【発明の詳細な説明】
V因子遺伝子の突然変異を同定する方法政府援助
本発明は合衆国政府の援助により行われ、合衆国政府は国立予防衛生研究所受
託研究HL31950及びHL21544に従って本発明の権利を所有する。技術分野
本発明は、ヒトにおいて活性プロテインC(APC)耐性を引き起こす血液凝
固V因子の対立遺伝子を検出する方法に関する。その対立遺伝子は、正常なV因
子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205にグアニンヌクレオチドか
らアデニンヌクレオチドへの変化として特徴づけられた点突然変異である。エキ
ソン10点突然変異は、V因子cDNA配列のヌクレオチドの位置1691に対
応する。発明の背景
血液凝固反応及び血栓は、心臓血管疾患に主要な役割を果たしている。その疾
患に対する増悪因子としては、遺伝性及び後天性双方の増悪因子が含まれる。比
較的若い成人における静脈血栓疾患に対する増加傾向として定義された遺伝性血
栓嗜好症の研究から、血栓を調節する因子が洞察される。
遺伝性血栓嗜好症は、抗トロンビンIII、プロテインC及びプロテインSを
含む抗トロンビン因子の分子欠損と関連があるとされてきた。しかしながら、そ
れらの因子に関係する分子欠損は血栓嗜好症患者のわずか10〜15%にしか確
認できなかった。従って、分子欠損は大多数の患者には確認されなかった(Glads
onら,Thromb .Haemost.59:18,1988; Allaartら,Lancet 341:134,1993; Hor
ellouら,Br .Med.J.289:1285,1984; Pabingerら,Thromb .Res.Suppl.VI
136a,1986; Malmら,Thromb .Haemost.68:7,1992; Ben-Talら,Thromb .Haem ost.
61:50,1989)。
血液凝固は、チモーゲン活性化の連鎖反応がトロンビンの生成及び引き続きフ
ィブリノーゲンのフィブリンへの転換を生じる複雑な過程である(Furieら,Cell
33:505,1988; Davieら,Biochem .30:10363,1991)。凝固速度は、正及び負の
フィードバックル−プで調節される。正のフィードバックループの例では、凝固
過程はトロンビンがV因子及びVIII因子を活性化してVa因子及びVIII
a因子を形成する際に非常に促進する(Mannら,Annu .Rev.Biochem.57:915,
1988; Kaneら,Blood 71:539,1988)。Va因子及びVIIIa因子が血小板や
内皮細胞上のリン脂質又はリン脂質小胞内のリン脂質と結合した場合には、各々
プロトロンビン及びX因子の活性化に関係する。負のフィードバックループの例
では、触媒量のトロンビンの存在下にプロテインC(E.C.3.4.21.69)が活性化さ
れて活性プロテインC(APC)を形成する。次に、APCはCa21及びリン脂
質の存在下にタンパク質分解切断によりVa因子及びVIIIa因子を不活性化
する(Marlarら,Blood 59:1067,1982; Mannら,Annu .Rev.Biochem.57:915,
1988; Esmonら,J .Biol.Chem.264:4743,1989)。Va因子及びVIIIa因
子のAPCによる不活性化により凝固過程が阻害される。
最近、分子欠損が確認されなかった静脈血栓嗜好症の患者の20〜50%にお
いて、活性プロテインC(APC)耐性と呼ばれる症候群が記載された(Dahlbac
kら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 90:1004,1993; Griffinら,Blood 82:1989
,1993; Svenssonら,N .Engl.J.Med.330:517,1994; Kosterら,Lancet 342
:1503,1993; Faioniら,Thromb .Haemost.70:1067,1993)。
APC耐性は、血漿中のAPCに対する抗凝血剤応答が悪いとして特徴づけられ
(Dahlbackら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 90:1004,1993)、罹患した家族にお
ける血栓症の恐れを分ける常染色体性優性形質である(Svenssonら,New Engl.J .Med.
330:517,1994)。
APC耐性は、通常、血栓嗜好症患者に対するAPCの有無で求めた活性化部
分トロンボプラスチン時間(APTT)を血栓嗜好症の家族歴のない対照被検者
に対する結果と比べることにより評価された(Dahlbackら,Proc .Natl.Acad.S ci.USA
90:1004-1008,1993)。APCは、本明細書に記載される特定のタンパ
ク質分解切断によりVa因子及びVIIIa因子を不活性化することにより正常
血漿におけるAPTTを延長する。APC耐性分析は、APTTのような凝血試
験にAPCを加えると通常はAPTTの増加(延長)が生じるが、APC耐性患
者の血漿ではAPCによる延長が正常な血漿に見られるものと比べて著しく低下
するという事実に基づくものである。
APTT分析では、よくAPC感受性比と呼ばれるAPC耐性比が、APCと
CaCl2の存在下の試験血漿の凝血時間をCaCl2の存在下の試験血漿の凝血
時間で割ったものとして求められる。典型的な条件下での試験血漿の場合、正常
とみなされるAPC耐性比は男性では≧2.19は、女性では≧1.94である。
正常な範囲は、さまざまな分析可変部分に左右される。
更に、APTTは、血栓嗜好症の患者の血漿のAPC耐性がAPC基質、V因
子及びVIII因子のいずれかでの異常によって引き起こされるかを評価するた
めに用いられた。その分析では、患者の血漿か正常な血漿のいずれかをV因子欠
乏血漿かVIII因子欠乏血漿のいずれかと混合し、APTT分析による血漿の
組合わせについてAPCの影響を求める。APC耐性がV因子の異常による患者
では、患者の血漿とV因子欠乏血漿と混合すると、正常な血漿とV因子欠乏血漿
との混合物に比べてAPCに対する耐性を示す混合物が生じる。しかしながら、
APC耐性がV基質の異常による患者では、患者の血漿と因子VIII欠乏血漿
と混合すると、APC耐性についてVIII欠乏血漿と正常な血漿と混合したも
のと同じ結果を得る(Sunら,Blood 83:3120,1994)。
また、V因子の異常によるAPC耐性が、精製した正常なV因子又はAPC耐
性患者のV因子のV因子欠乏血漿への添加に続いてAPC耐性試験によるAPT
T分析で評価された(Sunら,Blood 83:3120,1994)。
APTT分析は血液凝固時間の評価に有効であるが、一致した及び再現性のあ
る結果を得ることは数種の可変部分によって影響される。それらの可変部分とし
ては、患者にワルファリン又はヘパリンのような経口抗凝血剤を投与すること(S
evenssonら,N .Engl.J.Med.33:517,1994)、血小板欠乏血漿の調製での血小
板の活性化(Cooperら,Br .J.Haematol.86(suppl.1):33(abstr),1994)及
び冷凍及び解凍血漿の使用(Girolamiら,Lancet 343:1288(本文),1994; Jones
ら,Br .J.Haematol.86(suppl.1):32(abstr),1994)が含まれる。血栓嗜好
症患者はたいてい経口抗凝血剤(例えば、ワルファリン)で治療されるので、そ
れらの患者のAPC耐性は標準APTT分析で正確に評価されない
(Dahlbackら,Proc .Natl.Acad.Sci USA 90:1004,1993)。
従って、それらの患者において本発明に記載されるようなVa因子の欠損によ
って生じるAPC耐性を分析する代替的方法は非常に望ましい。
V因子は、分子量(Mr)330キロダルトン(kDa)の糖タンパク質であ
る。V因子タンパク質は、アミノ末端重鎖領域、連結領域及びカルボキシ末端軽
鎖領域からなる単鎖ポリペプチドである。V因子が凝固過程でアミノ酸の位置7
09、1018及び1545(Kaneら,Blood 71:539,1988; Suzukiら,J .Bio l.Chem.
257:6556,1982; Esmon,J .Biol.Chem.254:964,1979; Mannら,An nu .Rev.Biochem.
57:915,1988)の3個のアルギニンアミノ酸残基でトロンビ
ンによって切断されて活性状態のV因子(Va)となる場合、重鎖領域と軽鎖領
域間から連結領域が除去されかつ得られた重鎖及び軽鎖からなる2つのポリペプ
チドがCa2+イオンによって共に保持される(Kaneら,Biochem .26:6508,1987
)。
生じたVa因子のAPCによるタンパク質分解不活性化には、通常、Va因子
の膜表面への結合及びVa因子ポリペプチドの連続切断が必要である。最初は重
鎖内の位置506のアミノ酸残基アルギニンを切断し、2番目は重鎖内の位置3
06のアミノ酸残基アルギニンを切断する(Kalafatisら,Blood 82:58a,1993;
Kalafatisら,J .Biol.Chem.268:27246,1993及びJ .Biol.Chem.269:31869
,1994)。不活性化過程は、Va因子軽鎖内の高親和性APC結合部位へのAP
Cの結合を必要とするものである(Krishnaswamyら,J .Biol.Chem.261:9684,
1986; Walkerら,J .Biol.Chem.265:1484,1990)。 Va因子軽鎖は、Ca2+
非依存方式で高親和性を有するリン脂質に結合し(Kaneら,Blood 71:539,1988;
Mannら,Annu .Rev.Biochem.57:915,1988)かつリン脂質表面上のAPCとし
っかりと会合する。例えば、Va因子に対するウシAPC:リン脂質の解離定数
(Kd)は約7ナノモル/リットルである(Krishnaswamyら,J .Biol.Chem.26
1:9684,1986)。小胞内のリン脂質ホスホチジルエタノールアミンの存在は、A
PC抗凝血剤活性及び精製Va因子のAPC不活性化を亢進することがわかった
(Smirnovら,J .Biol.Chem.269:816,1994)。APCのVa因子への高親和性
結合の重要性は、アミノ酸残基セリンが
位置360のアミノ酸残基アラニンで置き換えられ、加水分解活性がなく、血液
凝固分析及びプロトロンビナーゼ分析において約20%の抗凝血剤活性を示すプ
ロテインCの活性部位変異体を示した最近の研究で証明された(Sunら,Blood 82
:148a,1993)。
以前の研究から、V因子の生理的活性に関する翻訳後修飾硫酸化及びリン酸化
の影響が調べられた。Kalafatisらは、V因子の硫酸化がトロンビンとV因子間
の相互作用に影響し、V因子のトロンビンによる切断に働きかけてVa因子とな
ると仮定した(Kalafatisら,Blood 81:704,1993及び91:1396,1994)。しかしな
がら、APC耐性患者では、Va因子となるV因子のトロンビンによる切断は正
常な患者のものに匹敵し、APC耐性の原因とならない。Hortinは、部分的リン
酸化Va因子が未変性Va因子より速い速度で不活性化されることを求め、AP
Cに対するVa因子切断の感受性がVa因子重鎖のアミノ酸残基位置690のセ
リンのリン酸化によって変えられるであろうことを示した(Hortin,Blood 76:94
6,1990)。
硫酸化及びリン酸化のような翻訳後修飾は上記のようにVa因子と他の血清成
分の相互作用に影響することができるが、それらの修飾は本発明におけるAPC
耐性の原因とならない。
また、APC補因子2と呼ばれるV因子と同時精製したAPCに対して特徴の
ない補因子の欠損がAPC耐性に関与すること及びAPC耐性がV因子の抗凝血
剤特性の選択欠損によって引き起こされることが仮定された(Dahlbackら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA
90:1004,1993)。実際に、Dahlbackらは、正常なV因
子のトロンビン処理がVa因子のAPC補因子2活性を破壊するためにVa因子
がAPC補因子活性がないこと及び彼らが以前にはAPC耐性患者のVa因子が
APC耐性である可能性を除外していたことを述べた(Dahlbackら,Proc .Natl .Acad.Sci.USA
91:1396,1994)。
Sunらにより、APC耐性症候群に罹った2人の患者からのVa因子の部分的
精製が記載され、精製したVa因子タンパク質がAPCによる不活性化に対して
耐性があることが証明された(Sunら,Blood 83:3120-3125,1994)。
それらの2件の独立した報告はV因子が異常な補因子として働くか或いはAP
C耐性患者においてはVa因子が異常であることを示しているが、各報告は血漿
中のV因子と会合する分子内の異常又はKalafatis及びHortinによって示された
ようにVa因子の翻訳後修飾によっても説明される。
そこで、本発明は、上記の分析及び患者の分析的検討の観点からこれまで解決
されなかったAPC耐性を分子に基づいて解決する。本発明の方法によって求め
られたAPC耐性の遺伝的根拠は、V因子遺伝子内の単一点突然変異にあり、そ
の結果としてVa因子のAPCによる正常な不活性化が遅れる。発明の要約
本発明は、ヒトにおいて活性プロテインC(APC)に対する耐性を引き起こ
す新規な血液凝固V因子突然変異を検出するのに有用な方法、診断系及び組成物
に関する。グアニンヌクレオチドからアデニンヌクレオチドへの変化として特徴
づけられた点突然変異は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置2
05にある。V因子遺伝子に由来するcDNAの点突然変異の対応する位置は、
ヌクレオチドの位置1691にある。
従って、1実施態様においては、ヒト遺伝子スクリーニング方法が企図される
。本方法は、ヒトから単離した核酸試料についてV因子遺伝子のエキソン10の
ヌクレオチドの位置205のグアニンヌクレオチドのアデニンヌクレオチドへの
変化として特徴づけられたV因子遺伝子点突然変異の存在を分析する工程を含む
。本方法は、また、V因子遺伝子を含む対立遺伝子の分析によって患者の遺伝子
型の分析を可能にする。
好適実施態様においては、本方法は、ヒトからのゲノムDNAの試料を増幅条
件下に、V因子遺伝子のエキソン10にヌクレオチドの位置205を含むヒトゲ
ノムDNAの領域を増幅するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー対で処
理する工程を含む。PCR処理によってエキソン10の必要なヌクレオチドの位
置205を含む増幅産物が生成し、次にそのヌクレオチドの位置のグアニンヌク
レオチドのアデニンヌクレオチドへの変化の存在を分析する。
V因子遺伝子を含む対立遺伝子において上記点突然変異の有無を求めるために
患者からのゲノムDNAをスクリーニングする1態様においては、PCR増幅に
おいてPCRプライマー対が用いられ、第1プライマーは3′の非コーディング
鎖のヌクレオチドの位置205の点突然変異までの位置のV因子遺伝子の非コー
ディング鎖に対してハイブリッド形成し、第2プライマーは3′のコーディング
鎖のその位置までの位置のV因子遺伝子のコーディング鎖に対してハイブリッド
形成する。
本方法では、PCRプライマー対は点突然変異が増幅DNAに存在しない場合
には制限エンドヌクレアーゼ部位を含む増幅産物を生成する。1実施態様におい
ては、ゲノムDNA増幅産物について点突然変異の存在しないことを分析する工
程はヌクレオチド配列決定によって達成される。
他の実施態様においては、得られた増幅産物を分析する工程は、制限条件下で
制限部位を認識しかつ点突然変異が存在しない場合には増幅産物を切断する制限
エンドヌクレアーゼで処理することを含む。結果として、V因子遺伝子の正常な
対立遺伝子と罹患した対立遺伝子間の制限消化パターンは、患者においてV因子
遺伝子対立遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205の点突然変異の有
無を求めることを可能にする。
本発明のプライマー対によって、点突然変異のない正常な対立遺伝子のV因子
遺伝子の好ましい増幅ヌクレオチド領域は、5′-ACAGGC G AGG- 3′(配列番号
6)に対応するヌクレオチド配列又はその断片を含む。エキソン10のヌクレオ
チドの位置205に対応するグアニンヌクレオチドの存在は、正常な対立遺伝子
に存在するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部位を与える。
罹患した対立遺伝子のV因子遺伝子の対応する好ましい増幅ヌクレオチド領域
は、5′-ACAGGC A AGG- 3′(配列番号7)に対応するヌクレオチド配列又はそ
の断片の中の下線をひいた新しい点突然変異を含む。エキソン10のヌクレオチ
ドの位置205に対応するアデニンヌクレオチドの存在は、正常な対立遺伝子に
存在するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部位を破壊する。
エキソン10にヌクレオチドの位置205を含むヌクレオチド領域を増幅する
好ましいPCRプライマー対は、ヌクレオチド配列5′-CATACTACAGTGACGTGGAC-
3′(配列番号4)及び5′-TGTTCTCTTGAAGGAAATGC- 3′(配列番号5)を有する
各々第1及び第2プライマーを有する。プライマー対は、正常或いは罹患した対
立遺伝子からのV因子
遺伝子の領域の増幅を与える。正常な対立遺伝子では、得られた増幅ヌクレオチ
ド領域は、実質的にエキソン10のヌクレオチドの位置205にグアニンヌクレ
オチドを有する配列番号2に示されたヌクレオチド配列からなる。点突然変異を
含む罹患した対立遺伝子では、増幅したヌクレオチド領域は、実質的にエキソン
10のヌクレオチドの位置205にアデニンヌクレオチドを有する配列番号3に
示されたヌクレオチド配列からなる。後者の存在は、正常なMnlI制限エンド
ヌクレアーゼ部位を破壊する。
従って、点突然変異の存在は、増幅したヌクレオチド領域のV因子DNAを消
化する制限エンドヌクレアーゼMnlIの能力を破壊する。結果として、正常な
対立遺伝子と罹患した対立遺伝子間の微分MnlI制限消化パターンが、APC
耐性をもつ患者のV因子遺伝子対立遺伝子において点突然変異の存在を求めるこ
とを可能にする。
患者からのゲノムDNAをスクリーニングする別の態様においては、別の第1
及び第2プライマーのPCRプライマー対を用いて点突然変異が存在する場合に
制限エンドヌクレアーゼ部位を含む増幅産物を生成する。点突然変異の存在の分
析としては、ヌクレオチド配列決定、制限消化分析等が含まれる。
点突然変異のある罹患した対立遺伝子のV因子遺伝子の得られた好ましい増幅
ヌクレオチド領域は、ヌクレオチド配列5′-AAGCTT- 3′(配列番号23)を含
む。点突然変異のない正常な対立遺伝子のV因子遺伝子の対応する好ましい増幅
ヌクレオチド領域は、ヌクレオチド配列5′-GAGCTT- 3′(配列番号25)を含
む。
正常及び罹患対立遺伝子の上記ヌクレオチド配列を増幅するプライマー対の好
ましい第1及び第2プライマーは、各々ヌクレオチド配列5′-CATACTACAGTGACGT
GGAC- 3′(配列番号4)及び5′-TTACTTCAAGGACAAAATACCTGTAAAGCT- 3′(配列
番号24)を有する。実質的に配列番号19に示された配列からなる、エキソン
10のヌクレオチドの位置205にアデニンヌクレオチドを有するかかる増幅し
た変異体対立遺伝子のヌクレオチド領域は、HindIII制限エンドヌクレア
ーゼ消化部位を生成する。実質的に配列番号18に示された配列からなる、グア
ニンヌクレオチドを有する
正常な対立遺伝子から増幅した対応するヌクレオチド領域は、必要なHindI
II部位を含まない。従って、配列番号4及び24のプライマー対で増幅したゲ
ノムDNAの微分HindIII制限消化パターンは、患者のゲノムDNAから
点突然変異の有無を決定する別法を与える。
他の実施態様においては、V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691にお
ける遺伝子突然変異を同定するヒトからのメッセンジャーRNA(mRNA)を
スクリーニングする方法が企図される。本方法は、ヒトからmRNAを単離する
工程及びDNAの相補鎖(cDNA)の合成に続いてV因子cDNAのヌクレオ
チドの位置1691を含むヒトcDNAの領域を増幅するプライマー対でPCR
処理する工程を含む。次に、得られた増幅したcDNA産物について、cDNA
ヌクレオチドの位置1691におけるグアニンヌクレオチドからアデニンヌクレ
オチドへの存在を分析して突然変異を同定する。
増幅ゲノムDNAとのように、cDNAを増幅するためにPCR増幅において
PCRプライマー対を用い、第1プライマーは3′の非コーディング鎖のヌクレ
オチドの位置205の点突然変異までの位置のV因子cDNAの非コーディング
鎖に対してハイブリッド形成し、第2プライマーは3′のコーディング鎖のその
位置までの位置のV因子cDNAのコーディング鎖に対してハイブリッド形成す
る。
本方法においては、点突然変異が存在しない場合にはPCRプライマー対は制
限エンドヌクレアーゼ部位を含むcDNA増幅産物を生成する。1実施態様にお
いては、得られたcDNA増幅産物はヌクレオチド配列決定により点突然変異の
存在しないことを決定するために分析される。
他の実施態様においては、得られたcDNA増幅産物は、制限部位を認識しか
つ点突然変異が存在しない場合にはcDNA増幅産物を切断する制限エンドヌク
レアーゼで処理される。結果として、正常な対立遺伝子と罹患した対立遺伝子間
の制限消化パターンの差異が、cDNAにおける点突然変異の有無の決定を可能
にする。
cDNAを増幅するプライマー対によって、点突然変異のない正常な対立遺伝
子のV因子遺伝子の好ましい増幅ヌクレオチド領域は、5′-ACAGGC G AGG- 3′
