】本発明の焼鈍分離材の基本となる構成要素
は、(a)反応促進材を含有する繊維状物質および/ま
たは粉末と、(b)焼鈍分離材としての形態を保つため
の有機質結合材である。焼鈍分離材にはさらに、その形
態を確保する目的で、上記(a)および(b)に加え
て、高温で安定な無機物からなる骨材を含有させてもよ
い。
【0019】反応促進材は粉末のみでもよいが、焼鈍分
離材としての形態を保ちやすくするために、繊維の形状
で焼鈍分離材中に15重量%以上含有させるのが好適で
ある。繊維状物質と粉末を複合して含有させても構わな
い。
【0020】反応促進材は、脱炭および脱マンガンなど
の反応を促進する作用を有する酸化物である。脱炭促進
酸化物は、SiO2 などの高温で分解して酸素を発生す
るものから選ばれ、脱マンガン促進酸化物はTiO2
どの鋼板から昇華するMnと反応する性質を有するもの
から選ばれる。
【0021】繊維状物質に含有させる反応促進材として
は、SiO2 のみでもよいが、TiO2 を複合して含有
させるとなお好ましい。繊維状物質には、これらの反応
促進材に加えて、繊維化を容易にするために、さらにA
23などの酸化物を繊維化助剤として含有させてもよ
い。
【0022】骨材としては高温で安定な無機物、例えば
Al23等の酸化物や窒化物、ホウ化物等からなる繊維
や粒子が使用できる。骨材は、例えば繊維として焼鈍分
離材中に混入させることでその形態を維持しやすくした
り、粒子として混入させて、焼鈍分離材中の通気性を向
上させて反応を促進させることができる。
【0023】反応促進材と鋼板とを積層して焼鈍するこ
とにより{100}面が板面と平行に集積した集合組織
を発達させるには、焼鈍される鋼板の面積当たりで10
g/m2 以上、好ましくは30g/m2 以上の量の反応
促進材を鋼板間に挟み込むのが望ましい。この挟み込み
作業を効率的におこなうには、反応促進材を一体に成形
して焼鈍分離材とし、これを鋼板間に挟み込む方法が好
ましい。このような方法で使用される焼鈍分離材として
は、下記のような性能を備えているものが望ましい。
【0024】焼鈍分離材自体の取扱いが容易で、鋼板
間に挟み込む時の作業性や、鋼板と焼鈍分離材との積層
体の取扱いが容易であること。
【0025】焼鈍分離材中での反応促進材の密度が高
く、反応促進材が鋼板間で均一に分布していること。
【0026】鋼板の結晶集合組織の発達を阻害せず、
焼鈍雰囲気を汚染しないもので構成されていること。
【0027】安価に安定して供給できること。
【0028】本発明で用いる反応促進材は無機物である
ので、それ自体には粘結性はない。本発明では、適量の
結合材を用いてこれらを取扱い性の良好な硬さとしなや
かさのある帯状の焼鈍分離材に成形し、コイル状に巻き
取る。これによりその後の作業性が改善され焼鈍作業が
容易に、かつ効率的におこなえる。
【0029】結合材を用いて反応促進材を一体化すれ
ば、鋼板単位面積当たりの反応促進材の挿入量を高めら
れるので脱炭などの反応も促進される。この方法によれ
ば、生産コストの上昇を招かずに、反応促進材を100
g/m2 程度、最大では300g/m2 まで鋼板間に保
持させることができる。
【0030】結合材には有機質を用いるが、焼鈍時に真
空中で高温に加熱した際にこれらの有機質は分解・昇華
する。焼鈍炉内で有機質が大量に分解・昇華すると炉内
の真空度が低下し、{100}面を持つ再結晶粒の優先
的な成長が阻害されるとともに、真空設備など焼鈍設備
の機能も低下する。高温時に鋼板表面との間で反応して
鋼板表面に酸化皮膜が生成し、これが集合組織の発達を
阻害する原因にもなる。従って、焼鈍分離材が鋼板間に
挟み込まれた後は、鋼板間から反応促進材が脱落しない
限り、焼鈍分離材中の有機質結合材は少ない方がよい。
【0031】結合材として分解、昇華する性質を有する
ものを用い、焼鈍分離材が鋼板間に挟み込まれる直前
に、焼鈍分離材を加熱して有機質結合材の一部を分解、
昇華させることにより、不要な有機質結合材を鋼板間に
持ち込まれるのを防止することができる。本発明はこれ
らの考え方を基にして完成されたものである。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に述べる。なお、以下に示す化学組成を表す%表示は重
