JPH1156391A - 乳酸菌のビールに対する有害性の判定法 - Google Patents

乳酸菌のビールに対する有害性の判定法

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JPH1156391A
JPH1156391A JP9231886A JP23188697A JPH1156391A JP H1156391 A JPH1156391 A JP H1156391A JP 9231886 A JP9231886 A JP 9231886A JP 23188697 A JP23188697 A JP 23188697A JP H1156391 A JPH1156391 A JP H1156391A
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beer
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lactobacillus brevis
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JP9231886A
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Hisahiro Takahashi
寿洋 高橋
Yasuichi Nakakita
保一 中北
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Sapporo Breweries Ltd
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Sapporo Breweries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラクトバチルス・ブレビスと同定された被検
菌について、ビール中での増殖能力、すなわちビール有
害性の有無について迅速、かつ正確に判定する方法を提
供すると共に、この方法をビール工場での工程管理に利
用する方法を提供すること。 【解決手段】 被検菌であるラクトバチルス・ブレビス
の D−乳酸脱水素酵素のポリアクリルアミドゲル電気泳
動を行い、その移動パターンから当該微生物が属するグ
ループを識別することにより、ビールに対する有害性を
判定する方法並びに当該判定方法を導入することを特徴
とするビール工場における工程管理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳酸菌のビールに
対する有害性の判定法に関し、詳しくは被検菌であるラ
クトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) の D
−乳酸脱水素酵素のポリアクリルアミドゲル電気泳動で
の移動度から当該微生物が属するグループを識別し、ビ
ールに対する有害性を判定する方法に関する。さらに、
本発明は、この判定方法を導入することによって、ビー
ル工場における工程管理を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビール製造において、乳酸菌は有害微生
物であり、とりわけラクトバチルス・ブレビスが代表的
な有害乳酸菌として知られている。そのため、ビール工
場における工程管理上、乳酸菌を迅速、かつ的確に検出
することが必要であり、これまでに様々な方法が提案さ
れている。
【0003】ところで、最近の研究により、ラクトバチ
ルス・ブレビスに属する菌株にはビール中で増殖できる
菌株(ビール有害株)と増殖できない菌株(ビール非有
害株)が存在することが明らかにされている。したがっ
て、ビール工場での微生物管理においては、工程もしく
は環境から分離された微生物が、ラクトバチルス・ブレ
ビスであるか否かを判定するだけでなく、当該菌株がビ
ール有害株であるか否かについても識別し、菌株に応じ
た対策を立案、実施する必要がある。
【0004】乳酸菌を検出する方法としては、例えばモ
ノクローナル抗体を用いてビール中の乳酸菌を検出する
方法(特開平6−46881号公報)、プライマーを用
いるポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によってラクト
バチルス属細菌を検出する方法(特開平6−90793
号公報)などがある。しかし、モノクローナル抗体を用
いる方法は、種特異的な検出は可能であるけれども、同
一種内の菌株の表現形質の違いを判別することができな
い。PCRによる検出法も同様であり、被検菌がビール
を混濁させるものであるか否かを判定することはできな
い。
【0005】さらに、ホップやホップのα酸に対する耐
性を調べて乳酸菌等のビールに対する有害性を判定する
方法(特開平9−260号公報、Fernandez, J. L. et
al.;Letters in Applied Microbiol., 1992, 14:13-1
6)も提案されているが、これらは試験条件が判定結果
に影響する可能性がある他、被検菌のビール中での増殖
性の有無を正確に判定することは困難である。
【0006】そのため、ビール工場において最も確実に
