【発明の詳細な説明】
電気化学デバイスに使用される広い電気化学ウィンドウの溶媒、および
その溶媒を組み込んだ電解質溶液
本願は、米国特許仮出願第60/006,207号(1995年11月3日出願)および米国特
許仮出願第60/006,435号(1995年11月13日出願)に基づく優先権を主張する。本
願は、米国特許出願出願第 号(1996年10月31日出願)に基づく優先権
を主張する。この特許出願は、本願と同じタイトルおよび同じ発明者を有し、代
理人の識別番号P30795を有し、そして米国特許商標庁へ速達番号EH682355287US
で送られた。本願はまた、米国特許仮出願第 号(1996年10月24日出願
)に基づく優先権を主張する。この特許出願のタイトルは、「A Novel Electrol
ayte Solvent for Rechargeable Lithium and Lithium-Ion Batteries」であり
、本願と同じ発明者を有し、代理人の識別番号P30794のを有し、そして米国特許
商標庁へ速達番号EH790578071USで送られた。上記の出願は、本明細書中で参考
として援用される。政府のライセンス権利
米国政府は、本発明に関して支払済みのライセンス、および限定された条件下
においてリーズナブルな期間、他人にライセンスすることを特許権者が要求する
権利を有する。イントロダクション
本発明は、概して、例えば、電気化学デバイスにおいて使用されるような、液
体およびゴム状ポリマー電解質溶液中において使用される電解質溶媒に関する。
より詳細には、本発明は、ホウ素含有電解質溶媒およびホウ素含有電解質溶液に
関する。発明の背景
液体またはポリマー電解質溶液中で使用される代表的な電解質溶媒は、アルキ
ルエーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサラン、ジ
グリムおよびテトラグリム);ならびにアルケンカーボネート(例えば、エチレ
ンカーボネート(本明細書中以下において「EC」)およびプロピレンカーボネー
ト(本明細書中以下において「PC」))を含む。これらの溶媒は、電解質溶質お
よび/またはゴム化ポリマー添加剤を溶解するために用いられ、電気化学デバイ
スに使用され得る電解質溶液を形成する。
アルキルエーテルおよびアルケンカーボネートの両方には、電気化学溶媒とし
て重大な不都合が存在する。詳細には、アルキルエーテルは比較的揮発性である
ので、時間が経過すると蒸発することがある。このことは、長い期間操作するこ
とを意図する任意の電気化学デバイスにおいては不都合である。なぜなら、溶媒
の蒸発はデバイスの電気的挙動を変化させ得るからである。さらに、このような
溶媒は火災の危険性を有する。
また、アルキルエーテルは、典型的には、電解質塩の溶媒和を妨げる低い誘電
率を有する。従って、アルキルエーテルは、典型的には、多量の電解質塩を溶解
するための、カチオンのキレート化効果に依存する。制限された量の電解質を含
有するこのような組成物は、制限された数の利用可能な電荷キャリアのイオンを
有する傾向にある。さらに、カチオンの溶媒和が溶液を形成するための推進力で
ある場合、カチオンの輸率は低くなる。電荷キャリアの欠乏および低いカチオン
輸率値の両方とも、所望でない分極効果を引き起こし得る。
アルケンカーボネートは、アルキルエーテルよりも高い誘電率を有するので、
液体またはポリマー電解質に対するより良好な電解質である。しかし、PCは、適
切な溶媒ではない。なぜなら、アルカリ金属の存在下では不安定であり、リチウ
ム上で不導態層を形成するからである。ECもまた問題である。なぜなら、ECの融
点は室温より高いので、ECは液体またはゴム状電解質を得るためにその融点を低
くする化合物を混合しなければならないからである。また、PCおよびECは両方と
も、アルカリ金属塩と共に、曇った溶液を形成する。これは、不都合な組成の変
動または前駆的な不導態反応生成物の徴候である。電解質溶媒としての他の有機
分子(例えば、ケトン)の使用についての種々のうまくいかない試みがまた行わ
れてきた。これらの試みが失敗であったのは、これらの分子が、アルカリ金属の
存在下で、乏しい化学的安定性および乏しい電気化学的安定性を示すからである
。
これらのルイス酸ホウ素含有化合物(本明細書中以下では「ホウ素電解質溶液
」)が有利な電解質溶媒として機能することは、これまでに一度も認識されてい
なかった。また、化学的および電気化学的に安定なホウ素電解質溶媒混合物が、
従来の電解質溶媒にホウ素電解質溶媒を添加することによって作製され得ること
は、以前には教示も示唆もされていなかった。発明の要旨
本発明は、ホウ素電解質溶媒、ホウ素電解質溶媒混合物およびホウ素電解質溶
液(これらは全て少なくとも1種のルイス酸ホウ素含有化合物を含む)に関する
。本発明はさらに、このような電解質溶液を使用する再充電可能なバッテリーお
よび他の電気化学デバイスに関する。
詳細には、本発明のホウ素電解質溶媒は、1種以上の、ルイス酸特性を有する
3配位ホウ素原子を含有する。このようなホウ素電解質溶媒は、酸素、ハロゲン
原子、イオウ原子またはそれらの組み合わせに結合したホウ素を有するものを含
む。
本発明の1つの具体的な実施態様では、このホウ素電解質溶媒は、以下の式(
I)に示されるように、2つの酸素基および1つのハロゲン原子に結合するホウ
素原子を含有する:
ここで、R1およびR2は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族のアルキル基
であり得、そしてXはハロゲン原子である。これらのアルキル基は、ホウ素原子
における電荷密度を有効に変化させる種々の置換基(例えば、ハロゲン化物)を
有し得る。R1およびR2は、一緒になってO−B−O結合を含むヘテロ環リング
を形成することがさらに好ましい。
好ましいホウ素電解質溶媒は、以下の式(II)に示されるような少なくとも1
つのBO3基を有するホウ酸(borate)化合物である:
ここで、R1、R2、およびR3は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族アル
キル基であり得る。これらのアルキル基は、ホウ素原子における電荷密度を有効
に変化させる種々の置換基(例えば、ハロゲン化物)を有し得る。R1およびR2
は、一緒になってO−B−O結合を含むヘテロ環リングを形成することがさらに
好ましい。式(II)に従うこのように好ましい1つの分子(本明細書中以下では
「BEG-3」)においては、R1およびR2は一緒になってプロピル基を形成し、そ
してR3はイソプロピル基である。
本発明のより好ましい実施態様では、このホウ素電解質溶液は、以下の式(II
I)に従うボレートエーテルダイマーを含み得る:
ここで、R1、R2、R3、およびR4は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族
アルキル基であり得る。これらのアルキル基は、ホウ素原子における電荷密度を
有効に変化させる種々の置換基(例えば、ハロゲン化物)を有し得る。R1およ
びR2ならびにR3およびR4はそれぞれ、一緒になってO−B−O結合を含む2
つのヘテロ環リングを形成することがさらに好ましい。式(III)に従うこのよ
うに好ましい1つの分子(本明細書中以下では「BEG-2」)においては、R1およ
びR2ならびにR3およびR4はそれぞれ、一緒になって2つのプロピル基を形成
する。
最も好ましいクラスのボレートエーテルタイプのホウ素電解質溶媒は、以下の
式(IV)に示されるようにB−O−Z−O−B結合を有する:
ここで、R1、R2、R3、およびR4は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族
アルキル基であり得る。これらの基は、異なる電気陰性度を有する種々の置換基
(例えば、ハロゲン化物)で置換され得、これらの置換基は、ホウ素原子におけ
る電荷密度を有効に変化させる。R1およびR2ならびにR3およびR4はそれぞれ
、一緒になってO−B−O結合を含む2つのヘテロ環リングを形成することがさ
らに好ましい。「Z」は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族アルキル基で
あり得、これはまた、異なる電気陰性度を有する種々の基で置換され得る。「Z
」はまた、ジメチルシロキサンのようなシロキサン基または別の二価の基であり
得る。式(IV)に従うこのように好ましい1つの分子(本明細書中以下では「BE
G-1」)においては、R1およびR2ならびにR3およびR4はそれぞれ、一緒にな
って2つのプロピル基を形成し、そしてZは(CH2)3である。BEG-1の化学構造を
以下に示す:
本発明のホウ素電解質溶媒混合物は、ホウ素電解質溶媒(これは、従来の電解
質溶媒(例えば、アルケンカーボネートまたはアルキルエーテル)を伴って電解
質溶媒として機能する)を含有する。ホウ素電解質溶液は、ホウ素電解質溶媒ま
たはホウ素電解質溶媒混合物に溶解された電解質溶質(例えば、電解質塩)を含
有する。本発明のホウ素電解質溶液は、好ましくは50モル%未満(より好ましく
は、30モル%未満)の電解質溶質を含有する。
本発明のホウ素電解質溶媒およびホウ素電解質溶媒混合物は、
(i)従来の電気化学溶媒と比較して、アノード分解に対する予期されない
優れた電気化学的安定性を示す;
(ii)アルカリ金属の存在下における劣化に対して予期されない優れた化学
的安定性を示す;
(iii)ほとんどの電解質溶質(これは、アルカリ金属塩を含む)を大きな
モルフラクションで溶解し得、ホウ素電解質溶液に高い室温伝導度を提供する;
(iv)室温から約-70℃のガラス転移点に下がるまで、ガラス形成液体(す
なわち、電解質溶質塩の存在下または非存在下で結晶化に対して耐性がある液体
)であり、ゆえに低温での使用が可能である;
(v)ほとんどの従来の電解質溶媒より高い沸点と、それに対応してより低
い低い室温での揮発性を示し、ゆえに電解質溶液が揮発する可能性が減少する;
そして
(vi)広範な電圧範囲にわたって使用可能な、広い電気化学ウィンドウ(el
ectrochemical window)を示す。
特に効果的なホウ素電解質溶媒混合物は、1種以上の上記ホウ素電解質溶媒と
アルケンカーボネートとを一緒に混合することによって得られ得る。このような
ホウ素電解質溶媒混合物は、従来の電解質溶媒(これは、単にアルケンカーボネ
ートのみを含む)より低い粘度および著しく改善された電気化学的安定性を有す
る。このような、アルケンカーボネートを含むホウ素電解質溶媒混合物の例は、
2重量部のECと混合された1重量部のBEG-1の混合物(本明細書中以下では、「
1:2 Mix BEG-1:EC」);2重量部のECと混合された1重量部のBEG-2の混合
物(本明細書中以下では、「1:2 Mix BEG-2:EC」);および対応するPC混合