量%を意味する。
【0033】(a)焼鈍分離材 脱炭促進酸化物:脱炭促進酸化物は、Si酸化物(Si
2 )のような、高温で分解して酸素を発生する物質か
ら選ばれる。SiO2 は1000℃程度の高温で分解し
て酸素を放出する。この酸素が鋼中の炭素と反応してC
Oとなり、Cを鋼中から除去するものと考えられる。こ
れらの反応式をおよびに示す。
【0034】 SiO2 →SiO+O ・・・ O+[C]→CO ・・・ ここで[C]は、鋼板中に固溶しているCを表す(以
下、他の元素についても同様に表示する)。
【0035】また、高温域においてSiO2 が鋼中の炭
素と直接に反応する式に示すような反応によって脱炭
が進行することも考えられる。
【0036】 SiO2 +2C→[Si]+2CO ・・・ このような脱炭促進酸化物としては、SiO2 の他にC
23、TiO2 、FeO、V23、V25、VOな
ど、高温の適切な雰囲気下で比較的不安定になる酸化物
を用いることができる。
【0037】脱マンガン促進酸化物:鋼板中のMnは、
適切な雰囲気中において鋼板表面から昇華し脱マンガン
される。脱マンガン促進酸化物としては、焼鈍中に鋼板
から昇華するMnを吸収できる物質であって、脱炭反応
や、鋼板表面の清浄さを損なわないものが用いられる。
鋼板表面に容易に酸化皮膜を形成する元素を放出するよ
うな物質は不適当である。
【0038】この様な性質を有する物質としては、例え
ば、Ti酸化物(TiO2 )が好適である。鋼板から昇
華したMnはTiO2 と反応して複合酸化物(TiMn
2)を形成し、鋼板表面近傍の雰囲気のMn蒸気圧を
低める効果がある。これによって脱マンガンが促進され
る。脱マンガン促進酸化物はTiO2 の他にSiO2
ZrO2 、Ti23なども好適である。特にSiO2
TiO2 は脱炭も促進する作用があるので、これらは単
独で使用しても脱炭と脱マンガンの双方を促進すること
ができる。
【0039】上記の反応促進材が焼鈍分離材を構成する
主成分である。脱炭や脱マンガン反応を促進するには、
鋼板間に挟み込まれる反応促進材の表面積が大きいこと
が望ましいので、反応促進材は微細な粉末や繊維の形状
にして用いるのがよい。焼鈍分離材に含有させる反応促
進材の形態は、粉末のみでも構わないが、焼鈍分離材の
取扱い性をよくし、適度の硬さとしなやかさを備えさせ
るには繊維状の形態で含有させるのが好適である。
【0040】繊維形状の反応促進材(以下、単に「繊維
状物質」とも記す)は、例えば、所定の組成のものが得
られるように配合した原料を電気炉などで溶融させ、耐
熱性のノズルから流下させた溶融体に高速の空気を吹き
付けて繊維化するセラミック繊維製造方法などにより可
能である。
【0041】繊維状物質には、脱炭促進酸化物を10%
以上含有させるのがよい。この量が10%に満たない場
合には脱炭反応に長時間を要し、生産性がよくないので
好ましくない。より好ましくは、SiO2 を20%以上
含有させる。
【0042】繊維状物質には、必須ではないが、脱炭促
進酸化物に加えて脱マンガン促進酸化物を複合して含有
させると{100}面集合組織の形成がさらに促進され
るので好ましい。しかし、脱マンガン促進酸化物を過度
に含有させると脱炭促進酸化物の含有量が低くなるの
で、その含有量の上限は65%とするのがよい。
【0043】繊維状物質には、必須ではないが、繊維化
を容易にしたり反応促進材の活性度を調整するために、
反応促進材に加えて、高温で安定な無機物、例えばAl
23、CaO、ZrO2 、MgOの酸化物、SiCなど
の炭化物、BNなどの窒化物またはホウ化物等のうちの
1種または2種以上を混合して含有させても構わない
(以下、これらの高温で安定な無機物を「助剤」とも記
す)。助剤としては上記の中でもAl23が好適であ
る。
【0044】助剤を含有させる場合には、1種または2
種以上の合計で10%以上含有させるのがよい。これら
の含有量が10%に満たない場合には繊維化を容易にす
る効果が得られない。助剤の含有量の合計は65%以下
とするのがよい。65%を超えて含有させると脱炭や脱
マンガン促進作用が損なわれることがある。