ラクトバチルス・ブレビスの有害性を判定する方法とし
て、工程等から分離された菌株をビール中に直接接種し
て1週間ないし数週間培養し、増殖能力を確認する方法
(ビール混濁試験)が行われている。しかしながら、こ
の方法は判定に長時間を要するという致命的な問題があ
る。しかも、ビール有害株と判定された菌株であって
も、培地で培養する間にビール中で増殖できなくなる場
合があり、工程管理用培地等で検出された菌株のビール
有害性を、その潜在能力も含めて正確に判断することは
非常に困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そのため、前記の手法
とは別の観点から、ビール中でのラクトバチルス・ブレ
ビスの増殖能力を判定する方法の開発が望まれている。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく検討を重ね、そ
の過程で乳酸菌に存在する酵素に着目した。乳酸菌は生
成する乳酸の光学異性(D-(-) 乳酸とL-(-) 乳酸)の比
によってL型,DL型及び D型に大別される(乳酸旋光
性)。また、乳酸菌に存在し、乳酸の生成に関与する酵
素である乳酸脱水素酵素(以下、LDH と記載する。)
は、光学活性ごとに酵素タンパクは別々に存在し、L-乳
酸脱水素酵素(以下、L-LDH と記載する。)や D−乳酸
脱水素酵素(以下、D-LDH と記載する。)と表現され
る。DL型の乳酸菌であるラクトバチルス・ブレビスに
は、L-LDH と D-LDHの2つの酵素が存在する。このLDH
は、菌種によって性質が異なり、ポリアクリルアミドゲ
ル上で電気泳動をさせると、その分子量や荷電等に応じ
て泳動距離に差が現れるため、分類の指標の一つとして
認められている(Bregey's Manual of Systematic Bact
eriology, 2, 1230(1986) 、乳酸菌実験マニュアル, 95
-97(1992),朝倉書店) 。この性質は菌種を特定するため
に利用されているが、ビール中での増殖性を判定するた
めの指標としては利用されていない。
【0008】前記したように、ラクトバチルス・ブレビ
スはビール中で生育が可能な菌種の一つであり、ビール
製造における著名な有害菌の一つである。本発明者ら
は、生理学、生化学及び遺伝学的な手法からラクトバチ
ルス・ブレビスと同定された菌株の D-LDHについて、ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動(以下、PAGEと記載
する。)を行ったところ、泳動パターンがその移動度に
より5つのグループに分類することができ、しかもビー
ル有害株の D-LDHの移動度が1つのグループに集中する
ことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに
至った。したがって、本発明の目的は上記した課題を解
決し、ラクトバチルス・ブレビスと同定された被検菌に
ついて、ビール中で増殖する能力があるか、つまりビー
ル有害性の有無について迅速、かつ正確に判定する方法
を提供すると共に、この方法をビール工場での工程管理
に利用する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明
は、被検菌であるラクトバチルス・ブレビスの D−乳酸
脱水素酵素のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、
その移動パターンから当該微生物が属するグループを識
別することにより、ビールに対する有害性を判定する方
法である。請求項4に記載の本発明は、請求項1記載の
判定方法を導入することを特徴とするビール工場におけ
る工程管理方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の対象となる被検菌は、何
らかの微生物検査法によって検出された微生物につい
て、適当な同定方法、例えば発酵形式,各種乳酸の生成
比,生育温度試験,糖類発酵性試験、DNA-DNA ハイブリ
ダイゼーション、抗血清等によりラクトバチルス・ブレ
ビスと同定されたものである。ラクトバチルス・ブレビ
スと同定された菌株のすべてがビール中で増殖するので
はなく、一部の菌株のみがビール中で増殖(ビール有害
株)する。すなわち、本発明者らが検討した結果、ラク
トバチルス・ブレビスは、当該菌株の D-LDHのPAGE
による移動度の違いから5つのグループに分類すること
ができ、ビール有害株は、その中の1グループに属する
ものであることが判明した。本発明では、被検菌のビー
ルに対する有害性の判定にあたり、スタンダード株を用
いる。スタンダード株は、すべて菌株系統保存機関から
入手できるものであり、予めこれら菌株について、その
D-LDHのPAGEにより移動パターンを測定して、その
移動度の違いから5グループに分類しておく。本発明に
用いるスタンダード株は以下のように分類される。
【0011】グループA:JCM 1170株,AHU 1508株また
はVTT E78074株 グループB:JCM 1559株またはVTT E64029株 グループC:JCM 1059T 株,JCM 1061 株,JCM 1065 株ま
