【発明の詳細な説明】
水溶性カンプトテシン類似体
発明の分野
本発明は、特に抗腫瘍剤として有用な水溶性カンプトテシン類似体、その医薬
組成物、およびこのような類似体に感受性の腫瘍細胞の増殖を抑制してなる、こ
れを必要とする人間を含む動物における癌の治療法に関する。
発明の背景
真核細胞内のDNA螺旋構造は、その遺伝物質を鋳型として用いるために、細
胞機構が解かなければならないある種の位相幾何学的課題を課す。DNA鎖の分
離はDNA複製および転写などの細胞過程に対して基本的なものである。真核性
DNAは染色体タンパク質によりクロマチン中に組織化されているので、その両
端は束縛され、鎖は形態を変化させる酵素の助けなしに解くことはできない。転
写または複製複合体のDNA螺旋に沿った進行は、その過程の間に生じる捩れ歪
を緩和するスウィベル点付近で促進されると長い間認識されてきた。トポイソメ
ラーゼは真核細胞においてDNA形態を変更できる酵素である。これら酵素は、
重要な細胞機能および細胞増殖に関して臨界的である。
真核細胞には2種のトポイソメラーゼ、I型およびII型がある。トポイソメ
ラーゼIは分子量約100000のモノマー酵素である。この酵素はDNAと結
合し、一時的な一本鎖切断をもたらし、二重螺旋を解し(またはこれを起こさせ)
、その後、切断部を再び結合させ、DNA鎖から分離する。
トポイソメラーゼIIは分子量170000の2つの同一のサブユニットから
なる。トポイソメラーゼIIは、一時的に螺旋体の両鎖を破断し、別の二本鎖セ
グメントをその切断部に通す。
カンプトテシンは、中国原産のカンプトテカ・アキュミナタ(Camptotheca a
ccuminata)およびインド原産のノタポディテス・ホエチダ(Nothapodytes foe
tida)により産生される非水溶性の細胞毒性アルカロイドである。カンプト
テシンおよび1、2のそのよく似た同種物はトポイソメラーゼIを阻害すること
知られている唯一の化合物種である。
市販の腫瘍細胞崩壊剤(例えば、エトポシド、ドキソルビシンおよびミトザン
トロン)ならびに他の開発中の腫瘍細胞崩壊剤の主な目的は、トポイソメラーゼ
IIを阻害することである。カンプトテシンおよびその公知の同種体はトポイソ
メラーゼIIに対して作用せず、公知のトポイソメラーゼII阻害剤はいずれも
トポイソメラーゼIに対して有意な作用を有しない。
カンプトテシンおよびその大部分の類似体は、許容されない用量制限毒性、予
測できない毒性、貧水溶性、許容されない貯蔵安定性、および/または臨床的効
能の欠如のため、細胞溶解剤としての医薬の開発には魅力的でないことがわかっ
ている。
しかし、トポイソメラーゼI阻害剤である抗腫瘍剤としての効能を有する水溶
性カンプトテシン類似体が知られている。出典明示により本明細書の一部とする
、米国特許第5004758号(Boehmら、1991年4月2日)は、水溶性カ
ンプトテシン類似体、好ましくは、トポテカンである(9−ジメチルアミノメチ
ル−10−ヒドロキシカンプトテシン)、好ましくは、式:
で示される(S)−トポテカン、最も好ましくはその塩酸塩を開示する。臨床試
験では、トポテカンは数種の充実性腫瘍癌、特にヒトにおける卵巣癌および非小
細胞肺癌に対して効能を示した。
Masudaら、J.Clin.Oncology,1992,10,1225−1229は、
CPT−11((S)−[1,4'−ビピペリジン]−1'−カルボン酸、4,11
−ジエチル−3,4,12,14−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−3,14−ジオ
キソ−1H−ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−
9−イルエステル)を開示する。しかしながら、CPT−11を抗腫瘍剤として
開発する試みは、有害な毒性により妨げられてきた。
ウォール(Wall)ら、ジャーナル・オブ・メジシナル・ケミストリー(J.M
