【発明の詳細な説明】
マトリックスメタロプロテイナーゼの三環式阻害剤
発明の背景
本発明は、医薬として有用な新規な三環式化合物、それらの製造方法、これら
の化合物および製薬上許容し得る担体を包含する医薬組成物ならびに薬学上の治
療方法に関する。本発明の新規な化合物は、例えばゼラチナーゼA(72kDaゼラチ
ナーゼ)およびストロメリシン−1のようなマトリックスメタロプロテイナーゼ
(matrix metalloproteinase)の阻害剤である。さらに詳しくは、本発明の新規
な化合物は、アテローム硬化性プラーク破壊、大動脈瘤、心不全、再狭窄、歯周
病、隔膜潰瘍、がん転移、腫瘍脈管形成、関節炎、多発性硬化症および白血球ま
たはその他の活性化された遊走細胞の組織侵襲によるその他の自己免疫性または
炎症性障害の治療に有用である。
ゼラチナーゼAおよびストロメリシン−1はマトリックスメタロプロテイナー
ゼ(MMP)群のメンバーである(Woessner J.F.,FASEB J. 1991;5:2145〜2154)
。その他のメンバーは繊維芽細胞コラゲナーゼ、好中球コラゲナーゼ、ゼラチナ
ーゼB(92kDaゼラチナーゼ)、ストロメリシン−2、ストロメリシン−3、マト
リリシン、コラゲナーゼ3(Freije J.M.,Diez-Itza I.およびLopez-Otin C
.J .Biol.Chem.,1994;269:16766〜16773)、および新たに発見された膜関
連マトリックスメタロプロテイナーゼ(Sato H.,Takino T.,Okada Y.,Cao J.
,Shinagawa A.,Yamamoto E.およびSeiki M.,Nature,1994;370:61〜65)を
包含している。
マトリックスメタロプロテイナーゼは高い配列相同性を共有し、MMPsの各々の
触媒ドメインは配列によって同定することができる。ストロメ
リシン−1の触媒ドメインSCDに対する遺伝子はプロペプチドおよびC−末端ド
メインを除くことによって構築された(Ye Q.-Z.,Johnson L.L.,Hupe D.J.およ
びBaragi V.,「Purification and Characterization of the Human Stromelysin
Catalytic Domain Expressed in Escherichiacoli」,Biochemistry,1992;31
:11231〜11235)。ゼラチナーゼA触媒ドメインGCDも同様にして触媒ドメインを
阻止しているフィブロネクチン様挿入断片をさらに除くことによって構築された
(Ye Q.-Z.,Johnson L.L.,Yu A.E.,およびHupe D.,「Reconstructed 19kDa C
atalytic Domain of Gelatinase A is on Active Proteinase」,Biochemistry
,1995;34:4702〜4708)。末端切除タンパク質は共にフルレングスの酵素と同
様にして合成ペプチド基質および天然基質プロテオグリカンおよびゼラチンを開
裂し、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を同定いるのに使用することが
できる。
マトリックスメタロプロテイナーゼ中の触媒亜鉛が阻害剤デザインの焦点であ
る。キレート基の導入による基質の修飾により、強力な阻害剤例えばペプチドヒ
ドロキシメート(peptide hydroxymate)、チオ含有ペプチドおよびN−カルボキ
シアルキルペプチドが得られた。ペプチドヒドロキシメートおよびMMPsの天然内
因性阻害剤(TIMPs)はがんおよび炎症の動物モデルを処置するのに使用して成
功をおさめている。しかし、効力の弱いアミノ酸誘導体を除いては(Ye Q.-Z.,J
ohnson L.L.,Nordan I.,Hupe D.およびHupe L.,J .Med.Chem.,1994;37(1)
:206〜209)、イン・ビボ活性を有する非ペプチド阻害剤はほとんど報告されて
いない。
結合組織の種々の成分を分解するマトリックスメタロプロテイナーゼの能力は
、病理学的プロセスをコントロールする可能性のある標的とな
る。例えば、アテローム硬化性プラークの断裂は冠状動脈血栓症を惹起する最も
よくみられることである。これらのプラークを取りまいている細胞外マトリック
スのMMPsによる不安定化および分解がプラーク断裂の原因であると言われてきた
。ヒトアテローム硬化性プラークでの泡沫細胞蓄積のショルダーおよび領域はゼ
ラチナーゼB、ストロメリシン−1および間質性ココラゲナーゼが局在して増加
発現していることを示している。この組織の系でのサイモグラフィーは、ゼラチ
ン分解およびカゼイン分解活性が増大していることを示している(Galla Z.S.
,Sukhova G.K.,Lark M.W.およびLibby P.,「Increased expression of matri
x mettalloproteinases and matrix degrading activity in vulnerable regi
ons of human atherosclerotic plaques」,J .Clin.Invest.,1994;94:2494
〜2503)。さらに、外科手術時に心臓移植患者から摘出したアテローム硬化プラ
ーク中の個々の細胞に、高いレベルのストロメリシンRNAメッセージが局在して
いることがわかった(Henney A.M.,Wakeley P.R.,Davies M.J.,Foster K.,He
mbry R.,Murphy G.,およびHumphries S.,「Localization of stromelysin gen
e expresion in atherosclerotic plaques by in situ hybridization」,Proc . Nat'l. Acad Sci
.,1991;88:8154〜8158)。
マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害剤は、内側大動脈壁の希薄化に関連
する変性性大動脈疾患を治療するのに有用である。MMPsのタンパク質分解活性レ
ベルの増加が大動脈瘤および大動脈弁狭窄のある患者で同定されている(Vine E
.およびPowell J.T.,「Metalloproteinases in degenerative aortic diseases」
,Clin .Sci.,1991,233〜239)。
心不全は様々の病因で生じるが、共通する特徴は心拡大であり、これは死亡の
独立した危険因子とされている(Lee T.H.,Hamilton M.A.,
Stevenson L.W.,Moriguchi J.D.,Fonarow G.C.,Child J.S.,Laks H.,およ
びWalden J.A.,「Impact of left venticular size on the survival in advanc
ed heart failure」,Am .J.Cardiol.,1993;72:672〜676)。この不全を起こ
している心臓のリモデリングは細胞外マトリックスの破損を包含するものと考え
られる。マトリックスメタロプロテイナーゼは特発性および虚血性両方の心不全
を有する患者では増加している(Reddy H.K.,Tyagi S.C.,Tjaha I.E.,Voelker