【0045】繊維状物質の直径は20μ以下とするのが
よい。直径は小さいほど反応促進効果が増すので好まし
いが、実態としては0.5μm以下のものは製造が困難
である。
【0046】焼鈍分離材に適度の硬さとしなやかさを備
えさせるために、焼鈍分離材には繊維状物質を焼鈍分離
材の重量に対して15%以上、さらに好ましくは30%
以上含有させるのがよい。
【0047】焼鈍分離材には、繊維状物質に加えて、粉
末の反応促進材を複合して含有させてもよい。これによ
り、焼鈍分離材の性能を調整することもできる。反応促
進材の粉末は、粒径が100μm以下のものが好適であ
るが、直径が100μm以上、1mm以下のものでも構
わない。直径が100μmを超えると、表面積が減少す
るので反応界面は減少するが、焼鈍分離材内部に適度の
空隙が確保され、通気性が向上して焼鈍する際に有機質
結合材やCOガス等が容易に離脱して反応が促進される
効果がある。
【0048】焼鈍分離材には、骨材として、上述の助剤
と同様の高温で安定な無機物を混入させることができ
る。骨材は、例えば繊維として焼鈍分離材中に混入させ
ることでその形態を維持しやすくしたり、粒子として混
入させて、焼鈍分離材中の通気性を向上させて反応を促
進させることができる。
【0049】有機質結合材:有機質結合材は、粉末状や
繊維状の反応促進材を焼鈍分離材として適切な形態に成
形するために使用される。
【0050】有機質結合材の材質は、100Torr 程度
以下の真空中や、不活性ガス、水素ガス等の非酸化性雰
囲気中で加熱した際の分解温度が100℃以上、より好
ましくは200℃以上であるものがよい。他方、有機質
結合材は600℃に加熱される迄にその大部分が分解し
昇華することが好ましい。600℃以上で鋼板間に未分
解の有機物が多量に存在すると、鋼板表面が過度に酸化
されたり、鋼中への浸炭が生じて{100}集合組織の
発達が阻害されるおそれがある。
【0051】有機質結合材は、焼鈍分離材を保管中に大
気中の水分を吸収しにくく、接触している焼鈍分離材同
士が粘着せず、反応促進材に対する粘結性が維持される
ものがよい。また、保管中に日光などに曝されても容易
に分解しないように、紫外光に対して鈍感な性質のもの
が良い。反応促進材と容易に混合できるものがよく、ま
た、反応促進材と混合させる過程で有毒なガスや廃液を
出さないものがよい。この様な性質を有する合成樹脂系
の粘着剤、ポリビニルアルコール(PVA)、パルプ
(セルロース)等が有機結合材として好適である。
【0052】合成樹脂系の粘着剤としては、ブタジエン
-スチレンやブタジエン-アクリロニトリルなどのゴム系
粘着剤とアクリル系粘着剤が代表的である。ゴム系粘着
剤は熱や光が作用すると劣化する傾向があるので、アク
リル系粘着剤の方がより好ましい。アクリル系粘着剤は
主モノマーがアルキルエステルで、架橋点として反応性
のある官能基(アクリル酸、アクリルアミド、アクリル
酸ヒドロキシルエチル等)を有しており、反応性アクリ
ルバインダとも称される。アクリル系粘着剤としては、
水を溶媒とするエマルジョン型、および酢酸エチルやト
ルエン等の有機溶剤を溶媒とする溶液型のいずれでも構
わない。
【0053】PVAは重合度やけん化度によって種々の
ものがあるが、水への溶解性と粘着性を高めるために、
重合度、けん化度ともに小さいものが好ましく、平均重
合度が200〜900、けん化度が70〜80のPVA
が好適である。パルプは、その製造方法によってメカニ
カルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等に
分類されるがいずれでもよい。
【0054】これらの有機質は単独で結合材として用い
てもよいし、混合して用いても構わない。
【0055】焼鈍分離材中の有機質結合材は、焼鈍時に
は脱炭反応や脱マンガン反応を阻害するので、少なくと
も焼鈍に際しては有機結合材は含有されないか、含有さ
れていてもその量は少ない方がよい。従って焼鈍分離材
に含有される有機結合材の量は、焼鈍分離材が板の形状
を保つことができる量を下限とするのがよい。この下限
は、使用する結合材の種類により異なるので一律に規定