(配列番号6)に対応するヌクレオチド配列又はその断片を含む。ゲノムDNA
とのように、cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応するグアニンヌクレ
オチドの存在は、正常な対立遺伝子に存在するMnlI制限エンドヌクレアーゼ
消化部位を与える。
cDNAの対応する好ましい増幅ヌクレオチド領域は、5′-ACAGGC A AGG- 3
′(配列番号7)に対応するヌクレオチド配列又はその断片を含む。cDNAの
ヌクレオチドの位置1691に対応するアデニンヌクレオチドの存在は、正常な
cDNAに存在するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部位を破壊する。
V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691を含むヌクレオチド領域を増幅
する好ましいPCRプライマー対は、ヌクレオチド配列5′-CAGGAAAGGAAGCATGTT
CC- 3′(配列番号10)と5′-TGCCATTCTCCAGAGCTAGG- 3′(配列番号11)を
有する各々第1及び第2プライマーである。そのプライマー対は、正常或いは罹
患cDNAからのヌクレオチド領域の増幅を与える。正常なcDNAでは、実質
的に配列番号27に示されたヌクレオチド配列からなる、配列番号27のヌクレ
オチド位置1614にグアニンヌクレオチドを有する得られた増幅ヌクレオチド
領域はV因子cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応する。無傷V因子c
DNAの1691に比べて配列番号27の1614にあるグアニンヌクレオチド
のヌクレオチドの位置の違いの根拠は、配列番号27に示された増幅cDNAの
番号をつける慣例から生じる。後者では、ヌクレオチドの位置1は配列番号13
及び図6A及び図6Bの双方に示されたV因子cDNAのヌクレオチドの位置7
8に対応する。
点突然変異を含むcDNAでは、増幅ヌクレオチド領域は、実質的にヌクレオ
チドの位置1614にアデニンを有する配列番号28に示されたヌクレオチド配
列からなり、無傷V因子cDNAの1691に対応する。
配列番号27及び28に示された各々正常及び変異体増幅cDNA産物は、ヌ
クレオチド配列決定によりグアニンのアデニンヌクレオチドへの点突然変異の有
無を求めるために分析する好ましい産物である。
V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691を含むヌクレオチド領域を増幅
する他の好ましいPCRプライマー対は、ヌクレオチド配列5′-CATACTACAGTGAC
GTGGAC- 3′(配列番号4)及び5′-TGCTGTTCGATGTCTGCTGC- 3′(配列番号12
)を有する第1及び第2プライマーである。そのプライマー対は、正常或いは罹
患cDNAからの124塩基対の増幅を与える。正常なcDNAでは、得られた
増幅ヌクレオチド領域は、cDNAヌクレオチドの位置1691にグアニンヌク
レオチドを有するヌクレオチドの位置1601からヌクレオチドの位置1724
までの配列番号13に示されたヌクレオチド配列からなる。点突然変異を含むc
DNAでは、増幅ヌクレオチド領域は、実質的にその同じ位置にアデニンヌクレ
オチドを有するヌクレオチドの位置1601からヌクレオチドの位置1724ま
での配列番号26に示されたヌクレオチド配列からなる。
その部位のアデニンヌクレオチドの存在は、正常なMnlI制限エンドヌクレ
アーゼ部位を破壊する。そのように、配列番号13及び26に示された各々正常
及び変異体増幅cDNA産物、共にヌクレオチドの位置1601〜1724は、
MnlI制限消化によりグアニンからアデニンヌクレオチドへの点突然変異の有
無を求めるために分析する好ましい産物である。従って、点突然変異の存在は、
増幅ヌクレオチド領域のV因子cDNAを消化するMnlI制限エンドヌクレア
ーゼの能力を破壊する。
ヌクレオチドの位置1691にアデニンヌクレオチドを有する本発明の方法に
よって生成された他の好ましいcDNA増幅ヌクレオチド領域は、ヌクレオチド
の位置9からヌクレオチドの位置6917までの配列番号26に示されたV因子
cDNA完全配列である。
結果として、ゲノムDNAをスクリーニングする本発明の方法とのように、ヌ
クレオチド配列分析及び正常なcDNAと罹患したcDNA間の微分MnlI制
限消化パターンは共に、APC耐性を有する患者からのmRNAにおいて点突然
変異の存在を求めることを可能にする。
患者のゲノムDNA又はmRNAの核酸試料において活性プロテインC耐性と
関連があるエキソン10のヌクレオチドの位置205におけるV因子遺伝子の遺
伝子突然変異を検出するのに有用な診断キットも企図される。本キットは、V因
子遺伝子のエキソン10にヌクレオチドの位置205を含む増幅産物をPCRに
より生成することができる第1プライマー及び第2プライマーを含む1対のプラ
イマーを少なくとも1回の分析を行うのに十分な量で含む。
診断キットの1態様においては、プライマーは別々の容器に入っている。好ま
しいプライマー対としては、ゲノムDNA或いはcDNAを増幅する第1プライ
マー及び第2プライマーが含まれる。特に好ましいゲノムDNAプライマー対は
、配列番号4と5、及び配列番号4と24に示された対のヌクレオチド配列であ
る。特に好ましいcDNAプライマー対は、配列番号10と11、配列番号4と
12に示された対のヌクレオチド配列である。
他の実施態様においては、診断キットは、更に、配列番号2、18、13(ヌ
クレオチドの位置1601〜1724)及び27に示されたヌクレオチド配列を
有する正常なV因子遺伝子に由来する対照のポリヌクレオチド配列を含む。
本発明の診断キットは、更に、エキソン10のヌクレオチドの位置205に遺
伝子突然変異を有する変異体V因子遺伝子に由来する対照ポリヌクレオチド配列
を含む。好ましい対照突然変異ポリヌクレオチド配列としては、配列番号3、1
9、26(ヌクレオチドの位置1601〜1724)及び28に示された配列が
含まれる。
本発明は、また、エキソン10のヌクレオチドの位置205に遺伝子突然変異
を有するV因子遺伝子に由来する単離したポリヌクレオチド配列の組成物を提供
する。好適実施態様においては、単離したポリヌクレオチド配列は長さが約10
ヌクレオチドから6909ヌクレオチドまでのヌクレオチド配列を含む。好まし
いポリヌクレオチド配列としては、配列番号7及び23に示されたヌクレオチド
配列又はその断片を含む配列である。
また、実質的に配列番号3、19に示されたゲノムDNAヌクレオチド配列か
らなる好ましいポリヌクレオチド配列と配列番号28及び26に示されたcDN
Aヌクレオチド配列との組成物も企図され、後者はヌクレオチドの位置9〜69
17の大きな断片及びヌクレオチドの位置1601〜1724の小さな断片であ
る。配列番号26は、ヌクレオチドの位置1691にアデニンを有するV因子c
DNA配列を含む。
本発明の他の企図された組成物は、ヌクレオチドの位置26からヌクレオチド
の位置31までの配列番号24に示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオ
チドプライマーである。好ましいプライマーは、エキソン10のヌクレオチドの
位置205にグアニンのアデニンへの点突然変異を有するV因子遺伝子にHin
dIII制限エンドヌクレアーゼ部位を含む増幅産物を生成することができる。
好ましいポリヌクレオチドプライマーは、実質的に配列番号24に示されたヌク
レオチド配列からなる。図面の簡単な説明
図1A〜1Jの図1は、V因子cDNAのヌクレオチド配列(配列番号13)
及び対応するアミノ酸残基配列(配列番号14)を示す配列である。完全cDN
Aヌクレオチドとコード化アミノ酸残基配列を、実施例1Dに記載されたAPC
耐性患者のcDNAに由来するヌクレオチド配列との比較のために示す。“1”
と標識されたアミノ酸残基は、血漿タンパク質のアミノ末端アミノ酸残基に対応
する。V因子の演繹アミノ酸残基配列は、28アミノ酸残基リーダーペプチド、
709アミノ酸残基重鎖領域、836アミノ酸残基連結領域及び650アミノ酸
残基軽鎖領域を含む2224アミノ酸残基からなる。濃い垂直な下向きの矢印は
リーダーペプチドの切断部位を示し、黒い丸は可能なN結合グリコシル化部位を
示し、曲がった矢印はトロンビン切断部位を示す。
アミノ酸配列決定により決定されたアミノ酸残基配列は、ヒトV因子から得ら
れたアミノ酸残基配列の上にある実線及びウシV因子から得られたアミノ酸残基
配列の上にあるダッシュ線で示される。
ヌクレオチド配列のはじめのヌクレオチド配列5′-GAATTCCG- 3′(配列番号
13、ヌクレオチドの位置1からヌクレオチドの位置8まで)は、cDNAライ
ブラリーの調製で挿入されたリンカー配列に対応し、V因子cDNAの一部では
ない。しかしながら、慣例により、ヌクレオチドの位置が示される場合にリンカ
ーのヌクレオチド配列に対応するヌクレオチドがcDNA配列に含まれる(Jenny
ら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 84:4846,1987)。従って、リンカー配列はヌ
クレオチドの位置1〜8に対応する。残りのヌクレオチドの位置の表示について
は配列番号13を参照されたい。
リンカーのヌクレオチド配列のすぐ次は、ヌクレオチドの位置9〜90のV因
子cDNAの5′非翻訳領域の82ヌクレオチドである。5′非翻訳領域のヌク
レオチド配列の次は、ヌクレオチドの位置91〜174のV因子cDNAのリー
ダーペプチドをコード化する84ヌクレオチドである。リーダーペプチドのヌク
レオチド配列の次は、ヌクレオチドの位置175〜2301のV因子cDNAの
重鎖領域をコード化する2127ヌクレオチドである。重鎖領域のヌクレオチド
配列の次は、ヌクレオチドの位置2302〜4809のV因子cDNAの連結領
域をコード化する2508ヌクレオチドである。連結領域のヌクレオチド配列の
次は、ヌクレオチドの位置4810〜6762のV因子cDNAの軽鎖領域をコ
ード化する1950ヌクレオチドである。軽鎖領域のヌクレオチド配列の次は、
ヌクレオチドの位置6763〜6925のV因子cDNAの3′非翻訳領域の1
63ヌクレオチドである。3′非翻訳領域としては、ポリ(A)テイルの12ヌ
クレオチド上流に位置した推定ポリアデニル化シグナル配列5′-AATAAA- 3′(
配列番号13、ヌクレオチドの位置6893からヌクレオチドの位置6898ま
で)が含まれる。ポリ(A)テイルは、ヌクレオチド配列5′-AAAAAAA-3′のヌ
クレオチドの位置6911〜6917(配列番号13)によって示される。ポリ
(A)テイルの次は、リンカー配列5′-CGGAATTC- 3′のヌクレオチドの位置6
918〜6925(配列番号13)である。5′及び3′リンカーヌクレオチド
配列は共に、cDNAライブラリーの調製で挿入され、V因子cDNAの一部で
はない。
図2A及び図2Bは、各々V因子遺伝子のエキソン10及びイントロン10の
正常(配列番号2)及び変異体(配列番号3)対立遺伝子のヌクレオチド配列の
一部を示す配列である。V因子遺伝子のゲノムDNAと実施例1Bに記載された
プライマーFV7(配列番号4)及びFVINT102(配列番号5)とのPC
R増幅によって生成された二本鎖DNAのコーディング鎖は、図2A及び2Bの
双方に示される。上及び下の場合の文字のヌクレオチド配列は、各々エキソン1
0及びイントロン10のヌクレオチド配列を表す。上の場合のヌクレオチド配列
の上の番号は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置に対応する。
下の場合のヌクレオチド配列の上の番号は、V因子遺伝子のイントロンのヌクレ
オチドの位置に対応する。
図2Aの2重下線のヌクレオチド配列は、V因子遺伝子のエキソン10の2つ
のMnlI制限エンドヌクレアーゼ部位の1つを表し、実施例1Bに記載された
ようにDNA断片が制限エンドヌクレアーゼMnlIの存在下に切断されること
を証明するために切断された。
2重下線のMnlI制限部位は、エキソン10のヌクレオチドの位置205を
含むもう一方のMnlI部位に対してコーディング鎖上の5′に位置するので5
′MnlI部位とも呼ばれる。
図2Aの1本の下線は、図1H及び配列番号13に示されるV因子cDNA配
列の位置1691に対応するV因子遺伝子のエキソン10の位置205にグアニ
ンヌクレオチドを含むMnlI制限エンドヌクレアーゼ部位(配列番号15)を
表す。
1本の下線のMnlI制限部位は、また、5′MnlI部位に対してコーディ
ング鎖上の3′に位置するので3′MnlI部位と呼ばれる。
図2Bの同じヌクレオチド位置は、V因子遺伝子のエキソン10(配列番号3
)に点突然変異を示し、正常な対立遺伝子に存在するMnlI制限部位のないア
デニンヌクレオチドを含む。
図3は、実施例1Dで求めたV因子cDNAの正常及び変異体対立遺伝子のオ
ートラジオグラフの部分的ヌクレオチド配列を表す写真である。表示試料は、同
型接合の娘(II−2)、異型接合の息子(II−3)及び正常対照(N)であ
る。3種類の異なる試料からのヌクレオチド配列は、左から右にアデノシン、シ
トシン、グアニン及びチミンとして4レーンで示される。各試料のII−2、I
I−3及びNの4レーンは実線で相互に分けられる。左の矢印は、V因子cDN
Aヌクレオチド配列のヌクレオチドの位置1691を示す。右に示されるヌクレ
オチド配列は、図の下の5′から上の3′までであり、ヌクレオチドの位置16
84〜1695のV因子cDNAのcDNAコード配列を表す。ヌクレオチドグ
アニン及びアデニン(GA)の存在は、各々cDNAヌクレオチドの位置169
1の正常及び変異体対立遺伝子のヌクレオチドを示す。右に示されたアミノ酸残
基は、下のアミノ酸末端から上のカルボキシ末端までであり、ヌクレオチ
ドによってコード化されたアミノ酸残基配列を表す。cDNAヌクレオチドの位
置1690〜1692に対応するCGAからCAAへのコドンの変化は、アルギニン(
Arg)からグルタミン(Gln)へのトリプレットによってコード化されたア
ミノ酸残基の変化を生じる。
図4は、制限エンドヌクレアーゼMnlIの存在下にインキュベートされ実施
例1Bに記載されたように電気泳動的に分離されたV因子遺伝子のエキソン10
にヌクレオチドの位置205を含むゲノムDNAの一部を表すDNAを含むアガ
ロースゲルの写真である。レーン1は、塩基対(bp)で示されたDNA分子量
マーカーである。レーン2、4、5及び6は、V因子遺伝子のエキソンン10の
ヌクレオチドの位置205の点突然変異に対して異型接合であるAPC耐性患者
から単離したDNAである。レーン3は、正常又は非変異体対立遺伝子に対して
同型接合である正常な患者から単離したDNAである。
図5A及び図5Bは、各々V因子遺伝子のエキソン10の正常(配列番号15
)と変異体(配列番号16)を表すヌクレオチド配列を示す図である。示された
番号は、ゲノムDNAのイントロン9の次のV因子遺伝子のエキソン10の最初
のヌクレオチドからイントロン10の前のエキソン10の最後のヌクレオチドま
でである(Kaneら,Biochem .26:6508,1987)。図5Aにおいて、1本の下線の
配列は、V因子遺伝子のエキソン10の正常な対立遺伝子のMnlI部位を表す
。図5Bは、グアニンからアデニンへのV因子遺伝子のエキソン10のヌクレオ
チドの位置205の変化のためにMnlI部位を含まない。
図6A及び図6Bは、各々実施例1Dに記載されたV因子cDNAとプライマ
ーFV13(配列番号10)及びFV2(配列番号11)との増幅産物のコーデ
ィング鎖の正常(配列番号27)及び変異体(配列番号28)ヌクレオチド配列
である。1本の下線のヌクレオチド配列は、FV13プライマーに対応する。2
重下線のヌクレオチド配列は、FV2プライマーの逆補体に対応する。
図面の左側に沿った番号は、Jennyら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 84:4846
,1987に記載されたV因子のcDNAのヌクレオチドの位置に対応する。cDN
APCR産物は、ヌクレオチドの位置78〜90の5′非翻訳配列の13ヌクレ
オチド、ヌクレオチドの位置176〜2130のV因子重鎖をコード化するヌク
レ
オチド配列、及びヌクレオチドの位置2131〜2204の連結配列の73ヌク
レオチドを含んでいる。
増幅した正常及び変異体cDNAヌクレオチド配列は、各々配列番号27及び
28に示され、図6A及び図6Bの各々の位置78はここでは配列表のヌクレオ
チドの位置1として示される。結果として、ヌクレオチドの位置1691でのV
因子cDNAのグアニンからアデニンへの点突然変異は、配列番号27及び28
ではヌクレオチドの位置1614にある。同様に、図6A及び図6Bにおけるヌ
クレオチドの位置2374は、ここでは配列表のヌクレオチドの位置2297で
ある。
更に、配列番号17では、V因子cDNAヌクレオチド78で始まる重鎖増幅
cDNAは位置1614(cDNAの位置1691に対応する)が“N”で示さ
れ、そのNは正常V因子cDNAではグアニン及び変異体V因子cDNAではア
デニンである。
図7A及び図7Bは、各々実施例1Cに記載されたプライマーFV7とFV5
06tst2とのPCR増幅による正常(配列番号18)又は変異体(配列番号
19)対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物のコーディング鎖のヌクレ
オチド配列を示す図である。
双方の図において、上又は下の場合の文字のヌクレオチドは、各々エキソン1
0及びイントロン10のヌクレオチド配列を表す。上の場合のヌクレオチド配列
の上の番号は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置に対応する。
下の場合のヌクレオチド配列の上の番号は、V因子遺伝子のイントロン10のヌ
クレオチド配列に対応する。
図7A及び図7Bでの2重下線のヌクレオチド配列は、エキソン10のヌクレ
オチドの位置208〜210において実施例1Cに記載されたプライマーFV7
とFV506tst2とのPCR増幅による増幅産物に導入される点突然変異を
示す。図7Bの1本の下線のヌクレオチド配列は、V因子遺伝子のエキソン10
のヌクレオチドの位置205にアデニンヌクレオチドの点突然変異を含むHin
dIII制限エンドヌクレアーゼ部位を表す(配列番号19)。図7Aでの同じ
ヌクレオチドの位置は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置
205に点突然変異が存在しないことを示すグアニンヌクレオチドを含む(配列
番号18)。発明の詳細な説明
A.定義
対応表コード群
ヌクレオチド
A A アデニン
C C シトシン
G G グアニン
T T チミン(DNA)
U U ウラシル(RNA)
Y C又はT(U) ピリミジン
R A又はG プリン
M G又はC アミノ
K G又はT(U) ケト
S G又はC 強い相互作用(3水素結合)
W A又はT(U) 弱い相互作用(2水素結合)
H A又はC 又はT(U) Gではない
B G又はT(U)又はC Aではない
V G又はC 又はA TでもなくUでもない
D G又はA 又はT(U) Cではない
N G,A,C又はT(U) いずれでもよい
対立遺伝子: 特定の遺伝子のDNA配列の変異体。二倍体鎖では、染色体セ
ットの相同染色体上の同じ相対位置又は遺伝子座の各々に最高2つの対立遺伝子
が存在する。いずれか1つの遺伝子座の対立遺伝子が同じである場合、個体はそ
の遺伝子座に対して同型接合であると言われる。対立遺伝子が異なる場合、個体
はその遺伝子座に対して異型接合であると言われる。いずれか1つの遺伝子の異
なる対立遺伝子は1つの塩基でのみ異なるので、いずれか1つの遺伝子に対する
対立遺伝子の可能な数は非常に多い。対立遺伝子が異なる場合には、一方はたい
ていもう一方に対して優性である。優性でない対立遺伝子は、劣性であると言わ
れる。優性は、表現型の形質であり、優性対立遺伝子による劣性対立遺伝子の不
活性化を意味しない。多くの例では、正常に機能する(野生型)対立遺伝子は、
多少とも欠損のある機能の変異体対立遺伝子全てに対して優性である。かかる場
合には、一般的には、2つのうちの1つの機能対立遺伝子が生物の正常な発育を
十分支持するだけ活性遺伝子産物を生じるのに十分であると説明される(即ち、
通常は遺伝子産物の量に2倍の安全性の余地がある)。変異体対立遺伝子は、コ
ード化する遺伝子の欠損のある機能をもたらすこともありもたらさないこともあ
る。変異体対立遺伝子がコード化する遺伝子の欠損のある機能をもたらさない場
合には、キャリヤー態と呼ばれる。変異体突然変異がコード化する遺伝子の欠損
のある機能を引き起しかつ病態の恐れが高くなった場合には、“発症”対立遺伝
子又は増悪因子対立遺伝子と呼ばれる。
ヌクレオチド: 糖部分(ペントース)、リン酸基及び含窒素複素環塩基から
なるDNA又はRNAのモノマー単位。該塩基はグリコシド炭素を介して糖部分
(ペントースの1′炭素)に結合し、塩基と糖のその組合わせはヌクレオシドで
ある。該ヌクレオシドがペントースの3′又は5′位に結合したリン酸基を有す
る場合には、ヌクレオチドと呼ばれる。作用上結合したヌクレオチドの配列は、
本明細書では典型的には“塩基配列”又は“ヌクレオチド配列”、及びそれらの
文法上の等価物と呼ばれ、左から右への向きが5′末端から3′末端への慣用の
方向である配列によって表される。
塩基対(bp): 二本鎖DNA分子におけるアデニン(A)とチミン(T)
又はシトシン(C)とグアニン(G)の組合わせ。RNAでは、チミンがウラシ
ル(U)に置き換えられる。
核酸: 一本鎖又は二本鎖のヌクレオチドのポリマー。
ポリヌクレオチド: 一本鎖又は二本鎖ヌクレオチドのポリマー。本明細書に
用いられる“ポリヌクレオチド”及びその文法上の等価物は完全な範囲の核酸を
含む。ポリヌクレオチドは、典型的には、2個以上のデオキシリボヌクレオチド
