【発明の詳細な説明】
発明の名称
治療用アジド化合物関連出願の相互参照
本願は、1995年9月7日に出願した暫定出願第60/003,383号から優先権を主張
し、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。発明の分野
本発明は、薬学、具体的には、薬学的に活性な化合物のアジド誘導体の分野で
ある。政府の権利
本発明は、少なくとも一部、国立衛生研究所の助成金第AI25899号により、米
国政府によって資金が提供されている。従って、米国政府は、本発明のある程度
の権利を有し得る。発明の背景
最近、薬学産業では、ヒトの疾患処置用の効果的な、膨大な(panoply)治療
用化合物が開発されている。抗菌性化合物(例えば、ペニシリン、サルファ剤、
およびさらに最近では、アミノグリコシドおよびセファロスポリン抗生物質)に
よって、細菌感染による死亡率が著しく低くなっている。ウイルス感染は、かつ
て、処置不可能と考えられていたが、今では、抗ウイルス剤、特に、ヌクレオシ
ド類似物(例えば、アシクロビルおよび関連化合物)で抑制できる。癌の診断は、
一時期には、事実上の死刑宣告であったが、今では、単に、抗悪性腫瘍薬(例え
ば、メトトレキセート)を用いた、しばしば成功する処置への準備段階である。
癲癇でさえ、その患者は、神の所持物の伝達手段として、神により選ばれたと考
えられていたが、ドーパミンの保護が与えられるようになった。エイズ自体は、
我々の疾患のうちで最も新しく最も恐ろしいものであるが、ヌクレオシド複製イ
ンヒビター(例えば、AZT(3'-アジド-3'-デオキシチミジン))により、少なくとも
その進行を遅らせている。
これらの医薬品は効果的である。しかしながら、一旦患者の体内に入ると、そ
の多くは、分解酵素(特に、脱アミノ酵素)により、すぐに不活性化される。ある
場合には、例えば、この活性薬物が血液脳関門を横切ることが必要である場合、
治療的な量が脳に到達する程に長く循環に留まるのを充分に確実にするためには
、この薬物を、望ましくない程に多い用量で投与しなければならない。他の場合
には、毒性がある程に高濃度で投与することなく充分な活性な形態の薬物を循環
に供給するために、患者を効果的にiv針につなぎながら、薬物を連続的に投与し
なければならない。
それゆえ、分解することなく、現在使用されている薬物よりも長期間にわたり
患者の体内で持続する形態で、治療用化合物を提供することが望まれている。
親油性関門(例えば、血液脳関門)を持った細胞内空間および隔室に早く浸透さ
せるために、親油性基(例えば、アセチルまたはコレステロール)を結合させるこ
とによって、その親油性を高めることにより、これらの効果的な医薬品を改良す
る多くの努力がなされている。しかしながら、これらの手段は、常に、望まれる
程効果的であるわけではない。
特に、免疫無防備状態の患者(例えば、エイズウイルスに感染した患者)におい
て、ヘルペスウイルスおよび他のウイルスの処置に使用する特に効果的な抗ウイ
ルス医薬品の1種には、ヌクレオシド類似物がある。これらの類似物は、細胞の
酵素によるリン酸化の後、DNA合成を破壊し、それゆえ、ウイルス増殖のインヒ
ビターとしてだけでなく、抗癌剤としても有用である。この目的に使用されてい
た初期の化合物の1つには、5-ヨード-2'-デオキシウリジン(IDU)があった。[D
arby,G.(1995)、「In search of the perfect antiviral」Antiviral Chem.&
Chemother.1:54-63]。この論文は、このような薬物がまた、DNA複製を阻害
するという事実から、正常細胞に対して毒性となる傾向があることを開示してい
る。アシクロビルおよびバラクロビル(valaclocir)は、感染細胞内でのみリン
酸化され、それゆえ、これらの細胞でのみ、DNA複製を阻害するために、このこ
とに関して、特に有用な化合物であると言われている。しかしながら、これらの
薬物は、経口バイオアベイラビリティーが低く(15〜20%)、このことは、その有
用性を限定している。また、このような薬物の半減期を増大させる方法も、必要
である。
ビダラビン(vidarabine)、すなわち、9-(β-D-アラビノフラノシル)アデニ
ン(ara-A)は、最初は、抗腫瘍剤として発見され[Reist,E.J.ら,「Potential
anticancer agents,LXXVI,Synthesis of purine nucleosides of β-D-arabin
ofuranose」,J.Org.Chem.(1962)27:3274-3279]、そして後の研究では、
単純ヘルペスウイルス型1および2に対して活性であることが明らかになった[
Drach,J.C.およびShipman,C.Jr.,「The selective inhibition of viral DN
A synthesis by chemotherapeutic agents:an indicator of clinical usefuln
ess?」Ann.NY Acad Sci(1977)284:396-409;Andrei,G.ら,「Comparative
activity of various compounds against clinical strains of herpes simplex
virus」Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Diseases(1992)11:143-151]。
ara-Aは、単純ヘルペス角膜炎[Denis,J.ら,「Treatment of superficial her
pes simplex hepatitis with Vidarabine(Vira A)」:A multicenter study of
100 cases」J.Fr.Ophthalmol.(1990)13:143-150]および単純ヘルペス脳
炎[Whitley,R.J.,「Herpes simplex virus infections of the central nerv
ous system」]の処置に対してライセンスされた化合物である。脳炎ヘルペスお
よび新生児ヘルペスについては、[Drugs(1991)42:406-427;Stula,D.and
Lyrer,P.,「Severe herpes simplex encephalitis:Course 15 years followi
ng decompressive craniotomy」,Schweiz.Med.Wochenschr.(1992)122:11
37-1140;Whitley,R.J.,「Neonatal herpes simplex virus infections」J.M
ed.Virol.(1993),Suppl.1,13-21]。また、生殖器ヘルペスおよび播種性
ヘルペス感染[DRUGDEX(R)Information System,Gelman,C.R.and Rumack,B
.H.著;MicroMedex,Inc.,Engelwood,Colorado,84,Expired May 31,1995]
、サイトメガロウイルス脳炎[Suzuki,Y.ら,「Cytomegalovirus encephalitis
in immunologically normal adults」Rinsho.Shinkeigaku(1990)30:168-17
3]、慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染[Chien,R.N.and Liaw,Y.F.,
「Drug therapy in patients with chronic type B hepatitis」J.Formos.Med
.Assoc.(1995)94(supp1.1):s1-s9;Fu,X.X.,「Therapeutic effect of c
ombined treatment with ara-A,dauricine and Chinese herbs in chronic hep
atitis B infection」Chung.Hua.Nei.Ko.Tas.Chih.(1991)30:498-501
]および急性非リンパ性白血病[Resegotti,L.,「Treatment of acute non-ly
mphoid Ieukemia(ANLL)in elderly patients.The GIMEMA experience」Leuke
mia(1992)6(supp1.2):72-75]の処置についても、考慮されている。ara-Aは
また、アシクロビル耐性単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスおよび水
痘帯状疱疹ウイルスの感染に対する別の治療法であり得る[Chatis,P.A.and C
rumpacker,C.S.,「Resistance of herpes viruses to antiviral drugs」Anti
microb.Agents Chemother.(1992)36:1589-1595;Nitta,K.ら,「Sensitiv
ities to other antiviral drugs and thymidine kinase activity of acyclovi
r-resistant herpes simplex virus type 1」Nippon.Ganka.Gakkai.Zasshi(
1994)98:513-519]。しかしながら、ara-Aの臨床効果剤としての使用は、イン
ビボでのアデノシン脱アミノ酵素(ADA)によるara-Hへのその急速な脱アミノ化[
Cass,E.C.,「9-β-D-Arabinofuranosyladenine(Ara-A)」In Antibiotics .M echanism of Action of Anti-eukaryotic and Antiviral Compounds
;Hahn,F.E
.著;Springer-Verlag:New York(1979)V:87-109;Whitley,R.ら,「Vidar
abine:a preliminary review of its pharmacological properties and therap
eutic use」Drugs(1980)20:267-282]およびその乏しい水溶性により、限定
されている。
ara-Aの急速な代謝を防止する試みには、いくつかあり[Plunkett,W.and Co
hen,S.S.,「Two approaches that increase the activity of analogs of ade
nine nucleosides in animal cells」Cancer Res.(1975)35:1547-1554]、
これらには、アデノシン脱アミノ酵素インヒビター(例えば、デオキシコホルマ
イシンおよびN6−ベンゾイルアデノシン)の同時投与が含まれる。
デオキシコホルマイシンについて:
N6−ベンゾイルアデノシンについて:
エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)と組み合わせたara-AMPお
よびara-Aの効果は、マウス白血病 L1210/C2細胞培養物において研究されており
、これらの結果は、期待できるものであった[Cass,C.E.ら,「Antiproliferat
ive effects of 9-β-D arabinofuranosyladenine-5'-monophosphate and relat
ed compounds in combination with adenosine deaminase inhibitors agaist a
mouse leukemia L1210/C2 cells in culture」Cancer Res.(1979)39(5):15
63-1569]。しかしながら、ara-Aおよびデオキシコホルマイシン(deoxycoformy
cin)と組み合わせた臨床試験では、患者の一部は、毒性を発症した[Miser,J.
S.ら,「Lack of significant activity of 2'-deoxycoformycin alone or in c
ombination with adenine arabinoside in relapsed childhood acute lymphobl
astic leukemia.A randomized phase II trial from children's cancer study
group,「Am.J.Clin.Oncol.(1992)15:490-493」]。他の手法には、以
下を
含む:ラクトサミン化ヒト血清アルブミンへのara-AMPの結合[Jansen,R.W.ら
,「Coupling of antiviral drug ara-AMP to lactosaminated album in leads
to specific up take in rat and human hepatocytes」Hepatology(1993)18:
146-152]および薬物動態プロフィールを改良するためのナノカプセル(nanocap
sule)中でのara-Aの投与[Yang,T.Y.ら,「Studies on Pharmacokinetics of
9-β-D-arabinosyladenine nanocapsules」Yao.Hsueh.Hsuech.Pao.(1992)
27:923-927]。9-(β-D-アラビノフラノシル)-6-ジメチルアミノプリン(ara-DM
AP)は、それをラットおよびサルに静脈内注射した後、9-(β-D-アラビノフラノ
シル)-6-メチルアミノプリン(ara-MAP)および他のプリン代謝最終産物に急速に
転化された[Koudriakova,T.ら,「In vitro and in vivo evaluation of 6-az
ido-2'-3'-dideoxy-2'-fluoro-β-D-arabinofuranosylpurine(FAAddP)and 6-met
hyl-2',3'-dideoxy-2'-fluoro-β-D-arabinofuranosyladenine(FMAddA)as prodr
ugs of the anti-HIV nucleosides,2'-F-ara-ddA and 2'-F-ara-ddI」J.Med.