することはできないが、例えばアクリル系エマルジョン
型結合材であれば焼鈍分離材の総重量の内の2〜20%
とするのがよい。焼鈍分離材の重量に占める結合材の重
量比率が20%を超えると、限られた厚さの焼鈍分離材
の中に反応促進材の充填密度が確保できないことがある
うえ、焼鈍炉内が過剰な有機質で汚染される。上記の範
囲内であれば、反応促進材を最大300g/m2 まで充
填することができる。有機質結合材の含有量のより好ま
しい上限は10%である。
【0056】MRD法では、鋼板表面での化学反応によ
り脱炭や脱マンガン等が進行するので、鋼板間への反応
促進材の充填密度が高いほど反応が促進される。反応促
進材の充填密度は10g/m2 以上、好ましくは30g
/m2 以上とするのがよい。他方、充填密度が200g
/m2 を超えると反応促進効果が飽和するうえ、素材鋼
板の体積比率が小さくなりすぎて生産能率が低下するの
で、充填密度は200g/m2 以下とするのがよい。積
層体での鋼板の体積比率を高くするために、焼鈍分離材
の厚さは、1mm以下にするのが好ましい。さらに好ま
しくは0.5mm以下とする。
【0057】有機質結合材を用いて板状に成形した焼鈍
分離材を用いると、反応促進材を鋼板間に挟み込むこと
が容易であるうえ、素材鋼板との積層体の形状が安定し
て以後の焼鈍作業が容易になるうえ、脱炭反応などが均
一に安定しておこなえる。
【0058】本発明の焼鈍分離材は、例えば以下に述べ
るような方法で製造することができる。第1の方法は、
反応促進材を含む繊維状物質および/または粉末と必要
に応じて適量の骨材とを、ウェブと呼ばれる薄い板状に
成形し、これに有機質結合材を含浸させる方法である
(以下、この方法を「乾式法」と記す)。ウェブは、原
料繊維をときほぐし、必要に応じて各種化学組成の繊維
を混配合して成分を調整し、これを機械的に圧縮成型し
て薄い連続シートに成型したものである。粉末は、繊維
状物質をウェブに成形した後に散布して含有させてもよ
い。
【0059】ウェブに有機質結合材を含浸させる方法は
任意であるが、有機質結合材を溶液やエマルジョンなど
の液状にして用いる方法と、粉末として用いる方法が代
表的である。有機質結合材を液状にして含浸させる場合
には、有機質結合材を含む液体中にウェブを浸漬し、圧
搾ローラや減圧吸引方法などにより含浸量を調整する。
有機質結合材の溶液を含浸させたスポンジ状のローラー
間にウェブを通過させたり、有機質結合材液をノズルか
ら噴出させてウェブに塗布する等の方法でもよい。有機
質結合材液を含浸させたウェブは、自然乾燥させればよ
いが、有機質結合材の溶着を促すために電熱や熱風で加
熱乾燥してもよい。
【0060】有機質結合材が粉末の場合には、これをウ
ェブに散布し、電熱や加熱ローラーにより溶融させれば
よい。または、粉末を有機質結合材液に混濁させて、結
合材と共にウェブに含浸させてもよい。
【0061】結合材がアクリル系粘着剤の場合には、水
を溶媒としたエマルジョンや酢酸エチルやトルエンなど
の有機溶剤を溶媒とした溶液を用いる。PVAは水溶液
としてもよいし、粉末として散布することもできる。粉
末の場合は散布後、70℃程度に加熱すれば溶着する。
パルプは、濃いかゆ状になったスラッシュパルプが好適
であり、水分量の調整によりその粘性を調整できる。
【0062】ウェブの機械的強度が不足する場合には、
上記の方法で有機質結合材を含浸させる前にニードルパ
ンチを施すのも好ましい方法である。ニードルパンチ法
はフェルトやカーペットの製造に利用されている方法
で、小さいとげをもった多数の針を上下に動かしてウェ
ブを突刺しウェブ内の繊維を3次元的に絡み合わせて一
体化する方法である。有機質結合材を粉末として用いる
場合には、有機質結合材粉末をウェブに散布してから、
あるいは散布しながらニードルパンチをおこない、粉末
をウェブ内により均一に分散させてから加熱溶融させる
方法も好ましい方法である。
【0063】反応促進材が粉末または微小な短繊維の形
態であるために上述したようなウェブの作製が困難な場
合には、結合材を含有したエマルジョンまたは溶液中に
反応促進材の原料粉末や原料繊維を分散させてスラリと
し、抄紙機を利用してシート状に成型するのがよい(以