及び/又はリボヌクレオチドの線状鎖から構成される核酸分子を表す。正確なサ
イズは、多くの要因に左右され、当該技術において周知であるように最後の使用
条件に左右される。本発明のポリヌクレオチドとしては、プライマー、プローブ
、RNA/DNAセグメント、オリゴヌクレオチド又は“オリゴ”(比較的短い
ポリヌクレオチド)、遺伝子、ベクター、プラスミド等が挙げられる。
遺伝子: ヌクレオチド配列がRNA又はポリペプチドをコードする核酸。遺
伝子はRNA或いはDNAである。
二重らせんDNA: 二重らせんの塩基対に存在する各々の相補性塩基間の1
以上の水素結合によって共に維持された2本の実質的な相補的ポリヌクレオチド
鎖を含む二本鎖核酸分子。塩基対を形成するヌクレオチドはリボヌクレオチド塩
基或いはデオキシリボヌクレオチド塩基であるために、“二重らせん”とは2本
のDNA鎖(dsDNA)を含むDNA−DNA二重らせん又は1本のDNA鎖
と1本のRNA鎖を含むRNA−DNA二重らせんを意味する。
相補性塩基: DNA又はRNAが二本鎖配置をとる場合に通常対合するヌク
レオチド。
相補的ヌクレオチド配列: 水素結合が生じることにより特異的にハイブリッ
ド形成するもう一方の単鎖に十分相補的なDNA又はRNAの一本鎖分子のヌク
レオチドの配列。
保存: 予め選ばれた配列の正確な補体に対して非ランダムにハイブリッド形
成する場合には予め選ばれた(標準)配列についてヌクレオチド配列が保存され
る。
ハイブリッド形成: 相補性塩基対間の水素結合による二重らせん又はヘテロ
二重らせんを形成する実質的に相補的なヌクレオチド配列(核酸鎖)の対合。競
合的に阻害される2つの相補的ポリヌクレオチド間の特異的、即ち、非ランダム
相互作用である。
ヌクレオチド類縁体: 構造的にA、T、G、C又はUと異なるが核酸分子内
の正常ヌクレオチドを置き換えるのに十分類似しているプリン又はピリミジンヌ
クレオチド。
上流: DNA転写の方向と反対の方向で非コーディング鎖については5′か
ら3′へ進みRNA転写物については3′から5′に進む方向。
下流: DNA配列に沿った配列転写又は読み出しの方向。即ち、DNAの非
コーディング鎖に沿っては3′→5′方向に又はRNA転写物に沿っては5′→
3′方向に進む方向。
停止コドン: アミノ酸をコードしないが代わりにタンパク質合成の終結をも
たらす任意の3種のコドン。UAG、UAA及びUGAであり、ナンセンスコド
ン、終止コドン又は転写停止コドンとも呼ばれる。
読み枠: 翻訳に用いられる連続ヌクレオチドトリプレット(コドン)の個々
の配列。読み枠は翻訳開始コドンの位置に左右される。
B.診断法
本発明は、APC耐性に対する患者の遺伝子根拠を求めるためにヒトについて
V因子遺伝子を含むV因子対立遺伝子をスクリーニングする新規な方法を提供す
る。本発明は、APC耐性がV因子遺伝子のDNA配列における突然変異によっ
て引き起こされ、V因子遺伝子のエキソン10の位置205のグアニンヌクレオ
チドがアデニンヌクレオチドによって置き換えられたという発見によって生まれ
た。
正常な野生型のV因子遺伝子のゲノム配列部分が決定された。その遺伝子は、
25エキソンと24イントロンから構成され、80キロベースより大きいゲノム
DNAに及ぶ(Cripeら,Biochem .31:3777,1992)。
215塩基対を有する正常なエキソン10配列のヌクレオチドは、図5Aに示
され、配列番号15に示される。転写及び翻訳されたように、正常なV因子遺伝
子においてヌクレオチドの位置205のグアニンヌクレオチドを含むヌクレオチ
ドの位置204〜206のトリプレットコドン、CGAは、アルギニンアミノ酸残
甚をコード化する。
エキソン10のヌクレオチドの位置205は、Jennyら,Proc .Natl.Acad.S ci.USA
84:4846,(1987)に記載され図1A〜図1J及び配列番号13の双方に
示された相補的DNA(cDNA)ヌクレオチド配列のヌクレオチドの位置16
91に対応することが求められた。
V因子のcDNA配列(配列番号13)は、6672塩基対(bp)コード領
域、90bp5′非翻訳領域及び163bp3′非翻訳領域を含む(Jennyら,Pr oc .Natl.Acad.Sci.USA
84:4846,1987; 図1A〜図1J)。コード化アミ
ノ酸残基配列は、28アミノ酸残基のリーダーペプチドを含む2224アミノ酸
(配列番号14)を有する。本明細書に示されたV因子のヌクレオチドとアミノ
酸残基の数字は、Jennyら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 84:4846,1987に示さ
れた数字に従うものである。
Jennyらに示されたcDNAヌクレオチド配列としては、5′8量体ヌクレオ
チド配列、5′-GAATTCCG- 3′(ヌクレオチドの位置1からヌクレオチドの位置
8までの配列番号13)及び3′端の第2の8量体、5′-CGGAATTC- 3′(ヌク
レオチドの位置6918からヌクレオチドの位置6925までの配列番号13)
が含まれ、その両者共遺伝子配列に存在しない。その8量体配列は、cDNAラ
イブラリーを構築するために用いられるEcoRIリンカーである。従って、c
DNA配列の実際の長さは、図1A〜図1J及び配列番号13に示された692
5ではなくて6909塩基対の長さである。
本発明で使用するために定義される正常な或いは罹患していない(野生型)V
因子遺伝子は、エキソン10のヌクレオチドの位置205に点突然変異がない。
言い換えると、本発明の正常なV因子遺伝子はエキソン10のヌクレオチドの位
置205にグアニンヌクレオチドを有する。
本発明で使用するために定義される正常なV因子遺伝子に相対する遺伝子は、
エキソン10のヌクレオチドの位置205に点突然変異がある変異体又は罹患V
因子遺伝子である。言い換えると、本発明の変異体V因子遺伝子はエキソン10
のヌクレオチドの位置205に正常なグアニンヌクレオチドではなくてアデニン
ヌクレオチドを有する。215塩基対を有する記載した変異体エキソン10配列
のヌクレオチド配列は図5Bに示され、配列番号16に示される。転写及び翻訳
されたように、変異体V因子遺伝子におけるヌクレオチドの位置205のアデニ
ンヌクレオチドを含むヌクレオチドの位置204〜206のトリプレットコドン
、CAAはグルタミンアミノ酸残基をコード化する。
従って、グアニンからアデニンへの点突然変異として特徴づけられたV因子遺
伝子に存在する遺伝子突然変異はV因子突然変異と呼ばれる。
V因子遺伝子は、ヌクレオチド配列が正常なV因子タンパク質或いは変異体V
因子タンパク質をコード化する核酸である。その核酸は、ゲノムDNA、mRN
A或いはcDNAの形であり、1本鎖或いは2本鎖の形である。
本発明の分析法は、APC耐性と関連があるエキソン10のヌクレオチドの位
置205の点突然変異の有無を求めるために患者の核酸をスクリーニングするの
に有用である。本方法は、同型接合正常、同型接合変異体又は異型接合であるV
因子対立遺伝子間の識別能力を与える。言い換えると、本明細書に記載された方
法は、V因子遺伝子を含む2つの突然変異対立遺伝子を有する患者、一方だけが
突然変異対立遺伝子を有し他方が正常である患者、及び2つの正常な対立遺伝子
を有する患者間の区別を可能にする。
従って、下記のB2及びB3項で更に十分に述べられるように、本発明の方法
は、一般的には、スクリーニングする核酸試料を調製する工程、次に、増幅した
産物についてV因子遺伝子を含む対立遺伝子におけるグアニンのアデニンへの点
突然変異を分析する工程を含む。
好適実施態様においては、核酸試料はV因子対立遺伝物質の存在が強化される
。強化は、典型的には、本明細書に記載されたポリヌクレオチド合成プライマー
を用いてゲノムDNA又はmRNAをプライマー拡張反応に供することにより行
われる。分析されるべき試料をつくる特に好ましい方法は、プライマーとして予
め選ばれたポリヌクレオチドを使用し、その一般的説明は下記のB1項に示され
る。プライマーは、増幅(PCR)産物を生成するためにポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)に用いられ、その一般的説明は下記のB1b項に示される。本発明の
診断法は、下記のB2及びB3項に更に詳しく記載される。
1.PCRの一般態様
a.ポリヌクレオチドプライマーの調製
プライマー拡張によって合成されるべきプライマー、プローブ及び核酸断片又
はセグメントに関して本明細書に用いられる“ポリヌクレオチド”とは、2個以
上の、好ましくは3を超えるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを
含む分子として定義される。その正確なサイズは、多くの要因に左右され、最後
の使用条件に左右される。本明細書に用いられる“プライマー”とは、核酸制限
消化物から精製された或いは合成で製造されたポリヌクレオチドを意味する。プ
ライマーは、核酸鎖に相補的なプライマー拡張産物の合成が誘導される条件下に
置かれる場合に核酸合成の開始点として作用することができる。誘導条件として
は、ヌクレオチドとDNAポリメラーゼ、逆転写酵素等の重合用試薬の存在、及
び適切な温度とpHが含まれる。プライマーは、最高効率のためには一本鎖が好
ましいが二本鎖の形でもよい。二本鎖の場合には、まず、プライマーを相補鎖か
ら分離するために処理し、その後、拡張産物を調製するために用いられる。好ま
しくは、プライマーはポリデオキリボヌクレオチドである。プライマーは、重合
用試薬の存在下に拡張産物の合成を開始するのに十分に長くなければならない。
プライマーの正確な長さは、温度及びプライマー源を含む多くの要因に左右され
る。例えば、標的配列の複雑さによって、ポリヌクレオチドプライマーは典型的
には15〜25個以上のヌクレオチドを有するがそれより数の少ないヌクレオチ
ドであることもできる。短いプライマー分子は、一般的には、鋳型と十分に安定
なハイブリッド複合体を形成するために低い温度を必要とする。
本明細書に用いられるプライマーは、合成又は増幅されるべき各特定配列の異
なる鎖に“実質的に”相補的であるように選ばれる。これは、プライマーが各々
の鋳型鎖とランダムにでなくハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければ
ならないことを意味する。従って、プライマー配列は、鋳型の正確な配列を反映
してもしなくてもよい。例えば、非相補的ヌクレオチド断片がプライマーの5′
端に結合され、プライマー配列の残りが鎖に実質的に相補的である。かかる非相
補的断片は、典型的には、エンドヌクレアーゼ制限部位をコードしている。また
、プライマー配列がランダムにでなくハイブリッド形成してポリヌクレオチド合
成条件下に拡張産物を形成するのに合成又は増幅されるべき鎖の配列と十分な相
補性を有するならば、非相補的塩基又は長い配列がプライマーの中に点在するこ
とができる。
本発明のプライマーは、また、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター
配列又はその補体を含むことができる。例えば、Kriegら,Nucl .Acids Res.12
:7057(1984); Studierら,J .Mol.Biol.189:113(1986); Molecular Cloning: A Laboratory Manual ,sec.edit.
,Maniatisら,eds.,Cold Spring Harbor,N
Y(1989)参照。
DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターを含むプライマーが用いられる
場合、そのプライマーは増幅されるべきポリヌクレオチド鎖に対してハイブリッ
ド形成され、該DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターの第2ポリヌクレ
オチド鎖は大腸菌(Escherichia coli)DNAポリメラーゼI、又はE .coli D
NAポリメラーゼのクレノウフラグメントのような誘導剤を用いて完了する。出
発ポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドとDNAポリヌクレオチドの生
成間で交互にすることにより増幅される。
プライマーは、また、RNA依存性RNAポリメラーゼに対する鋳型配列又は
複製開始部位を含むことができる。典型的なRNA依存性RNAポリメラーゼと
しては、Lizardiら,Biotech .6:1197(1988)に記載されたQBレプリカーゼが含
まれる。RNA依存性ポリメラーゼは、鋳型配列又は複製開始部位を含む少数の
鋳型RNA鎖から多数のRNA鎖を生成する。それらのポリメラーゼは、典型的
には、Kramerら,J .Mol.Biol.89:719(1974)に記載されたように鋳型鎖の1
00万倍の増幅を与える。
ポリヌクレオチドプライマーは、ホスホトリエステル又はホスホジエスエル法
のような適切な方法を用いて調製される。Narangら,Meth .Enzymol.68:90(197
9); 米国特許第4,356,270号,同第4,458,066号,同第4,416,988号,同第4,293,
652号; Brownら,Meth .Enzymol.68:109(1979)参照。
プライマーのヌクレオチド配列の選択は、ハイブリッド形成点から検出される
べき突然変異をコードする領域までの核酸上の距離、使用されるべき第2プライ
マーに相対する核酸上のハイブリッド部位等の要因に左右される。
核酸試料がPCR増幅によってV因子遺伝物質を強化するべきである場合には
、2つのプライマー、即ち、PCRプライマー対は増幅されるべき核酸の各コー
ディング鎖に対して用いなければならない。コーディング鎖又はセンス鎖に由来
する配列をもつ第1プライマーは非コーディング(アンチセンス又はマイナス)
鎖上のヌクレオチド配列に対してハイブリッド形成する。PCRによって、第1
プライマーはその後はコーディング(センス又はプラス)鎖の一部になる。非コ
ーディング鎖に由来する配列をもつ第2プライマーは、コーディング鎖又はセン
ス鎖のヌクレオチド配列に対してハイブリッド形成し、PCRによって、その後
は非コーディング鎖の一部になる。
1実施態様においては、本発明は、プライマーの3′末端に位置する開始領域
をもつプライマーを形成する一組のポリヌクレオチドを用いる。開始領域は、典
型的には、3′端(3′末端)の15〜25ヌクレオチド塩基である。各プライ
マーの3′末端開始部分は、核酸合成を触媒する、即ち、3′末端からプライマ
ー拡張反応を開始するプライマーとして作用することができる。プライマーの一
方又は双方は、更に5′末端(5′端)非開始部分、即ち、好ましい鋳型に対す
るハイブリッド形成に関与しない領域を含むことができる。
プライマーの一方又は双方は、また、非開始部分である開始領域、即ち、好ま
しい鋳型に対するハイブリッド形成に関与しない領域に1個以上のヌクレオチド
を含むことができる。かかるヌクレオチドは、好ましい鋳型に存在しない制限エ
ンドヌクレアーゼ部位の全部又は一部を導入することができる。制限エンドヌク
レアーゼ部位の一部を導入する第2プライマーとして用いられる好ましいプライ
マーは、本発明の突然変異V因子対立遺伝子のHindIII制限部位を導入す
る配列番号24に示される。
PCRにおいては、各プライマーは標的核酸配列を増幅する第2プライマーと
組合わせて作用する。PCRで有用なPCRプライマー対の選択は、V因子遺伝
子領域をつくるために本明細書で述べた配慮によって支配される。患者の試料か
らのV因子ゲノムDNA及びcDNAの双方を増幅する有用な開始配列は、下記
のB2項及び実施例1に記載される。
b.ポリメラーゼ連鎖反応
V因子遺伝子は、mRNA及び/又はゲノムDNAのセンス鎖のようなポリヌ
クレオチドコーディング鎖から構成される。分析されるべき遺伝物質が二本鎖ゲ
ノムDNAの形である場合には、通常はまず一本鎖に、典型的には溶融により変
性される。試料をPCRプライマー対で処理(接触)することにより核酸をPC
R増幅に供し、該対の各々は上記のBla項に述べられた設計の必要性に基づい
て予め選ばれたヌクレオチド配列を有する。プライマー対を含むプライマーは、
V因子対立遺伝子鋳型の中に存在する、好ましくは保存される長さが好ましくは
少なくとも約10個のヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも約15個のヌク
レオチド、最も好ましくは20個のヌクレオチドの鋳型ヌクレオチド配列に対し
てハイブリッド形成することによりプライマー拡張反応を開始することができる
。
PCRプライマー対の第1プライマーは、センス鎖又はコーディング鎖に由来
しかつ核酸のアンチセンス(非コーディング又はマイナス)鎖、即ち、コーディ
ング鎖に相補的な鎖に対してハイブリッド形成するために本明細書ではよく“セ
ンスプライマー”と呼ばれる。従って、PCRプライマー対の第2プライマーは
、アンチセンス鎖に由来しかつ核酸のセンス(コーディング又はプラス)鎖に対
してハイブリッド形成するために本明細書ではよく“アンチセンスプライマー”
と呼ばれる。PCRによって、アンチセンスプライマーは増幅したアンチセンス
鎖の一部となる。
PCR反応は、PCRプライマー対、好ましくは所定量と試料の核酸、好まし
くは所定量とをPCRバッファー中で混合してPCR反応混合物を形成すること
により行われる。該混合物は、PCR増幅産物の形成に十分な典型的には所定の
多くのサイクルにサーモサイクリングされ、V因子遺伝物質が分析されるべき試
料を強化する。従って、本明細書に定義される本発明の増幅産物は個々のプライ
マー対によってゲノムDNA或いはcDNAのV因子核酸の増幅から生じる。
PCRは、典型的には、サーモサイクリングすることにより、即ち、PCR反
応混合物の温度を下限が約30〜約70℃で上限が約90〜約100℃の温度範
囲内を繰り返し上昇及び降下させることにより行われる。上昇及び下降は、連続
することができるが、好ましくは相であり、各々の温度の相対的温度安定の時間
がポリヌクレオチド合成、変性及びハイブリッド形成を援助する。
複数の第1プライマー及び/又は複数の第2プライマーが各増幅に用いられる
。例えば、1種類の第1プライマーは多数の異なる第2プライマーと対合されて
いくつかの異なるプライマー対となる。
また、個々の対の第1プライマーと第2プライマーも用いられる。例えば、実
施例1B及び1Cに記載されるV因子ゲノムDNAを増幅するに当たっては、配
列番号4に示されるヌクレオチド配列を有する第1プライマーは配列番号5及び
24に示される各配列を有する第2プライマーのいずれかと別個に対合される。
個々の増幅に用いられるべきである対合の決定は、突然変異の有無をスクリーニ
ングするために使用される分析法、即ち、分析法が下記のB3項に述べられるM
nlI制限エンドヌクレアーゼかHindIII制限エンドヌクレアーゼによる
増幅産物の制限消化に基づくかに左右される。
いずれにしても、第1及び第2プライマーの同じか又は異なる組合わせを用い
る増幅の増幅産物が本発明のV因子のグアニンのアデニンへの点突然変異を分析
するのに組合わせられる。
PCR反応は、適切ないずれの方法を用いても行われる。通常は、緩衝化水溶
液、即ち、PCRバッファー、好ましくはpH7〜9、最も好ましくは約8で起
こる。好ましくは、モル過剰(ゲノム核酸に対して、通常はプライマー:鋳型約
106:1)のプライマーが鋳型鎖を含有するバッファーに混合される。大きな
モル過剰は、工程の効率を改善するために好ましい。
PCRバッファーは、また、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(ポリヌクレ
オチド合成基質)dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP及び典型的には
耐熱性のポリメラーゼ全てをプライマー拡張(ポリヌクレオチド合成)反応に十
分な量で含有する。得られた溶液(PCR混合物)は、約90〜100℃に約1
〜10分間、好ましくは1〜5分間加熱される。その加熱時間後、溶液はプライ
マーハイブリッド形成に好ましい56℃まで冷却される。より好ましいプライマ
ーハイブリッド形成温度は60℃である。ハイブリッド形成条件及び必要条件の
他の態様はB3C項に記載される。
合成反応は、室温からポリメラーゼ(試薬を含む)が効率よく作用しなくなる
温度までで起こることができる。従って、例えば、E .coli DNAポリメラーゼ
Iが誘導剤として用いられる場合には、温度は通常約40℃より高くない。サー
モサイクリングは、所望量のPCR産物が生成されるまでサーモサイクリングが
繰り返される。具体的なPCRバッファーは、バッファー100マイクロリット
ルあたり50mMKCl;10mMトリス−HCl;pH8.3;1.5mMMgCl2
;0.001%(wt/vol)ゼラチン、200μM dATP;200μM dTTP;
200μM dCTP;200μM dGTP;及び2.5単位サーマス・アクアチ
クス(Thermus aquaticus)DNAポリメラーゼ(米国特許第4,889,818号)を含む
。
誘導剤は、酵素を含むプライマー拡張産物の合成を達成するために機能する化
合物又は系とすることができる。それのために適切な酵素としては、各核酸鎖に
相補的なプライマー拡張産物を形成するのに適切な方法でヌクレオチドの組合わ
せを容易にする例えば、E .coli DNAポリメラーゼI、E .coli DNAポリメ
ラーゼIのクレノウフラグメント、T4DNAポリメラーゼ、他の有効なDNA
ポリメラーゼ、逆転写酵素、及び熱安定酵素を含む他の酵素が挙げられる。熱安
定酵素の例としては、とくにサーマス・アクアチクスDNAポリメラーゼ、ピロ
コッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)DNAポリメラーゼ及びサーモト
ガ・マラチマ(Thermatoga maratima)DNAポリメラーゼが挙げられる。通常、
