JPH05320768A - 磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法

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JPH05320768A
JPH05320768A JP4151590A JP15159092A JPH05320768A JP H05320768 A JPH05320768 A JP H05320768A JP 4151590 A JP4151590 A JP 4151590A JP 15159092 A JP15159092 A JP 15159092A JP H05320768 A JPH05320768 A JP H05320768A
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annealing
steel sheet
decarburizing
sheet
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俊郎 富田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気特性の優れた珪素鋼板を工業的に製造す
る。 【構成】 Cを0.02〜1%、Siを0.2〜6.5%含
み、更に必要に応じてMnを5%以下で、脱炭が完了し
たときにα−フェライト単相となる焼鈍温度域が850
℃以上となるように含んだ冷間圧延鋼板を弱脱炭性雰囲
気で第1次脱炭焼鈍する。第1次脱炭焼鈍をタイトコイ
ル焼鈍とし、その焼鈍分離材として無機繊維シートを用
いる。第1次脱炭焼鈍後の鋼板を強脱炭性雰囲気で第2
次脱炭焼鈍する。第1次脱炭焼鈍で鋼板表層部に生じた
板面垂直方向に〈100〉軸をもつα−フェライト粒
が、第2次脱炭焼鈍で板厚中央部へ向けて成長する。無
機繊維シートは、鋼板表層部でのα−フェライト粒の生
成および成長に寄与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、板面垂直方向に〈10
0〉軸が高密度に集積した磁気特性の優れた無方向性珪
素鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】無方向性珪素鋼板のなかでも、板面垂直
方向に〈100〉軸が高密度に集積したものは、良好な
磁気特性を示す。その工業的規模での実施に適した製造
方法として、2段階の脱炭焼鈍を用いるものが本発明者
により開発されている(特開平1−108345号公
報)。
【0003】この無方向性珪素鋼板の製造方法は、重量
比でCを0.02〜1%、Siを0.2〜6.5%を含み、更
に必要に応じてMnを5%以下で、且つ脱炭が完了した
ときにα−フェライト単相となる焼鈍温度域が850℃
以上となるように含んだ板厚0.05〜5mmの冷間圧延
珪素鋼板を素材とし、これを第1次脱炭焼鈍(通常は弱
脱炭性雰囲気焼鈍)して、鋼板表層部に板面垂直方向に
〈100〉軸を持つα−フェライト粒を生成させ、次い
で第2次脱炭焼鈍(通常は強脱炭性雰囲気焼鈍)によ
り、前記α−フェライト粒を板厚中心部へ向けて成長さ
せて、板面垂直方向に〈100〉軸が高密度に集積した
無方向性珪素鋼板を製造する。
【0004】この製造方法では、鋼板表層部に板面垂直
方向に〈100〉軸を持つα−フェライト粒を生成させ
る第1次脱炭焼鈍が特に重要である。第1次脱炭焼鈍で
のα−フェライト粒の生成要因は、弱脱炭雰囲気中での
緩やかな脱炭によって鋼板表層部にγ−α変態を発生さ
せて、ここにα−フェライト粒だけからなる領域を形成
すること、更にそのα−フェライト粒のうち板面垂直方
向に〈100〉軸をもつものを、{100}面が最安定
となる表面エネルギーによって選択的に成長させること
の2つとされている。
【0005】従って、第1次脱炭焼鈍での鋼板表面近傍
の雰囲気が、脱炭雰囲気と表面エネルギーの双方を通し