下、この方法を「湿式法」と記す)。結合材を含有した
エマルジョンあるいは溶液は前述の乾式方法と同様なも
のが利用できる。抄紙した後にシートを加熱して結合材
の溶着を促進するのも好ましい方法である。
【0064】乾式法あるいは湿式法のいずれにおいて
も、反応促進材が粉末状と繊維状のものとの混合体にな
っていてもよい。
【0065】(b)焼鈍分離材を用いる珪素鋼板の焼鈍
方法 本発明の焼鈍分離材は、珪素鋼板の素材となる冷間圧延
鋼板(素材鋼板とも記す)を焼鈍炉に装入する直前に、
素材鋼板の間に挟み込まれて鋼板と交互に積層される。
素材鋼板と焼鈍分離材を共にコイル状に巻いておき、公
知のコイル処理設備を用いてこれらを交互に重ねて巻き
込むのが作業性に優れるので好適である。切り板状の鋼
板と焼鈍分離材を交互に積み重ねて焼鈍してもよい。
【0066】鋼板と焼鈍分離材からなる積層体は、真空
焼鈍炉で焼鈍される。焼鈍分離材に含有されている有機
質結合材の役割は、反応促進材の充填密度を高めるとと
もに、反応促進材を素材鋼板間で保持し、積層体の形状
を保持することにある。有機質結合材はMRD法の化学
反応自体には不要であるばかりでなく、高温焼鈍域では
かえって有害であることがある。従って、積層体が形成
され、素材鋼板間に必要量の反応促進物が保持された後
は、有機質結合材は無い方が好ましい。
【0067】このため、素材鋼板と焼鈍分離材とが積層
される直前に焼鈍分離材を加熱し、焼鈍分離材が板の形
状を保つ範囲内で焼鈍分離材中に含有されている有機質
を分解除去するのが好ましい。
【0068】過剰の有機質結合材を除去するための加熱
温度や加熱時間の最適範囲は、焼鈍分離材の寸法や、有
機質の含有量などに応じて適宜調整する。しかし、分解
除去の効果を確保するために加熱温度範囲は200〜6
00℃が好ましい。加熱雰囲気は100Torr 程度以下
の真空にするか、非酸化性雰囲気とするのがよい。加熱
時の雰囲気をこのように調整すれば有機質の除去管理が
容易になり、鋼板の脱炭等の反応を安定して生じさせる
のに好適である。
【0069】有機質を除去する時期は焼鈍分離材を素材
鋼板間に巻き込む直前がよい。有機質が除去された焼鈍
分離材は可撓性が低下し、取扱い中に形状が維持できず
以降の取扱いが困難になるおそれがあるので、有機質の
加熱除去と鋼板への巻き込み作業を別の装置でおこなう
のは避けた方がよい。
【0070】短繊維を主体とする焼鈍分離材の場合に
は、鋼板間にこれらが均一に挿入されれば、有機質結合
材が殆ど除去されても繊維の絡み合いによる強度が残存
するため、鋼板間でのズレやコイルの変形等の問題はな
い。しかし、粉末を主体とする焼鈍分離材は、有機質結
合材が除去されると焼鈍分離材としての形状が維持でき
なくなり、コイルが変形したり鋼板間から粉末が脱落し
たりする。従って、この場合には、焼鈍分離材中に一定
量の有機質結合材を残存させた状態で素材鋼板間に巻き
込むのがよい。有機質の残留度合いは加熱温度や加熱時
間を調整することで調節できる。
【0071】図1は、鋼板2に焼鈍分離材1を巻き込む
直前に焼鈍分離材を加熱し、過剰の有機質結合材を除去
するのに好適なコイル巻き戻し設備の概念を示す図であ
る。この設備では、巻取リール5の直前に加熱装置3が
設けられており、焼鈍分離材1はこの加熱装置3を通過
する間に所定温度に加熱されて過剰の有機質結合材が除
去される。加熱方法(図示せず)はガス加熱や電気加熱
方式など一般的に用いられている方法でよい。コイル巻
き戻し設備には、上記の装置の他に、コイルを効率的に
処理するための張力制御装置や、鋼板を洗浄し乾燥する
装置など通常設けられるコイル処理装置(図示せず)を
備えているのが望ましい。
【0072】
【実施例】
(実施例1)真空溶解により表1に示す化学組成の鋼を
溶解し、鋳造して複数個の鋼塊を作製した。
【0073】
【表1】
【0074】これらの鋼塊を熱間鍛造して厚さ20m
m、幅300mmの鋼片とし、熱間圧延して厚さ3m
m、幅300mmの熱間圧延鋼板とし、表面のスケール
を除去した後、中間焼鈍をはさんだ2回の冷間圧延によ
って、厚さ0.35mm、幅300mm、長さ100m
の素材鋼板を複数コイル製造した。