Chem.In Press]。しかしながら、ara-Aに転化されるara-DMAPは、用量の4%
未満であり、ara-Aの半減期は、4倍長かったことが分かっている。
最近では、AZTの代謝研究において、Sommadossiら[Cretton,E.M.and Somma
dossi,J-P,「Reduction of 3'-azido-2',3'-dideoxynucleosides to their 3'
-amino metabolite is mediated by cytochrome P-450 and NADPH-cytochrome P
-450 reductase in rat liver microsomes」Drug Mctab.Dispos.(1993)21:
946-950;Wetze,R.and Eclstome,E.,「Synthesis and reactions of 6-meth
ylsulfonyl-9-β-D-ribofuranosylpurine」J.Org.Chem.(1975)40(5):658-
660]は、AZTのアジド部分が、チトクロム-P 450還元酵素系によって、アミノ部
分に還元されることを明らかにした。
ジダノシン(ddI)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する証明された活性を有
するイノシンと構造的に関連した合成ヌクレオシド類似物である[Faulds,D.a
nd Brogden,R.N.,「Didanosine:a review of its antiviral activity,phar
macokinetics properties and therapeutic potential in human immunodeficie
ncy virus infection」Drugs(1992)44:94-116]。それは、ジドブジン(AZT)
に不耐性の患者またはジドブジン治療で症状が悪化した患者における使用が認可
されている。しかしながら、その種々の副作用[Tartaglione,T.A.ら,「Princ
iples and management of the acquired immunodeficiency syndrome.In:Phar macotherapy .A pathophysiologic approach
,J.T.DiPiroら(著)Appleton and
Lange,Norwalk,CN(1993)1837-1867),chemical instability in gastric a
cid and low oral bioavailability of 27-36%(Drusano,G.L.ら,「Impact of
bioavailability on determination of the maximal tolerated dose of 2',3'
-dideoxyinosine in phase I trials」Antimicrob.Agents Chemotherapy(1992
)36:1280-1283]は、その有用性を限定している。さらに、ddIは、AZT程に容
易には、中枢神経系および脳脊髄液(CSF)に入らないという証拠もある。脳組織
およびCSFにおけるddI摂取の程度は、血漿中と比較すると、それぞれ、4.7%お
よび1.5%に過ぎない[Collins,J.M.ら,「Pyrimidine dideoxyribonucleoside
s:selectivity of penetration into cerebrospinal fluid」J.Pharmacol.Ex
p.Ther.(1988)245:466-470;Anderson,B.D.ら,「Uptake kinetics of 2'
,3'-dideoxyinosine into brain and cerebrospinal fluid of rats:intraveno
us infusion studies」J.Pharmacol.Exp.Ther.(1990)253:113-118;Tunt
land,T.ら「Afflux of Zidovudine and 2',3'-dideoxyinosine out of the cer
ebrospinal fluid when administered alone and in combination to Macaca ne
mestina」Pharm.Res.(1994)11:312-317]。
酸性条件下でのddIおよび2',3'-ジデオキシアデノシン(ddA)の不安定性を克服
する試みでは、ヌクレオシドの2'-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル誘導体で
ある2'-F-ara-ddIおよび2'-F-ara-ddAが合成された[Marquez,V.E.ら,「Acid-
stable 2'-fluoro purine dideoxynucleosides as active agents agaist HIV」
J.Med.Chem.(1990)33:978-985]。これらの著者は、2'-F-ara-ddAおよび2
'-F-ara-ddIが、酸性媒体中で安定であり、HIV-1の細胞変性効果からCD4+ATH8
細胞を、その親化合物と同程度に保護する能力があることを報告した。しかしな
がら、2'-F-ara-ddIは、ddIと同様に、比較的に親水性であり、マウスでは、そ
の血液脳関門(BBB)に容易に浸透しない[Shanmuganathan,K.ら,「Enhanced br
ain delivery of an anti-HIV nucleoside 2'-F-ara-ddI by xanthine oxidase
mediated biotrans formation」J.Med.Chem.(1994)37:821-827]。最近で
は、本出願人は、より親油性が高いプロドラッグである2',3'-ジデオキシ-2-フ
ルオロ-β-D-アラビノフラノシル-プリン(2'-F-ara-ddP)を合成し、これを、イ
ンビボにて、キサンチン酸化酵素により、その親ヌクレオシドである2'-F-ara-d
dIに転化した。薬物動態研究により、2'-F-ara-ddPは、マウスにおいて、2'-F-a
ra-ddIの脳への送達を高めることが指摘された。2'-F-ara-ddIに対するAUC脳/AU
C血清比は、経口および静脈内プロドラッグ投与後、およそ36%高くなった[Sha
nmuganathan,K.ら,「Enhanced brain delivery of an anti-HIV nucleoside 2
'-F-ara-ddI by xanthine oxidase mediated biotrans formation」J.Med.Che
m.(1994)37:821-827]。
コルディセピン(cordycepin)は、腫瘍成長およびウイルス複製に対して、潜
在的に、非常に活性である[Yeners,K.ら,「Cordycepin selectively kills T
dT-positive cells」Abstract of presentation to American Soc.of Clin.On
cology Meeting,May 1993]。しかしながら、インビボでのコルディセピンの効
果は、急速な脱アミノ化により、著しく低下する。コルディセピンは、それがポ
リアデニル酸[ポリ(A)]合成をブロックする能力によるウイルス複製の直接的
な阻害によって、その生物学的な活性を示し、それゆえ、細胞性mRNAおよびウイ
ルス性mRNAの両方のプロセッシングおよび成熟を妨害する[Svendsen,K.R.ら,
(1992),「Toxicity and metabolism of 3'-deoxyadenosine N1-oxide in mic
e and Ehrlich ascites tumor cells」Cancer Chemother.Pharmacol.(1992)
30:86-94]。コルディセピンは、アデノシンキナーゼにより、3'-デオキシアデ
ノシンモノホスフェートにまでリン酸化され、アデニレートキナーゼにより、3'
-デオキシアデノシントリホスフェートにまで、さらにリン酸化され、これは、
それがATPのかわりにRNAに取り込まれることにより、毒性効果を発現し、それに
より、鎖ターミネーターとして機能する。
しかしながら、インビボでは、コルディセピンの抗腫瘍剤としての効果は、こ
の化合物が非常に急速に脱アミノ化して生物学的に不活性な3'-デオキシイノシ
ンを生じるために、限定されている。その反応は、アデノシン脱アミノ酵素によ
り、触媒される[Frederiksen,S.and Klenow,H.(1975),「3-Deoxyadenosin
e and other polynucleotide chain terminators」In Handbook of experiment
al pharmacology,(A.C.Sartorelli and G.Johnes,Eds.)657-669]。
コルディセピンのインビボでの抗腫瘍活性は、アデノシン脱アミノ酵素インヒ
ビターである2'-デオキシコホルマイシン(2'-DCF)と共に投与することにより、
高めることができる。共に投与すると、コルディセピンおよび2'-DCFは、インビ
トロにておよびインビボでのマウスモデルにて、L1210およびP388細胞成長の著
しい阻害を生じる[Johns,D.G.and Adamson,R.H.(1976),「Enhancement of
the biological activity of cordycepin(3'-deoxyadenosine)by the adenos
ine deaminase inhibitor 2'-deoxycoformycin」Biochem.Pharmacol.(1976)
25:1441-1444]。
コルディセピンの脱アミノ化を回避する他の方法は、プロドラックとしての、
3'-デオキシアデノシンN1-オキシド(3'-dANO)の使用による。3'-dANOは、3'-dAN
Oをコルディセピンに還元できる標的細胞に入るまで、代謝的に不活性である[S
vendsen,K.R.ら,(1992),「Toxicity and metabolism of 3'-deoxyadenosine
N1-oxide in mice and Ehrlich ascites tumor cells」Cancer Chemother.Phar
macol.(1992)30:86-94]。
アミンへの還元は、同様に、他の薬物のバイオアベイラビリティーに悪影響を
与えることが認められている。アミンへの還元は、抗腫瘍剤であるメタ-アジド
ピリメタミンを不活性化することが示されている[Kamali,F.ら,(1988),「Me
dicinal azides.Part 3.The metabolism of the investigational antitumor
agent meta-azidepyrimethamine in mouse tissue in vitro」Xenobiotica 18:
1157-1164]。
本発明は、アジド化合物、好ましくは、治療活性のある物質のアジド誘導体を
提供し、これらは、この治療活性物質に対して、高い半減期を与える。
ある種の生物学的に活性な化合物のアジド誘導体は、光学画像化の目的で、合
成されている[Nicholls,D.ら(1991),「Medicinal azides.Part 8.The in v
itro metabolism of p-substituted phenyl azides」Xenobiotica 21:935-943
]。
アジド薬物、例えば、3'-アジド-3'-デオキシチミジン(AZT、これはまた、ジ
ドブジンとして知られている)は、それがウイルス複製を阻害するために、AIDS
の処置に使用されている[Tartaglione,T.A.ら(1993),「Principles and mana
gement of the acquired immunodeficiency.In:Pharmacotherapy.A pathophy
siologic approach,DiPiro,J.T.ら著,Appleton and Lange,Norwalk,Col 18
37-1867]。AZTは、インビボにて、対応するアミノ化合物に還元される[Placid
i,L.ら(1993),「Reduction of 3'-azide-3'-deoxythymidine to 3'-amino-3'-
deoxythymidine in human liver microsomes and its relationship to cytochr
ome P450」Clin.Pharmacol.Ther.54:168-176]。このことはまた、アジドジ
デオキシヌクレオシドについても、当てはまる[Cretton,E.M.and Sommadossi
,J-P(1993),「Reduction of 2'-azido-2',3'-dideoxynucleosides to their 3
'-amino metabolite is mediated by cytochrome P-450 and NADPH-cytochrome
P450 reductase in rat liver microsomes」Drug Metab.Dispos.21:946-950
]。AZTの分解生成物は、治療上効果的ではなく、実際には、毒性である[Crett
on,E.M.ら,「Catabolism of 3'-azide-3'-deoxythymidine in hepatocytes an
d liver microsomes with evidence of formation of 3'-amino-3'-deoxythimid
ine,a highly toxic catabolite for human bone marrow cells」Molec.Pharm
acol.(1991)39:258-266]。
Kumar,R.ら(1994),「Synthesis,in vitro biological stability,and ant
i-HIV activity of 5-halo-6-alkoxy(or azide)-5,6-dihydro-3'-azido-3'-deox
ythymidine(AZT)」 J.Med.Chem.37:4297-4306は、AZTの6-アジド誘導体が
、2〜3対数単位で、AZTより活性が低いことを報告した。
2,6-ジアミノプリンのアジド誘導体および2,6-ジアミノプリンの他の数種の誘
導体もまた、HIV複製の強力なインヒビターとして、認められている。これらの
化合物はまた、アデノシン脱アミノ酵素を阻害し、そして9-β-D-アラビノフラ
ノシルアデニン(araA)の脱アミノ化を阻害する[Balzarini,J.and DeClercq,
