【発明の詳細な説明】
多成分供給流のヒドロホルミル化 発明の分野
本発明は、水素、一酸化炭素、C2〜C5オレフィン、及びC2〜C5アルキンを
含有するある種の多成分合成ガス供給流のヒドロホルミル化方法に関する。発明の背景
石油化学供給源として天然ガスの利用が世界中で集中的に研究されている。天
然ガスの現在の使用は、主に合成ガス(“syngas”、一酸化炭素と水素の混合物)
の製造、及び燃料に限られている。
しかしながら、短時間接触アセチレンバーナーを用いてメタンがアセチレン含
有合成ガスに変換されることは長い間既知であった。エチレンを同時製造するか
又はエチレンと、アセチレンを多く含んだ供給原料とを混合すると、安価な天然
ガス系供給源が供給される。しかしながら、かかる同時製造供給流の使用はある
種のプロセスには問題があった。
高度に精製されたオレフィンと合成ガス混合物のアルデヒドとアルコール生成
物へのヒドロホルミル化は周知である(B.Cornils“New Syntheses with Carbon
Monoxide”の“Hydroformylation.Oxo Synthesis,Roelen Reaction”,Ed.J
.Falbe,Springer Verlag:ニューヨーク,1980参照)。純粋なアルコール生成物
が所望される場合、アルデヒド生成物は対応するアルコール誘導体に水素添加さ
れる。特に有効な触媒は、油溶性ホスフィン修飾Rh均一系触媒として純粋な軽
質オレフィン供給原料のヒドロホルミル化に記載されており(例えば、米国特許
第 3,527,809号、同第 3,917,661号、同第 4,148,830号参照)、他の均一系触媒
より低圧で操作し、C3以上のオレフィンのヒドロホルミル化において高いノル
マル/イソ比を生じ、それらの純粋なオレフィン供給原料と極めて有効であるこ
とが証明された。精製エチレン供給原料をプロパナールにヒドロホルミル化する
ために使用されるかかる油溶性Rh均一系触媒の使用は、Evansら(J.Chem.So
c.(A)1968,3133)、及びPruettら(J.Org.Chem.1968,34,327)にも記載
された。しかしながら、アセチレン及び他の高度不飽和炭化水素が市販のオキソ
供給原料に不純物として存在する場合に触媒の活性が強く阻害されることから、
供給源の十分な精製が強く求められている。これらの成分は、ヒドロホルミル化
前に実質的に除去されなければならない(B.Cornils“Hydroformylation Oxo Sy
nthesis,Roelen Reaction”,“New Syntheses with Carbon Monoxide”,Ed.:
J.Falbe,Springer Verlag: ニューヨーク,1980,pp.64 & 73参照)。
合成ガス(COとH2の混合物)とオレフィンの高度に精製された供給原料は
、現在、別個の2プロセスで生成されている。軽質オレフィンは、通常、スチー
ムクラッキングで生成され、微量のアセチレン及びジエンさえも除去する深冷蒸
留と選択的水素添加によって精製される。現在用いられている高度に精製された
オレフィン供給原料は、それらの不純物を100 ppm未満、典型的には10 ppm
未満含有する。実際に、スチームクラッキングによるヒドロホルミル化用に現在
製造されたエチレンの価格の大部分は、その精製と関連がある。合成ガス成分は
、メタン又は粗留出物のような炭化水素、及び酸素からジエン又はアセチレンを
実質的に生じない方式で行われる部分酸化(POX)リアクター内で生成される
。POXリアクター内で生成された合成ガスは微量のアセチレン及びジエンを含
有するが、精製オレフィン供給原料と混合される前に注意深く精製される。
純粋なアセチレン及び純粋なジエンのCo又はRh触媒によるヒドロホルミル
化も既知である(米国特許第 5,312,996号,1994; P.W.N.M.Van Leeuwen& C
.F.Roobeek J.Mol.Catal.1985; 米国特許第 4,507,508号,1985; 31,345,
B.Fell,H.Bahrmann J.Mol.Catal.1977,2,211; B.Fell,M.Beutler Er
doel und Kohle-Erdgas-Petrochem.1976,29(4),149,米国特許第 3,947,503号
,1976; B.Fell,W.Boll Chem.Zeit.1975,99(11),452; M.Orchin,W.Ru
pilius Catal.Rev.1972,6(1),85; B.Fell,M.Beutler Tetrahedron Lette
rs 1972,No.33,3455; C.K.Brown & G.Wilkinson J.Chem.Soc.(A)1970,
2753; B.Fell,W.Rupilius Tetrahedron Letters 1969,No.32,2721;F.H.
Jardine ら Chem.& Ind.1965,560; H.Greenfieldら J.Org.Chem.1957,2
2,542; H Adkins & J.L.R.Williams J.Org.Chem.1952,71,980参照)。
それらの高度不飽和化合物のコバルト触媒によるヒドロホルミル化は、
高温及び高圧(145〜175℃、20〜30Mpa)でさえ緩慢である。更に
、反応は、たいてい副生成物を生じ、温度及び圧力の急激な上昇を伴うランナウ
ェイ反応を生じる。オレフィンのヒドロホルミル化は、アセチレンがコバルトカ
ルボニルと非常に安定な付加物を形成するのでそれらの化合物によって致命的に
阻害される。化学量論量のアセチレンは、コバルト触媒を触媒的に不活性なアセ
チレン付加物にほとんど変換させることができる(H.Greenfieldら,J.Org.Ch
em.1957,22,542)。慣用のRh触媒を用いて報告された反応条件及び反応速度
は、商業ベースによる使用には実用的ではない。Fellは、典型的には、PPh3/
Rh触媒を用いて17〜23MPaの圧力を用いたが、高転化率には2〜5時間
の反応時間が必要である。Wilkinsonは、ヘキシン−1のヒドロホルミル化に4.8
MPaの圧力で高転化率を達成したが12時間の反応時間がかかった。Van Leeu
wen & Roobeek は、ブタジエンのヒドロホルミル化に1.2MPa、95〜12
0℃及びP/Rh比10以下の条件を適用したが低活性であった(オレフィンに
ついては程度がそれより低い)。米国特許第 3,947,503号には、1,3−ブタジ
エンをヒドロホルミル化するために2段階プロセスが記載されている。第1段階
では、PPh3/Rh触媒がアルコール又はジオールの存在下に用いられて不飽和
C5アルデヒドのアセタールを生成する。第2段階では、その中間体がCo触媒
を用いてヒドロホルミル化される。米国特許第 4,507,508号に開示された方法は
、アルコールの存在下有機酸又はエステル促進P/Rh触媒による共役ジエンの
変換の特許を請求している。米国特許第 5,312,966号には、1,3−ブタジエン
の変換にポリホスファイト配位子修飾Rh触媒が記載されている。開示された触
媒による1,3−ブタジエンのヒドロホルミル化の2段階プロセスを用いる場合
、許容しうる変換を行わせるために第2段階では更に過酷な条件が勧められる。
後者の特許には、α−オレフィンの変換において強力な阻害物質として1,3−
ブタジエンが記載されている。α−オレフィンと1,3−ブタジエンとの同時変
換では、α−オレフィン及び1,3−ブタジエン双方のオキソアルデヒド生成物
が生じる。
上述のように、アセチレンとジエンは、α−オレフィンのヒドロホルミル化に
おいて触媒の強力な阻害物質/有害物質として作用し、オキソ供給原料からの除
去が必要である。欧州特許出願第0225143 A2号には、アセチレン及びエチレン含
有合成ガス混合物の製造及び使用方法が開示されている。開示された使用スキー
ムの1つはヒドロホルミル化によりプロパナールを製造することであるが、不均
一金属酸化物又は硫化物触媒を用いたエチレンに対する選択的水素添加により供
給原料からまずアセチレンを除去しなければならない。米国特許第 4,287,370号
には、触媒としてHRh(CO)(PPh3)3を用いてヒドロホルミル化前に選択的
水素添加によりC4オレフィン供給源から1,3−ブタジエンのような阻害物質を
除去しなければならないことが教示されている。ドイツ特許第DE 2638798号には
、ホスフィン修飾ロジウム触媒によるオレフィンのヒドロホルミル化において許
容しうる触媒寿命を行わせるためにアセチレンとジエンの除去が必要であること
が教示されている。最もしばしば引用された情報の1つでは(B.Cornils“New S
yntheses with Carbon Monoxide”の“Hydroformylation.Oxo Synthesis,Roel
en Reaction”,Ed.: J.Falbe,Springer Verlag: ニューヨーク,1980,p.73
)、アセチレンとジエンがホスフィン修飾Rhオキソ触媒の“古典的触媒毒”と
言われている。アセチレンとジエンは、オレフィンのコバルト触媒によるヒドロ
ホルミル化においても強力な有害物質であることが報告されている(V.Macho &
M.Polievka Rau.Roc.1976,18(1),18;米国特許第 2,752,395号)。
アセチレン及びエチレン含有合成ガス混合物を変換する既知の接触プロセスは
、プロパナール以外の生成物を生じるか或いは使用した条件及び/又は達成した
反応速度が実用的でない。従って、例えば、欧州特許出願第 0,233,759号(1987)
には、アセチレン及びエチレン含有合成ガス(アセチレン、エチレン、CO、及
びH2の各々6:3:30:61比での混合物)をアルコールの存在下にRh触
媒を用いてアクリル酸エステルとプロピオン酸エステルの混合物への変換が教示
されている。PPh3修飾Rhオキソ触媒を用いて同じ供給原料をP/Rh比1
0.6以外は同一条件下で変換する場合、欧州特許出願第 0,233,759号(1987)に
記載された実質的な死触媒(ターンオーバー数1.5×10-4モル生成物/モル
Rh/sec、及び全ターンオーバー13/24時間)は微量のメチルエチルケ
トンとプロピオン酸メチルを含むプロパナールとアセトンを90:1のモル比で
生じる。アセチレンとエチレンを含有する合成ガス混合物がRh触媒の存在下に
α,β−不飽和エチルケトンを生じることが T.Miseら(Chem.Lett.1982,(3),
401)報告されたが、その触媒にはホスフィンがない。ガス供給原料中のエチレン
濃度が高くても、41.7v%、実測された触媒活性は5ターンオーバー/h、
又は1.39×10-3モル/生成物/モルRh/secの程度で非常に低い。Mis
eによって報告された全ターンオーバーは、6時間でわずか30である。
従って、オレフィン及びアルキン、特にエチレンとアセチレンを含有する、ロ
ジウム系触媒を用いるオキソ/ヒドロホルミル化供給流の処理を可能にする方法
が見出されるとすれば望ましいことである。本発明はそれらの要望に関する。図面の簡単な説明
図1は、スクラバーガード床において試薬としてロジウム錯体を用いて多成分合
成ガス中の多価不飽和化合物のレベルを低下させる水素処理ガード床を記載する
図である。
図2は、多成分合成ガス混合物のヒドロホルミル化の2段階オキソプロセスを記
載する図である。
図3は、アルデヒド生成物の分離及びアルキレン−オレフィン再循環によるアル
キレン−オレフィン回収の一貫したプロセスを記載する図である。発明の要約
本発明は、触媒としてある種のロジウム錯体の存在下に行われるヒドロホルミ
ル化反応において単一種類の供給流ではなくむしろオレフィン(特にエチレン)
及び高度不飽和炭化水素、特にアルキン(特にアセチレン)の双方、累積ジエン
(特にアレン)及びその混合物を有する不飽和炭化水素混合供給原料を含有する