合成は各プライマーの3′端で開始し、合成が終結して異なる長さ又は同じ長さ
の分子を生成するまで鋳型鎖に沿って5′方向に進行する。しかしながら、誘導
剤が合成を5′端で開始させかつ上記と同じ方法を用いて上記の方向に進行させ
ることがある。
誘導剤は、また、酵素を含むRNAプライマー拡張産物の合成を達成するため
に機能する化合物又は系とすることができる。好適実施態様においては、誘導剤
はT7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ又はSP6RNAポリメラ
ーゼのようなDNA依存性RNAポリメラーゼとすることができる。それらのポ
リメラーゼは、相補的RNAポリヌクレオチドを生成する。RNAポリメラーゼ
の高代謝回転数は、Chamberlinら,The Enzymes ,ed.P.Boyer,PP.87-108,A
cademic Press,ニューヨーク(1982)に記載された出発ポリヌクレオチドを増幅
する。転写に基づく増幅系は、Gingerasら,PCR Protocols ,A Guide to Method s and Applications
,pp.245-252,Academic Press,Inc.,カリフォルニア州サ
ンディエゴ(1990)に記載されている。
誘導剤がDNA依存性RNAポリメラーゼであってリボヌクレオチド三リン酸
を取り込む場合には、十分量のATP、CTP、GTP及びUTPがプライマー
拡張反応混合物に混合され、得られた溶液は上記のように処理される。
新たに合成した鎖及びその相補的核酸鎖は、後に続く本方法の工程に用いられ
る二本鎖分子を形成する。
PCR増幅法は米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号
及び同第4,965,188号に詳細に及び“PCR Technology: Principles and Applicat
ions for DNA Amplification”,H.Erlich,ed.,Stockton Press,ニュ
ーヨーク(1989);“PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications”,I
nnisら,eds.,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990)を含む
いくつかの論文に少し記載されている。本発明に有用な具体的なPCR法は、実
施例1に記載される。
他の実施態様においては、2対の第1及び第2プライマーが増幅反応によって
用いられる。次に、各々が複数の異なるプライマー対を用いる複数の異なる増幅
から得られた増幅反応産物が混合されるか別個に分析される。
2.V因子核酸標品のPCR増幅
a.ゲノムDNA
上記のことから、本発明は、ヒトから単離したゲノムDNAの試料を増幅条件
下に、V因子遺伝子のエキソン10にヌクレオチドの位置205を含むヒトゲノ
ムDNAの領域を増幅するPCRプライマー対で処理する工程を含むスクリーニ
ング法を企図する。ゲノムDNA試料は、細胞、典型的には末梢血白血球から得
られる。増幅条件としては、PCRバッファーの存在及びサーモサイクリング温
度がポリペプチド合成に有効な量で含まれる。
そのようにして生成されたPCR増幅産物について、下記のB3項に述べられ
るようにV因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205のグアニンヌ
クレオチドからアデニンヌクレオチドへの変化として特徴づけられた点突然変異
の存在を分析する。
好適実施態様においては、正常な対立遺伝子が存在する場合にはPCRプライ
マー対は制限エンドヌクレアーゼ部位を含む増幅産物を生成する。しかしながら
、グアニンのアデニンへの点突然変異を含む変異体対立遺伝子が増幅される場合
には、同じPCRプライマー対は制限エンドヌクレアーゼ部位を含まない増幅産
物を生成する。
好ましくは、上記PCRプライマー対は、3′の非コーディング鎖のエキソン
10のヌクレオチドの位置205までの位置(相補的コーディング鎖上の5′の
突然変異に等価な位置)のエキソン10の非コーディング鎖に対してハイブリッ
ド形成する第1プライマー、及び3′のコーディング鎖のエキソン10のヌクレ
オチドの位置205までの位置のイントロン10のコーディング鎖に対してハイ
ブリッド形成する第2プライマーを含む。好ましい第1プライマー、FV7は、
配列、5′-CATACTACAGTGACGTGGAC- 3′(配列番号4)で表され、好ましい第2
プライマー、FVINT102は配列、5′-TGTTCTCTTGAAGGAAATGC- 3′(配列
番号5)で表される。
本発明の実施態様においては、上記PCRプライマー対から得られたPCR増
幅産物は、配列、5′-GACAGGCNAGG- 3′(配列番号1)(Nは正常なV因子遺伝子
でのようにG、変異体遺伝子でのようにAである)で表される5′から3′への
方向に書かれた連続ヌクレオチド配列、又はV因子ゲノムDNAのエキソン10
のヌクレオチドの位置205を含むその断片である。配列番号1の好ましいヌク
レオチド配列を含むV因子ゲノムDNAの具体的なヌクレオチド配列は、図2A
(配列番号2)及び図2B(配列番号3)に示され、各々PCRプライマー対F
V7及びFVINT102でつくられた正常及び突然変異PCR増幅ゲノムDN
A断片である。
正常な対立遺伝子が増幅される場合には、得られた増幅産物はV因子遺伝子の
エキソン10のヌクレオチドの位置205にヌクレオチドグアニンを含む。対照
的に、変異体対立遺伝子の増幅は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチド
の位置205にヌクレオチドアデニンを含む増幅産物を生成する。
異型接合態でのように正常及び変異体対立遺伝子が共に存在する場合には、P
CRプライマー対は正常対立遺伝子におけるV因子遺伝子のエキソン10のヌク
レオチドの位置205にグアニン及び変異体対立遺伝子におけるV因子遺伝子の
エキソン10のヌクレオチドの位置205にアデニンを含む増幅産物を生成する
。
本発明のプライマー対によって、点突然変異のない正常な対立遺伝子のV因子
遺伝子の好ましいヌクレオチド増幅領域は、5′-ACAGGCG AGG- 3′(配列番号6
)に対応するヌクレオチド配列又はその断片である。領域とは、予め選ばれたプ
ライマー対を用いることにより実際に増幅された増幅産物におけるヌクレオチド
を意味する。“その断片”とは、増幅産物を形成する増幅したヌクレオチドの領
域が言及した配列の一部であることを意味する。エキソン10のヌクレオチドの
位置205に対応するグアニンヌクレオチドの存在は、正常な対立遺伝子に存在
するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部位を与える。
罹患対立遺伝子のV因子遺伝子の対応する好ましいヌクレオチド増幅領域は、
5′-ACAGGCA AGG- 3′(配列番号7)に対応するヌクレオチド配列、又はその断
片の中に下線をひいた新しい点突然変異を含む。エキソン10のヌクレオチドの
位置205に対応するアデニンヌクレオチドの存在は、正常な対立遺伝子に存在
するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部位を破壊する。
従って、点突然変異の存在は、増幅ヌクレオチド領域においてV因子DNAを
消化する制限エンドヌクレアーゼMnlIの能力を破壊する。結果として、正常
な対立遺伝子と罹患した対立遺伝子間の微分MnlI制限消化パターンは、AP
C耐性を有する患者のV因子遺伝子対立遺伝子における点突然変異の存在の決定
を可能にする。
従って、B3項に記載されるV因子遺伝子のエキソン10にヌクレオチドの位
置205を含む増幅産物の制限消化及びヌクレオチド配列双方の分析は、同型接
合正常、同型接合変異体又は異型接合態間の決定を与える。かかる分析は、実施
例1A〜1Bに記載される。
患者からのゲノムDNAをスクリーニングする他の態様においては、点突然変
異が存在する場合には制限エンドヌクレアーゼ部位を含む増幅産物を生成するた
めに上記のものと別のPCRプライマーが用いられる。言い換えれば、エキソン
10のヌクレオチドの位置205におけるグアニンのアデニンへの点突然変異の
存在に依存する増幅産物において制限エンドヌクレアーゼ部位がつくられる。そ
の位置に正常なグアニンヌクレオチドを有する正常なPCR増幅対立遺伝子に生
じるアデニンヌクレオチドの存在がないときには、制限部位は消失してその位置
に制限消化産物をつくることができないことになる。
従って、その代替的態様は、MnlI制限分析に用いられたPCRプライマー
対、FV7及びFVINT102で得られたものと異なる制限パターンを生じる
。両者の方法による患者のゲノムDNAの分析は、2つの依存しないが相補的手
段による遺伝子診断の確認を可能にする。
正常及び罹患対立遺伝子を増幅するプライマー対のFV7と称する好ましい第
1プライマー及び制限部位を生じるFV506tst2と称する第2プライマー
は、各々ヌクレオチド5′-CATACTACAGTGACGTGGAC- 3′(配列番号4)及び
5′-TTACTTCAAGGACAAAATACCTGTAAAGCT- 3′(配列番号24)を有する。
第2プライマーは、アデニン点突然変異を有するエキソン10のヌクレオチド
の位置205を用いて制限エンドヌクレアーゼ部位をつくるように設計される。
アデニン点突然変異を用いる予め選ばれた制限エンドヌクレアーゼ部位をつくる
ために、第2プライマーFV506tst2は、更に、得られた鋳型ゲノムDN
Aから増幅されたヌクレオチド配列に3個の点突然変異を導入するように設計さ
れた。これらの追加の突然変異は、ヌクレオチドの位置210まで伸長するヌク
レオチドの位置208に対応する増幅産物につくられる(コーディング鎖又はセ
ンス鎖の5′-CTT- 3′は5′-GAA- 3′に変わる)。
上記のプライマー対による増幅の結果として、制限エンドヌクレアーゼ、詳し
くはHindIII部位が、正常或いは変異体対立遺伝子に天然には存在しなか
ったエキソン10のヌクレオチドの位置205を用いてつくられる。ヌクレオチ
ドの位置205のグアニンヌクレオチドを用いてエキソン10に天然にのみ存在
する制限部位は、ヌクレオチドの位置205のグアニンヌクレオチドの存在に依
存する前に述べた正常な対立遺伝子のMnlI制限部位である。
プライマー対FV7及びFV506tst2によるゲノムDNAの増幅によっ
て、点突然変異のある罹患対立遺伝子のV因子遺伝子の得られた好ましい増幅ヌ
クレオチド領域は、ヌクレオチド配列5′-AAGCTT- 3′(配列番号23)又はそ
の断片であり、その配列はHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位である。
点突然変異のない正常な対立遺伝子のV因子遺伝子の対応する好ましい増幅ヌク
レオチド領域は、ヌクレオチド配列5′-GAGCTT- 3′(配列番号25)又はその
断片である。
従って、配列番号23を有しかつ実質的に配列番号19に示された配列からな
る増幅変異体対立遺伝子ヌクレオチド領域は、HindIII制限エンドヌクレ
アーゼ消化部位を含む。実質的に配列番号18に示された配列からなるグアニン
ヌクレオチドをもつ正常な対立遺伝子からの対応する増幅ヌクレオチド領域は、
必要なHindIII部位を含まない。従って、配列番号4及び24のプライマ
ー対で増幅したゲノムDNAの微分HindIII制限消化パターンは、患者の
ゲノムDNAから点突然変異の有無を求める能力の別法を与える。かかる分析は
、
実施例1Cに記載される。
また、本発明の方法を実施するのに有用な本発明の増幅産物を生成するように
設計される他の第1及び第2プライマーが企図される。かかるプライマーは、正
常な及び変異体でない対立遺伝子における制限エンドヌクレアーゼを用いる正常
及び変異体ゲノム対立遺伝子を増幅する前に記載されたMnlIプライマー対を
含む種類からのものであることができる。更に、それらのプライマーは、突然変
異を更に導入せずに正常或いは変異体の鋳型DNAの天然に存在するヌクレオチ
ド配列に依存するように設計される。それらの種類のプライマーは、下記のB3
項に述べられる方法の1つによって後続の分析の増幅産物を与える本発明のグア
ニンのアデニンへの点突然変異を含む又は前後のヌクレオチド配列の領域を選ぶ
ことにより設計される。
しかしながら、V因子核酸の領域を増幅するプライマー対のプライマーの設計
は、本発明の点突然変異の位置にある制限部位をもつことを限定しない。正常及
び変異体増幅産物が微分制限消化パターンを生じるように消化されさえすれば、
いずれのプライマー対も増幅産物を形成するために用いられる。
他のプライマーは、また、グアニンのアデニンへの点突然変異を用いてその部
位に本来は存在しない制限エンドヌクレアーゼ部位をつくる前に記載されたHi
ndIII非コーディングプライマー、FV506tst2を含むプライマーの
種類に同様に設計される。同様に、増幅産物に追加の突然変異を導入するプライ
マーは、グアニン又はアデニンヌクレオチドがエキソン10のヌクレオチドの位
置205に存在するかに無関係に企図される。
更に、本発明で使用するのに企図されるプライマーの設計は制限エンドヌクレ
アーゼ消化分析法がグアニンのアデニンへの点突然変異の有無を求めるのに必要
とされるものに限定されない。そのようなものとして、プライマーは、実施例1
Aに記載されたヌクレオチド配列分析のみのために、実施例1B及び1Cに記載
された制限消化分析のために又は下記のB3項に述べられる核酸ハイブリッド形
成法による分析のためにV因子遺伝物質の領域を増幅するように設計される。
b.cDNA
他の好適実施態様においては、本発明は、患者から単離されたメッセンジャー
RNA(mRNA)から合成されたcDNA試料を増幅条件下に、V因子cDN
Aのヌクレオチドの位置1691を含むヒトcDNAの領域を増幅するPCRプ
ライマー対で処理する工程を含むスクリーニング法を企図する。
mRNAが用いられる場合、細胞はRNase阻害条件下で溶解される。実施
態様においては、第1工程は全細胞mRNAを単離する工程である。次に、オリ
ゴ−dTセルロースに対するハイブリッド形成によってポリA+mRNAが選ば
れる。
その後、cDNAと呼ばれるDNAの相補鎖は、当業者に周知の方法及び実施
例1Dに記載された方法で合成される。合成cDNA鎖がmRNAからつくられ
るので、非コーディング鎖又はアンチセンス鎖である。
得られたcDNAを増幅する増幅条件としては、PCRバッファーの存在及び
サーモサイクリング温度がポリペプチド合成に有効な量で含まれる。
好ましくは、cDNAを増幅するPCRプライマー対は、3′の非コーディン
グcDNA鎖のヌクレオチド1691までの位置のcDNAの非コーディング鎖
に対してハイブリッド形成する第1プライマー及び3′のコーディングcDNA
鎖のヌクレオチドの位置1691までの位置のcDNAのコーディング鎖に対し
てハイブリッド形成する第2プライマーを含む。
好適実施態様においては、PCRプライマー対は、正常なcDNAを増幅する
場合には制限エンドヌクレアーゼ部位を含む増幅産物を生成する。しかしながら
、変異体cDNAにおいては、PCRプライマー対は制限エンドヌクレアーゼ部
位を含まない増幅産物を生成する。
しかしながら、上記でゲノムDNA増幅について述べたように、他のプライマ
ー対は、制限エンドヌクレアーゼ部位の存在に無関係に本発明のV因子突然変異
を検出する増幅cDNAを調製するのに使用するために企図される。
PCR増幅産物を生成するためにV因子cDNAを増幅するのに好ましいプラ
イマー対は、配列、5′-CAGGAAAGGAAGCATGTTCC- 3′(配列番号10)で表され
る第1プライマー、FV13、及び5′-TGCCATTCTCCAGAGCTAGG- 3′(配列番号
11)で表される好ましい第2プライマー、FV2を含んでいる。
次に、FV13/FV2プライマー対からこのように生成されたサイズが
2297塩基対のPCR増幅産物について、好ましくは下記のB3bで述べられ
るヌクレオチド配列分析によりV因子cDNAのヌクレオチドの位置1691の
グアニンヌクレオチドからアデニンヌクレオチドへの変化として特徴づけられた
点突然変異の存在が分析される。
PCR増幅産物を生成するV因子cDNAを増幅する他の好ましいプライマー
対は、配列、5′-CATACTACAGTGACGTGGAC- 3′(配列番号4)で表される第1プ
ライマー、FV7及びヌクレオチド配列、5′-TGCTGTTCGATGTCTGCTGC- 3′(配
列番号12)で表される第2プライマー、FV8Aを含んでいる。得られた増幅
産物は、サイズが124塩基対である。
好適実施態様においては、FV7とFV8Aのプライマー対は、鋳型として用
いられるプライマー対FV13及びFV2によるPCRからのcDNA増幅産物
によるPCR増幅に用いられる。その手順は、次に第1配列の増幅産物が第2反
応の鋳型として用いられ別のPCRプライマー対が後者の反応に用いられるので
2工程又は連続PCRとも呼ばれる。
2工程PCR方法は、個々の開始部位として企図されない鋳型の領域に対して
PCRプライマーによる偽の及び非特異的開始の可能性を減少させるという利点
がある。言い換えれば、約6900塩基対V因子cDNAヌクレオチド配列のよ
うに鋳型が大きい場合には1工程PCR増幅で好ましい小さなPCR増幅産物を
生成することにより、所望の産物及び予想されない鋳型cDNAの領域からのも
のを含む増幅産物の不均一な混合物が得られる。
従って、開始反応の特異性を高めかつ好ましい増幅産物の収率を高めるために
、特に増幅用鋳型が大きい場合に2工程又は連続PCR法が好ましい。
しかしながら、cDNA特異的プライマー対、好ましくはプライマー対FV7
及びFV8AでcDNA増幅産物を生成する代替的実施態様においては、メッセ
ンジャーRNA(mRNA)から合成された無傷V因子cDNA鋳型の使用で行
われる。
このようにFV7/FVBプライマー対から生成されたPCR増幅産物につい
て、次に好ましくは下記のB3bで述べられるヌクレオチド配列分析により、更
に好ましくはB3aで述べられるMnlI制限消化分析によりV因子cDNAの
ヌクレオチドの位置1691にグアニンヌクレオチドからアデニンヌクレオチド
への変化として特徴づけられた点突然変異の存在が分析される。
好ましくは、PCR産物は、配列、5′-GACAGGCNAGG- 3′(配列番号1)(Nは
正常なV因子遺伝子でのようにグアニン(G)或いは変異体遺伝子でのようにア
デニン(A)である)で表される5′から3′の方向に書かれた連続ヌクレオチ
ド配列、又はV因子cDNAのヌクレオチド1691を含むその断片である。
従って、PCRプライマー対は、正常なV因子cDNAのヌクレオチド169
1にヌクレオチドグアニンを含む増幅産物を生成するが、変異体cDNAヌクレ
オチドにおいてはグアニンがアデニンヌクレオチドに置き換えられる。
cDNAを増幅することについて本明細書で記載された好ましいプライマー対
により、点突然変異のない正常な対立遺伝子のV因子遺伝子の好ましい増幅ヌク
レオチド領域は、5′-ACAGGCG AGG- 3′(配列番号6)に対応するヌクレオチド
配列又はその断片である。ゲノムDNAとのように、cDNAのヌクレオチドの
位置1691に対応するグアニンヌクレオチドの存在は、正常な対立遺伝子に存
在するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部位を与える。
cDNAの対応する好ましいヌクレオチド増幅変異体ヌクレオチド領域は、5
′-ACAGGCA AGG- 3′(配列番号7)に対応するヌクレオチド配列又はその断片
である。cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応するアデニンヌクレオチ
ドの存在は、正常なcDNAに存在するMnlI制限エンドヌクレアーゼ消化部
位を破壊する。
正常なcDNAでは、上記のプライマー対FV13及びFV2による増幅から
得られた増幅ヌクレオチド領域は、実質的に無傷V因子cDNAのヌクレオチド
の位置1691に対応するcDNAヌクレオチドの位置1614にグアニンヌク
レオチドを有する配列番号27に示された2297塩基対ヌクレオチド配列から
なる。無傷V因子cDNAの1691と比べて配列番号27の1614であるグ
アニンヌクレオチドのヌクレオチドの位置の違いの根拠は、配列番号27に示さ
れた増幅cDNAの番号をつける慣例から生じるものである。後者では、ヌクレ
オチドの位置1は、配列番号13並びに図6A及び図6Bの双方に示されたV因
子cDNAのヌクレオチドの位置78に対応する。
点突然変異を含むcDNAでは、対応する増幅ヌクレオチド領域は、実質的に
上記の無傷V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応するヌクレオチ
ドの位置1614にアデニンヌクレオチドを有する配列番号28に示される22
97塩基対ヌクレオチド配列からなる。後者の存在は、正常なMnlI制限エン
ドヌクレアーゼ部位を破壊する。
正常及び変異体双方の増幅cDNAヌクレオチド配列は、位置1614のヌク
レオチド(前に述べた無傷cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応する)
が“n”として示される配列番号17の配列に示され、“n”は正常なV因子c
DNAではグアニンヌクレオチド或いは変異体V因子cDNAでは点突然変異を
示すアデニンヌクレオチドである。
正常なcDNAでは、上記プライマー対FV7及びFV8Aによる増幅から得
られた増幅ヌクレオチド領域は、実質的にcDNAヌクレオチドの位置1691
にグアニンヌクレオチドを有するヌクレオチドの位置1601〜1724の配列
番号13に示される124塩基対ヌクレオチド配列からなる。点突然変異を含む
cDNAでは、対応する増幅ヌクレオチド領域は、実質的に1691ヌクレオチ
ドの位置にアデニンヌクレオチドを有するヌクレオチドの位置1601〜172