E.(1989),「The antiviral activity of 9-beta-D-arabinofuranosyladenine
is enhanced by the 2',3'-dideoxyriboside,the 2',3'-didehydro-2',3'-dide
oxyriboside and the 3'-azido-2',3'-dideoxyriboside of 2,6-diaminopurine
」Biochem.Biophys.Res.Commun.159:61-67]。
本明細書中に提供した方法は、薬学的に活性な化合物の半減期を増大させて、
これらの化合物が患者の体内で急速に分解することに関連した問題点を回避する
ために必要である。発明の要旨
本発明は、アジド化合物、好ましくは、生物学的に活性な治療用化合物のアジ
ド誘導体(本明細書中では、「薬物」ともいう)を含有する薬学的組成物を提供す
る。本発明のアジド誘導体は、インビボにて、対応する薬物に還元される。
多くの治療用化合物は、極めて効果的であるが、系内で、最高の効果を望まれ
るほど長くは持続しない。アミン部分を含む薬物は、体内で脱アミノ化を受けや
すく、それにより、しばしば、その有効性を損う。これらの薬物のアミン部分が
、アジド(N3)部分に転化されると、これらのアジドは、対応するアミンに還元さ
れ、それにより、アジド誘導体を活性アミン薬物に転化し、その結果、この薬物
の活性形態は、より長い半減期を有し、投与後、この薬物自体よりも長い期間に
わたって、このインビボ系にて、生物学的な活性を示し続ける。ケトンであるか
ヒドロキシ置換基を有する薬物もまた、有利なことに、対応するアジドに転化さ
れて、それらの半減期を増加させ得る。
アジド誘導体は、長い半減期を有することに加えて、しばしば、親油性関門(
例えば、前立腺カプセルおよび血液脳関門)を有する細胞および隔室に、より良
好に浸透でき、その結果、それらの活性が望まれている部位に到達するのに、こ
の薬物の対応するアミン形態、ケトン形態またはヒドロキシ形態よりも効果的で
ある。本発明の治療活性物質のアジド誘導体は、時には、それらが誘導体である
薬物に対して、本明細書中で「プロドラッグ」と呼ばれる。
本発明の一例として、コルディセピン(活性抗癌剤)のアジド誘導体を調製した
。コルディセピンのアミン基の代わりに、アジド基を有するN6-アジド-β-D-3'-
デオキシリボフラノシルプリン(ADRP)は、インビボにて、コルディセピン(活性
抗癌剤)に還元される。その後、このコルディセピンは、不活性3'-デオキシイノ
シン代謝物に、さらに脱アミノ化される:
スキーム1
さらに、その活性形態でカルボニル部分を有する薬物は、その対応するアジド
に転化できる。体内では、これらは、対応するアミンに還元され、次いで、さら
に、インビボでの脱アミノ酵素により、その活性カルボニル形態に還元される。
例えば、2'-フルオロ-2',3'-ジデオキシイノシン(2'-F-ara-ddI)の対応するアジ
ド、すなわち、6-アジド-2',3'-ジデオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノフラノ
シルプリン(FAAddP)が調製されている。このアジド誘導体を体内に導入すると、
まず、対応するアミンである2'-フルオロ-2',3'-ジデオキシアデノシン(2'-F-ar
a-ddA)(これは、不活性である)に還元され、次いで、その活性カルボニル形態で
ある2'-F-ara-ddIに脱アミノ化される:
スキーム2
ヒドロキシ形態を有する薬物も同様に、アジド誘導体として投与でき、これは
、まず、インビボにて、アミンに還元され、次いで、ヒドロキシ形態に還元され
る。例えば、(-)β-D-2,6-アミノ-アジドプリンジオキソラン(DAPD)は、ジアミ
ノ誘導体に還元され、これは、次いで、対応するヒドロキシ形態である(-)-β-D
-ジ
オキソラングアニン(DXG)に脱アミノ化される:
スキーム3
好ましくは、ここでアジドに転化した薬物は、第一級アミン環置換基を有する
薬物であり、これらは、このアジドから、対応するアミンに還元できる。他の好
ましい薬物には、脂肪族アミン、第二級または第三級アミン環または鎖置換基を
有する薬物、炭素原子に結合した酸素置換基を有する薬物(すなわち、ケトン)ま
たは炭素原子に結合したヒドロキシ置換基を有する薬物(これらは、アジドから
、対応するアミンに還元でき、また、アミンから、ケトン形態またはヒドロキシ
形態に還元できる)がある。
従って、本発明は、以下のa)およびb)を含有する薬学的組成物を提供する:
a) 薬物のアジド誘導体であって、該アジド誘導体は、インビボにて、該薬物
に転化できる;
b) 適切な薬学的なキャリア。
インビボにて、対応するアミンに転化できるアジドには、アリール、環置換ア
リールおよび脂肪族アミン(好ましくは、第一級アミン)に対応するアジド、なら
びにカルボニル基または水酸基を有する薬物(例えば、酸素置換アリールおよび
脂肪族化合物)に対応するアジドが挙げられる。
これらのアジドは、生物学的に活性なプリンおよびピリミジン、ヌクレオシド
類似物、リン酸化ヌクレオシド類似物、アミノグリコシド抗生物質、アンピシリ
ンおよびアンピシリン類似物、スルホンアミド、セファロスポリンおよびセファ
ロスポリン類似物、ならびに他の脂環族アミン、ケトンおよびヒドロキシ化合物
(アラルキル化合物、複素環アラルキル化合物および環状脂肪族化合物を含む)の
アジド誘導体からなる群から選択され、ここで、このアミン部分または酸素部分
は、この環上にあるか、あるいはこのアミン部分または酸素部分は、脂肪族側鎖
上にある。
本発明の最も好ましい化合物は、2'-F-アジド-ara-ddP、すなわち、2'-F-ara-
ddIのアジド誘導体;9-(β-D-アラビノフラノシル)-6-アジドプリン(6-AAP)、す
なわち、アデニンアラビノシド(AraA)のアジド誘導体;およびN6-アジド-β-D-3
'-デオキシリボフラノシルプリン、すなわち、コルディセピンのアジド誘導体が
ある。
本発明はまた、被験体において、薬物の半減期を増大させる方法を提供し、該
方法は、患者の体内にて、この薬物に還元できる当該薬物のアジド誘導体を、こ
の患者に投与する工程を包含する。このアジド誘導体の投与に続いて、この患者
の血清レベルをモニターして、この薬物の存在を測定でき、あるいはこの薬物の
特定の効果をモニターできる。
本発明の方法はまた、患者の病理学的状態を改善する方法を含み、この方法は
、この患者を、治療に効果的なアジド化合物(好ましくは、インビボにて、該病
理学的状態の処置に効果的な治療用化合物に代謝できるもの)で処置することを
包含する。この方法はまた、該アジド化合物を、他の治療剤と共に同時投与する
ことを含む。
アジドは、被験体の体内にて、還元酵素により、対応するアミンに転化され、
次いで、さらに脱アミノ化される。体内では、多くの脱アミノ酵素が存在し、こ
れらには、アデノシン脱アミノ酵素およびシチジン脱アミノ酵素が含まれ、これ
らは、アミンを、対応するケトンまたはヒドロキシ置換化合物にさらに代謝でき
る。活性薬物は、アミン、あるいはケトンまたはヒドロキシ化合物であり得る。図面の簡単な説明
図1は、コルディセピンのアジド誘導体を100 mg/kgの用量でマウスに経口投
与(●)および静脈内投与(▽)した後の、コルディセピンのアジド誘導体、N6-ア
ジド-β-D-3'-デオキシリボフラノシルプリン、コルディセピンおよび代謝物の
薬物動態プロフィールを示す。図1Aは、アジド誘導体についてのプロフィール
を示し、図1Bは、コルディセピンのプロフィールを示し、そして図1Cは、3'
-デオキシイノシン代謝物のプロフィールを示す。
図2は、20 mg/kgの2'-F-ara-ddIをマウスに静脈内投与した後の、2'-F-ara-d
dIの平均±SD血清濃度(●)および脳濃度(○)を示す。
図3は、55 mg/kgのFAAddPをマウスに静脈内投与した後の血清(A)および脳(B)
における、および経口投与した後の血清(C)における、FAAddP(○)、2'-F-ara-dd
A(▽)および2'-F-ara-ddI(●)の平均±SD濃度を示す。
図4は、55 mg/kgのFMAddAをマウスに静脈内投与した後の、FMAdda(●)および
2'-F-ara-ddI(▽)の平均±SD血清(A)および脳(B)濃度を示す。
図5は、100 mg/kgの6-AAPをマウスに静脈内投与した後(▽)および経口投与し
た後(▼)の血清における6-AAPの平均±SD濃度(μg/ ml)、および静脈内投与した
後(○)および経口投与した後(●)の脳における6-AAPの平均±SD濃度(μg/g)を
示す。
図6は、ara-Aを静脈内投与した後のara-Aの平均±SD血清濃度(▼)、および10
0 mg/kgの6-AAPをマウスに経口投与した後(●)および静脈内投与した後(▽)のar
a-Aの平均±SD血清濃度を示す。
図7は、100 mg/kgの6-AAPをマウスに経口投与(●)した後の、および静脈内投
与した後(▽)のara-Aの平均±SD脳濃度を示す。発明の詳細な説明
本発明の好ましいクラスのアジド誘導体には、生物学的に活性なプリンおよび
ピリミジン、ヌクレオシド類似物およびリン酸化ヌクレオシド類似物のアジド誘
導体がある。例えば、アジド誘導体は、以下の薬物から調製される:ジデオキシ
イノシン(ddI)(そのアジド誘導体は、6-アジド-(2',3'-ジデオキシ-β-D-グリセ
ロ-ペントフラノシル)プリンである);2'-F-ara-ddI(その対応するアジド誘導体
は、6-アジド-2',3'-ジデオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノフラノシルプリン(
FAAddP)である);アラビノフラノシルアデニン(araA)(その対応するアジド誘導
体は、9-(β-D-アラビノフラノシル)-6-アジドプリン(6-AAP)である);コルディ
セピン(その対応するアジド誘導体は、N6-アジド-β-D-3'-デオキシリボフラノ
シルプリンである);フルシトシン(その対応するアジド誘導体は、4-アジド-5-
フルオロ-2(1H)-ピリミジノンである);シタラビン(その対応するアジド誘導体
は、4-アジド-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミジノンである);1-(フ
ルオロアラビノ)フルオロシトシン(その対応するアジド誘導体は、4-アジド-5-
フルオロ-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミジノンである);トリメトプ
リム(その対応するアジド誘導体は、2,4-ジアジド-5-(3,4,5-トリメトキシベン
ジル)ピラミジンである);1-(フルオロアラビノ)フルオロシトシン(その対応す
るアジド誘導体は、4-アジド-5-フルオロ-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピ
リミジノンである);アラビノシチジン(その対応するアジド誘導体は、4-アジド
-1-β-D-リボフラノシル-2-(1H)-ピリミジノンである);および2-クロロ-9-アラ
ビノデオキシアデノシン(その対応するアジド誘導体は、2-クロロ-6-アジド-5-
アラビノプリンである);およびプリン由来抗生物質(例えば、アシクロビルであ
って、その対応するアジド誘導体は、2-アミノ-6-アジド-1,9-ジヒドロ-9-[(2-
ヒドロキシエトキシ)メチル]-プリンである);ペンシクロビル(その対応するア
ジド誘導体は、2-アミノ-6-アジド-1,9-ジヒドロ-9-[ジヒドロキシメチル]プ
ロピル-プリンである);およびガンシクロビル(その対応するアジド誘導体は、2
-アミノ-6-アジド-1,9-ジヒドロ-9-[ジヒドロキシメチルメトキシメチル]-プ
リンである)。
好ましいクラスのヌクレオシド類似物には、例えば、単純ヘルペスウイルス(H
SV)の治療で抗ウイルス剤として使用するヌクレオシド類似物があり、これには
、
ピリミジンヌクレオシド類似物であるイドクスウリジン(IDU)、トリフルオロチ
ミジン(F3T)、およびプリンヌクレオシド類似物であるビダラビン、アシクロビ
ル、バラシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、およびファムシクロビ
ルが含まれる。
さらに好ましいクラスのヌクレオシド類似物には、上述のものとと共に、β-D
-5-フルオロ-1',3'-ジオキサランシトシン(β-D-FDOC)、β-D-5-フルオロ-2',3'
-ジデオキシシチジン(β-D-FddC)、β-D-5-フルオロ-2',3'-ジデオキシ-2',3'-
ジデヒドロシトシン(β-D-Fd4C)、β-D-5-フルオロ-3'-デオキシ-3'-チアシチジ
ン(β-D-FTC)、アデノシン、2'-デオキシアデノシン、シチジン、2'-デオキシシ
チジン、5'-フルオロシトシン、およびアラビノフラノシルシトシン(ara-C)が挙
げられ、これらの全ては、適当なアジド供与体(例えば、N3)で処理することによ
り、その対応するアジドに転化される。
ヌクレオシド類似物のアジド誘導体のモノホスフェート、ジホスフェートおよ
びトリホスフェートもまた、本発明の好ましいクラスの化合物を構成する。
他の好ましいクラスのアシド誘導体には、アミノグリコシド抗生物質のアジド
誘導体があり、これらは、第一級アミン、ケトン、またはヒドロキシ置換化合物
(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシンおよびカナマイシン)がある。
さらに好ましいクラスのアジド誘導体には、アンピリシンおよびその類似物(
例えば、バカンピリシン)のアジド誘導体があり、その対応するアジド誘導体は
、それぞれ、6-[(アジドフェニルアセチル)アミノ]-3,3-ジメチル-7-オキソ-4
-チア-1-アザビシクロ[3.2.0.]ヘプタン-2-カルボン酸およびそのエステルで
ある。
さらに好ましいクラスのアジド誘導体には、第一級アミンまたはケトンである
スルホンアミドのアジド誘導体(例えば、p-アジドベンゼンスルホンアミドおよ
びその類似物)がある。アジド誘導体は、以下のスルファ薬物に対応する分野で
公知の手段により、合成できる:スルファベンズ、スルファベンズアミド、スル
ファブロモメタジン、スルフアセトアミド、スルベノックス、スルファシチン(
sulfacytine)、スルフアジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシ
ン、スルファドキシン、スルファエチドール、スルファアグアニジン(sulfaa
guanidine)、スルファグアノール、スルファレン、スルファメラジン、スルフ
ァメータ(sulfameter)、スルファメタジン(sulfamethazine)、スルファメト
ミジン(sulfamethomidine)、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリ
ダジン、スルファメトロール、スルファミドクリソイジン(sulfamidochrysoidi
ne)、スルファモクソール、スルファニルアミド(sulfanilamide)、スルファ
ニルアミドメタンスルホン酸トリエタノレート、スルファニルアミドサリチル酸
、スルファニル酸、2-p-スルファニリルアニリノエタノール、p-スルファニリル
ベンジルアミン、スルファニリルウレア、N-スルファニリル-3,4-キシルアミド
、スルファニトラン、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファプロキ
シリン、スルファピリジン、スルファキノキサリン、スルファソミゾール、スル
ファシマジン、スルファチアゾール、スルファアチオウレア(sulfaathiourea)
、スルファザメト(sulfazamet)、4,4'-スルフィニルジアニリン、スルフイソ
ミジンおよびスルフイソキサゾール。
さらに好ましいクラスのアジド誘導体には、第一級アミンまたはケトンである
セファロスポリンまたはその生物学的に活性な類似物のアジドフェニル誘導体(
例えば、セファレキシン(cephalexin)(その対応するアジド誘導体は、[7-(アジ
ドフェニルアセチル)アミノ-3-メチル-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0
]オクト-2-エン-2-カルボン酸]である);セファログリシン(cephaloglycin)
(その対応するアジド誘導体は、3-((アセチルオキシ)メチル)-7-[(アジドフェ
ニルアセチル)アミノ]-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクト-2-エ
ン-2-カルボン酸である);セファロスポリンC(cephalosporin C)(その対応
するアジド誘導体は、7-(D-5-アジド-5-カルボキシバレルアミド)-3-(カルボキ
シ)-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクト-2-エン-2-カルボン酸で
ある);セファマイシン(その対応するアジド誘導体は、7-(D-5-アジド-5-カルボ
キシバレルアミド)-7-メチルオキシ-3-(カルボキシ)-8-オキソ-5-チア-1-アザビ
シクロ[4.2.0]オクト-2-エン-2-カルボン酸エステルである)、およびセファド
リン(cephadrine))がある。
さらに好ましいクラスのアジド誘導体には、以下の物質のアジド誘導体がある
:生物学的に活性な脂環族アミン、ケトンおよびヒドロキシ置換化合物(これ
には、アラルキル化合物、複素環アラルキル化合物および環式脂肪族化合物が含
まれるが、この場合、このアミン部分または酸素部分は、この環上にあり(例え
ば、トリメトレキサート)、その対応するアジド誘導体は、2,4-ジアジド-5-メチ
ル-6-[(3,4,5-トリメトキシアニリノ)メチル]キナゾリンである);プロカイン
(その対応するアジド誘導体は、p-アジドベンゾイルジエチルアミノエタノール
である);ダプソン(その対応するアジド誘導体は、4,4'-ジアジドジフェニルス
ルホンである);アマンタジン(その対応するアジド誘導体は、1-アジドトリシク
ロ[3.3.1.13.7]デカンである);およびメトトレキセート(その対応するアジド
誘導体は、N-[4-[[(2,4-ジアジド-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]
ベンゾイル]-L-グルタミン酸であり、あるいはこのアミン部分または酸素部分
が、脂肪族側鎖上にある(例えば、アンフェタミン)場合、その対応するアジド誘
導体は、1-フェニル-2-アジドプロパンである);L-ドーパ(その対応するアジド
誘導体は、2-アジド-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸である);トリメ
トプリム(その対応するアジド誘導体は、2,4-ジアジド-5-(3,4,5-トリメトキシ
ベンジル)ピリミジンである);およびヒスタミン(その対応するアジド誘導体は
、β-アジドエチルイミダゾールである)。
さらに好ましいクラスのアジド誘導体には、生物発生的なアミン(エピネフリ
ン、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびセラトニン(seratonin)を含めて)の
アジド誘導体がある。
対応するアジドは、事実上、いずれかの治療目的に有用な薬物に対して、該薬
物の半減期を増大させるように形成できる。例えば、抗菌性、抗ウイルス性、抗
真菌性、局所麻酔性および癌治療性の薬物(これらの例は、上で示されている)に
加えて、対応するアジドは、利尿薬(例えば、フロセミド);麻酔薬(例えば、ケ
タミン);非ステロイド抗炎症薬(例えば、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸);精神医
学薬(例えば、Prozac);β遮断薬(例えば、プロパノロール(propanolol));ホ
ルモン(例えば、甲状腺ホルモン);および他の薬物のために、製造できる。適切
な薬物は、治療用化合物の編集物(例えば、Merck's Manual)を検討し、アミン置
換基、カルボニル置換基またはヒドロキシ置換基を有するものを同定することに
より、当業者により確認できる。対応するアジドの処方は、当該技術分野で公知
の手段(例えば、ここで記述のもの)により、過度の実験なしに、当業者により、
容易に達成され得る。
当業者に理解できるように、1個より多いアミノ部分、カルボニル部分または
ヒドロキシ部分を有する化合物は、これらの置換基の全てかそれ以下(例えば、
1個だけ)がアジド基に転化され得る。
ここで、その化学名によって特許請求した治療用化合物のアジド誘導体には、
その遊離形態だけでなく、それらの薬学的に受容可能な塩(エステルを含めて)が
含まれる。この薬物の物理化学的な特性に依存して、当該薬学的に受容可能な塩
は、さらに、無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩または硫酸塩);有機
酸付加塩(例えば、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ヒベンズ酸塩(hibenzate
)、メタンスルホン酸塩)、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウ
ム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩)、ア
ミン塩などであり得る。
使用できるアジド誘導体の用量は、重要ではないが、このアジド誘導体は、好
ましくは、還元により生成する薬物の通常の投薬量範囲内で、使用される。当業
者に理解できるように、アジド誘導体を投与する場合には薬物の半減期が(薬物
自体を投与する場合と比較して)より長いことを考慮すれば、投薬量および投薬
時期は、有利なことに、変えることができる。
それらの治療用化合物のアシド誘導体は、被験体または患者(これは、ヒトを
含めた恒温動物である)に対して、当該技術分野で公知の任意の方法(静脈内注射
および通常の経腸経路(例えば、経口的または直腸的)を含めて)により、投与で
きる。さらに、これらの化合物は、通常の調製物、例えば、固体投薬形態(例え
ば、錠剤、丸薬、粉剤、顆粒または坐剤)、または液体投薬形態(例えば、溶液、
シロップ、乳濁液、エリキシール(elixir)、懸濁液またはレモネード)の形態
で、投与できる。これらの調製物を処方する際には、薬学的に受容可能なキャリ
ア、例えば、結合剤(例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット
(sorbit)、トラガカント、ポリビニルピロリドン)、希釈剤(例えば、ラクトー
ス、スクロース、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビットなど)、潤滑
剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シ
リカなど)、崩壊薬(例えば、コーンスターチ)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナ
トリウム)、坐剤ベース(例えば、カカオバター、ラウリンバター、ポリエチレン
グリコール(例えば、マクロゴール)、グリセリン化ゼラチン、C12-C18飽和脂
肪酸のトリグリセリド)、芳香剤、甘味料または着色剤が使用できる。本明細書
中で使用する「薬学的に受容可能なキャリア」との用語は、水単独またはアルコ
ール単独を含まないが、水と組み合わせた前述の添加剤のいずれかは、薬学的に
受容可能なキャリアを構成できる。
一般に、アジド誘導体は、当該技術分野で公知の方法により、調製できる。芳
香族ケトン、ヒドロキシ置換化合物またはアミンのアジド誘導体は、対応する塩
化物を用いて出発し、そしてナトリウムまたはリチウムアジドで交換して、合成
できる。例えば、アジドシトシン類似物は、以下のスキームに従って、ウラシル
類似物から調製できる:
スキーム4
アジドアデニン類似物は、以下のスキームに従って、グアニン類似物から調製
できる:
スキーム5
アシクロビル、すなわち、2-アミノ-6-アジド-1,9-ジヒドロ-9-[(2-ヒドロキ
シエトキシ)メチル]-プリンに対するアジド誘導体の合成を、以下のスキームに
示す:
スキーム6
ペンシクロビル、すなわち、2-アミノ-6-アジド-1,9-ジヒドロ-9-[ジヒドロ
キシメチル]プロピル-プリンに対するアジド誘導体の合成は、以下のスキーム
に示す:
ガンシクロビル、すなわち、2-アミノ-6-アジド-1,9-ジヒドロ-9-[ジヒドロ
キシメチルメトキシメチル]-プリンに対するアジド誘導体の合成は、以下のス
キームに示す:
スキーム8
シタラビン、すなわち、4-アジド-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミ
ジノンに対するアジド誘導体の合成は、以下のスキームに示す:
スキーム9
2-クロロ-9-アラビノデオキシアデノシン(2-CdA)、2-クロロ-6-アジド-5-アラ
ビノプリンに対応するアジド誘導体の合成を、以下のスキームに示す:
スキーム10
脂肪族化合物は、次のスキームに従って、トリフルオロメチルスルホニルアジ
ドで処理することにより、調製できる:
スキーム11
トリフルオロメチルスルホイル(sulfoyl)アジドの爆発性のために、脂肪族
アジド誘導体の合成では、注意を払わなければならない。当業者に理解できるよ
うに、対応するアジドに転化される薬物の立体化学を保持するにも、注意を払わ
なければならない。実施例
実施例1 コルディセピン誘導体の合成
コルディセピン誘導体であるN6-アジド−β-D-3'-デオキシリボフラノシルプ
リンを、以下の式に従って合成した:
スキーム12
CHCl2(1000 ml)中で、ジアセトン-D-グルコース(156g、0.6 mol)を撹拌した
。この溶液に、ピリジミウムジクロメート(PDC、135g、0.36 mol)およびAc2O(1
86 ml、1.98 mol)を添加した。この混合物を、30分間還流した。濃縮後、その残
留物をEtOAc(500 ml)で希釈し、濾過し、その濾液をシリカゲルパッドで濾過し
、そしてEtOAcで洗浄した。合わせた濾液を濃縮し、そしてトルエンと共に蒸発
させて、オイル110gを得た。収率:70.8%。
このオイル(110g、0.42 mol)およびTSNHNH2(86.1g、0.46 mol)の無水EtOH(6
00 ml)溶液を、3時間還流した。冷却後、その白色結晶生成物を濾過し、そして
MeOH(60g、収率:39%)で洗浄した。
この白色結晶物質(60g、0.23 mol)のTHP-MeOH(1:1、700 ml)撹拌溶液に、
痕跡量のメチルオレンジおよびNaCNBH3(15.1g、10.24 mol)を添加した。メタノ
ール性HClを滴下し、この溶液の色を赤−黄色の遷移点に保持した。この混合物
を室温で1時間撹拌した。NaCNBH3(8.7g、0.14 mol)の第二部分を添加し、続い
て、メタノール性HClを滴下して、pH 3に維持した。室温で1時間撹拌した後、
この混合物をNaHCO3で中和し、そして乾燥状態まで濃縮した。その残留物をH2O(
150 ml)に溶解し、そしてCH2Cl2(200 ml×3)で抽出し、その有機層をブライン
で洗浄し、乾燥し、濾過し、そして蒸発させて、黄色がかったオイルを得た。こ
れをシリカゲルカラムにより精製して、オイルとして化合物A(30g)および白色
固形物として化合物B(30g)を得た。化合物Aを60% HOAc(450 ml)に溶解し、
そして室温で一晩撹拌した。この混合物をNaHCO3(固形物)で中和し、そしてCH2C
l2(200 ml×3)で抽出した。その有機層をブラインで洗浄し、乾燥し、濾過し、
そして蒸発させて、黄色がかったオイルを得た。これをシリカゲルカラムにより
精製して、別の化合物B(16g)を得た。全収率:84.5%。
化合物B(46g、0.118 mol)およびNaOAc・3H2O(64.6g、0.48 mol)の無水EtOH
(600 ml)中の混合物を、1時間還流した。この混合物を乾燥状態まで濃縮して、
その残留物をH2O(150 ml)に溶解し、そしてEtOAc(200 ml×5)で抽出した。その
有機層を合わせ、そしてブライン(200 ml×2)で洗浄し、乾燥し、そして濾過し
、次いで、蒸発させて、黄色がかったオイルを得た。これをシリカゲルカラムに
より精製して、黄色がかったオイル20gを得た。収率:83%。
この黄色がかったオイル(20g、0.099 mol)のMeOH(300 ml)溶液に、0℃にて
、H2O(200 ml)中のNaIO4(24.6g、0.115 mol)を添加した。この混合物を10分間
撹拌した後、NaBH4(5.7g、0.149 mol)を添加し、この混合物をさらに10分間撹
拌した。濾過後、その濾液を乾燥状態まで濃縮し、その残留物をシリカゲルカラ
ムにより精製して、白色の固形物14gを得た。収率:82.8%。
この白色固形物(3.45g、20 mmol)、DMAP(50 mg)、Ac2O(2.26 ml、24 mmol)お
よびEt3N(4.18 ml、30 mmol)のCH2Cl2(50 ml)中の混合物を、1時間還流した
。冷却後、この混合物を水およびブラインで洗浄し、その有機層を乾燥し、濾過
し、そして乾燥状態まで蒸発させて、黄色がかったオイル4.1gを得た。収率:9
5%。
この黄色がかったオイル(13.5g、62.9 mmol)の80% HOAc(50 ml)中の混合物
を、70℃で24時間撹拌した。この混合物を、さらに1時間還流した。この混合物
を乾燥状態まで濃縮し、そしてトルエンと共に蒸発させた。その褐色の残留物を
CH2Cl2(200 ml)に溶解し、そしてAc2O(6.5 ml、69.2 mmol)、Et3N(11.4 ml,81.