多成分合成ガスを用いる方法を提供する。利点として、本発明は、ロジウム系触
媒の技術を用いてアセチレンとエチレンの同時変換を可能にし、新規な供給原料
と処理オプション、及び対応する生成物アルデヒド、特にプロパナールの合成の
簡易化製造スキームを提供する。
従って、本発明は、C3〜C6アルデヒドの製造方法であって、下記の成分
--(a)C2〜C5オレフィン及びその混合物、及び
--(b)(i)C2〜C5アルキン及びその混合物又は(ii)C3〜C5累積ジエ及び
その混合物又は(iii)(i)と(ii)の混合物、
を含有する混合物を、CO、H2並びにRh及び有機リン化合物を溶液中のRh
濃度1〜1000 ppm重量で錯体をつくることにより製造されたロジウム錯体触
媒溶液でヒドロホルミル化する工程を含む方法を提供する。
本発明は、また、C3〜C6アルデヒドの製造方法であって、下記の成分
--(a)C2〜C5オレフィン及びその混合物、及び
--(b)(i)C2〜C5アルキン及びその混合物又は(ii)C3〜C5累積ジエ及び
その混合物又は(iii)(i)と(ii)の混合物、
を含有する混合物を、CO、H2並びに触媒溶液のP/Rh原子比が少なくとも
30であるRh及び有機リン化合物の錯体をつくることにより製造されたロジウ
ム錯体触媒溶液でヒドロホルミル化する工程を含む方法を提供する。
本発明は、また、C3〜C6アルデヒドの製造方法であって、下記の成分
--(a)C2〜C5オレフィン及びその混合物、及び
--(b)(i)C2〜C5アルキン及びその混合物又は(ii)C3〜C5累積ジエ及び
その混合物又は(iii)(i)と(ii)の混合物、
を含有する混合物を、CO、H2並びに触媒溶液のP/Rh原子比が下記のRL値
より大きいRh及び有機リン化合物の錯体をつくることにより製造されたロジウ
ム錯体触媒溶液でヒドロホルミル化する工程を含む方法を提供する。
式中、RBは触媒的に活性なRh錯体に十分なP/Rh比であり、pKaTPPはト
リフェニルホスフィンのpKa値であり、pKaLは三有機リン化合物のpKa
値であり、Rは気体定数であり、ΔSBは35(N−1)cal/モル/°K(Nは配
位分子あたりのP−Rh結合数である)である。
上記のヒドロホルミル化は、上記のように対応するC3〜C6アルデヒドを製造
する。
典型的には、触媒的に活性なRh錯体のP/Rh原子比は1〜3である。典型
的には、ロジウム錯体触媒は低原子価Rh及び油溶性三有機リン化合物を溶液中
で錯体をつくることにより製造された油溶性ロジウム錯体触媒である。典型的に
は、触媒溶液は脂肪族又は芳香族炭化水素、エステル、エーテル、アルデヒド、
生成物オキソアルデヒドの縮合副生成物等の油性溶媒を用いて調製される。
本発明は、また、アルコール、酸、アルドール二量体を含む上記のように製造
されたアルデヒドの対応する誘導体の製造、及び該アルドール二量体から製造さ
れた生成物の種々の水素添加及び酸化を提供する。
我々は、また、アセチレンの存在がヒドロホルミル化触媒を安定化することを
見出した。
本発明は、本明細書に開示された要素を適切に含むか、それからなるか又は実
質的にそれらからなり、必要とされる特に開示されていない工程の存在しないと
きに実施される。発明の詳細な説明
本明細書中の標題は、単に便宜上のものであり、決して本発明を限定するもの
ではない。更に、図面及び本文全体での符号は便宜上次の通りである:プロセス
(例えば、反応成分及び生成物)流は100番台の番号がつけられ、プロセス又
は操作を行う手段(例えば、ユニット又は装置)は10番台の番号がつけられる
。各々の最初の数字は、対応する図面を見分けるものである。
本発明は、多成分合成ガスを用いるプロセスに関する。多成分合成ガス(MC
S)混合物は、一酸化炭素、水素、炭素原子2〜5個を有するオレフィン(一般
式CnH2nで官能基C=Cを有する)、及び炭素原子2〜5個を有するアルキン
(一般式CnH2n-2で官能基C≡Cを有する)又は累積ジエン(一般式CnH2n-2
で官能基C=C=Cを有する)のような高度不飽和炭化水素を含有するガス混合
物として定義される。MCS混合物は、炭素原子3〜5個を有する共役ジエン(
一般式CnH2n-2で官能基C=C−C=Cを有する)、炭素原子4〜5個を有す
るエニン(一般式CnH2n-4で官能基C=C−C≡Cを有する)及びジイン(一
般式CnH2n-6で官能基C≡C−C≡Cを有する)のような他の不飽和炭化水素
を含有してもよい。MCS混合物は、不活性成分、例えば、窒素、二酸化炭素、
アルカン及び芳香族炭化水素のような機能的に不活性な炭化水素、及び水蒸気を
含有することもできる。本明細書に用いられる“オレフィン”という語は、アル
ケンを含み、ジエンを除く;ジエンが存在する場合には別に言及される。
下記の論理中、“一価不飽和化合物”は、オレフィン又はアルキンである1個
の不飽和官能性を有する炭化水素MCS成分のサブグループとして理解される。
“多価不飽和化合物”は、少なくとも2個の炭素−炭素多重結合、即ち、本明細
書に定義されたジエン、ジイン、及びエニンが個々に又は組合わせて用いられた
炭化水素MCS成分のサブグループである。
本発明は、主成分、水素及び一酸化炭素(即ち、合成ガス)、C2〜C5アルキ
ン、特にアセチレン、及びC2〜C5オレフィン、特にエチレンを組合わせること
によるある種のMCS供給原料のヒドロホルミル化(オキソ反応)による変換方
法を提供する。
本発明の方法の1実施態様は、ロジウム触媒低圧オキソ変換プロセスにおいて
少なくとも一酸化炭素、水素、及び炭素原子2〜5個を有するオレフィン系炭化
水素(即ち、エチレン、プロピレン、ブテン、及びペンテン)、及び炭素原子2
〜5個を有するアルキン(例えば、アセチレン及びメチルアセチレン)の一価不
飽和炭化水素反応成分を含有する多成分合成ガス供給原料を使用する方法を提供
する。それらの一価不飽和アルキン及びオレフィンとしては、個々のC2〜C5ア
ルキン成分及びオレフィン成分、並びにC2〜C5アルキン成分の混合物及びC2
〜C5オレフィン成分の混合物が含まれる。好適実施態様においては、主要な一
価不飽和炭化水素反応成分は実質的にエチレン及びアセチレンである。それらの
反応成分は、調製法によっては少量成分として反応性C3〜C5一価不飽和化合物
及びC3〜C5多価不飽和化合物、及び種々の量で一酸化炭素、水蒸気、窒素、及
び機能的に不活性な炭化水素(例えば、アルカン及び芳香族化合物)のような機
能的に不活性な物質を含有することができる。
実質量の不活性(及び機能的に不活性)成分を含有する多成分合成ガスは、希
釈多成分合成ガスと呼ばれる。希釈多成分合成ガスは、反応性成分(CO、H2
、オレフィン、アルキン)が実質量の不活性成分と共に有する多成分合成ガス供
給原料を包含することができる。実質的な希釈レベルを有する供給流の使用は、
それらの供給流が高度に精製された成分のコストに相対して実質的に安く利用で
きる点で望ましいことである。例えば、触媒分解軽質最終産物又はスチーム分解
加熱炉流出物中に含まれるオレフィンは、精製オレフィンに相対して実質的に安
く利用できる。同様に、アセチレン及び合成ガスが完全に精製せずに得られる場
合
にはコストが下がる。更に、部分酸化(POX)プロセスは、空気が酸素の代わ
りに供給原料として用いられるとコストを下げることができる。かかる空気吹き
込みPOXからの合成ガス又は多成分合成ガスは、実質レベルの含N2のため希
釈多成分合成ガスとして特徴づけられる。大体において、希釈多成分合成ガス中
に存在する不活性成分の量は任意であり、供給流の99%に達することさえある
。典型的には、希釈多成分合成ガス中の不活性成分レベルは該流の1〜80%で
ある。表2(実施例1)には、N2、CO2、CH4、及びC2H6を含む不活性成
分を63%有する希釈多成分合成ガスのヒドロホルミル化の例が示される。
本明細書で“多成分プロセス供給原料”と呼ばれるプロセス全体の多成分合成
ガス供給原料中ある種の微量成分は、オキソ反応に有害であることが既知である
。不可逆触媒毒、例えば、H2S及びCOSのようなイオウ化合物がある。可逆
毒又は加速触媒失活を引き起こすものもある。後者のグループとしては、ハロゲ
ン化物、シアン化物、酸素、及び鉄カルボニルのような成分が含まれる。それら
の有害成分の濃度は、本明細書で“多成分オキソリアクター供給原料”と呼ばれ
るオキソリアクター又はユニットへ許容しうる多成分合成ガス供給原料を与える
ように当該技術において既知の種々の手法で調節される。
多成分合成ガス混合物は、種々の異なる原料から得られる。本発明の利点は、
混合したアセチレン−エチレン合成ガスが本発明の方法において供給源として用
いられることである。
本発明の方法において有効な多成分合成ガス混合物を製造するために種々の方
法がある。1つは、合成ガス(COとH2の混合物)を含有する流れとアセチレ
ン、エチレン、及び任意の他の不飽和炭化水素の混合物を含有する流れとを混ぜ
る方法である。それらの流れは、共に慣用の石油化学プロセスから得られる。合
成ガス(COとH2)含有流は、慣用の部分酸化(POX)により生成される。主
要な不飽和炭化水素成分としてエチレン及びアセチレンを含有する軽質一価不飽
和化合物(C2〜C5)は、スチームクラッキング又はアチレン製造のような石油化
学プロセスから、又はアセチレン又は合成ガスを製造するために用いられる既知
の方法の1種を変更することにより得られる。従って、アセチレンは、メタン−
酸素混合物を反応させるバーナーを利用する部分酸化プロセスを用いて生成さ
れる。約2:1のモル比のメタンと酸素で供給されたアセチレンバーナーは、エ
チレン並びにCO及び水素を含有するアセチレンを多く含んだ混合物を直接製造
することができる。反応物をナフサで急冷するとアセチレンバーナー生成物流中
のアセチレンとエチレンの濃度を高くすることができる。エチレン又は合成ガス
は、また、成分のモル比を調節するためにアセチレンを多く含んだ混合物に添加
される。その利点は、天然ガスのような量の多い供給源の利用を可能にし、著し
い収量の損失及び経費の追加をたいてい生じるオキソ供給原料の生成及び高価な
分離及び精製の要求を排除することである。
安全性の限界よりも低い分圧を維持するために、MCS供給原料からのアセチ
レンの一部はガス洗浄された後にオキソリアクターの反応圧に圧縮される。また
、アセチレン含有流は、他の供給成分、例えば、エチレン、一酸化炭素、水素又
はその混合物で希釈される。
本発明の方法においてオキソヒドロホルミル化リアクター又は反応ゾーンに入
れる多成分合成ガス(多成分オキソリアクター供給原料)は、C2〜C5一価不飽
和化合物を含有し、特に、アセチレンに対するエチレン比は1:100〜100
:1、好ましくは1:10〜10:1の範囲にある。典型的には、その混合物は
全不飽和化合物の少なくとも40%であるオレフィンの量を含有する。一価不飽
和化合物の量に関して多成分オキソリアクター供給原料中のCOとH2の量は、
オキソ反応において一価不飽和炭化水素の化学量論変換に少なくともほぼ必要と
される量のレベルであることが好ましい。それらの化合物の化学量論変換には、
COのモル%が一価不飽和のモル%の合計に等しいことが必要である。同様に、
化学量論変換については、H2のモル%はC2〜C5オレフィンのモル%+C2〜C5
アルキンのモル%の2倍の合計に等しくなければならない。COとH2は、多成
分オキソリアクター供給原料中に化学量論変換に要する量の1/2〜100倍の
範囲で存在することが好ましい。COとH2の濃度は、化学量論変換に要する濃
度の1〜10倍の範囲にあることが更に好ましい。
それらの要求に従って、オキソリアクターに入れる多成分合成ガス中(即ち、
多成分オキソリアクター供給原料中)のH2/CO比は、1:1〜100:1、好
ましくは1:1〜50:1、更に好ましくは1:1〜10:1の範囲とすること
ができる。過剰容量のH2の存在が化学の見通しから好ましいが、10を超える
H2の過剰量は、材料取り扱いの見通しから望ましくなく、ユニット操作で不要
な費用がかかる結果となる。