D.J.,Campbell S.E.,Weber K.T.,「Activated myocardial collagenase in idi
opathicdilated cardiomyopathy」,Clin .Res.,1993;41:660A;Tyagi S.C.,
Reddy H.K.,Voelker D.,Tjara I.E.,Weber K.T.,「Myocardial collagenase
in failing human heart」,Clin .Res.,1993;41:681A)。心不全の動物モデル
は、ゼラチナーゼの誘発が心拡大に重要であることを明らかにし(Armstrong P.W
.,Moe G.W.,Howard R.J.,Grima E.A.,Cruz T.F.,「Structural remodeling
in heart failure:gelatinase induction」,Can .J.Cardiol.,1994;10:2
14〜220)、また心拡大は心機能の著しい欠損に先行して起る(Sabbah H.N.,Kono
T.,Stein P.D.,Mancini G.B.,Goldstein S.,「Left ventricular shape ch
anges during the course of evolving heart failure」,Am .J.Physiol.,19
92;263:H266〜H270)。
再狭窄に至る新生内膜増殖は往々にして冠状血管形成後に発現する。中膜から
新生中膜への血管平滑筋細胞(VSMCs)の移動は、多くの血管系疾患の発現と進行
における重要な出来事であり、そして血管に対する機械的損傷の結果として高度
に予測可能である(Bendeck M.P.,Zempo N.,Clowes A.W.,Galardy R.E.,Reid
y M.,「Smooth muscle cellmigration and matrix metalloproteinase expressi
on after arterial
injury in the rat」,Circulation Research 1994;75:539〜545)。ノーザンプ
ロット分析およびサイモグラフィー分析から、ゼラチナーゼAがこれらの細胞に
よって発現され、分泌される主要なMMPであることが判明した。さらに、ゼラチ
ナーゼA活性を選択的に中和し得る抗血清は基底膜関門を横切るVSMCの移動をも
阻害した。血管損傷後、ゼラチナーゼA活性は、VSCHsが静止状態から増殖して
いる運動性のある表現型へ移行するにつれて、20倍を超えて増大した(Pauly R.R
.,Passaniti A.,Bilato C.,Monticone R.,Cheng L.,Papadopoules N.,Glu
zband Y.A.,Smith L.,Weinstein C.,Lakatta E.,Crow M.T.,「Migration o
f cultured vascular smooth muscle cells through a basement membrane barr
ier reguires type IV collagenase activity and is inhibited by cellular d
ifferentiation」,Circulation Research,1994;75:41〜54)。
コラゲナーゼおよびストロメリシン活性は炎症を起こしている歯肉から分離し
た繊維芽細胞中で証明され(Uitto V.J.,Applegren R.,Robinson P.J.,「Coll
agenase and neutral metalloproteinaseactivity in extracts from inflamed
human gingiva」,J.Periodontal Res.,1981;16:417〜424)、そして酵素レベ
ルは歯肉疾患の重篤度と相関関係を有していた(Overall C.M.,Wiebkin O.W.,
Thonard J.C.,「Demonstrations of tissue collagenase activity in vito and
itsrelationship to inflammation severity in human gingiva」,J.Periodont al Res
.,1987;22:81〜88)。細胞外マトリックスのタンパク質分解による分
解はアルカリ熱傷に続く角膜潰瘍で観察された(Brown S.I.,Weller C.A.,Wass
erman H.E.,「Collagenolytic activity of alkali burned corneas」,Arch . Opthalmol
.,1969;81:370〜371)。
チオ含有ペプチドはアルカリ熱傷ウサギ角膜から分離したコラゲナーゼを阻害す
る(Burns F.R.,Stack M.S.,Gray R.D.,Paterson C.A.,Invest.Opththamol
.1989;30:1569〜1575)。
Davies等(Cancer Res.,1993;53:2087〜2091)は、ペプチドヒドロキシメー
ト(peptide hydroxymate)、BB-94が腫瘍の苦しみを低減し、またヒト卵巣がん
異種移植片を担有するマウスの生存を長びからることを報告している。保存MMP
プロペプチド配列のペプチドはゼラチナーゼAの弱い阻害剤であり、再構築され
た基底膜層を経由するヒト腫瘍細胞侵襲を阻害し(Melchiori A.,Albili A.,Ra
y J.M.,およびStetler-Stevenson W.G.,Cancer Res.,1992;52:2353〜2356)
、そしてメタロプロテイナーゼ−2の自然組織インヒビター(TIMP−2)もイン
・ビトロモデルで腫瘍細胞侵襲の阻害を示した(DeClerck Y.A.,Perez N.,Shi
mada H.,Boone T.C.,Langley K.E.,およびTaylor S.M.,Cancer Res.,1992
;52:701〜708)。ヒトがんの研究から、ゼラチナーゼAは侵襲性腫瘍細胞表面
で活性化されることがわかり(A.Y.Strongin,B.L.Marmer,G.A.GrantおよびG
.I.Goldberg,J .Biol.Chem.,1993;268:14033〜14039)、そして受容体様分
子との相互作用によりそこに保持されることがわかった(Monsky W.L.,Kelly T.
,Lin C.-Y.,Teh Y,Stetler-Stevenson W.G.,Mueller S.C.,およびChen.W.-
T.,Cancer Res.,1993;53:3159〜3164)。
MMPsの阻害剤は腫瘍血管形成のモデルで活性を示した(Taraboletti G.,Garof
alo A.,Belotti D.,Drudis T.,Borsotti P.,Scanziani E.,Brown P.D.お
よびGiavazzi R.,Journal of the National Cancer Institute,1995;87:293
およびBenelli R.,Adatia R.,Ensoli B.,Stetler-Stevenson W.G.,Santi L.