物を含むが、これらに限定されない。
本発明のさらに有利な実施態様では、本発明のホウ素電解質溶媒混合物または
電解質溶液は、ゴム状コンシステンシーを与えるポリマーをさらに含有し得る。
このようなゴム状電解質は、「ゲル電解質」として知られる。また、ゴム化構成
成分としてかつ電解質溶媒として同時に機能するポリマー性ホウ素化合物を形成
し得る。
本発明のこれらおよび他の特徴、局面、および利点は、以下の説明および添付
の図面を参照するとより理解されるようになる。図面の簡単な説明
図1は、BEG-1に溶解された種々のモル%のLiClO4についての、温度(K)の
逆数に対するlog 伝導度(Scm-1)のプロットである。
図2は、種々の温度(℃)でBEG-1に溶解されたLiClO4のモルフラクションに
対するlog 伝導度(Scm-1)のプロットである。
図3は、BEG-1に溶解された種々のモル濃度のLiN(SO2CF3)2についての、温度
(K)の逆数に対するlog 伝導度(Scm-1)のプロットである。
図4は、BEG-1溶媒および1:2 Mix BEG-1:EC溶媒中の2.5M LiClO4の溶液に
ついての、2つのサイクリックボルタモグラムを重ね書きしたものである。
図5は、従来のジメチルエーテル:EC(1:1混合物)中の1.0M LiClO4溶液
および従来のEC中の3.1M LiClO4溶液と比較された1:2 Mix BEG-1:EC溶媒中
の2.5M LiClO4の溶液についての、3つのサイクリックボルタモグラムを重ね書
きしたものである。
図6は、従来のPC中の1.0M LiClO4の溶液と比較された1:2 Mix BEG-1:PC
中の1.0M LiClO4の溶液についての、2つのサイクリックボルタモグラムのプロ
ットを重ね書きしたものである。
図7は、1:2 Mix BEG-1:EC溶媒中の2.5M LiClO4の溶液、および20重量%
のポリ酢酸ビニル(PVAc)をさらに含有する同じ組成物についての、温度(K)
の逆数に対するlog 伝導度(Scm-1)のプロットを重ね書きしたものである。
図8は、1:2 Mix BEG-1:EC中における、1.0Mおよび2.5Mの、LiClO4、LiN(
SO2CF3)2、およびLiSO3CF3の溶液についての、温度(K)の逆数に対するlog 伝
導度(Scm-1)のプロットを重ね書きしたものである。
図9は、1:2 Mix BEG-1:EC中、1:2 Mix BEG-2:EC中、および1:2 M
ix BEG-3:EC中における、2.5M LiClO4の溶液についての、温度(K)の逆数に
対するlog 伝導度(Scm-1)のプロットを重ね書きしたものである。
図10は、1:2 Mix BEG-1:EC中、1:2 Mix BEG-2:EC中、および1:2 M
ix BEG-3:EC中における、1.0M LiClO4溶液についての、3つのサイクリックボ
ルタモグラムのプロットを重ね書きしたものである。
図11は、Li/1:2 Mix BEG-1:ECゲル電解質(これは、20重量%のPVAcを含有
する)中の2.5M LiN(SO2CF3)2/Li×Mn2O4バッテリーについての、最初の充電/
放電サイクルにおける時間に対するセル電圧のプロットである。
図12は、Li/1:2 Mix BEG-1:ECゲル電解質(これは、20重量%のPVAcを含有
する)中の2.5M LiN(SO2CF3)2/Li×Mn2O4バッテリーについての、数回の充電/
放電サイクルにおける時間に対するセル電圧のプロットである。
図13は、C/1:2 Mix BEG-1:ECゲル電解質(これは、20重量%のポリメチル
メタクリレート(Aldrich MW=120,000)を含有する)中の11.0M LiClO4LiCoO2(
Alfa、98%)についての、数回の充電/放電サイクルにおける時間に対するセル
電圧のプロットである。発明の詳細な説明
本明細書中において用いる用語「ホウ素電解質溶媒」とは、1つまたはそれ以
上の3-配位ホウ素原子を有し、電解質溶質を溶解し得るルイス酸ホウ素含有化合
物をいう。
本明細書中において用いる用語「ホウ素電解質溶媒混合物」とは、少なくとも
1つの本発明のホウ素電解質溶媒を含む、2つまたはそれ以上の電解質溶媒の混
合物をいう。
本明細書中において用いる用語「電解質溶質」とは、電解質として挙動(beha
ve)し(すなわち、長い範囲のイオンの動きにより電流を運ぶ)、そしてホウ素
電解質溶媒またはホウ素電解質溶媒混合物中に溶解し得る伝導度種(例えば、塩
)をいう。
本明細書中において用いる用語「ホウ素電解質溶液」とは、電解質溶質と、ホ
ウ素電解質溶媒またはホウ素電解質溶媒混合物との組み合わせをいう。
本明細書中において用いる用語「電気化学デバイス」とは、電解質を使用する
任意の装置をいうことを意味する。
本発明の1つの実施態様において、ホウ素電解質溶媒は、以下の式(I)の化合
物を含む:
ここで、R1およびR2は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族のアルキル基
であり得、そしてXはハロゲン原子である。これらのアルキル基は、効果的にホ
ウ素原子の電荷密度を変更する様々な置換基(例えば、ハロゲン化物)を有し得
る。R1およびR2は、一緒になって、O−B−O結合を含むヘテロ環リングを形
成することがさらに好ましい。
好ましいホウ素電解質溶媒は、以下の式(II)のホウ酸化合物である:
ここで、R1、R2およびR3は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族のアル
キル基であり得る。これらのアルキル基は、効果的にホウ素原子の電荷密度を変
更する様々な置換基(例えば、ハロゲン化物)を有し得る。R1およびR2は、互
いに一緒になって、O−B−O結合を含むヘテロ環リングを形成することがさら
に好ましい。酸素が硫黄に置き換わっている、式(II)の化合物に似た、有利なホ
ウ素電解質溶媒を合成することもまた好ましいことであり得る。
実施例2に例示されているように、式(II)のホウ酸化合物は、好ましくは、B2
O3を、OH基含有分子(例えば、アルコールまたはジオール)と反応させるこ
とにより合成される。より好ましい式(II)のボレートエーテル(borate ether)
は、B2O3を、1,2-プロパンジオールまたは1,3-プロパンジオールと反応させる
ことにより合成される。
本発明のより好ましい実施態様において、ホウ素電解質溶媒は、以下の式(III
)のボレートエーテルダイマー(borate ether dimer)を含み得る。
ここで、R1、R2、R3およびR4は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族の
アルキル基であり得る。これらのアルキル基は、効果的にホウ素原子の電荷密度
を変更する様々な置換基(例えば、ハロゲン化物)を有し得る。R1およびR2、
ならびにR3およびR4は、それぞれ、一緒になって、O−B−O結合を含む2つ
のヘテロ環リングを形成することがなおさらに好ましい。
本発明の別の好ましい実施態様において、式(III)のホウ素電解質溶媒は、B2
O3を、1,3-プロパンジオールと、実施例5に記載したように反応させることに
より合成される。形成する生成物は、以下に示すホウ素エーテルである。
本発明のもっとも好ましい実施態様において、ホウ素電解質溶媒は、以下の式
(IV)のボレートエーテルダイマーであり得る:
ここで、R1、R2、R3およびR4は、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族の
アルキル基であり得る。これらの基は、効果的にホウ素原子の電荷密度を変更す
る、異なる電気陰性度を有する様々な置換基(例えば、ハロゲン化物)で置換さ
れ得る。R1およびR2、ならびにR3およびR4は、それぞれ、一緒になって、O
−B−O結合を含むヘテロ環リングを形成することがさらに好ましい。「Z」は
、直鎖または分枝鎖の脂肪族または芳香族のアルキル基であり得、これはまた、
異なる電気陰性度を有する様々な基により置換され得る。「Z」はまた、シロキ
サン基(例えば、ジメチルシロキサンまたは別の2価の基)であり得る。
式IVの好ましい電解質溶媒は、実施例4に示すように、(CH3)2Si(OH)2
を、H3BO3および1,3-プロパンジオールと反応させることにより合成される。
形成される生成物(これより後「BEG-4」)を以下に示す:
式IVのもっとも好ましいホウ素電解質溶媒は、実施例3に示すように、B(O
H)3をジオール化合物と反応させることにより合成される。もっとも好ましいジ
オールは、1,2-プロパンジオールおよび1,3-プロパンジオールである。B(OH)3
を1,3-ジオール化合物と反応させることにより形成される生成物(これより後
「BEG-1」)を以下に示す:
本発明の別の実施態様において、電解質溶質は、ホウ素電解質溶媒または溶媒
混合物に添加されてホウ素電解質溶液を形成する。好ましい電解質溶質として、
イオン化塩(例えば、LiAlCl4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiSO3CF3、およびそれ
らの対応するナトリウムアナログ)が挙げられる。LiAlCl4を含むホウ素電解質
溶液は、望ましい。なぜなら、それらは、非常に高い伝導度電解質を生産するか
らである。しかし、LiN(SO2CF3)2の溶液は、消費者用途においてより好ましい。
なぜなら、LiN(SO2CF3)2は、LiCLO4よりも化学的に安定だからであり、そしてLi
ClO4のような爆発の危険を提供しないからである。さらに、図8に示すように、
LiN(SO2CF3)2含有ホウ素電解質溶液はまた、比較的高い伝導度を示す。好ましい
ホウ素電解質溶液において、LiClO4は、BEG-1に溶解する。図1および2は、BEG
-1中の9.1モル%のLiClO4の溶液の室温伝導度が室温で10-4Scm-1に近づき
得ることを示す。図8は、1:2 BEG-1:EC混合物(Mix BEG-1:EC)中の1.0MのLiClO4
の溶液が、室温において約10-2.3Scm-1の伝導度を有することを示す。別の好
ましいホウ素電解質溶液において、LiAlCl4は、BEG-1およびECの混合物中に溶解
した。LiAlCl4は、ほとんどの有機溶媒中、および純粋なBEG-1中において分解す
るが、BEG-1およびECの混合物中では分解しない。
BEG-1およびBEG-2は対称構造を有し、そしてそのため、小さい誘電率を有し得
る。しかし、BEG-1およびBEG-2は、アルカリ金属塩電解質溶質のための非常に良
好な溶媒である。例えば、BEG-1は、50モル%までのLiClO4を室温で溶解して、
粘性の溶液となる。
作用(operation)についてのいずれの特定の理論にも、本発明を限定はしな
