【発明の詳細な説明】
検出用物質を形成する検出分子の混合物によるイムノアッセイ
本発明は請求項1に記載の検出される基質と作用する検出用物質によるイムノ
アッセイ、請求項6に記載の検出用物質、請求項9に記載の検出用物質の使用、
及び請求項12に記載の検出用物質を含む診断用試薬に関する。
サンドイッチ アッセイ又は2サイト アッセイとも呼ばれるイムノメトリッ
ク アッセイ(immunometric assay)は2つの抗体が抗原の
相違するエピトープに結合するという二重抗体原理(double−antib
ody principle)により行われる。過剰量の壁面抗体は、支持体、
例えば、インキュベート皿の壁面に固定される。この抗体は提供されたサンプル
中の抗原を特異的に吸着する。分離工程においては、壁面抗体に結合しなかった
全ての抗原はサンプルから除去される。次いで、マーカーで標識された第二の抗
体(標識としては、例えば、放射性、化学発光、酵素又は蛍光等が挙げられる)
は、結合した抗原の他方のエピトープに結合する。抗原の最適な結合のためには
、2つの抗体は互いに立体的に相互作用を起こしてはならない。結合しなかった
第二抗体も分離されサンプルから除去される。計測シグナル(例えば、放射性、
化学発光、酵素発色反応又は蛍光)は、壁面抗体−抗原−第二抗体−マーカーの
複合体によってのみ発せられる。
イムノメリック アッセイを発展させるためには、異なる抗原のエピトープに
結合する抗体が必要である。これらのエピトープは、立体的な障害を起こさない
で、同時に両方の抗体に結合するように十分に離れていなければならない。約1
2〜16のアミノ酸残基を持つ抗原は抗体との結合で沈殿する(Amit et al.,198
6 Science 233,747-753; Fischmann et al.,1991,J.Biol.Chem.266,1291
5-12920)。従って、2つの抗体間の相互立体的障害を避けるために、抗原の限定
されたサイトにできる限り正確に結合する部位特異的抗体を生成することが
必要である。小さい抗原であればそれだけ、このことはより当てはまる。
抗原及び抗体間の結合は、抗原が与えられる方法に非常に高く依存している。
これは主として媒質が変わると変化するエピトープに対する抗体に言えることで
ある。pHやイオン強度に加えて、媒質内のそれらの変化は固相への結合でも成
り立つものである。これは抗原の3次及び4次構造により特定されたエピトープ
にまず関係している。
古典的な固定アッセイでは、壁面抗体はマイクロタイタープレートのポリスチ
レン表面に直接吸着される。一般的にペプチドやタンパク質の場合に見られるよ
うに、このプラスチック表面への結合は非特異的疎水性相互作用に基づくもので
あり、そのため弱いものである。抗原も非特異的疎水性相互作用に基づき、直接
マイクロタイタープレートの表面に結合する。しかし、そのような比較的弱い結
合では、壁面の表面の結合サイトを事前に特定することができない欠点があり、
アッセイの行われている最中に高いレベルで脱着が起る。
本発明の目的は、高い感度及び高い特異性を基本的に保証することができ、か
つイムノアッセイ技術の一般的な検出技術が適用することができるイムノアッセ
イを提供することにある。
この目的は、本発明により達成された。本発明の一般的な概念は、非特異的に
検出用物質上に分布された1つの親和性成分を持つ1つの検出用物質を用いた上
記原理を用いず、親和性成分が異なるが、対応する検出分子の特異的部位を有す
る少なくとも2つの検出分子の混合物を用いる。これは、親和性グループにより
供給される検出分子と検出される基質との間の逆作用(negative ef
fect)の危険性を顕著に低減し、かつ、この方法で機能するイムノアッセイ
の検出感度を有意に上昇させるという利点がある。
本発明の目的は、特に、請求項1の特徴を有するイムノアッセイにより達成
される。続く従属請求項2〜5は、そのイムノアッセイの好ましい態様である。
請求項6は少なくとも2つの検出分子(detector molecules)を含む混合物を含有
する、本発明により使用される検出用物質に関する。請求項9は、検出用物質の
使用に関する。請求項12は、本発明の検出用物質を含有する診断用試薬に関す