ed.Chem.)、1993、36、2689−2700は、9−アミノカンプトテ
シン((S)−10−アミノ−4−エチル−4−ヒドロキシ−1H−ピラノ[3
',4':6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)
−ジオン)を記載している。しかし、この化合物は水溶性が限定されており、こ
れは抗腫瘍剤としての開発において処方および生体利用性の問題を提供する。
前記のような望ましくない性質を回避する新規トポイソメラーゼI阻害剤が必
要とされている。本発明の化合物はこのような要求を満たすものである。
発明の要約
第一の態様において、本発明は、S−9−エチル−2,3−ジヒドロ−4,9−
ジヒドロキシ−2−メチル−1H,12H−ベンゾ[ij]ピラノ[3',4':6
,7]インドリジノ[1,2−c][2,6]ナフチリジン−10,13(H,15
H)
−ジオンである、式I:
で示される化合物、およびその医薬上許容される塩を提供する。
別の態様において、本発明は式Iの化合物の医薬組成物に関する。
さらに別の態様において、本発明は、癌の治療を必要とするヒトを含む動物の
癌治療方法であって、単独または担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせた有効
量の式Iの化合物の投与による腫瘍細胞の増殖の阻害することからなる方法に関
する。
発明の詳細な記載
「有効量」なる語は、癌の治療のためにこれを必要とするヒトを含む動物への
投与により、腫瘍細胞の増殖の阻害、寛解、または治癒を含むが、これに限定さ
れない、抗腫瘍治療分野において当業者により理解されるような癌の治療におい
て臨床的に望ましい結果をもたらす本発明の化合物または医薬組成物の量を意味
する。
塩は本発明の化合物からその塩基性窒素との反応により調製される。本発明の
化合物の医薬上許容される塩が特に好ましい。これらの後者の塩は医薬的用途へ
の適用において許容されるものである。これにより、塩が親化合物の生物学的活
性を保持し、塩がその適用および病気の治療における使用において不当または有
害な作用を有しないことを意味する。
医薬上許容される塩は、当業者に周知の方法で調製される。親化合物を、適当
な溶媒中に溶解し、過剰の有機または無機酸と反応させる。代表的な酸は、塩酸
、
臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、コハク酸またはメタンスルホン
酸である。
本願においては、本発明の化合物の環系を式IIに従って番号を付す。
キラル中心または他の形態の異性中心が本発明の化合物中に存在する場合、こ
のような異性体(複数でも可)のあらゆる形態は、本明細書において包含される
ものである。キラル中心を有するこのような化合物は、ラセミ混合物、エナンチ
オマーに富む混合物として用いられるか、またはラセミ混合物を周知の技術を用
いて分離し、個々のエナンチオマーを単独で用いてもよい。
本発明は抗腫瘍活性を示す化合物およびその医薬上許容される塩であって、前
記式Iにより示される構造を有する化合物を提供する。
本発明の化合物を本発明の記載に従って投与した場合に、許容されない毒性は
ないと考えられる。
本発明は、癌の治療を必要とする動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくは
ヒトにおける癌治療法であって、このような動物に前記のような有効量の式Iの
化合物またはその医薬上許与される塩を単独または担体、賦形剤または希釈剤と
組み合わせて投与することからなる方法を提供する。
式Iの化合物の一塩酸塩は本発明の好ましい例である。
本発明の化合物を抗腫瘍活性に関して試験するのに用いられるin vitro検定は周
知である。これらの検定の一般的記載は以下の通りである。CHOマイクロタイター細胞毒性検定
チャイニーズハムスター卵巣細胞を75cm2のネック部分が傾斜した組織培