いが、ClO4 -酸素原子と、電子欠損ホウ素原子との間の相互作用が溶解をもたら
すことが理論づけられる。
BEG-1およびBEG-2中のLiClO4の溶液は、実質的に透明になり易く、このことは
、LiClO4が、公知のエーテルまたは炭酸塩溶媒(これらはしばしば曇った溶液を
提供する)よりも良好に、BEG-1およびBEG-2中に溶解し得ることを示す。曇った
電解質溶液は、いくつかの適用(例えば、光学ディスプレイ)においては不適切
である。
本発明のさらに別の局面において、従来の溶媒(例えば、アルケンカーボネー
トまたはアルキルエーテル)が、ホウ素電解質溶媒に添加されて、ホウ素電解質
溶媒混合物を形成し得る。好ましい電解質溶媒混合物「1:2 Mix BEG-2:EC」
は、1重量部のBEG-2を2重量部のECと混合することにより形成される。最も好
ましい電解質溶媒混合物「1:2 Mix BEG-1:EC」は、1重量部のBEG-1を2重量
部のECと混合することにより形成される。
図7に示すように、高分子量のポリマーもまた電解質溶液に添加されて、より
好ましいゴム状挙動を示すゲル電解質を形成し得る。ゴム状コンシステンシー(c
onsistency)を電解質に与えるのに十分なほど高い分子量を有するポリマーを使
用することが好ましい。好ましいポリマーとしては、少なくとも約108の分子
量を有する高分子量ポリエチレンオキサイド、および50,000より大きい分子量を
有するポリ酢酸ビニルが挙げられる。
さらに、実施例14に示されるように、ホウ素電解質溶媒(例えば、BEG-1)
をシリケートと反応させることによりポリマーオイルが合成され得る。本発明の
さらに別の局面において、ポリマー性ルイス酸ホウ酸化合物が、実施例15に示
されるように合成され得る。
本発明のホウ素電解質溶液のイオン伝導度は、約1〜2cm-1のセル定数を有す
る、2つの白金電極浸漬型セルを用いて得られる複合インピーダンスプロットか
ら測定された。複合インピーダンスプロットは、HEWLETT-PACKARD Model HP4192
A-Frequency Analyzerを用いて発生させた。EUROTHERM 温度コントローラーによ
りコントロールされる一連の温度において、所定の温度範囲をカバーするように
、測定は、自動化された。
図4〜6および10に示されるサイクリックボルタモグラムは、PAR電位差計
を用いて得られた。すべてのスキャンは、室温で、10mV/sのスキャン速度で行っ
た。白金疑似参照電極をすべてのスキャンに使用した。
本明細書中に記載されるホウ素電解質溶媒およびホウ素電解質溶液は、電解質
を必要とする電気化学デバイスのすべての様式で有用である。電解質を必要とす
る電気化学デバイスのいくつかの例としては、バッテリー、燃料電池、光発色性
ディスプレイ、光電池(photovoltaic cell)およびガスセンサーが挙げられる。
このリストは、単に例示であり、そしていずれの特定の電気化学デバイスにも本
発明を限定することを意図しない。
ホウ素電解質溶媒、ホウ素電解質溶媒混合物、および本発明の溶液の特定の実
施態様をここで詳細に記載する。これらの例は、例示的であることを意図し、そ
して本発明は、これらの実施態様中で説明する材料または量に限定されない。
実施例1
式(I)のホウ素電解質溶媒の調製
式(I)のホウ素電解質溶媒を合成した。形成した生成物(これ以後「BEG-5」)
を以下に示す:
A.Finch,J.C.Lockhart および E.J.Pearn,J.Org.Chem.,26,3250-5
3頁(1961)に開示された以下の手順により、BEG-5を調製した。15.2グラム(0.2
0モル)の1,3-プロパンジオール(Aldrich、98%)を、5℃〜10℃において、60m
Lの塩化メチレン(Baker)中に希釈された三塩化ホウ素の23.5グラム(0.20モル
)の溶液(Aldrich、ヘプタン中1M)に滴下した。フラスコ中に窒素を泡立て
て、反応により発生するHClを除去した。反応を6時間進行させた。生成物の30
℃〜31℃/0.15mmHgでの真空蒸留により、上記の生成物15.9グラムを得た(BCl3
に基づく収率66%)。
実施例2
式(II)のホウ素電解質溶媒の調製
式(II)のホウ素電解質溶媒を合成した。形成した生成物(これ以後「BEG-3」
)を以下に示す:
以下の手順により、BEG-3を調製した。13.92グラム(0.20モル)のB2O3(Aldr
ich、99.98%)および30.40グラム(0.40モル)の1,3-プロパンジオール(Aldrich
、98%)を、約50mLのトルエン中で混合し、そして水分離装置を備えたフラスコ
中で、さらなる水が発生しなくなるまで還流した。このステージで分離された水
の合計は、約7.3mLであった。次いで、26.40グラム(0.44モル)のイソプロパノー
ル(Aldrich、99%)を添加した、そしてさらなる水を3.6mL回収した。次いで、
得られた生成物をリチウムの存在中で一晩還流した。67℃〜68℃/0.4 mmHgでの
真空蒸留により、上記に示した38.0グラムの生成物を得た(B2O3に基づく収率
66%)。
実施例3
式(IV)のホウ素電解質溶媒の調製
式(IV)の、より好ましいホウ素電解質溶媒を以下のように合成した。18.55グ
ラム(0.30モル)のH3BO3(Allied Chemical、99.89%)および34.25グラム(0.
