JPH1160398A - 単結晶質銀薄膜又は単結晶銀の作製方法 - Google Patents

単結晶質銀薄膜又は単結晶銀の作製方法

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JPH1160398A
JPH1160398A JP21788797A JP21788797A JPH1160398A JP H1160398 A JPH1160398 A JP H1160398A JP 21788797 A JP21788797 A JP 21788797A JP 21788797 A JP21788797 A JP 21788797A JP H1160398 A JPH1160398 A JP H1160398A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 金,銅,白金,ロジウム等の単結晶質基体表
面に銀をエピタキシャル成長させ、単結晶質銀薄膜又は
単結晶銀を得る。 【構成】 銀を含む電解質溶液に単結晶質基体を陰極と
して浸漬して電解質中のアニオンを吸着させ、又は浸漬
前に銀を含まない溶液に単結晶質基体を浸漬することに
より単結晶質基体の表面にアニオンを吸着させた後で銀
を含む電解質溶液に浸漬して、銀を単結晶質基体の表面
に電解析出させる。単結晶質基体には金,銀,銅,白金
又はロジウムの単結晶が、銀を含む電解質溶液としては
過塩素酸,硫酸,硝酸,フッ酸,リン酸の1種又は2種
以上の水溶液が使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医療用途,センサ,触
媒材料,電極材料,鏡等として使用される単結晶質銀薄
膜又は単結晶銀を作製する方法に関する。
【従来の技術】センサ,触媒材料,電気材料等では、近
年の表面化学分野における表面反応に関する研究から、
原子レベルでみた表面構造が特性決定に大きな影響を及
ぼしていることが解明されてきている。このようなこと
から、原子レベルで表面構造が制御された単結晶膜が望
まれ始めている。単結晶は、通常、溶融法,溶液法,昇
華法,気相反応法等で作製されている。具体的には、キ
ロポウロス法,ブリッジマン法,ベルヌーイ法,帯溶融
法等がある。しかし、何れの方法も極めて徐々に外部条
件を変更し、或いは結晶の成長に応じて結晶を動かすこ
と等の工夫が必要とされる。そのため、装置が非常に複
雑となり、非常に時間のかかる雰囲気制御が必要にな
る。ところが、金,白金,銅,ロジウム等の金属では、
比較的簡単に単結晶が作製される。たとえば、水素−酸
素バーナを用いて金,白金,銅,ロジウム等の金属を溶
融させ、静かに固化させることにより単結晶が得られ
る。
【発明が解決しようとする課題】この方法で銀の単結晶
を作製しようとしても、酸素との親和力が大きい銀は、
製膜中に酸化するため単結晶にならない。しかし、銀の
単結晶は、センサや高反射率の鏡等として使用され、更
にはレーザ加工精度を高めたり、電極反応を解明する上
での電極として利用されている等、ニーズが高いもので
あり、複雑な装置を必要とすることなく簡便な方法で作
製することが望まれる。本発明は、このような要求を満
足すべく案出されたものであり、金,白金,銅,ロジウ
ム等の単結晶金属基体を電極とし、その上に銀をエピタ
キシャル成長させることにより、各種用途に使用される
単結晶質の銀薄膜又は銀単結晶を得ることを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】本発明に従った単結晶質
銀薄膜又は単結晶銀の作製方法は、その目的を達成する
ため、銀を含む電解質溶液に単結晶質基体を陰極として
浸漬して電解質中のアニオンを吸着させ、又は浸漬前に
銀を含まない溶液に単結晶質基体を浸漬することにより
単結晶質基体の表面にアニオンを吸着させた後で銀を含
む電解質溶液に浸漬して、銀を単結晶質基体の表面に電
解析出させることを特徴とする。単結晶質基体には、
金,銀,銅,白金又はロジウムの単結晶が使用される。
銀を含む電解質溶液としては、アニオン吸着し易い過塩
素酸,硫酸,硝酸,フッ酸,リン酸等の1種又は2種以
上の水溶液が使用される。或いは、ハロゲン,シアン等
のアニオン吸着し易いアニオンを予め吸着させた単結晶
基板が使用される。銀の電解析出に先立って、ハロゲ