本発明の方法のためにオキソリアクターに入れる多成分合成ガス混合物中(即
ち、多成分オキソリアクター供給原料中)に存在する最初の化学種の組成値の範
囲及び典型的組成を表1に示す。
スチームクラッキング又は部分酸化などで製造された多成分合成ガス混合物は
、ヒドロホルミル化プロセスに有害であるか又はオキソ触媒を失活することが既
知である種々の分子化学種を含有することがある。例えば、ロジウム金属錯体ヒ
ドロホルミル化触媒は、金属中心に不可逆的に結合するある種のイオウ含有分子
(例えば、H2S、及びCOS)によって有害であることが既知である。かかる
有害物質は、ガード床、特に酸化亜鉛を含有するガード床の使用のような化学及
び化学工学一般手法の使用によって除去される。
本発明で用いられる流れは、また、炭素原子3〜5個を有する多価不飽和化合
物を含有することができる。その濃度は、典型的には、ヒドロホルミル化に供給
される全不飽和炭化水素の5モル%未満である。オレフィン及びアルキンのヒド
ロホルミル化に活性である本明細書に述べられる触媒は、同様にオレフィン及び
多価不飽和化合物のヒドロホルミル化にも活性である。それらの多価不飽和化合
物のような高度不飽和成分は、オレフィンのオキソ変換において阻害物質となる
ことがある。金属と極めて強く結合することによりオキソ触媒の活性を低下させ
ることができるので、オレフィンのヒドロホルミル化に対して触媒の活性を低下
させることができる。従って、多価不飽和化合物の量は、ヒドロホルミル化に供
給される全不飽和炭化水素の好ましくは5%未満である。更に好ましくは、多価
不飽和化合物は全不飽和化合物の1モル%未満の量でヒドロホルミル化供給原料
に存在させなければならない。実施例4及び8は、オレフィン及び多価不飽和化
合物(特にアレン)を含有する多成分合成ガス混合物のヒドロホルミル化を示す
ものである。多価不飽和化合物の濃度について上記好適例に対する例外は、非共
役、非累積ジエン(ジオレフィン)のグループであり、それについての制限はな
い。
一般的に言えば、多成分オキソリアクター供給流は、好ましくは一価不飽和化
合物を含有する。共役及び累積ジエン及びエニン型不飽和を含有する多価不飽和
炭化水素は、あまり望ましくないと考えられる。それらの多価不飽和化合物は、
多成分プロセス供給原料から除去されるか又はそれらの濃度はヒドロホルミル化
触媒と接触する前に下げられる。多成分合成ガス生成物は、一般的には、本発明
の方法において使用前に処理を必要としないが、上記の好適濃度より高い濃度で
多価不飽和物を含有する供給流はCO、H2、一価不飽和化合物、及び不活性成
分を実質的に含む流れで処理、分離又は希釈される。多価不飽和化合物の除去
上記で詳述した多価不飽和阻害成分の濃度が高すぎる場合にはオキソリアクタ
ーに入れる前に(即ち、ヒドロホルミル化する前に)必要ならば多成分プロセス
供給原料が処理される。例えば、不均一系触媒(例えば、欧州特許出願第0,225,
143 号に記載されたPd/アルミナ、又は混合酸化物及び硫化物触媒)は、それ
らの反応性炭化水素をオレフィン及びアルカンに変換することができる。しかし
ながら、それらの慣用の不均一系水素処理法は欠点がある。例えば、不均一系に
おいて高濃度の水素による高濃度の不飽和炭化水素(即ち、オレフィン、アルキ
ン、及び多価不飽和化合物)は、高度発熱ランナウェイ反応の危険がある。触媒
選択性、及び他のプラント操作の課題は、代替的解決を探究しようとする動機と
なる。
従って、本発明の他の実施態様は、既知の不均一系触媒の適用と関連がある課
題に関する選択的液相プロセスを提供する。そのプロセスに用いられる液相は、
均一相又はポンプ加圧可能な固形分含有スラリーとすることができる。出願人は
、
錯体が触媒として用いられないが別の前処理工程で化学量論試薬として用いられ
る場合に本発明のヒドロホルミル化工程で用いられるRh触媒が上記の多価不飽
和炭化水素成分をオレフィンに選択変換するのに適切であることを見出した。好
ましい試薬は、下記の“Rhオキソ触媒”で詳述されるオキソ/ヒドロホルミル
化リアクターの有機リン修飾ロジウム触媒である。好適実施態様においては、M
CS中の過剰の多価不飽和化合物をオレフィン及びアルカンに変換するために2
工程プロセスが用いられる。第1工程では、多成分合成ガスが試薬としての配位
ロジウム錯体を含有する溶液と接触させる。ロジウム錯体に対する多価不飽和化
合物の好ましい強力な結合は、MCSからロジウム上の結合化合物として保持さ
れる溶液へ抽出するように働く。その気体/液体“洗浄”は、MCS供給原料か
ら多価不飽和化合物を効果的に除去する。Rh錯体は、実質的に化学量論試薬と
して作用し、接触中MCSからの多価不飽和炭化水素を結合する。別の第2工程
では、多価不飽和化合物は対応するオレフィンに変換され、ロジウム錯体は錯体
形成多価不飽和化合物含有溶液を高水素及び低一酸化炭素含量の気体と多価不飽
和化合物の変換を行うのに十分な時間接触させることにより再生される。
かかる多価不飽和化合物の水素添加が慣用のヒドロホルミル化条件、即ち、1
0〜1000kPaのCO分圧で行われる場合には、強力に結合された化合物の
オレフィンへの変換は必要とされたロジウム濃度が非経済的であるように緩慢で
ある(実施例4参照)。しかしながら、我々は、それらの多価不飽和化合物の変
換が慣用のロジウムヒドロホルミル化より高い水素分圧、及び特に、低いCO分
圧の条件下で実質的に加速されることを発見した。錯体形成多価不飽和化合物含
有Rh溶液は、別のリアクター内で水素を多く含んだガス、即ち、高水素濃度及
び低CO濃度又は純粋水素を有するガスで再生される。その再生中、Rh錯体は
多価不飽和化合物を含まない形に戻り、多価不飽和化合物は対応するオレフィン
及びアルカンに水素添加される。従って、アレンは、例えば、その工程で最初に
プロピレンに水素添加され、ブタジエンはブテンに水素添加される。その再生水
素処理工程では、多価不飽和化合物から生成されたオレフィンは対応するアルカ
ンに更に水素添加されるものがある。再生工程での水素添加速度は、水素とCO
の分圧を調節することにより調節される。水素分圧が高いと水素添加速度が
増大する。反対に、CO分圧が高くなると触媒の水素添加活性が低下する。速度
及び選択性は、水素処理リアクター内のCO分圧を調節することにより便利に制
御される。
本明細書に記載された方法の利点は、多価不飽和化合物の化学量論除去に用い
られるガス洗浄溶液の組成が触媒オキソ工程に用いられるものと実質的に同じと
することができることである。任意のレベルの多価不飽和化合物除去が達成され
る。多価不飽和炭化水素(例えば、アレン又はビニルアセチレン)は、一価不飽
和化合物、特にオレフィンより強く結合することから気相から除去されることが
好ましい。強く結合する成分は、一価不飽和化合物のオキソ変換において、特に
オレフィンのオキソ変換において強力な阻害物質であるので、本方法はまず最も
強力な阻害物質を除去し、オキソ/ヒドロホルミル化リアクター供給原料として
好ましい多価不飽和化合物のない精製MCSを生成する。MCSヒドロホルミル
化供給原料の前処理にロジウムオキソ触媒溶液を用いることの利点は、下流のヒ
ドロホルミル化リアクター系がそのRh錯体を効果的に捕捉する手段をもたねば
ならないことからMCS気相内移動によるロジウム錯体の損失を厳密に制御する
ことが不要であることである。更に、MCS流によって運ばれたRh化合物は、
組成が実質的に同じであるのでオキソリアクター内の触媒を汚染することになら
ない。
一例として、図1は吸収塔11を示し、多価不飽和化合物含有MCS供給原料
(101)を油溶性ロジウム錯体(105)の多価不飽和化合物枯渇溶液と接触
させる。その吸収塔は、不均一系触媒作用によく用いられる犠牲的触媒のガード
床に似ている。多価不飽和化合物枯渇MCS流(102)は、吸収塔から出てヒ
ドロホルミル化に送られる(ここでは連続の2つのリアクター(13及び14)
として示され、各々ポンプ冷却(107及び109)及びリアクター流出物(1
08及び110)を有する)。不均一系触媒作用の“ガード床”と異なり、この
工程の多価不飽和化合物含有“犠牲的”触媒は、吸収塔の底部から回収されるR
h錯体(106)のポンプ加圧可能な液相溶液である。錯体形成多価不飽和化合
物含有溶液(106)は、水素含有気体(104)で処理される再生リアクター
(12)にポンプで送られる。再生リアクターでは、多価不飽和化合物を含
まないロジウム錯体が錯体形成多価不飽和化合物のオレフィン及びアルカンへの
水素添加によって回収される。再生リアクターからのパージガス流(103)は
、高濃度の水素を維持するために用いられる。Rh錯体(105)の再生多価不
飽和化合物枯渇溶液は、再生塔(12)から吸収塔(11)に戻される。多価不
飽和化合物の水素添加のオレフィン及びアルカン生成物は、触媒溶液に溶解して
いる程度まで、吸収塔(11)内での触媒溶液との接触でMCS流に戻される。
吸収塔(11)内の温度は、0〜150℃、好ましくは20〜60℃の範囲に
維持される。温度がその範囲を超えると、Rh錯体は許容できずに速やかに分解
する。また、高い方の温度では、吸収塔がRh含有溶液とMCSの双方を阻害物
質中で枯渇する場所がある場合には高反応性及び発熱の可能性がある。これは、
例えば、逆流吸収塔の上方で言えることである。低い方の温度は許容しうる。し
かしながら、Rh錯体と阻害物質間の平衡速度はある低温で限界になる。更に、
低温は余分な冷凍コストがかかり、プロセスの観点からの利点が加わらない。吸
収塔11の圧力は、好ましくは約5MPa未満に維持され、アセチレンの分圧は
0.2MPaの安全性の限界よりも低い。好適実施態様においては、吸収塔はオ
キソ/ヒドロホルミル化リアクターの直前に配置される。
再生塔(12)内の温度は、50〜150℃、好ましくは80〜125℃の範
囲に維持される。再生塔の圧力は、典型的には、工学、及び経済的要因によって
制限される。高い方の水素圧は、多価不飽和化合物を含まないRh錯体の再生及
びガス洗浄及び錯体形成した多価不飽和化合物の水素添加を加速し、小さな再生
容器及び少量のロジウム錯体を可能にする。再生塔内の圧力は、好ましくは約0
.1〜50MPa、更に好ましくは約1〜10MPaの範囲内に維持される。再
生塔への液体供給原料は、処理されずに吸収塔(11)を出る。ガス供給原料は
水素含有ガスであり、実質的に純粋な水素或いは水素が多く含まれCOが含まれ
ないガス混合物とすることができる。イオウ化合物、ハロゲン化物、シアン化物
、鉄カルボニル等のRhオキソ触媒の不可逆的有害物質を除去するように設計さ
れた他のガード床は、多価不飽和化合物吸収塔(11)へのMCS供給流を前処
理するために用いなければならない。再生塔(12)への水素を多く含んだ供給
ガスは、上記の不可逆的有害物質、及びRh錯体に対する他の有害物質を実質的
に
含んではならない。イオウを含まない純粋な水素の添加は、再生塔へのガス供給
原料に好ましい。多価不飽和化合物及びアルキンからオレフィンを生成する水素
添加工程の速度及び選択性は、COの分圧を調節することにより制御される。再
生塔のH2/CO分圧比は、10以上、好ましくは50以上でなければならない。
高い方のCO分圧は、オレフィンに対する高選択性をもたらすが多価不飽和化合
物変換に対する速度を低下させる。ある場合には、錯体形成多価不飽和化合物含
有溶液(106)に溶解したCOは、再生塔(12)で十分なCO分圧を与える
ことができる。必要な場合には、COは再生塔に水素含有ガスと共に同時供給さ
れるか又はCOを含まず水素が多く含まれたガス混合物が用いられる。
COが存在しないとRh錯体に対する不安定作用がないが再生塔内にある不飽
和炭化水素の水素添加の速度と選択性に影響する。COが存在しないことによっ
てオレフィンを含む全ての不飽和炭化水素はアルカンに水素添加される傾向があ
る。従って、多価不飽和化合物を含まないRh錯体の急速な再生(装置サイズが