て製品の特性に強く影響する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この第1次脱炭焼鈍で
は、鋼板表層部に板面垂直方向に〈100〉軸をもつα
−フェライト粒を生成させるため、通常は850℃以上
で1時間以上の条件が採用される。このような高温長時
間の焼鈍は、連続焼鈍では鋼板速度が小さくなって非効
率であり、工業的にはコイルに巻いてのバッチ焼鈍とな
る。その際、850℃以上の高温では、珪素鋼の強度が
非常に小さくなるので、隙間をあけて鋼板を緩く巻く
と、そのコイルが鋼板自重で座屈変形する。したがっ
て、板間に焼鈍分離材を挟んで鋼板を固く巻いたタイト
コイルが必要となる。
【0007】しかし、タイトコイル焼鈍では、狭い板間
の雰囲気を炉内雰囲気に一致させることが本質的に難し
い。しかも、焼鈍分離材として用いられている無機物粉
末は、板間に充填させるためにアルコール等の溶剤を必
要とし、その蒸気による雰囲気への悪影響もある。その
ため、鋼板表面近傍の雰囲気管理が重要な前記第1次脱
炭焼鈍にこのタイトコイル焼鈍を用いても、希望する磁
気特性の無方向性珪素鋼板を得ることは難しい。
【0008】本発明の目的は、第1次脱炭焼鈍でのコイ
ルの変形を防ぎ、且つ鋼板表層部に板面垂直方向に〈1
00〉軸をもつα−フェライト粒を高密度に生成させる
ことができる磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1次脱炭焼鈍におい
て、鋼板表面部に板面垂直方向に〈100〉軸を持つα
−フェライト粒を高密度に生成させるためには、その詳
細な生成機構を明らかにする必要がある。本発明者はこ
の生成機構についての調査を続けた結果、次のような知
見を得た。
【0010】鋼板表層部にα−フェライト粒だけからな
る領域を形成するための緩やかな脱炭は、バッチ焼鈍で
は、脱炭によって生じたCOガスをコイル外へ排出させ
続けることで達成される。珪素鋼板がMnを含む場合、
そのMnはγ相を安定化することで知られるが、第1次
脱炭焼鈍では鋼表面から昇華し、鋼板表層部のMn量を
内部に比して低下させることで、鋼板表層部におけるγ
→α変態を促進する。タイトコイル焼鈍での焼鈍分離材
としてAl2 3 ,SiO2 等の焼鈍温度域で安定な無
機物からなる繊維のシートを使用した場合、脱炭によっ
て生じたCOガスのコイル外への排出が促進されると共
に、鋼板表面から昇華したMnがこのシートに吸着さ
れ、Mnの昇華が促進される。
【0011】また、この無機繊維シートは、従来の焼鈍
分離材である無機物粉末と異なり、アルコール等の溶剤
を必要とせず、取扱い性が良く、溶剤の蒸発による雰囲
気への悪影響もないこと、特に真空焼鈍の際に生じ易い
分離材の板間からの脱落がないこと、容易に鋼板に重ね
てコイル状に巻けること、高温に加熱しても柔軟性を失
わず、再使用が可能であることなど、工業規模での焼鈍
に使用する分離材として優れた適性を示すことも明らか
になった。
【0012】本発明はかかる知見に基づきなされたもの
で、重量比でCを0.02〜1%、Siを0.2〜6.5%を
含み、更に必要に応じてMnを5%以下で、脱炭が完了
したときにα−フェライト単相となる焼鈍温度域が85
0℃以上となるように含んだ板厚0.05〜5mmの冷間
圧延珪素鋼板を第1次脱炭焼鈍して、鋼板表層部に板面
垂直方向に〈100〉軸を持つα−フェライト粒を生成
させ、次いで第2次脱炭焼鈍により、前記α−フェライ
ト粒を板厚中心部へ向けて生成させる珪素鋼板の製造方
法において、前記脱炭焼鈍の少なくとも第1次脱炭焼鈍
をタイトコイル焼鈍とし、且つ、その焼鈍分離材として
無機繊維シートを使用することを特徴とする磁気特性の
優れた珪素鋼板の製造方法を要旨とする。
【0013】
【作用】以下に本発明を鋼板成分、鋼板製法、集合組織
制御焼鈍の順で詳述してその作用を明らかにする。
【0014】○ 鋼板成分 C:最終焼鈍において脱炭にともなうγ→α変態を利用
した集合組織制御を行うために、最終焼鈍前の段階で0.