ン,シアン,チオシアン,硝酸イオン又は硫酸イオンか
ら選ばれた1種又は2種以上のアニオンを単結晶質基体
の表面に吸着させることもできる。アニオンの吸着に
は、ハロゲン,シアン,チオシアン,硝酸イオン又は硫
酸イオンから選ばれた1種又は2種以上のアニオンを含
む溶液に単結晶質基体を接触させる方法が採用される。
ただし、ハロゲンを吸着させる場合には、ハロゲン化銀
が形成されないように条件設定する。また、アニオンを
含む電解質溶液中で銀を電解析出させる方法も採用可能
である。
【作用】金,白金,銅,ロジウム等の貴金属は、前述し
たように水素−酸素バーナを用いた溶解法で簡単に単結
晶化できる。本発明は、このように単結晶化された金,
白金,銅,ロジウム等の貴金属を単結晶質基体として使
用し、その上に銀を電解析出でエピタキシャル成長させ
ることにより、単結晶質の銀薄膜を作製するものであ
る。また、作製された単結晶質銀薄膜を基体として更に
銀のエピタキシャル成長を継続させると、厚みのある単
結晶銀が得られる。金,白金,銅,ロジウム以外にも、
銀の平衡電位よりも貴な電位で銀が1層程度吸着する金
属を使用することができる。このような現象は、一般的
にアンダーポテンシャルデポジションと呼ばれており、
異種金属基板上に異なる金属(銀)を電解析出させる場
合に、異種金属間の相互作用が大きい(銀と銀の間の相
互作用よりも銀と他の金属との間の相互作用の方が大き
い)と、電解析出する金属の平衡電位よりも貴な電位で
数層程度電解析出が進行する現象を言う。アンダーポテ
ンシャルデポジションが起きる金属基板は、平衡電位よ
り卑な電位で銀のバルク電解析出を開始する前に銀が電
解析出されている。そのため、銀の電極基板上への電解
析出と同じで、最近接原子間距離の歪みも非常に小さ
く、銀のエピタキシャル成長が起こり易くなり、銀の単
結晶が作製される。電解質溶液中の銀濃度は10モル〜
0.01mモルの範囲で、なかでも1モル〜0.1mモ
ルが好ましい。供給電流は0.1A/cm2 〜1μA/
cm2 の範囲で、なかでも10mA/cm2 〜10μA
/cm2 が好ましい。濃度や電流値が大きいと反応が一
度に起こり、単結晶が得られない。逆に濃度や電流値が
小さすぎると電解に長時間を要し、実用的でない。この
条件下で電解すると、金,白金,銅,ロジウム等の金属
基体上にアニオンが吸着し、銀の平衡電位よりも貴な電
位で銀が1層形成されるアンダーポテンシャルデポジシ
ョン現象が生じる。次いで、銀の平衡電位よりも卑な電
位で銀のバルク電解析出が開始すると、銀の単結晶電極
上に銀が電解析出するのと同様に、析出した銀の歪みが
非常に小さくなり、銀がエピタキシャル成長し易い環境
になる。このようにして作製された単結晶質銀薄膜は、
原子レベルで平坦な表面をもっている。電解質中のアニ
オンや予め電極に吸着させたハロゲン,シアン等は、電
解析出の過程で銀のエピタキシャル成長を制御する。す
なわち、アニオンは常に電極の表層に吸着しており、吸
着したアニオンの間隙に銀が電解析出する。そして、電
解析出した銀の上にアニオンが吸着する。次いで、アニ
オンが抜けた間隙に銀が電解析出することにより、1層
分完全な銀の電解析出層が形成される。この繰返しによ
り、銀の電解析出が進行する。そのため、各種アニオン
を併用して電解析出を実施すると、単結晶化が一層促進
され、品質及び品質安定性に優れた単結晶質銀薄膜や単
結晶銀が得られる。
【実施例】
実施例1:直径0.8mm,長さ10cmのAu線をア
セトン洗浄し、更に超純水を用いて10分間超音波洗浄
した。洗浄後のAu線を王水に浸漬して表面を溶かし、
更に超純水で洗浄した。このAu線を酸素−水素ガス火
炎中で加熱溶融させて、Auの液滴とした。振動を与え
ることなく液滴を静かに固化させて再結晶化させること
により、直径3mmの単結晶を得た。得られたAu単結
晶の(111)面ファセットを基準として面積が最大に
なるように研磨し、Au(111)面の単結晶電極を得
た。この電極を0.1M H 2 SO4 +0.1mM A
2 SO4 溶液に浸漬し、対極にPt,参照電極にRH
E(可逆水素電極)を用いて、0.65Vの電位を5分
間印加した。電圧印加により、単結晶電極の表面に銀が
電解析出した。電圧印加中に、走査型トンネル顕微鏡を
用いて電解析出面を観察した。図1の観察結果にみられ