4の配列番号26に示されたヌクレオチド配列からなる。後者の存在は、正常な
MnlI制限エンドヌクレアーゼ部位を破壊する。
従って、V因子cDNAにおいてV因子遺伝子突然変異を同定する方法では、
MnlI部位が正常なV因子核酸に本質的に存在するので、点突然変異が存在し
ない場合にはPCRプライマー対は制限エンドヌクレアーゼ部位を含むcDNA
増幅産物を作製する。
1実施態様においては、得られた増幅産物は、次に、点突然変異が存在しない
場合には制限部位を認識しかつcDNA増幅産物を切断する制限エンドヌクレア
ーゼ、好ましくはMnlIで制限条件下に処理される。結果として、正常対立遺
伝子と罹患対立遺伝子間の制限消化パターンは、mRNA試料からつくられたc
DNA中の点突然変異の有無の決定を可能にする。
他の実施態様においては、同様の増幅産物は、点突然変異の有無を求めるため
にヌクレオチド配列分析又は核酸配列技術により分析される。
また、ヌクレオチドの位置1691にグアニンのアデニンへの点突然変異を有
する全長V因子cDNAがかかる産物を増幅するように設計されたプライマー対
によって生成された本発明の増幅産物であるように企図される。その増幅cDN
A産物のヌクレオチド配列は、ヌクレオチドの位置9からヌクレオチドの位置6
917までの配列番号26に示される。前に述べた及びその配列に示された5′
及び3′末端8量体EcoRIクローニングリンカーは、V因子cDNAを含ま
ない。
従って、B3a及びB3b項に各々記載される制限分析及びヌクレオチド配列
は共にcDNA増幅産物における本発明のグアニンのアデニンへの点突然変異の
有無の決定を与える。かかるヌクレオチド配列決定及び制限消化分析は、各々実
施例1Dと1Eに記載される。
3.V因子核酸標品の分析方法
本発明の方法によって生成された増幅産物を分析するのに使用するために企図
される下記に述べられるさまざまな分析法は、患者についてAPC耐性と関連が
あるV因子遺伝子突然変異をスクリーニングする手段を与える。特に、本分析法
は、エキソン10のヌクレオチドの位置205及び対応するcDNAのヌクレオ
チドの位置1691のV因子のグアニンのアデニンへの点突然変異の有無の決定
を可能にする。
a.制限エンドヌクレアーゼ消化分析
好適実施態様においては、分析は、増幅産物を制限条件下に、産物中の制限部
位を認識しかつ増幅産物を特定部位で切断して制限産物を形成する制限酵素で処
理する工程を含む。次に、得られた制限消化産物は下記のように検出される。
同型接合態では、正常或いは変異体対立遺伝子が存在し、本明細書に記載され
た方法で検出される。異型接合態では、正常及び変異体双方の対立遺伝子が存在
し、本明細書に記載された方法で検出される。
本発明の方法で使用するために企図される増幅産物の制限消化は、使用される
制限エンドヌクレアーゼの種類及び特異性によって必要とされる最適制限条件下
で行われる。一般的には、制限エンドヌクレアーゼ、制限バッファー、消化温度
及び消化時間等が含まれ、個々の制限エンドヌクレアーゼに最適である制限条件
は、産物材料に製造業者の使用説明書によって示される。制限エンドヌクレアー
ゼの異なる製造業者は、同じエンドヌクレアーゼに対してでさえ非常に異なる消
化条件を推奨する。結果として、たいていの製造業者は個々の産物について反応
条件を最適化したので、使用制限条件は制限エンドヌクレアーゼの選択及び製造
業者の使用説明書によって支配される。MnlI及びHindIII制限エンド
ヌクレアーゼの具体的な制限条件は、各々時間1B及び1Cに示される。
制限エンドヌクレアーゼ消化分析による分析の関係において、本発明は更に生
成した制限消化産物を検出する手段を必要とする。従って、好適実施態様におい
ては、制限産物の存在はDNA断片を分離及び同定するために用いられる標準法
であるアガロース又はポリアクリルアミドゲルによる電気泳動によって検出され
る(Sambrookら,Molecular Cloning ,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Sp
ring Harbor Press,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク,1989)。その
手法は、作業が迅速及び簡便である。アガロース又はポリアクリルアミドゲルに
加えられるDNAは、分子量に基づいて電気泳動で分離される。
電気泳動に続いてゲルの中のDNA断片の位置が、DNAを臭化エチジウムの
ような蛍光挿入染料で染色すると共にゲルを紫外線のもとで試験することにより
直接求められる(Sharpら,Biochem .12:3055,1973)。従って、MnlIとのイ
ンキュベーションに続いてDNA断片の分子量が得られたDNA断片の泳動を市
販のDNA分子量標準と比べることにより求められる。
好ましくは、増幅産物において本発明のグアニンのアデニンへの点特異的の有
無を分析するために用いられる制限エンドヌクレアーゼは、I型制限エンドヌク
レアーゼMnlIであり、制限部位は配列5′-ACAGGCG AGG- 3′(配列番号6;
Brinkleyら,Gene 100:267,1991)で表され、下線をひいたグアニンヌクレオチ
ドはV因子ゲノムDNAのエキソン10のヌクレオチドの位置205及びV因子
cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応する。変異体対立遺伝子では、V
因子遺伝子のエキソン10の位置205のヌクレオチド配列は
5′-ACAGGCA AGG- 3′(配列番号7)で表され、下線のヌクレオチドはアデニン
点突然変異を示す。
MnlIは、特異的二本鎖ヌクレオチド配列(制限エンドヌクレアーゼ認識部
位又は認識部位)を認識し、その認識部位の中に含まれないヌクレオチド配列の
中の位置の二本鎖DNAの両鎖を切断する。制限エンドヌクレアーゼによる二本
鎖ヌクレオチド配列の切断により制限産物が得られる。
I型制限エンドヌクレアーゼの認識部位を示すヌクレオチド配列は、パリンド
ロームではない。
慣例により、MnlIの認識部位は、下記の二本鎖ヌクレオチド配列で表され
る。
5′-CCTCNNNNNNN- 3′(配列番号20)
3′-GGAGNNNNNN- 5′ (配列番号21)
式中、Nは任意のヌクレオチドである(Brinkleyら,Gene 100:267,1991)。
従って、エキソン10ではV因子遺伝子のヌクレオチドの位置199〜208
及びcDNAではV因子cDNAのヌクレオチドの位置1685〜1694のコ
ードヌクレオチド配列5′-ACAGGCGAGG- 3′(配列番号6)は、5′から3′へ
読み取った配列番号21に示されるMnlI配列に対応する。そのようなものと
しての配列は、MnlI認識部位を示す二本鎖DNAの単鎖である。
MnlIによる切断パターンにより上記に示される3′の1塩基対突出部分が
生じるので、本発明のMnlI消化によって生成された断片サイズを求めること
に対してとられた約束は、上記ヌクレオチド配列の特異性のいずれかをもつ増幅
産物のコーディング鎖又はセンス鎖のMnlI制限消化切断に基づいている。例
えば、実施例1Bで述べられるように増幅ゲノム或いはV因子からのcDNAに
おいては、5′MnlI部位はコーディング鎖に3′の1塩基突出部分を有し、
エキソン10にヌクレオチド205(cDNAではヌクレオチド1691)を含
む3′MnlI部位はちょうど逆で非コーディング鎖又はアンチセンス鎖に3′
の1塩基突出部分を有する。従って、3′MnlI部位のコーディング鎖は、短
い切断産物である。コーディング鎖切断部位に基づいてMnlI消化から得られ
る制限産物を算出すると二本鎖MnlI部位によって+1塩基か或いは−1塩基
である。
V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置199〜208にMnlI
認識部位を含む対立遺伝子は、正常な対立遺伝子である。正常な対立遺伝子のV
因子遺伝子に由来する増幅産物は、MnlIの存在下に切断されて制限産物を生
成する。
従って、ヌクレオチドの位置205のV因子遺伝子のエキソン10及びヌクレ
オチドの位置1691のV因子cDNAのグアニンからアデニンへのMnlI認
識部位を示すヌクレオチド配列の変化は、MnlI認識部位を消失する。結果と
して、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置199〜208にMn
lI認識部位を含まない対立遺伝子は変異体対立遺伝子である。従って、V因子
遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置199〜208にMnlI認識部位
を含まない変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物は、MnlIの
存在下に切断されずに制限産物を生成する。
従って、対立遺伝子が共に変異体である同型変異体V因子遺伝子型では、制限
エンドヌクレアーゼMnlIはV因子遺伝子のエキソン10の位置205で切断
しない。従って、同型変異体遺伝子型は、増幅産物にMnlI制限エンドヌクレ
アーゼ部位がなくヌクレオチドの位置205を含むことにより検出される。
異型V因子遺伝子型では、正常及び変異体双方の対立遺伝子の存在は制限エン
ドヌクレアーゼMnlIの存在下に正常及び変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に
由来する増幅産物をインキュベートした切断及び非切断DNA両者の各々の存在
により検出される。
対照的に、同型接合正常V因子対立遺伝子は、エキソン10のヌクレオチドの
位置205を含むMnlI部位で共に消化される。
従って、電気泳動で観察可能な微分MnlI消化パターンは、本発明のグアニ
ンのアデニンへの点突然変異について患者の試料の遺伝子型の決定を可能にする
。
ゲノムDNA及びcDNA双方のPCR増幅産物の具体的なMnlI制限消化
分析は、各々実施例1B及び1Eに記載される。
代替的実施態様においては、グアニンのアデニンへの点突然変異の存在はHi
ndIIIによる増幅産物の消化又は消化がないことにより検出される。
HindIIIは、特定の二本鎖ヌクレオチド配列(制限エンドヌクレアーゼ
認識部位又は認識部位)を認識すると共に認識部位の中の位置の二本鎖DNAの
両鎖を切断するII型制限エンドヌクレアーゼである。
HindIIIは、下記の配列で表される二本鎖DNAを認識する。
5′-AAGCTT- 3′(配列番号23)
II型制限エンドヌクレアーゼの特定の切断は、特定数のヌクレオチドを含む
制限産物を生じる。従って、特定数のヌクレオチドを含むHindIII制限産
物は、HindIIIによる二本鎖DNAの切断により生じる。
変異体対立遺伝子増幅産物におけるHindIIIヌクレオチド配列5′-AAGC
TT- 3′(配列番号23)は、エキソン10のヌクレオチドの位置205〜21
0に対応する。配列番号23に示された配列を含む二本鎖DNAをインキュベー
トすることによりDNAの両鎖の切断が生じ、下記の構造を生成する。
5′-A- 3′
3′-TTCGA- 5′(配列番号23、5′→3′方向に示されるヌクレオチドの
位置2〜6)。
増幅した正常対立遺伝子の相対物は、ヌクレオチド配列5′-GAGCTT- 3′(配
列番号25)である。その配列は、HindIII認識部位を示さず、制限エン
ドヌクレアーゼHindIIIの存在下にインキュベートした場合にヌクレオチ
ドの位置205で切断されない。
従って、電気泳動で観察可能な微分HindIII消化パターンは、本発明の
グアニンのアデニンへの点突然変異について患者の試料の遺伝子型を求めること
を可能にする。
ゲノムDNAPCR増幅産物の具体的なHindIII制限消化分析は、実施
例1Cに記載される。
新しい制限部位特異性を用いる代替的プライマーの設計で必要とされる他の制
限エンドヌクレアーゼ分析法は、本発明で使用するために企図される。
b.V因子核酸標品の配列分析
本発明の他の実施態様においては、分析は、実施例1A及び1Dに記載される
各々V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205及びV因子cDN
Aのヌクレオチドの位置1691の増幅産物のヌクレオチド配列を決定する工程
を含む。核酸配列分析は、本発明の方法に記載されるPCRから得られた増幅産
物を含むV因子核酸標品を分析する制限消化分析法に対する代替的方法である。
核酸配列分析の決定は、患者から単離した非PCR増幅核酸試料に対して企図さ
れる。
上記実施態様のいずれの場合にも、使用核酸試料についてかかる分析は(a)
プローブ鎖とその相補的標的のハイブリッド形成又は変性に基づく物理化学的手
法と(b)エンドヌクレアーゼ、リガーゼ及びポリメラーゼとの酵素反応とを組
合わせることにより行われる。核酸は、DNA或いはRNAとして分析される。
DNAにおいては個々のヒトの遺伝子の位置が分析され、RNAにおいては個々
の細胞の発現情報が求められる。
配列決定については、形成されるべきプライマーが既知のV因子配列に対して
ハイブリッド形成することができかつ配列決定のためにDNAの領域へのプライ
マー拡張を開始する場合又は前の配列決定がヌクレオチド配列領域を決定しかつ
プライマーが新しく配列決定された領域から未知の配列の領域に拡張するように
設計される場合のように鋳型DNAの配列を知ることができる。その後者の方法
は、各ラウンドの配列決定が前に決定された配列に基づいて設計されたプライマ
ーによって特定されるので“特定配列決定”と呼ばれる。
本発明のV因子のグアニンのアデニンへの点突然変異の有無を求めるために患
者の試料からのV因子遺伝物質を分析するのに有用な具体的な配列決定方法は、
実施例1に記載される。好ましい配列決定プライマーは、FV23と呼ばれ、そ
の配列は配列番号22に示される。
c.ハイブリッド形成分析用V因子核酸標品の検出
核酸ハイブリッド形成を用いる分析において、本発明の方法におけるDNA二
重らせんの存在の検出は種々の手段で達成される。
DNA二重らせんの存在を検出する方法においては、DNA二重らせんでハイ
ブリッド形成されるオリゴヌクレオチドとしては二重らせんを検出可能にする標
識又は指示基が含まれる。かかる標識としては、典型的には放射性原子、化学的
修飾ヌクレオチド塩基等が挙げられる。
オリゴヌクレオチドは、指示手段又は指示基に標識、即ち、作用上結合され、
標的鋳型中の個々のヌクレオチド配列の存在を検出するために用いられる。
オリゴヌクレオチドプローブの一部に作用上結合されるか又はその一部として
存在する放射性元素(標識オリゴヌクレオチド)は、DNA二重らせんの検出を
容易にするのに有用な手段となる。典型的な放射性元素は、β線を放出するもの
である。3H、12C、32P及び35Sのようなβ線を放出する元素は、β線放出放
射性元素標識の1種である。放射性ポリヌクレオチドプローブは、典型的には放
射性標識ヌクレオチドをDNAキナーゼを用いて核酸に酵素的に取り込むことに
り調製される。
放射性標識オリゴヌクレオチドの別のものは、金属錯化剤、ビオチン含有基、
蛍光化合物等を含むように化学的に修飾されるオリゴヌクレオチドである。
有用な金属錯化剤は、ランタニドと芳香族β−ジケトンによって生成されるラ
ンタニドキレートであり、ランタニドはEDTA類縁体のようなキレート形成化
によって核酸又はオリゴヌクレオチドに結合するので蛍光ランタニド錯体が形成
される。米国特許第4,374,120号、同第4,569,790号及び公開された欧州特許出願
第0139675号及び国際出願第87/02708号参照。
ビオチン又はアクリジンエステル標識オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチ
ドを標識するために用いられるその使用が記載された。米国特許第4,707,404号
、公開された欧州特許出願第0212951号及び欧州特許出願第0087636号参照。有用
な蛍光マーカーとしては、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、NB
D等が挙げられる。
DNA二重らせんに存在する標識オリゴヌクレオチドは二重らせん自体を標識
するので分析されるべき試料中に存在する他の核酸より区別できるようにする。
二重らせんにおける標識の存在の検出、もって、二重らせんの存在の検出は、典
型的にはDNA二重らせんに対してハイブリッド形成されない標識オリゴヌクレ
オチドプローブからDNA二重らせんを分離することを必要とする。DNA二重
らせんを形成するのに有用な好ましいオリゴヌクレオチドは、配列番号6及び7
に対応するヌクレオチド配列、各々正常及び変異体V因子核酸からのコーディン
グ鎖MnlI制限エンドヌクレアーゼ配列である。他の好ましいオリゴヌクレオ
チドは、配列番号23及び25に示されるもの、各々正常及び変異体V因子核酸
からのコーディング鎖HindIII制限エンドヌクレアーゼ配列である。
非ハイブリッド形成標識オリゴヌクレオチドのような一本鎖オリゴヌクレオチ
ドをDNA二重らせんから分離する技術は周知であり、典型的には化学的性質に
基づいて二本鎖核酸から一本鎖核酸を分離することを必要とする。たいてい分離
技術は、非ハイブリッド形成プローブが不溶性マトリックスに結合されるDNA
二重らせんから典型的には洗浄により分離される不均一ハイブリッド形成形態の
使用を必要とする。具体例はサザンブロット法であり、基質はニトロセルロース
紙であり、標識は32Pである(Southern,J .Mol.Biol.98:503,1975)。
オリゴヌクレオチドは、また、典型的には5′末端で又はその近傍で固体マト
リックスに、即ち、水不溶性固体支持体に有利に結合される。有用な固体マトリ
ックスは、当該技術において周知であり、Pharmacia Fine Chemicals(ニュージ
ャージー州ピスカタウェイ)から商品名SEPHADEXとして市販されているような架
橋デキストラン;アガロース、ポリスチレン又は直径約1ミクロンから約5mmま
でのラテックスビーズ、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、架橋ポリアクリルアミ
ド、ニトロセルロース又はナイロン系ウェブ、例えば、シート、ストリップ、パ
ドル、プレートマイクロタイターウェル等が挙げられる。
また、“結合”ヌクレオチドをオリゴヌクレオチド部分の5′又は3′端に付
加し、その部分を固体支持体に作用上結合するためにその結合オリゴヌクレオチ
ドを用いることが可能である。
ヌクレオチドハイブリッド形成分析においては、ハイブリッド形成反応混合物
は、ハイブリッド形成産物、即ち、オリゴヌクレオチドと標的核酸を含む複合体
を形成する鋳型に存在する相補的核酸配列に対してハイブリッド形成する鋳型上
の所定の配列に対して相補性を有するオリゴヌクレオチドに十分な時間ハイブリ
ッド形成条件下に企図された方法で維持される。
ハイブリッド形成及び“ハイブリッド形成条件”及びその文法上の等価物は、
維持時間と共に用いられる場合、ハイブリッド形成反応混合物を混合物中の反応
成分及び随伴試薬の関係において1個以上のオリゴヌクレオチドを標的配列とア
ニールして核酸二重らせんを形成するのに十分な時間、温度及びpH条件に供す
ることを意味する。ハイブリッド形成を達成するために必要とされるかかる時間
、温度及びpH条件は、当該技術において周知であるようにハイブリッド形成さ
れ
るべきオリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドと標的間の相補性の程度
、オリゴヌクレオチドのグアニジンとシトシンの含量、所望のハイブリッド形成
の緊縮性、及びハイブリッド形成の速度論に影響することができるハイブリッド
形成反応混合物中の塩又は追加試薬の存在に左右される。あるハイブリッド形成
反応混合物のハイブリッド形成条件を最適化する方法は当該技術において周知で
ある。
典型的なハイブリッド形成条件としては、pH4〜9に緩衝化した溶液の使用
が含まれ、4〜37℃、好ましくは約12〜約30℃、更に好ましくは約22℃
の温度で0.5秒〜24時間、好ましくは2分〜1時間行われる。
ハイブリッド形成は、周知である均一又は不均一形態で行われる。均一なハイ
ブリッド形成反応は、溶液中で完全に起こり、オリゴヌクレオチドとハイブリッ
ド形成されるべき核酸配列(標的)が共に溶液に可溶な形態で存在する。不均一
反応は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドプローブ或いは標的核酸が結合
される反応媒体に不溶性であるマトリックスの使用を必要とする。
標的配列を含む核酸が二本鎖(ds)の形である場合、ハイブリッド形成反応
を行う前に加熱又はアルカリ処理のようにdsDNAをまず変性することが好ま
しい。dsDNAの変性は、ハイブリッド形成されるべきオリゴヌクレオチドと
混合する前に行われるか又はdsDNAとオリゴヌクレオチドとを混合した後に
行われる。
オリゴヌクレオチドと鋳型間の所定の相補性は、2種類の方法で達成される。
生成されるべきプライマーが既知のV因子配列に対してハイブリッド形成するこ
とができかつ本明細書に記載された続いての分析のためにDNA領域へのプライ
マー拡張を開始する場合又は前の配列決定がヌクレオチド配列領域を決定しかつ
プライマーが新しく配列決定された領域から未知の配列領域に伸長するように設
計される場合のように、鋳型DNAの配列を知ることができる。
ハイブリッド形成反応混合物に存在するオリゴヌクレオチドの有効量は、通常
は周知であり、典型的にはハイブリッド形成されるべきオリゴヌクレオチドと鋳
型間のモル比によって示される。好ましい比率は、等モル量の標的配列とオリゴ
ヌクレオチドを含むハイブリッド形成反応混合物である。周知のように、等モル
濃度の逸脱はハイブリッド形成反応産物を生成するが効率が低い。従って、一方
の成分がもう一方の成分に相対して100倍モル過剰量の比率であることができ
るが、50倍未満、好ましくは10倍未満、更に好ましくは2倍未満の過剰量が
本発明を実施するのに望ましい。
(1)膜固定化標識配列の検出