養フラスコ中L−グルタミンおよびヌクレオシドを有し、10%子牛血清および
100単位/mLのペニシリン−ストレプトマイシンを含むアルファMEM培地
中で増殖させる。これらのフラスコから0.5%トリプシンを用いて収穫する。
マイクロタイタープレート(96−ウェル、滅菌、平底)(コーニング2586
0)に各ウェルにつき1.6×103野生型(AUX−B1)チャイニーズハムス
ター卵巣細胞または各ウェルにつき2×103多薬剤耐性(CHRC5)チャイニ
ーズハムスター卵巣細胞を接種する。プレートを37℃、5%CO2で一夜イン
キュベートして細胞を付着させる。インキュベーション期間中の蒸発のために各
プレートの外壁は使用しない。これを培地で満たし、ブランクとして用いる。翌
日、培地をウェルから吸引し、180μLの新鮮な培地を各ウェルに添加する。
化合物を新鮮な培地中へDMSO中ストック溶液から2%DMSOを含有する1
0倍濃度に希釈する。ウェル中180μLの新鮮な培地にこれを20μL添加す
る。プレートを更に3日間37℃、5%CO2でインキュベートする。8mgの
XTT(SIGMA X−4251)を100μLのDMSO中に溶解し、これ
を次に3.9mLのカチオンを含まないリン酸緩衝塩溶液(PBS)に添加する
。フェナジンメトスルフェート(SIGMA P−9625)をPBS中に溶解
して3mg/mLの濃度にし、これの20μLをXTT溶液に添加する。このX
TT/PMS溶液50μLをマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、プ
レートを90分間、37℃、CO2でインキュベートする(OD450〜1.0まで
)。プレートをUV Maxプレートリーダーで、細胞を含まない(すなわち、
200μLの培地および50μLのXTT/PMS溶液のみを含有する)ウェル
をバックグラウンド対照として用いて読み取る。
本発明の化合物の細胞毒性および効力も周知のP388マウス腫瘍モデルを用
いてinv ivoで試験した。
表Iは、マウス腫瘍モデルにおける式Iの化合物の細胞毒性および効力の、公
知化合物トポテカンおよびカンプトテシンとの比較を示す。これらの結果は、式
Iの化合物が、トポテカンに匹敵する生物学的活性を有することを示す。
式Iの化合物はスキーム1に記載した方法により調製される。US特許番号5
004758に記載されている方法によりカンプトテシンから容易に入手可能な
10−ヒドロキシカンプトテシン1のヒドロキシ基を、ピリジンなどの塩基の存
在下で無水プロピオン酸などのアシル化試薬との反応によりプロピオン酸エステ
ル2などのエステルとして保護する。2をN,N−ジメチルホルムアミド中トリ
フルオロ酢酸などの酸の存在下で遊離ラジカル産生試薬、例えば過酸化ベンゾイ
ルで処理し、続いて溶媒中メタノールを用いたシリカゲル上クロマトグラフィー
によりホルムアミド3を得、これをメタノール中塩酸などの強酸とともに加熱す
ることにより脱ホルミル化する。得られたアミン4を次に水性酢酸中ホルムアミ
ドで処理して、ピクテット−スペングラー環化を行い、式Iの化合物を得る。
本発明は式Iの化合物から調製される医薬組成物を提供する。これらの組成物
は、ヒトおよび獣医学的双方の有用性を有し、意図する医薬的最終用途に関して
許容される賦形剤、希釈剤または担体および本発明の化合物を含んでなる。例え
ば、獣医学的用途を意図する場合、担体は液体、またはスプレーであってもよく
、あるいは前胃中に挿入するために固体、非分解性または分解性形態に処方して
もよい。選択された賦形剤および担体を用いてヒト用途に関して許容されるかま
たは適用可能な組成物を調製する。
有効量の1またはそれ以上の本発明の医薬組成物は、一例として、例えば1個
のピル、カプセル、または予め計量した静脈内用量または予め充填した注射用シ
リンジ中に収容されていてもよい。別法として、1単位、例えばピル1個が準最
適用量を含むが、使用者は治療につき2個またはそれ以上の単位用量を摂取する