8 mmol)、DMAP(100 mg)を添加した。この混合物を、1時間還流した。反応が不
完全なために、Ac2O(2 ml)およびEt3N(4 ml)をさらに添加し、この混合物をさ
らに3時間還流した。冷却後、この混合物をH2O(50 ml×2)で洗浄し、乾燥し、
濾過し、そして乾燥状態まで冷却した。その残留物を、シリカゲルカラムにより
精製して、淡黄色のオイルを得た。
6-クロロプリン(0.45g、2.9 mmol)、HMDS(12 ml)および硫酸アンモニウム(50
mg)の混合物を、1時間還流した。得られた透明溶液を、無水条件下にて、真空
で濃縮した。その残留物を、無水CH2Cl2(75 ml)に溶解し、そして0℃まで冷却
した。この冷却溶液に、CH2Cl2(10 ml)およびTMSOH(新たに開封した、0.6 ml、
3 mmol)中のこの淡黄色のオイル(0.5g,1.9mmol)を添加した。次いで、この温度
を室温まで上げ、この混合物を30分間撹拌した。この混合物を、室温でさらに1
時間撹拌した。飽和NaHCO3を添加して、この反応を停止した。分離後、その水層
を、EtOAc(50 ml×2)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして乾
燥状態まで蒸発させた。次いで、その残留物を、シリカゲルカラムにより精製し
て、無色のオイル450 mgを得た。収率:66.1%。
この無色のオイル(3.69g、10.4 mmol)のMeOH(300 ml)溶液に、飽和Na2CO3(3
ml、pH=8まで)を添加した。この混合物を、室温で30分間撹拌した。この混合
物を、HOAcで、pH 6〜7まで中和した。この混合物を、乾燥状態まで濃縮し、
そしてトルエンと共に蒸発させて、白色の固形物を得た。この固形物に、DMF(70
0 ml)およびNaN3(1.1g、17 mmol)を添加し、この混合物を、60℃で3時間撹拌
した。濃縮後、その残留物をHOAc(100 ml)で融解した。この白色固形物を、濾過
により取り除き、その濾液を、乾燥状態まで濃縮した。MeOH(50 ml)を添加する
と、白色固形物が沈殿した。濾過後、白色結晶物1.4gを得た。収率:48.6%。
実施例2 コルディセピン誘導体の生体活性
薬物動態学的実験のために、24〜28gの重量のメスNIHスイスマウス(Harland
Sprague-Dawley,Indianapolis,IN)を使用した。コルディセピンまたはコルデ
ィセピンのアジド誘導体100 mg/kgを、静脈内(iv)(メチルスルホキシドに溶解し
た(20 mg/ml))または経口(30%グリセリンに溶解した(8.3 mg/ml))投与した。薬
剤投与後、0.08時間、0.25時間、0.5時間、0.75時間、1.0時間、1.5時間、2.0時
間、3.0時間および4.0時間の各時点において、それぞれ、3匹の動物を殺した。
血液(血清)を集め、そして直ちに分析した。
イノシン誘導体、コルディセピンおよびコルディセピンのアジド誘導体の血清
中濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
血清中のコルディセピンおよびその代謝物濃度を測定するために、血清試料20
0μl、内部標準2'-F-ddI(5μg/ ml)50μlおよびタンパク質沈殿物としての2M
過塩素酸50μlを、ポリプロピレン微小遠心チューブ(1.5 ml)に添加した。この
アジド誘導体の血清中濃度を測定するために、内部標準(20μg/ml)として、AzdU
を使用した。これらのチューブをボルテックスし、そして9,000 rpmで5分間遠
心分離した。
中和するために、過塩素酸上清を、テトラホウ酸ナトリウム濃縮溶液(pH 6.5)
160μlと共に、清浄チューブに移した。これらのチューブを、再びボルテックス
し、そして12,000 rpmで15分間遠心分離した。分析中、試料は0℃で保持した。
Shimadzy勾配HPLC系(Shimadzy Corporation,Kyoto,Japan)にて、クロマトグ
ラフィー分離を行った。この系は、Model SPD-10A UV検出器、Model L-10ASポン
プ、Model SIL-10Aオートサンプラー、コントローラーModel SCL-10AおよびMode
l CR-501報告積分器を備えた。Alltech Hypersil ODS(5μm粒径、4.6×250 mm
、Alltech Associates,Deerfield,IL)にて、クロマトグラフィーを行い、コン
デセピンおよびその代謝物を測定した。コンデセピンのアジド誘導体を、Alltec
h Hypersil BDSカラム(5μm粒径、4.6×250 mm、Alltech Associates,Deerfie
ld,IL)にて分析した。
血清中におけるコルディセピンおよび代謝物の分析用の移動相は、1.4m l/分
の流量にて、20 mMホウ酸ナトリウム中および10 mM EDTA(pH 6.5)中の3%アセ
トニトリルからなっており、そして血清中におけるアジド誘導体分析用の移動相
は、1.5 ml/分の流量にて、20 mMリン酸カリウム(pH 4.0)中の3%アセトニトリ
ルからなっていた。このUV検出器を、コンデセピンおよび代謝物の分析用には25
8 nm、そのアジド誘導体の分析用には290 nmに設定した。
既知量の化合物を血清に添加し、それらを上記抽出操作にかけることにより、
各タイプの試料に対して、標準曲線を準備した。定量化の限度は、コンデセピン
および代謝物に対して0.05μg/mlであり、そのアジド誘導体に対して0.5μg/ml
であった。
ヌクレオシドの血清濃度対時間のデータは、非区画法により、分析した。濃度
対時間曲線下の領域(AUC)において、0時間から最終測定濃度までは、線形台形
法則により測定し、最終測定濃度から無限値までのAUCは、最終測定濃度を、最
小二乗脱離速度定数(λz)で割ることにより決定した。半減期は、0.693/λZから
算出した。AUC概算値からの分散は、Rocci,M.L.Jr.および Jusko,W.J.,「LA
GRAN program for area and moments in pharmacokinetic analysis」Comp.Pro
g.Biomed.(1983)16:203-216に記載のように、算出した。
このアジド誘導体の絶対バイオアベイラビリティー(F)は、AUCor/AUCivから算
出し、ここで、AUC値は、血清ヌクレオシド濃度対時間のデータから測定した。
血清中のコルディセピンおよびその代謝物に対する相対暴露値は、その誘導体の
iv投与後またはそれに対して、AUCor/AUCivから算出した。
re 相対的暴露値:経口対静脈内のAUC比(AUCor/AUCiv)
* 統計的に有意ではない差
** 統計的な有意差
コンデセピン100 mg/kgのiv投与後、5分の時点で、血清試料中に痕跡量のコ
ルディセピンだけが集められるように、このヌクレオシドは、マウス血液から急
速に排出された。10分後に集めた血清試料では、コンデセピンは回収されなかっ
た。コンデセピン100 mg/kgの経口投与後、血清中では、3'-デオキシイノシンも
コンデセピンもいずれも検出されなかった。
本研究の最も重要な発見は、このアジド誘導体をマウスに投与後になされた。
iv投与および経口投与に続いて、測定可能な量のコンデセピンが検出された。コ
ンデセピンおよびそのアジド誘導体および3'-デオキシイノシン代謝物の薬物動
態学的プロフィールを、図1に示す。これらの化合物の薬物動態学的パラメータ
を、表1に挙げる。
このアジド誘導体の最大測定濃度(Cmax)は、iv後5分の時点で、143±33.4μg
/mlであり、そして経口投与後15分の時点で、48.2±12.3μg/mlであった。それ
らの半減期の値は、0.35時間(iv)および0.53時間(経口)であった。このアジド誘
導体の絶対バイオアベイラビリティー(F)は、0.94であったが、iv投与および経
口投与のAUC値間の差は、統計的に有意ではない(表1)。
コンデセピンのCmax値は、iv後5分の時点で、3.89±1.72μg/ml、そして経口
投与後30分の時点で、1.18±0.60μg/mlであった。その半減期の値は、0.24時間
(iv)および0.76時間(経口)であった。コンデセピンのアジド誘導体で処方する
ことにより、1.5時間(iv)および3時間(経口)以内に、0.05μg/ml以上で、血清
中に、コンデセピンが検出できた。コンデセピンのreは、0.75であったものの、
iv投与および経口投与に対するAUC値の間に、統計的に有意な相違はない(表1)
。
3'-デオキシイノシンのAUCレベルは、コンデセピンのアジド誘導体の投与後、
測定した。そのreは、1.6であった。代謝物の半減期は、このアジド誘導体およ
びコンデセピンと同じ範囲の値を有していた。
コンデセピンのアジド誘導体のこれらの薬物動態学的研究により、マウス血清
中におけるコンデセピンの循環が著しく高まっていることが明らかである。経口
投与後のこのアジド誘導体の絶対バイオアベイラビリティーは、94%であり、こ
のアジド誘導体から放出されたコンデセピンの量は、iv投与および経口投与後、
同じである。コンデセピンのアジド誘導体の経口投与により、長期間にわたり、
検出限界(0.05μg/ml)以上のコンデセピン濃度が得られる。
実施例3 6-アジド-2',3'-ジデオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル
プリン(FAAddP)およびN6-メチル-2',3'-ジデオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノ
フラノシルアデニン(FMAddA)、2'-F-ara-ddIアジドプロドラッグの合成
スキーム13を参照して、この6-クロロプリン誘導体2から、プロドラッグFAAd
dP(4)およびFMAddA(5)を合成した。公開された手順に従って、5-0-ベンゾイル-3
-デオキシ-1,2-0-イソプロピリジン-α-D-リボフラノース(1)から、化合物2を
合成した[Shanmuganathan,K.ら,「Enhanced brain delivery of an anti-HIVn
ucleoside 2'-F-ara-ddI by xanthine oxidase mediated biotransformation」J
.Med.Chem.(1994)37:821-827]。化合物2を、CH2Cl2中にて、−78℃で、D
IBAL-Hを用いて脱ベンゾイル化して、化合物3を得た。化合物3を、室温にて、
DMF中のLiN3で処理すると、73%収率で、この6-アジド誘導体4が得られた。DMF
中にて、80℃で、5時間にわたり、化合物2をメチルアミンで処理し、続いて、
飽和NH3/MeOHで15時間にわたり脱保護化すると、化合物5が定量的に得られた[C
hu,C.K.ら,「Synthesis and structure-activity relationships of 6-substi
tuted 2',3'-dideoxypurine nucleosides as potential anti-human immunodefi
ciency virus」J.Med.Chem.(1990)33:1553-1561]。
スキーム14
融点は、Mel-Temp II実験室装置で測定したが、補正していない。その1H NMR
スペクトルは、内部標準としてテトラメチルシランを用いて、JEOL FX 90 Q FT
分光光度計で記録した。その化学シフトは、百万分率(δ)で報告し、その信号は
、s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、m(多重項)、dm(二重の多重項)またはbrt(
ブロード三重項)で引用されている。UVスペクトルは、Beckman DU-7分光光度計
で記録した。TLCは、Analtech Co.から販売されているUniplates(シリカゲル)で
行った。元素分析は、Atlantic Microlab,Inc.,Norcross,GAにより、行った
。
6-クロロ-9-(5-0-ベンゾイル-2,3-ジデオキシ-2-フルオロ-β-Dアラビノフラ
ノシル)プリン(2):化合物2は、先の公開手順に従って、化合物1から調製した
[Shanmuganathan,K.ら,「Enhanced brain delivery of an anti-HIV nucleosi
de 2'-F-ara-ddI by xanthine oxidase mediated biotransformation」J.Med.
Chem.(1994)37:821-827]。UV(MeOH)は、λmax=263.5 nmであった(Shanmuga
nathan,K.ら,「Enhanced brain delivery of an anti-HIV nucleoside 2'-F-a
ra-ddI by xanthine oxidase mediated biotransformation」J.Med.Chem.(19
94)37:821-827には、UV(MeOH)λmax=263.5 nmと報告されている)。
6-クロロ-9-(2,3-ジデオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)プリン(3
):化合物2(1.34g、3.56 mmol)のCH2Cl2(40 mL)溶液を、窒素下にて、−78℃
まで冷却し、そしてDIBAL-H(10.5 mL、CH2Cl2中の1M溶液)を、ゆっくりと添加
した。この反応混合物を、−78℃で45分間撹拌し、そしてMeOHをゆっくりと添加
することにより、反応停止した。この反応混合物を室温まで暖め、その溶媒を真
空下にて蒸発させた。その残留物を熱MeOHで溶解し、そしてセリットのパッドで
濾過した。この濾液を濃縮すると、その残留物をシリカゲルカラム(CHCl3中にて
5% MeOH)で精製して、純粋化合物3(0.74g、75%)を得た。mp 157-158℃;UV(
MeOH)は、λmax=263.5 nmであった(Barchi,J.J.Jr.ら,「Potential anti-AI
DS drugs.Lipophilic,adenosine deaminase-activated prodrugs」J.Med.Ch
em.(1991)34:1647-1655には、UV(MeOH)λmax=260 nmと報告されている);[
α]25 D+52.3(c 0.5,MeOH)(Barchiら(前出)では、[α]25 D+55.7(c 1.4,MeOH)
と報告されている)。
6-アジド-9-(2,3-ジデオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)プリン
(4):3(1.0g、3.67 mmol)のDMF(25 mL)およびLiN3(0.90g、18.3 mmol)溶液を
、室温で24時間撹拌した。このDMFを高真空下にて蒸発させて、白色の固形物を
得た。これをMeOH中で沸騰させ、そして3回濾過して、白色の固形物として、純
粋な4(0.75g、73.5%)を得た:
N6-メチル-9-(2,3-ジデオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニ
ン(5)[Barchi,J.J.Jr.ら,「Potential anti-AIDS drugs.Lipophilic,adeno
sine deaminase-activated prodrugs」J.Med.Chem.(1991)34:1647-1655;
およびChu,C.K.ら,「Synthesis and structure-activity relationships of 6
-substituted 2',3'-dideoxypurine nucleosides as potential anti-human imm
unodeficiency virus」J.Med.Chem.(1990)33:1553-1561を参照せよ]。2(
1.60g、4.25 mmol)のDMF(50 mL)およびメチルアミン(3 mL)溶液を、鋼鉄ボン
ベに密封し、そして80℃で5時間加熱した。冷却後、この溶媒を蒸発させ、MeOH
(150 mL)中のNH3を添加し、そして一晩撹拌した。この溶媒の蒸発により、粗生
成物が得られ、これを、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、吸湿性
泡状物として、純粋な5を得た[Barchi,J.J.Jr.らおよびChu,C.K.ら(前出)を
参照せよ](1.13g、定量的な収率)。UV(MeOH)は、λmax=264 nmであった(Barch
i,J.J.Jr.らおよびChu,C.K.らには、UV(MeOH)λmax=265 nmと報告されてい
る);[α]25 D+56.1(c 0.58,MeOH)(Barchiら(前出)では、[α]25 D+56.57(c 1.
9,MeOH)と報告されている)。
血清、脳および肝臓ホモジネート中のインビトロ安定性:肝臓および脳ホモジ
ネートを、等張性の0.05 Mリン酸緩衝液(pH 7.4)を用いて、1:1(g: mL)比
で調製した。マウス血清に、FAAddP(70μM)またはFMAddA(50μM)を添加し、この
脳ホモジネートまたは肝臓ホモジネートを、37℃で、振とう水浴中にて、インキ
ュベートした。0時間、および6時間までの一定時間で、100μLのアリコートを
取り除いた。これらの化合物の濃度は、HPLCにより測定した。
アジド還元アッセイ:アジド還元活性の分析は、先に記述した[Cretton,E.M.
and Sommadossi,J-P,「Reduction of 2'-azido-2',3'-dideoxynucleosides to
their 3'-amino metabolite is mediated by cytochrome P-450 and NADPH-cyt
ochrome P-450 reductase in rat liver microsomes」Drug Mctab.Dispos.(19
93)21:946-950]。
2'-F-ara-ddAおよびFMAddAのアデノシン脱アミノ酵素による脱アミノ化:2'-F
-ara-ddA(80μM)またはFMAddA(50μM)の試料(1.5 mL)を、0.05 M等張性リン酸緩
衝液(pH 7.4)中で調製し、そして37℃で、振とう水浴に入れた。この反応は、ア
デノシン脱アミノ酵素(子ウシ腸粘膜に由来のVII型、Sigma Chemical Co.,St.