02%以上、好ましくは0.05%以上の含有を必要とす
る。上限は脱炭時間を抑えるために1%、好ましくは0.
5%、さらに好ましくは0.3%とする。最終焼鈍後の段
階では磁気特性を劣化させないために0.01%以下、好
ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以
下とする。
【0015】Si:磁気特性、機械的性質確保のために
0.2%以上、好ましくは1%以上の添加を必要とする。
上限は脆化および磁束密度の低下を抑えるために6.5
%、好ましくは5%、より好ましくは4%とする。
【0016】Mn:電気抵抗を増大させ渦電流損失を低
下させるためと、γ相温度域を拡大しγ→α変態利用の
集合組織制御を容易にするために添加することが望まれ
る。添加する場合は0.5%以上が好ましく、0.8%以上
がより好ましいが、いずれにしても脱炭が完了したとき
に実質的にα−フェライト単相となる脱炭焼鈍域が85
0℃となる量を最大限として添加する。これはMnを多
量に添加すると、脱炭が完了したときに実質的にα−フ
ェライト単相となる焼鈍温度域が低下し、焼鈍温度を極
端に低くしなければならなくなるためである。なお、S
i量が高い場合はMnを多量に添加しうるが、磁束密度
を低下させるため5%を超えないようにする。ここで実
質的にα−フェライト単相となるとはMnS,AlN等
の微量な第二相が存在しても良いことを意味する。
【0017】C,Si,Mn以外の成分で本発明を損な
わず添加できるものは、例えば以下のとおりである。 Al≦3% W,V,Cr,Co,Ni,Mo≦1% Cu≦0.5% Nb≦0.5% N ≦0.05% S ≦0.5% Sb,Se,As≦0.05% B ≦0.005% P ≦0.5%
【0018】○ 鋼板製法 圧下率10%以上、好ましくは30%以上、より好まし
くは50%以上の冷間圧延を施すものであれば製造方法
は問わない。通常は連続鋳造−熱間加工−冷間圧延の工
程による。この場合、加工間に1回または複数回の焼鈍
をはさむことを阻げない。連続鋳造による方法以外に
は、例えば50mm以下の板厚に直接凝固させた薄スラ
ブもしくは溶湯超急冷法による極薄板を直接または熱間
加工後に冷間圧延する方法でもよい。なお、ここで冷間
圧延とは再結晶の生じない500℃以下の圧延をいう。
【0019】圧延後の板厚については、これが厚いと内
部まで脱炭するのに長時間を要し、また渦電流損失が増
大するので5mm以下とし、好ましくは1mm以下、よ
り好ましくは0.5mm以下である。下限は十分に集積し
た{100}集合組織とするため0.05mmとし、好ま
しくは0.1mm、より好ましくは0.15mmである。
【0020】○ 集合組織制御焼鈍 脱炭が完了したときにα−フェライト単相となる温度域
で行う。上限温度は工業的には1200℃である。この
焼鈍は、鋼板表層部に板面垂直方向に〈100〉軸をも
つα−フェライト粒を生成する第1次脱炭焼鈍と、この
α−フェライト粒を板厚中心部へ向けて成長させる第2
次脱炭焼鈍の2プロセスからなる。
【0021】第1次脱炭焼鈍は、タイトコイルによるバ
ッチ焼鈍とする。タイトコイル焼鈍は、工業的に効率よ
くα−フェライト粒を生成させ、且つコイルの鋼板自重
による座屈変形を防止する。
【0022】タイトコイルの板間に挟む焼鈍分離材とし
ては、無機繊維シートを使用する。無機繊維シートと
は、焼鈍上限温度(工業的には1200℃)までの温度
域で安定な無機物質の繊維を柔軟性に富むシートとした
ものである。無機物質としては、例えばAl2 3 ,S