小さくRh負荷が小さい)と選択性低下によるC2〜C5オレフィン原料の損失間
の経済的妥協を得るために多価不飽和化合物をオレフィンにのみ優先的に水素添
加するのに十分なレベルで再生塔のCO濃度を維持することが望ましい。多成分
合成ガスの主流から多価不飽和化合物を分離すると、MCS中のエチレンとアセ
チレンの大部分が多価不飽和化合物の急速な変換に適切な水素添加条件に曝され
ないように多価不飽和化合物が別々に処理されるのでプロセスの全体の選択性が
改善される。
触媒溶液の吸収塔への流速は、前述の多成分オキソリアクター供給原料の多価
不飽和化合物に示された濃度限度に適合するように設定される。ロジウムの流速
は、除去されるべき多価不飽和化合物の量と化学量論的に結合するのに十分なレ
ベルで設定されねばならない。従って、処理比は、除去されるべき多価不飽和化
合物の流速(単位時間あたりのモルとして表される)に対するロジウムの吸収塔
への流速(単位時間あたりのモルとして表される)の比として定義される。理想
的な吸収系については、この処理比は所望の多価不飽和化合物のみの除去を完全
にするために正確に1.0とすることができる。処理比は、本発明において0.5
〜50、好ましくは1〜10でなければならない。ロジウム錯体のかなりの部分
が
不活性であるか又は多価不飽和化合物のほかにMCSのアルキン成分の部分を除
去及び変換することが所望される場合には高い方の処理比が勧められる。
再生塔の条件(温度、圧力、滞留時間等)は、多価不飽和化合物の変換速度が
触媒溶液によって再生塔に運ばれる速度に等しい(また、吸収塔での多価不飽和
化合物の除去速度に等しい)ように設定される。実施例4は、再生塔の操作条件
を指定する化学工学の当業者によって用いられる多価不飽和化合物変換の使用速
度が含まれる。ガス洗浄溶液は、本明細書での条件下で同じ効果を達成するオキ
ソリアクター工程で用いられる触媒溶液又は可溶性もしくはスラリー相触媒と実
質的に同じとすることができる。好ましくは、吸収工程は、最後に廃棄及び/又
は再循環する前にガス洗浄溶液としてオキソリアクターからの触媒廃液を用いる
。
本発明の方法の態様から上記の処理の使用の利点は、多価不飽和化合物がオキ
ソリアクター内で変換されないので多量の活性触媒を妨げないことである。主供
給流から除去され、別個にオレフィンに変換される。次に、生成したオレフィン
は、好ましくは、多成分オキソリアクター供給原料に再循環され、オキソリアク
ターでヒドロホルミル化される。多価不飽和化合物変換の本吸収−再生プロセス
の使用の利点は、更に、高度不飽和炭化水素の水素添加と関連があるランナウェ
イ水素添加反応の危険の排除にある。リアクター内の不飽和化合物の量がロジウ
ムに結合して又は溶媒に物理的に溶解して運ばれた量に限定されることから本発
明の実施ではこの危険は排除される。従って、各Rhの位置は不飽和化合物から
水素添加物になる前の非常に限られたターンオーバーに限定される。この状態の
もとで、反応速度の急速な増加でさえ限られた量の不飽和化合物の変換をもたら
すことができ、生じる熱放出は厳密に制限される。Rhオキソ触媒
本発明の方法において、オキソ/ヒドロホルミル化触媒はロジウム錯体触媒、
好ましくは油溶性ロジウム錯体触媒である。油溶性触媒は、典型的には、低原子
価ロジウム、油溶性有機リン化合物、好ましくは三有機リン化合物又はそのよう
な化合物の混合物と一酸化炭素間の溶液中での錯体形成反応により生成される。
反応条件下で、Rh中心原子は、配位子としても作用することができるエチレン
、及び他のオレフィン(例えば、プロピレン)、アセチレン、及び他のアルキン
(例えば、メチルアセチレン)、ジエン、及び他の高度不飽和炭化水素(例えば
、アレン、ブタジエン、ビニルアセチレン等)、及び水素のような反応混合物中
に存在する他の化合物と錯体が形成される。
本発明のオキソリアクターで使用するために用いられるRh錯体触媒の調製に
適切な好ましい三有機リン化合物は、1分子あたり少なくとも1個のリン原子を
含有する油溶性トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、アルキルジ
アリールホスフィン、アリールジアルキルホスフィン、トリアルキルホスファイ
ト、トリアリールホスファイトの群に属する。それらは、リンが孤立電子対をも
つことによってRhと錯体を形成することができなければならない。触媒におい
て有用なかかる油溶性三有機リン化合物の非制限例としては、トリフェニルホス
フィン又はトリ−p−トリルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、トリ
オクチルホスフィン又はトリシクロヘキシルホスフィンのようなトリアルキルホ
スフィン、又はオクチルジフェニルホスフィン又はシクロヘキシルジフェニルホ
スフィンのようなアルキルジアリールホスフィン、又はフェニルジオクチルホス
フィン又はフェニルジシクロヘキシルホスフィンのようなアリールジアルキルホ
スフィン等が挙げられる。配位子として働くことができる三有機リン化合物は、
また、三有機亜リン酸塩、例えば、トリオクチルホスファイトのようなトリアル
キルホスファイト、トリ−p−トリルホスファイトのようなトリアリールホスフ
ァイトのような他のリン含有化合物とすることができる。リン一座配位子のほか
に、ジホス(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)のような二座配位化合物も
用いられる。適切なホスフィン配位子の広範囲の表は、Falbeの本のp.55〜57に
示されている。好ましくは、油溶性三有機リン化合物は、トリシクロヘキシルホ
スフィン及びトリオクチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン又はトリ
フェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィンである。しかしながら、フ
ェニルジシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、フ
ェニルジオクチルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホス
フィン、フェニルジナフチルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、トリ
−(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−シアノフェニル)ホスフィ
ン、トリ(p−ニトロフェニル)ホスフィン、p−N,N−ジメチルアミノフェ
ニル(ジフェニル)ホスフィン等のような他の配位子も場合によっては用いられ
る。三有機リン化合物の混合物も用いられる。
触媒が十分な配位子/Rh比で用いられるならばヒドロホルミル化にロジウム
と共に用いられる他の配位子が本発明において多成分合成ガスのヒドロホルミル
化に用いられることは当業者に認識されるであろう。ヒドロホルミル化の配位子
の別の例としては、遷移金属ビスホスファイト触媒(米国特許第 4,885,401号に
開示された)、有機リン二座配位子(米国特許第 4,742,178号に開示された)、
及び遷移金属ポリホスファイト配位子(米国特許第 4,769,498号に開示された)
が含まれる。
更に、油性のもの以外の反応媒体が本発明において多成分合成ガスのヒドロホ
ルミル化に用いられることは当業者に認識されるであろう。典型的には、錯体形
成に適切な配位子を用いることにより触媒を反応媒体に可溶性にする。従って、
MCSのヒドロホルミル化は、配位子に水溶性を与える配位子の炭化水素基上に
少なくとも1個の置換基を含む有機リン配位子を用いることにより水性媒体中で
行われる。かかる置換基としては、例えば、カルボルキシル、アミノ、及びスル
ホ官能基が含まれる。かかる配位子の例は、米国特許第 4,248,802号、同第4,80
8,756 号、同第 5,312,951号、及び同第 5,347,045号に見られ、これらを参考と
して本明細書に引用する。MCSのヒドロホルミル化は、また、Rh錯体が米国
特許第 5,463,082号に記載されるようにフッ素可溶性にされるならばフッ化炭化
水素媒体中で行われる。その特許を参考として本明細書に引用する。
上記の配位子を用いて調製されたロジウム錯体は、前述の多価不飽和化合物除
去吸収塔/再生塔系において溶液中で用いられる。実際に、最後の廃棄及び/又
は再循環前のヒドロホルミル化リアクターからの触媒廃液を用いると多価不飽和
化合物除去工程で試薬コストの節約の可能性があることから有利である。
上記の配位子を用いて調製されたロジウム錯体触媒は、純粋なオレフィン供給
原料のヒドロホルミル化に良好な触媒活性を与えることが既知であるがアルキン
、特にアセチレンによって阻害される/有害となる。しかしながら、出願人は、
予想外に、触媒中のリンとロジウムが触媒を触媒的に活性にする量で存在するな
らばそれらの配位子をC2〜C5オレフィンとアルキンの混合供給原料、特にアセ
チレンとエチレンを含有する合成ガスのヒドロホルミル化に用いることができる
ことを見出した。好ましくは、P/Rh比は指定した最小値よりも高く維持され
る。我々は、トリフェニルホスフィン(PPh3)について、その最小値が好まし
くは30でなければならないことを見出した。好ましい配位子の濃度は、また、
溶液中の配位的に活性なリン[P]の最低濃度又は反応中の最小[P]/pco比(
pcoは気相中の一酸化炭素の分圧である)によって表される。PPh3について
は、[P]は好ましくは0.01モル/リットルより高くなければならず、[P]/
pco比は好ましくは0.1ミリモル/リットル/kPaより高くなければならな
い。反応混合液中のRh濃度は、約1×10-5〜約1×10-2モル/リッルの範
囲内でなければならない。そのRh濃度の範囲は、約1〜約1000 ppm(重量
)の範囲内のRh濃度に相当する。好適実施態様においては、Rhは溶液の全重
量に対して50〜750 ppmの範囲になければならない。上記範囲内での触媒濃
度の選択は工学及び経済的考慮を反映させることができる。
オキソリアクター供給原料のヒドロホルミル化は、触媒を溶媒又は溶媒の混合
液で調製した触媒の溶液中で多成分合成ガスと接触させることにより行われれる
。オキソ/ヒドロホルミル化工程で用いられる触媒溶液の調製に用いられる油性
溶媒は、当該技術において既知であり、脂肪族、及び芳香族炭化水素(例えば、
ヘプテン、シクロヘキサン、トルエン等)、エステル(例えば、フタル酸ジオク
チル)、エーテル、及びポリエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、及びテト
ラグリム)、アルデヒド(例えば、プロパナール、ブタナール等)、オキソ生成
物アルデヒドのアルドール縮合生成物、三有機リン配位子自体(例えば、トリフ
ェニルホスフィン)等が含まれる。
指定範囲外の触媒組成、特に触媒的に活性なヒドロホルミル化触媒の最小値よ
りも小さいP/Rh比を有する触媒(PPh3の場合は30である)については
、触媒の活性はかなり低下する。Preece & Smith(欧州特許第 0,233,759号)は
、例えば、PPh3修飾Rh6(CO)12触媒の存在下にアセチレン含有多成分合成
ガス混合物のヒドロホルミル化を調べた。供給ガスが高濃度の反応成分(アセチ
レン、エチレン、CO、及び水素の各6:3:30:61)を含有し、触媒溶液
が高濃度のRh(0.0108モル/リットル)、及びPPh3(0.114モル/
リ
ットル)を含有し、全圧が0.91MPaであったという事実にもかかわらず、
アセチレンの存在下に全ターンオーバーが24時間でわずか13であり1.5×
10-4モルプロパナール/モルRh/secの極めて低いターンオーバー数を示
したという事実によって明らかなようにその触媒は失敗であった。報告された条
件下で、Rh触媒はエチレンのみのヒドロホルミル化に高い活性を有する(C.K.