,およびAlbini A.,Oncology
Research
,1994;6:251〜257)。
何人かの研究者は、対照と比較して、リウマチおよび変性性関節症患者から得
られた滑液中のストロメリシンおよびコラゲナーゼが一貫して上昇することを証
明した(Walakovits L.A.,Moore V.L.,Bhardwaj N.,Gallick G.S.,およびLar
k M.W.,「Detection of stromelysin and collagenase in synovial fluid fro
m patients with rheumatoidarthritis and posttraumatic knee injury」,Art hritis Rheum
.,1992;35:35〜42;Zafarullah M.,Pelletier J.P.,Cloutier
J.M.およびMarcel-Pelletier J.,「Elevated metalloproteinases and tissue
inhibitor of metalloproteinase mRNA in human osteoarthri-tic synovia」,J .Rheumatol
.,1993;20:693〜697)。TIMP−1およびTIMP−2は関節炎のため
のウシの鼻およびブタ関節軟膏両方のモデルの分解からコラーゲンフラグメント
の形成を阻害したが、プロテオグリカンフラグメントの形成を阻害せず、一方合
成ペプチドヒドロキシメートは両方のフラグメントの形成を阻害することができ
た(Andrews H.J.,Plumpton T.A.,Harper G.P.,およびCawston T.E.,Agents Actions
,1992;37:147〜154;Ellis A.J.,Curry V.A.,Powell E.K.,および
Cawston T.E.,Biochem .Biophys.Res.Commun.,1994;201:94〜101)。
Gijbels等(J .Clin.Invest.1994;94:2177〜2182)は、近年、用量依存様式
で実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の発症を抑制するか、または臨床発現を逆
転するペプチドヒドロキシメートGM6001を報告し、例えば多発性硬化症のような
自己免疫性炎症障害の治療におけるMMP阻害剤の使用を示唆していた。
多発性硬化症(MS)は中枢神経系(CNS)の複雑な脱髄疾患であり、炎
症、血液脳関門の分断、グリア瘢痕形成を伴うミエリン鞘の選択的破壊および神
経系欠陥に到る神経細胞伝導性の喪失を特徴としている。根本原因は知られてい
ないが、T−細胞仲介自己免疫性疾患として確認されている(Lawrence Steinma
n,“Autoimmune Disease”,Scientific American,9月1993;269(3):106〜1
14)。この疾患に対する自然発生動物モデルは存在していないが、実験的アレル
ギー性脳脊髄炎(EAE)を用いてMSの病因を多面的に研究するのに成功し、またPat
erson等の研究により、MSでの薬剤の効能についての唯一の認められた前臨床試
験としてのモデルの有効性が明確に証明されている(Paterson P.,“Going to t
he Rats and Dogs to Study the Patient,”Cell-Immunol.,1983;82(1):55〜
74)。哺乳動物の器官型培養物を用いるBornsteinの研究から、CNS組織はEAE罹患
動物およびMS患者から得られた血清にあてると同一の脱髄パターン、膨張ミエリ
ン鞘および最終的な「硬化症」で応答することがわかった(Bornstein M.B.,Mi
ller A.I.,Slagle S.,Arnon R.,Sela M.,およびTeitelbaum D.,“Clinical
Trials of Copolymer I in Multiple Sclerosis,”in Annals of the New York Academy of Sciences
,eds Labe ScheinbergおよびCedric S.Raine,1984;36
:366〜372)。MS患者の脳病変から単離したT−細胞の受容体の分析により、こ
れらの受容体は、EAEモデルを沈殿させるのに使用した抗原に類似したミエリン
塩基性タンパク質のペプチドフラグメントに対して反応性を有することがわかる
(Lawrence Steinman and Paul Conlon,“Designing rational therapies for mu
ltiple sclerosis,”Bio /technology,2月1995:118〜120)。
MS治療のためのいくつかの成功をおさめた治療上の戦略はEAEでモデル化した
T−細胞応答を目標に定めている。β−インターフェロン〔ベ
ータセロン(betaseron)〕は組織適合遺伝子座抗原(HLA)DR2の発現をダウンレ
ギュレーションすることにより部分的に作用する。EAE研究を主要な実験基礎と
して使用してMSに対する現行の治療法のうちの多くのものが開発されてきた。コ
ポリマー−1およびミエリン塩基性タンパク質の経口投与は、ミエリン塩基性タ
ンパク質(MBP)抗原に対する免疫寛容を誘起することにより作用する。EAEモデル
を使用して、MBPフラグメントを認識するT−細胞受容体V領域から誘導される
ペプチドを再発−緩解MSを有する患者を免疫化するのに使用する治療法を開発し
た。CD4受容体に対するモノクローナル抗体(Mab)はEAEの臨床上、組織学上の
病状が発現を防止した(Steinman L.,Lindsey J.W.,Alters S.,およびHodgkin
son S.,“From treatment of experimental allergicencephalomyelitis to cl
inical trials in multiple sclerosis,”Immunol-Ser.,1993;59:253〜60)。
CD4Mabsの臨床試験は数社で行われている。
MSおよびEAEにおいて、血液脳関門は、CNSからの血液由来物質の排除およびリ
ンパ球の浸潤の双方に関して欠陥があることがわかった(Lam D.K.C.,“The Cent
ral nervous system barrier in acute experimental allergic encephalomyeli
tis,”in The Blood Brain Barrier in Health and Disease,Suckling A.J.,R
umsby M.G.,およびBradbury M.W.B.編,1986:158〜164,Ellis Horwood,Ltd.
,Chichester,UK)。ガドリニウム−DTPA増強磁気共鳴イメージング(MRI)を用
いて、Miller等(Miller D.H.,Rudge P.,Johnson G.,Kendall B.E.,MacManus
D.G.,Moseley I.F.,Barnes D.,およびMcDonald W.I.,“Serial gadolinium
enhancesmagnetic resonance imaging in multiple sclerosis,”Brain,1988;
111:927〜939)は、MS患者の一連の研究において、認識し得る新規な病
変または既存の病変の新規な部分において血液脳関門の機能障害が常に存在して
いることを明らかにした。血液脳関門の崩壊が脱髄となる不可逆性事象カスケー
ドの始まりであるものと考えられ(Barkhof F.,Hommes O.R.,Scheltens P.,an
d Valk J.,“Quantitative MRI changes in gadolinium-DPTA enhancement afte
r high-dose intravenousmethyl-prednisolone in multiple sclerosis,”Neuro logy
,1991;14:1219〜1222)、そして疾患の発生には必要であるものと考えら
れる(Moor A.C.E.,De Vries H.E.,De Boer A.G.,およびBreimer D.D.,Bioch e
-mical Pharmacology,1994;47:1717〜1724)。先に、細胞接着分子に対する
抗体の中和により、EAEでのリンパ球の浸潤が阻止されること、およびこのこと
が脳脊髄炎を惹起する炎症反応を阻害することが明らかとなった(Yednock T.A.