Louis,MO)15μLの添加により、開始した。このインキュベーション媒体中の最
終活性は、2'-F-ara-ddAに対して0.05 U/mLであり、そしてFMAddAに対して1.0 U
/mLであった。2'-F-ara-ddAおよび2'-F-ara-ddIまたはFMAddAおよび2'-F-ara-dd
Iの濃度を測定するために、指定した時間間隔にて、100μLのアリコートを取り
出した。
このプロドラッグFAAddPの2'-F-ara-ddIへの生体内変換には、2段階の代謝工
程が関与している(スキーム14)。このプロドラッグを、まず、このP-450還元酵
素系により、2'-F-ara-ddAに代謝させた。このシトクロムP-450系による、AZTの
アミノ部分のアミン官能性への類似の還元は、最近、明らかにされた[Placidi,
L.ら,「Reduction of 3'-azide-3'-deoxythymidine to 3'-amino-3'-deoxythym
idine in human liver microsomes and its relationship to cytochrome P450
」Clin.Pharmacol.Ther.(1993)54:168-176;Cretton,E.M.and Sommadossi
,J-P,「Reduction of 2'-azido-2',3'-dideoxynucleosides to their 3'-amin
o metabolite is mediated by cytochrome P-450 and NADPH-cytochrome P-450
reductase in rat liver microsomes」Drug Metab.Dispos.(1993)21:946-9
50]。次いで、2'-F-ara-ddAを、アデノシン脱アミノ酵素により、2'-F-ara-ddI
に代謝させた。このアジド還元アッセイから、FAAddPは、ヒト肝臓ホモジネート
のミクロソーム画分により、2'-F-ara-ddAおよび2'-F-ara-ddIに代謝されたこと
を確認した。さらに、インビトロでの生体内変換の研究から、無視できる速度で
、アデノシン脱アミノ酵素によるFAAddPの2'-F-ara-ddIへの直接転化が起こる
ことが明らかとなった。
FAAddPは、37℃にて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH 7.4)中で安定であり、
このことは、この化合物が、化学的加水分解を受けにくいことを示す。しかしな
がら、マウス血清中での、このプロドラッグのインビトロ生体内変換は、2.41時
間の分解半減期で、比較的に急速であった。FAAddPは、血清中で代謝されたもの
の、代謝物は確認されなかった。肝臓ホモジネートでは、FAAddP濃度は、二相性
の様式で、低下した。最初の45分間にわたって、このプロドラッグは、0.48時間
のt1/2で、急速に代謝された。引き続いて、この転化速度は、おそらく、補助
因子の枯渇により、初期速度よりもずっと遅くなった(t1/2=7.74時間)。2'-F-
ara-ddIの形成は、このプロドラッグの殆どが2'-F-ara-ddIに転化されると共に
、このプロドラッグの減少と平行して起こった。この肝臓ホモジネート中では、
低濃度の2'-F-ara-ddAだけが検出された。脳ホモジネート中でのFAAddPの生体内
変換は、6.1時間の半減期で、この肝臓中の生体内変換よりも、ある程度遅かっ
た。しかしながら、6時間にわたって、このプロドラッグの10%だけが2'-F-ara
-ddIに転化され、そして5%が2'-F-ara-ddAに転化された。それゆえ、血清中で
のこの研究と同様に、マウスの脳でのFAAddPの消失は、未確認の経路が原因であ
った。
FMAddAの2'-F-ara-ddIへの代謝転化は、アデノシン脱アミノ酵素により促進さ
れる1段階工程であると思われる。このプロドラッグは、PBS、マウス血清およ
びマウス脳ホモジネート中で安定であり、この肝臓ホモジネート中では、2'-F-a
ra-ddIにゆっくりと代謝された(t1/2=9.1時間)。しかしながら、PBS(t1/2=0
.46時間)および脳ホモジネート(t1/2=3.7時間)にアデノシン脱アミノ酵素を添
加すると、このプロドラッグの事実上全ては、2'-F-ara-ddIに転化された。
動物研究:活性ヌクレオシドである2'-F-ara-ddIの薬物動態学を、マウスにお
いて研究した。動物研究は、the University of Georgia Animal Care and Use
Committeeにより認可され、Animal Welfare Act and the National Institutes
of HealthのGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsにより確立さ
れたガイドラインに従って、行った。24〜28gの重量のメスNIHスイスマウス(Ha
rland Sprague-Dawley,Indianapolis,IN)を、12時間灯火/12時間暗黒の一定温
度(22℃)環境に収容し、標準的な実験室食物および水に自由にアクセスできるよ
うにした。動物を、実験前1週間にわたり、この環境に順応させた。
生理食塩水に溶解した2'-F-ara-ddI(15 mg/mL)を、20 mg/kg(79μmoles/kg)の
用量で、尾の静脈注射により、静脈内投与した。FAAddP(55 mg/kg;197μmoles/
kg)を、DMSO溶液(15 mg/mL)として静脈内投与するか、または生理食塩水の懸濁
液として、強制摂取により、経口投与した。生理食塩水に溶解したFMAddA(15 mg
/mL)を、112 mg/kg(437μmoles/kg)の用量で、静脈内投与した。一定の時間間隔
で、マウス(各時点あたり、3匹)をジエチルエーテルで麻酔にかけ、そして左心
室の心臓穿刺による放血によって、殺した。集めた血液から、血清を採取した。
その脳を切開し、通常生理食塩水ですすぎ、水分を除いて乾燥し、そして重量を
計った。血清試料および脳試料は、分析まで、−20℃で凍結させた。
分析方法論:PBS、血清、脳ホモジネートおよび肝臓ホモジネート中のFAAddP
、FMAddA、2'-F-ara-ddAおよび2'-F-ara-ddIの濃度は、高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)により測定した。この脳組織または肝臓組織を、氷冷等張性0.05 Mリ
ン酸緩衝液(pH 7.4)を用いて、1:1(g:mL)比でホモジナイズした。緩衝液、
血清または組織のホモジネート(100μL)を、内部標準10μL(25μg/mLの3'-アジ
ド-2',3'-ジデオキシウリジン(AZddU))と混合した。ボルテックスしながら、酢
酸0.1%を含有するアセトニトリル(600μL)を添加し、タンバクを沈殿させた。
これらのチューブを3,000 rpmで5分間遠心分離し、その上清を、清浄なチュー
ブに移した。上清を、室温で、窒素ガス流下にて、乾燥状態まで蒸発させた。そ
の残留フィルムを、110μLの移動相にて再構成し、50μLを、このHPLCに注入し
た。
30〜40μmの薄皮Perisorb RP-18を充填したガードカラムに続いて、Hypersil
ODSカラム(150×4.5 mm、5μm粒径(Alltech Associates,Deerfiled,IL))を用
いて、クロマトグラフィー分離を行った。移動相の流速は、2 mL/分であった。
FAAddPおよび2'-F-ara-ddAの分析用には、この移動相は、80m M酢酸ナトリウム(
pH 5.0)中の7%(v/v)アクリロニトリルからなっていた。2'-F-ara-ddI、FAAddP
およびAZddUに対する保持時間は、それぞれ、4.5分、7.9分および5.1分であった
。2'-F-ara-ddIの分析用の移動相は、40 mM酢酸ナトリウム(pH 4.1)中の4.2%(v
/v)アクリロニトリルからなっており、2'-F-ara-ddIおよびAZddUに対して、それ
ぞれ、3.78分および7.6分の保持時間が得られた。血清および肝臓ホモジネー
ト中のFMAddAの分析用には、40 mM酢酸ナトリウム(pH 6.0)中の7.5%アクリロニ
トリルの移動相を使用した。FMAddAに対する保持時間は、8.8分であり、そしてA
ZddUに対する保持時間は、4.9分であった。脳ホモジネート中のFMAddA分析用に
は、この移動相は、10 mM K2HPO2(pH 7.2)中の7.5%アセトニトリルからなり、F
MAddAおよびAZddUに対して、それぞれ、7.8分および4.3分の保持時間が得られた
。溶出剤は、260 nmのUV波長にて、記録した。
ブランクPBS、血清、脳ホモジネートおよび肝臓ホモジネート中で調製した0.0
4μg/mL〜100μg/mLの範囲のヌクレオシド標準は、未知の試料として、同様に処
理した。100μg/mLより高いヌクレオシド濃度の試料は、適切なブランク基質で
希釈した。全ての生体媒体における2'-フルオロヌクレオシドの定量化限界(3:
1の信号:ノイズの比)は、0.1μg/mLであった。全ての化合物について、抽出回
収率は、80%より高かった。各化合物について、化合物内および化合物間の相対
標準偏差(RSD)は、全ての媒体中にて、10%未満であった。
インビトロ研究のデータ分析:PBS、血清、肝臓ホモジネートおよび脳ホモジ
ネート中における一次分解速度定数(k)およびそれに関連した半減期(t1/2=0.
693/k)を決定するために、時間の関数として、ヌクレオシド類似物濃度の自然
対数の線形回帰を使用した。
インビボ研究のデータ分析:時間データの関数としてのヌクレオシド濃度を、
非区画法(non-compartmental technique)により、分析した。この血清または
脳ヌクレオシド中間(n=3)濃度対時間曲線および一次モーメント下でのAUC(AU
MC)は、0時間から最終試料時間(AUC0-r)までは、最小二乗終末勾配(λz)を用い
た無限時間までの外挿で、ラグランジュ多項式内挿および積分により、決定した
[Rocci,M.L.Jr.and Jusko,W.J.,「LAGRAN program for ara and moments i
n pharmacokinetic analysis」Comp.Prog.Biomed.(1983)16:203-216]。最
後の3〜5時点を使用して、λzを得た。半減期は、0.693/λzから算出した。静
脈内投与化合物については、全クリアランス(CLT)は、用量/AUCから算出し、そ
して分布の定常状態容量(Vss)は、用量×AUMC/AUC2から算出した。親化合物に転
化したプロドラッグの画分(fc)は、AUCp ←pd×CLT/用量pdから算出したが、この
場合、AUCp ←pdは、このプロドラッグの投与後のこの親化合物のAUC(用量p d
)であり、そしてCLTは、この親化合物のクリアランスである[Gibaldi,M.and
Perrier,D.,「Clearance concepts」In:Pharmacokinetics,2nd ed.,Marcel
Dekker Inc.,New York(1982)319-353]。相対脳暴露(re)は、AUC脳/AUC血清
から算出した。
この化合物20 mg/kgの静脈内投与後の、血清および脳中の2'-F-ara-ddIの濃度
を、図2に示す。2'-F-ara-ddIの血清濃度は、0.41時間の半減期で、急速に低下
した(表2)。このヌクレオシドの脳濃度は、およそ20分の時点でピークに達し、
30分間は比較的に一定のままであったが、血清濃度と平行して、引き続き低下し
た。この2'-フルオロヌクレオシドの相対脳暴露(re)は、16.5%であった。2'-F-
ara-ddIの全クリアランスは、2.18 L/h/kgであり、マウスの肝臓血流(5 L/h/kg)
および腎臓血流(3.6 L/h/kg)と比較して、それ程大きくはなかった[Gerlowski,
L.E.and Jain,R.K.,「Physiologically based pharmacokinetic modeling:p
rinciples and applications」J.Pharm.Sci.(1983)72:1103-1126]。分布
の定常状態容量は、従って、0.78 L/kgであり、このことは、この化合物が、細
胞内で、適度な程度に分布していることを示している。
55 mg/kgのFAAddPの静脈内投与後の、血清および脳中のFAAddP、2'-F-ara-ddA
および2'-ara-ddIの濃度を、図3(AおよびB)に示す。このプロドラッグの血清
濃度は、0.22時間の半減期で、急速に低下した(表2)。このプロドラッグの分布
の全クリアランスおよび定常状態容量は、それぞれ、1.12 L/h/kgおよび0.58 L/
kgであった。それゆえ、FAAddPのクリアランスは、2'-F-ara-ddIのクリアランス
の2倍遅く、その分布は、僅かに狭かった。血清試料では、低レベルの2'-F-ara
-ddAおよび高濃度の2'-F-ara-ddIが認められた。FAAddP投与後の2'-F-ara-ddIの
消失半減期は、2'-F-ddI投与後のものよりも長かった。2'-F-ara-ddAの消失半減
期は、2.9時間であった。2'-F-ara-ddAと比較して高濃度の2'-F-ara-ddIは、そ
のインビトロ研究の結果と一致している。このFAAddPの静脈内投与用量の約30%
が、2'-F-ara-ddIに転化された。
FAAddPは、最初のサンプリング時間で認められたピーク脳レベルで、脳に急速
に分配された(図2B)。このプロドラッグの相対脳暴露は、6.3%であり、これ
に対して、2'-F-ara-ddAおよび2'-F-ara-ddIの相対脳暴露は、それぞれ、55.8%
および19.7%であった。それゆえ、FAAddPに対する脳暴露は、比較的に低く、FA
AddPの静脈内投与後の2'-F-ara-ddIに対する相対脳暴露は、2'-F-ara-ddIの投与
後のそれと類似していた。2'-F-ara-ddAに対する相対脳暴露は、比較的に高く、
脳濃度は、低かった。
FAAddP投与後の2'-F-ara-ddIの性質を、2'-F-ara-ddI投与後のそれと比較する
と、AUC(曲線下の領域)値は、用量に対して標準化された。表2に示すように、5
5 mg/kgのFAAddPの静脈内投与後の、血清および脳中における2'-F-ara-ddIに対
する用量標準化AUC値は、20 mg/kgの2'-F-ara-ddI投与後よりも、3〜4倍低か
った。
55 mg/kgのFAAddPの経口投与後の、血清中におけるFAAddP、2'-F-ara-ddAおよ
び2'-F-ara-ddIの濃度は、図3Cに表す。FAAddPの吸収は急速であり、投薬後0.