る。
本発明のイムノアッセイは、検出される基質と作用する検出用物質により行わ
れる。本発明によれば、検出用物質は少なくとも2つの検出分子を含有する混合
物である。それぞれの検出分子は、異なる位置において親和性結合を行うのに適
している化学的部分(chemical moiety)を有する。従って、本発明による検出
用物質は少なくとも2つのクラスの検出分子を含有している。その1つ目のクラ
スは2つ目のクラスの検出分子の特異的部位とは異なる特異的部位に化学的部分
を有する。検出分子は、検出用物質を形成している混合物中にほぼ同じ濃度で存
在することが好ましい。本発明によれば、少なくとも2つの検出分子を含有する
検出用物質は、検出する基質が含まれると思われるサンプルと接触させられる。
検出する基質とそれぞれ2つの異なる検出分子との複合体が形成された後、複合
体は固定され、及び/又は化学的部分Aに親和性結合する親和性物質と形成した
複合体を介して検出される。
検出分子としては、好ましくはポリペプチド、特に、抗原に特異的に相互作用
する抗体;成分を含有するそれらの多糖による特異的相互作用を起こすことがで
きるグリコシル化ペプチド、例えば、レクチン;オリゴ糖;核酸;及びハプテン
を挙げることができる。
化学的部分Aは、好ましくはビオチン、ストレプトアビジン(strepta
vidin)、抗原、抗体、タンパク質A,Fcフラグメント、Fabフラグメ
ント、ホルモン、レセプター、酵素、酵素基質を含む。
化学的部分と複合体を形成する能力のある親和性物質は、その化学的部分A
と相補的である。従って、例えば、化学的部分Aとしてのビオチンを有する検出
分子を用いた場合、検出する基質と検出分子から形成された複合体により固定又
は検出される親和性物質はストレプトアビジンである。同様に、化学的部分Aが
タンパク質Aである場合、例えば、親和性物質はIgGクラス抗体となる。もし
化学的部分Aがハプテンである場合、例えば、親和性物質は、例えば、ハプテン
接合物との免疫化により得られるハプテンに対する抗体である。残る組み合わせ
及びそれぞれの条件におけるバリエーションは、当業者ならば難なく知ることが
できるであろう。
それら自身の測定可能な特徴に対する処理がない限り、本発明のイムノアッセ
イにおける検出される物質の検出のための明白な選択としては、例えば、放射性
アイソトープ、又は発色団、及び/又は蛍光、又は発色反応を起こすことができ
る結合酵素等のグループをそれら自身に持つ標識された親和性物質を挙げること
ができる。
本発明の原理を、特定の実施例により以下更に説明する。検出分子(ポリペプ
チド)はビオチンを化学的部分Aとして有する。
マイクロタイタープレートに対する予め決められた結合サイトを持つ抗原の高
親和性結合は、決められた抗原の配向を与え、抗原のエピトープ全ての決められ
た受容性を裏付ける。このような結合は、ストレプトアビジン/ビオチン系を通
して達成することができる。この目的のために、抗原はN末端又はC末端、又は
分子の他の部位においてビオチンを有することができる抗原が選択的に合成され
る。ストレプトアビジンにより覆われたマイクロタイタープレートは、ビオチン
−ペプチド複合体において高親和性結合(親和定数 10-15mol/l)を確実
にする(Chaiet,L.,Wolf,F.J.(1964),Arch.Biochem.Biophys.106,1-5)。こ
れは、マイクロタイタープレートの壁面への強い及び完全な抗原結合を生ずる(
図参照)。ビオチンを用いない非特異的疎水性相互作用に基づく古典的なアッセ
イ方法において起ったような、アッセイの工程における脱着は起らない。従っ
て、固定されるビオチン化抗原の濃度は、直接の固定化におけるよりも低くてよ
い。
非特異的疎水性相互作用によって、マイクロタイタープレート壁面の予め決め
られていない結合サイトへ抗原が結合する古典的な固定アッセイの結合と、抗原
のN末端又はC末端がビオチン化されており、ビオチンエピトープがその後マイ
クロタイタープレートの壁面にストレプトアビジンを介して高親和性結合で結合
するストレプトアビジン/ビオチン固定アッセイとの比較により、古典的なアッ
セイよりもストレプトアビジン/ビオチンアッセイは明らかにより感度が良いこ
