【発明の詳細な説明】
ドーパミンD3レセプタに対する親和性を有する5−アミノアルキル−2−(2
−アルコキシフェニル)−ピロール誘導体および精神病の治療におけるその使用
本発明は、新規ピロール誘導体、その製造方法、それを含有する医薬組成物、
および治療における、特に抗精神病薬としてのそれらの使用に関する。
精神分裂病は、現在治療法がない荒廃的精神病であるが、その原因を理解し、
その症状を抑制することにおいて進歩している。一般に、発症年齢は、後期青年
期であり、予後が非常に悪い一生の病気である。精神分裂病に罹っている患者は
、妄想および幻覚などの陽性症状、および/または最後には社会的衰退および自
殺を導く、引きこもり、孤立および脱動機付けなどの陰性症状を示す。1950
年代以来、抗精神病薬(神経弛緩薬)は、入手可能であり、精神分裂病の陽性症
状を治療するために成功の度合いを変化させつつ用いられる。しかしながら、こ
れらの薬物の大部分(「典型的な」神経弛緩薬)は陰性症状を緩和せず、さらに
また、多くの副作用を有しており、それらの最も窮迫させられることは、錐体外
路副作用(eps)として知られている運動障害である。典型的な神経弛緩薬の
例としては、ハロペリドールおよびスルピリドが挙げられる。さらに最近では、
例えばクロザピンなどの、効力を増加し、錐体外路副作用を低下させた第2世代
抗精神病薬、いわゆる「異形」神経弛緩薬が開発された。しかしながら、この薬
物の使用は、好中球減少症を生じる傾向およびその消費についての議論によって
厳格に制限されてきた;したがって、他の神経弛緩薬に反応しない患者における
精神分裂病の治療のために確保される。さらに、クロザピンによる治療に対して
さえ抵抗力のある患者群が残ったままである。したがって、精神分裂病に対する
新しい改良された治療が依然として必要とされている。
EPA241053およびEPA259930には、抗精神病性質を有すると言われている種々の
2−(置換フェニル)−5−(置換ピペリジニルアルキル、ピペラジニルアルキル
またはピロリジニル)−ピロールが開示されている。
WO94/03426、WO95/00508、WO94/24129、WO95/04037、WO95/04039およびWO95/1
0504には、ドーパミンD3レセプタで活性を有すると言われている2−(置換アリ
ール)−5−置換ピロール誘導体の別の分類が開示されている。
本発明者らは、今、ドーパミンレセプタに対する親和性を有しており、したが
って、抗精神病薬としての効力を有する新規ピロール誘導体を見いだした。
第1の態様では、本発明は、式(I):
[式中、
R1は、C1-4アルキルを表し;
R3は、所望により置換されていてもよいフェニル基または所望により置換さ
れていてもよい5員もくしは6員の複素環式芳香族基を表し;
R2、R4およびR5は、各々独立して、水素、ハロゲン;C1-4アルキル;C1- 4
アルコキシ;C1-4アルコキシC1-4アルキル;C1-4アルキルスルホニル;トリ
フルオロメチルスルホニル;所望により置換されていてもよいアリールスルホニ
ル;所望により置換されていてもよいヘテロアリールスルホニル;所望により置
換されていてもよいアラルキルスルホニル;所望により置換されていてもよいヘ
テロアラルキルスルホニル;ニトロ;シアノ;アミノ;モノ−もしくはジ−C1- 4
アルキルアミノ;トリフルオロメチル;トリフルオロメトキシ;ヒドロキシル
;ヒドロキシC1-4アルキル;C1-4アルキルチオ;C1-4アルカノイルC1-4アル
コキシカルボニル;式R8OSO2で示されるスルホネート基(ここで、R8は、
所望により置換されていてもよいアリールまたは所望により置換されていてもよ
いヘテロアリール基である);または−SO2NR6R7基を表し;ここで、
R6およびR7は、各々独立して、水素、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシ
C1-4アルキルを表すか;または、
R6は、水素、C1-6アルキルまたはC1-4アルコキシC1-4アルキルを表し、
R7は、基(Ra)p−(Ar)−(CH2)j−を表すか(ここで、Arは、フェニル、
ナフチル、5員もしくは6員の複素環式アリール基、またはフェニル環と縮合し
た5員もしくは6員の複素環式アリール基を表し、jは、0または1〜4の整数
を表し、Raは、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシ
C1-4アルキル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ
、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-4アルキル、C1-4アルカノイル、C1-4アルコキ
シカルボニル、アミノ、モノ−もしくはジ−C1-4アルキルアミノ、C1-4アルキ
ルチオ、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルホニルおよびフェニル
C1-4アルコキシから選択された置換基を表し、pは、0または1〜4の整数を
表す);または
NR6R7は、3員〜8員の完全飽和複素環式環、5員〜8員の部分飽和複素環
式環、窒素原子に加えて酸素原子または硫黄原子を含有する5員〜8員の完全飽
和複素環式環、またはフェニル基と縮合しているかもしくはフェニル基によって
置換されているかまたは5員もしくは6員の複素環式アリール基によって置換さ
れている5員〜7員の複素環式環を形成し、ここで、フェニル基またはヘテロア
リール基は、所望により基(Ra)pによって置換されていてもよく、ここで、Ra
およびpは前記定義と同じであるか;あるいは
R1およびR2は一緒になって、C2-4アルキル鎖を形成し、ここで、該アルキ
ル鎖は、所望により1または2つのC1-4アルキル基によって置換されていても
よく、R3、R4およびR5は、前記定義と同じあり;
Yは、式(a)〜(e):
または
から選択される基を表す(ここで、基(a)においては、
R9およびR10は、独立して、水素、C1-6アルキル、所望により置換されてい
てもよいアリールC1-6アルキルまたは所望により置換されていてもよいヘテロ
アリールC1-6アルキルを表し、
R11は、C1-6アルキル、C3-6アルケニルまたはC3-6シクロアルキルC1-4ア
ルキルを表し、
R12は、C1-6アルキル、C3-6アルケニル、C3-6シクロアルキルC1-4アルキ
ル、所望により置換されていてもよいアリールC1-4アルキルまたは所望により