よう指示されるような個々の投与形態に組成物を調製することが多い。組成物が
クリームにされた場合、これはある量の薬剤を含有し、使用者はある量のクリー
ムを1回またはそれ以上、病気が寛解されるかまたは有効に処置されるまで適用
する。例えば、静脈内(IV)製剤および多用量注射製剤などの最終使用者によ
り後で希釈されるための濃縮物も調製してもよい。
これらの組成物における使用に関して包含される賦形剤、希釈剤、または担体
は、医薬製剤業界において一般に公知である。有用な物質については、周知の、
例えばレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington's
Pharmaceutical Sciences,Mack PublishingCo.,Easton,Pa)を参照のこ
と。
組成物および医薬賦形剤、希釈剤または担体の性質は、もちろん意図する投与
経路、例えば静脈内および筋肉内注射によるか、非経口、局所、経口、または吸
入によるかに依存する。
非経口投与の場合、医薬組成物はアンプルなどの滅菌注射可能な液体または水
性または非水性液体懸濁液の形態である。
局所投与の場合、医薬組成物は皮膚、眼、耳、鼻または性器への投与に適した
クリーム、軟膏、リニメント、ローション、ペースト、スプレーまたは滴剤の形
態である。
経口投与の場合、医薬組成物は、錠剤、カプセル、散剤、ペレット、トローチ
、ロゼンジ、シロップ、液体、または乳剤の形態である。
用いる医薬賦形剤、希釈剤または担体は、固体または液体のいずれかである。
医薬組成物を溶液または懸濁液の形態で用いる場合、適当な医薬担体または希釈
剤の例としては、水性系に関しては、水;非水性系に関しては、エタノール、グ
リセリン、プロピレングリコール、オリーブ油、コーン油、綿実油、ピーナッツ
油、ごま油、流動パラフィン、およびその水との混合物;固体系に関しては、ラ
クトース、石膏、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、カオリンおよびマンニトール;エア
ゾル系に関しては、ジクロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロエタンおよ
び圧縮二酸化炭素を包含する。また、医薬担体または希釈剤に加えて、本発明の
組成物は、追加成分が本発明の組成物の治療活性に対して有害な影響を及ぼさな
いとして、他の成分、例えば、安定化剤、酸化防止剤、保存料、滑沢剤、沈殿防
止剤、粘度調節剤などを含んでもよい。同様に、担体または希釈剤は、グリセリ
ルモノステアラートまたはグリセリルジステアラート(単独またはワックスと組
み合わせて)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチ
ルメタクリレートなどの当該分野で公知の遅延物質を含んでもよい。
広範囲におよぶ医薬形態を採用することができる。このように、固体担体を用
いる場合、製剤は錠剤にしたり、ハードゼラチンカプセル中に粉末またはペレッ
ト形態で充填するか、またはトローチまたはロゼンジの形態にできる。固体担体
の量は広範囲にわたって変化するが、好ましくは約25mgないし約1グラムで
ある。液体担体を用いる場合、製剤はシロップ、乳剤、ソフトゼラチンカプセル
、アンプルまたはバイアル中滅菌注射溶液または懸濁液あるいは非水性液体懸濁
液の形態である。安定な水溶性服用形態を得るためには、式Iの化合物の医薬上
許容される塩を有機または無機酸または塩基の水性溶液中に溶解させる。可溶性
塩形態が利用できない場合、式Iの化合物を適当な補助溶剤またはその組み合わ
せ中に溶解させる。このような適当な補助溶剤の例は、全体積の0ないし60%
の範囲の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール3
00、ポリソルベート80、グリセリンなどを包含するが、これに限定されない