とが示された。驚くべきことに、本発明によるイムノアッセイの態様としてのス
トレプトアビジン/ビオチンアッセイにおける非結合抗体の添加による分離は、
古典的なイムノアッセイよりも既に有意に低い濃度で起っていた。
本発明のもう一つの目的は、とりわけ本発明におけるイムノアッセイにおいて
使用することができ、かつ、他の応用法も可能にする検出用物質である。
本発明における親和性物質は、少なくとも2つの検出分子の混合物を含有して
いる。上記の少なくとも2つの検出分子は、それぞれ異なる部位に親和性結合を
行うのに適している化学的部分Aを持ち、化学的部分Aはそれぞれ異なる検出分
子の特異的な部位に結合する。
異なる部位を特異的に標識されたポリペプチドを含有する検出用物質が、好ま
しくは使用される。原理的には、上記の化学的部分Aを使用することができる。
特に、ポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ基に結合する(例えば、リジ
ンと通じて)ビオチンの使用が好ましい。しかし、本発明によれば、検出分子の
(少なくとも)2つの残基が存在する様に、少なくとも2つの異なる検出分子は
それぞれ特異的にビオチン化される。例えば、1つのグループはN末端をビオチ
ン化され、第二のグループは、特異的にその他の部位、好ましくはC末端にビオ
チン標識を持つ。明らかに、この記述は単なる例示に過ぎない。原理的には、ど
の可能な部位も使用することができる。しかし、部位が選択された後は、この部
位はそのクラスの検出分子について持続されるべきである。それにより、少なく
とも2つの異なる検出分子の使用により達成される本発明の利点が十分に利用さ
れるからである。本発明による検出用物質は各種分野において用いることができ
る。従って、例えば、この検出用物質は抗体、自己抗体又は内因性物質、特に、
制御ペプチドの検出及び定量のためのイムノアッセイにも用いることができる。
又、それらはソマトスタチン レセプターレベルのカルチノイド診断のようなレ
セプターの発現及び発現の変化が関与する疾患の蛍光−微視的(fluores
cence−microscopical)診断及びフローサイトメトリック診
断における診断用試薬のレセプター標識にも用いることができる。
本発明の検出用物質は更にそれぞれ知られているペプチドの未知レセプターの
特徴を解明するため、又、蛍光微視及びフローサイトメトリーによるレセプター
類似体の検索にも用いることができる。この検出用物質はアフィニティークロマ
トグラフィーによるペプチドの精製にも適している。例えば、もし本発明の検出
用物質が親和性成分Aにより固相マトリックスに結合されていれば、抗体は精製
することができる。本発明の検出用物質の医学的診断上アッセイ、特にバイオセ
ンサーにおける使用も可能である。
本発明による検出用物質の他の利用技術分野は、細胞が表面又は細胞内の標識
を通じて同定することができるフローサイトメトリーによる複合体混合物の分析
的及び生産的な分離である。
好結果を生むイムノアッセイ キットの開発の為には、有効な抗原特異的抗体
を得ることが重要である。結合サイト及びエピトープが前もってビオチン化によ
り特定可能である固定化ビオチン化ペプチドの使用により、抗体を狙い通りの方
法で同定することができる。ビオチン化ペプチドをマイクロタイターのプレート
に結合することにより、血液中の対応する抗体又は自己免疫抗体のレベルは固定
イムノアッセイの原理により決定することができる。
生物における活性物質の結合部位の調査においては、検出可能なマーカー、例
えば、放射性又は蛍光を持つ活性物質を提供することから始めることが必要であ
った。しかし、それらのマーカーはレセプター結合サイトに対するエピトープの
活性サイトを隠すことがある。従って、活性物質に対するレセプターの親和性を
低減する。それに対して、活性物質の分子へのビオチンの取り込みは、非常に正
確に制御することができるので、レセプター結合サイトへの活性物質のエピトー
プを得やすい。生物内の活性物質レセプターは初めにビオチン化活性物質のフリ
ーのエピトープに結合する。結合を可視化する為に、例えば、蛍光標識されたス
トレプトアビジンは生体内又は試験管内に添加される。ビオチンへのストレプト
