【発明の詳細な説明】
自転車用動力方向変更装置
技術分野
本発明は、自転車用動力方向変更装置に関し、特に、自転車のペダル軸ハブに
取り付けられており、自転車のペダルを前向きまたは後向きに踏むときに切換え
レバーを制御することによって自転車を常に前進走行させることができるととも
に、従来式自転車のペダルを後向きに踏むとき等、自転車のペダルを後向きに踏
むときに必要な場合に空転させることもできる動力方向変更装置に関する。
背景技術
一般に、自転車は、車枠の前および後ろに設けられる前輪および後輪と、2つ
の車輪の間に動力源として設けられる一対のペダルとを含む。自転車の駆動力は
ペダルを踏むことによって得られ、その後、この駆動力は駆動スプロケットとチ
ェーンと被駆動スプロケットとを介して後輪に伝達される。このような一般的な
自転車は、乗り手がペダルを前向きに踏むと前進走行し、ペダルを後向きに踏む
と、自転車の後輪は後輪のハブの一方向ラチェットにより無負荷回転して、この
後輪の無負荷回転を「空転」(idling)と呼ぶ。
また、一方向にしかペダル駆動することができない一般的な自転車を双方向に
ペダル駆動することができるようにする新しい自転車部品の発明が開示された。
特にMantzoutsosらの発明とFosterらの発明を以下に紹介する。
Mantzoutsosらの発明(欧州特許公告第0,369,925号)によると、2つの歯車が
ペダル軸上に取り付けられるとともに、補助歯車が2つの歯車の間に着脱可能に
取り付けられる。これにより、この発明の自転車は、補助歯車を取り外した状態
でペダルを踏むと一般の自転車と同様に走行しうる。しかし、補助歯車を取り付
けた状態でペダルを後向きに踏むと、自転車は、補助歯車によりペダル軸の回転
方向が変更されるため、前進走行しうる。
一方、Fosterらの発明(米国特許第5,435,583号)によると、2つの歯車とこ
れらの歯車の間に配置される2つのクラッチと2つの歯車の歯の間に配置される
かさ歯車とを含む歯車箱がペダル軸上に取り付けられる。これにより、この発明
の自転車は、クラッチが右歯車と連結されているときにペダルを踏むと一般の自
転車と同様に走行しうる。しかし、クラッチが左歯車と連結されているときにペ
ダルを後向きに踏むと、自転車は、かさ歯車によりペダル軸の回転方向が変更さ
れるため、前進走行しうる。
上記2つの発明は、中間歯車を採用することにより、ペダルを後向きに踏むと
きに自転車を前方に駆動しうる双方向ペダル駆動装置という点では意義深いもの
である。しかしながら、この双方向ペダル駆動装置の寿命は、動力の方向を変更
するのに必要な力が加えられる特定の部分が摩耗するために短くなり、動力方向
変更装置を操作する上で不便がある。
上記欠点を解消することによって得られた双方向ペダル駆動装置は、韓国特許
出願第94-13391号に開示されている。この出願によれば、ペダル軸の一方の端部
と駆動スプロケットとの間に所定の閉空間が形成され、2つの一方向ラチェット
がこの空間の外側部分と内側部分とに取り付けられる。また、複数個の遊星歯車
が回転可能に配設されたつめ車と、外側の一方向ラチェットの固定および固定解
除を制御する切換えレバーとが前記空間内に設けられる。この双方向ペダル駆動
装置における自転車の双方向ペダル駆動メカニズムは下記のとおりである。
ペダルを前向きに踏むと、ペダルとつめ車と駆動スプロケットとが一体的に回
転して自転車を前進走行させる。一方、ペダルを後向きに踏むと、切換えレバー
により、外側の一方向ラチェットが内側の一方向ラチェットの代わりに機能する
。ここで、外側のラチェットが固定される場合と固定解除される場合の2つの場
合がある。第1に、外側のラチェットが固定されているときにペダルを後向きに
踏むと、複数個の遊星歯車は自身の軸のまわりで回転して、ペダル軸の回転方向