るように、電解析出前の電極面(a)は、電解析出開始
後30秒経過した時点で銀の電解析出が検出され
(b)、90秒経過した時点で銀の電解析出領域が広が
っていた(c)。そして、時間の経過に従ってステップ
エッジから銀がlayer by layerで成長し
ている様子が観察され、原子レベルで平坦な表面となる
ことが確認された。電解析出後の電極を超純水で洗浄し
た。このようにして銀薄膜が積層された電極を0.1m
M KI+10mMKF+0.1mM KOH溶液に浸
漬し電流電圧曲線を測定したところ、図2に示すように
市販のAg(111)単結晶電極と同じ特性を示した。
このことから、電解析出した銀により(111)面の面
包囲をもつ単結晶が作製されていることが判る。電極表
面に形成された銀薄膜は、電気化学走査型トンネル顕微
鏡で測定したところ原子間距離が0.29nmであり、
三回対称のAg(111)面に対応する(1×1)構造
を示した。この結果からも、電解析出した銀により(1
11)面の面包囲をもつ単結晶が作製されていることが
確認される。 比較例1:電解質溶液として0.1M HClO4 +1
mM AgClO4 溶液を使用する以外は、実施例1と
同じ条件下で電極表面に銀を電解析出させた。この場合
には、図3に示すように非常にラフな表面が表れ、(1
11)面のテラスが形成されなかった。 実施例2:実施例1と同様にして作製したAu(11
1)電極を1mM KI+0.1MHClO4 溶液に浸
漬した後、電極を取り出して水洗することにより、電極
表面に沃素イオンを吸着させた。次いで、0.1M H
ClO4 +1mM AgClO4 溶液に電極を浸漬し、
実施例1と同じ条件下で銀を電解析出させた。得られた
表面は、原子レベルで平坦化されており、しかも(11
1)表面の銀のステップテラスが観察された。 実施例3:Au(111)電極を、(111)面だけが
電解質溶液と接触するように非導電性筒の中に固定し、
実施例1と同じ条件下で電解析出を1時間継続させた。
この場合には、原子レベルで平坦化され且つ(111)
のステップテラスをもつ厚み2mmの銀単結晶がAu
(111)面の上に形成されていた。 実施例4:実施例1と同様な方法でPt(111)電極
を作製し、実施例2と同様に沃素イオンを吸着させた
後、銀を電解析出させた。電解析出後の電極表面を観察
したところ、原子レベルで平坦化され且つ(111)表
面をもつ銀のステップテラスが形成されていた。 実施例5:実施例1と同様な方法でCu(111)電極
を作製し、実施例2と同様に沃素イオンを吸着させた
後、銀を電解析出させた。電解析出後の電極表面を観察
したところ、原子レベルで平坦化され且つ(111)表
面をもつ銀のステップテラスが形成されていた。
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、比較的簡便な方法で作製される金,銅,白金,ロジ
ウム等の単結晶質基体を使用し、この単結晶質基体を陰
極として電解質溶液に浸漬し、銀を電解析出させること
により、単結晶質基体の表面に銀薄膜をエピタキシャル
成長させている。このようにして、作製された単結晶質
銀薄膜又は単結晶銀は、原子レベルで平坦な表面をも
ち、医療用途,センサ,触媒材料,電極材料,鏡等の広
範な分野において高機能の材料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Au(111)電極上に銀が電解析出する過
程を示した電気化学走査型トンネル顕微鏡写真であり、
電解析出前(a),電解析出開始から30秒経過した時
点(b)及び電解析出開始から90秒経過した時点
(c)での電極表面
【図2】 実施例1における電極の電流電圧曲線
【図3】 比較例1で銀を電解析出させたAu(11
1)電極の表面を示す電気化学走査型トンネル顕微鏡写
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年8月20日
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年2月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 単結晶質銀薄膜又は単結晶銀の作製
方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医療用途,センサ,触