アビジンの高親和性は、蛍光標識されたストレプトアビジンをレセプターに結合
したビオチン化活性物質に結合させる。このようにして、レセプター−活性物質
−ビオチン−ストレプトアビジン蛍光複合体は観察者に所在を突き止めることを
可能にする。
レセプターの発現及び発現の変化が関与する蛍光−微視的診断及びフローサイ
トメトリック診断の疾患では、ビオチン化ペプチドはレセプターの標識、例えば
、ソマトスタチン レセプターのレベルのカルチノイド診断に使用することがで
きる。
免疫化処理により生成された抗体は、決して均一ではなく、それらはいつも相
違する抗体種の混合物から成っている。その異なる抗体種は、抗原の異なるエピ
トープ又は分子領域に関連するその部位特異性によっても識別することができる
。ストレプトアビジンへのビオチンの高親和性結合は、C末端、N末端又は抗原
の中心部での化学的方法によるビオチンの選択的な取込みに基づき、抗体の精製
及び分別に利用することができる。ビオチンを用いて選択的に標識された抗原又
は抗原の構造から導かれた誘導体は、マトリックス、例えば、ストレプトアビジ
ンが結合した親水性クロマトグラッフィック素材に、決められた空間的配向で、
固定することができる。この方法は、アフィニティークロマトグラフィーによる
精
製が抗体と抗原との相互作用の改善された検出を用いて行われることを確実にす
る。更に、ビオチン化抗原によるクロマトグラフィーカラムの限定的充填は、親
和性マトリックスの高充填を可能にする。このことは、抗体/抗原結合の選択性
の上昇に加えて、得られる部位選択的抗体の定量的増加を結果として与える。
本発明を、以下の特定の態様により更に説明する。
本発明の方法における1つの基礎は、ペプチド(peptidyl)レジンの合成及びペ
プチド鎖の選択されたアミノ酸部位においてビオチン又はその誘導体と選択的に
連結することができる保護基によりブロックされたペプチドである。完全にブロ
ックされたペプチドレジンのN末端のアミノ基は、Fmoc化学及びBoc化学
の両方を用いるペプチド合成に続いて、存在している他の保護基の保持により選
択的に切断することもできる。次いで、この再生されたアミノ基は、ペプチド化
学のそれ自体公知のカップリング法、好ましくはTBTU又はBPO型のウロニ
ウム(uronium)又はフォスフォニウム(phosphonium)化合
物を用いてビオチン又はその誘導体と反応させることで、N末端ビオチン標識ペ
プチドレジンを得ることができる。次いで、支持体からの及び他の保護基の切断
、並びにその後のプレパラィブクロマトグラフィー精製により、対応するN−ビ
オチン化ペプチドを高純度で得ることができる。
驚くべきことに、ペプチドのC末端における選択的なビオチン化はレジン誘導
体のN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−[1−(4,4−ジメチ
ル−2,6−ジオクソシクロヘキシ−1−イリデン)エチル]−L−リジン[F
moc−Lys(Dde)−OH](N−(9−fluorenylmetho
xycarbonyl)−N−[1−(4,4−dimethyl−2,6−d
ioxocyclohex−1−ylidene)ethyl]−L−lysi
ne)を使用することにより好ましくは達成される。標的ペプチドがその配列に
C末端のアミノ酸としてレジンを含有しない場合には、C末端構築様ブロックと
してFmoc−Lys(Dde)−OHから出発する固相合成が行われる。
ペプチド合成が完了した後、Dde基は完全に保護されたペプチドレジン又はペ
プチドから希釈ヒドラジン水和物を用いるいくつかの処理により切断することが
でき、ペプチドの他の全ての保護基は残ったままである。ペプチド化学の公知の
活性化法によるビオチン又はその誘導体のカップリング、さらには、脱ブロック
及び支持体からの切断の後、C末端を選択的にビオチン化されたペプチドを高純
度の形態で得ることができる。
この方法は、ビオチン残基の導入が全ペプチド鎖の合成が完了した後、高収率
で行うことができるという利点がある。これは、特にC末端がビオチン標識され
たペプチドの調製に言えることである。驚くべきことに、ビオチン残基は立体的