【0075】焼鈍分離材の主構成要素である反応促進材
には、1例(試験番号12)を除いて、長さ5mm前
後、平均直径が5μmのSiO2 とAl23とが混合さ
れたムライト系の酸化物からなる短繊維と、粒径10μ
m前後のTiO2 粉末を用いた。有機質結合材にはアク
リル系エマルジョン型粘着剤、ポリビニルアルコール
(PVA)またはパルプをそれぞれ単独で用いた。
【0076】アクリル系エマルジョン型粘着剤は、ブチ
ルアクリレートを主モノマーとし、これに酢酸ビニル、
メタクリル酸、アクリル酸等を添加したものである。ア
クリル系エマルジョン型粘着剤を用いた焼鈍分離材は乾
式法で作製した。すなわち、上記の酸化物繊維から作製
した厚さ0.5mm、幅300mm、長さ100mのウ
ェブにTiO2 粉末を散布し、水を溶媒としたアクリル
系粘着剤のエマルジョンに浸漬して結合材を含浸させ、
その後、乾燥して焼鈍分離材とした。
【0077】有機質結合材としてのPVAには紡糸法に
より作製した長さ2mm前後の短繊維を用いた。パルプ
は化学的な方法により繊維質を取り出したケミカルパル
プをかゆ状にしたスラッシュパルプを用いた。これらの
PVAまたはパルプを用いた焼鈍分離材は湿式法で作製
した。すなわち、上記の酸化物繊維とTiO2 粉末とP
VA短繊維あるいはスラッシュパルプを水に混濁させて
よく撹拌混合し、抄紙機により厚さ0.5mm、幅30
0mm、長さ100mの焼鈍分離材を作製した。各結合
材を用いた焼鈍分離材はいずれも複数個製造し、コイル
状に巻き取った。試験番号12については、SiO2
長繊維を織布にし、TiO2 粉末とスラッシュパルプを
混合した液を含浸させて、これを積層して作製した焼鈍
分離材を用いた。焼鈍分離材の寸法は上記の寸法と同じ
にした。これらのコイル状に巻いた焼鈍分離材は、図1
に示すコイル処理設備を用いて素材鋼板間に巻き込ん
だ。なお、本実施例では加熱装置3は使用しなかった。
【0078】素材鋼板に焼鈍分離材を巻き込んだコイル
状の積層体は、炉内寸法:幅60cm、奥行き90c
m、高さ60cm、排気速度:600リットル/秒(公称
値)のロータリー式真空ポンプを備えた真空焼鈍炉に装
入し、10-2Torr の真空中で1℃/分の加熱速度で1
075℃まで昇温し、24時間の均熱をおこなった。均
熱終了後同じ真空雰囲気中で室温まで炉内で冷却した。
その後、コイル巻き戻し装置を利用して焼鈍済のコイル
を展開し、焼鈍分離材を除去し、結晶集合組織測定用の
試験片を採取した。
【0079】(比較例1)実施例1に記載したのと同様
の素材鋼板を使用し、図1に示すコイル処理装置におい
て、一体成形した焼鈍分離材を使用しないで、有機質結
合材を含有しない焼鈍分離材を篩を用いて素材鋼板表面
に堆積させてコイル状に巻取った。これらのコイルは実
施例1に記載したのと同じ条件で真空焼鈍し、コイル巻
き戻し装置を利用して焼鈍済のコイルを展開し、焼鈍分
離材を除去し、結晶集合組織測定用の試験片を採取し
た。
【0080】素材鋼板間に巻き込まれた反応促進材の充
填密度は、焼鈍分離材作製時に使用した反応促進材の使
用量と鋼板の面積から計算した。結合材の含有量は、焼
鈍分離材を成形する前後の重量差を求め、乾燥後の焼鈍
分離材の重量に対する割合を計算した。
【0081】作業の状況と積層体の仕上がり状況を以下
の基準で判定した。
【0082】コイルの外観形状:外観形状が良好なもの
は○、巻緩み巻き乱れがひどくて以降の作業に支障が生
じた場合を×とした。
【0083】作業性:通常の鋼板巻取時と同程度の作業
性で焼鈍分離材の巻き込みが可能であった場合は○、す
べりが生じて巻取作業が円滑におこなえなかった場合を
×とした。
【0084】反応促進材の保持状況:鋼板間からの脱落
がなければ○、反応促進材が鋼板間から脱落した場合を
×とした。
【0085】結晶集合組織測定用の試験片は、板幅の中
央部から採取した30mm×30mmの小片である。こ
れらの小片の板厚の2/5の位置においてX線回折法に
よる積分強度測定を行い、{200}面反射の積分強度
を、ランダム試料に対する倍率として求めた。
【0086】表2に焼鈍分離材の構成内容、および、積
層体の外観形状、作業性、反応促進材の保持状況、焼鈍