Brown & G.Wilkinson,Tetrahedron Letters 1969,22,1725)。予想されたプ
ロパナールのほかに、アセトンを1.1モル%含有した生成混合物はエチレンの
ヒドロホルミル化生成混合物に見られなかった。エチレンのオキソ変換に対する
アセチレンのその影響は、文献に十分証明されており、アセチレンがホスフィン
修飾Rh触媒の“古典的触媒毒”と言われる理由である(B.Cornils,New Synth esis with Carbon Monoxide
の“Hydroformylation.Oxo Synthesis,Roelen Rea
ction”,ed.J.Falbe,Springer Verlag,ニューヨーク,1980,p.73参照)。
しかしながら、出願人は、適切な条件下で、特に特定の適切なP/Rh比にお
いてアルキンの阻害/有害作用が克服されるばかりでなく実際にアルキン成分自
体が対応する飽和アルデヒドに変換されることを見出した。それらの比は、典型
的には高い。本明細書で出願人によって用いられた触媒は、活性が高く、アセチ
レンのようなC2〜C6アルキンによって害にならずむしろアセチレン、エチレン
、CO、及び水素を含有する供給流による高ターンオーバー数で明らかなように
オレフィンと共にそれらをC3〜C6アルデヒドに同時変換する。出願人は、触媒
系が種々の配位的に活性なP濃度及びP/Rh比による活性変化を証明すること
がわかった。その変化の物理的証明は、種々のPPh3/Rh比と共に各々100
及び110℃、及び0.8及び2.2MPa全圧におけるアセチレン及びエチレン
含有多成分合成ガス供給原料で行われた実験からの結果である(実施例1、及び
2参照)。異なるRh原料を用いているにもかかわらずPPh3/Rh比がPreece
& Smithの実験と実質的に同じ9.3であった場合、最終触媒溶液の色は暗褐色
であったが、PPh3/Rh比が高い、例えば、300であった場合には橙色であ
った。P/Rh比の9.3を有する触媒を含有する溶液の色の褐色は、触媒が分
解したことを証明した。110℃、及び2.2MPa全圧においてPPh3/Rh
比9.3を有する全ターンオーバーは2時間でわずか4.9であり、100℃、及
び
0.8MPa全圧の緩和な条件下での全ターンオーバーはPPh3/Rh比が30
0である場合に45分間で221であった。後者の触媒速度は、同一条件下でプ
ロプレンのヒドロホルミル化速度の範囲内である。従って、300のPPh3/R
h比を有する触媒は、平均ターンオーバー数0.082モルプロパナール/モル
Rh/secを示し、9.3のPPh3/Rh比を有する触媒は、平均ターンオー
バー数6.8×10-4モルプロパナール/モルRh/secを示し、即ち、12
0倍遅かった。2モルプロパナール/モルRh/sec程度の高い初期ターンオ
ーバー数は、PPh3/Rh比660以上を有するPPh3/Rh触媒を用いてエチ
レン15.5容量%、及びアセチレン6.5容量%を含有するMCS供給原料の変
換で本発明の方法を用いて達成された(実施例3参照)。
従って、本発明の実施態様は、ヒドロホルミル化に有用なロジウムを修飾する
ために用いられる有機リン化合物について多成分合成ガスのヒドロホルミル化に
活性な触媒を生成するのに十分高い触媒P/Rh比があることである。そのP/
Rh比よりも低い触媒は、P/Rh比9.3のPPh3で達成された6.8×10- 4
モルオキソ/モルRh/secのターンオーバー数で明らかなように最小レベ
ルのターンオーバーを与えることができるが、ユーティリティーとの触媒は少な
くとも10-2モルオキソ/モルRh/secの活性を与えるように十分高いP/
Rh比であることが好ましい。
P/Rh比100以上を有するロジウムPPh3触媒の存在下に多成分合成ガ
ス混合物で行われた他の実験は、99%程度の高い転化率でさえ広範囲のH2/C
O、及びアセチレン/エチレン比及び温度で約99.5%のプロパナールの高選
択性を示した。検出された他の唯一の生成物はエタンであった。一方、アセチレ
ン及びエチレン含有多成分合成ガス混合物が非修飾Rh触媒の存在下、P/Rh
比が0である場合にα,β−不飽和エチルケトンを生成することが報告された。
出願人は、少なくとも30、好ましくは約100よりも大きいPPh3/Rh比
で速度、転化率、及び安定性の著しい改良が達成されることがわかった。例えば
、30より大きいPPh3/Rh比において、少なくとも0.04モル/モルRh
/secの初速度及び少なくとも80%の転化率が安定な触媒を示す橙−黄色触
媒の色と共に達成された。
それらのPPh3/Rh比において、アセチレン及びエチレン含有MCS混合物
のヒドロホルミル化が促進され、ケトン、及びエステルのような他の酸素飽和化
合物の生成に関してヒドロホルミル化を触媒する形で触媒を安定化することがで
きる。
アセチレン及びエチレン含有MCS混合物のヒドロホルミル化が触媒を安定化
する上記の作用は、ヒドロホルミル化のオレフィン(特にエチレン)にアルキン
(特にアセチレン)を加えようとする強力な動機を与えることができる。オレフ
ィンとアルキン及び他の多価不飽和化合物とのヒドロホルミル化に適切な条件下
で、配位子及びアルキンはロジウムへの結合に対して非常に偏った釣り合いがあ
る。これにより、不十分な結合を有するロジウムの蓄積が非常に減少し、ロジウ
ム失活の主な経路であるロジウムクラスター形成の速度も低下する。従って、実
施例7に示されるように、少量のアルキンの添加により触媒失活を非常に減少さ
せることができる。それだけで、本発明の好適実施態様は、少量のアルキン(特
にアセチレン)及び/又は多価不飽和化合物を触媒の失活を十分緩和するだけ添
加する、オレフィン(特にエチレン)をヒドロホルミル化する方法である。アル
キン添加レベルは、全不飽和に対して好ましくは約10 ppm〜約10%、更に好
ましくは約100 ppm〜約5%である。アルキン又は多価不飽和化合物を添加す
ると失活の減少及び失活の減少によって可能になった高シビアリティー条件(例
えば、温度、オレフィン変換等)によって十分な利点が生じ、その実施態様はオ
レフィン(特にエチレン)ヒドロホルミル化を改善するために用いられ、アルキ
ン又は多価不飽和化合物は実質的に失活を緩和するために存在しかつアルキン又
は多価不飽和化合物からのアルデヒド収量は取るに足らないか又は有意でないも
のである。
トリフェニルホスフィン以外の配位子については、最低配位子濃度は異なって
もよい。触媒がアルキンを含有する多成分合成ガス混合物を変換するために用い
られる場合、配位子の重要な特徴はロジウムと結合するアルキンに対して競合す
る能力である。活性ロジウム触媒は種々の量の結合配位子を有するが、活性状態
についての平均は正味の結合リン/ロジウム比、RBによって定義される。一般
のヒドロホルミル化触媒については、RBは触媒サイクルにおいて経時変化する
が平均値は約2である。配位子のRhに結合される引力が大きい場合には、好ま
しい(RB)状態でRhを維持するために配位子は溶液中であることが必要でな
くなる。
ロジウムの配位子の引力レベルの尺度は、配位子のpKa値でわかる。(一般
の配位子のpKa値はB.Cornils,New Syntheses with Carbon Monoxideの“Hy
droformylation.Oxo Synthesis,Roelen Reaction”,ed.J.Falbe,Spring V
erlag,ニューヨーク,1980,p.48)。pKaは、Kaの低10の対数であり、
配位子の酸−塩基相互作用の平衡定数である。ロジウムの配位子の引力レベルの
第2の尺度は、多座配位子が用いられる場合に相互作用のエントロピーから引き
出される。その相互作用のエントロピー、ΔSBの値は各結合の付加点に対して
約35cal/モル/°Kである(例えば、Benson,S.W.Thermochemical Kine
tics,Wiley,ニューヨーク,1976参照)。そのエントロピーは、−TΔSとして
自由エネルギーに寄与するので自由エネルギーに約−10〜−15kcal/モ
ル寄与する。自由エネルギーは、多座配位子のエントロピー作用の影響がexp
(ΔSB/R)として含まれるようにexp(−ΔG/RT)として平衡に影響
する。
結合強度の尺度は、共にロジウムに結合した配位子の活性量を維持するために
溶液中に必要とされる非結合配位子の濃度を減じる。RLは配位子“L”を含む
ヒドロホルミル化触媒のロジウムに対するリンの全比率として定義され、非結合
配位子及びロジウムに結合した配位子の双方を包含する。非結合配位子濃度(ロ
ジウム濃度に対する比率として表される)は(RL−RB)である。下記の式は、
PPh3以外の配位子の最低配位子濃度に対する結合強度パラメーターの作用を
定義する式である。
式中、RLはその配位子を含む活性ヒドロホルミル化触媒を与えるのに十分な最
小P/Rh比である。RTPPは配位子PPh3(RTPP=30)の最小P/Rh比で
あり、RBはロジウムに結合したPの平均比(〜2)であり、pKaTPPはPPh3
のpKa値であり、pKaLは新配位子のpKa値である。ΔBBは結
合の各付加点(PPh3の結合点以外)に対して約35kcal/モル/°Kで
あり、Rは気体定数(1.99cal/モル/°K)である。
従って、この式を用いて計算されるRLは配位子“L”の活性ヒドロホルミル
化触媒を与えるのに十分な最小P/Rh比を示す。
ロジウムは、前形成された触媒、例えば、ヒドロカルボニルトリス(トリフェ
ニルホスフィノ)ロジウム(I)[HRh(CO)(PPh3)3]の溶液或いはその場で
形成された触媒として当該技術において既知の方法でリアクターに導入される。
触媒がその場で形成される場合には、Rhはアセチルアセトナトジカルボニルロ
ジウム(I)[HRh(CO)2(acac)]、酸化ロジウム[Rh2O3]、ロジウムカルボ
ニル[例えば、Rh4(CO)12及びRh6(CO)16]、トリス(アセチルアセトナト
)ロジウム(I)[Rh(acac)3]、又はトリアリールホスフィン置換ロジウムカル
ボニル{[Rh(CO)2(PAr3)]2、Arはアリール基である}のような前駆体
として導入される。リアクター態様
典型的には、本発明の方法において、多成分合成ガス供給原料のヒドロホルミ
ル化は、80〜180℃、好ましくは80〜155℃の温度で行われる。温度が
それらの限度を超える場合には、触媒は急速に失活する。低温は許容しうるが、
反応速度は遅すぎるので経済的に実施できない。
反応は、約5MPa未満(絶対)、好ましくは約0.05〜5MPaの範囲内
のリアクター内の全圧において一酸化炭素の分圧が全圧の50%を超えないで行
われる。最大実施圧は、生産コスト及び資本コスト、及び安全性の考慮により制
限される。
上記圧力でオキソリアクターに供給される多成分合成ガス供給原料中の一酸化
炭素、水素、C2〜C5オレフィン、好ましくはエチレン、及びC2〜C5アルキン
、好ましくはアセチレンのモル%は、次の通り維持されなければならない:CO
約1〜50モル%、好ましくは約1〜35モル%;H2約1〜98モル%、好ま
しくは約10〜90モル%;一価不飽和化合物の個別及び組合わせ約0.1〜3
5モル%、好ましくは約1〜35モル%。本発明の方法においてオキソリアクタ
ー内のガス組成は、操作方法、供給原料組成、及び転化率によって更に影響さ
れる。
反応は、バッチ方式或いは連続方式で行われる。好ましくは、反応は連続方式
で行われる。連続方式では、循環速度約1.5〜約61cm/sec(0.05〜2ft/se
c)、好ましくは約3〜約30cm/sec(0.1〜1ft/sec)を用いなければならな
い。
触媒オキソ変換は液相中で起こり反応成分は気体化合物であるので、物質移動
制限を避けるために気相と液相間の高接触面は非常に望ましいことである。高接
触面は、バッチリアクター操作において攪拌するといった適切な方法で得られる
。連続操作では、リアクター供給ガスを触媒溶液と、例えば、ガスが容器の底部
で導入及び分散される連続攪拌タンクリアクター内で接触させることができる。
触媒とガス供給間の良好な接触は、当該技術において認識された方法で高表面担
体上のRh錯体触媒の溶液を分散することにより行わせることもできる。
本発明の方法では、多成分オキソリアクター供給原料のヒドロホルミル化は1
段リアクター又は多段リアクターで行われる。リアクターは、連続方式で操作す
る場合に任意数の平行な列で配置される。平行な列の数は、所望の全容量及び1
つ1つの列の容量で決められる。本発明は1列あたり1以上の段階を用いて実施
され、各反応段階は適切なリアクター配置を用いて処理される。例えば、プラグ
フロー又は定攪拌タンクリアクター(CSTR)接触は2つの共通のリアクター
が配置される。段数及び段階のリアクターの種類は、反応系の速度論と目的を示
した慣用の化学工学の原理を用いてコンピュータで計算される。
バッチ実験では、MCS供給原料のオレフィンとアルキン成分が2つのウェル
特定相中で反応することが指示される。第1相は、たいてい、MCSオキソリア
クター供給原料中に有するオレフィンの変換に対応する。一方の第2相では、た
いてい、アルキン含量が変換される。第1相は、実質的に、アルキンの存在下で
のオレフィンのヒドロホルミル化である。一方の第2相自体は、2工程変換であ
り、まずアルキンがオレフィンに水素添加され、次に、生成したオレフィンが対