45モル)の1,3-プロパンジオール(Aldrich、98%)を、約80mLのトルエンととも
に、水分離装置を備えたフラスコ中で混合した。8時間還流した後、合計16.8mL
の水が分離された。次いで、得られた生成物を、リチウムの存在中で一晩還流し
た。ほとんどの溶媒をローテーションエバポレーターで除去し、そして残りの溶
媒を真空蒸留により除去した。125℃〜128℃/0.05 mmHgにおいて回収されたフ
ラクションは、約29.6グラムを与えた(B2O3に基づいて81%)。
BEG-1は、粘性の、ガラス形成液であり、-80℃のTgおよび、125〜128℃/0.05
mgHg(760mmHgにおいて380℃を暗示する)の沸点を有する。この物質の調製の以
前の報告は、10.6mmHgにおいて165〜169℃、(760mmHgにおいて390℃を暗示する
)の沸点を報告する。H.Steinberg,Organoboron Chemistry,第1巻、第5章(
1964)を参照。
実施例4
式(IV)の第2のホウ素電解質溶媒の調製
式(IV)の、好ましいホウ素電解質溶媒を以下のように合成した。30mLの脱イオ
ン水を添加することにより、14.2グラム(0.11モル、Aldrich、99%)の(CH3)2SiC
l2を加水分解し、そして生成物を60mLのエチルエーテルで抽出した。pHが7にな
るまで有機相を脱イオン水で洗浄し、その後エチルエーテルをエバポレートした
。1,3-プロパンジオール(16.8グラム、0.22モル、Aldrich、98%)、H3BO3(13.
6グラム、0.22モル、Allied Chemical、99.89%)およびトルエン(80mL)を得ら
れた(CH3)2Si(OH)2に添加し、そしてさらなる水が分離しなくなるまで還流した
(約8時間)。混合物をさらに、金属リチウムの存在中で一晩還流し、そして溶
媒をローテーションエバポレーターで除去した。150℃〜155℃/1 mmHgのフラ
クションを回収することにより、H3BO3に対して40%の収率で生成物を得た。
実施例5
式(III)のホウ素電解質溶媒の調製
式(III)の、好ましいホウ素電解質溶媒を以下のように合成した。13.92グラム
(0.20モル)のB2O3(Aldrich、99.98%-)および30.40グラム(0.40モル)の1,3-
プロパンジオール(Aldrich、98%)を、実施例2に記載した様式と類似の様式
で反応させた。最終的に分離された水の量は、7.3mLであった。真空蒸留の間、1
38℃〜143℃/0.05 mmHgでのフラクションを、27.84グラムの収量で回収した(B2
O3に基づいて75%)。
実施例6
ホウ素電解質溶媒混合物の予期しない安定性
実施例3に従って調製された1重量部のBEG-1と、2重量部のエチレンカーボ
ネートとを混合することにより、ホウ素電解質溶媒混合物を調製した。1重量部
のBEG-1と、2重量部のプロピレカーボネートとを混合することにより、第2の
ホウ素電解質溶媒混合物を調製した。1重量部のBEG-1と、1重量部のアセトン
(これは単純なタイプのケトンである)とを混合することにより、第3のホウ素
電解質溶媒混合物を調製した。すべての試薬は、乾燥した箱の中で混合および計
量した。
上記の電解質溶媒混合物中に浸漬されたつやのあるリチウムホイルのピースを
含むバイアルを、しっかりと密封し、そして観察のためにしまっておいた。つや
のあるリチウムホイルのピースを、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ート、およびアセトン含有溶媒混合物中に浸漬することにより、コントロールサ
ンプルを調製した。
アセトン含有バイアルを一晩、室温で放置した。エチレンカーボネートおよび
プロピレンカーボネート含有バイアルをオーブン中にて、90℃に一晩加熱した。
すべてのコントロールサンプル中に、バイアル中の白色の沈殿が観察された。
この結果は、予想通り、溶媒がアルカリ金属と反応したことを示す。しかし、エ
チレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートを有するホウ素電解質溶媒混
合物は、数日の間、完全に透明なままであり、そしてリチウムホイルは、明るく
、つやのあるままであった。
この結果は、ホウ素電解質溶媒が、エチレンカーボネートまたはプロピレンカ
ーボネートと、リチウム金属とが反応することを防いだことを示す。アセトンを
有するホウ素電解質溶媒混合物は、リチウムの存在下におけるいくらかの分解を
示した。しかし、その分解は、アセトンコントロールサンプルに比べて非常に阻
害された。
実施例7
ホウ素電解質溶媒混合物の調製
実施例3に従って調製された1重量部のBEG-1と、2重量部のECとを混合する
ことにより、ホウ素電解質溶媒混合物「1:2 Mix BEG-1:EC」を形成した。
実施例3に従って調製された1重量部のBEG-1と、2重量部のPCとを混合する
ことにより、ホウ素電解質溶媒混合物「1:2 Mix BEG-1:PC」を形成した。
実施例5に従って調製された1重量部のBEG-2と、2重量部のECとを混合する
ことにより、ホウ素電解質溶媒混合物「1:2 Mix BEG-2:EC」を形成した。
実施例2に従って調製された1重量部のBEG-3と、2重量部のECとを混合する
ことにより、ホウ素電解質溶媒混合物「1:2 Mix BEG-3:EC」を形成した。
実施例8
LiClO4BEG-1 ホウ素電解質溶液の調製
実施例3により調製したBEG-1にLiClO4を溶解することにより、様々な濃度のL
iClO4ホウ素溶液を調製した。すべての材料は、グローブボックス中で計量した
。図1は、これらの電解質についての(伝導度のlog)対(温度の逆数)のプロ