置換されていてもよいヘテロアリールC1-4アルキルを表すか、または
NR11R12は、複素環式環を形成し;
基(b)においては、
R13は、C1-6アルキル、C3-6アルケニル、C3-6シクロアルキルC1-4アルキ
ル、所望により置換されていてもよいアリールC1-4アルキルまたは所望により
置換されていてもよいヘテロアリールC1-4アルキルを表し、
qは、1〜4であり;
基(c)においては、
R14およびR15は、独立して、水素、C1-6アルキル、所望により置換されて
いてもよいアリールC1-6アルキルまたは所望により置換されていてもよいヘテ
ロアリールC1-6アルキルを表し、
R16は、所望により置換されていてもよいアリールまたは所望により置換され
ていてもよいヘテロアリール基を表し、
Zは、−(CH2)u(ここで、uは、2〜8である)または−(CH2)vCH=C
H(CH2)w(ここで、vおよびwは、独立して1〜3を表す)を表し;
基(d)においては、rおよびsは、各々独立して、1〜3の整数を表し、
基(e)においては、
R17は、C1-6アルキル、C3-6アルケニルまたはC3-6シクロアルキルC1-4ア
ルキルを表し、
R18、R19、R20およびR21は、各々独立して、水素、ハロゲン、C1-4アル
キル、C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシC1-4アルキル、ニトロ、シアノ、ト
リフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、
C1-4アルカノイル、C1-4アルコキシカルボニル、アミノまたはモノ−もしくは
ジ−アルキルアミノを表し、
Xは、CH2、SまたはOを表し、
tは、0、1または2である)]
で示される化合物およびその塩を提供するものである。
式(I)で示される化合物においては、アルキル基またはアルキル部分は、直鎖
状であっても分枝鎖状であってもよい。用いられるアルキル基としては、メチル
、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、ならびに
イソプロピル、t−ブチル、sec−ペンチルなどのその分枝鎖状異性体が挙げら
れる。
式(I)で示される化合物に存在するハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素また
はヨウ素である。
Arが5員もしくは6員の複素環式アリール環またはフェニルと縮合したかか
る環を表す場合、複素環式環または複素環式部分は、酸素、硫黄または窒素から
選択される1個以上、例えは、1、2、3または4個のヘテロ原子を含有してよ
い。したがって、適切な例としては、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリ
ル、チアゾリル、イミダゾール、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル
、ピリダジル、ピリミジルまたはピラゾリルが挙げられる。好ましくは、複素環
式アリール基Arは、1〜4個のヘテロ原子を含有する。
式(I)で示される化合物における他の置換基R2、R3、R4、R5、R9、R10
、R12、R13、R14、R15およびR16のいずれかに存在する代表的なアリール基
またはアリール部分としては、フェニル、ナフチル、およびテトラヒドロナフチ
ルが挙げられる。ヘテロアリール基の適切な例としては、フリル、チエニル、ピ
ロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジ
アゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジルおよびピラゾリルなどの、1個以
上の酸素、硫黄または窒素原子を含有する5員および6員複素環が挙げられる。
アリールおよびヘテロアリールについての置換基としては、ハロゲン、C1-4ア
ルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシC1-4アルキル、ニトロ、シアノ、
トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-4ア
ルキル、C1-4アルカノイル、C1-4アルコキシカルボニル、アミノおよびモノ−
またはジ−C1-4アルキルアミノが挙げられる。
前記定義のヘテロアリール環に存在する窒素原子は、水素原子、または前記で
定義した置換基から選択される適切な置換基、例えばC1-4アルキルを担持して
もよいと認識されるであろう。
R1は、好ましくは、メチル、エチルまたはイソプロピル、最も好ましくはメ
チルまたはエチルを表す。
R3は、好ましくは、所望により置換されていてもよいフェニルを表す。R3が
置換フェニルを表す場合、適切な置換基としては、ハロゲン、C1-4アルキル、
C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシC1-4アルキル、ニトロ、シアノ、トリフル
オロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-4アルキル、
C1-4アルカノイル、C1-4アルコキシカルボニル、アミノおよびモノ−またはジ
−C1-4アルキルアミノが挙げられる。R3は、好ましくは、非置換フェニルを表
す。
適切には、R2、R4およびR5のうち1個だけがスルホンアミド基R6R7NS
O2−を表す。かかるスルホンアミド基が存在する場合、R4によって表されるの
が好ましい。
R6R7N−が所望により置換されていてもよいフェニル環に縮合されているか
もしくは該フェニル環によって置換されているかまたは所望により置換されてい
てもよい5員もしくは6員の複素環式環によって置換されている5員環〜7員環
を表す場合、スルホンアミド基は、式(f)または(g):
[式中、Raおよびpは、前記定義と同じであり、
Ar'は、フェニルまたは5員もしくは6員の複素環式環を表し、
R22は、−(CH2)m−または−(CH2)kW(CH2)2−を表し、
mは、0または1〜4の整数を表し、
kは、0または1を表し、
Wは、O、S、SO、またはSO2を表し、
nは、0または1〜4の整数を表す;
ただし、基(f)においては、n+mの合計数は、2〜4であり、n+kの合計
数は、0または1であり、基(g)においては、n+mの合計数は、3〜5であり
、n+kの合計数は、1または2である]
によって表される。
基(g)においては、Ar'は、好ましくは、フェニルを表す。基(f)においては