に好ましくないレジン結合アミノ酸部位において高収率で導入することができる
。
ペプチド合成の従来技術の方法と比較すると、溶媒である1,3−ジメチル−
3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(1,3−dimet
hyl−3,4,5,6−tetrahydro−2(1H)−pyrimid
inone)(DMPU)は、N末端又はC末端地おいて選択的に脱ブロックされ
たアミノ基に、ビオチン又はその誘導体を連結するのに特に好ましい。これは、
ビオチン又はその誘導体を高濃度で単に溶解すること、及び3倍量以上を既に超
えた高収率でそれらをペプチド位置の末端アミノ残基と連結することを可能にす
る。
(+)−ビオチンは、天然化合物又はそのカルボキシ−活性エステル及び、驚く
べきことに、6−アミノカプロン酸又はリジンスペイサーを持つ誘導体としての
形態での上記方法を用いて、保護ペプチドレジンに導入することができる。
合成ビオチン標識ペプチドは数々の分析方法により同定することができる。こ
れらは、クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、質量分析、ペプチドシー
クエンシング、及びアミノ酸分析等の方法を含む。
本発明に関しては、例えば、N末端及びC末端で選択的にビオチン標識された
ウロジラチン(urodilatin)及び同様に標識されたヒト 副甲状腺ホ
ルモンのフラグメントの両方の調製が記載されている。ウロジラチンは特定の臨
床応用を有す。そのビオチン化誘導体はペプチドに対するヒト自己抗体の形成を
分析するためのELISA(enzyme−linked immunosor
bent)アッセイにおいて非常に重要である。
本発明のアッセイは、ストレプトアビジンを担持させたマイクロタイタープレ
ートへのC末端及びN末端をビオチン標識した合成ペプチドの結合により好まし
くは実現される。そのような結合の後、固定されたペプチドへペプチド特異的ポ
リクローナル又は、モノクローナル抗体を結合させることが可能である。従って
、有利な方法として、1つのアッセイにおいて両方の合成ビオチン化ペプチドを
用いることにより、それぞれのペプチドのC末端領域に対する抗体及びそのペプ
チドのN末端に対する抗体の両方を1つのアッセイにおいて計測することが可能
である。同様のアッセイは分離して行うことも可能である。従って、別々の分析
によって、ペプチドのC末端及びN末端に対する抗体を検出することが可能であ
る。
両方の場合において、結合したペプチド特異的抗体はヒト抗体の種特異的Fc
フラグメントへのタンパク質A、タンパク質G又は第二抗体、例えば、抗ヒトI
gG抗体の結合により同定することができる。
本発明によれば、ペプチド−抗体結合の定量の為に、タンパク質A又はタンパ
ク質Gは、例えば、放射性により標識することができる。第二抗体は酵素又は放
射性標識物質と接合していてもよい。酵素は、特定の物質を反応において光度測
定により検出可能なものに転換することができる。本発明によれば、例えば、ペ
ルオキシダーゼ又はホスファターゼは第二抗体に結合する。これらの酵素の基質
としては、例えば、ペルオシダーゼにはテトラメチル ベンジジン(tetr
amethyl−benzidine)及び2,2’−アジノビス(3−エチル
ベンズチアゾリン−6−スルホン酸)(2,2’−azinobis(3−et
hylbenzthiazoline−6−sulfonic acid)(AB
TS)、ホスファターゼには4−メチルウンベリフェリルホスフェート(4−me
thylumbelliferylphosphate)、p−ニトロフェニル
ホスフェート及びブロモクロロインドリルホスフェート−ニトロブルー−テトラ
ゾリウム(bromochloroindolylphosphate−Nit
ro Blue−tetrazolium)を用いることができる。これらの基
質の反応生成物は、様々な方法によって計測することができる。しかし、主とし
て反応生成物の蛍光又は色強度によって計測される。タンパク質A、タンパク質
G又は第二抗体へ接合している放射性は、ガンマ計数器により検出される。蛍光
又は色強度は、分光光度計により検出される。光度計により測定可能な蛍光又は