たはVTT E64028株 グループD:JCM 1102株またはJCM 1183株 グループE:JCM 1562株
【0012】次に、被検菌について、同様にして D-LDH
のPAGEによる移動度を求め、どのグループに属する
かを調べる。各グループの菌株について、ビール中での
増殖能力を調べたところ、グループBに属するものの中
にのみビール有害菌が存在することが判明した。したが
って、被検菌がどのグループに属するかを判定すること
によって、ビール有害菌であるか否かを知ることができ
る。
【0013】以下に、本発明の方法について詳しく説明
する。 (1)粗酵素液の調製方法 MRS培地(Difco 社製) 5〜100ml、好ましくは
30mlに、ラクトバチルス・ブレビスと同定された菌
株(被検菌)を1白金耳接種し、15〜35℃、好まし
くは30℃で2〜7日間、好ましくは2〜4日間培養す
る。培養終了後、菌体を緩衝液、好ましくは50mM
トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて2回洗浄した
後、5000〜12000rpm、好ましくは8000
rpm、2〜20℃で5〜30分間、好ましくは10分
間遠心分離し、菌体を回収する。
【0014】次に、該菌体を適当な試験管に移し、菌体
重量を測定した後、50mM トリス−塩酸緩衝液(p
H7.5)を10〜40%(W/W)懸濁液、好ましく
は30%(W/W)懸濁液になるように加える。こうし
て得た菌体懸濁液を、細胞破砕装置(例えばSONIFEIER
(R), ブラウン社製)にかけて、例えば50〜100ブ
ラウンユニット、好ましくは80ブラウンユニットで1
〜5分間、好ましくは1〜2分間菌体を破砕する。破砕
後、冷却遠心機にて回転数10000〜15000rp
m、好ましくは15000rpm、温度2〜10℃、好
ましくは4℃で15〜60分間、好ましくは30分間遠
心分離を行って菌体を除き、上清を回収する。これを D
-LDH粗酵素液とする。
【0015】(2)PAGE用試料の調製 上記(1)によって得た粗酵素液78μl、0.5M
トリス−塩酸緩衝液(pH6.8)2μl、グリセリン
20μl、マーカー色素10μlを、ミクロチューブ
(1.5ml容)内で混合し、これをPAGE用試料と
する。1レーンあたりのタンパク質は2〜10μg程度
である。このとき用いるマーカー色素の組成としては、
BPB1mg、グリセリン100μl、蒸留水900μ
lとする。
【0016】(3)電気泳動 PAGE用のスラブゲルの調製方法は、PAGEの常法
に基づき、例えば乳酸菌実験マニュアル(尾崎ら、95-9
7(1992) 朝倉書店)を参考にして行うことができる。な
お、分離ゲルおよび濃縮ゲルのアクリルアミド濃度は、
それぞれ8.49%と4.5%である。第1表にPAG
E用ゲルの作製に用いるA〜D溶液の調製方法を、第2
表に分離ゲルおよび濃縮ゲルの組成を示す。電気泳動条
件として、泳動用緩衝液は25mM トリス−192m
M グリシン緩衝液を用い、電流はゲル1枚あたり分離
ゲル15mA、濃縮ゲル10mAを目安に通電する。電
気泳動終了の目安は、試料中のマーカー色素がゲルの先
端から5mmとなったときである。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】(4)ビール有害性の判定 電気泳動終了後のゲルを、染色液に30分間〜18時
間、好ましくは60分間浸し、酵素の移動パターンを染
色する。染色液は50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)
または50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)1
00mlに、乳酸リチウム塩(D型またはDL型)1mg、
β−NAD50mg、ニトロブルーテトラゾリウム20
mg、フェナジンメトスルフェート4mgを溶解させた
ものである。このうち乳酸リチウム塩は、LDH の基質と
なるD-乳酸リチウムまたはDL- 乳酸リチウムを用いる。
染色終了後、該染色液を廃棄した後、7%酢酸水溶液5
0mlを添加し、反応を停止する。
【0020】この染色により得られた LDHの泳動パター
ンから、相対移動度(染色された被検菌の酵素のバンド
の位置/染色されたBグループスタンダード株のD-LDH
のバンドの位置)を算出し、その移動度の違いから被検
菌の属するグループを知り、被検菌のビール有害性の有
無を判定する。この相対移動度は、電気泳動時の条件を
ほぼ一定にすることにより、再現性のあるものである。
この判定は、通常、被検菌の酵素と共にスタンダード株
の酵素を電気泳動することにより、該被検菌の酵素がど
のスタンダード株の酵素の泳動パターンと一致するかを
識別することで行うものである。すなわち、スタンダー
ド株の酵素の泳動パターンはA〜Eの5つのグループに
分類することができ、ビール有害菌はグループBに属す
るものに限られるので、被検菌の酵素がどのグループに
属するかを識別することによりビール有害菌であるか否
かを判定することができる。通常は、適当なスタンダー