媒材料,電極材料,鏡等として使用される単結晶質銀薄
膜又は単結晶銀を作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】センサ,触媒材料,電気材料等では、近
年の表面化学分野における表面反応に関する研究から、
原子レベルでみた表面構造が特性決定に大きな影響を及
ぼしていることが解明されてきている。このようなこと
から、原子レベルで表面構造が制御された単結晶膜が望
まれ始めている。単結晶は、通常、溶融法,溶液法,昇
華法,気相反応法等で作製されている。具体的には、キ
ロポウロス法,ブリッジマン法,ベルヌーイ法,帯溶融
法等がある。しかし、何れの方法も極めて徐々に外部条
件を変更し、或いは結晶の成長に応じて結晶を動かすこ
と等の工夫が必要とされる。そのため、装置が非常に複
雑となり、非常に時間のかかる雰囲気制御が必要にな
る。ところが、金,白金,銅,ロジウム等の金属では、
比較的簡単に単結晶が作製される。たとえば、水素−酸
素バーナを用いて金,白金,銅,ロジウム等の金属を溶
融させ、静かに固化させることにより単結晶が得られ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この方法で銀の単結晶
を作製しようとしても、酸素との親和力が大きい銀は、
製膜中に酸化するため単結晶にならない。しかし、銀の
単結晶は、センサや高反射率の鏡等として使用され、更
にはレーザ加工精度を高めたり、電極反応を解明する上
での電極として利用されている等、ニーズが高いもので
あり、複雑な装置を必要とすることなく簡便な方法で作
製することが望まれる。本発明は、このような要求を満
足すべく案出されたものであり、金,白金,銅,ロジウ
ム等の単結晶金属基体を電極とし、その上に銀をエピタ
キシャル成長させることにより、各種用途に使用される
単結晶質の銀薄膜又は銀単結晶を得ることを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明に従った単結晶質
銀薄膜又は単結晶銀の作製方法は、その目的を達成する
ため、銀を含む電解質溶液に単結晶質基体を陰極として
浸漬して電解質中のアニオンを吸着させ、又は浸漬前に
銀を含まない溶液に単結晶質基体を浸漬することにより
単結晶質基体の表面にアニオンを吸着させた後で銀を含
む電解質溶液に浸漬して、銀を単結晶質基体の表面に電
解析出させることを特徴とする。単結晶質基体には、
金,銀,銅,白金又はロジウムの単結晶が使用される。
銀を含む電解質溶液としては、アニオン吸着し易い過塩
素酸,硫酸,硝酸,フッ酸,リン酸等の1種又は2種以
上の水溶液が使用される。或いは、ハロゲン,シアン等
のアニオン吸着し易いアニオンを予め吸着させた単結晶
基板が使用される。銀の電解析出に先立って、ハロゲ
ン,シアン,チオシアン,硝酸イオン又は硫酸イオンか
ら選ばれた1種又は2種以上のアニオンを単結晶質基体
の表面に吸着させることもできる。アニオンの吸着に
は、ハロゲン,シアン,チオシアン,硝酸イオン又は硫
酸イオンから選ばれた1種又は2種以上のアニオンを含
む溶液に単結晶質基体を接触させる方法が採用される。
ただし、ハロゲンを吸着させる場合には、ハロゲン化銀
が形成されないように条件設定する。また、アニオンを
含む電解質溶液中で銀を電解析出させる方法も採用可能
である。
【0005】
【作用】金,白金,銅,ロジウム等の貴金属は、前述し
たように水素−酸素バーナを用いた溶解法で簡単に単結
晶化できる。本発明は、このように単結晶化された金,
白金,銅,ロジウム等の貴金属を単結晶質基体として使
用し、その上に銀を電解析出でエピタキシャル成長させ
ることにより、単結晶質の銀薄膜を作製するものであ
る。また、作製された単結晶質銀薄膜を基体として更に
銀のエピタキシャル成長を継続させると、厚みのある単
結晶銀が得られる。金,白金,銅,ロジウム以外にも、
銀の平衡電位よりも貴な電位で銀が1層程度吸着する金
属を使用することができる。このような現象は、一般的
にアンダーポテンシャルデポジションと呼ばれており、
異種金属基板上に異なる金属(銀)を電解析出させる場
合に、異種金属間の相互作用が大きい(銀と銀の間の相
互作用よりも銀と他の金属との間の相互作用の方が大き