、R22が−(CH2)m−を表す場合、n+mの合計数が2または3であるように、
mは、好ましくは0または1を表し、nは、好ましくは2または3を表す。R22
が−(CH2)kW(CH2)2−を表す場合、Wは、好ましくは、Oを表し、kおよび
nは、好ましくは、各々、0を表す。R6R7N−が5〜7員環を表す場合、基(
f)を含有する縮合スルホンアミドが一般的に好ましい。
R6R7NSO2−が非環式スルホンアミド基を表す場合、R6は、好ましくは、
水素またはC1-4アルキル、例えばメチルもしくはエチルを表す。R7は、基(Ra
)p−(Ar)−(CH2)jを表し、ここで、Arは、好ましくは、フェニルまたは、O
、NおよびSから選択される1、2または3個の原子を含有する5員もしくは6
員の複素環式アリール基を表し、Raは、好ましくは、ハロゲン、C1-4アルコキ
シ(例えば、メトキシ)、シアノ、C1-4アルキルチオ(例えば、メチルチオ)、
C1-4アルキルスルフィニル(例えば、メチルスルフィニル)、フェニルC1-4ア
ルコキシ(例えば、ベンジルオキシ)、ヒドロキシおよびC1-4アルキル(例え
ば、メチル)から選択される1以上の置換基を表し、pは、好ましくは、0、1
また2を表し、jは、好ましくは0、1または2を表す。
好適には、R4は、アルキルスルホニル基、例えば、エチルスルホニル基を表
す。
R2およびR5は、好ましくは、各々、水素を表す。
Yが基(a)である場合、R9およびR10の少なくとも1つは、好ましくは、水
素である。好適には、R9およびR10の一方は、水素であり、他方は、水素、C1 -6
アルキルおよび所望により置換されていてもよいアリールC1-6アルキルから
選択される。−NR11R12が複素環式環を形成する場合、これは、好ましくは、
4〜10個、例えば、5〜8個の環原子を有し、完全にまたは部分的に飽和して
いる。複素環式環−NR11R12は、例えばメチレン基またはエチレン基などのC1-3
アルキレン鎖によって、架橋されていてもよい。さらにまた、複素環式環は
、1以上のC1-4アルキル基によって置換されているか、または、フェニルなど
の芳香族環に縮合していてもよい。最も好ましくは、Yが基(a)である場合、
R9およびR10の一方は、水素であり、他方は、水素またはC1-6アルキルを表し
;R11は、C1-6アルキルを表し;R12は、C1-6アルキルまたはフェニルC1-4
アルキルを表すか、または−NR11R12は、5員または6員の飽和複素環式環を
形成する。
Yが基(b)である場合、qは、好ましくは、1または2であり、R13は、好ま
しくは、C1-6アルキル、例えばエチルである。
Yが基(c)である場合、R14およびR15の少なくとも1つは、好ましくは、水
素を表す。好適には、R14およびR15の一方は、水素であり、他方は、水素、C1-6
アルキルまたは所望により置換されていてもよいアリールC1-6アルキルから
選択される。R16は、好ましくは、所望により置換されていてもよいフェニルま
たは所望により置換されていてもよいフリルを表す。Zは、好ましくは、(CH2
)uを表し、ここで、uは、3、4または5である。最も好ましくは、R14および
R15の一方は、水素であり、他方は、水素またはC1-6アルキルであり;R16は
、フェニルまたは所望により置換されていてもよいフリルを表し、Zは、(CH2
)uを表し、ここで、uは、3または5である。
Yが基(d)である場合、rおよびsは、好ましくは、各々独立して、1または
2を表す。好都合には、Yは、基(a)、(b)または(c)であり、最も好ましくは
(a)である。
医薬用について、式(I)で示される塩は、生理学的に許容されるべきであると
認識されるであろう。適切な生理学的に許容される塩は、当業者に明らかであろ
うし、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸などの無機酸、およ
びコハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p−
トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸などの有機
酸で形成された酸付加塩が挙げられる。例えばシュウ酸などの他の生理学的に許
容されない塩は、例えば式(I)で示される化合物の単離において用いてよく、本
発明の範囲内に含まれる。式(I)で示される化合物の溶媒和物および水和物も本
発明の範囲内に含まれる。
式(I)で示される化合物において不斉中心が存在する場合、該化合物は、光学
異性体(鏡像異性体)を形成するであろう。本発明は、全てのかかる鏡像異性体
およびラセミ混合物を含むその混合物をその範囲内に含む。さらに、式(I)で示
される化合物の全ての起こり得るジアステレオ異性体形(個々のジアステレオ異
性体およびその混合物)は、本発明の範囲内に含まれる。
本発明による特定の化合物は、
(R,S)−2−((5−エチルスルホニル−2−メトキシ−4−フェニル)フェニ
ル)−5−(1−(1−ピペリジニル)エチル)−1H−ピロール
およびその塩である。
本発明は、
(a)Yが基(a)または(c)(ここで、R9、R10、R14およびR15は、水素
である)であるか、またはYが基(e)である式(I)で示される化合物を製造する
ために、ホルムアルデヒドの存在下、式(II):
で示される化合物および式(III)、(IV)または(V):
で示されるアミンとのマンニッヒ反応を行うこと;
(b)Yが基(a)(ここで、R9およびR10の少なくとも1つは、水素である)
、基(c)(ここで、R14またはR15の少なくとも1つは、水素である)、基(e)
または式(b)もしくは(d)で示される基である化合物を製造するために、式(II)
で示される化合物および式(VI)、(VII)または(VIII):
で示されるアミドまたは各々基(b)もしくは(d)の適切オキソ誘導体とのヴィル
スマイヤー反応を行い、該中間生成物を例えばホウ水素化ナトリウムまたはシア
ノホウ水素化ナトリウムで還元すること;
(c)Yが基(a)または(c)(ここで、R9、R10、R14およびR15は、水素
である)であるか、またはYが基(e)である化合物を製造するために、式(IX):
で示される化合物を式(III)、(IV)または(V)で示されるアミンで還元アミノ化
すること;
(d)式(X):
[式中、Lは、ハロゲン原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基であ