色又は放射性は、第二抗体を介して、特異的にN末端又はC末端をビオチン化し
たペプチドに結合したペプチド特異的抗体の分量に定量的に対応している。N末
端又はC末端がビオチン化されたペプチドの選択的な合成に基づいた計測方法の
実施の個々の段階は図1に説明されている。
本発明によれば、固定されたペプチド(例えば、ウロジラチン)はその抗原的
特性を失うことはないようにすることが可能になってきた。その研究は更にN末
端又はC末端が選択的にビオチン化されたペプチドの抗原としての特性は、染色
や種々のアッセイ緩衝液により再度活性化されてもまだ存在していることを示し
た。N末端がビオチン化されたペプチドの抗原としての活性は、乾燥されたマイ
クロタイタープレートが数週間を超えて保存されても低減しなかった。
選択的に標識されたビオチン化ペプチドの合成は、例えば、メリフィールド(
Merrifield)固相方法による部分的に脱ブロックされたペプチドレジ
ンの調製を通じて行われた。一時的なアミノ保護基として、フルオレニルメトキ
シカルボニル(fluorenylmethoxycarbonyl)(Fmo
c)を用いた合成及びターシャリー−ブチルオキシカルボニル(tert−b
utyloxycarbonyl)(Boc)を用いた合成の両方が適している(E
.Atherton and R.C.Sheppard,固相合成,IRL Press,Oxford 1989; J.Jone
s,ペプチドの化学的合成,Clarendon Press,Oxfod 1991)。
実施例1:選択的N又はC末端の(+)−ビオチン標識をもつペプチドの調製
N末端ビオチン化ペプチドの調製の為に、それ自体公知の方法によってペプチ
ド合成が行われた。Fmoc化学により調製された完全に保護されたペプチドレ
ジンは続いて10分間、20%ピペリジン含有N,N−ジメチルホルムアミド(
DMF)により処理され、その後、DMFにより徹底的に洗浄された。最後尾の
アミノ酸カプリングに次いで、Boc化学により合成されたペプチドは30分間
、50%トリフロロ酢酸を含有するジクロロメタン溶液で処理され、そして、ジ
クロロメタンにより徹底的に洗浄された。代わりに、Boc化学によるペプチド
の合成では、最後尾のアミノ酸はFmoc誘導体として導入されてもよい。その
アミノ基は、DMF中の20%ピペリジンにより選択的に脱保護化することもで
きる。そのように得ることが可能なペプチドレジンは、N末端において自由なア
ミノ機能を持っており、従って、ビオチン又はその適当な誘導体と選択的に連結
することができ、ビオチン標識ペプチドを作成することができる。この連結の為
に、ビオチン自身又はそのカルボキシ−活性化誘導体、例えば、N−ヒドロキシ
サクシニック イミド エステル(N−hydroxysuccunic im
ide ester)、4−ニトロフェニル エステル、及びヒドラジド、更に
好ましくは、N−ビオチニル−6−アミノカプロン酸(N−biotinyl−
6−aminocaproic acid)及びそのカルボキシ活性化誘導体、
例えば、ヒドラジド及びN−ヒドロキシサクシニック イミド エステルを用い
ることができる。保護ペプチドレジンのN末端アミノ基への連結の前に、ビオチ
ン又はその誘導体は好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピ
ロリドン、トリフロロエタノール、ジメチルスルホキシド又は1,3−ジメチル
−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(DMPU)に溶解
され、1.1倍量に相当する活性剤が添加される。適する活性剤は、2(1H)
−ベンゾ−トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウ
ム テトラフロロボレート(2(1H)−benzo−triazole−1−
yl)−1,1,3,3−tetramethyluronium tetra
fluoroborate)(TBTU)及びそこから誘導された化合物、ベンゾ
トリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘ
キサフロロフォスフェイト(benzotriazole−1−yloxy−t
ris(dimethylamino)phosphonium hexafl
uorophosphate)(BOP)及びそこから誘導された化合物、又、N
,N−ジアルキル−カルボジイミド(N,N−dialkyl−carbodi
imides)、例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及びジシク
ロヘキシルカルボジイミド(DCC)、更に補助の試薬、例えば、N−ヒドロキシ
サクシニックイミド、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール又はジイソプロピル
エチルアミンを添加する。アミノ基のビオチン化の為に、ビオチン又はその誘導
体は10分間室温で予備活性化され、そして、レジンの量を基準に2〜10倍の
過剰量をペプチドレジンに添加し、10〜20時間攪拌される。ビオチン化され
たペプチドレジンは、過剰な試薬を除去する為、2−プロパノール及びジクロロ
メタンを用いた溶媒によって徹底的に洗浄され、そして高真空下、乾燥された。
得られたビオチン標識ペプチドは、90分以内に、好ましくは、トリフロロ酢酸
/エタンジチオール/水(容量で94:2:2)の添加によりレジン支持体より
切断され、脱保護され、冷ターシャリー−ブチルメチルエステルにより沈殿され
、そして凍結乾燥される。単離された粗生成物は、調製用高性能液体クロマトグ
ラフィーにより精製され、そして、同定された。どの場合においても、ビオチン
標識されたペプチドは、C18逆相クロマトグラフィーにおいて、非ビオチン化ペ
プチドに比べて有意に増加した保持時間を有していた。質量分析では、N末端に
結合したビオチンは、226.3ダルトン増加した分子量によって検出すること
ができる。N−ビオチニル−6−アミノアプロニック酸が用いられた場合、分子
量は339.5ダルトン増加する。
選択的なビオチン標識は、特殊リジン誘導体によるFmoc及びBoc合成
ストラテジーの両方において達成することができる。もしビオチン化されるペプ
チド配列のC末端にリジンが存在しない場合には、ペプチド合成は、追加のリジ
ンを用いて開始し、ついで、求める基質の実際のペプチド鎖とする。Fmoc化
学では、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−1−(4,4−ジ
メチル−2,6−ジオキソシクロ−ヘキシ−1−イリデン)エチル]−L−リジ
ン[Fmoc−Lys(Dde)−OH]が保護されたリジン誘導体として用い
られる(B.W.Bycroft,W.C.Chan,S.R.Chhadra,N.D.Hone(1993),J.Chem
.Soc.Chem.Commun.1993,778; H.F.Brugghe,H.A.M.Timmermans,L.M
.A.ven Unen,G.J.ten Hove,G.van de Werken,J.T.Poolman,P.Hooge
rhout(1994),Int.J.Pept.Protein Res.43,166)。ペプチド合成が完了した
後、Dde保護基は、C末端のリジンのアミノ基を保存するために切断除去され
る。この目的の為に、N末端アミノの保護基としてBoc基を好ましくは有する
完全にブロックされたペプチドは、2−10%のヒドラジン水和物を含有するN
,N−ジメチルホルムアミドによって、振動させながら2〜15分づつ3度反応
させる。もし、ペプチド合成がBocストラテジーにより行われる場合、誘導体
であるN−(ターシャリー−ブチルオキシカルボニル)−N−(9−フルオレニ
ルオキシカルボニル)リジン[Boc−Lys(Fmoc)−OH](N−(t
ert−butyloxycarbonyl)−N−(9−fluorenyl
oxycarbonyl)lysine[Boc−Lys(Fmoc)−OH])
が用いられる。ペプチド合成が完了した後、C末端リジンのアミノ基は5〜15
分間、20%ピペリジンを含有するN、N−ジメチルフォルムアミドを添加する
ことによって脱保護することができる。C末端リジンの選択的な脱ブロック化の
後、両方のレジンは徹底的にN,N−ジメチルフォルムアミドで洗浄される。