応するアルデヒドにヒドロホルミル化される。その第2相のMCS変換での速度
決定工程はアルキンのオレフィンへの水素添加である。混合オレフィン−アルキ
ン供給原料のオキソ変換のこの予測できない順序及び複雑さに従って、異なる相
のオキソ反応の条件は異なることが好ましい。従って、本発明の好適実施態様は
、
全ヒドロホルミル化を2段階に分け、各段階をその段階で起こる化学に有利な条
件で操作される。従って、第1リアクターでの反応条件及び触媒組成は、アルキ
ンの存在下でオレフィンのヒドロホルミル化を促進しなければならない。一方の
第2段階での反応条件及び触媒組成は、アルデヒドへの変換では最も緩慢な工程
であるアルキンの水素添加を促進しなければならない。
米国特許第 4,593,127号には、オレフィンのオキソ変換のための2段ヒドロホ
ルミル化法が記載されている。該特許は、反応成分のオレフィンの全変換の改善
に共通のエンジニアリング溶液を示している。しかしながら、本発明の方法にお
ける多段、特に2段オキソ変換の目的と要望が異なることは理解されねばならな
い。本発明のオキソ法の異なる段階で起こる化学反応は異なる反応である。第1
オキソ段階では、主反応はアルキンの存在下でのオレフィンのヒドロホルミル化
である。しかしながら、第2段階では、主反応は2段階反応自体であるアルキン
のヒドロホルミル化である。アルキン変換での第1段階は、アルキンの対応する
オレフィンへの水素添加であり、続いて生成したオレフィンの対応するアルデヒ
ドへのヒドロホルミル化である。一方の米国特許第 4,593,127号に開示された方
法の2段階での化学反応は、同じ:オレフィンのアルデヒドへのヒドロホルミル
化である。従って、本発明の方法において2段階が必要なことは、良好な全体の
変換の必要から単に生じるのでなくて化学プロセスの予想されない性質、即ち、
強い結合のアルキン成分は弱い結合のオレフィン成分より反応が緩慢であること
から生じる。アルキン−オレフィン混合物のオキソ変換のその特徴の結果として
、オレフィンがまず反応して対応するアルデヒドを生じるのでアルキン反応成分
は反応混合物中に多く含まれる。更に、アルキンの最終飽和アルデヒド生成物へ
のオキソ変換にはまずアルキンの対応するオレフィンへの水素添加が必要であり
かつその反応の全速度を決定するのがその第1工程であるので、第2リアクター
段階での条件は実際にオレフィンのヒドロホルミル化だけでなく同様にアルキン
の水素添加を促進する。従って、第2リアクター段階が必要なことは、化学の性
質から生じ、単に化学プロセスの全変換を改良するための共通エンジニアリング
溶液からではない。
2段1列オキソ/ヒドロホルミル化ユニットの例を図2に示し、次の通り述べ
る。ヒドロホルミル化反応は、2つの連続攪拌タンクリアクター(21、23)
で行われる。各リアクターは、ポンプ冷却ループ(202、207)を用いて冷
却及び攪拌される。ヒドロホルミル化供給原料(201)は第1リアクターに入
れる。捕捉した溶媒及び/又は触媒をおそらく含有する第1リアクターからの生
成物(203)は、冷却され、フラッシュドラム(22)でアルデヒド生成物(
204)の中間吸引のために分離される。残りの(未変換)多成分合成ガス(2
05)は第2リアクター(23)に導入される。水素のような追加のMCS成分
は、第2リアクターへのそのMCS供給原料に添加される(206)。水素添加
は、例えば、第2段階で好ましい高いH2/CO比を生じるように用いられる。第
2リアクターからの生成物(208)を中間生成物(204)と合わせて流れ(
209)を与え、これを生成物の分離及び触媒回収列(単純にブロック24にい
っしょにする)に導入する。このブロックは、粗生成物を未変換MCS流(21
0)、精製アルデヒド流(211)、及びプロセス溶媒/触媒流(212)に分
離するために慣用の沸点による分離(例えば、蒸留)を用いることができる。プ
ロセス溶媒と触媒流(212)は、個々のリアクター段階に再循環される。
本発明の方法の2段オキソユニット実施態様での条件は、前述の多成分合成ガ
ス供給原料の変換の2つの段階に対して調節される。従って、好適実施態様にお
ては、2段オキソユニットの第1段階での反応条件はアセチレンの存在下にエチ
レンのヒドロホルミル化を促進するように最適化されなければならない。変換工
程の第2段階では、全変換速度はアルキン、好適実施態様ではアセチレンの水素
添加速度によって実質的に決められる。従って、2段オキソユニットの第2段階
での反応条件は、アルキン反応成分、好適実施態様ではアセチレンの水素添加を
促進しなければならない。第1段階での反応条件は、次の通り維持されなければ
ならない:H2/CO比約1:1〜100:1、好ましくは1:1〜10:1;温
度は約80〜180℃、好ましくは80〜155℃、更に好ましくは約80〜1
30℃でなければならない;リアクター内の全圧は約0.05〜5MPa、好ま
しくは約0.1〜2.5MPaでなければならず、COの分圧は全圧の50%より
大きくなく、アセチレン反応成分の分圧は0.2MPa(安全性の限度)より大
きくない。本発明の方法の2段オキソユニットの第2段階での反応条件は、例え
ば、
第1段階よりH2を高くCO分圧を低く維持することによりアルキンのオレフィ
ンへの水素添加を促進させなければならない。また、反応速度を上げるために第
2段階では高い温度が用いられる。ある場合には、触媒の熱安定性及び/又は水
素添加活性を改善するために第2段階で異なる配位子を使用することは経済上有
利である。従って、第2段階での反応条件は、次の通り維持されねばならない:
H2/CO比約1:1〜100:1、好ましくは2:1〜50:1;温度は約80
〜180℃、好ましくは約80〜155℃;全圧は約0.05〜5MPa、好ま
しくは約0.1〜2.5MPaでなければならず、COの分圧は全圧の35%より
大きくなく、アセチレンの分圧は0.2MPa(安全性の限度)より大きくない
。リアクター内で触媒を捕捉するために双方のリアクターでは、循環速度約1.
5〜約61cm/sec(0.05〜2ft/sec)、好ましくは約3〜約30cm/sec(0.
1〜1ft/sec)を用いなければならない。以前に開示された組成の範囲内のロジ
ウム錯体触媒が用いられる。多段オキソユニットの各段階における触媒溶液の組
成は、好ましくは同じであるが、所望されるならばロジウム錯体触媒の開示範囲
内で異なることもできる。
本発明の方法のオキソユニットにおける多成分合成ガス供給原料のアルキン及
びオレフィン含量の全体の変換は、実質的に所望される程度に高くすることがで
きる。しかしながら、所望の変換を達成するために必要な滞留時間を短縮するた
めに高触媒濃度及び/又は更に過酷な条件、即ち、高温が用いられる場合には1
回の通過で転化率が100%に近づくので触媒寿命は短くなる。従って、一般的
には、1回の通過での変換を所望変換全体より低く維持すること及び生成物の分
離後に反応成分を再循環することが望ましい。従って、例えば、99%より高い
全転化率はオキソユニットで通過反応成分の変換あたり80%及び下記の回収−
再循環ユニットで96%の反応成分の回収によって得られる。かかる条件下で、
リアクター内の反応成分濃度は、再循環しないときの同じレベル(99%)の1
回通過の変換によって生じる濃度より24倍大きくすることができる。その高い
濃度は、比例して24倍高い反応速度に寄与し、本発明のオキソ/ヒドロホルミ
ル化工程の場合には、触媒錯体安定性の増大にも寄与する。反応成分の回収と再循環
未反応不飽和炭化水素成分の再循環の使用は、本発明の方法においてオキソリ
アクター内の高い不飽和炭化水素濃度を可能にすることによりオキソユニット生
産性及び触媒寿命を高めるために非常に望ましいことである。しかしながら、多
成分合成ガス供給原料のような比較的高濃度の不活性成分及び非化学量論反応成
分を有する供給原料は、再循環ループに生じる過剰の気体物質、即ち、不活性成
分(例えば、窒素、水蒸気、メタン、エタン、プロパン)、及び過剰の反応成分
(典型的には水素)を急速に蓄積することからかかる再循環をほとんど妨害する
。これらの課題を克服する方法が工夫される場合には有益である。
出願人は、オキソリアクターの液体アルデヒド生成物からなる液体で“テール
ガス”を洗浄することにより、未反応不飽和炭化水素成分、特にアセチレンがオ
キソリアクターの流出ガスから有利に回収されることがわかった。次に、その不
飽和化合物含有液体が、テールガスより不飽和炭化水素中で濃縮される多成分合
成ガスの再循環流を生じるように不飽和化合物を含まない合成ガスと除去される
か、或いは好ましくは不飽和化合物含有液体がオキソリアクターに直接循環され
る。
出願人は、ある種の酸素飽和溶媒、更に詳しくはC3〜C6酸素飽和溶媒、特に
多成分合成ガス混合物の変換について本明細書に開示されたようにヒドロホルミ
ル化工程の生成物アルデヒド中の多成分合成ガス混合物の不飽和炭化水素成分(
例えば、エチレン、特にアセチレン)の溶解度が異常に高いことがわかった。更
に、それらの不飽和炭化水素の溶解度は、本発明の方法に用いられる多成分合成
ガス混合物に存在する水素、及び一酸化炭素のような他の反応成分、及びメタン
、及び窒素のような不活性成分の溶解度よりかなり高い(実施例5の表6及び表
7参照)。
従って、本発明の他の実施態様は、不飽和炭化水素、特にアセチレンを、それ
を含有するオキソリアクター流出物から分離又は優先的除去すると共にオキソリ
アクター内に上記の過剰反応成分及び不活性成分を蓄積せずに後続のヒドロホル
ミル化処理のためにオキソリアクターへ再循環する方法を提供する。該方法は、
不活性成分、及び過剰成分を蓄積せずにオキソユニットに再循環する、アルキン
及びオレフィンが多く含まれ過剰の気体物質のない流れを生じるオキソリアクタ
ー流出物からの不飽和炭化水素を濃縮及び回収する方法を提供する。
本発明の再循環及び回収の概念は、オキソリアクター流出物中の非変換不飽和
化合物を濃縮する系において吸収溶媒としてヒドロホルミル化のアルデヒド生成
物の使用を含む。本発明の簡単な実施態様は、対の吸収塔とストリッピング塔の
使用である。本方法では、オキソ流出物は吸収塔の底部に供給され、そこで液体
アルデヒドを凝縮し不飽和化合物(特にアセチレン)を溶解するために冷アルデ
ヒドと接触させる。それらの成分が非常に減少したオキソテールガスが吸収塔の
上方から出る。吸収塔の底部からの不飽和化合物含有アルデヒドは、ストリッピ
ング塔の上方に供給され、不飽和化合物を含まないガス(合成ガス、水素、又は
窒素)が不飽和化合物をオキソへの再循環に適切な濃縮蒸気相へ取り除くために
用いられる。ストリッパーの底部の不飽和化合物を含まない液体アルデヒド生成
物は、吸収塔への再循環とオキソのアルデヒド生成物である流れで分けられる。
かかるスキームの使用によって、吸収塔/ストリッパーは3つの目的に役立つ:
(i)ガスプロセス流出物からアルデヒド生成物を回収する、(ii)オキソへの
再循環のために不飽和化合物を回収する、及び(iii)アルデヒド生成物から不要
な不純物である不飽和化合物を除去する。
本発明の再循環及び回収概念の好適実施態様は、それらの3つの目的を達成す
るが、液相再循環アルデヒド流における溶質として不飽和成分の再循環を提供す
る。その実施態様について系統概略図の例を図3に示す。ポンプ冷却ループ(3
40)を有するオキソリアクター(31)に多成分合成ガス供給原料(331)
を導入する。オキソリアクター気相又は混合相流出物(332)を、オキソ生成
アルデヒドの量に実質的に等しいアルデヒドの量が凝縮する温度に冷却する。凝
縮した液体アルデヒド(341)をフラッシュドラム(33)内で残りの気相オ
キソ流出物から分離する。液体アルデヒド生成物(341)をストリッピング容
器(34)に導入し、そこで不飽和化合物を含まないガス(333)(例えば、
合成ガス、水素、窒素、又は軽質アルカン)で取り除いて不飽和化合物を含まな
いアルデヒド生成物(335)及び不飽和炭化水素を含有する流出ガス(342
)を生成する。ストリッピング塔流出ガス(342)はフラッシュド
ラム(33)蒸気といっしょになり、更に冷却されて流れ(334)を生じ、塔
の上の冷却(343)及びドラム(36)に示されるオキソ流出物のアルカン成
分(例えば、エタン又はプロパン)の還流(344)を生じるのに十分低い温度
である上部を有する吸収塔(35)に供給されて蒸気から液体を分離する。この
吸収塔(35)の上部は、蒸留塔の精留として機能し、低沸点成分からのアルデ
ヒドを捨て、オキソ希釈剤(例えば、N2、メタン、エタン、プロパン)及び非
化学量論成分(例えば、還流アルカンの温度で又はそれよりも低い温度で沸騰す
る水素)を含有する塔の上の実質的にアルデヒドを含まない生成物流(336)
を生じる。塔(35)の底部では、吸収塔内であるかのように可溶性の高度不飽
和成分を溶解する冷アルデヒドになる。塔(35)の底部の温度において、液相
中のアルキン及びオレフィンの溶解度は非常に高い(実施例5の表5及び表6参
照)。例えば、適切な条件のアセチレンを多く含んだアルデヒド生成物において
アセチレン濃度10モル%が得られた。その不飽和化合物含有液体流(337)
は、塔の底部から出てオキソリアクター(31)へ再循環するために実質的に高
圧の液体としてポンプで送られる。高圧では、不飽和化合物含有液体流は熱交換
されて(350)それが含むことができる冷却流を回収する。その高圧条件では