い)と、電解析出する金属の平衡電位よりも貴な電位で
数層程度電解析出が進行する現象を言う。アンダーポテ
ンシャルデポジションが起きる金属基板は、平衡電位よ
り卑な電位で銀のバルク電解析出を開始する前に銀が電
解析出されている。そのため、銀の電極基板上への電解
析出と同じで、最近接原子間距離の歪みも非常に小さ
く、銀のエピタキシャル成長が起こり易くなり、銀の単
結晶が作製される。
【0006】電解質溶液中の銀濃度は10モル〜0.0
1mモルの範囲で、なかでも1モル〜0.1mモルが好
ましい。供給電流は0.1A/cm2 〜1μA/cm2
の範囲で、なかでも10mA/cm2 〜10μA/cm
2 が好ましい。濃度や電流値が大きいと反応が一度に起
こり、単結晶が得られない。逆に濃度や電流値が小さす
ぎると電解に長時間を要し、実用的でない。この条件下
で電解すると、金,白金,銅,ロジウム等の金属基体上
にアニオンが吸着し、銀の平衡電位よりも貴な電位で銀
が1層形成されるアンダーポテンシャルデポジション現
象が生じる。次いで、銀の平衡電位よりも卑な電位で銀
のバルク電解析出が開始すると、銀の単結晶電極上に銀
が電解析出するのと同様に、析出した銀の歪みが非常に
小さくなり、銀がエピタキシャル成長し易い環境にな
る。このようにして作製された単結晶質銀薄膜は、原子
レベルで平坦な表面をもっている。
【0007】電解質中のアニオンや予め電極に吸着させ
たハロゲン,シアン等は、電解析出の過程で銀のエピタ
キシャル成長を制御する。すなわち、アニオンは常に電
極の表層に吸着しており、吸着したアニオンの間隙に銀
が電解析出する。そして、電解析出した銀の上にアニオ
ンが吸着する。次いで、アニオンが抜けた間隙に銀が電
解析出することにより、1層分完全な銀の電解析出層が
形成される。この繰返しにより、銀の電解析出が進行す
る。そのため、各種アニオンを併用して電解析出を実施
すると、単結晶化が一層促進され、品質及び品質安定性
に優れた単結晶質銀薄膜や単結晶銀が得られる。
【0008】
【実施例】 実施例1:直径0.8mm,長さ10cmのAu線をア
セトン洗浄し、更に超純水を用いて10分間超音波洗浄
した。洗浄後のAu線を王水に浸漬して表面を溶かし、
更に超純水で洗浄した。このAu線を酸素−水素ガス火
炎中で加熱溶融させて、Auの液滴とした。振動を与え
ることなく液滴を静かに固化させて再結晶化させること
により、直径3mmの単結晶を得た。得られたAu単結
晶の(111)面ファセットを基準として面積が最大に
なるように研磨し、Au(111)面の単結晶電極を得
た。この電極を0.1M H 2 SO4 +0.1mM A
2 SO4 溶液に浸漬し、対極にPt,参照電極にRH
E(可逆水素電極)を用いて、0.65Vの電位を5分
間印加した。電圧印加により、単結晶電極の表面に銀が
電解析出した。
【0009】電圧印加中に、走査型トンネル顕微鏡を用
いて電解析出面を観察した。図1の観察結果にみられる
ように、電解析出前の電極面(a)は、電解析出開始後
30秒経過した時点で銀の電解析出が検出され(b)、
90秒経過した時点で銀の電解析出領域が広がっていた
(c)。そして、時間の経過に従ってステップエッジか
ら銀がlayer by layerで成長している様
子が観察され、原子レベルで平坦な表面となることが確
認された。電解析出後の電極を超純水で洗浄した。この
ようにして銀薄膜が積層された電極を0.1mM KI
+10mMKF+0.1mM KOH溶液に浸漬し電流
電圧曲線を測定したところ、図2に示すように市販のA
g(111)単結晶電極と同じ特性を示した。このこと
から、電解析出した銀により(111)面の面方位をも
つ単結晶が作製されていることが判る。
【0010】電極表面に形成された銀薄膜は、電気化学
走査型トンネル顕微鏡で測定したところ原子間距離が
0.29nmであり、三回対称のAg(111)面に対
応する(1×1)構造を示した。この結果からも、電解
析出した銀により(111)面の面方位をもつ単結晶が
作製されていることが確認される。 比較例1:電解質溶液として0.1M HClO4 +1
mM AgClO4 溶液を使用する以外は、実施例1と
同じ条件下で電極表面に銀を電解析出させた。この場合
には、図3に示すように非常にラフな表面が表れ、(1
11)面のテラスが形成されなかった。