り、R1、R2、R4、R5およびYは、前記定義と同じである]
で示される化合物を適切なアリールまたはヘテロアリール金属誘導体と反応させ
ること;
(e)式(I)で示される−の化合物を式(I)で示される別の化合物に転換させ
ること、例えば、チオール官能基をスルフィニルもしくはスルホニル官能基に転
換させること、またはベンジルオキシ基をヒドロキシに水素化すること;
および、所望により、次いで、存在する保護基を除去することおよび/または
式(I)で示される塩を形成すること
からなることを特徴とする式(I)で示される化合物の製造方法を提供するもので
もある。
プロセス(a)によるマンニッヒ反応は、慣用的な方法に従って行われる。した
がって、例えば、式(III)、(IV)または(V)で示されるアミンを、まず、ホルム
アルデヒドと反応させ、次いで、該生成物を式(II)で示される化合物と反応させ
る。該反応は、好ましくは、エタノールのようなアルコールなどのプロトン性溶
媒中で行われる。有機酸または無機酸、例えば、酢酸を触媒として用いてよい。
プロセス(b)によるヴィルスマイヤー反応もまた、慣用的な方法に従って行わ
れる。したがって、例えば、式(VI)、(VI)もしくは(VIII)で示されるアミドまた
は基(b)もしくは(d)のオキソ誘導体を、まず、オキシ塩化リン(POCl3)
と反応させ、次いで、好都合にはジクロロメタンまたはジクロロエタンなどの溶
媒中、得られた生成物を式(II)で示される化合物と反応させる。
プロセス(c)による還元アミノ化は、一般的に、塩化チタン(IV)などのルイス
酸の存在下でホウ水素化ナトリウムまたはシアノホウ水素化ナトリウムなどの還
元剤を用いて行われるであろう。化合物(IX)のアミンとの反応は、好都合には、
ジクロロメタンまたはジクロロエタンなどの溶媒中で行われる。
プロセス(d)は、キシレンまたは水性ジメトキシエタンなどの溶媒中、テトラ
キスー(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などの触媒の存在下、アリール
ホウ酸、ハロゲン化アリール亜鉛またはアリールトリス(アルキル)スタンナンな
どのアリールもしくはヘテロアリール金属誘導体を用いて行われる。
プロセス(e)による相互転換は、標準的な方法を用いて行われ;例えば、チオ
ールの酸化は、過酸化水素を用いて行われる。ベンジルオキシ基のヒドロキシ基
への転換は、例えばパラジウム−炭を用いるような水素化によって行われる。
式(II)で示される化合物は、式(XI):
で示されるジカルボニル化合物の環化によって製造される。
該反応は、エタノールなどの溶媒中、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩
を用いて行われる(例えば、C.G.Kruse ら,Heterocycles,第26巻,第3141頁,
1987参照)。
式(XI)で示される化合物は、それ自体、式(XII):
[式中、R23は、塩素などのハロゲン原子、または基−N(CH3)OCH3を表し
、R1〜R5は、前記定義と同じである]
で示される適切に置換されているハロゲン化アロイルまたはメトキシアミドを2
−(2−ハロエチル)−1,3−ジオキソランまたは2−(2−ハロエチル)−1,3
−ジオキサンの金属誘導体と反応させ、次いで、酸性加水分解を行うことによっ
て製造される。
R23がハロゲン原子を表す式(XII)で示される化合物は、標準的な方法を用い
て対応する安息香酸から製造される。R23が−N(CH3)OCH3を表す場合、か
かる化合物は、トリエチルアミンなどの塩基およびジクロロメタンなどの溶媒の
存在下、対応するハロゲン化アロイルまたは無水アロイルをN−(メトキシ)メチ
ルアミンと反応させることによって製造される。無水物は、適切な安息香酸また
はナフトエ酸誘導体をクロロギ酸イソブチルなどのハロギ酸アルキルと反応させ
ることによって製造され、好都合には、in situで利用される。
式(II)で示される化合物は、式(XIII):
[式中、Halは、臭素などのハロゲン原子である]
で示されるハロ置換アリール誘導体を式(XIV):
[式中、R24は、t−ブトキシカルボニルなどのN−保護基を表す]
で示されるN−保護ピロール誘導体と反応させ、次いで、保護基R24を除去する
ことによっても製造される。
該反応は、ベンゼン、トルエン、水性ジメトキシエタン、水性テトラヒドロフ
ランまたはジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中、炭酸ナトリウムなどの塩
基ならびにPd(PPh3)4またはパラジウムジベンジリデンアセトンおよびトリフ
ェニルホスフィンなどのパラジウム触媒の存在下で行われる。
N−保護基は、当該技術分野でよく知られている方法によって除去される。例
えば、t−ブトキシカルボニル基は、テトラヒドロフラン中ナトリウムメトキシ
ドまたはジクロロメタン中トリフルオロ酢酸を用いて切断される。
式(III)および(IV)で示される化合物は、市販されているか、または、標準的
な方法によって製造される。
アミン(V)は、塩化チタン(IV)の存在下、式(XV):
で示されるケトンのアミンR17NH2での還元アミノ化、次いで、プロセス(c)
について前記したとおり、シアノホウ水素化ナトリウムなどでの還元によって得
られる。
R9およびR14が各々水素以外である式(VI)および(VII)で示される化合物は、
例えば対応するハロゲン化アシルを用いて、式(III)または(IV)で示される適切
なアミンのアシル化によって製造される。
R9およびR14が各々水素である式(VI)および(VII)で示される化合物ならびに
式(VIII)で示される化合物は、式(III)、(IV)または(V)で示される適切なアミ
ンをホルミル化剤、例えばギ酸中無水酢酸と反応させることによって製造される
。
式(IX)で示される化合物は、ジメチルホルムアミドをオキシ塩化リンと反応さ
せるヴィルスマイヤー反応を行い、ジクロロエタンなどの溶媒中、該生成物を式
(II)で示される化合物と反応させ、次いで、加水分解を行うことによって製造さ
れる。
置換基OR1〜R5は、当該技術分野で知られている方法を用いて、合成の適切
な段階で導入される。かくして、例えば、置換基R6R7NSO2−は、式(XVI)
:
[式中、R25は、カルボキシル基または臭素などのハロゲン原子を表し、R26は
、OR1、R2、R3、R4およびR5から選択される任意の環置換基を表す]
で示される化合物のアミンR6R7NHとの反応によって形成される。