後の鋼板の結晶集合組織等を示した。
【0087】
【表2】
【0088】表2の試験番号1〜9に示されているよう
に、本発明の焼鈍分離材は、いずれも連続的にコイルへ
巻き込み、鋼板と焼鈍分離材を積層してコイルとするこ
とができた。また、いずれも強い{100}集合組織が
形成されていた。
【0089】有機質結合材の量が多かった試験番号10
および11では、コイルの外観形状や作業性は良好であ
ったが、{100}集合組織がやや弱かった。これは、
焼鈍中に分解、昇華した有機物が鋼板コイルの層間から
十分には抜け切れず、MRD法の表面化学反応がやや阻
害されたためと考えられる。
【0090】長繊維のSiO2 にパルプを結合材とし、
さらにTiO2 粉末を混入させた焼鈍分離材を用いた試
験番号12においても、焼鈍後の鋼板には強い{10
0}集合組織が形成されていた。しかし、長繊維のSi
2 による織布製の焼鈍分離材は、他の実施例で使用し
た短繊維製の焼鈍分離材に比較して著しく高価であった
ので、この方法は大規模な工業生産には不適と判断され
た。
【0091】TiO2 粉末は、その分子構造によってア
ナターゼ型とルチル型があるが、脱炭および脱マンガン
の効率にはこれらTiO2 の分子構造の違いの影響は認
められなかった。
【0092】有機質結合材を使用しなかった試験番号1
3〜15では、焼鈍分離材巻き込み作業時に鋼板間でス
リップが生じ、コイルの巻き乱れや反応促進材の脱落が
生じ、焼鈍分離材の巻き込み作業性がよくなかった。ま
た、これらのコイルを焼鈍した結果得られた鋼板の{1
00}集積度は極めて弱いものであった。
【0093】(実施例2)実施例1と同じ溶鋼から同様
の条件で、熱間圧延、冷間圧延して、厚さ0.35m
m、幅300mm、長さ100mの素材鋼板を複数コイ
ル製造した。反応促進材としてのSiO2 およびTiO
2 と、助剤としてのAl23その他の酸化物を種々の割
合で混合して高温溶解し、種々の組成の繊維状物質を作
製した。繊維の長さは約5mmであり、その平均直径は
3〜5μmであった。これらの反応促進材と有機質結合
材の構成からなる、厚さ0.5mm、幅300mm、長
さ100mの焼鈍分離材を抄紙法で製造しコイル状に巻
いた。
【0094】これらの素材鋼板と焼鈍分離材のコイル
を、図1に示すコイル処理装置を用いて鋼板のコイルに
焼鈍分離材を巻き込んで積層体を作製した。加熱装置3
は使用しなかった。これらの積層コイルは実施例1に記
したのと同様の条件で真空焼鈍し、雰囲気中で室温まで
炉内で冷却した。その後実施例1に記したのと同様の方
法で焼鈍済のコイルを展開し、焼鈍分離材を鋼板から除
去し、結晶集合組織測定用の試験片を採取し、X線回折
法による積分強度測定をおこなった。
【0095】これらの試験条件および評価結果を表3に
示した。
【0096】
【表3】
【0097】表3の試験番号21〜28の結果に示され
ているように、Al23その他の酸化物を助剤として含
有する場合でも良好な結果が得られた。しかし助剤とし
てはCaOを含有しないか、含有してもその含有量が少
ない方が集合組織の集積度が高く良好であった。また、
CaO含有量が多くTiO2 含有量が少なかった試験番
号28、TiO2 を含有しなかった試験番号29などは
{100}集積度が劣った。
【0098】(実施例3)実施例1と同じ溶鋼から同様
の条件で、熱間圧延、冷間圧延して、厚さ0.35m
m、幅300mm、長さ100mの冷間圧延鋼板を複数
コイル製造した。
【0099】また、表4に示す反応促進材と有機質結合
材の構成からなる、厚さ0.5mm、幅300mm、長
さ100mの焼鈍分離材を製造しコイル状に巻いた。繊
維状物質として長さ5mm前後、平均直径が5μmのS
iO2 とAl23とが混合されたムライト系の酸化物か
らなる短繊維を使用し、これに粒径10μm前後のTi
2 粉末を用い、実施例1で使用したものと同様の有機
質結合材を用いて実施例1と同様の方法で焼鈍分離材に
成形した。
【0100】これらの鋼板コイルと焼鈍分離材のコイル
を図1に示す焼鈍分離材用の加熱装置を設けたコイル処
理装置を用いて、鋼板のコイルに焼鈍分離材を巻き込ん
で積層した。この内の半数(試験番号21、22、2