,Cannon C.,Fritz L.C.,Sanchez-Madrid F.Steinman L.,and Karin N.,“Pr
evention of experimental autoimmuneencephalomyelitis by antibodies again
st α4 β1 integrin,”Nature,3月5,1992;356(6364):63〜66)。従って、
この浸潤を防止する薬剤が、MSの治療法についての最も魅力的な見込みの一つで
あるものと予測されている。
血液脳関門をMSおよび中枢神経系のその他の炎症性疾患の病因の過程で途絶さ
せるメカニズムは現在鋭意研究されている。Rosenburg等は、脳内注入された活
性化ゼラチナーゼAが細胞外マトリックスをアタックし、血液脳関門を開くこと
を明らかにした。TIMP−2による処置ではタンパク質分解を低減し、血液脳関門
を防護した(Rosenberg G.A.,Kornfeld M.,Estrada E.,Kelley R.O.,Liotta
L.,およびStetler-Stevenson W.G.,“TIMP-2 reduces proteolytic opening
of the blood-brain barrier by type IV collagenase”,Brain Research,199
2;
576:203〜207)。Madriによる最近の研究では、炎症過程での血流からのT−細
胞の溢出におけるゼラチナーゼAの役割が解明された(Ramanic A.M.,およびMad
ri J.A.,“The Induction of 72-kD Gelatinase in TCells upon Adhesion to
Endothelial Cells is VCAM-1 Dependent”,J.Cell Biology,1994;125:1165
〜1178)。この内皮細胞層を通過する移行はゼラチナーゼAの誘発と整合し、血
管細胞接着分子−1(VCAM-1)に結合することにより仲介されている。関門が一
旦損われると、浮腫および炎症がCNS中に発生する。血液脳関門を横切る白血球
の移動はEAEでの炎症応答と関連することが知られている。メタロプロテイナー
ゼゼラチナーゼAの阻害によって、CNS浸透に必要な活性化T−細胞による細胞
外マトリックスの分解が妨害されることとなる。
これらの研究によって、ゼラチナーゼAおよび(または)ストロメリシン−1
の有効にして、バイオアベイラピリティーのある阻害剤が、リンパ球の浸潤によ
る炎症を生じる細胞外マトリックスの分裂、転移性または活性化細胞の適切でな
い移行または器官機能に必要な構造的完全性の喪失が関与する疾患の治療に価値
があるものとする予測の根拠が提供される。
本発明者等は、マトリックスメタロプロテイナーゼ、特にゼラチナーゼAおよ
びストロメリシン−1の阻害剤であり、そしてさらにはアレルギー性脳脊髄炎モ
デルに活性である一連の三環式化合物を同定した。それ故、これらの化合物は、
多発性硬化症、アテローム硬化症プラーク破壊、再狭窄、大動脈瘤、心不全、歯
周病、角膜潰瘍、がん転移、腫瘍脈管形成、関節炎または白血球の組織侵襲によ
るその他の自己免疫性もしくは炎症性疾患の治療のための薬剤として有用である
。
発明の概要
従って、本発明は次の式(I)を有する化合物およびその対応する異性体また
はその製薬上許容し得る塩に係る。
〔ここで、
XはO、N-OR6(R6は水素、-(CH2)n−アリール(nは0または1〜5の整数である
)、アルキルまたは-(CH2)n−シクロアルキル(nは先の定義
または異なって、それぞれR6について先に定義した通りである)であり;
RおよびRaは同一または異なって、それぞれ水素、
-(CH2)n−アリール(nは先の定義の通りである)、
-(CH2)n−ヘテロアリール(nは先の定義の通りである)、
-(CH2)p-R7-(CH2)q−アリール(R7はOまたはSであり、そしてpまたはqはそ
れぞれ0または1〜5の整数であり、そしてp+qの和が5以下の整数である)
、
-(CH2)p-R7-(CH2)q−ヘテロアリール(p、qおよびR7は先の定義の通りである
)、
アルキル、
-(CH2)n−シクロアルキル(nは先の定義の通りである)、または
-(CH2)r-NH2(rは1〜9の整数である)であり、
aは0または1〜3の整数であり;
R5はOH、OR6(R6は先の定義の通りである)、
義した通りである)、または
NH-OR6(R6は先の定義の通りである)である〕であり;
R3およびR4はそれぞれ同一または異なって、それぞれが水素、アルキル、NO2、
ハロゲン、OR6(R6は先の定義の通りである)、
CN、
CO2R6(R6は先の定義の通りである)、
SO3R6(R6は先の定義の通りである)、
CHO、
に定義した通りである)、または
て先に定義した通りである)であり;
W、W1、ZおよびZ1はそれぞれ同一または異なって、それぞれがCR3(R3は先の定
義の通りである)であるか、またはWもしくはW1の一方のみ
がNであるか、そして(または)ZもしくはZ1の一方のみが、NであるときはN
であり;そして
1もしくは2の整数である)、
通りである)、
-CH2-S(O)m-(mは先の定義の通りである)、
-S(O)m-CH2-(mは先の定義の通りである)、
-CH=N-、または-N=CH-であり;
但し、XがOであり、かつR5がNH-OR6でない場合、RまたはRaの少なくとも一方
は水素ではない。
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤として、式(I)の化合物はMSの治
療剤として有用である。これらの化合物はまた、アテローム硬化性プラーク破壊
、再狭窄、歯周病、角膜潰瘍、がん転移、腫瘍脈管形成、関節炎および白血球の
組織侵入によるその他の炎症性障害の治療剤としても有用である。
本発明のさらにその他の態様は、式(I)の化合物の有効量を上述した治療法
での単位投与量形態で投与するための医薬組成物である。最後に、本発明は式(
I)の化合物の製法に係る。
発明の詳細な説明
式(I)の化合物において、「アルキル」なる用語は、1〜8個の炭素原子を
有する直鎖または有枝鎖炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、n−プロ
ピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n
−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等を包含する。
「アルコキシ」および「チオアルコキシ」は、「アルキル」については先に定
義した如く1〜6個の炭素原子を有するO−アルキルまたはS−アルキルである
。
「シクロアルキル」なる用語は、3〜8個の炭素原子を有する飽和炭化水素環
を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキ
シル、シクロヘプチル、シクロオクチル等を包含する。
「アリール」なる用語は、芳香族基を意味し、この基はフェニル基ま
たは次のものから選択される置換分1〜4個で置換されているフェニル基である
:先に定義した通りのアルキル、先に定義した通りのアルコキシ、先に定義した
通りのチオアルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、アミノ、
アルキルについて先に定義したアルキルアミノ、アルキルについて先に定義した
ジアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、
-(CH2)n 2-NH2(n2は1〜5の整数である)、-(CH2)n 2-NH-アルキル(アルキルおよ
びn2については先に定義した通りであり)、-(CH2)n 2-N(アルキル)2(アルキルお
よびn2については先に定義した通り)。
「ヘテロアリール」なる用語は、ヘテロ芳香族基を意味し、この基は例えば2−
または3−チエニル、2−または3−フラニル、2−または3−ピロリル、2−
、3−または4−ピリジニル、2−ピラジニル、2−、4−または5−ピリミジ
ニル、3−または4−ピリダジニル、または2−、3−、4−、5−、6−また
は7−インドリルを包含する。
「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
フェニルは「Ph」と略記する。
式(I)の化合物のうちあるものは、製薬上許容し得る酸付加塩および(また
は)塩基塩の両方をさらに形成することができる。これらの形態はいずれもが本
発明の範囲内に入る。