該反応は、好都合には、テトラヒドロフランまたは水などの溶媒の存在下、所
望により塩基の存在下で行われる。好都合には、過剰のアミンR6R7NHが塩基
として役に立つ。式(XVI)で示される化合物は、知られているか(例えば、ドイ
ツ公開番号2,721,643)、または標準的な方法によって製造される。
R6が水素以外である化合物を製造するために、前記と同様の条件を用いて式(
XVI)で示される化合物をアミンR7NH2と反応させ、テトラヒドロフランなど
の適切な溶媒などの、水素化ナトリウムなどの塩基の存在下、該生成物をR6に
対応するアルキル化剤、例えば、シロゲン化物またはトシル誘導体と反応させる
。
R7が基(Ra)p−(Ar)−(CH2)j−(ここで、jは、0を表す)を表し、R6
がC1-6アルキルまたはC1-4アルコキシC1-4アルキルを表す場合、アミンR6R7
NHは、トリフルオロ酢酸などの酸性触媒の存在下、対応する第1級アミン(Ra
)p−(Ar)−NH2をR6のオルトエステル、R6'C(OEt)3と反応させ、次い
で、得られたイミド化エステル誘導体(Ra)p−(Ar)N=C(R)OEtをエタノー
ル中のホウ水素化ナトリウムで還元させることによって製造される。別法として
は、nが0または1〜4を表す場合、アミンR6R7NHは、トリエチルアミンな
どの塩基およびジクロロメタンなどの適切な溶媒の存在下、第1級アミン(Ra)p
−(Ar)−(CH2)j−NH2をR6に対応するハロゲン化アシルR6'COClと反
応させ、次いで、例えばテトラヒドロフラン中の水素化アルミニウムリチウムを
用いて還元させることによって製造される。
置換基R3は、プロセス(d)について前記したと同様に、キシレンまたは水性
ジメトキシエタンなどの溶媒中、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジ
ウム(0)などの触媒の存在下、式(XVII):
[式中、Lは、ハロゲンまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基であり、
R1、R2、R4およびR5は、前記定義と同じである]
で示される化合物の、アリールホウ酸、ハロゲン化アリール亜鉛またはアリール
ートリス(アルキル)スタナンなどの適切なアリールまたはヘテロアリール金属誘
導体との反応によって、アリールピロール部分の形成後に導入される。
必要な場合、化合物(I)の製造において用いられた反応のいずれかに敏感であ
る置換基R1〜R5のいずれかにおけるかまたはYにおいて存在する基または部分
は、当該技術分野でよく知られている方法による反応の間じゅう保護され、該保
護基は、標準的な方法によって合成の好都合な段階で、例えば、最終段階で除去
される。したがって、例えば、ヒドキロキシ基は、ベンジルオキシ基として保護
され、脱保護は、例えばパラジウム−炭を用いて水素化によって行われる。
式(I)で示される化合物が鏡像異性体の混合物として得られる場合、これらは
、分割剤の存在下での結晶化、または例えばキラルHPLCカラムを用いるクロ
マトグラフィーなどの慣用的な方法によって分離される。
別法としては、式(I)で示される化合物は、例えばプロセス(a)または(c)に
おけるような合成においてまたはプロセス(b)で用いるためのアミドの製造にお
いてキラルアミンを用いることによって単一の鏡像異性体として製造される。式
(III)、(IV)または(V)で示されるキラルアミンは、例えば(S)−(+)−α−メ
トキシフェニル酢酸などのキラル補助剤にカップリングさせ、得られたジアステ
レオ異性体をクロマトグラフィーによって分離することによって、適切なアミン
の鏡像異性体混合物を分割することによって製造される。補助剤部分は、標準的
な
方法によって除去されて、所望のキラルアミンが得られる。したがって、例えば
、(S)−(+)−α−メトキシフェニルアセチル部分は、塩基性条件下で、好まし
くはヘキサンまたはテトラヒドロフラン中メチルリチウムを用いて、切断される
。
式(I)で示される化合物は、ドーパミンレセプタ、特にD3レセプタに対する
親和性を示すことが見いだされ、精神病症状などのかかるレセプタの調節を必要
とする病状の治療において有用であると予想される。現在利用可能な抗精神病薬
(神経弛緩薬)の治療効果は、一般に、D2レセプタの阻害薬を介して発揮され
ると思われる;しかしながら、このメカニズムは、多くの神経弛緩薬に関係する
望ましくない錐体外路副作用(eps)の原因であるとも考えられる。理論によ
って結び付けらることは望まずに、最近特徴付けられたドーパミンD3レセプタ
が有意なepsを伴わずに有益な抗精神病活性を生じることが示唆された(例え
ば、Sokoloff ら,Nature,1990; 347: 146-151; およびSchwartz ら,Clinical
Neuropharmacology,第16巻,第4号,295-314,1993を参照)。したがって、本
発明の好ましい化合物は、ドーパミンD2レセプタよりもドーパミンD3レセプタ
に対する方が高い親和性を有するものである(かかる親和性は、例えばクローン
化ドーパミンレセプタを用いるなどの標準的な方法を用いて測定することができ
る)。該化合物は、好都合には、D3レセプタの選択的調節剤として用いられる
。特に、式(I)で示される化合物は、ドーパミンD3レセプタアンタゴニストで
あり、そのままで、精神分裂病、分裂−情動障害、精神病的鬱病および躁病の治
療におけるような抗精神病薬として有効な用途を有するものである。ドーパミン
D3レセプタの調節によって処置される他の症状としては、パーキンソン病、神
経弛緩薬誘発パーキンソン症候群および向遅発性ジスキネジー;鬱病;および薬
物(例えば、コカイン)依存症などの運動障害が挙げられる。
したがって、さらなる態様では、本発明は、必要とする患者に式(I)で示され
る化合物またはその生理学的に許容される塩の有効量を投与することを特徴とす
る、ドーパミンD3レセプタの調節を必要とする症状、例えば、精神分裂病など
の精神病の治療方法を提供するものである。
本発明は、ドーパミンD3レセプタの調節を必要とする症状、例えば、精神分
裂病などの精神病の治療薬の製造における式(I)で示される化合物またはその生
理学的に許容される塩の使用を提供するものである。
前記具体例で用いるためには、式(I)で示される化合物は、好ましくは、ドー
パミンD3アンタゴニストである。かかる化合物は、好ましくは、精神分裂病の
治療において用いられる。
医薬における使用のためには、本発明化合物は、通常、標準的な医薬組成物と