が変更され、そのためにペダル軸からの動力が駆動スプロケットに伝達されて、
自転車は前方に駆動されるようになる。第2に、外側のラチェットが固定解除さ
れているときにペダルを後向きに踏むと、遊星歯車は自転しながら同時につめ車
と協働してペダル軸のまわりを公転する。そのためにペダル軸からの動力は駆動
スプロケットに伝達され得ず、その結果としてペダルは空転する。
前記韓国特許出願第94-13391号によれば、動力の方向を変更することによる特
定部分への力の集中は、複数個の遊星歯車を用いて力を分散させることにより防
がれる。このため、双方向ペダル駆動装置の寿命は長くなり、ペダル軸の回転方
向は、切換えレバーを使用することにより簡単に変更されうる。また、この双方
向ペダル駆動装置は、小型精密部品を採用することにより能動的に動作しうる。
しかしながら、前記韓国特許出願第94-13391号では、部品の大量生産と各部品
の組立とが困難であり、かつこの双方向ペダル駆動装置は従来式自転車に直接取
り付けることができないためにこの装置の部品を部分的に改良しなければならな
い。さらにまた、各構成部品は、自転車が後方に引かれたときに生じる逆負荷に
よって破損されうる。
発明の開示
韓国特許出願第94-13391号の発明を改良するものとして、本発明の目的は、各
構成部品の形状を改良してこの部品の製造と組立との単純化に適したものとする
ことにより大規模な製造を可能にするとともに、部品の改良と補助手段の採用と
により従来式自転車に直接取り付けることができ、かつ同時に逆負荷によって引
き起こされる部品の損傷を防ぐことができる自転車用動力方向変更装置を提供す
ることにある。
本発明の動力方向変更装置は、ペダル軸や後輪、ペダル軸上に形成されて該ペ
ダル軸と一緒に回転する駆動スプロケット、該駆動スプロケットの駆動力を後輪
に伝達する被駆動スプロケット、駆動スプロケットと被駆動スプロケットとを接
続するチェーン等の基本的な自転車用構成要素を含む。本発明の基本的な特徴は
ペダル軸と駆動スプロケットとの間の閉空間に形成される「動力方向変更装置」
である。ここで、この動力方向変更装置を構成するのに用いられる部品の形状は
、中空円筒状または環状または歯車状である。
本発明の動力方向変更装置は、ペダル軸と駆動スプロケットとの間に配設され
ており、大雑把に言うと軸ハウジングと切換えリングとキャリアと太陽歯車とス
プロケット・キャップとを含む。各構成部品の機能は下記のとおりである。 切
換えリングとキャリアと太陽歯車とを受ける軸ハウジングは、回転するペダル軸
を支持し、かつそれと同時にペダルを後向きに踏んだときに軸ハウジングの右側
キャップの縁部内側に形成された複数個の開口に挿脱される複数個のつめを用い
てキャリアを制御する。切換えリングは、ペダルを後向きに踏むときに前記つめ
を軸ハウジングに挿脱し、自身の左部分の外側および内側にそれぞれラチェット
を、そして右部分に回転可能に配設される複数個の遊星歯車を有するキャリアは
、ペダル軸からの動力の方向を維持または変更して、これによって動力を駆動ス
プロケットに伝達する。太陽歯車は、ペダル軸と結合されているときにペダル軸
の駆動力をキャリアに伝達する。また、自身の縁部内側の右に歯車を有するスプ
ロケット・キャップは、キャリアから動力を受けて、ペダルの駆動方向が後向き
か前向きかにかかわりなく自転車を常に前進走行させる。
従って、動力方向変更装置が自転車に取り付けられている状態でペダルを前向
きおよび後向きに踏むと、自転車は前進走行する。「双方向ペダル駆動装置」の
1つとしての本発明の動力方向変更装置は、構成部品および動作メカニズムにお
いて従来の双方向ペダル駆動装置とは異なる。加えて、本発明の動力方向変更装
置によれば、各々の構成要素の形状は最適化され、そのために特定部分への負荷