式(I)の化合物の製薬上許容し得る酸付加塩は、例えば塩酸、硝酸、
りん酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜りん酸等の無毒性
無機酸から誘導される塩および、例えば脂肪族モノ−およびジカルボン酸、フェ
ニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族
および芳香族スルホン酸のような無毒性有機酸から誘導される塩が包含される。
従って、このような塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸
塩、硝酸塩、りん酸塩、第一りん酸塩、第二りん酸塩、メタりん酸塩、ピロりん
酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸
塩、カプリン酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリ
ン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸、
クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベン
ゼンスルホン酸塩、トリエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酢酸塩、乳
酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等を包含する。アミノ酸塩例
えばアルギニン塩等およびグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩もまた企図されてい
る(例えば、Berge S.M.等、「Pharmacentical Salts」、J .of Pharm.Sci.,197
7;66:1参照)。
前記塩基性化合物の酸付加塩は、常法により遊離塩基の形態を塩を生成するの
に十分な量の所望の酸と接触させることによって製造される。遊離塩の形態は、
常法により塩形態を塩基と接触させ、遊離の塩基を単離することにより再生する
ことができる。遊離塩基形態は、例えば極性溶媒中の溶解度のようなある種の物
理的性質がそれぞれの塩形態と若干異なるが、その他の点では塩は本発明の目的
に対しそれぞれの遊離塩基と同等である。
製薬上許容し得る塩基付加塩は、金属またはアミン、例えばアルカリおよびア
ルカリ土類金属または有機塩基で形成される。陽イオンとして
使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等で
ある。適当なアミンの例は、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロ
カイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジア
ミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインである(例えば、Berge S.M.等
、「Pharmacentical Salts」J .of Pharm.Sci.,1977,66:1参照)。
前記酸性化合物の塩基付加塩は、常法によって遊離酸形態を塩を形成させるの
に十分な量の所望の塩基と接触させることによって製造される。遊離の酸形態は
常法によって塩形態を酸と接触させ、遊離の酸を単離することによって再生する
ことができる。遊離の酸形態は例えば極性溶媒での溶解度のようなある種の物理
的性質がそれぞれの塩形態と若干異なるが、その他の点では塩は本発明の目的に
対してそれぞれの遊離の酸と同等である。
本発明の化合物のうちのあるものは、非溶媒和形態および水和形態を含む溶媒
和形態で存在することができる。一般に、水和形態を含む溶媒和形態は非溶媒和
形態と同等であり、本発明の範囲内に包含されるべきものである。
本発明の化合物のうちのあるものはキラル中心を1個または2個以上有し、各
々の中心はR(D)またはS(L)配置で存在することができる。本発明には、すべての
ジアステレオマー、エナンチオマーおよびエピマー形態およびそれらの適当な混
合物が包含される。さらには、本発明の化合物は幾何異性体として存在していて
もよい。本発明には、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン
(E)およびツウザムメン(Z)異性体ならびにそれらの適当な混合物が包含される
。
本発明の一態様において、式(I)の好ましい化合物は、
W、W1、ZおよびZ1がCR3である化合物;およびその対応する異性体;または
製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、
物;およびその対応する異性体;または製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、RまたはRaの一方が水素以外で
ある化合物;および対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、XがN-OR6である化合物;および
その対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、R5がOHである化合物;およびそ
の対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、Yが-O-である化合物;およびそ
の対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、XがN-OHであり;Yが-O-であり
;そしてR3およびR4がそれぞれ水素である化合物;およびその対応する異性体;
またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、XがOであり、そしてR5がNH-O
R6である化合物;およびその対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩で
ある。
本発明の別の態様では、式(I)の好ましい化合物は、W、W1、ZおよびZ1が
、WまたはW1の一方のみがNであるか、そして(または)ZまたはZ1の一方のみ
がNであるときは、Nである化合物;およびその対応
する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、
物;およびその対応する異性体;または製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、RまたはRaの一つが水素以外で
ある化合物;および対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、XがN-OR6である化合物;および
その対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、R5がOHである化合物;およびそ
の対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
この態様の式(I)の別の好ましい化合物は、XがOでありそしてR5がNH-OR6
である化合物;およびその対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩であ
る。
特に有用なのは次のものからなる群から選択される化合物である:
4−ジベンゾフラン−2−イル−4−ヒドロキシイミノ−酪酸;
2−(2−ジベンゾフラン−2−イル−2−ヒドロキシイミノ−エチル)−4
−メチル−ペンタン酸;
2−(2−ジベンゾフラン−2−イル−2−ヒドロキシイミノ−エチル)−5
−フェニル−ペンタン酸;
4−ジベンゾフラン−2−イル−4−ヒドロキシイミノ−2−フェネチル−酪
酸;
5−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−ジベンゾフラン−2−イ
ル−2−ヒドロキシイミノ−エチル)−ペンタン酸;
2−(2−ジベンゾフラン−2−イル−2−ヒドロキシイミノ−エチル)−5
−(4−フルオロ−フェニル)−ペンタン酸;
2−(2−ジベンゾフラン−2−イル−2−ヒドロキシイミノ−エチル)−5
−(4−メトキシ−フェニル)−ペンタン酸;
2−(2−ジベンゾフラン−2−イル−2−ヒドロキシイミノ)−5−p−ト
リル−ペンタン酸;
3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキシイミノ)−5−メチル−ヘキサ
ン酸;