して投与される。したがって、本発明は、さらなる態様では、式(I)で示される
新規化合物またはその生理学的に許容される塩および生理学的に許容される担体
を含有してなる医薬組成物を提供するものである。
式(I)で示される化合物は、経口投与、非経口投与、口腔内投与、舌下投与、
鼻腔内投与、直腸投与または経皮投与によるなど好都合な方法によって投与され
、したがって、医薬組成物が適している。
経口投与の場合に活性である式(I)で示される化合物およびその生理学的に許
容される塩は、液状剤または固形剤として、例えばシロップ剤、懸濁液剤または
乳剤、錠剤、カプセル剤およびロゼンジ剤として製剤化することができる。
液状製剤は、一般に、適切な液体担体、水、エタノールもしくはグリセリンな
どの水性溶媒またはポリエチレングリコールもしくは油などの非水性溶媒中の当
該化合物またはその生理学的に許容される塩の懸濁液または溶液からなるであろ
う。処方は、懸濁化剤、保存剤、フレーバリング剤または着色剤を含有してもよ
い。
錠剤の形態の組成物は、固体製剤を調整するために慣用的に用いられる適切な
医薬担体を用いて調製することができる。かかる担体の例としては、ステアリン
酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロースおよびセルロースが挙げら
れる。
カプセルの形態の組成物は、慣用の被包化方法を用いて調製することができる
。例えば、活性成分を含有するペレット剤は、標準的な方法を用いて調製され、
次いで、ゼラチン硬カプセル中に充填することができる;別法としては、分散液
剤または懸濁液剤は、水性ガム、セルロース、シリケートまたは油などの適切な
医
薬的担体を用いて調製され、次いで、該分散液剤または懸濁液剤をゼラチン軟カ
プセルに充填することができる。
典型的な非経口組成物は、無菌水性担体または非経口的に許容される油、例え
ば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油また
はゴマ油中の当該化合物または生理学的に許容される塩の溶液または懸濁液から
なる。別法としては、該溶液を凍結乾燥し、次いで、投与直前に適切な溶媒で復
元することができる。
鼻腔内投与用組成物は、好都合には、エアロゾル剤、点滴剤、ゲル剤および粉
末剤として製剤化される。エアロゾル製剤は、典型的には、生理学的に許容され
る水性または非水性溶媒中の活性物質の溶液または微細懸濁液からなり、密封容
器中で無菌形態で単回投与または多数回投与量で提供され、微粒化装置と一緒に
用いるためのカートリッジまたはリフィルの形態を取ることができる。別法とし
ては、該密封容器は、単一用量鼻用吸入器などの単一の調剤用装置または容器の
内容物が消耗されるた後の使い捨てが意図される計量バルブを装着したエアロゾ
ルディスペンサーである。投与形態がエアロゾルディスペンサーからなる場合、
圧縮空気などの圧縮ガスまたはフルオロクロロハイドロカーボンなどの有機噴射
剤であってもよい噴射剤を含有するであろう。エアロゾル投与形態は、ポンプ−
アトマイザーの形態を取ってもよい。
口腔内投与または舌下投与に適している組成物としては、錠剤、ロゼンジ剤お
よび香錠など挙げられ、ここで活性成分は、シュガーおよびアラビアガム、トラ
ガカント、またはゼラチンおよびグリセリンなどの担体を用いて製剤化される。
直腸投与用組成物は、好都合には、カカオ脂などの慣用の坐剤基剤を含有する
坐剤の形態である。
経皮投与に適している組成物としては、軟膏剤、ゲル剤およびパッチ剤が挙げ
られる。
好ましくは、当該組成物は、錠剤、カプセル剤またはアンプル剤などの単位投
与形態である。
経口投与用の各投与単位は、好ましくは、遊離塩基として計算して式(I)で示
される化合物またはその生理学的に許容される塩1〜250mgを含有する(非経
口投与のためには、好ましくは、0.1〜25mgを含有する)。
本発明の生理学的に許容される化合物は、通常、遊離塩基として計算して式(
I)で示される化合物またはその生理学的に許容される塩を例えば1mg〜500m
g、好ましくは10mg〜400mg、例えば、10〜250mgの経口投与量、また
は0.1mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜50mg、例えば1〜25mgの静脈内
、皮下または筋肉内投与量の(成人患者については)日用量方針で投与されるで
あろうは、該化合物は、1日1〜4回投与される。好適には、当該化合物は、連
続治療の期間、例えば1週間以上投与されるであろう。
生物学的試験方法
該化合物のヒトD3ドーパミンレセプタに選択的に結合する能力は、それらの
クローン化レセプタへの結合を測定することによって示すことができる。CHO
細胞において発現したヒトD3ドーパミンレセプタに結合する[125I]ヨードスル
プリドの置換についての試験化合物の阻害定数(Ki)は、以下のとおり決定した
。セルラインは、細菌汚染、真菌類汚染およびマイコプラズマ汚染がないことを
示し、貯蔵物は、液体窒素中で冷凍保存した。培養物は、単層として、または、
標準的な細胞培養培地中での懸濁液中で増殖した。細胞を(単層から)削ること
によって、または(懸濁培養物から)遠心分離によって回収し、リン酸緩衝生理
食塩水中懸濁液によって2または3回洗浄し、次いで、遠心分離によって回収し
た。細胞ペレットを−40℃で冷凍保存した。ホモジナイゼーションによって粗
製細胞膜を調製し、次いで、高速遠心分離にかけ、放射性リガンド結合によって
クローン化レセプタの特徴付けを行った。
CHO細胞膜の調製
細胞ペレットを室温でゆっくりと解凍し、約20容量倍の氷冷50mMトリス
塩(pH7.4、@37℃)、20mM EDTA、0.2Mスクロースに再懸濁さ
せた。該懸濁液を、15℃で充分な速度でウルトラ−ターラックス(Ultra−T
urrax)を用いてホモジナイズした。ホモジネートを、ソーバル(Sorvall)R
C5C遠心分離器中、4℃で20分間、18,000r.p.mで遠心分離した。
膜ペレットをウルトラ−ターラックスを用いて氷冷50mMトリス塩(pH7.4
、@37℃)に再懸濁し、Sorvall RC5C中、4℃で15分間、18,000
r.p.mで再遠心分離した。該膜を氷冷50mMトリス塩(pH7.4、@37℃
)で2回以上洗浄した。最終ペレットを50mMトリス塩(pH7.4、@37℃
)に再懸濁させ、標準としてウシ血清アルブミンを用いて、タンパク質含量を測
定した(Bradford,M.M.(1976)Anal.Biochem.72,248-254)。