DNA(サザン)ブロット法においては、標的配列を膜上に固定化することに
よりゲノムDNAの特定領域を検出する。ゲノムDNAの特定領域は、PCR増
幅、PCR増幅に続いて制限エンドヌクレアーゼによる消化或いはPCR増幅せ
ずに制限エンドヌクレアーゼによる消化により調製される。ゲノムDNAをまず
単離する。次に、ゲノムDNAの特定領域をPCR増幅して標的配列をつくり、
そのまま分析されるか又は制限消化に供される。また、ゲノムDNAを制限エン
ドヌクレアーゼで切断して不連続分子量のDNA断片を生成する。
次に、上記の生成した標的配列(DNA断片)をアガロースゲルでサイズに応
じて分離し、ニトロセルロース又はナイロン支持体に移す(ブロットする)。慣
用の電気泳動は100〜30,000塩基対の範囲の断片を分離するが、パルス
フィールドゲル電気泳動は長さが2千万塩基対までの断片を分割する。次に、染
色DNAの直接可視化により個々の標的配列を含む膜上の位置を求める。他の態
様では、特定の標識核酸プローブとハイブリッド形成することにより配列移入が
求められる。
代替的実施態様においては、標的配列は、ドットブロット(スロットブロット
)装置を用いて固体マトリックス(ニトロセルロース膜)上に直接固定化し、プ
ローブハイブリッド形成で分析する。米国特許第4,582,789号及び同第4,617,261
号参照。
固定化標的配列は、長さが約20ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド
の合成DNAオリゴマーである対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)
プローブでプロービングすることにより分析される。それらのプローブは、ゲノ
ム内にユニークな配列を表すのに十分な長さであるが、標的分子に対するハイブ
リッド形成において内部ミスマッチによって不安定にするには十分に短い。従っ
て、単一のヌクレオチドで異なる配列は、注意して制御されたハイブリッド形成
条件下にASOプローブと正常又は変異体標的間のハイブリッドの異なる変性挙
動により識別される。
(2)溶液中の標的配列の検出
核酸精製又は固定化を必要としない数種の迅速な技術が開発された。例えば、
プローブ/標的ハイブリッドは、二本鎖核酸を優先的に結合するヒドロキシルア
パタイトのような固体マトリックス上で選択的に単離される。また、プローブ核
酸は、固体支持体上に固定化され、溶液からの標的配列を捕捉するために用いら
れる。標的配列の検出は、競合型分析では標的配列によって支持体から置き換え
られるか或いはサンドイッチ型分析では標的配列の架橋作用によって支持体に結
合される第2標識プローブによって達成される。
オリゴヌクレオチド連結反応分析(OLA)においては、選ばれた2つの合成
オリゴヌクレオチド配列を共有結合するために酵素DNAリガーゼが用いられる
ので正確な頭−尾並列で標的配列を塩基対合することができる。2つのオリゴマ
ーの連結反応は、結合領域のミスマッチヌクレオチドの存在によって妨げられる
。その方法は、DNA精製を必要とせずに細胞の試料における既知の配列変異体
間で区別を可能にする。2つのオリゴヌクレオチドの接合部は、2つのオリゴヌ
クレオチドの1つを固定化しかつ第2標識オリゴヌクレオチドが捕捉されるかを
観察することによりモニターされる。
(3)塩基置換の検出の走査技術
3つの手法が、未知の単一ヌクレオチドの置換又は他の配列相違について長さ
が数百塩基対のプローブ/標的二重らせんの分析を可能にする。リボヌクレアー
ゼ(RNase)A法では、標的RNA又はDNA配列に対してミスマッチする
位置で酵素が標識RNAプローブを切断する。断片がサイズに応じて分離され、
突然変異の近似する位置が同定される。米国特許第4,946,773号参照。
変性勾配ゲル法では、増加強度の変性勾配の電気泳動によりプローブ−標的D
NA二重らせんを分析する。変性は、泳動速度の減少により達成される。塩基対
がミスマッチした二重らせんは、完全にマッチした二重らせんより急速に変性す
る。
3番目の方法は、ミスマッチした塩基対の化学切断による方法である。TとC
、
G又はT間のミスマッチ及びCとT、A又はC間のミスマッチは、ヘテロ二本鎖
で検出される。四酸化オスミウム(T及びCミスマッチ)又はヒドロキシルアミ
ン(Cミスマッチ)との反応に続いてピペリジンによる処理は、適切なミスマッ
チのプローブを切断する。
C.組成物
本発明は、また、エキソン10のヌクレオチドの位置205に遺伝子突然変異
を有するV因子遺伝子に由来する単離したポリヌクレオチド配列の組成物を提供
する。
本発明の組成物について本明細書で定義されるエキソン10の位置205に同
定された突然変異は、ヌクレオチドの位置1691を含む対応するV因子cDN
A配列を包含する。企図された遺伝子突然変異は、グアニンヌクレオチドをアデ
ニンヌクレオチドに置き換えることである。
ポリヌクレオチド及びポリヌクレオチド配列とは、上記B1項で定義された。
本明細書に記載された組成物は、合成、単離、精製、PCR増幅らを含む慣用
の核酸手順により得られる。本明細書に記載されたポリヌクレオチド配列組成物
を含む増幅産物を生成するために供給したV因子核酸試料のPCR増幅を含む上
記本発明の方法で使用するために指定されたものを含む方法が特に好ましい。
好適実施態様においては、エキソン10のヌクレオチドの位置205に遺伝子
突然変異を有するV因子遺伝子に由来する単離したポリヌクレオチド配列は、長
さが約40ヌクレオチドから6909ヌクレオチドまでのヌクレオチド配列を含
んでいる。本発明の好ましい組成物の範囲内で好ましいポリヌクレオチド配列と
しては、配列番号7及び23に示されたヌクレオチド配列又はその断片を有する
ものが含まれる。個々の配列は、上記B2a項に記載されたものである。
また、ヌクレオチドの位置9からヌクレオチドの位置6917までの配列番号
28及び26に示されたcDNAヌクレオチド配列と共に実質的に配列番号3、
19に示されたゲノムDNAヌクレオチド配列からなる好ましい変異体ポリヌク
レオチド配列の組成物が企図される。個々の配列は、上記B2a及びB2b項に
記載されたものである。
本発明の他の企図された組成物は、本発明の増幅産物を生成するためにV因子
核酸を増幅するのに有用なポリヌクレオチドプライマーである。プライマーとは
、上記B1項に定義されたものである。
好ましいポリヌクレオチドプライマーは、ヌクレオチドの位置25からヌクレ
オチドの位置30までの配列番号24に示されたヌクレオチド配列を有する。好
ましいプライマーは、エキソン10のヌクレオチドの位置205にグアニンのア
デニンへの点突然変異を有するV因子遺伝子にHindIII制限エンドヌクレ
アーゼ部位を含む増幅産物を生成することができる。特に好ましいポリヌクレオ
チドプライマーは、実質的に配列番号24に示されたヌクレオチド配列からなる
。
D.診断キット
本発明は、また、上記の診断法及び組成物に従って患者のゲノムDNA又はm
RNA核酸試料において活性プロテインC耐性と関連があるV因子遺伝子中の遺
伝子突然変異の検出に有用な好ましくはキット形態の診断系を企図する。従って
、診断キットは、本発明の方法で行われるゲノムDNA及びcDNAをスクリー
ニングするのに有効である。
キットは、V因子遺伝子のヌクレオチドの位置205を含む増幅産物のPCR
により生成することができる第1プライマー及び第2プライマーを含む1対のプ
ライマーを少なくとも1回の分析で行うのに十分な量で含む。本明細書で定義さ
れるその点での突然変異は、グアニンヌクレオチドのアデニンヌクレオチドへの
点突然変異を企図する。本明細書に示されるV因子ゲノムDNAのエキソンの位
置で表される突然変異の位置は、V因子cDNAの対応する位置を包含する。
診断キットの1態様では、プライマーは別々の容器に入っている。他の態様で
は、プライマー対は同じ容器内に保持されている。キット内に含まれるポリヌク
レオチドプライマーは、供給された核酸試料からDNA産物を増幅することがで
きる。従って、プライマーは、活性プロテインC耐性と関連があるV因子遺伝子
の遺伝子点突然変異の有無を検出することを可能にする核酸配列の予め選ばれた
領域の増幅用に設計される。V因子ゲノムDNA及びcDNAの両者を増幅する
プライマー対が好ましい。ゲノムDNAを増幅する特に好ましいプライマー対と
しては、配列番号4と5、及び配列番号4と24の対合ヌクレオチド配列を有す
る第1プライマーと第2プライマーが含まれる。cDNAを増幅する特に好まし
いプライマーは、配列番号10及び11に示された配列を有するプライマー対で
ある。
別の実施態様においては、診断キットは、更に、配列番号2、18及び27に
示されるヌクレオチド配列を有する正常なV因子遺伝子に由来する対照ポリヌク
レオチド配列を含んでいる。対照とは、言及した配列を有するポリヌクレオチド
断片が試験又は試料の核酸の制限消化パターンを供給された標準と比較する手段
を開業医に与える標準としてキット内に供給される。結果として、増幅した試験
産物がキット内に供給されたものに匹敵すること及び同じように消化されて等価
な制限消化産物を生じることが開業医により証明される。従って、正常な対照ポ
リヌクレオチド配列は、患者の試料中本発明の点突然変異の有無を求める手段と
して患者の試験試料と比較するために含まれる。好ましい正常ポリヌクレオチド
配列及び各制限エンドヌクレアーゼ特異性は、上記B2項で述べられたものであ
る。
本発明の診断キットは、更に、エキソン10のヌクレオチドの位置205に遺
伝子突然変異を有するV因子遺伝子に由来する対照ポリヌクレオチド配列を含む
。好ましい対照突然変異ポリヌクレオチド配列としては、配列番号3、19及び
28に示されるものが挙げられる。上記正常対照配列とのように、変異体対照ポ
リヌクレオチド配列は、患者試料において本発明の点突然変異の有無を求める手
段として患者試験試料と比較するために含まれる。好ましい正常対照ポリヌクレ
オチド配列及び各制限エンドヌクレアーゼ特異性は上記B2項に記載されたもの
である。
典型的には、包装された試薬の使用説明書も含まれる。
“使用説明書”は、典型的には試薬濃度又は混合される試薬と試料の相対量、
試薬/試料混合物の維持時間、対照ポリヌクレオチド配列の使用、温度、バッフ
ァー条件等の少なくとも1種の分析法パラメーターを記載している確実な表現が
含まれる。
診断キットを供給する1態様では、ポリヌクレオチドプライマーは検出可能な
標識で標識される。放射性元素は、有用な標識物質であり、本明細書で有効であ
る。具体的な放射能標識物質は、α線を放出する放射性元素である。32P、35S
及び33Pのようなそれ自体がα線を放出する元素は、α線放出放射性元素指示基
の1種である。32Pが特に好ましい。111インジウム又は3Hのようなβ放射体も
有用である。
本明細書に記載される診断系の試薬類、ポリヌクレオチド又は増幅剤は、溶液
、液体分散液又は実質的に乾燥した粉末、例えば、凍結乾燥形態として供給され
る。
診断系に関して本明細書に述べられる包装材料は、診断系に通常用いられるも
のである。
“包装”とは、本発明のポリヌクレオチドのような診断試薬を所定の制約内に
保持することができるガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン及びポリカーボネート)、紙、ホイル等の固体マトリックス又は材料を意
味する。従って、包装は、ビン、バイアル、プラスチック及びプラスチック−ホ
イルラミネートエンベロープ又は企図された診断試薬を含むように用いられる類
似容器とすることができる。
本発明の分析に有用な材料は、理想的には、少なくとも1回の分析を行うのに
十分な量を有するキットの調製に適当であるものである。かかるキットは、バイ
アル、チューブ等の1個以上の容器手段を密閉した状態で与える仕切られている
運搬手段を含むことができ、容器手段の各々は本方法に用いられるべき別個の要
素の1つを含んでいる。例えば、容器手段の1つは検出可能に標識されるか又は
又は標識することができる本発明のポリヌクレオチドを含むことができる。キッ
トは、また、診断法を行うために用いられる任意の他の上記ポリヌクレオチド試
薬を含む容器を含んでいることができる。実施例
下記の実施例は、具体的に説明するものであり決して明細書及び請求の範囲を
限定するものとして解釈されるべきではない。
1.APC耐性患者からのゲノムDNA及びcDNAにおけるグアニンのアデニ ンへの点突然変異の検出
関連しない患者及び関連した患者両者におけるAPC耐性の遺伝子の根拠を求
めるために、V因子遺伝子のヌクレオチド配列を下記のように決定した。更に、
患者においてAPC耐性の遺伝子の根拠を求めるために別の分析を与えるスクリ
ーニング法を開発した。かかる決定を行うのに用いられる方法は、本明細書に記
載され、APC耐性に関連した同型接合及び異型接合双方の遺伝子型の検出を可
能にする。
A.ゲノムDNAの調製及びヌクレオチド配列決定
3人の息子が若い年齢で発症する再発静脈血栓症に罹った家族からの白血球か
ら高分子量DNAを抽出した。深部静脈血栓症(DVT)の診断は、APTT凝
固分析で測定したAPCに対する抗凝血剤応答によって3人の患者において3人
のうち2人がAPC耐性であるので十分に確立された。
再発血栓症をもつ2人の息子及びいままでのところ無症候性の2人の娘のAP
C比は、1.2未満かそれに等しい。正常なAPC比は、男性で≧2.19及び女
性で≧1.94である。最後の妊娠と関連してDVTに罹った母親と父親の各々
のAPC耐性比は、1.6及び2.0であった。プロテインC、プロテインS及び
抗トロンビンIIIのレベルは、それらの個体において正常な範囲内であった。
息子の1人は、経口抗凝血剤で慢性的に維持されたのでAPC耐性を試験しなか
った。ワルファリンのような経口抗凝血剤の使用は、はじめに記載されたAPT
T試験を用いてAPC耐性の正確な決定を得る能力を妨害する。
上記B項で述べ本明細書で分析したように、異型接合対立遺伝子の遺伝子型に
おける変異体対立遺伝子はV因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置2
05のヌクレオチドがグアニンからアデニンへの変化として特徴づけられた点突
然変異を有する。エキソン10の突然変異部位がヌクレオチドの位置205と言
われることに対してとられた約束は、B項で述べた。また、同じヌクレオチドの
位置に正常なグアニンヌクレオチドをもつ正常な対立遺伝子も異型接合遺伝子型
に存在する。
同型変異体遺伝子型では、両者の対立遺伝子は変異体である。言い換えれば、
両者の対立遺伝子は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205
にグアニンからアデニンへのヌクレオチドの変化がある。
同型接合正常遺伝子型では、両者の対立遺伝子は正常である。言い換えれば、
両者の対立遺伝子はV因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205に
グアニンがある。
従って、上記のヌクレオチド配列の決定に基づいてV因子遺伝子のエキソン1
0のヌクレオチドの位置205の正常及び変異体対立遺伝子の有無を分析するた
めに、APC耐性家族から採血し、ACD抗凝血剤で抗凝血し、24時間以内に
処理した。静脈血栓症に罹った家族において、最も最近の血栓症エピソードの少
なくとも3ヵ月後の試料を入手した。沈降した赤血球、単核細胞及び多核細胞を
再懸濁し、冷却した0.14M PBS、pH7.4で出発血液容量と等しい容量で
希釈した。低内毒素フィコール−ハイパック(Sigma,ミーズリー州セントルイス
)で400×g、18℃で10分間遠心分離することにより希釈細胞懸濁液から
末梢血白血球を回収した。次に、沈降した白血球を再懸濁し、高分子量DNA源
に用いた。
本発明を行うのに用いられるプライマーは、製造業者の説明書に従って、アプ
ライドバイオシステムス381A DNAシンセサイザーで合成した。
Lindblomら,Gene Anal .Tech.,5:97,1988に記載されるように末梢血試料か
らゲノムDNAを単離した。次に、50μlのゲノムDNAからの2μlを、10
0ピコモルの配列5′-CATACTACAGTGACGTGGAC- 3′(配列番号4)を有する5′
センスプライマー(第1プライマーとも呼ばれる)、FV7、100ピコモルの
配列5′-TGCTGTTCGATGTCTGCTGC- 3′(配列番号12)を有する3′アンチセン
スプライマー(第2プライマーとも呼ばれる)、FV8A及び最終濃度の各々2
00nMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、1×Taqポリメラーゼ
バッファー(Promega,ウィスコンシン州マディソン)、2mMMgCl2及び0.5
単位のTaqポリメラーゼバッファー(Promega,ウィスコンシン州マディソン)
を含有する40μlのPCR反応混合液で希釈した。
5′センスプライマー、FV7は、図5A(配列番号15)に示されるV因子
遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置115〜134に対応する。3′プ
ライマー、FV8Aは、V因子エキソン11のヌクレオチドの位置4〜23に対
応する。反応混合液に鉱油を重ね、30サイクルの増幅に供した。各増幅サイク
ルとしては、94℃で1分間の変性、60℃で2分間のアニーリング及び72℃
で3分間の伸長に続いて2サイクルの60℃で2分間のアニーリング及び72℃
で3分間の伸長が含まれた。反応混合液から増幅プライマーを取り出した後、ウ
ィザードPCRプレプカラムを用いて製造業者の条件に従って(Promega,ウィス
コンシン州マディソン)ヌクレオチド配列を決定した。
得られた増幅産物は、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置11
5〜215、イントロン10のヌクレオチドの位置1〜3100及びエキソン1
1のヌクレオチドの位置1〜23に対応するゲノムDNAの一部から構成された
(Cripeら,Biochem.31:3777,1992)。増幅ゲノムDNA産物の長さは、約32
00塩基対であった。
得られた増幅DNAのヌクレオチド配列を決定するために、35S−dATP(A
mersham,イリノイ州アーリントンハイツ)を取り込む配列決定反応は、fmolサイ
クルシークエンシングキット(Promega,ウィスコンシン州マディソン)及びV因
子特異的プライマーFV23(5′-ATCGCCTCTGGGCTAATAGG- 3′、配列番号22)
を用いて鋳型の精製せずに行った。FV23プライマーは、V因子遺伝子のエキ
ソン10のヌクレオチドの位置147〜166に対応する(図5A及び配列番号
15)。
APC耐性をもつ2人の患者のV因子遺伝子に由来する増幅産物から直接決定
したヌクレオチド配列は、2つの異常の1つを示した。まず、V因子遺伝子のエ
キソン10のヌクレオチドの位置205に対応する配列決定用ゲルに2つのバン
ドが見られ、正常なグアニンヌクレオチドと異常なアデニンヌクレオチドの双方
がV因子ゲノムDNAのエキソンのヌクレオチドの位置205にあることを示し
た。従って、1人の患者について点突然変異の異型接合対立遺伝子状態が確認さ
れた。第2に、V因子ゲノムDNAのエキソン10のヌクレオチドの位置205
に対応する配列決定用ゲルに1つのバンドが見られ、異常なアデニンヌクレオチ
ドのみ見られた。従って、もう1人の患者について点突然変異の同型接合変異体
対立遺伝子状態が確認された。
上で調製されたV因子ゲノムDNA増幅産物のヌクレオチド配列決定の結果か
ら、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205にグアニンからア
デニンへの点突然変異を含む変異体対立遺伝子が正常な対立遺伝子と同じである
ことがわかった。
B.APC耐性点突然変異の存在を決定するために増幅したV因子ゲノムDNA とインキュベートしたMnlIから制限消化断片の分析
異なるプライマー対を用いて実施例1Aに記載されたようにエキソン10のヌ
クレオチドの位置205を含む長さが短い増幅産物を生成した。次に、本明細書
に記載されるように、それらの短い産物をMnlIで消化してエキソン10のヌ
クレオチドの位置205のグアニンのアデニンへの点突然変異の有無の決定を可
能にした。
APC耐性遺伝子型は、また、V因子遺伝子のエキソン10において制限エン
ドヌクレアーゼ、MnlIによる制限多形性によって確認される。V因子遺伝子
のエキソン10のヌクレオチドの位置205にグアニンを有する正常な対立遺伝
子は、制限エンドヌクレアーゼMnlIの制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。
V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205のグアニンがアデニン
に変化した変異体対立遺伝子は、制限エンドヌクレアーゼMnlIの制限エンド
ヌクレアーゼ部位を含まない。V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位
置205は、MnlI制限部位のヌクレオチド配列の中にに含まれる。
その多形性の有無は、制限エンドヌクレアーゼMnlIの存在下にV因子遺伝
子のエキソン10のヌクレオチドの位置205に隣接している領域を含むDNA
をインキュベートすることにより検出される。
MnlIは、特定の二本鎖ヌクレオチド配列(制限エンドヌクレアーゼ認識部
位又は認識部位)を認識しかつ認識部位内に含まれないヌクレオチド配列内の位
置で二本鎖DNAの両鎖を切断するI型制限エンドヌクレアーゼである。
多くのI型制限エンドヌクレアーゼは、ランダムなヌクレオチドの位置で二本
鎖DNAを切断し、ランダムな数のヌクレオチドを含む制限産物を生成する(Kle
idら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 73:293,1976; Visselら,Nucl .Acids.Re s.