3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキシイミノ−メチル)−6−フェニ
ル−ヘキサン酸;
3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキシイミノ−メチル)−5−フェニ
ル−ペンタン酸;
6−(4−クロロ−フェニル)−3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキ
シイミノ−メチル)−ヘキサン酸;
3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキシイミノ−メチル)−6−(4−
フルオロ−フェニル)−ヘキサン酸;
3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキシイミノ−メチル)−6−(4−
メトキシ−フェニル)−ヘキサン酸;および
3−(ジベンゾフラン−2−イル−ヒドロキシイミノ−メチル)−6−p−ト
リル−ヘキサン酸;
およびそれらの相当する異性体;またはそれらの製薬上許容し得る塩。
特に重要な化合物は、4−ジベンゾフラン−2−イル−4−ヒドロキシイミノ
−酪酸;およびその相当する異性体;またはその製薬上許容し得る塩である。
式(I)の化合物は、ゼラチナーゼAおよび(または)ストロメリシン−1の
有用な阻害剤である。マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害剤が細胞外マト
リックスの一時変異による関節炎および転移のような疾病状態モデルで効能を有
することが先に明らかとなった。本発明者等は、本明細書でゼラチナーゼAの強
力にして特異的な阻害剤がラット実験用アレルギー性脳脊髄炎モデルでも活性を
有することを実証する。このモデルはヒト多発性硬化症を予測するものであり、
またMSに対するその他の治療剤(抗−CD4モノクローナル抗体、コポリマーI、
ベータセロン、シクロスポリンおよびMBP経口抗原を包含する)の効能を予測する
基準として使用されている。
イン・ビトロ実験を実施し、これらの実験によって、ゼラチナーゼAおよびス
トロメリシン−1の強力で、特異的な阻害剤としての式(I)の化合物の効能を
実証し、またその他の関連マトリックス・メタロプロテイナーゼに対する阻害を
全く示さないかまたはより少なく示すことを実証する。実験はフルレングス酵素
および触媒ドメインで実施した。表Iには、実施例2の化合物の活性対GCD(組換
ゼラチナーゼA触媒ドメイン);ゼラチナーゼA(組換フルレングス酵素);SCD(
ストロメリシン−1触媒ドメイン);ストロメリシン−1(フルレングス未変性酵
素);ゼラチナーゼB(組換フルレングス酵素);およびコラゲナーゼ(フルレ
ングス未変性酵素)を示す。IC50値はチオペプトライド基質、Ac-Pro-Leu-Gly-t
hioester-Leu-Leu-Gly-OEt(Ye Q.-Z.Johnson L.L.,Hupe D.J.,およびBaragi
V.,「Purification and Characterization of the Human Stromelysin Catalyti
c Domain Expressed in Echerichia coli」,Biochemistry,1992;31:11231〜1
1235)を用いて測定した。実施例2では、1.31μMのIC50値でゼラチナーゼAによ
る基質変換が阻害される。
同じ化合物はまた7.64μMのIC50値でストロメリシン−1を阻害する。ゼラチナー
ゼBおよびコラゲナーゼについてのIC50値は>100μMであった。
EAEと関連する炎症性疾患を抑制する実施例2の化合物の活性をLewisラット急
性モデルを用いて試験した。雌のLewisラットはHarlan Sprague-Dawley(Indian
apolis,IN)から購入し、8〜10週令で使用した。活性EAEは、25μgモルモット
MBPおよび100μg Mycobacterium butyricumを含有する完全フロイントアジュバ
ント(CFA)を有するミエリン塩基性タンパク質(MBP)の乳剤(Difco Laborato
ries,Detroit,MI)0.05mlを1本の後肢の足裏に注入することによって誘起さ
せた。免疫ラットのEAEの臨床上の徴候を毎日観察し、次の通り評価した:0、
徴候なし:1、尾部緊張の喪失;2、不全麻痺;3、後肢完全麻痺、往往にして
失禁を伴う;および4.死亡。ホルマリン固定脳切片区分をヘマトキシン−エオ
シンで染色し、脈管周囲および実質性湿潤について顕微鏡下に評価した。化合物
は500μL容量の滅菌食塩水の溶液として強制飼養によって投与した。50mg/kgの
用量では典型的には化合物7.5mg/ラットを必要とした。数量の異なったプロト
コルを用いて有効性および
効力のためのタイミング要件を定めた。効能を証する程の別々のプロトコルを以
下に記載する。
プロトコル1:化合物は初日に50mg/kgで毎日投与し、14日目まで連続して投
与し、またCFA中のMBPも初日に投与した。表IIに示したように、この処置によっ
て処置群に対する平均評点が実質的に低下した。応答する動物の%も非常に高く
、処置した動物の100%は徴候の全抑制率(80%)または徴候の減退(20%)を示し
ている。全ての群についてN=5。
プロトコル2:EAEを抑制するのに、より少ない投与回数またはより低いレベ
ルの投与でも有効か否かを測定するために、化合物を初日および1日おきに14日
目まで50mg/kgまたは10mg/kgで投与した。表IIIに示すように、このプロトコ
ルでは、処置群に対する疾病発現のピークで平均臨床評点を基にして同様な効果
が証明された。疾患の重篤度の低下は15日目で極めて有意であった(p<0.01)
。平行して行った比較対照にはCFAのみ、およびCFA中のMBPがあった。処置群に
ついてN=4。比較対照についてN=8。
組織学上、LewisラットEAEモデルは、典型的には、自己免疫性ミエリン−特異
性T−細胞応答により、脈管周囲で実質組織の炎症を示している。プロトコル1
による動物からの脳切片の組織標本の検査から、血液脳関門を通る白血球の移動
は1日投薬スケジュール50mg/kgで完全に阻害されていたことがわかった。結果
として、カフ(cuff)の形成がなく、またCNS炎症もほとんどなかった。
炎症の一般的な阻害剤としての実施例2の化合物の活性をWistarラットでのMy cobacterium
足裏浮腫アッセイ(MFE)を用いて試験した。化合物は毎日2mg/kg、
10mg/kgまたは50mg/kgで強制飼養により投与した。
本研究には、雄非近交系Wistarラット(110〜125g、Charles River Labs,Po
rtage,MI)を用いた。ラットは使用前最小限1週間飼育した。餌および水は無
制限供給した。足裏浮腫は、Martel R.R.およびKlicius J.の「Comparisons in
rats of the antiinflammatory and gastricirritant effects of etodolac wi
th several clinically effectiveantiinflammatory drugs」,Agents and Acti ons
,1982;2:295に記載の方法に従って誘起させた。要するに、雄Wistarラッ
トに右後肢足裏に流動パラフイン中の殺滅、乾燥Mycobacterium butyricum(Difc
o,
Detroit,MI)の5mg/mL懸濁液0.1mLを皮下注射した。化合物は0.2%Tween-80を
含む0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に懸濁し、注射前1時間
に経口投与した。化合物のその後の投薬は、Mycobacterium後24時間および48時
間に行った。腫脹は3日目に処置した足の最終体積から当初の容積(Mycobacteri um
注射直後に測定)を差引くことにより評価した。足の体積は水銀、プレチスモ
グラフ法によって測定した。各化合物処置群で得られた浮腫の抑制%はビヒクル
処置群での腫脹と比較して測定し、ID50値は回帰分析によつて測定した。実験群
間の統計上の有意性はスチューデントt検定を用いて評価した。データを表IVに
示す。このモデルでの炎症反応抑制の数値はいずれも統計上有意であった。
実施例2の化合物の血漿濃度は後処理1時間でピークに達し、その後の4時間
にわたって単一指数として低減した。CmaxおよびAUC(0〜4)値は用量と比例
して増大する。Cmaxから求めた化合物血漿濃度は4.62μM(2−mg/kg用量)、3