クローン化ドーパミンレセプタ上での結合実験
粗製細胞膜を、37℃で30分間、合計容量1mlで、50mMトリス塩(pH7
.4、@37℃)、120mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1mMMg
Cl2、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミンを含有するバッファー中、0.1n
M[125I]ヨードスルプリド(〜2000Ci/mmol;イギリス国のアマーシャム
(Amersham))および試験化合物と一緒にインキュベートした。インキュベー
ション後、ブランデル・セル・ハーベスター(Brandel Cell Harvester)を
用いて試料を濾過し、氷冷50mMトリス塩(pH7.4、@37℃)、120mM
NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2で3回洗浄した。コブラ
・ガンマカウンター(Cobra gamma counter)(キャンベラ・パッカード(Can
berra Packard))を用いてフィルター上の放射能を測定した。非特異的結合は
、100μMヨードスルプリドの存在下でのインキュベーション後に残存する放
射性リガンド結合と定義した。競合曲線のために、競合する冷薬物の14種類の
濃度(ハーフ−ログ希釈液)を用いた。競合曲線は、1、2または3つの部位モ
デルを適合させることができる非線形最小二乗適合法を用いることが可能である
場合は必ず同時に分析される。
実施例1の化合物は、ヒトD3レセプタで4nMのIC50値を有した。
医薬製剤
以下に、標準的な方法を用いて調製される本発明の典型的な医薬製剤を表す。
静脈内輸液
式(I)で示される化合物 1〜40mg
バッファー pH約7まで
溶媒/錯生成剤 100mlまで
ボーラス注射
式(I)で示される化合物 1〜40mg
バッファー pH約7まで
共溶媒 5mlまで
バッファー: 適切なバッファーとしては、クエン酸塩、リン酸塩、水酸化ナ
トリウム/塩酸が挙げられる。
溶媒: 典型的には、水以外に、シクロデキストリン(1〜100mg)
ならびにプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよ
びアルコールなどの共溶媒が挙げられる。
錠剤
化合物 1〜40mg
希釈剤/充填剤* 50〜250mg
結合剤 5〜25mg
崩壊剤* 5〜50mg
滑沢剤 1〜5mg
シクロデキストリン 1〜100mg
*は、シクロデキストリンを含んでもよい。
希釈剤: 例えば、微結晶性セルロース、ラクトース・デンプン。
結合剤: 例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ース。
崩壊剤: 例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン。
滑沢剤: 例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウ
ム。
経口懸濁液
化合物 1〜40mg
懸濁化剤 0.1〜10mg
希釈剤 20〜60mg
保存剤 0.01〜1.0mg
バッファー pH約5〜8まで
共溶媒 0〜40mg
フレーバー 0.01〜10mg
着色剤 0.001〜0.1mg
懸濁化剤: 例えば、キサンタンガム、微結晶性セルロース。
希釈剤: 例えば、ソルビトール溶液、典型的には水。
保存剤: 例えば、安息香酸ナトリウム。
バッファー: 例えば、クエン酸塩。
共溶媒: 例えば、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレング
リコール、シクロデキストリン。
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに説明される:
ディスクリプション1
4−ブロモ−5−エチルスルホニル−2−メトキシ安息香酸(D1)
(a)クロロスルホン酸(14ml)を塩化ナトリウム(5g)および4−ブロ
モ−2−メトキシ安息香酸(10.0g、0.043mol)(F.C.Chen およびC.
T.Chang in J.Chem.Soc.1958,146 による開示に従って製造した)の撹拌懸
濁液に室温で2時間かけて滴下した。該反応混合物を40℃で1時間撹拌し、次
いで、65℃に一晩加熱した。冷却した混合物を氷/水に注ぎ、1時間放置した
。得られた懸濁液を濾過し、固体をペンタンで洗浄し、真空乾燥させて、4−ブ
ロモ−5−クロロスルホニル−2−メトキシ安息香酸(11.4g、80%)を得
た。
(b)4−ブロモ−5−クロロスルホニル-2−メトキシ安息香酸(8.5g、
0.026mol)を亜硫酸ナトリウム(4.5g、0.036mol)および重炭酸ナ
トリウム(6.6g、0.078mol)の水(40ml)中混合物に75℃で添加し
た。該混合物を70〜80℃で3時間維持し、次いで、50℃に冷却し、次いで
、メタノール(16ml)およびヨードエタン(6ml)で処理した。該混合物を6
5℃に18時間加熱し、次いで、冷却し、真空濃縮した。油状水性混合物をクロ
ロホ
ルム(3×100ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥
させ、真空蒸発させて、低融点固体として標記化合物のエチルエステルを得(0
.9g、10%)、水性層を希塩酸で酸性化して、無色の微結晶として標記化合物
を得た(4.6g、55%)。
1H NMR(d6−DMSO)δ:1.13(3H,t,J=7Hz)、3.48(2
H,q,J=7Hz)、3.95(3H,s)、7.65(1H,s)、8.29(1H,s)。
ディスクリプション2
2−(2−(4−ブロモ−5−エチルスルホニル−2−メトキシベンゾイル)エ
チル)−1,3−ジオキサン(D2)
4−ブロモ−5−エチルスルホニル−2−メトキシ安息香酸(D1、4.6g、
14mmol)のジクロロメタン(114ml)中溶液に塩化オキサリル(2.08ml
)を添加し、次いで、ジメチルホルムアミド2滴を添加した。この混合物を、ア
ルゴン下、室温で18時間撹拌し、次いで、真空蒸発させ、残留物をトルエンと
共沸させた。粗製酸塩化物を、アルゴン下で乾燥テトラヒドロフラン(94ml)
に溶解させ、−78℃に冷却した。冷却したグリニャール試薬(14mmol)[還
流させながら1時間、2−(2−ブロモエチル)−1,3−ジオキサン(2.7g
、14mmol)を、乾燥テトラヒドロフラン中のマグネシウム(0.47g)に添加