。
本発明の組成物および治療法において用いる化合物の実際の好ましい用量は、
用いられる特定の複合体、処方される特定の組成物、投与経路および治療される
特定の部位、宿主および腫瘍の種類により変わる。特定の患者における特異的病
理学的状態についての最適用量は抗腫瘍技術者により、前記実験データから通常
の用量決定試験を用いて確認される。非経口投与に関して、一般に用いられる
式Iの化合物の用量は、1ないし5日間一日あたり体表面積の約2ないし約50
mg/m2であり、好ましくは4治療コース中約4週間ごとに繰り返す。連続静
脈内投与に関して、一般に用いられる用量は、5ないし21日間約0.5mg/
m2/日である。経口投与に関して、一般に用いられる用量は、1ないし5日間
一日あたり体表面積の約20ないし約150mg/m2であり、好ましくは治療
期間中適当な間隔をあけて繰り返す。
実施例
以下の合成実施例において、温度は摂氏(℃)である。特記しないかぎり、全
出発物質は商業的供給源より入手した。さらに工夫することなく、前記載事項を
用いて、当業者は本発明を最大限利用できると考えられる。これらの実施例は本
発明を例示するものであり、その範囲を制限するものではない。ここに本発明者
らが保有する権利について、請求項で言及する。
実施例1 (S)−9−エチル−2,3−ジヒドロ−4,9−ジヒドロキシ−2−メチル−1 H,12H−ベンゾ[ij]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2−c ][2,6]ナフトリジン−10,13(9H,15H)−ジオンモノヒドロクロ リドモノヒドロアセテートモノヒドレートの調製
a)(S)−10−プロパノイルオキシカンプトテシン
乾燥DMF(100mL)および乾燥ピリジン(8.5mL)中(S)−10
−ヒドロキシカンプトテシン(3.93g、0.0108モル)を一度に無水プロ
パン酸(1.48g、0.0114モル)で処理した。溶液を数時間攪拌した。さ
らに無水プロパン酸(0.370g、0.00285モル)を添加し、溶液をさら
に5時間攪拌した。反応混合物を減圧下で蒸発乾固させ、残渣を塩化メチレンお
よび水間で分配した。層を分離し、水性相を塩化メチレンで再抽出した。合した
有機層を乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過し、濾液を濃縮して、黄−淡褐色固体
を得た。この固体をメタノールで摩砕して、黄褐色−淡褐色固体の標記化合物を
得た(3.89g、86%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)、δ8.4
0(s,1H)、8.20(d,J=9.2,1H)、7.71(d,J=3.3,1H)
、
7.56(dd,J=9.2,J=2.3,1H)、5.68(d,J=16.3,1H)
、5.31(d,J=16.3Hz,1H)、5.30(s,2H)、3.86(s,2H
)、2.71(q,J=7.5Hz,2H)、1.93(m,2H)、1.33(t,J
=7.4Hz,3H)
b)(S)−7−N−ホルミル−N−メチルアミノメチル−10−ヒドロキシカ ンプトテシン
(S)−10−プロパノイルオキシカンプトテシン(2.00g、0.0047
6モル)および乾燥DMF(100mL)の攪拌懸濁液をトリフルオロ酢酸(0
.92mL、0.012モル)で処理した。得られた透明溶液を次に過酸化ベンゾ
イル(1.15g、0.00476モル)で処理した。溶液を85℃に加温し、6
時間攪拌し、蒸発させて、暗琥珀色残渣を得、これをシリカゲル上クロマトグラ
フィー(塩化メチレン→96.5:3.5塩化メチレン:メタノールの勾配)にか
けた。望ましい生成物を含有するフラクションをプールし、蒸発乾固させ、メタ
ノール(6mL)とともに音波処理した。得られた固体を集め、真空乾燥して、
黄褐色固体の標記化合物を得た(64mg、3.1%)。1H NMR(400M