8.8μM(10−mg/kg用量)および163μM(50−mg/kg用量)に相当する。従ってこの
化合物のバイオアベイラビリティーはイン・ビトロアッセイで測定したゼラチナ
ーゼAおよびストロメリシン−1の有効範囲を超えて良好である。
式(Ia)
RおよびRaは同一または異なって、それぞれ水素、
-(CH2)n−アリール(nは先の定義の通りである)、
-(CH2)n−ヘテロアリール(nは先の定義の通りである)、
-(CH2)p-R7-(Ch2)q−アリール(R7はOまたはSであり、そしてpまたはqはそ
れぞれ0または1〜5の整数であり、そしてp+qの和が5の整数である)、
-(CH2)p-R7-(CH2)q−ヘテロアリール(p、qおよびR7は先の定義の通りである
)、
アルキル、
-(CH2)n−シクロアルキル(nは先の定義の通りである)、または
-(CH2)r-NH2(rは1〜9の整数である)であり、
aは0または1〜3の整数であり;
R5はOH、OR6(R6は先の定義の通りである)、
義した通りである)、または
NH-OR6(R6は先の定義の通りである)である〕であり;
R3およびR4はそれぞれ同一または異なって、それぞれが水素、アルキル、NO2、
ハロゲン、OR6(R6は先の定義の通りである)、
CN、
CO2R6(R6は先の定義の通りである)、
SO3R6(R6は先の定義の通りである)、
CHO、
に定義した通りである)、または
いて先に定義した通りである)であり;
W、W1、ZおよびZ1はそれぞれ同一または異なって、それぞれがCR3(R3は先の定
義の通りである)であるか、またはWもしくはW1の一方のみがNであるか、そし
て(または)ZもしくはZ1の一方のみがNであるときは、Nであり;そして
1もしくは2の整数である)、
通りである)、
-CH2-S(O)m-(mは先の定義の通りである)、
-S(O)m-CH2-(mは先の定義の通りである)、
-CH=N-、または-N=CH-であり;
但し、R5がNH-OR6でない場合、RまたはRaの少なくとも一方は水素ではない〕を
有する化合物;およびその対応する異性体;またはその製薬上許容し得る塩は、
式(II)
(式中、MはLiまたはMg−ハロゲンであり、環Aの1−または2−位に
連結し、そしてR3、R4、Y、W、W1、ZおよびZ1は先の定義の通りである)を有
する化合物を式(III)
〔式中、Lはハロゲン、-OR8(R8はメチルまたはエチルである)、または
有する化合物と、常法例えばNahm S.およびWeinreb S.M.,Tetrahedron Letters
,1981;22:3815に記載の方法を用いて反応させることによって製造することが
できる。
式(Ib)
R6は水素、
-(CH2)n−アリール(nは0または1〜5の整数である)、
アルキルまたは
-(CH2)n−シクロアルキル(nは先の定義の通りである)であり;そして
R3、R4、Y、W、W1、Z、Z1、R、Ra、aおよびR5は先の定義の通りである〕を
有する化合物は、式(Ia)の化合物を式
H2N-OR6
(式中、R6は先の定義の通りである)を有する化合物と常法により反応させるこ
とによって製造することができる。
式(Ic)
R6およびR6aはそれぞれ同一または異なって、R6について先に定義した通りであ
り、そしてR3、R4、Y、W、W1、Z、Z1、R、Ra、aおよびR5は先の定義の通り
である)を有する化合物は、式(Ia)の化合物を式
(式中、R6およびR6aはそれぞれ同一または異なって、R6について先に定義した通
りである)を有する化合物と常法を用いて反応させることによって製造すること
ができる。
式(Ia)〜(Il)と称する式(I)の化合物を製造するのに好ましい合成
経路をスキーム1〜5に示す。
すなわち、スキーム1では、R3、R4、W、W1、Y、ZおよびZ1が先の定義の通
りである式(IV)の化合物を通常のフリーデル−クラフト(F-C)
はメチルまたはエチルである)であり、そしてR、Ra、aおよびR5は先に定義し
た通りである)でアシル化する。例えば、式(IV)の化合物を、ルイス酸例えば
FeCl3、AlCl3、ZnCl2等の存在下約−30℃〜約150℃で式(IIIa)の化合物の酸
塩化物または酸無水物とそのままでまたは不活性溶媒例えばジクロロメタン、1,
2−ジクロロエタン等の中で反応させて
絡している)の化合物を得ることができる。
F-Cアシル化による生成物の位置化学は芳香族環系の電子状態に左右されるの
で、式(Ia)のごく限られた位置異性体がこの経路を用いて直接入手可能とな
る。例えば、F-Cアシル化によって次の位置異性体が得られる:環が置換基を有
していない場合、2−ジベンゾフラニル、2−ジベンゾチオフェニル、3−ジベ
ンゾ−5,5−ジオキソ−チオフェニル、2−フルオレニル等。
直線状の三環式複素環の2個の末端環が異なっている場合、F-Cの位置選択性
は電子がより豊富な環系に有利なものとなる。すなわち、環の電子密度が低減す
ると(すなわち、ニトロ化またはハロゲン化により)、その他の環系でのアシル化
が増大する。一方では、電子密度が増大すると(例えばアルコキシのような置換
分を有する)、影響を受けた環でのF-Cアシル化に有利となる傾向がある。
式(Ib)および式(Ic)の化合物は、式(Ia)の化合物を式(Ib)の
化合物に変換するために、または式(Ia)の化合物を式(Ic)の化合物に変
換するために先に記載した方法を用いて式(Ia)の化合物から製造される。
スキーム2は式(I)の化合物を製造するための代替経路を示している。すな
わち、アルデヒド部分(CHO)が環Aの1−または2−位に連結し、そしてR3、R4
、W、W1、Y、ZおよびZ1が先に定義した通りである式(V)の化合物を、常法
を用いて、R、RaおよびR5が先の定義の通りである式(VI)のアクリレートと反
応させて、部分
が環Aの1−または2−位に連結し、そしてR3、R4、W、W1、Y、Z、Z1、R、
RaおよびR5が先の定義の通りである式(Id)の化合物を得る。
式(Ie)および式(If)の化合物は、式(Ia)の化合物を式(Ib)の化合物に
変換するために、また式(Ia)の化合物を式(Ic)の化合物に変換するため
に先に記述した方法を用いて式(Id)の化合物から製造される。
スキーム3および4は式(I)の化合物の特定の位置異性体を製造するための
操作を開示するものである。すなわち、R3、WおよびW1が先の定義の通りである
式(VII)または式(VIIa)の化合物をジメチルホルムアミド中でオキシ塩化り
んと反応させて、それぞれR3、WおよびW1が先の定義の通りである式(VIII)ま
たは式(VIIIa)の化合物を得る。式(VIII)または式(VIIIa)の化合物をR、
RaおよびR5が先の定義の通りである式(IX)の化合物と、式(V)の化合物を式
(Id)の化合物に変換するために前文に記述した方法を用いて反応させて、式
(Ig)の化合物または式(Ij)の化合物を得る。
式(Ih)、式(Ii)、式(Ik)および式(Il)の化合物は、それぞれ
、式(Ia)の化合物を式(Ib)の化合物に変換するために、
または式(Ia)の化合物を式(Ic)の化合物に変換するために前文に記述し
た方法を用いて式(Ig)または式(Ij)の化合物から製造される。
スキーム5は、式(I)の光学活性化合物を製造するのに使用し得る式(XVI
)の光学活性側鎖を製造する操作を開示するものである。すなわち、RまたはS
4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(式(X))をRが先の定義の通りである式(
XI)の酸塩化物と反応させて、Rが先の定義の通りである式(XII)の化合物を
得る。
式(XII)の化合物をKHMDSの存在下にRaが先の定義の通りである式(XIII)の
化合物と反応させて、RおよびRaが先の定義の通りである式(XIV)の化合物を
得る。式(XIV)の化合物のジアステレオマーを分離し、次いでLiOH/H2O2と反
応させ、その次に塩化オキサリルと反応させて、RおよびRaが先の定義の通りで
ある式(XV)の化合物を得る。式(XV)の化合物をピリジンの存在下にN,O−
ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させて、RおよびRaが先の定義の通り
である式(XVI)の化合物を得る。
式(II)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIIa)、(IX)、(X)、
(XI)および(XIII)の化合物は既知であるか、または当該分野で既知の方法によ
って製造することができる。