することによって製造した]を、内部温度が−70°以下に維持されるような速
度で滴下した。室温で0.5時間撹拌を続け、該混合物を室温に1時間かけて加
温した。10%クエン酸水溶液(4ml)の添加後、該混合物を真空蒸発させ、残
留物をジクロロメタンおよび10%クエン酸水溶液に分配させた。有機層を分離
し、2%水酸化ナトリウム水溶液、次いで、食塩水で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナ
トリウム)、真空蒸発させた。溶離液としてn−ペンタン中20−50%酢酸エ
チルでシリカ上でのクロマトグラフィーに付して、無色油状物として標記化合物
を得た(2.44g、41%)。
1H NMR(CDCl3)δ:1.20−1.39(4H,m)、1.92−2.08(
3H,m)、3.04(2H,t,J=8)、3.41(2H,q,J=8)、3.75(2
H,dt,J=13,J=3)、4.00(3H,s)、4.03−4.16(2H,m)、
4.63(1H,t,J=5)、7.31(1H,s)、8.39(1H,s)。
ディスクリプション3
2−(4−ブロモ−5−エチルスルホニル−2−メトキシフェニル)−1H−ピ
ロール(D3)
アルゴン下、2−(2−(4−ブロモ−5−エチルスルホニル−2−メトキシベ
ンゾイル)エチル)−1,3−ジオキサン(D2、2.44g、5.8mmol)を熱氷酢
酸(18ml)に溶解させ、酢酸アンモニウム(3.91g)の水(3.6ml)中溶
液を滴下した。該混合物を還流させながら1.25時間加熱した。冷却後、さら
に酢酸アンモニウム(3.91g)を添加した後、還流させながらさらに1.25
時間加熱した。該反応混合物を冷却し、真空蒸発させた。残留物をジクロロメタ
ンおよび炭酸カリウム飽和水溶液に分配させ、有機相をさらなる炭酸カリウム、
次いで、食塩水で洗浄し、乾燥させた(硫酸ナトリウム)。溶媒を真空除去し、
残留物をエーテルと一緒に粉砕して、クリーム色の固体として標記化合物を得た
(1.38g、69%)。
1H NMR(CDCl3)δ:1.27(3H,t,J=7)、3.42(2H,q,J
=7)、4.04(3H,s)、6.29−6.34(1H,m)、6.74−6.79(1
H,m)、6.89−6.94(1H,m)、7.26(1H,s)、8.34(1H,s)、
9.57−9.71(1H,幅広いs)。
ディスクリプション4
2−((5−エチルスルホニル−2−メトキシ−4−フェニル)フェニル)−1H
−ピロール(D4)
2−(4−ブロモ−5−エチルスルホニル−2−メトキシフェニル)−1H−ピ
ール(D3、0.34g、1mmol)およびフェニルホウ酸(0.14g、1.21mmo
l)の1,2−ジメトキシエタン(5ml)中溶液に炭酸ナトリウム水溶液(2M溶
液1.7ml)、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(
0.05g)を添加した。この混合物をアルゴン下、還流させながら3.75時間
加熱した。冷却させた後、該混合物を5M HClで酸性化し、酢酸エチルで抽出
した。有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空蒸発させた。
溶離液としてn−ペンタン中20−40%酢酸エチルでシリカ上でのクロマトグ
ラフィーに付して、黄色固体として標記化合物を得た(0.28g、82%)。
1H NMR(CDCl3)δ:1.02(3H,t,J=8)、2.61(2H,q,J
=8)、4.00(3H,s)、6.28−6.36(1H,m)、6.77−6.84(1
H,m)、6.84−6.94(2H,m)、7.39−7.53(5H,m)、8.42(1
H,s)、9.66−9.84(1H,幅広いs)。
実施例1
(R,S)−2−((5−エチルスルホニル−2−メトキシ−4−フェニル)フェニ
ル)−5−(1−(1−ピペリジニル)エチル)−1H−ピロール(E1)
アルゴン下、0℃で、N−アセチルピペリジン(0.11g、0.9mmol)にオ
キシ塩化リン(0.12ml)を添加した。該混合物を室温で1時間撹拌し、次い
で、1,2−ジクロロエタン(12ml)で希釈し、5℃に冷却し、ピロール(D
4、0.28g、0.8mmol)の1,2−ジクロロエタン(6ml)中溶液を添加した
。該反応混合物を室温で60時間撹拌した。ホウ水素化ナトリウム(0.22g)
を添加し、該混合物をさらに1時間撹拌し、次いで、5℃に冷却し、メタノール
(2.4ml)を滴下した。室温に加温した後、該反応混合物をジクロロメタンお
よび炭酸カリウム飽和水溶液に分配させた。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、
真空蒸発させて、油状物を得た。溶離液としてジクロロメタン中2−5%メタノ
ールを用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーに付して、油状物を得、これ
をエーテルと一緒に粉砕して、オフホワイト色の粉末として標記化合物を得た(
0.14g、38%)。融点132−4℃。
1H NMR(CDCl3)δ:1.03(3H,t,J=8)、1.37(3H,d,
J=6)、1.4−1.68(6H,幅広いm)、2.36−2.54(4H,幅広いm)
、2.63(2H,q,J=8)、3.83(1H,q,J=6)、4.00(3H,s)、6
.02−6.10(1H,m)、6.68−6.77(1H,m)、6.86(1H,s)、7
.35−7.52(5H,m)、8.38(1H,s)、9.92−10.08(1H,幅広
いs)。
─────────────────────────────────────────────────────
【要約の続き】
環、またはフェニル基に縮合しているかもしくはフェニ
ル基によって置換されているかまたは5員もしくは6員
の複素環式アリール基によって置換されている5員〜7
員の複素環式環を形成し、ここで、フェニル基またはヘ
テロアリール基は、所望により基(Ra)pによって置換さ
れていてもよく、ここで、Raおよびpは前記定義と同
じであるか;あるいはR1およびR2は一緒になって、C2-4
アルキル鎖を形成し、ここで、該鎖は、所望により
1または2個のC1-4アルキル基によって置換されてい
てもよく、R3、R4およびR5は、前記定義と同じあ
り;Yは、式(a)〜(e)から選択される基を表す]で示
される化合物およびその塩は、精神分裂病の治療に対す
る効力を有するドーパミンD3アンタゴニストである。