、その熱交換はアセチレンのような不飽和化合物が危険な濃縮相を形成する液体
から分離する最小の関係で達成される。冷却流の回収は、プロセスを出る他の冷
却流(335、336)にも用いられる。
このスキームの他の態様においては、オキソ流出物(332)の圧力は圧縮機
(32)により回収プロセスの前に圧力が高められる。圧力の上昇は、圧縮機の
損傷を避けるために飽和限度より生成物アルデヒドの分圧を上げてはならない。
更に、高圧側のアセチレンの分圧は、安全性の限度0.2MPaより低くしなけ
ればならない。高圧は、典型的には、過度の装置コストを避けるために5MPa
より大きくてはならない。かかる圧力の上昇は、分離される成分:生成物アルデ
ヒド及び非変換C2〜C5一価不飽和化合物の分圧の上昇を生じる。高い分圧の結
果として、フラッシュ塔33、及びスクラバー35は、高温で操作されるので分
離の冷却コストを潜在的に下げる。更に、圧力を上げるとガス処理及び分離の塔
サイズを小さくするという利点を加えることができる。この操作上の圧縮工程の
要望及び程度は、経済的及び安全性の要因によって決められる。
本再循環及び回収プロセスは、いくつかの点で米国特許第 3,455,091号に記載
されたものと全く異なる。まず、米国特許第 3,455,091号はガス洗浄溶媒として
高沸点オキソ副生成物を使用しているのに対して我々のはオキソ主生成物の使用
が好ましい。第2に、米国特許第 3,455,091号は非変換オキソ供給ガスから主生
成物を回収目的に吸収するガス洗浄系を使用しているのに対して我々のは他の供
給成分から選択された非変換供給成分をオキソへの再循環のために吸収する。本
再循環及び回収プロセスは、米国特許第 5,001,274号に記載されたものとも全く
異なる。米国特許第 5,001,274号は、選択された非変換供給成分を再循環のため
に吸収するロジウム触媒流を用いているが、本明細書に記載されたプロセスは液
体反応生成物を使用している。本発明の方法と上記の従来技術間の相違は、更に
、ルキンが同時変換される異なるオキソ技術の流出物である。従って、処理流は
化学的に異なる成分−C2〜C5アルキン−を高濃度で含有し、その処理及び回収
には特殊なプロセス条件及び技術(安全性)が必要である。本発明の回収−再循
環プロセスの最も重要な特徴の1つは、アルキン、特にアセチレンの安全な回収
及び再循環の溶液を提供することである。
本再循環及び回収プロセスが上記及び本明細書に記載されたヒドロホルミル化
/オキソ工程以外の工程で用いられることは留意されなければならない。本明細
書に開示された回収及び再循環プロセスは、他の合成プロセスで用いられ、反応
生成物は未反応ガス供給成分の吸収溶媒として使用可能であり、合成プロセスは
前記生成物の合成リアクターへの再循環によって害にならない。例えば、フィッ
シャー・トロプシュ(“FT”)合成のある実施は、生成物として酸素飽和化合物
を製造しかつ合成ガス供給原料中のオレフィンを使用するために行われる。かか
る実施では、FT酸素飽和生成物は、非変換オレフィン化合物を合成リアクター
へ回収及び再循環するために本明細書に記載されるように用いられる。他の例は
、合成ガス供給原料中のオレフィンを使用し高級アルコール生成物を製造するア
ルコール合成反応の態様である。これらは、例にすぎず、決して基本的概念の適
用範囲を限定するものではない。
多成分合成ガスのヒドロホルミル化に用いられるように不飽和化合物回収−再
循環プロセスに用いられた溶媒は、C2〜C5一価不飽和化合物含有多成分合成ガ
スのヒドロホルミル化から回収されたアルデヒド生成物である。生成物アルデヒ
ドの溶媒としての使用は、いくつかの利点がある:生成物アルデヒドの分離は不
飽和化合物の回収及び再循環プロセスに組込まれて資本コストを節約し、溶媒の
購入及び溶媒の製造の必要が減少し、生成物の汚染及び溶媒/生成物の分離の問
題が減少する。組込まれた生成物の分離及び不飽和化合物の回収と再循環スキー
ムは、生成物アルデヒドの効果的な分離のために冷凍の使用の必要に関して利点
を与えることができる。生成物の分離及び不飽和化合物の回収は共に低温の適用
が必要であるので、冷却エネルギーは本明細書に開示されたような組込みプロセ
スで効率よく用いられる。生成物の利用
本発明のヒドロホルミル化段階の所望の生成物であるC3〜C6アルデヒド、特
にプロパナールは、多くの化学工業製品の製造に中間体としての用途がある。従
って、本発明の好適実施態様は、アルデヒド生成物の価値を高める後続の処理工
程との組合わせである。
本発明の好適実施態様は、多成分合成ガスのヒドロホルミル化とそのヒドロホ
ルミル化のアルデヒド生成物の水素添加とを組合わせてアルコール生成物を製造
するものである。その手段によりプロパノールを製造することが特に好ましい。
本発明の好適実施態様は、更に、多成分合成ガスのヒドロホルミル化とそのヒド
ロホルミル化のアルデヒド生成物の酸化とを組合わせて有機酸生成物を製造する
ものである。その手段によりプロピオン酸を製造することが特に好ましい。アル
デヒドの上記生成物への水素添加及び酸化は、当該技術において既知の手順に従
って行われる。
本発明の好適実施態様は、更に、多成分合成ガスのヒドロホルミル化とアルド
ール縮合工程との組合わせである。アルドール縮合は、当該技術において周知の
変換工程である。その反応においては、第1アルデヒドのα炭素が第2アルデヒ
ドのカルボニル炭素に付加するように2つのアルデヒドが結合する。その結果が
“アルドール”と呼ばれ、β−ヒドロキシカルボニル化合物である。典型的には
、アルドールはH2Oを除去して不飽和アルデヒドを生成する。2つの同じアル
デ
ヒドは、“自己アルドール”と呼ばれ、2つの異なるアルデヒドのアルドール縮
合は“交差アルドール”と呼ばれる。本発明の好適実施態様は、更に、そのよう
に製造されたアルドールの飽和アルデヒド並びに飽和及び不飽和アルコールへの
水素添加が含まれる。本発明の好適実施態様は、更に、対応する飽和及び不飽和
酸へのアルドール縮合から誘導された飽和及び不飽和アルデヒドの酸化である。
従って、本発明の好適実施態様は、更に、多成分合成ガスのヒドロホルミル化
と生成したアルデヒドの自己アルドールとを組合わせてアルドール二量体を製造
するものである。その手段により2−メチルペンテナールの製造、引き続いて2
−メチルペンテナール、及び/又は2−メチルペンテノールへの水素添加、並び
に2−メチルペンタナールの2−メチルペンタン酸への酸化が特に好ましい。
本発明の好適実施態様は、更に、ホルムアルデヒドと多成分合成ガスのヒドロ
ホルミル化によって製造されたアルデヒドとの交差アルドール縮合による多メチ
ロールアルカンの製造である。本発明の好適実施態様は、多成分合成ガスのヒド
ロホルミル化により製造されたアルデヒドのアルドール二量体として製造された
ホルムアルデヒドと不飽和又は飽和(水素添加)アルデヒドとの交差アルドール
縮合による多メチロールアルカンの製造である。典型的には、この既知の技術に
おいて、かかる交差アルドール生成物のカルボニル(C=O)基は、多メチロー
ルアルカンの酸素全てがヒドロキシル形であるように化学的に又は触媒的に還元
される。その手段による(ホルムアルデヒドとプロパナールの交差アルドールに
よる)トリメチロールエタン、及びその手段による(ホルムアルデヒドと2−メ
チルペンタナールとの交差アルドールによる)2,2′−ジメチロールペンタン
の製造が特に好ましい。アルデヒドの上記生成物への変換は、当該技術において
既知の手順に従って行われる。
従って、本発明は、多成分合成ガスのヒドロホルミル化で生成されたアルデヒ
ドを水素添加して対応するアルコールを生成するアルコールの製造方法;多成分
合成ガスのヒドロホルミル化によって生成されたアルデヒドを酸化して対応する
酸を生成する酸の製造方法;多成分合成ガスのヒドロホルミル化によって生成さ
れたアルデヒドを自己アルドール化して対応する二量体を生成するアルドール二
量体の製造方法;それらのアルドール二量体を対応する飽和アルデヒドに水素添
加する飽和アルデヒドの製造方法;該アルドール二量体を水素添加又は酸化して
対応する不飽和アルコール又は酸を生成する不飽和アルコール又は酸の製造方法
;該アルドール二量体を水素添加して対応する飽和アルコールを生成する飽和ア
ルコールの製造方法;該アルドール二量体の水素添加により製造された飽和アル
デヒドを水素添加又は酸化して対応する飽和アルコール又は酸を生成する飽和ア
ルコール又は酸の製造方法;多成分合成ガスのヒドロホルミル化によって生成さ
れたアルデヒドをホルムアルデヒドでアルドール縮合して対応する多メチロール
アルカンを生成する多メチロールアルカンの製造方法;多成分合成ガスのヒドロ
ホルミル化によって生成されるプロパナールをホルムアルデヒドでアルドール縮
合してトリメチロールエタンを生成するトリメチロールエタンの製造方法;及び
該アルドール二量体及び/又はそれから製造された飽和アルデヒドをホルムアル
デヒドとアルドール縮合して対応する多メチロールアルカンを生成する多メチロ
ールアルカンの製造方法が含まれる。
本発明は、欧州特許出願第95.300 301.9号及びそれに基づくPCT出願に記載
されたアルデヒド、アルコール、酸、及びその誘導体の製造に用いられるプロパ
ナール含有組成物を製造するために用いられる;それらの出願を参考として引用
する。
実施例1装置
実験は、Autoclave Engineersの300mlのステンレススチール製オートクレ
ーブで行われた。リアクターを500mlの高圧バッファボンベに調整バルブを介
して接続した。リアクター及びバッファボンベの双方に温度及び圧力ディジタル
ゲージを取り付けた。オートクレーブに温度制御ユニット、及び速度制御付きス
ターラーを取り付けた。装置の種々の部分の全容積及び自由空間はガス容量法に
より測定した。触媒の調製
ロジウム及びホスフィン含有溶液を、窒素又はアルゴン下で Vacuum Atmosphe
resのドライボックスで調製した。ロジウムをHRh(CO)(PPh3)3、或いは
Rh(CO)2(acac)(PPh3はトリフェニルホスフィンであり、
acacはアセチルアセトナト配位子である)として装入した。Rh(CO)2(
acac)を Strem Chemicalsから購入し、受け取ったまま使用した。HRh(
CO)(PPh3)3を、Rh(CO)2(acac)から文献の方法(G.W.Parshall,
Inorg.Synth.1974,15,59)で調製した。トルエンを、ベンゾフェノンナトリ
ウムから窒素下で蒸留した。トルエン溶液の各成分の重量を測定した。メチルシ
クロヘキサンをGC内部標準として用いた。窒素流下でその溶液をオートクレー
ブに装入した。次に、ユニットを合成ガス(H2/CO=1)でフラッシュした。
触媒をその場で調製した場合、オートクレーブを室温で約0.5MPaに加圧し
、次に100℃まで加熱し、その温度で約30分間維持した。独立した実験から
、これらの条件下でロジウムが水素添加によりacac配位子をほどくと共に生
成したヒドリドカルボニルトリフェニルホスフィノロジウム錯体(HRh(CO
)x(PPh3)y、x+y=4)が誘導期を示すことなくヒドロホルミル化を触媒
することが実証された。Rh原料としてHRh(CO)(PPh3)3を用いた場合、
触媒の前形成は必要なかった。ガスブレンド#1のヒドロホルミル化
前形成触媒の溶液を含有するリアクターを、室温においてエチレン、エタン、
アセチレン、二酸化炭素、水素、メタン、一酸化炭素、及び窒素を含有するガス
ブレンド#1(組成を表2に示す)で掃気及び加圧した。リアクターに充填された
ガスの量をガス容量法により求めた。本実験のP/Rh比は9.3であった。装
入した触媒の組成を表2の脚注に示す。リアクターを110℃に加熱し、反応温
度で2時間維持した。リアクターは反応温度であったが、圧力の低下から反応が
起こったことが示された。110℃で2時間後、圧力低下が見られなくなってリ
アクターを15℃に冷却し、液体試料を採取した。気相及び液相のガスクロマト
グラフィー(GC)に基づいて充填材料の質量バランスを確かめた。結果を表2
に示す。液相では、反応の唯一の検出生成物がガスクロマトグラフィー/質量分
析(GC/MS)によりプロパナールとして同定された。液相中に見られたプロ
パナールは、リアクターに充填されたエチレンとアセチレンの全量に対して60
%の転化率を示した。オキソ反応が終わったときに実験を停止したので、高転化
率が達成される前に触媒が失活したことは明らかであった。最終反応混合物のガ
ス
分析により、オキソ変換が停止した時点で未反応エチレンとアセチレンがアセチ
レン/エチレン比3.4であることが示された。分析結果から、エチレン及びア
セチレン双方の同時変換が起こったことがわかった。最終溶液の色は、本明細書
に開示された実験では分解した触媒と関連がある暗褐色であった。
実施例2
装置、触媒調製法、及び実験手順は実施例1と同様にした。本実験で用いたガ
スブレンド#2はエチレン、エタン、アセチレン、二酸化炭素、水素、メタン、及
び一酸化炭素を含有した(組成を表3に示す)。反応温度は100℃であり、P
/Rh比は300であった。触媒溶液の組成を表3に示す。反応混合物を100
℃に加熱した後、オートクレーブ内の圧力の急速な低下が見られ、ガス消費反応
が起こったことを意味した。この圧力の低下は約45分後に著しく落ち、そのと
きに反応混合物を15℃に冷却することにより反応を停止した。冷却後、系の気