3)は、還元性雰囲気保った加熱装置3に設けられたガ
スバーナーを用いて焼鈍分離材を300〜400℃に5
秒間加熱し、有機質結合材を分解除去した。残りの半数
(試験番号24、25、26)は加熱装置3を使用せ
ず、有機質結合材を除去しなかった。巻取リール5で巻
取られた積層コイルは、いずれも巻緩みや巻き乱れがな
く、巻き姿が良好なコイルが得られた。
【0101】得られた積層体は、真空焼鈍炉にて10-2
Torr の真空中で1075℃に24時間保持する焼鈍を
おこない、焼鈍開始段階での真空度の測定と、焼鈍後の
炉内壁の目視検査を行った。用いた焼鈍炉は炉内寸法:
幅60cm、奥行き90cm、高さ60cm、ロータリ
ーポンプの排気速度は600リットル/秒(公称値)の真空
焼鈍炉であり、1075℃までの昇温速度は1℃/分で
おこなった。
【0102】結合材が焼鈍中に蒸発するために生じる炉
内の真空度の悪化度合い、悪化した真空度が1×10-2
Torr に回復するまでに要した時間、焼鈍後の炉内壁の
汚れ状況の目視検査結果、および実施例1と同様に測定
した、{100}集合組織の集積度測定結果等をまとめ
て表4に示した。
【0103】
【表4】
【0104】表4の評価結果欄に示されているように、
本実施例においては、いずれの焼鈍分離材でも集積度の
高い{100}集合組織が発達していた。コイルへの巻
き込み直前に加熱処理を施し、過剰の有機質を除去した
焼鈍分離材を鋼板に巻き込んで焼鈍した場合には、真空
焼鈍炉内の真空度の悪化が軽減され、短時間で所定の真
空度に回復した。焼鈍炉の汚染も軽微であった。しか
し、加熱処理を施さず、板状に成形したままの焼鈍分離
材を鋼板に巻き込んで焼鈍した場合には、真空焼鈍炉内
の真空度の悪化が大きく、所定の真空度に回復させるの
に長時間を要した。また、焼鈍炉の汚染も多く、炉内に
は炭化物の固着も認められ作業後には真空装置などの手
入れが必要であった。
【0105】
【発明の効果】本発明の焼鈍分離材は脱炭や脱マンガン
促進酸化物を含有する一体成形品であり、容易に鋼板間
に巻き込み積層させることができる。この焼鈍分離材を
使用すれば、焼鈍分離材を巻き込んだ鋼板コイルの巻き
姿が良好であり、脱炭や脱マンガンが迅速かつ均一にお
こなえるので、集合組織の集積度が極めて高い珪素鋼板
を安定してかつ効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板コイルに焼鈍分離材を巻き込む直前に焼鈍
分離材を加熱して過剰の有機質結合材を除去するのに好
適なコイル巻き戻し設備の概念を示す図である。
【図2】珪素鋼板の集合組織の例を模式的に示す図であ
る。
【符号の説明】
1・・・焼鈍分離材、2・・・素材鋼板、3・・・加熱
装置、4・・・焼鈍分離材巻出し用リール、5・・・巻
取リール、6・・・鋼板巻出し用リール

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】脱炭促進酸化物または脱炭促進酸化物と脱
    マンガン促進酸化物を含有する粉末状および/または繊
    維状物質を有機質結合材を用いて一体に成形した珪素鋼
    板用の焼鈍分離材。
  2. 【請求項2】重量%で、SiO2 :20%以上、Al2
    3:0〜65%、TiO2 :0〜65%を含有し平均
    直径が20μm以下である繊維状物質を15%以上含有
    する請求項1に記載の焼鈍分離材。
  3. 【請求項3】重量%で、粉末状のTiO2 を15〜60
    %含有する請求項1または2に記載の焼鈍分離材。
  4. 【請求項4】請求項1、2、または3に記載の焼鈍分離
    材と素材鋼板とを交互に積層して焼鈍する磁気特性に優
    れた珪素鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】焼鈍分離材を加熱し、焼鈍分離材に含有さ
    れている有機質結合材の一部または全部を分解除去した
    後、素材鋼板間に積層することを特徴とする請求項4に
    記載の珪素鋼板の製造方法。
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