ド株の酵素、好ましくはグループBに属するスタンダー
ド株を含む1〜数種のスタンダード株の酵素と被検菌の
酵素についてPAGEを行うことによって判定する。し
かし、被検菌のみの酵素についてPAGEを行い、その
移動パターンを予めスタンダード株の酵素について求め
ておいた移動パターンと比較することによって判定する
ことも可能である。図1は、ビール工場で分離、同定さ
れた被検菌、ラクトバチルス・ブレビスの酵素について
PAGEを行って得た移動パターンを示す図である。図
中、レーン1はJCM 1559株、2はSBC 8001株、3はSBC
8002株、4はSBC 8014株、5はSBC8025株、6はSBC 802
9株、7はSBC 8035株である。
【0021】
【実施例】次に、実施例等により本発明を詳しく説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。 試験例1 (1)供試菌株 スタンダード株として、菌株系統保存機関から購入した
ラクトバチルス・ブレビス10株 (JCM 1059T ,JCM 106
1,JCM 1065,JCM 1170,JCM 1562,JCM 1559,AHU1508,VTT
E64028,VTT E64029,VTT E78074)、該菌の亜種2株(L.
brevis subsp. gravesensis JCM 1102, L. brevis su
bsp. otakiensis JCM 1183)および被検株として、ビー
ル工場から分離、同定したラクトバチルス・ブレビス3
9株 (SBC 8001〜8020,SBC 8025 〜8027,SBC 8029,SBC
8030,SBC 8035 〜8037,SBC 8052,SBC 8271,SBC 8273,SB
C 8284,SBC 8288,SBC 8294,SBC 8301,SBC 8322,SBC 880
9,SBC 8811,SBC 8812)の合計51株を使用した。なお、
ビール工場から分離した菌株は発酵形式、各種乳酸の生
成比、糖類発酵性試験、生育温度試験、抗血清、DNA-DN
A ハイブリダイゼーションによりラクトバチルス・ブレ
ビスと同定した。以下に、SBC 8002株について実施した
同定試験の結果の一部を示す。
【0022】(1)糖類発酵性試験糖 類 結 果 * グルコン酸 + アラビノース + キシロース + ラムノース − ソルボース − リボース + グルコース + マンノース − ガラクトース + シュークロース − マルトース + セロビオース − ラクトース − トレハロース − メリビオース + ラフィノース − メレチトース − デンプン − マンニトール − ソルビトール −* +:生育した −:生育しない
【0023】(2)ビール混濁試験 上記のスタンダード株および被検菌株の合計51株につ
いて、ビール混濁試験を以下の手順で行った。寒天培地
(MRS培地、Difco 社製)にて培養した菌体を1白金
耳(約106cell)または液体培養(MRS培地、Difco
社製、濁度が660nmで吸光度1.0程度を示したも
の)した培養液1mlを、市販の瓶詰ビール(330m
l)を開栓してビールに接種し、再打栓をした。菌体を
接種したビールは、30℃で1〜数週間培養を行い、そ
の間ビールの混濁等を目視で確認した。培養期間中に、
ビールの混濁が確認されたものを、ビール有害株と判定
した。この結果、ビール有害株29株および非有害株2
2株の2グループに分類することができた。結果を第3
表に示す。なお、スタンダード株および被検菌株につい
てビール混濁までの培養日数を調べた結果を第4表に示
す。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】実施例1 上記のスタンダード株および被検菌株の合計51株につ
いて、以下のようにしてビールに対する有害性の判定を
行った。 (1)粗酵素液の調製 MRS培地(Difco 社製) 30mlに、ビール工場より
分離され、ラクトバチルス・ブレビスと同定された菌株
を1白金耳接種し、30℃で2〜4日間培養した。培養
終了後、菌体を50mM トリス−塩酸緩衝液(pH
7.5)にて2回洗浄後、8000rpmで10分間遠
心分離し、菌体を沈澱物として回収した。次に、該菌体
を適当な試験管に移し、菌体重量を測定後に50mM
トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)を30%(W/W)
懸濁液になるように加え、これを細胞破砕装置(SONIFE
IER(R), ブラウン社製)にかけて、80ブラウンユニッ
トで2分間菌体を破砕した。破砕後、冷却遠心機にて回
転数15000rpm、温度4℃で30分間遠心分離を
し、上清を回収した。これを粗酵素液とし、以下の実験
に用いた。同様の方法により、スタンダード株について
も粗酵素液を調製した。
【0027】(2)PAGE用試料の調製 上記の(1)によって得た粗酵素液78μl、0.5M
トリス−塩酸緩衝液(pH6.8)2μl、グリセリ
ン20μl、マーカー色素(組成:ブロモフェノールブ
ルー(和光純薬社製)1mg、グリセリン100μl、
蒸留水900μl)10μlを、ミクロチューブ(1.