16:4731,1988)。しかしながら、MnlIは特定のヌクレオチドの位置で二
本鎖DNAを切断することがわかった(Brinkleyら,Gene 100:267,1991)。従
って、MnlI制限産物は特定の数のヌクレオチドを含んでいる。
一般に用いられるII型制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、パリンドロー
ムでないI型制限エンドヌクレアーゼと対照的にパリンドロームである。
慣例により、MnlIの認識部位は次のような二本鎖ヌクレオチド配列で表さ
れる。
5′-CCTCNNNNNNN- 3′(配列番号20)
3′-GGAGNNNNNN- 5′(配列番号21)
式中、Nは任意のヌクレオチドである(Brinkleyら,Gene 100:267,1991)。
MnlIの認識部位を逆にすると、次のような2本鎖ヌクレオチド配列で表さ
れる。
5′-NNNNNNGAGG- 3′(配列番号21)
3′-NNNNNNNCTCC- 5′(配列番号20)
式中、Nは任意のヌクレオチドである。
従って、図5Aに示されるヌクレオチドの位置199〜208のV因子遺伝子
のエキソン10(配列番号15)及びヌクレオチドの位置1685〜1694の
V因子cDNAのcDNA(図1A〜図1J及び配列番号13)のコーディング
鎖ヌクレオチド配列5′-ACAGGCGAGG- 3′(配列番号6)は、配列番号21に示
される逆方向MnlI認識配列に対応する。結果として、MnlIによる切断パ
ターンは上に示された3′の1塩基対突出部分を生じる。
断片サイズを求めるためにとられた約束は、上記ヌクレオチド配列の特異性の
いずれかをもつことができる増幅産物のコーディング鎖又はセンス鎖のMnlI
制限消化切断に基づいている。例えば、V因子からの増幅したゲノム或いはcD
NAについて下記で述べられるように、5′MnlI部位はコーディング鎖に3
′の1塩基突出部分を有するがエキソン10にヌクレオチド205(cDNAで
はヌクレオチド1691)を含む3′MnlI部位はちょうど逆で非コーディン
グ鎖又はアンチセンス鎖に3′の1塩基突出部分を有する。従って、3′Mnl
I部位のコーディング鎖は短い切断産物である。コーディング鎖の切断部位に基
づきMnlI消化から得られた制限産物を算出すると、二本鎖MnlI部位によ
って+1塩基か或いは−1塩基である。
正常なV因子DNAに存在する配列は、cDNA配列のエキソン10及び16
91のヌクレオチドの位置205にグアニンヌクレオチドを必要とするMnlI
認識部位を示す二本鎖DNAを与える。
結果として、下記に示されるように、V因子インキュベートのエキソン10の
ヌクレオチドの位置199〜208にMnlI認識部位を含む対立遺伝子は正常
な対立遺伝子である。正常な対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物は、
MnlIの存在下に切断されて制限産物を生じる。
従って、ヌクレオチドの位置205のV因子遺伝子のエキソン及びヌクレオチ
ドの位置1691のV因子cDNAのグアニンからアデニンへのMnlI認識部
位を示すヌクレオチド配列の変化は、MnlI認識部位を消失する。結果として
、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置199〜208にMnlI
認識部位を含まない対立遺伝子は変異体対立遺伝子である。図5B(配列番号1
6)は、かかる変異体対立遺伝子のエキソン10のヌクレオチド配列を示す図で
ある。従って、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置199〜20
8にMnlI認識部位を含まない変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増
幅産物は、MnlIの存在下にその部位で切断されない。
異型接合遺伝子型では、正常及び変異体両者の対立遺伝子の存在は、制限エン
ドヌクレアーゼMnlIの存在下に正常及び変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に
由来する増幅産物のインキュベーションの際に切断及び非切断DNA双方の各存
在によって検出される。
同様に、双方の対立遺伝子が変異体である同型接合変異体遺伝子型では、制限
エンドヌクレアーゼMnlIはV因子遺伝子のエキソン10の位置205で切断
しない。従って、同型接合変異体遺伝子型は、変異体対立遺伝子のV因子遺伝子
に由来する増幅産物のエキソン10にヌクレオチドの位置205を含むMnlI
制限エンドヌクレアーゼ部位のないことにより検出される。
実施例1Aで述べられたように、前に記載したプライマー対は正常な対立遺伝
子に天然に存在するMnlI部位を有するヌクレオチド領域を増幅した。
引き続き制限消化分析用に小さい増幅産物を増幅するために、実施例1Aに記
載された5′センスプライマー、FV7(配列番号4)をヌクレオチド配列5′-
TGTTCTCTTGAAGGAAATGC- 3′(配列番号5)を有する3′アンチセンスプライマ
ー、FVINT102と対合した。5′プライマー、FV7は、V因子遺伝子の
エキソン10のヌクレオチドの位置115〜134に対応する(図2A及び
2B)。3′プライマー、FVINT102は、V因子イントロン10のヌクレ
オチドの位置86〜105に対応する。
ゲノムDNAは、実施例1Aに記載された家族から単離された。次に、50μ
lの単離したゲノムDNAの2μlを、100ピコモルの3′アンチセンスプライ
マー、FVINT102及び最終濃度の各々200nMのdATP、dCTP、d
GTP及びdTTP、1×Taqポリメラーゼバッファー(Promega,ウィスコン
シン州マディソン)、1.5mMMgCl2及び0.5単位のTaqポリメラーゼ(Pro
mega,ウィスコンシン州マディソン)を含有する50μlのPCR反応混合液で希
釈した。反応混合液に鉱油を重ね、30サイクルの増幅に供した。各増幅サイク
ルとしては、94℃で1分間の変性、60℃で2分間のアニーリング及び72℃
で2分間の伸長が含まれた。また、2サイクルの60℃で2分間のアニーリング
及び72℃で3分間の増幅が行われた。
プライマーFV7及びFVINT102によるゲノムPCR増幅によって生成
された増幅産物のコーディング鎖の正常及び変異体ヌクレオチド配列を各々図2
A及び2Bに示す。正常及び変異体対立遺伝子の増幅産物は、長さが206塩基
対であった。
次に、50μlの正常又は変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産
物の10μlを、1×バッファーNo.2(New England Biolabs,マサチューセッツ
州ビバリー)、1.65×ウシ血清アルブミン(New England Biolabs,マサチュー
セッツ州ビバリー)及び1.7単位のMnlI制限エンドヌクレアーゼ(New Engla
nd Biolabs,マサチューセッツ州ビバリー)を含む20μlの消化系に37℃で2
時間維持した。10μlの消化産物をゲル充填色素バッファーと混合し、0.5%
(w/v)アガロースを含む3%(w/v)ヌーシーブアガロース(FMC)からなるアガ
ロースゲルによる電気泳動で分子量に応じて分離した。
更に、V因子遺伝子のヌクレオチドの位置205を有するDNA領域を増幅す
るプライマーFV7及びFVINT102を、図2Aに示されるV因子遺伝子の
エキソン10のヌクレオチドの位置152〜162に第2MnlI制限エンドヌ
クレアーゼを含むゲノムDNA領域を増幅するように設計した。前に定義された
ように、その第2MnlI制限部位は5′からヌクレオチドの位置205を含む
MnlI部位まで位置するので5′MnlI部位と呼ばれる。従って、後者の部
位は3′部位と呼ばれる。正常及び変異体対立遺伝子双方のV因子遺伝子に由来
する増幅産物における第2MnlI制限エンドヌクレアーゼの存在は、本明細書
に記載されるように調製された増幅産物がMnlI制限酵素の存在下にインキュ
ベートした場合に切断することができて制限産物を生じることを証明する対照を
与える。
ゲノムDNA増幅産物のMnlI制限消化の結果を図4に示す。アガロースゲ
ルの写真は、制限エンドヌクレアーゼMnlIの存在下にインキュベートし電気
泳動で分離したV因子インキュベートのエキソン10のヌクレオチドの位置20
5を含むゲノムDNAの一部を示すDNAを含むものである。レーン1は、塩基
対(bp)に示されたDNA分子量マーカーである。レーン2、4、5及び6は
、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205の点突然変異に対し
て異型接合であるAPC耐性患者から単離した増幅ゲノムDNAである。レーン
3は、正常又は非変異体対立遺伝子に対して同型接合である正常な患者から単離
した増幅ゲノムDNAである。
双方の対立遺伝子が正常な対立遺伝子でありかつV因子遺伝子のエキソン10
のヌクレオチドの位置205に点突然変異を含まない同型接合態では、正常な対
立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物はV因子遺伝子のエキソン10のヌ
クレオチドの位置205を含むMnlI制限エンドヌクレアーゼ部位で切断され
た。正常な対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物は、また、上記の他の
未変性MnlI制限エンドヌクレアーゼ部位で切断された。
正常な対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する206塩基対増幅産物(図2A及
び配列番号2)をMnlI制限エンドヌクレアーゼ部位の双方で切断することに
より各々図4、レーン3に示される3種の制限産物37、47及び122が得ら
れた。MnlIによる切断パターンが前に述べたように3′の1塩基対突出部分
を生じるので、断片サイズを決定するためにとられた約束は増幅産物のコーディ
ング鎖又はセンス鎖のMnlI制限消化切断に基づいている。
従って、増幅産物の1塩基3′突出部分を有する5′MnlI部位で消化する
ことにより47塩基対断片が得られた。1塩基の3′突出部分のない3′Mnl
Iで消化すると5′と3′MnlI部位間に37塩基対断片が生成した。残りの
122塩基対の断片は、増幅産物の3′MnlI部位から3′端まで伸長する。
3つの断片がいっしょになって206塩基対の増幅産物を生じる。
2つの小さな断片は、示されるように再現した図面では明らかではない。しか
しながら、3つの異なるバンドの存在は最初のゲル標品において直接可視化され
、第1及び第2MnlI制限エンドヌクレアーゼ部位の双方がV因子ゲノムDN
増幅産物で消化されることが示され、後者は配列番号2及び図2Aに示されたヌ
クレオチド配列を有した。
切断されなかったヌクレオチドの位置205を有する5′のMnlI部位まで
のMnlI部位があれば、各々84及び122塩基対である2つの制限断片産物
を生じる。従って、84塩基対は上記消化において各々がMnlI消化の特異性
を反映する37及び47塩基対の2つの断片に切断した。
正常な対立遺伝子の増幅産物の消化と対照的に、変異体対立遺伝子からの増幅
産物をMnlI消化することにより各々47及び159塩基対のみの2つの制限
断片産物が得られた。前に述べたように、エキソン10のヌクレオチドの位置2
05のMnlI部位はグアニンのアデニンへの点突然変異が存在する場合には破
壊される。従って、変異体増幅産物は5′の破壊される部位までに位置する他の
MnlI制限部位のみ有する。
正常又は変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物の切断及び切断
の欠徐を、制限エンドヌクレアーゼMnlIの存在下に増幅産物のインキュベー
ションに続いて制限産物の数及び分子量を可視化することにより求めた。
MnlI消化がないとすれば、図2B及び配列番号3に示される増幅変異体産
物は合計206塩基対の制限産物を有する。5′MnlI制限部位のMnlI消
化においては、変異体増幅産物の切断により159及び47塩基対の2つの制限
産物を生成することがもたらされた。ゲルがこれら2つだけの断片を含む場合に
は、同型変異体対立遺伝子状態が確認される。
上記からの別々の制限消化パターンを組合わせると図4のレーン2、4、5及
び6に示される正常及び変異体両者の対立遺伝子を有する異型接合態のプロファ
イルが提示される。37、47、122及び159塩基対の各制限産物の存在は
、
正常及び変異体両者の対立遺伝子の予想した結果を示し、異型接合態が確認され
る。37及び47塩基対制限産物の分割はアガロースゲルの写真で可視化するこ
とが難しいが、最初のゲル標品において観察された。122及び159塩基対バ
ンドは、図4では容易に可視化される。
従って、患者のゲノムDNAのV因子遺伝子に由来するPCR増幅産物のMn
lI制限消化分析は、同型接合正常、同型接合変異体と異型接合の対立遺伝子状
態間で識別する能力を与える。
C.ゲノムDNAからの増幅産物の調製及びグアニンのアデニンへの点突然変異
の存在を同定するHindIII制限部位の検出
V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205でグアニンヌクレオ
チドがアデニンヌクレオチドに変化する点突然変異の存在は、ゲノムDNAから
増幅産物の調製及び引き続き遺伝子操作したHindIII制限部位の検出によ
っても検出される。
B2項に記載されたように、グアニンのアデニンへの点突然変異の有無を求め
るのに用いられるHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位は、正常或いは変
異体V因子対立遺伝子のその位置に存在しない。従って、HindIIIプライ
マーは、変異体対立遺伝子に存在するが正常な対立遺伝子に存在しないHind
III部位を生じる3つの点突然変異の付随する導入により変異体対立遺伝子に
存在するアデニン突然変異を利用するように設計される。
HindIIIは、特定の二本鎖ヌクレオチド配列(制限エンドヌクレアーゼ
認識部位又は認識部位)を認識しかつ認識部位の中の位置で二本鎖DNAの両鎖
を切断するII型制限エンドヌクレアーゼである。
II型制限エンドヌクレアーゼHindIII(HindIII)は、下記の
配列で表される二本鎖DNAを認識する。
5′-AAGCTT- 3′(配列番号23)
制限エンドヌクレアーゼHindIIIの存在下に配列番号23に示された配
列を含む二本鎖DNAをインキュベートすると、下記の構造を生成するDNAの
両鎖の切断が生じる。
5′-A- 3′
3′-TTCGA -5′(配列番号23、5′→3′方向に示されたヌクレオ
チドの位置2〜6)。
II型制限エンドヌクレアーゼの特定の切断は、特定数のヌクレオチドを含む
制限産物を生成する。従って、特定数のヌクレオチドを含むHindIII制限
産物は、HindIIIの二本鎖DNAの切断によって生成される。
変異体対立遺伝子の下記のように生成された増幅産物のコーディング鎖のヌク
レオチド配列5′-AAGCTT- 3′(配列番号23)は、図7B(配列番号19)に
示されたV因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置205〜210に対
応する。従って、その配列はHindIII認識部位を表す二本鎖DNAの上側
又はコーディング単鎖である。
変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物は、制限エンドヌクレア
ーゼHindIIIの存在下にインキュベートするとヌクレオチドの位置205
で切断されて制限産物を生成する。
しかしながら、同じ位置に存在する対応する正常な対立遺伝子増幅産物のヌク
レオチド配列5′-GAGCTT- 3′(配列番号25)は、HindIII認識部位を
表さない。従って、正常な対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物は、制
限エンドヌクレアーゼHindIIIの存在下にインキュベートするとヌクレオ
チドの位置205で切断されない。
正常な対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物の切断の欠徐は、本明細
書に記載されるアクリルアミドゲル電気泳動で検出される単一のDNA断片を生
じる。
従って、異型接合及び同型接合遺伝子型の双方においては、変異体増幅対立遺
伝子(図7B及び配列番号19)はHindIII消化して増幅した正常対立遺
伝子(図7A及び配列番号18)の消化されない断片と比べて2つの異なる制限
断片を生成する。
点突然変異を有するDNAの領域を増幅するプライマーは、V因子遺伝子のエ
キソン10のヌクレオチドの位置205〜210を含むゲノムDNAの領域を増
幅するように設計される。第2プライマーとも呼ばれる3′アンチセンスプライ
マーは、正常な対立遺伝子がその領域に天然のHindIII部位をもたないの
でV因子遺伝子に由来する増幅産物にHindIII制限エンドヌクレアーゼ部
位の一部を導入するように設計される。
従って、HindIII部位を変異体対立遺伝子に導入するために、プライマ
ー対FV7(配列番号4)及びFV506tst2(配列番号24)が前に記載
されたようにPCRに用いられる。
5′センス又は第1プライマー、FV7は、実施例1Aに記載され、V因子遺
伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置115〜134に対応する(図7A及
び7B)。3′アンチセンス又は第2プライマー、FV506tst2はヌクレ
オチド配列5′-TTACTTCAAGGACAAAATACCTGTAAAGCT- 3′(配列番号24)を有す
る。3′プライマーは、V因子遺伝子のエキソン10のヌクレオチドの位置20
6〜215及びV因子遺伝子のイントロン10のヌクレオチドの位置1〜20に
対応する(図7A及び7B)。
3′プライマーは、また、V因子遺伝子に由来する得られた増幅産物にヌクレ
オチドの位置208〜210に対応する部位に3つの点突然変異を導入する。追
加の点突然変異は、正常対立遺伝子又は変異体対立遺伝子に本来は存在しない。
従って、それらの点突然変異は、増幅産物に導入されてエキソン10のヌクレオ
チドの位置205のアデニン点突然変異の存在に依存するHindIII制限エ
ンドヌクレアーゼ部位の一部を生じる(図7B)。
3′アンチセンスプライマーによって導入されたHindIII制限エンドヌ
クレアーゼ部位の一部と共に変異体対立遺伝子のV因子遺伝子のエキソン10の
ヌクレオチドの位置205のアデニンは、HindIII制限エンドヌクレアー
ゼ部位を生じる(図7B)。従って、HindIII制限エンドヌクレアーゼの
存在下にインキュベートすると変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅
産物が切断される。
言い換えると、3′アンチセンスプライマーによって導入されたHindII
I制限エンドヌクレアーゼ部位の一部と共に正常な対立遺伝子のV因子遺伝子の
エキソン10のヌクレオチドの位置205のグアニンはHindIII制限エン
ドヌクレアーゼ部位を生じない(図7A)。従って、HindIII制限エ
ンドヌクレアーゼの存在下にインキュベートすると、正常な対立遺伝子のV因子
遺伝子に由来する増幅産物が切断される。
プライマーFV7及びFV506tst2を用いてPCR増幅によって生成さ
れた増幅産物のヌクレオチド配列を、各々図7A及び7Bに示す。
HindIII部位を変異体対立遺伝子に導入するPCR増幅については、実
施例1Aに記載された50μlの単離したゲノムDNAの2μlを、100ピコモ
ルの5′センスプライマー、FV7、100ピコモルの3′アンチセンスプライ
マー、FV506tst2及び最終濃度の各々200nMのdATP、dCTP、
dGTP及びdTTP、1×Taqポリメラーゼバッファー(Promega,ウィスコ
ンシン州マディソン)、1.5mMMgCl2及び0.5単位のTaqポリメラーゼ(P
romega,ウィスコンシン州マディソン)を含有する50、μlのPCR反応混合液
で希釈した。反応混合液に鉱油を重ね、30サイクルの増幅に供した。各増幅サ
イクルとしては、94℃で1分間の変性、60℃で2分間のアニーリング及び7
2℃で2分間の伸長が含まれる。更に、2サイクルの60℃で2分間のアニーリ
ング及び72℃で3分間の増幅が行われる。
プライマーFV7及びFV506tst2による正常又は変異体対立遺伝子の
V因子遺伝子のPCR増幅により、長さが121塩基対の増幅産物が得られる。
次に、得られた50μlの正常又は変異体対立遺伝子のV因子遺伝子のエキソ
ン10及びイントロン10に由来する増幅産物の10μlを、1×バッファーNo.