体及び液体試料を採取し、GCで分析した。結果を表3に示す。気相及び液相双
方の分析により、実施例1で見られたものより10℃低い温度、14倍低い触媒
濃度、2.7倍短い時間で高転化率(88.5%)が示された。更に、実験の終わ
りに採取した溶液試料の色は透明な橙黄色であった。ここで述べた実験での橙黄
色は、アセチレン及びエチレン含有多成分合成ガス混合物の変換における活性触
媒系と関連がある。
実施例3
本実施例は、アセチレン及びエチレン含有MCSオキソ供給流のヒドロホルミ
ル化に関するP/Rh比の影響を示すものである。触媒溶液の調製と充填の手順
は実施例1と同様にした。溶媒、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(
テトラグリム)を使用前に脱ガスした。生成物液体試料のGC分析における内部
標準としても働いた。各実験における溶液容量、及び初期ガス全装入量は、各々
同じ70ml、及び95ミリモルとした。装置は、容量検定高圧注入ボンベを供給
ラインに取り付けた後にバッファシリンダとオートクレーブの間に高精密圧力調
整器を取り付けた以外は実施例1と同様にした。この注入ボンベを用いて既知量
のエチレン/アセチレン混合物をオートクレーブに注入した。各実験におけるエ
チレンとアセチレンの装入量は、各々約15.4と6.4とした。
バッチ速度論実験を、一定の1MPa全ゲージ圧及び120℃で行った。反応
が進行するにつれて、容量検定高圧バッファボンベから高精密調整バルブを介し
て合成ガス(CO/H2=1)を供給することにより定圧を維持した。バッファ
内の圧力(1kPaの精度まで測定)を時間の関数として(1秒の精度まで記録
)読み取ることにより反応をモニターした。エチレン及びアセチレンの全転化率
を、各々を液体と気体の生成物のGC分析で行った後に求めた。検出した反応物
の2つのみの生成物は、主生成物としてプロパナール及び少量のエタンであった
。次に、全転化率を、全圧の低下及び実験中のバッファボンベからの全ガス消費
モルと相関した。反応速度を、圧力の低下と転化率間の直線的相関を前提として
算出した。触媒組成、及び7種類の異なる実験の結果を表4に示す。
表4の速度論データから、ホスフィン濃度を高くすることにより触媒の活性が
著しく増大することが証明される。最終溶液の色はPPh3/Rh比10で実験し
た以外は橙黄色であり、120分の反応時間後に褐色であった。この色の変化は
、アセチレン及びエチレン含有多成分合成ガス供給原料のヒドロホルミル化にお
いて安定な触媒系がPPh3/Rh比10で存在しないことを意味している。30
より大きい好ましいPPh3/Rh比によって、速度、転化率、及び安定性の顕著
な改善が得られた。
実施例4
本実施例は、累積ジエン(アレン)の存在下アルケン(エチレン)ヒドロホル
ミル化に関するH2/CO比の影響を示すものである。触媒溶液の調製と充填の手
順は実施例1と同様にした。実験法及び実験値の速度論評価は、15ミリモルの
エチレンを0.13ミリモルのアレン及びオートクレーブ内のH2/CO比を調節
する種々の量の水素と共に同時注入した以外は実施例3と同様にした。触媒の装
入量は各実験において18.8μモルのRh(27.7 ppm)及び8.3ミリモル
のPPh3(3.1w.%)とした。
アレン−エチレン混合物をオートクレーブに120℃で注入したのち、反応は
まず非常に緩慢な速度で進行した。ガス反応混合物のガス分析により、この最初
の遅い段階の反応でプロピレンの緩慢な蓄積が示された。装入されたアレンの実
質的に全て(典型的には95〜99%)が変換された後にのみエチレンのヒドロ
ホルミル化が起こった。この最初の相の反応の長さは、H2/CO比に依存した(
表5参照)。
実施例5
実施例1と同じオートクレーブを用いるガス容量法或いは1H NMRによりガス溶
解度を測定した。オートクレーブ実験では、溶媒をオートクレーブ内で十分に脱
ガスした後にガスを攪拌せずに装入した。短い温度平衡後、オートクレーブ内の
圧力と温度を記録し、次に、圧力低下が見られなくなるまで溶媒を攪拌した。既
知のガス容量と圧力低下から溶解した気体の量を算出した。1H NMR実験では、溶
媒(プロパナール)或いはヘキサメチルベンゼンは内部標準として働いた。得ら
れた値を表6に示す。
実験で定量した数値(表6参照)及び文献値(表7参照)は、酸素飽和化合物
、特にプロパナールにおけるエチレン及びアセチレンの高溶解度を反映している
。エチレンとアセチレン間の溶解度が水素、一酸化炭素、及びメタンのような典
型的な多成分合成ガス混合物の他の全ての主成分に対して大きな差がある。温度
が下がるにつれて溶解度の差が大きくなることもわかる。
実施例6
触媒溶液の調製と充填の手順は、実施例1と同様にした。実験法及び実験値の
速度論評価は、15ミリモルのエチレンを0.13ミリモルの次のジエン又はア
セチレンの1種:1,3−ブタジエン、アレン、プロピン、及びアセチレンと同
時注入した以外は実施例3と同様にした。触媒装入量は、各実験においてRh1
8.8μモル(27.7ppm)、及びPPh38.3ミリモル(3.1w.%)とした。
ガス反応混合物のガス分析により、エチレンと1,3−ブタジエン、プロピン
、及びアセチレンの同時変換が示された。しかしながら、エチレン−アレン混合
物の場合には、実施例4に記載されたように注入した実質的に全てのアレンがプ
ロピレンに水素転化された後にのみエチレンの変換が開始することができた。最
終反応混合物は、実質的にプロパナール、エタン、及び同時注入された高度不飽
和成分の水素添加生成物を含有した。従って、1,3−ブタジエンはブテン、及
びアレンを生じ、プロピンはプロピレンを生じた。エチレン転化率95〜98%
において、1,3−ブタジエン、及びプロピンの対応するオレフィンへの典型的
転化率は約60%であった。アセチレンの水素添加生成物がエチレンであるので
、その中間体はエチレン−アセチレン混合物のヒドロホルミル化で検出されなか
った。実測された反応速度により、高度不飽和成分によるエチレンのオキソ速度
に対する阻害の種々の程度がわかった。従って、エチレン転化率33%の同時注
入反応成分としてアレン、1,3−ブタジエン、プロピン、及びアセチレンとの
エチレンヒドロホルミル化において実測されたターンオーバー数は、各々3、5
.5、7、
及び9モルプロパナール/モルRh/secであった。
実施例7
本実施例は、失活に対してロジウム触媒を安定化するのに低濃度のアセチレン
が有する影響を示すものである。実験は2段階;熟成段階及び速度論測定段階を
含む。触媒溶液の調製と充填の手順は、オートクレーブ及びバッファボンベが各
々500mlと325mlである以外は実施例3と同様にした。
熟成段階の実験については、1400ミリモルのテトラグリム、30ミリモル
のトリフェニルホスフィン、及び0.3ミリモルのロジウム(96 ppm)を含有
する300mlの触媒溶液を装入した。その溶液を1MPaで140℃に加熱し、
3種類のガス流の1種と接触させた;(a)合成ガス(H2/CO=1)のみ、(b
)エチレンを5モル%含む合成ガス、又は(C)アセチレンを0.51モル%含
む合成ガス。(b)及び(c)の場合には、流出物の基質濃度が約0.5モル%
に維持されるようにガス流の流量を制御した。0(初期溶液)、80、140、
及び260分の熟成時間後、30mlの触媒溶液の試料を取り別にした。
実験の速度論測定段階については、30mlの熟成段階の試料を用いかつテトラ
グリム及びトリフェニルホスフィンを加えて調製して860ミリモルのテラグリ
ム、35ミリモルのトリフェニルホスフィン、及び0.02ミリモルのロジウム
(10 ppm)を含有する溶液にした200mlの触媒溶液を装入した。速度論評価
の実験法は、20ミリモルのエチレンを3ミリモルのアセチレンと同時注入する
以外は実施例3(1MPa、120℃、H2/CO=1)と同様にした。速度(モ
ルオキソ/秒)は、まずエチレンの段階であることがわかり、各速度論実験につ
いての速度定数はオキソモル/エチレンモル/Rhwppm/秒として算出した。各
熟成実験については、速度定数を初期(0熟成)触媒活性%として規準化した。
それらの触媒失活実験の条件と結果の纏めを表8に示す。触媒失活は基質(オ
レフィン、アルキン)が存在しない条件下で急速であることは周知であり、これ
は実験(a)で確認され、活性が140℃で260分で90%低下する。オレフ
ィンヒドロホルミル化は、一般に、その失活を緩和する基質の存在を維持するた
めに低単流変換の条件下で行われる。実験(b)により、オレフィンの存在が失
活を減少させることが確認される(ここでは260分後にわずか50%)が、〜
0.5モル%の出口濃度に反映される高変換条件下ではかなりの失活が生じるこ
とが証明される。対照的に、実験(c)により、低(〜0.5モル%)濃度のア
セチレンは失活を劇的に減少させることが証明される(ここでは260分後にわ
ずか5%)。かかる触媒活性の保存は、高単流変換及び高温での操作を可能にす
る。
実施例8
本実施例は、オレフィンと累積ジエンの混合物、更に詳しくはエチレンとアレ
ンの連続ヒドロホルミル化を示すものである。実験は、500ccの Autoclave E
ngineers Zipperclave ステンレススチール製オートクレーブで行った。オート
クレーブに連続ガス供給系、逆圧コントロール、及びガスクロマトグラフィーに
よるガス供給原料と生成物の確認を取り付けた。窒素下で210gのテトラグリ
ム、15.8gのトリフェニルホスフィン、及び8.8gのロジウム(Rh(CO)2
(acac)(acacはアセチルアセトナト配位子である)として加えた)を混
合することにより触媒溶液を調製した。これは、Rh39wppm、及びP/Rh比
700に相当する。触媒溶液を窒素下でオートクレーブに移し、オートクレーブ
を窒素でパージし、次に、表9に示されるようにガスフローを始めた。次に、圧
力が逆圧コントロールの1000kPa(絶対)設定になった後、オートクレー
ブと内容物を90℃の反応温度に加熱した。少なくとも20時間の連続反応後に
ガス試料を採取した。
表9からわかるように、エチレン及びアレンはこれらのヒドロホルミル化条件
で同時に変換された。アレンに対してエチレンを高割合で維持する点で、これら
の実験の生成物は主としてプロパナールであった。しかしながら、反応生成物と
してブタナールが見られた。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(31)優先権主張番号 375434
(32)優先日 1995年1月18日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),UA(AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM
),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR
,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,
ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,K
G,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU
,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S
I,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US
,UZ,VN
(72)発明者 ホーヴァート イストヴァン トーマーシ
ュ
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08829 ハイ ブリッジ ヴァリー ヴィ
ュー ロード 70
(72)発明者 キス ガーバー
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08827 ハンプトン トーマス コート
4
(72)発明者 マテュアロ マイケル ジー
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08530 ランバートヴィル ヨーク スト
リート 41
(72)発明者 デックマン ハリー ウィリアム
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08809 クリントン ウッズ エッジ コ
ート 2
(72)発明者 クック レイモンド エイ
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08827 ハンプトン ブラックブルック
ロード 140
(72)発明者 ディーン アントニー マリオン
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08807 ハンプトン クロス エイカーズ
ドライヴ 67
(72)発明者 ハーシュコウィッツ フランク
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
07938 リバティー コーナー ライオン
ズ ロード 509
(72)発明者 ヴァン ドリーシェ エディー
ベルギー ベー9900 エークロ クレッケ
ルミュイト 8