5時間で、これらの化合物のピーク血清濃度に達した。FAAddPの経口バイオアベ
イラビリティーは、19%であり、このことは、一部、その乏しい溶解性による不
完全な吸収があることを示している。FAAddP、2'-F-ara-ddAおよび2'-F-ara-ddI
の脳濃度は、FAAddPの低い経口バイオアベイラビリティーのために、定量限界以
下であった。FAAddPの静脈内研究と同様に、2'-F-ara-ddAと比較してより高い濃
度の2'-F-ara-ddIが認められ、このことは、FAAddPの2'-F-ara-ddAへの代謝が、
2'-F-ara-ddIの形成において、律速段階であることを示唆している。
FAAddPと同様に、2'-F-ara-ddIのレベルを測定するために、より高い用量のFM
AddAを投与しなければならなかった。112 mg/kgのFMAddAの静脈内投与後の、血
清および脳中におけるFMAddAおよび2'-F-ara-ddIの濃度を、図4に表す。FMAddA
の血清濃度は、0.45時間の半減期で、急速に低下した(表2)。FMAddAの分布の全
クリアランス(1.93 L/h/kg)および定常状態容量(0.79 L/kg)は、2'-F-ara-ddIの
それと類似していた。マウス中の低いADAレベルのために、投与したプロドラッ
グの僅か5.6%だけが、2'-F-ara-ddIに転化された。このプロドラッグの相対脳
暴露は、7.5%であった。しかしながら、インビトロ研究と違って、たとえ比較
的に高い用量を投与した場合でも、脳試料では、2'-F-ara-ddIは検出されなかっ
た。
要約すると、FAAddPは、2'-F-ara-ddAへの還元を受け、続いて、その活性化合
物である2'-F-ara-ddIへと脱アミノ化された。FMAddAは、このプロドラッグの脳
分配の増加を生じず、非常にゆっくりと2'-F-ara-ddIに転化され、効果的である
ことが証明できなかった。本研究では、アジドプロドラッグの設計において、P-
450 NADPh還元酵素系を使用することにより、新しいアプローチを明らかにした
。
実施例5 AraAのアジド誘導体である9-β-D-アラビノフラノシル-6-アジドプリ
ン(6-AAP)の合成
スキーム15に従って、Ara-Aのアジド誘導体を合成した:
スキーム15
標的化合物5(6-AAp)は、ara-Aから合成した(スキーム15)。アデノシン脱アミ
ノ酵素を用いて、ara-Aを9-(β-D-アラビノフラノシル)ヒポキサンチン(1)に脱
アミノ化した(90%を超える収率)。この方法は、NaNO2/AcOHを用いた脱アミノ化
法よりも優れていることが分かった。化合物1を、ピリジン中にて無水酢酸で過
アセチル化し、次いで、塩化チオニルを用いて、還元条件下にて、その6-クロロ
誘導体3に転化した(1から26%)[Robins,M.J.and Bason,G.L.,「6-Chloro-
9-(2-deoxy-β-D-erythropentofuranosyl)purine from the chlorination of 2'
-deoxyinosine」In:Nucleic Acid Chemistry;Townsend,L.B.,Tipson,R.S.
,Eds.;John-Wiley & Sons:New York(1978)Part II,pp.601-606]。メタノ
ール中のアンモニアで処理することにより、化合物3を化合物4に脱保護し、
続いて、DMF中のLiN3で処理して、化合物5(6-AAP)を得た(3から38%)。
pH 2、7および11でのアデノシン脱アミノ酵素加水分解に対する6-AAPの安定
性を、UV分光法により研究した。pH 2および7では、6-AAPは、287.5 nmで2.75
時間にわたって(37.1℃)、著しい変化を示さなかった。しかしながら、pH 11で
は、6-AAPは、そのUV吸収最大が、287.5 nmから222.5 nmに直ちに変化した。6-A
APは、25℃のリン酸緩衝液(pH 7.4)中で行った別のインビトロ研究では、3時間
まで、アデノシン脱アミノ酵素では加水分解しなかった。これらの結果は、ara-
Aとは異なり、6-AAPがADAの基質ではないことを示している。
材料:融点は、Mel-Temp II実験室装置で測定したが、補正していない。その1
H NMRスペクトルは、内部標準としてTMSを用いて、JEOL FX 90 Q FT分光光度計
で記録した。その化学シフトは、百万分率(δ)で報告し、その信号は、s(一重項
)、d(二重項)、t(三重項)またはm(多重項)で引用されている。UVスペクトルは、
Beckman DU-650分光光度計で記録した。TLCは、Analtech Co.から販売されてい
るUniplates(シリカゲル)で行った。元素分析は、Atlantic Microlab,Inc.,No
rcross,GAにより、行った。Ara-Aおよびアデノシン脱アミノ酵素(子ウシの腸粘
膜に由来のII型粗粉末、1〜5単位/mgの活性)は、Sigma Chemical Co.,St.Lo
uis,MOから購入した。他の全ての化学物質は、試薬等級である。メタノールお
よびアセトニトリル、メチルスルホキシドは、EM Science,Gibbstown,NJから
購入した。
9-β-D-アラビノフラノシルヒポキサンチン(1):方法A:ara-A(500 mg、1.87
mmol)の水酢酸(8 ml)溶液に、水1 mlに溶解したNaNO2(258 mg、3.73 mmol)を
添加し、そして6時間撹拌した。次いで、NaNO2(200 mg、2.8 mmol)の別の3個
の部分を、それぞれ、6時間ごとに添加し、そして撹拌を続けた。36時間後、こ
の溶媒を真空下で蒸発させ、その残留物を、熱水(25 ml)から再結晶して、純粋
な1(339 mg、67.6%)を得た。UV(MeOH)は、λmax=249.0 nm、207.0 nmであっ
た。
方法B:ara-A(500g、1.87 mmol)の蒸留水(30 ml)懸濁液に、アデノシン脱ア
ミノ酵素(4 mg)を添加し、この混合物を16時間撹拌した。次いで、減圧下にて
水を蒸発させ、得られた白色残留物を、熱水(20 ml)から再結晶して、柔軟な白
色固形物(462 mg、92%)として、化合物1を得た。UV(MeOH)は、λmax=248.5nm
、205.5 nmであった。
9-(2,3,5-トリ-0-アセチルアラビノフラノシル)ヒポキサンチン(2):1(335 m
g、1.25 mmol)の無水ピリジン(5 ml)懸濁液に、0℃で、無水酢酸(1 ml、10.5
mmol)を添加し、この混合物を16時間撹拌した。次いで、この溶媒を真空下で蒸
発させ、その残留物を、塩化メチレン50 mlに溶解し、水(2×50 ml)、飽和NaHC
O3溶液、ブラインで洗浄し、そして乾燥した(無水硫酸ナトリウム)。その有機層
を真空下で濃縮して、黄褐色の固形物3(339 mg、粗収率68%)を得た。これを、
さらに精製することなく、引き続く反応で使用した。UV(MeOH)は、λmax=250.0
nm、206.0 nmであった。
6-クロロ-9-(2,3,5-トリ-0-アセチル-β-D-アラビノフラノシル)プリン(3):
粗化合物2(130 mg)を無水CH2Cl2(10 mL)に溶解し、そして55℃まで加熱した。
無水DMF(1 mL)に続いて、SOCl2の2M CH2Cl2(2.43 mL、0.57 mmol)溶液を、45
分間にわたって滴下した。この反応混合物を、さらに75分間穏やかに還流した。
この反応混合物を室温まで冷却し、そしてCH2Cl2で希釈した。その有機層を、飽
和NaHCO3溶液(2×50 mL)、ブライン(50 mL)で洗浄し、そして乾燥した(無水硫
酸ナトリウム)。この有機層を真空下で濃縮し、そして分取用TLC(5% MeOH/CHC
l3)により精製して、純粋な3(50 mg、1から26%)を得た。UV(MeOH)は、λmax
=263.0 nm、212.5 nmであった。
9-(β-D-アラビノフラノシル)-6-クロロプリン(4):化合物3(200 mg、0.5 mm
ol)を、飽和NH3/MeOH(5 mL)に溶解し、そして室温で2時間撹拌した。この溶媒
を真空下で蒸発して、粗4(170 mg)を得た。これを、さらに精製することなく、
引き続く反応で使用した。UV(MeOH)は、λmax=263.0 nmであった。
9-(β-D-アラビノフラノシル)-6-アジドプリン(5):4(170 mg、0.63 mmol)の
DMF(5 ml)溶液を、リチウムアジド(270 mg、5.52 mmol)で処理し、そして室温
で2日間撹拌した。この溶媒を、減圧下にて40℃で蒸発させ、その粗製油をMeOH
から再結晶して、純粋な5(67 mg、38.4%)を得た。
6-AAPの安定性:6-AAPの安定性を調べるために、UV分光光度計にて、pHを変え
た動力学研究を行った(37.1℃でpH 2、7および11)。pH 11では、化合物5のUV
吸収最大は、直ちに、287.5 nmから222.5 nmにシフトした。pH 7では、この化
合物は、287.5 nmで2.75時間にわたって、UV吸収最大の著しい変化を示さず、こ
のことは、この化合物が、中性pHでは安定であることを示している。pH 2では
、この化合物は安定であった。
6-AAP単独およびADA阻害剤であるコホルマイシンの存在下での6-AAPの生体内
変換を調べるために、6-AAPおよび6-AAP/コホルマイシンを別々にインキュベー
トすることにより、マウス肝臓ホモジネート中において、インビトロ比較研究を
行った(表3)。コホルマイシンの存在下および非存在下における6-AAPの半減
期は、それぞれ、4.90時間および5.98時間であった。両方の場合に、ara-Aを検
出し、対応する半減期は、それぞれ、1.45時間および2.58時間であった。ara-A
単独をマウス肝臓ホモジネート中でインキュベートしたとき、その半減期は、0.
04時間であった。それゆえ、6-AAP単独から生じたara-Aの半減期は、ara-Aそれ
自体の半減期より36倍長かった。ヒト肝臓ホモジネートのミクロソーム画分を使
用したアジド還元アッセイからもまた、マウス肝臓ホモジネート研究で明らかに
したように、6-AAPがara-Aに転化されることが確認された。6-AAPのara-Aへの生
体内変換には、チトクロムP-450 NADPH依存系が関与している(スキーム16)。マ
ウス血清および脳ホモジネート中では、6-AAPの安定性および代謝もまた、研究
した(表3)。マウス血清および脳ホモジネート中における6-AAPの半減期は、そ
れぞれ、3.73時間および7.29時間であった。血清中における6-AAPの低下は、最
初の1時間でゆっくりと低下し(T1/2=3.73時間)、次いで、速い低下速度(T1/2
=1.41時間)という二相性であった。
* 2つの研究の平均値、肝臓ホモジネートを1または1.5当量の水の添加によ
り調製した。
§ これらの値をインキュベーション後0〜1時間から算出した。血清中の6-AA
P濃度の低下は、最初の1時間でゆっくりと低下し、次いで、より早く低下した
(T1/2=1.4時間)。
これらの興味深いインビトロ結果に続いて、マウスにおいて、インビボ薬物動
態学的研究を行った。図5は、100 mg/kgの6-AAPの静脈内および経口投与後にお
ける、6-AAPの平均血清濃度対時間を示す。6-AAPの対応する薬物動態学的パラメ
ータは、表4に提示する。血清中における6-AAPの最大濃度は、静脈内投薬の5
分後および経口投薬の60分後に認められた(図5)。静脈内投薬および経口投薬後
の血清中の6-AAPの最大濃度は、それぞれ、465±167μg/mLおよび7.8±2.51μg/
mLであった。その最終平均半減期値(静脈内およぴ経口に対して、それぞれ、0.5
5時間および0.58時間)は、両方の投与経路について、類似していた。6-AAPに対
する血清濃度対時間の曲線下領域(AUC)値は、100 mg/kgの6-AAPの静脈内投与お
よび経口投与に続いて、それぞれ、201.1±17.9 mg・h/Lおよび13.77±1.4 mg・
h/Lであった。20 mg/kgの6-AAPの静脈内投与後、このAUC値は、85.6 mg・h/Lで
あり(データは示されていない)、20 mg/kgおよび100 mg/kgの6-AAPの静脈内投薬
後では、そのAUC値に5倍の相違があり、このことは、マウスにおける6-AAPの性
質が、20 mg/kgおよび100 mg/kgの用量間隔では、線形動力学に従っていること
を示している。
スキーム16
その静脈内投与および経口投与後における、脳中6-AAP濃度対時間を、図5に
示す。6-AAPの静脈内投与および経口投与後、それぞれ、5分および30分の時点
で、5.92±0.7μg/gおよび1.87±μg/gの脳中の最大濃度が認められた。6-AAPに
対する脳AUC値は、両方の投与経路(静脈内および経口)について、殆ど同じであ
った(それぞれ、4.41±0.37 mg・h/Lおよび4.12±0.37 mg・h/L)(表4)。6-AAP
の静脈内投与および経口投与後における、6-AAPの血清AUCレベルは、201±17.9m
g・h/Lおよび13.77±1.40 mg・h/Lであった。対照的に、6-AAPの脳AUCレベルは
、6-AAPの静脈内投与および経口投与後、それぞれ、血清AUCレベルの2%および
33%であった。このデータは、6-AAPの脳への飽和できる輸送プロセスが存在し
得ることを示唆している。脳中での6-AAPの半減期は、静脈内投与後(0.77時間)
よりも、経口投与後(1.29時間)の方が、約2倍長い。6-AAPの相対脳暴露(re)値
もまた、6-AAPの静脈内投与後(0.02)よりも、経口投薬後(0.3)の方が高い。
ara-Aの投与(静脈内)および6-AAPの投与(経口および静脈内)後における、ara-
Aの血清濃度対時間を、図6に示す。ara-Aの静脈内投与後、この化合物の重要な
部分が急速に代謝され、そのレベルは、25分間で、18.5±3.5μg/mLから0.33±0
.25μg/mLにまで低下した。そのAUC値は、3.95±0.2 mg・h/Lであり、その半減
期は、0.07時間であった。しかしながら、6-AAPの静脈内投与後、血清中におけ
るara-Aの薬物動態学的曲線は、ara-Aの静脈内投与後のものとは異なっていた。
この曲線により、半減期の著しい増加(0.89時間)と共に、血清中におけるara-A
の「遅い低下」が明らかになった。この注射の3時間後、ara-Aのレベルは、0.2
8±0.15μg/mLであった。そのAUC値(6.84±0.89 mg・h/mL)は、このara-Aの投与
後の値(3.95±0.20 mg・h/mL)よりも73%高かった(表4)。6-AAP(100 mg/kg)を
経口投与したとき、ara-Aの血清AUC値(1.15±0.13 mg・h/L)は、ara-Aの静脈内
投与後の値(3.95±0.20 mg・h/L)の29%であり、その半減期は、0.45時間であっ
た。
6-AAP投与後のara-Aの脳濃度対時間を、図7に示す。ara-Aは、100 mg/kgの用
量での静脈内投与後には、脳中に見られなかった。しかしながら、6-AAPから転
化したara-Aは、6-AAPの静脈内投与後5分〜120分、そして6-AAPの経口投与後5
分〜240分で、0.3〜0.1μg/gという比較的に一定の脳内平均濃度を示した。その
脳内の高い分布は、6-AAPの経口投与後の脳AUC、reおよび半減期の値(それぞれ
、1.55±0.57 mg・h/L、1.35および5.03時間)対その静脈内投与後のそれらの値(
それぞれ、0.35±0.04 mg・h/L、0.05および1.47時間)の増加により、特徴づけ
られる。
アデノシン脱アミノ酵素研究:6-AAP(0.22μM/mL)を、リン酸塩緩衝液(pH 7.4
)中にて、25.1℃で、アデノシン脱アミノ酵素(0.05 mg/mL)でインキュベートし
、この濃度の変化を、278.5 nmで3時間観察した。
分析:血清、脳(全体またはホモジネート)および肝臓ホモジネートにおける、
ara-Aおよび6-AAPの濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した
。Millipore勾配系にて、クロマトグラフィー分離を行ったが、この系は、Model
486調和UV検出器、2個のModel 510ポンプ、Model 717プラス自動試料採取器、
およびMillennium 2010 Chromatography Managerソフトウェアを備えている(Mil
lipore Corporation,Milford,MA)。全ての溶媒は、HPLC等級であった。Altech
Hypersil ODS C18(5μm粒径、4.5×150 mm、Altech Associates,Deerfield,
IL)にて、クロマトグラフィーを行った。その移動相Aは、2.5 mM KH2PO4(pH 6.