iO2 ,TiO2 ,W2 3 などの酸化物、SiNやB
Nなどの窒化物を挙げることができる。シートは、1種
類の無機物質からなるものでも、2種以上の無機物質を
混合したものでもよい。10%以内で無機物質以外のも
のを含有してもよいが、より優れた磁気特性を得るため
には、不純物の含有量は3%以下がよく、より好ましく
は1%以下である。石綿やアスベスト等も無機繊維シー
トの範疇に入るが、高温でより安定なAl2 3 やSi
2 等を主体とするものの方が好ましい。無機繊維シー
トを得る方法としては、径が100μm以下の無機繊維
を圧縮してシート状とする方法や、その無機繊維をシー
トに織る方法が一般的である。後述する実験(実施例
1)に使用した無機繊維シートは、東芝モノフラックス
(株)から販売されているフィバーフラックス(商品
名)で、Al2 3 とSiO2 をほぼ1:1の比で含有
しており、外観はアスベストに近く織物ではない。通常
は築炉等に使用される。
【0023】第1次脱炭焼鈍の雰囲気は、通常は弱脱炭
性とし、具体的には真空または弱酸化性雰囲気等であ
る。真空度は10-1Torrより高真空が良い。弱酸化性の
雰囲気は、例えば露点0℃以下のH2 ,He,Ne,A
r,Kr,Xe,Rn,N2 の1種または2種以上の雰
囲気である。このような雰囲気は、鋼板表面から緩やか
な脱炭を生じさせてその表層部にα単相域を形成すると
共に、α相の{100}面の表面エネルギーを低下させ
て板面垂直方向に〈100〉軸を持つα粒を優先的に成
長させる。そして、最終的には鋼板表面から5〜100
μmの深さの領域に、板面垂直方向に〈100〉軸を高
密度に持つα単相域を形成する。焼鈍温度は850℃以
上が望ましく、焼鈍時間は1〜48h程度が望ましい。
【0024】第1次脱炭焼鈍での焼鈍分離材として前記
無機繊維シートを使用することにより、脱炭によって板
間に生じるCOガスを効率よくコイル外へ排出するため
の空間が板間に確保される。その結果、鋼板表面近傍の
雰囲気が炉内雰囲気に近づき、鋼板表面からの緩やかな
脱炭が安定的に継続されて、鋼板表層部での板面垂直方
向に〈100〉軸を持つα粒組織の形成が促進される。
また、Mnを添加された鋼板の場合は、鋼板表面から昇
華するMnが無機繊維シートに吸着され、Mnの昇華が
効率的に生じる。このMnの昇華は、鋼板表層部でのM
n量を低下させ、ここでのα相を安定化させてα単相化
を促進する。無機繊維シートの厚みは0.1〜5mmが望
ましい。0.1mm未満では、無機繊維シートの強度が低
下し再使用が困難となる。5mmを超えるとコイルが不
必要に大きくなり大型の炉を要する。また、その密度は
0.1〜1g/cm3 が望ましい。密度が0.1g/cm3
未満の場合は、無機繊維シートの強度が低下し再使用が
困難となる。1g/cm3を超えると無機繊維シートの
柔軟性が低下しコイル状に巻きにくくなるうえ、COガ
スのコイル外への排出効率が低下する。
【0025】第2次脱炭焼鈍は、第1次脱炭焼鈍で鋼板
表層部に生じた板面垂直方向に〈100〉軸を持つα粒
を板厚中央部へ成長させ、鋼板全体を板面垂直方向に
〈100〉軸が高密度に集積したα粒組織とする。焼鈍
雰囲気は、通常は強脱炭性の雰囲気とし、例えば露点0
℃以上のH2 雰囲気、またはH2 にCO,CO2 ,N2
等を添加した雰囲気である。焼鈍温度は650〜900
℃が好ましく、焼鈍時間は1min〜20hが望まし
い。
【0026】この第2次脱炭焼鈍は、第1次脱炭焼鈍と
同じタイトコイルもしくはオープンコイル焼鈍としても
よいが、800℃以上の温度での脱炭所要時間は通常1