ットを示す。図2は、(伝導度のlog)対モルフラクションLiClO4の30℃、50℃、1
00℃および150℃のプロットを示す。
最高の室温伝導度を有する溶液は、9.1%のLiClO4を含み、そして、10-4Scm-1
以下の伝導度を有する。図1は、75モル%のLiClO4のBEG-1中の溶液が、80℃を
越えても液体として熱力学的に安定であったことを示す。
図4は、2.5M LiClO4 Mix BEG-1:EC ホウ素電解質溶液について、および純粋
なBEG-1溶媒についての2つのサイクリックボルタモグラム(voltammogram)の
重ね書きを示す。ホウ素電解質溶液についてのサイクリックボルタモグラムは、
リチウムがほとんど可逆的な様式で、堆積し得、かつはぎ取られて溶液中に戻り
得ることを示している。この特性は、これらの電解質を用いる再充電可能な電気
化学デバイスについて重要である。
図4はまた、2.5M LiClO4 1:2 Mix BEG-1:EC 電解質溶液溶媒が、約5.3ボル
トの、広い電気化学的ウィンドウ(window)を示したことを示す。この観察され
た電圧ウィンドウは、溶媒によってよりはむしろ、溶液中のClO4 -アニオンおよ
びLi+カチオンの安定性により制限されると考えられる。
実施例9
1:2 Mix BEG-1 :EC 電解質溶媒中の
LiN(SO2CF3)2 のホウ素電解質溶液の調製
0.5〜6.0M ホウ素電解質溶液を形成するのに十分な量のBEG-1電解質溶媒混合
物にLiN(SO2CF3)2を添加した。これらの溶液のすべては透明であった。
図3は、これらのホウ素電解質についての、(伝導度のlog)対(温度の逆数
)のプロットを示す。図3は、最高の室温伝導度が、0.5または1.0Mホウ素電解
質溶液(これは、10-3.8Scm-1の伝導度を示す)に対応したことを示す。図3は
、さらに、0℃に下がったときに、0.5および1.0M溶液が10-5Scm-1を越えたま
まであることを示した。
実施例10
1:2 Mix BEG-1 :ECを含むホウ素電解質溶液と、
先行技術電解質を含むホウ素電解質溶液との比較
実施例7に従って調製された1:2 Mix BEG-1:ECホウ素電解質溶媒混合物中に
適切な量のLiClO4を溶解することにより、1:2 Mix BEG-1:EC中の2.5M LiClO4
の溶液を調製した。ジメチルエーテルとECとの1:1混合物中にLiClO4を溶解する
ことにより、1.0M LiClO4の溶液を調製した。EC中に適切な量のLiClO4を溶解す
ることにより、3.1M LiClO4の溶液を調製した。すべての材料は、グローブボッ
クス中で計量した。図5は、これらの3つの電解質溶液についての3つのサイク
リックボルタモグラム(voltammogram)の重ね書きを示す。図5は、ジメチルエ
ーテル/EC溶媒またはEC溶媒についてよりも、1:2 Mix BEG-1:EC 溶媒について
、非常に広い電気化学的ウィンドウ(window)を示したことを示す。
実施例7に従って調製された1:2 Mix BEG-1:PCホウ素電解質溶媒混合物中に
適切な量のLiClO4を溶解することにより、1:2 Mix BEG-1:PC中の1.0M LiClO4の
ホウ素電解質溶液を調製した。PC中に適切な量のLiClO4を溶解することにより、
1.0M LiClO4:PC溶液を調製した。図6は、これらの2つの電解質溶液について
の2つのサイクリックボルタモグラム(voltammogram)の重ね書きを示す。図6
は、Li+/Liに関して正の約4.5ボルトで、PC溶液が分解し始めたことを示す。し
かし、ホウ素電解質溶液は、Li+/Liに関して正の約5.6ボルトまで分解し始めな
かった。
実施例11
1:2 Mix BEG-1 :EC中の異なる
アルカリ塩溶液の伝導度の比較
1.0Mおよび2.5MのLiClO4、LiN(SO2CF3)2、およびLiSO3CF3のホウ素電解質溶
液を、実施例7に従って調製された1:2 Mix BEG-1:EC溶媒中に適切な量のこれ
らの塩を溶解することにより調製した。次いで、これらの溶液をテストして、そ
れらの伝導度を測定した。図8は、1.0M LiClO4の溶液が最高の室温での伝導度
を有したことを示す。図8はまた、1.0M溶液が、2.5M溶液よりも高い伝導度を
有したことを示す。ナトリウムトリフルオロメタンスルホネート(CF3SO3Na,Al
drich)を含むホウ素電解質溶液は、同じ濃度において調製されたLiN(SO2
CF3)2の伝導度に非常に似た伝導度を有した。
実施例12
ホウ素電解質溶液の比較
1:2 Mix BEG-1:EC溶媒、1:2 Mix BEG-2:EC溶媒、1:2 Mix BEG-3:EC溶媒、1
:2 Mix BEG-4:EC溶媒、および1:2 Mix BEG-5:EC溶媒について、2.5MのLiClO4
のホウ素電解質溶液を調製した。1:2 Mix BEG-1:EC溶媒、1:2 Mix BEG-2:EC溶
媒の両方の2.5M溶液は、高い室温伝導度を示した。しかし、1:2 Mix BEG-1:
EC溶媒は、実際のデバイスに対してより有利であり得る。なぜなら、それは、よ
り広い電気化学的ウィンドウを有するからである。1:2 Mix BEG-4:EC溶液は、1
:2 Mix BEG-1:EC溶液より高い伝導度を示した。1:2 Mix BEG-5:EC溶液は、1:2
Mix BEG-1溶液に匹敵する伝導度を示した。
図5は、ECに起因する電気化学的分解プロセスが、白金疑似参照電極に関して
+1ボルトで始まることを示す。図10は、ECに起因する電気化学的分解プロセ
スの開始がBEG-3含有ホウ素電解質溶液によっては影響されなかったが、しかしB