本発明の化合物は様々な経口および非経口剤形に調製し、投与することができ
る。従って、本発明の化合物は、注射で投与することができる。すなわち、静脈
内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内または腹腔内に投与することができる。本
発明の化合物はまた吸入により、例えば鼻内に
投与することもできる。さらに、本発明の化合物は経皮投与することもできる。
以下に述べる剤形は有効成分として式(I)の化合物または式(I)の化合物の
相当する製薬上許容し得る塩を含有し得ることは当業者に明白である。
本発明の化合物から医薬組成物を調製するには、製薬上許容し得る担体は固体
または液体であってよい。固形の剤形は散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ
剤、坐剤および分散性顆粒剤を包含している。固体担体は、希釈剤、着香剤、可
溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤またはカプセル充填剤と
しても作用し得る物質の1種または2種以上であってよい。
散剤では、担体は微粉砕した固体であり、微粉砕した有効成分との混合物とな
っている。
錠剤では、有効成分を必要な結合性を有する担体と適当な比率で混合し、そし
て所望の形、サイズに圧縮する。
散剤および錠剤は好ましくは活性化合物を5または10乃至約70%含有している
。適当な担体は炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳
糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロ
ース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等で
ある。「製剤」なる用語は有効成分がその他の担体を伴うかまたは伴わないで担
体により囲まれているため、担体と一緒になっているカプセルを提供する、担体
としてのカプセル充填剤と活性化合物との処方物を包含することを企図している
。同様に、カシェ剤および口中錠が包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤
、カシェ剤および口中錠が経口投与に適した固形剤形として使用できる。
坐剤を製造するには、低融点ワックス例えば脂肪酸グリセリドまたは
カカオ脂の混合物をまず溶融し、そして有効成分を撹拌等によってその中に均質
に分散させる。溶融した均質な混合物を都合のよい大きさの型に注入し、冷却し
て固化させる。
液状の製剤は、液剤、懸濁剤および乳剤、例えば水または水−ポリエチレング
リコールの溶液を包含する。非経口注射のために、液体製剤をポリエチレングリ
コール水溶液中で溶液に処方することができる。
経口使用に適した水性液剤は有効成分を水に溶解し、所望により適当な着色剤
、着香剤、安定剤、粘稠化剤を加えることによって製造することができる。
経口投与に適した水性懸濁剤は、微粉砕した有効成分を粘張性材料例えば天然
または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリ
ウムおよびその他の周知の懸濁剤と一緒に水に分散することによって製造するこ
とができる。
また、使用直前に経口投与液状製剤に変換することを企図している固形製剤も
包含される。このような液状製剤には液剤、懸濁剤および乳剤が包含される。こ
れらの製剤は、有効成分に加えて、着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工およ
び天然の甘味剤、分散剤、粘稠化剤、可溶化剤等を含有していてもよい。
製剤は好ましくは単位投与形態である。この形態では、製剤は、有効成分を適
量含む単位用量に分割されている。単位投与形態は包装された製剤であってよく
、包装には、個別の量の製剤、例えば包装した錠剤、カプセル剤およびバイアル
またはアンプル入りの散剤が入っている。また、単位投与量形態はカプセル剤、
錠剤、カシェ剤または口中錠それ自体でもよいし、また包装した形態のこれらの
剤のいずれかの適当な数であってもよい。
単位投与量形態中の有効成分の量は、特別な適用例および有効成分の効力によ
って1mg〜1000mg、好ましくは10mg〜100mgに変えたりまたは調整することがで
きる。所望により、組成物はその他の相容し得る治療剤を含んでいてもよい。
多発性硬化症、アテローム硬化性プラーク破壊、大動脈瘤、心不全、再狭窄、
歯周病、角膜潰瘍、がん転移、腫瘍脈管形成、関節炎または白血球の組織侵襲に
よるその他の自己免疫性または炎症性障害の治療のための薬剤としての治療上の
用途では、本発明の医薬としての方法で用いられる化合物は約1mg〜約100mg/k
g/日の初回量で投与する。約25mg〜約75mg/kgの一日用量範囲が好ましい。し
かしながら、用量は患者の要件、治療中の症状の重篤度および使用する化合物に
よって変えることができる。特別な状態のための適切な用量の決定は当該分野の
技術範囲内にある。一般に、治療は化合物の最適用量よりも低い少な目の投与量
で開始する。その後、その状況下で最適の効果が得られるまで投与量を小量ずつ
増加する。所望により、便宜的に総一日投与量を分割し、その日の間に部分量で
投与してもよい。
以下に示す実施例は限定のためのものではないが、これらにより本発明の化合
物を製造するための好ましい方法を説明する。
実施例 1
γ−オキソ−2−ジベンゾフランブタン酸
5Lの三つ口丸底フラスコに機械的撹拌機、熱電対温度計および窒素導入口付
きパウダー漏斗を装着する。このフラスコにジクロロメタン1.5Lを入れ、窒素
で掃過し、そして塩化アルミニウム(196g、1.44モル)を小量ずつ加える。得
られたスラリーを、ジベンゾフラン(100g、0.595モル)および無水コハク酸(
71.5g、0.714モル)の乾燥粉末混合
物を小量ずつ加えながら、ドライアイス浴中で冷却する。添加は反応温度を−30
℃より低く保つのに十分な速度で行い、15分で完了する。得られた混合物を該温
度で2時間撹拌し、次にHCl水溶液(溶液1L中濃HCl375mL)でゆっくりと処理
する。HCl溶液添加中、温度を最高3℃にコントロールし、添加を45分で完了す
る。次に、ジクロロメタンを真空で除去し、水性スラリーを濾過し、固体を風乾
すると白色固体175gが得られる。この固体をテトラヒドロフラン(THF)4Lに
抽出し、Darcoで処理し、そして濾過する。濾液を蒸発させるとクリーム色の固
体が残留し、このものを95%エタノールから再結晶すると粗製生成物180gが得
られた。この固体をトルエン(10L、4部分量)から再結晶し、そして固体をヘ
キサンで洗浄し、真空乾燥すると標記化合物119.5g(融点186〜188℃、収率75%
)が得られた。
実施例 2
4−ジベンゾフラン−2−イル−4−ヒドロキシイミノ−酪酸
メタノール(2.5L)中のγ−オキソ−2−ジベンゾフランブタン酸(実施例
1)(75.5g)および酢酸ナトリウム三水和物(114.9g)の溶液をヒドロキシル
アミン塩酸塩(38.9g)の水溶液(溶液150mL)で処理する。溶液を3.5時間加熱還
流させ、次に濃縮し、冷却し、そして濾過する。この固体を水洗いし、真空乾燥
すると粗製の標記化合物(71.32g、理論値の89.6%)が得られた。この固体を酢
酸エチルから再結晶し、ヘキサンで洗浄し、そして真空乾燥すると標記化合物53
.04g(収率68%)が得られた。融点167〜168℃(d)。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 31/38 ADU A61K 31/38 ADU
C07D 333/76 C07D 333/76
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),UA(AM,AZ,BY
,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AU,BG
,CA,CN,CZ,EE,GE,HU,JP,KR,
LT,LV,MX,NO,NZ,PL,RO,SG,S
I,SK,UA,UZ
(72)発明者 ピカール,ジヨーゼフ・アルマン
アメリカ合衆国ミシガン州 48187.キヤ
ントン.サールツ ロード44809
(72)発明者 ホワイト,アンドルー・デイビツド
アメリカ合衆国ミシガン州 48169.ピン
クニー.ウエスト スプリツトストーン
10608
(72)発明者 イエ,チー−チユアン
アメリカ合衆国ミシガン州 48105.アン
アーバー.タマラツクストリート2416