【0011】実施例2:実施例1と同様にして作製した
Au(111)電極を1mM KI+0.1MHClO
4 溶液に浸漬した後、電極を取り出して水洗することに
より、電極表面に沃素イオンを吸着させた。次いで、
0.1M HClO4 +1mM AgClO4 溶液に電
極を浸漬し、実施例1と同じ条件下で銀を電解析出させ
た。得られた表面は、原子レベルで平坦化されており、
しかも(111)表面の銀のステップテラスが観察され
た。
【0012】実施例3:Au(111)電極を、(11
1)面だけが電解質溶液と接触するように非導電性筒の
中に固定し、実施例1と同じ条件下で電解析出を1時間
継続させた。この場合には、原子レベルで平坦化され且
つ(111)のステップテラスをもつ厚み2mmの銀単
結晶がAu(111)面の上に形成されていた。
【0013】実施例4:実施例1と同様な方法でPt
(111)電極を作製し、実施例2と同様に沃素イオン
を吸着させた後、銀を電解析出させた。電解析出後の電
極表面を観察したところ、原子レベルで平坦化され且つ
(111)表面をもつ銀のステップテラスが形成されて
いた。 実施例5:実施例1と同様な方法でCu(111)電極
を作製し、実施例2と同様に沃素イオンを吸着させた
後、銀を電解析出させた。電解析出後の電極表面を観察
したところ、原子レベルで平坦化され且つ(111)表
面をもつ銀のステップテラスが形成されていた。
【0014】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、比較的簡便な方法で作製される金,銅,白金,ロジ
ウム等の単結晶質基体を使用し、この単結晶質基体を陰
極として電解質溶液に浸漬し、銀を電解析出させること
により、単結晶質基体の表面に銀薄膜をエピタキシャル
成長させている。このようにして、作製された単結晶質
銀薄膜又は単結晶銀は、原子レベルで平坦な表面をも
ち、医療用途,センサ,触媒材料,電極材料,鏡等の広
範な分野において高機能の材料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Au(111)電極上に銀が電解析出する過
程を示した電気化学走査型トンネル顕微鏡写真であり、
電解析出前(a),電解析出開始から30秒経過した時
点(b)及び電解析出開始から90秒経過した時点
(c)での電極表面
【図2】 実施例1における電極の電流電圧曲線
【図3】 比較例1で銀を電解析出させたAu(11
1)電極の表面を示す電気化学走査型トンネル顕微鏡写

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銀を含む電解質溶液に単結晶質基体を陰
    極として浸漬し、電解質中のアニオンを吸着させ、又は
    浸漬前に銀を含まない溶液に単結晶質基体を浸漬するこ
    とにより単結晶質基体の表面にアニオンを吸着させた後
    で銀を含む電解質溶液に浸漬して、銀を単結晶質基体の
    表面に電解析出させることを特徴とする単結晶質銀薄膜
    又は単結晶銀の作製方法。
  2. 【請求項2】 金,銀,銅,白金又はロジウムの単結晶
    を単結晶質基体として使用する請求項1記載の作製方
    法。
  3. 【請求項3】 銀を含む電解質溶液が過塩素酸,硫酸,
    硝酸,フッ酸,リン酸の1種又は2種以上の水溶液であ
    る請求項1又は2記載の作製方法。
  4. 【請求項4】 銀の電解析出に先立って、ハロゲン,シ
    アン,チオシアン,硝酸イオン又は硫酸イオンから選ば
    れた1種又は2種以上のアニオンを単結晶質基体の表面
    に吸着させる請求項1〜3の何れかに記載の作製方法。
  5. 【請求項5】 ハロゲン,シアン,チオシアン,硝酸イ
    オン又は硫酸イオンから選ばれた1種又は2種以上のア
    ニオンを含む溶液に単結晶質基体を接触させることによ
    りアニオンを吸着させる請求項4記載の作製方法。
  6. 【請求項6】 銀を含む電解質溶液が更にハロゲン,シ
    アン,チオシアン,硝酸イオン又は硫酸イオンから選ば
    れた1種又は2種以上のアニオンを含む溶液である請求
    項1〜3の何れかに記載の作製方法。
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