5ml容)で混合し、これをPAGE用試料として用い
た。1レーンあたりのタンパク質は5μgである。
【0028】(3)電気泳動 PAGE用ゲルに用いる以下のA〜D溶液を調製した。 A溶液:30%アクリルアミド溶液;アクリルアミド
(和光純薬社製)29.2gとビス(N,N'- メチレンビ
スアクリルアミド)(和光純薬社製)0.8gを蒸留水
に溶かし、100mlとした。 B溶液:1.5M トリス−塩酸緩衝液(pH8.
8);トリスアミノメタン(和光純薬社製)18.17
gを蒸留水(70ml)に溶かし、濃塩酸でpH8.8
に調整した後、蒸留水で100mlとした。 C溶液:0.5M トリス−塩酸緩衝液(pH6.
8);トリスアミノメタン(和光純薬社製)6.06g
を蒸留水(70ml)に溶かし、濃塩酸でpH6.8に
調整した後、蒸留水で100mlとした。 D溶液:10%過硫酸アンモニウム;過硫酸アンモニウ
ム(和光純薬社製)0.1gに蒸留水1mlを加えた。 ゲルは、D-LDH およびDL-LDH用の2枚のスラブゲルを作
成した。分離ゲルおよび濃縮ゲルのアクリルアミド濃度
は、それぞれ8.49%と4.5%で、以下のように配
合した。
【0029】 8.49%分離ゲル部 4.5%濃縮ゲル部 ──────────────────────────────── A溶液 5.0ml 0.9ml B溶液 4.4 ─ C溶液 ─ 1.5 D溶液 0.070 0.018 蒸留水 8.2 3.6 TEMED * 0.01 0.01 ──────────────────────────────── * N'-N'-N'-N'-テトラメチルエチレンジアミン(IBI社製)
【0030】電気泳動条件は次の通りである。泳動装置
は日本エイドー社製、ミニスラブゲル電気泳動装置を用
い、泳動用緩衝液はトリスアミノメタン(和光純薬社
製)3gとグリシン14.4gを蒸留水で1Lとした。
また、電流はゲル1枚あたり分離ゲル15mA、濃縮ゲ
ル10mAを目安に通電した。電気泳動は、試料中のマ
ーカー色素がゲルの先端から5mmとなったときに終了
した。
【0031】(4)ビール有害性の判定 電気泳動終了後のゲルを、活性染色液(D-LDH用またはDL
-LDH用) に60分間浸し、酵素の移動パターンを染色し
た。染色液の組成は、乳酸リチウム塩(D型またはDL型、
D 型はシグマ社製、DL型は和光純薬社製)1mg、β−
NAD(シグマ社製)50mg、ニトロブルーテトラゾ
リウム(和光純薬社製)20mg、フェナジンメトスル
フェート(和光純薬社製)4mgを溶解させたものを用
いた。これらを50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)ま
たは50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)10
0mlに溶解した。反応終了後、染色液を廃棄した。続
いて、7%酢酸水溶液50mlを添加して反応を停止
し、LDH の泳動パターンの相対移動度を算出した。ビー
ル有害菌は、相対移動度0.78の位置にL-LDH のバン
ド、1.00の位置にD-LDH のバンドを持ち、すべてグ
ループBに属する。それ故、グループBと同一の泳動パ
ターンを示した被検菌株は、ビール有害性の菌株である
と判定される。
【0032】グループBに属する菌株のD-LDH のバンド
の移動度を1としたとき、その他のバンドの相対移動度
は以下の通りである。グループ L-LDH移動度 D-LDH移動度 A 0.78 0.97 B 0.78 1.00 C 0.78 1.05 D 0.85 0.85 E 1.23 1.23 なお、培養条件によっては移動度0.63の位置にD-LD
H のバンドが出現する場合もあるが、該バンドの出現に
よって他のバンドの移動度等への影響はない。図2は、
スタンダード株およびビール工場より分離・同定された
被検菌株の各酵素を電気泳動した後のパターンを示す図
である。レーン1はAHU 1508株、2はJCM 1559株、3は
JCM 1059T 株、4はJCM 1102株、5はJCM 1562株、6は
被検菌株(SBC 8002株)である。
【0033】上記の結果および第3表から明らかなよう
に、LDH の泳動パターンから算出した相対移動度の違い
から、スタンダード株および被検菌の合計51株は、す
べてA〜Eの5つのグループのいずれかに分類された。
また、第3表に示す通り、ビール混濁試験によりビール