2(New England Biolabs,マサチューセッツ州ビバリー)及び2単位のHind
III制限エンドヌクレアーゼ部位(New England Biolabs,マサチューセッツ州
ビバリー)を含む20μlの消化系に37℃で2時間維持した。10μlの消化産
物をゲル充填色素バッファーと混合し、アクリルアミドゲル電気泳動で分子量に
応じて分離した(Sambrookら,Molecular Cloning ,A Laboratory Manual,2nd e
d.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク,1989)。
従って、V因子遺伝子に由来する変異体及び正常増幅産物の各々の切断及び切
断の欠徐は、制限酵素HindIIIの存在下に増幅産物のインキュベーション
に続いて制限産物の数及び分子量を可視化することにより求められる。
正常対立遺伝子のV因子遺伝子のエキソン10及びイントロン10に由来する
増幅産物は、制限エンドヌクレアーゼHindIIIの認識部位を含まず、制限
酵素HindIIIの存在下にインキュベートすると切断される。増幅産物の切
断の欠徐は、121塩基対の単一DNA断片をもたらす。従って、HindII
I制限エンドヌクレアーゼ部位がないとV因子遺伝子の正常な対立遺伝子を同定
する手段を与える。
ヌクレオチドの位置208〜210の他のPCR導入点突然変異(コーディン
グ鎖又はセンス鎖の5′-GAA- 3′の5′-CTT- 3′)と共にV因子遺伝子のエキ
ソン10のヌクレオチドの位置205にアデニンヌクレオチドを有する変異体対
立遺伝子のV因子遺伝子に由来する増幅産物を制限酵素HindIIIの存在下
にインキュベートすると切断される。変異体対立遺伝子のV因子遺伝子に由来す
る増幅産物をHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位で切断すると、実施例
1Bに記載されたMnlI消化の約束のようにコーディング鎖又はセンス鎖に生
じた切断産物に基づいて長さが91及び30塩基対の2つの制限産物が得られる
。従って、遺伝子操作したHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位の存在は
、変異体対立遺伝子のV因子遺伝子を同定する手段を与える。
HindIII認識部位の一部を導入する正常又は変異体対立遺伝子のV因子
遺伝子に由来する増幅産物を生成するPCRの使用に続いてHindIII制限
エンドヌクレアーゼの存在下の増幅産物のインキュベーションは、V因子遺伝子
のエキソン10のヌクレオチドの位置205の点突然変異の有無を確認するため
に実施例1Bに記載されたMnlI消化による第1方法のほかの手段であり、A
PC耐性の患者の遺伝子根拠を同定する。
D.PCR増幅及び増幅したcDNA産物のヌクレオチド配列の決定
患者におけるAPC耐性の遺伝子根拠を求めるために、8人の関連のないAP
C耐性患者からのV因子cDNAのヌクレオチド配列を決定した。
標準ポリメラーゼ連鎖反応技術に続いて本明細書に記載されたヌクレオチド配
列決定を用いてヌクレオチドの位置1691にグアニンのアデニンへの点突然変
異を含むV因子cDNAの遺伝子突然変異を同定した。
逐次同定した関連のないAPC耐性患者からの末梢血試料を入手した。8人の
患者のうち6人が徴候があり、平均年齢29歳であった。6人の患者は、前に記
載された患者BBLSが含まれた(Griffinら,Blood 82:1989,1993; Sunら,Bl ood
83:3120,1994)。2人の追加の無症候性患者の年齢は、46歳と62歳であ
った。
上記の患者の各々のリンパ芽球から全細胞RNAを精製した。RNAスタット
60(TelTest“B”,テキサス州フレンズウッド)を用いて製造業者の推奨する手
順に従いACDに集めた全血のバフィーコートからRNAを調製した。血小板は
親の巨核球に由来するRNAを含むので、血小板を取り除くことを試みなかった
。単離したRNAを水に再懸濁した。
PCR増幅の調製において、上記のようにRNAを単離し、cDNAサイクル
キット(Invitrogen,カリフォルニア州サンジェエゴ)を用いてcDNA合成の鋳
型として用いた。50μl転写反応では、まず 0〜200ナノグラム(ng)のR
NAを250ngのオリゴヌクレオチドd(T)(オリゴdT)プライマーとアニール
した。次に一本鎖cDNAを、cDNAサイクルを用いて製造業者の推奨する手
順に従い第1鎖cDNA合成反応で合成した。次に、得られたcDNAの非コー
ディング鎖をV因子特異的プライマーを用いてPCR増幅の鋳型として用いた。
PCR増幅では、V因子遺伝子の3′のヌクレオチドの位置1691までの位
置のcDNAの非コーディング鎖に対してハイブリッド形成した第1プライマー
(例えば、FV7)及びプライマー拡張反応を、cDNAのコーディング鎖に対
応する増幅産物を生成するために開始した。V因子遺伝子の3′のヌクレオチド
の位置1691までの位置のcDNAの増幅コーディング鎖に対してハイブリッ
ド形成した第2プライマー(例えば、FV8A)を、cDNAの非コーディング
鎖に対応した増幅産物を生成するために開始した。
別の方法では、cDNAの非コーディング鎖を上記第1鎖合成反応の方法で生
成し、当業者に周知でありSambrookら,Molecular Cloning ,A Laboratory Manu al
,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク,
1989に記載されるcDNAライブラリーを作成するために一般に用いられる方法
の第2鎖合成反応でcDNAのコーディング鎖を作成する鋳型として用いた。次
に、得られた第1及び第2鎖を各々引き続き増幅反応におけるcDNAの非コー
ティング鎖及びコーティング鎖としての鋳型として用いる。
V因子軽鎖をコード化する配列は、プライマーFV9(5′-TGAGATCATTCCAAAGG
AAG- 3′、配列番号8)及びFV14(5′-TTGAGGTCTTAAAGAGTCTC- 3′、配列番
号9)を用いて増幅した。5′センス又はコーティングプライマーは、V因子c
DNAのヌクレオチドの位置4659〜4678に対応した。3′アンチセンス
又は非コーティングプライマーは、翻訳停止コドン後のV因子cDNAの3′非
翻訳領域の配列番号13(正常V因子cDNA全ヌクレオチド配列−図1Aから
1J参照)のヌクレオチドの位置6792〜6811に対応した。
連結領域をコード化するヌクレオチド配列は、軽鎖をコード化する5′のヌク
レオチド配列に位置する。
次に、2μlの合成cDNAを、各々200nMのdATP、dCTP、dGT
P及びdTTP、1.5mMMgCl2、1×Taqポリメラーゼバッファー(Prome
ga,ウィスコンシン州マディソン)及び0.5UのTaqポリメラーゼの最終濃度
中を100ピコモル(pmol)の5′センスプライマーFV9及び3′アンチセンス
プライマーFV14を含有する48μlのPCR反応混合液で希釈した。反応混
合液に鉱油を重ね、30サイクルの増幅に供した。各増幅サイクルとしては、9
4℃で1分間の変性、56℃で2分間のアニーリング及び72℃で3分間の伸長
が含まれる。
得られた増幅産物は、連結領域(配列番号13及び図1A〜図1Jに示された
ヌクレオチドの位置4659〜4808)の3′領域に対応しかつ翻訳停止コド
ンを含む軽鎖に対応する全ヌクレオチド配列(配列番号13に示されたヌクレオ
チドの位置4809〜6765)まで伸長したcDNAの配列の一部及び3′非
翻訳領域(配列番号13のヌクレオチド配列の位置6811で終わる)の小部分
を有した。増幅した産物は、長さが約2153塩基対であった。
V因子重鎖をコード化する配列を、プライマー対、FV13(5′-CAGGAAAGGAA
GCATGTTCC- 3′、配列番号10)及びFV2(5′-TGCCATTCTCCAGAGCTAGG- 3′、
配列番号11)を用いて増幅した。5′センスプライマー又は第1プライマー、
FV13は、5′非翻訳領域及び重鎖領域(図1A〜図1J及び図6A)の開始
をコード化するヌクレオチド配列の5′領
域の中の図1A〜図1J(配列番号13)に示されるV因子cDNAのヌクレオ
チドの位置78〜97に対応した。重鎖領域をコード化するヌクレオチド配列は
、連結鎖領域をコード化する5′のヌクレオチド配列に位置する。3′アンチセ
ンスプライマー又は第2プライマー、FV2は、V因子の重鎖領域(図1A〜図
1J及び図6A)のヌクレオチドの位置2355〜2374に対応した。
次に、2μlのcDNAを、100ピコモル(pmol)の5′センスプライマーF
V13及び3′アンチセンスプライマーFV2を含む軽鎖増幅に対して記載され
た48μlのPCR反応混合物で希釈した。
得られたV因子cDNAの重鎖領域に由来する増幅産物は、重鎖領域(ヌクレ
オチドの位置91〜2301)に対応する全ヌクレオチド配列まで伸長したV因
子cDNAの3′非翻訳領域のヌクレオチドの位置78〜90に対応するV因子
cDNAの一部、及び連結領域の一部に対応するヌクレオチド配列のヌクレオチ
ドの位置2302〜2374を有した。正常及び変異体増幅産物は、各々図6A
(配列番号27)及び図6B(配列番号28)に示されたように長さが約229
7塩基対であった。
図示されたグアニン又はアデニンヌクレオチドは、上記図面及び配列のヌクレ
オチドの位置1614に対応する。しかしながら、その位置は実際には無傷V因
子cDNAの位置1691である。無傷V因子cDNAでの1691に比べて配
列番号27及び28では1614であるグアニンのアデニンヌクレオチドのヌク
レオチドの位置の違いの根拠は、配列番号27及び28に示された増幅cDNA
の番号をつける配列表の慣例から生じるものである。5′プライマー、FV7は
無傷cDNAではヌクレオチドの位置78で始まるので、増幅した配列が配列表
に別個に示される場合にその位置は対応してヌクレオチドの位置No.1となる。
上記の配列は、また、突然変異部位に対応する“N”ヌクレオチドを有する配
列番号17に示された1配列に編集されており、Nはグアニン或いはアデニンで
あり、そのNは無傷V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応するヌ
クレオチドの位置1614に位置する。
得られた増幅産物のヌクレオチド配列を決定するために、鋳型を精製せずに35
S−dATP(Amersham,イリノイ州アーリントンハイツ)を取り込む配列決
定反応を行った。別の配列決定では配列がV因子cDNAのヌクレオチド配列に
基づく数種の異なるプライマーを用い、fmolサイクル配列決定キットを用いて製
造業者の推奨する手順に従い(Promega,ウィスコンシン州マディソン)増幅産物
のヌクレオチド配列を決定した。
図1A〜図1J(配列番号13)に示された正常なV因子cDNAのヌクレオ
チドの位置1691、6727及び5380に3個のヌクレオチドの相違が観察
され、そのヌクレオチドの位置でコード化されるアミノ酸残基の変化の原因とな
った。cDNA配列の番号をつけるための約束は、Jennyらに記載されたもので
あり、図1の図面の説明文に十分に述べられている。
V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691の点突然変異は、配列決定ゲル
の2つのバンドの存在によって同定された。2つのバンドは、V因子cDNAの
ヌクレオチドの位置1691の正常なグアニンヌクレオチド及び変異体アデニン
ヌクレオチドの双方を示した。従って、その患者のV因子遺伝子に対して点突然
変異の異型接合対立遺伝子状態を求めた。V因子cDNAのヌクレオチドの位置
1691の点突然変異は、位置506の本来コード化されたアミノ酸残基をアル
ギニンからグルタミンに変化することが予想される。
点突然変異は、また、コード化されたアミノ酸に影響するヌクレオチドの位置
6727と5380で同定された。位置6727の正常ヌクレオチド、アデニン
はグアニンに変化し、位置2185の本来コード化されたアミノ酸残基をトレオ
ニンからアラニンに変化させた。位置5380の正常ヌクレオチド、グアニンは
、アデニンに変化し、位置1736の本来コード化されたアミノ酸残基をバリン
からメチオニンに変化させた。
プライマー対FV13とFV2による増幅から増幅した正常及び変異体cDN
A双方のヌクレオチド配列を、各々図6A(配列番号27)及び図6B(配列番
号28)に示す。
従って、APC耐性をもつ患者からのV因子cDNAのヌクレオチド配列を決
定すると、2つの他の突然変異の中でV因子cDNAのヌクレオチドの位置16
91にグアニンヌクレオチドのアデニンヌクレオチドへの変化として特徴づけら
れたあるユニークな点突然変異が同定された。V因子cDNAのヌクレオチ
ドの位置1691は、V因子ゲノムDNAのエキソンのヌクレオチドの位置20
5に対応する。
V因子cDNA及び対応するゲノムDNAのヌクレオチドの位置1691のヌ
クレオチドの相違は、APC耐性の遺伝子根拠を表すものである。ヌクレオチド
の位置1691によって部分的にコード化された位置506のアミノ酸残基アル
ギニンと位置507のアミノ酸残基グリシン間のペプチド結合の最初の結合はV
a因子の不活性化でAPCにより切断した。従って、APCで切断するアミノ酸
位置506のアミノ酸残基アルギニンの代わりにアミノ酸残基グルタミンを含む
Va変異体の実験耐性は、生化学レベルで容易に合理化される(Sunら,Blood 83
:3120,1994)。APC耐性の優性伝達も容易に理解される(Dahlbackら,Proc .N atl.Acad.Sci.USA
90:1004,1993; SVvenssonら,N .Engl.J.Med.330:517
,1994)。
対照的に、ヌクレオチドの位置6727及び5380のヌクレオチドの相違は
、コード化されたアミノ酸残基のはっきりしない変化を表し、APC耐性を生じ
ない。
RNAも、関連のあるAPC耐性患者から単離され、cDNAに変えられ、P
CRで増幅してヌクレオチド配列決定の鋳型を与える。5′非翻訳及び連結領域
の一部を含むV因子重鎖及び連結及び3′非翻訳領域の一部を含むV因子軽鎖領
域を、別の反応で増幅した。
上記実施例1Aに述べられた家族の各人からのリンパ芽球からの全細胞RNA
を上記のように精製した。上記のようにRNAをcDNAに変えた。
V因子軽鎖をコード化するヌクレオチド配列を、上記のプライマーFV9(配
列番号8)及びFV14(配列番号9)を用いて増幅した。
V因子cDNAの重鎖領域をコード化するヌクレオチド配列も、プライマーF
V13(配列番号10)及びFV2(配列番号11)を用いて上記のように増幅
した。プライマー対FV13及びFV2による増幅から増幅した正常及び変異体
cDNAの双方のヌクレオチド配列は、各々上記配列番号27及び28に示され
る。
DVTをもつ家族からのV因子cDNAの重鎖領域に由来する得られた増幅産
物から直接求めたヌクレオチド配列は、2つの異常のうちの1つを示した。cD
NA28のヌクレオチドの位置1691に対応する2つのバンドが配列決定用ゲ
ルに見られ、正常なグアニンヌクレオチドと異常なアデニンヌクレオチドの双方
が見られた(図3、試料II−3)。従って、点突然変異の異型接合態が求めら
れた。第2に、cDNAのヌクレオチドの位置1691に対応するグアニンのア
デニンへのヌクレオチドの変化が見られた(図3、試料II−2)。従って、点
突然変異の同型接合態が求められた。
APC耐性をもつ患者のV因子cDNAに由来する増幅産物のヌクレオチド配
列の決定によりユニークな点突然変異の存在が確認された。その点突然変異は、
V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691のグアニンヌクレオチドのアデニ
ンヌクレオチドへの変化として確認された。
E.PCR増幅及び増幅したcDNA産物のMnlI制限分析
増幅したcDNAのグアニンのアデニン点突然変異の有無を求めるために実施
例1Dに記載されたヌクレオチド配列決定のほかの分析法は、上記実施例1B及
び1CでゲノムDNAに述べられた制限消化分析である。
引き続いて制限エンドヌクレアーゼMnlIでの消化に適切なcDNA増幅産
物を得るために、実施例1Dに記載されたようにプライマー対FV13及びFV
2でのPCRから得られる正常(配列番号27)或いは変異体増幅cDNA(配
列番号28)である2297塩基対重鎖cDNA増幅産物を記載された第2ラウ
ンドのPCRの鋳型として用いた。
第2PCRについては、PCRプライマー対、共に実施例1Aに記載されたゲ
ノムDNAを増幅するために用いた5′センス又は第1プライマーFV7(配列
番号4)及び3′アンチセンス又は第2プライマーFV8A(配列番号12)を
配列番号27又は28に対応する上記増幅cDNA鋳型でのPCRに用いた。P
CR増幅は、上記第2ラウンドについて実施例1Dに記載されたように行った。
第2ラウンドのPCRから生成された正常及び変異体cDNA増幅産物は、共
にヌクレオチドの位置1601〜1724の配列番号13及び26に示された各
124塩基対ヌクレオチド配列を有する。
次に、得られた生成増幅産物を上記V因子ゲノムDANについて述べたMnl
Iによる制限消化に供した。ゲノムDNA制限消化分析とのように、電気泳動に
よる微分制限産物断片の分析は患者のmRNA試料におけるグアニンのアデニン
への点突然変異の有無の確認を与えた。
ヌクレオチドの位置1691のグアニンヌクレオチドを有する正常なcDNA
においては、第2ラウンドの増幅産物は上記実施例1BでゲノムDNA制限分析
について述べたように2つのMnlI制限部位(5′及び3′の位置1691ま
でを意味する位置)を有した。対照的に、対応する変異体増幅cDNAは、点突
然変異を含まない唯一の5′MnlI部位を有した。
そのようなものとして、双方のMnlI部位が適切に切断される場合には12
4塩基対の正常cDNA増幅産物の予想MnlI制限消化産物は、47、37及
び40塩基対の3つの断片である。124塩基対変異体cDNA増幅産物におい
ては、5′MnlIのみが存在するので、予想制限消化産物は47及び77塩基
対の2つの断片である。従って、異型接合パターンは37、40、47及び77
塩基対断片を有する。従って、cDNAからの正常及び変異体124塩基対増幅
産物からのMnlI制限消化パターンの分析は、ヌクレオチドの位置1691の
グアニンのアデニンへの点突然変異の有無の決定及び遺伝子型の決定を可能にす
る。
更に、上記ヌクレオチド配列分析は、点突然変異の有無を確認するために12
4塩基対cDNA増幅産物について行った。
上記124塩基対cDNA増幅産物は、また、実施例1Dに記載されたように
mRNAから直接合成された非増幅cDNA鋳型により一段PCRから生成され
る。短いcDNA増幅産物を生成する無傷cDNA鋳型にPCRプライマー対、
FV7及びFV8Aを用いる。次に、制限消化分析及び/又はヌクレオチド配列
決定分析が、得られたcDNA増幅産物で上記のように行われる。
増幅するcDNAに対する代替的方法では、ヌクレオチド配列決定の前に5′
非翻訳領域、重鎖領域、連結領域、軽鎖領域及び3′非翻訳領域を含むV因子c
DNAの領域(ヌクレオチドの位置9〜6917の配列番号13)の全部又は一
部が単一反応で増幅される。V因子cDNAの領域の増幅から得られた増幅産物
は、長さが約40〜6909塩基対である。更に好ましくは、増幅産物はV因子
重鎖領域を含む。V因子cDNAのヌクレオチドの位置1691に点突然変異を
含む具体的な増幅産物は、ヌクレオチドの位置9からヌクレオチドの位置691
7までの配列番号26に示される。
2.結論
ここでは、分子に基づくV因子突然変異及び得られたAPC耐性を、本明細書
に記載されるAPC耐性と関連があるV因子遺伝子のグアニンのアデニンへの点
突然変異を検出する本発明の方法及び組成物の発見及び生成に従い他のもので記
載してきた。例えば、Bertinaら,Nature 369:64,1994及びVoorbergら,Lancet
343:1535,1994は、V因子cDNAのPCR増幅に続いてヌクレオチド配列分
析によりV因子cDNAのヌクレオチドの位置1691の点突然変異を同定した
。
ここでは、同じ点突然変異を、オランダ(Bertinaら,Nature 369:64,1994)、
米国(Greengardら,Lancet 343:1361,1994)及びフランス(Alhenc-Gelasら,La ncet
344:555,1994)のAPC耐性患者において広く記載してきた。患者におい
てかなりの割合のAPC耐性を引き起こすV因子の単一点突然変異の同定は、抗
トロンビン、プロテインC又はプロテインS欠失に関与する広範囲の異なる突然
変異と著しく対照的である(Laneら,Thromb .Haemost.70:361,1993; Reitsma
ら,Thromb .Haemost.69:77,1993)。
個々の実施態様及び実施例を含む上記説明は、本発明を具体的に説明するもの
であり限定するものとしてみなされるべきではない。本発明の真意及び範囲から
逸脱することなく多くの他の変更及び修正が行われる。
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,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,
MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S
D,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT
,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 グリーンガード ジュディース
アメリカ合衆国 カリフォルニア州
92126 サンディエゴ メサ ウッズ ア
ベニュー 9053
(72)発明者 ガンリール ソフィー
フランス エフ−75015 パリ リュー
ヴァスコ ダ ガマ 43