ビオチン又はその誘導体との選択的C末端カップリングの実施、支持体レジン
からの切断及び脱ブロック化、ビオチン化ペプチドの調製精製及びその同定は、
N−末端ビオチン化ペプチドについても上記と同様の方法で行われる。
原理的には、この方法は、本発明の保護基法によってN又はC末端がビオチン
又はその誘導体によって選択的に標識された全ての支持された合成ペプチドに適
用することができる。本方法は、特に、ウロジラチン(CDD/ANP−95−
126)及び他のナトリウム排出性のペプチド又はヒト副甲状腺ホルモン及びそ
のフラグメントから誘導される選択的にビオチン化されたペプチドの化学的合成
を含む。
所望のいずれのペプチドのN及びC末端の選択的な標識のための2つの保護基
技術の組み合わせにより、この方法は付加的にビオチンによりN及びC末端の両
方を選択的に標識されたペプチドレジン及びペプチドを含む。
実施例2:合成、選択的に(+)−ビオチン標識されたペプチドの使用
合成、選択的に(+)−ビオチン標識されたペプチドはビオチン−ストレプト
アビジン結合によってストレプトアビジンで覆われたマイクロタイタープレート
とのカップリングにより固定される。
アッセイを行う時に、マイクロタイタープレートはどの2つの工程の間でも洗
浄溶液(例えば、リン酸緩衝液;リン酸緩衝液:136mM 塩化ナトリウム;
2.68mM 塩化カリウム;10mM リン酸2水素ナトリウム;1.76m
Mリン酸2水素カリウム)で洗浄される。
マイクロタイタープレートは2時間ストレプトアビジン溶液(例えば、20μ
g/ml)と共にインキュベートされる。自由結合サイトは少なくとも2時間ブ
ロック緩衝液(例えば、3%ウシアルブミンを含むリン酸緩衝液、又は2.5%
カゼイン、0.2% Tween20を含むリン酸緩衝液)を用いて飽和され
る。ビオチン化されたペプチド(例えば、N及びC末端がビオチン化されたウロ
ジラチン)は、1M酢酸(例えば、30μ/ml)に溶解され、マイクロタイタ
ープレートのストレプトアビジンで覆われたウェルに入れられる。1時間のイン
キュベートの後、過剰のビオチン化されたペプチドは洗浄除去される。実
験される血清はそのまま又は生理緩衝液(例えば、3% ウシアルブミンを含む
リン酸緩衝液;1:250ウロジラチン抗体血清:生理緩衝液)で希釈してマイ
クロタイタープレートの上にピペットされ、2時間インキュベートする。第二試
薬(例えば、パーオキサイド又はアルカリリン酸又はヨード化、又はヨード化タ
ンパク質A、又はヨード化タンパク質Gと接合された抗ヒトIgG抗体)がその
後マイクロタイタープレートの上に添加され、室温で2時間インキュベートする
。過剰な第二試薬を洗浄除去した後、ガンマ計測器で直接放射性を計測すること
ができる。酵素標識された第二試薬を用いた場合、色素生産性物質(例えば、2
,2’−アジノビス(3−エチルベンゾシアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)
、4−メチルウンベリフェリルホスフェート)の溶液がウェルの上にピペットさ
れる。この色素生産性物質は、酵素依存性反応において定量的に計測可能な蛍光
又は発色物質に転化される。蛍光又は色強度は分光光度計によって検出される。
放射性のレベル又は蛍光若しくは発色物質の量は、ビオチン化されたペプチド
に結合した抗体の量と直接比例の関係にある。
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(72)発明者 アデルマン ナット
ドイツ連邦国、ハノーファー D−30625、
フェオドール−リネン−シュトラーセ
31、ニーデルサシッシェ インスティタッ
ト フュア ペプチド−フォーシュング
ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテ
ル ハフツング(IPF)
(72)発明者 キスト アンドレアス
ドイツ連邦国、ハノーファー D−30625、
フェオドール−リネン−シュトラーセ
31、ニーデルサシッシェ インスティタッ
ト フュア ペプチド−フォーシュング
ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテ
ル ハフツング(IPF)