有害株と判定された菌株は、すべてグループBに属して
いる。なお、グループBに属するものでも非有害株と判
定されるものがあるが、これら菌株は有害株に変わる可
能性や有害株であったものが何らかの原因で非有害株に
変わった可能性がある。したがって、グループBに属す
る菌株はビール有害株と判定するのが妥当である。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、ラクトバチルス・ブレ
ビスと同定された菌株がビール中で増殖する能力を有す
るかどうかの判定を、従来の方法よりも迅速、かつ正確
に行うことができる。したがって、本発明の方法をビー
ル工場における工程管理の指標として導入することによ
り、ビール製造工程における微生物管理の安定化に寄与
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ビール工場より分離されたラクトバチルス・
ブレビス菌株の D-LDHを試料として用いた電気泳動図で
ある。
【図2】 スタンダード株および被検菌株の D-LDHを試
料として用いた電気泳動図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年9月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正内容】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そのため、前記の手法
とは別の観点から、ビール中でのラクトバチルス・ブレ
ビスの増殖能力を判定する方法の開発が望まれている。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく検討を重ね、そ
の過程で乳酸菌に存在する酵素に着目した。乳酸菌は生
成する乳酸の光学異性(D-(-) 乳酸とL-(+) 乳酸)の比
によってL型,DL型及び D型に大別される(乳酸旋光
性)。また、乳酸菌に存在し、乳酸の生成に関与する酵
素である乳酸脱水素酵素(以下、LDH と記載する。)
は、光学活性ごとに酵素タンパクは別々に存在し、L-乳
酸脱水素酵素(以下、L-LDH と記載する。)や D−乳酸
脱水素酵素(以下、D-LDH と記載する。)と表現され
る。DL型の乳酸菌であるラクトバチルス・ブレビスに
は、L-LDH と D-LDHの2つの酵素が存在する。このLDH
は、菌種によって性質が異なり、ポリアクリルアミドゲ
ル上で電気泳動をさせると、その分子量や荷電等に応じ
て泳動距離に差が現れるため、分類の指標の一つとして
認められている(Bregey's Manual of Systematic Bact
eriology, 2, 1230(1986) 、乳酸菌実験マニュアル, 95
-97(1992),朝倉書店) 。この性質は菌種を特定するため
に利用されているが、ビール中での増殖性を判定するた
めの指標としては利用されていない。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被検菌であるラクトバチルス・ブレビス
    Lactobacillus brevis) の D−乳酸脱水素酵素のポリ
    アクリルアミドゲル電気泳動を行い、その移動パターン
    から当該微生物が属するグループを識別することによ
    り、ビールに対する有害性を判定する方法。
  2. 【請求項2】 被検菌であるラクトバチルス・ブレビス
    を5グループに分類し、ビールに対する有害性を判定す
    る請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 被検菌であるラクトバチルス・ブレビス
    が、スタンダード株ラクトバチルス・ブレビスJCM 1559
    株または同VTT E64029株と同一グループに属すると識別
    されたとき、ビール有害菌であると判定する請求項1記
    載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の判定方法を導入すること
    を特徴とするビール工場における工程管理方法。
JP9231886A 1997-08-14 1997-08-14 乳酸菌のビールに対する有害性の判定法 Withdrawn JPH1156391A (ja)

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