EG-2含有、BEG-4含有、およびBEG-1含有ホウ素電解質溶液には、+1ボルトより
も高い正電圧(positive voltage)が印加されるまで観察されなかったことを示
す。もっとも顕著には、ECに起因する分解は、BEG-1含有ホウ素電解質溶液中で
完全に抑制された。
実施例13
高分子量ポリマーを組み込む、1:2 Mix BEG-1:EC中の
1.3M LiClO4 電解質溶液の調製
固体状態電気化学的デバイス中において有用であるためには、電解質は、ゴム
状の挙動を示さなければならない。ゴム状の挙動は、高分子量ポリマーを添加す
ることにより、ホウ素電解質溶液に与えられ得る。
実施例7に従って調製された1:2 Mix BEG-1:EC溶媒混合物中にLiClO4を溶解
することにより、1.3MLiClO4ホウ素電解質溶液を調製した。さらに20%ポリ酢
酸ビニル(分子量約50,000)を添加することにより、それぞれ同様にゲル電解質
を調製した。図7は、(伝導度のlog)対(温度の逆数)の重ね書きのプロット
を示し、これは、ゲル電解質の伝導度を、ポリマーを含まない参照ホウ素電解質
溶液と比較する。図7は、20重量%のポリ酢酸ビニルの添加が、幾分、溶液の室
温伝導度を低下させたことを示す。しかし、より高い伝導度は、より少ないパー
セントの高分子量ポリマーの添加により達成されたようである。
別の電解質溶液は、5%のポリエチレンオキサイド(MW約108)を、上記の1
.3M LiClO4ホウ素電解質溶液に添加することにより調製された。得られた組
成物は、固体状態電気化学的デバイス用の電解質として有用であり得る高ストレ
ッチゴム状材料であった。
実施例14
さらにシリケートを含むホウ素電解質溶液の調製
実施例3に従って調製されたBEG-1を、テトラメチルオルトシリケートと反応
させることにより、ポリマーオイルを生成した。具体的には、4.88グラム(0.02
モル)のBEG-1および0.608グラム(0.004モル、Aldrich、99+%)のテトラメチ
ルオルトシリケートを強力なバイアル中に密封し、そして250℃で一晩加熱した
。結果として、幾分複雑な構造を有するポリマーオイルが得られた。このオイル
は、非水性電解質のための溶媒として使用され得る。
実施例15
ポリマーホウ酸化合物の合成
以下の式のポリマー性ホウ酸(borate)化合物を合成した:
H3BO3(12.4グラム、0.20モル、Allied Chemical)、1,6-へキサンジオー
ル(35.5グラム、0.30モル、Aldrich、97%)およびトルエン(100mL、Fisher、
99.9%)の混合物を、定量的な量の水が分離するまで還流した。混合物を、金属
リチウム上で少なくとも5時間、さらに還流し、次いで、固体残渣を濾別した。
溶媒を真空ライン上でエバポレートして、34.8グラムの粘性の液体(収率:94%
)を得た。これは、室温にまで冷却した後、より粘性になった。
実施例16
ホウ素電解質溶液を組み込む再充電可能なLiバッテリー
1:2 Mix BEG-1:EC電解質中に溶解した2.5M LiN(SO2CF3)2および20重量%の
ポリ酢酸ビニル(MW=50,000)を含むゲル電解質により隔てられた、Liホイルア
ノードと、LiMnO4、カーボンブラック、およびバインダーから作製されたカソー
ドとを用いて、ボルタ電池を形成した。次いで、図11および12に示すように
、数サイクルにわたって、この電池を放電し、そして充電した。電池は、1000放
電/充電サイクルを越える可逆挙動を示した。
実施例17
ホウ素電解質溶液を組み込む再充電可能なLiバッテリー
1:2 Mix BEG-LiEC電解質中に溶解した1.0M LiClO4および20重量%のポリ(メ
チルメタクリレート)を含むゲル電解質により隔てられた、炭素アノードおよび
LiCoO2カソードを用いて、ボルタ電池を形成した。複合体カソードを、LiCoO2(A
lpha、98%)、カーボンブラック、および上記のゲル電解質をそれぞれ72:8:20の
重量比で混合することにより調製した。得られたスラリーをNiホイル上にプレス
した。カーボンアノードを、80重量%の炭素と、バインダーとして用いられる20
重量%のホウ素電解質ゲルとから構成した。組み立てたバッテリーを充電し、次
いで、2.5ボルトと4.4ボルトとの間で充放電(cycle)させた。図13に示すよ
うに、14サイクル後、サイクルの電圧限界は4.5ボルトに増加した。電池は可逆
的に充放電し続け、そして能力の顕著な上昇を示した。
本明細書中で引用された様々な刊行物は、ここで、その全体として参考として
援用される。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ,
DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I
L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK
,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,
MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R
U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR
,TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 ウ,カン
アメリカ合衆国 アリゾナ 85281,テン
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ナンバー160 700