0min以下と短いので、工業的には連続焼鈍とするこ
とが望ましい。800℃未満の温度の場合、鋼板の強度
も高温下に較べ大きくなるので、鋼板自重による座屈変
形の危険は少なくなる。そのため、板間に空隙を生じさ
せるように緩く鋼板を巻いたオープンコイル焼鈍として
もよい。
【0027】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。
【0028】○ 実施例1 表1にA−Iで示す9種類の組成の真空溶製インゴット
を熱間鍛造により10mm厚の板とし、各板を3mm厚
まで熱間圧延した後、1.0mm厚まで冷間圧延した。し
かる後、各板に集合組織制御のための最終焼鈍として、
弱脱炭性雰囲気での第1次脱炭焼鈍および強脱炭性雰囲
気での第2次脱炭焼鈍を実施した。
【0029】
【表1】
【0030】第1次脱炭焼鈍では、タイトコイル焼鈍を
シュミレートするため、前記各冷間圧延鋼板から20c
m角の試板を各々5枚切り出した。そして、同じ大きさ
のAl2 3 48wt%,SiO2 51wt%、残部不
純物からなる厚さ1mm、密度0.3g/cm3 の無機繊
維シートとを交互に挟んで各々5枚の試板を積層し、各
層に約1kg/cm2 の圧力が加わるように積層体を加
重した。焼鈍は真空中で870〜1150℃、30mi
n〜24hの条件で行った。比較のために、従来から焼
鈍分離材として多用されている平均粒径20μmのAl
2 3 粉末も用いた。粉末量は0.03g/cm2 とし
た。
【0031】第2次脱炭焼鈍では、オープンコイル焼鈍
もしくは連続焼鈍を想定して、各板間に1cm以上の空
間をもたせ炉内雰囲気が板面全体に行き渡るようにし
た。焼鈍は焼鈍後のC量が全試板について0.003%以
下となるように、H2 を20%含む露点が+40℃のA
r気流中で880℃×1〜60minの条件で行った。
【0032】第2次脱炭焼鈍を終えた各試板の表面から
板厚2/5の位置でX線回析測定を行ない、{200}
面反対強度から板面垂直方向の〈100〉軸密度を配向
性のないものの倍数で求めた。結果を表2に示す。表2
から明らかなように、本発明の製造方法は、第1次脱炭
焼鈍にタイトコイル焼鈍を用いるにもかかわらず、板面
垂直方向に〈100〉軸が強く集積した組織を鋼板に付
与する。なお、図1の顕微鏡写真は、表1のFの鋼を熱
間鍛造−熱間圧延−冷間圧延のプロセスで0.5mmの鋼
板とし、これに第1次脱炭焼鈍を施した後の断面組織を
示す。上下に白く見える帯状の部分が第1次脱炭焼鈍に
よって生じたα−フェライト単相領域であり、板内部は
α−フェライトとセメンタイトからなる微細組織となっ
ている。
【0033】
【表2】
【0034】○ 実施例2 表1にIで示す組成の鋼を真空中で溶製し鋳造したイン
ゴットを熱間鍛造により10mm厚の板とし、この板を
3mm厚まで熱間圧延した後、1mm厚まで冷間圧延
し、更に850℃×5分間の中間焼鈍を経て0.35mm
厚まで冷間圧延した。得られた鋼板から20cm角の試
板を切り出し、同じ大きさの無機繊維シートを挟んで試
片を積層し、10-4Torrの真空中で980℃×12hの
弱脱炭焼鈍を実施した。無機繊維シートについて、その
材質、密度、厚さの影響を調べるため、これらの因子の
異なるものを使用した。また、比較のために、平均粒径
20μmのAl2 3 粉末も使用した(0.5g/c
2 )。弱脱炭焼鈍後の鋼板は、1cm以上の空間を持
たせた状態で、露点が+20℃の20%H2 −Arガス
気流中により900℃×3minの強脱炭焼鈍を施し
た。
【0035】焼鈍を終えた各試板の板面垂直方向の〈1