8)中の0.5%アセトニトリルであり、移動相Bは、2.5 mM KH2PO4(pH 6.8)中の12
%アセトニトリルであり、移動相Cは、2.5 mM KH2PO4(pH 5.2)であり、そして
移動相Dは、2.5 mM KH2PO4中の23%メタノールであった。
インビトロ代謝研究:各実験前に、メスNIHスイスマウス(Harland Sprague-Da
wley,Indianapolis,IN)を殺し、血清、肝臓および脳の組織を集めた。血清は
、数匹の動物から集めた。この脳および肝臓を、4℃で、通常生理食塩水で洗浄
し、拭い、次いで、計量した。この組織に、1当量または1.5当量のいずれかの
水を添加し、ホモジナイザーでホモジナイズした。このホモジネートを、二等分
した。1個の部分は、ブランクとして使用し、他の部分は、37℃で、水浴振とう
器にて、ara-A、6-AAPまたは6-AAP/コホルマイシンのいずれかとのインキュベー
ション用
に使用した。6-AAPおよびara-Aの初期濃度は、100μg/mLであった。0分、5分
、15分および30分および1時間、2時間、3時間、4時間および5時間の時点で
、400μLの容量の試料およびブランクを集めた。
血清、肝臓または脳のホモジネート中の分析物濃度を測定するために、試料40
0μLを、内部標準50μl(AzdU、5μg/mL)およびアセトニトリル0.7 mLと混合し
た。遠心分離後、その上清を、別のチューブにデカントし、そして無水Na2SO4で
処理し、次いで、1分間にわたりボルテックスし、そして再び遠心分離した。そ
の有機層を分離し、そして室温で窒素流下にて蒸発させた。その残留物を移動相
Aにて再構築し、2000 rpmで50分間遠心分離することにより、MPS-I微小分割系(
3KD)膜(Amicon Inc.,Beverly,MA)により濾過して、この試料をさらに清浄化し
た。濾液100μLを、分析用に注射した。
このHPLC分析については、最初の10分間、その流速を1.5 mL/分から1.0 mL/分
まで線形に変え、アッセイ終了まで(67分間)、1.0 mL/分で継続した。最初の20
分間では、この移動相は、95%のAおよび5%のBからなっており、20分後から
、55分間にわたって、線形勾配にかけて、5%のAおよび95%のBを得た。各分
析後、このカラムは、10分間にわたり、初期状態まで平衡にした。そのλmaxは
、最初の15分間では、249 nmに設定して、ara-Hを観察し、15分〜35分では、261
nmに設定して、ara-Aを観察し、35分〜45分では、285 nmに設定して、6-AAPを
観察し、そして引き続いて、261 nmに変えて、AzdUを観察した。ara-H、ara-A、
6-AAPおよびAzdUの保持時間は、それぞれ、14.1分、33.8分、40.9分および49.3
分であった。
アジド還元研究:アジド還元活性の分析手順は、先に記述した[Cretton,E.M.
and Sommadossi,J.-P.,「Reduction of 3'-azido-2',3'-dideoxynucleosides
to their 3'-amino metabolite is mediated by cytochrome P-450 and NADPH-c
ytochrome P-450 reductase in rat liver microsomes」Drug Metab.Dispos.
(1993)21:946-950]。要約すると、インキュベーション混合物は、pH 7.4の0.
1 Mリン酸塩緩衝液中にて、ヒト肝臓画分タンパク質1.5 mg(遠心分離後のホモジ
ネートまたは上清画分)またはミクロソームタンパク質1.5 mgのいずれか、5.0 m
M MgCl2、6.0 mM NADPHおよび0.4 mg/mLの6-AAPを含有していた(0.2 mLの最終
容量)。この反応は、NADPHを添加することにより開始し、そして窒素下にて37℃
で60分間行った。100℃で30秒間加熱することにより、反応停止し、このタンパ
ク質を、14,000gで6分間遠心分離することにより、取り除いた。次いで、アリ
コート(100μL)を、HPLCにより、ヌクレオシドについて分析した。対照インキュ
ベーションは、タンパク質の非存在下にて、行った。
アジド還元アッセイの阻害:NADPHの添加前に、一酸化炭素への45秒間の暴露
または1 mMメチラポンによる5分間の予備インキュベーションにいずれかに続
いて、上記ミクロソームタンパク質1.5 mgを用いて、アッセイを行った。
インビボ薬物動態学:薬物動態学的実験のために、24〜28gの重量のメスNIH
スイスマウス(Harland Sprague-Dawley,Indianapolis,IN)を使用した。これら
のマウスを、実験前1週間にわたり、12時間灯火/12時間暗黒の一定温度(20℃)
環境に順応させた。
ランダム研究において、これらの動物に、20または100 mg/kgの6-AAPまたは10
0 mg/kgのara-Aを投与した(静脈内)。6-AAPはまた、経口的にも投薬した(100 mg
/kg p.o.)。薬剤投与後、0.08時間、0.025時間、0.5時間、0.75時間、1.0時間、
2.0時間、3.0時間、4.0時間、5.0時間および6.0時間の時点で、それぞれ、少な
くとも3匹の動物を殺した。その心臓および脳全体の試料から、血液(血清)を集
めた。血清試料は、直ちに処理し、脳試料は、分析まで、−20℃で凍結させた。
血清中におけるヌクレオシド濃度を測定するために、ポリプロピレン微小遠心分
離チューブ(1.7 ml)に、既知量の血清試料、50μLの内部標準(AzdU、5μg/mL)
および1.0 mLのアセトニトリル(タンパク質沈殿物として)を添加した。これらの
チューブを混合し、そして9,000 rpmで10分間遠心分離した。
この脳全体におけるara-Aおよび6-AAPを測定するために、計量した組織試料(
約300 mg)に、50μLの内部標準(AzdU、10μg/ml)および300μLの水を添加した。
ホモジナイズ後、組織ホモジネートに、アセトニトリル1.8 mLを添加し、これら
の試料を混合し、そして9,000 rpmで10分間遠心分離した。この血清または脳か
ら得た上清を、清浄なチューブに移し、そして窒素ガス流下にて、22℃で、乾燥
した。その残留物を、220μLの移動相Dで再構築し、12,000 rpmで40分間遠心分
離した後、その100〜150μLを、HPLC分析用に注入した。最初の28分間で、5%
のCおよび95%のDから20%のCおよび80%のDの線形勾配にかけ、次いで、次
の20分間、1.5 mL/分の流速で、65%のCおよび35%のDに達するように、線形
勾配にかけた。各アッセイ後、このカラムは、7分間にわたり、初期状態まで平
衡にした。そのλmaxは、最初の15分間では、249 nmに設定して、ara-Hを観察し
、15分〜30分では、261 nmに設定して、ara-Aを観察し、30分〜40分では、285nm
に設定して、6-AAPを観察し、次いで、261 nmに変えて、AzdUを観察した。ara-H
、ara-A、6-AAPおよびAzdUの保持時間は、それぞれ、13.5分、27.8分、36.7分お
よび43.5分であった。
標準曲線:血清、脳または肝臓に、既知量のara-Aおよび6-AAPを添加し、それ
らを上記抽出操作にかけることにより、各タイプの試料について、標準曲線を作
製した。このara-Aおよび6-AAPの定量限界は、それぞれ、0.1μg/mLおよび0.3μ
l/mLであった。これらの化合物の回復率(パーセント)は、ara-Aに対して63%お
よび6-AAPに対して55%であった。
データ分析:6-AAPおよびara-Aに対する血清および組織の濃度対時間のデータ
を、非区画法により分析した。濃度下領域(AUC)対時間のプロフィールは、0時
間から最終測定濃度までは、線形合形法則により測定し、最終測定濃度から無限
値までのAUCは、最終測定濃度を、最小二乗脱離速度定数(λz)で割ることにより
決定した。半減期は、0.693/λ2から算出した。これらの化合物の相対組織暴露(
re)は、AUC組織/AUC血清から算出した。AUCの変動は、従来手順に従って算出し
た[Yuan,J.,「Estimation of variance for AUC in animal studies」J.Phar
m.Sci.(1993)82:761-763]。
血清中の6-AAP動力学:100 mg/kgの6-AAPの静脈内投与および経口投与後の平
均6-AAP濃度対時間のプロフィールを測定した。6-AAPの薬物動態学的パラメータ
ーを、表4に提示する。
血清中の6-AAPの最大濃度を、静脈内投薬の5分後および経口投薬の60分後に
、観察した。iv投薬および経口投薬後の血清中の6-AAPの最大濃度は、それぞれ
、465±167μg/mlおよび7.8±2.51μg/mlであった。最終平均半減期の値(ivおよ
び経口に対して、それぞれ、0.55時間および0.58時間)は、両方の投与経路につ
いで、類似していた。6-AAPに対する血清濃度対時間の曲線のAUCは、100 mg/kg
の
静脈内投与および経口投与に続いて、201.1±17.9 mg.h/Lおよび13.77±1.4 mg.
h/Lであった。20 mg/kgの6-AAPの静脈内投与後、そのAUC値は、85.6 mg.h/Lであ
った。それゆえ、20 mg/kgおよび100 mg/kgの6-AAPのiv投薬後のAUC値には、5
倍の相違があることを発見した。このことは、マウスにおける6-AAPの性質が、2
0 mg/kgと100 mg/kgの間の用量間隔では、線形動力学に従っていたことを示す。
経口投与後に、6-AAPの絶対バイオアベイラビリティーは、6.8%であった。
本発明の特定の実施態様を記述し例示しているものの、多くの改変を行うこと
ができるので、本発明は、それらに限定されず、本発明の範囲内には、請求の範
囲に入るこれらの改変を包含することを意図していることが分かる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
// C07D 239/46 C07D 239/46
473/16 473/16
473/34 473/34
499/21 501/14
501/14 C07H 19/06
C07H 19/06 19/16
19/16 19/167
19/167 19/173
19/173 19/19
19/19 C07D 499/02
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU,
CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,H
U,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ
,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,
MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,P
T,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ
,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 チ,チュン ケイ.
アメリカ合衆国 ジョージア 30605,ア
センス,セダー スプリングス プレイス
115
(72)発明者 コトラ,ラクシミ
アメリカ合衆国 ジョージア 30605,ア
センス,イースト クロバーハースト ナ
ンバー16 235
(72)発明者 マノウイロブ,コスタンティン
アメリカ合衆国 ジョージア 30605,ア
センス,サンドバー ストリート 141−
エイ
(72)発明者 ドゥ,ジンファ
アメリカ合衆国 ジョージア 30606,ア
センス,グレンヘブン アベニュー ナン
バー2 105
(72)発明者 シナジ,レイモンド
アメリカ合衆国 ジョージア 30033,デ
カトル,リージェンシー ウォーク ドラ
イブ 1524