Hz,CDCl3+CD3OD)、δ8.18(s,1H)、8.08(d,J=9.2
,1H)、7.65(s,1H)、7.37−7.46(m,2H)、5.67(d,J
=16Hz,1H)、5.31(s,2H)、5.30(d,J=16H,1H)、5
.07(s,2H)、2.87(s,3H)、1.93(m,2H)、1.03(t,J
=7.3Hz,3H)
c)(S)−7−メチルアミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシンヒドロ クロリド
(S)−7−N−ホルミル−N−メチルアミノメチル−10−ヒドロキシカン
プトテシン(32mg、0.0735ミリモル)を5%メタノール中HCl(5
mL)中に懸濁した。混合物を還流温度直前で1時間加熱し、氷中で冷却し、固
体を集め、冷メタノールで少し洗浄し、真空乾燥して、20.2mgの標記化合
物を得た。濾液を室温で一夜静置して第二収量を得た(5mg、全収率84%)
。1H NMR(400MHz,CDCl3+CD3OD)δ8.16(d,J=9.1
1H)、7.68(s,1H)、7.55(dd,J=9.1HzおよびJ=2.0H
z,1H)、7.49(t,J=2.0Hz,1H)、5.63(d,J=16.3,1
H)、5.48(s,2H)、5.35(d,J=16.3Hz,1H)、4.71−
4.80(m,2H)、2.85(s,3H)、1.97(m,2H)、1.03(t,
J=7.4Hz,3H)
d)(S)−9−エチル−2,3−ジヒドロ−4,9−ジヒドロキシ−2−メチル −1H,12H−ベンゾ[ij]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2 −c][2,6]ナフトリジン−10,13(9H,15H)−ジオンモノヒドロ クロリドモノヒドロアセテートモノヒドレート
酢酸(4mL)および水(1mL)中(S)−7−メチルアミノメチル−10
−ヒドロキシカンプトテシノヒドロクロリド(20mg、0.0416ミリモル
)を37%ホルムアルデヒド溶液(72μL)で処理した。溶液を75℃で5時
間攪拌し、蒸発乾固させた。残渣を水中に溶かし、MPLC(Partisil
40 ODS−3 水+0.1%酢酸から7:3水−メタノール+0.1%酢酸
の勾配を使用)に付した。溶出液を254nmでモニターし、生成物を含有する
フラクションをプールし、真空下で3mLに濃縮し、10μLの0.1N HC
l溶液で処理した。溶液を凍結乾燥して、カナリア色固体を得た(15.8mg
、68%)。1H NMR(400MHz,CDCl3+CD3OD)δ7.85−7
.95(m,1H)、7.63(s,1H)、7.30−7.45(m,1H)、5.6
5(d,J=16Hz,1H)、5.30(d,J=16Hz,1H)、5.18(s
,2H)、3.97(s,2H)、3.35(s,2H)、2.72(s,3H)、2.
05(s,3H)、1.85−1.98(m,2H)、1.03(t,J=7.3Hz,
3H);MS(エレクトロスプレーイオン化)m/e420[M+H]+;元素分
析:(C23H21N3O5・HCl・C2H4O2・H2Oとして)計算値:C=56.
23;H=5.29;N=7.87 測定値:C=55.97;H=4.97;N=
7.72
実施例2 非経口組成物
注射による投与に適した本発明の非経口医薬組成物を調製するために、100
mgの式Iの化合物の水溶性塩を10mlの0.9%滅菌塩溶液と混合し、混合
物を注射による投与に適した服用単位形態中に配合する。
実施例3 経口組成物
本発明の経口医薬組成物を調製するために、100mgの式Iの化合物を75
0mgのラクトースと混合し、混合物をハードゼラチンカプセルなどの経口投与
に適した経口投与単位形態中に配合する。
前記明細書および実施例は本発明、特にその具体例を完全に記載するが、本発
明は開示されたこれらの具体例に限定されない。したがって、本発明は以下の請
求項の範囲内にある全具体例を包含する。