00〉軸密度を実施例1と同じ方法で求める一方、各試
板から内径40mm、外径60mmのリング状試験片を
10枚打ち抜き、これを積層したリング状試験片に1次
コイル、2次コイルを100ターンずつ巻いて磁気特性
を判定した。この判定は、5000A/mの外部磁界を
かけた場合の磁束密度(B50)と、50Hzの交番磁界
中で1.5Tまで磁化した場合の鉄損(W15/50 )とにつ
いて行った。比較のため、0.35mm厚の市販高級無方
向性珪素鋼板(JIS S−9)に対しても同じ測定を
行った。また、弱脱炭焼鈍中に積層体の板間から脱落し
た分離材の量を(板間に投入した分離材の焼鈍前後の重
量差/焼鈍前の重量)×100により求めた。結果を表
3に示す。表3から明らかなように、本発明の製造方法
は、〈100〉軸密度が高く磁気特性に優れる珪素鋼板
を製造でき、しかも、第1次脱炭焼鈍での分離材の脱落
もなく、分離材を全量再使用でき、分離材コストの低減
を図ることができる。
【0036】
【表3】
【0037】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法は、第1次脱炭
焼鈍をタイトコイル焼鈍によりコイル変形なく効率よく
行う。タイトコイル焼鈍での焼鈍分離材として無機繊維
シートを用いることにより、鋼板表面近傍の雰囲気を炉
内雰囲気に近づけ、板面垂直方向に〈100〉軸をもつ
α−フェライト粒を鋼板表層部に高密度に効率よく生
成、成長させる。また、焼鈍分離材の脱落がなく、再使
用も可能で、焼鈍分離材のコストを低下させ得る。従っ
て、2段脱炭による高性能珪素鋼板の製造の工業化に寄
与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1次脱炭焼鈍後の珪素鋼板の断面組織を示す
顕微鏡写真である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比でCを0.02〜1%、Siを0.2
    〜6.5 %含む板厚0.05〜5 mmの冷間圧延珪素鋼板を第
    1次脱炭焼鈍して、鋼板表層部に板面垂直方向に〈10
    0〉軸を持つα−フェライト粒を生成させ、次いで第2
    次脱炭焼鈍により、前記α−フェライト粒を板厚中心部
    へ向けて成長させる珪素鋼板の製造方法において、前記
    脱炭焼鈍の少なくとも第1次脱炭焼鈍をタイトコイル焼
    鈍とし、且つ、その焼鈍分離材として無機繊維シートを
    使用することを特徴とする磁気特性の優れた珪素鋼板の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 重量比でCを0.02〜1%、Siを0.2
    〜6.5%、Mnを5%以下で、かつ脱炭が完了したとき
    にα−フェライト単相となる焼鈍温度域が850℃以上
    となるように含んだ板厚0.05〜5mmの冷間圧延珪素
    鋼板を第1次脱炭焼鈍して、鋼板表層部に板面垂直方向
    に〈100〉軸を持つα−フェライト粒を生成させ、次
    いで第2次脱炭焼鈍により、前記α−フェライト粒を板
    厚中心部へ向けて成長させる珪素鋼板の製造方法におい
    て、前記脱炭焼鈍の少なくとも第1次脱炭焼鈍をタイト
    コイル焼鈍とし、かつ、その焼鈍分離材として無機繊維
    シートを使用することを特徴とする磁気特性の優れた珪
    素鋼板の製造方法。
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