の集中が防がれる。また、全ての構成部品は一体的に形成され、そのために構成
部品の組立工程が簡素化される。この動力方向変更装置には、装置を容易に操作
できるようにする切換えレバーと、従来式自転車を改良することなしに動力方向
変更装置を従来式自転車に取り付けるための補助リングとが採用されている。
図面の簡単な説明
第1図は、本発明に係る自転車用動力方向変更装置の断面図。
第2図は、本発明に係る動力方向変更装置の分解斜視図。
第3図は、本発明に係る動力方向変更装置に用いられる太陽歯車の一例を示す
右側面図。
第4図Aは、切換えリングが第1のつめを軸ハウジングの開口から脱却させて
いるときの第1図の線A−Aにおける動力方向変更装置の動作線図であり、第4
図Bは、切換えリングが第1のつめを軸ハウジングの開口から脱却阻止している
ときの第1図の線A−Aにおける動力方向変更装置の動作線図。
第5図は、第1図の線B−Bにおける動力方向変更装置の断面図。
第6図は、本発明の好ましい具体例に係る動力方向変更装置の断面図。
第7図は、第6図に示された動力方向変更装置に用いられる軸ハウジングの右
側面図。
第8図は、第6図に示された動力方向変更装置に用いられるキャリアの左側面
図。
第9図は、第6図に示された動力方向変更装置に用いられるスプロケット・キ
ャップの左側面図。
第10図は、本発明の他の具体例に係る切換えリング制御手段の右側面図。
第11図は、本発明のさらに他の具体例に係る動力方向変更装置を従来式自転
車に取り付けたときの断面図。
発明を実施するための最良の形態
第1〜5図を参照して、本発明を詳細に説明する。
第1および2図に示されるように、シャフトハウジング30と切換えリング4
0とキャリア50および太陽歯車60とスプロケット・キャップ70とは、スプ
ロケット・キャップ70の外側に固定ナット90を取り付けることにより、自転
車のペダルシャフト20上において順次結合されて、一体的な動力方向変更装置
を形成する。この装置の各部品の構造と機能とを順番に説明する。
シャフトハウジング30は、回転式ペダルシャフト20を支持しており、シャ
フトハウジング30の右キャップの縁部内側に複数個の開口31を有し、これら
の開口に複数個の第1のつめ32が挿入される。また、切換えリング40を制御
する第1の歯車81が嵌合する穴33は、前記右キャップの側壁に形成される。
前記構造を有するシャフトハウジング30は、切換えリング40とキャリア50
と太陽歯車60とを順に保持するとともに、ペダルを後向きに踏むときにシャフ
トハウジング30の縁部に配置される第1のつめ32を用いることによってキャ
リア50を回転させるか、またはキャリア50の回転を防ぐ機能を有する。この
場合、シャフトハウジングと第1のつめ32との間にばねが挿入されて、第1の
つめ32を開口31内に弾性的に保持する。
切換えリング40は、自身の一方の側部においてペダルシャフト寄りに第2の
歯車41を、そして自身の面部分に複数個の穴42を有する。この第2の歯車4
1は第1の歯車81と係合して切換えリング40を回転させ、前記穴42は第1
のつめ32の突出または縮退を可能にするためのものである。キャリア50は第
1のつめ32が穴42内に嵌入しているときに回転不能となり、切換えリング4
0が第1のつめ32をシャフトハウジング30の開口31内に封じ込めていると
きにキャリア50が回転可能となる。
キャリア50は、中空円筒状の形状を有しており、左部分の外側および内側に
それぞれ第1のラチェット51および第2のラチェット52を、そしてキャリア
50の右部分に複数個の穴を有するリング53を有しており、この右部分は左部
分と一体的に結合して、複数個の遊星歯車54がリング53内の遊星歯車シャフ
ト55により回転可能に配置されるようになっている。前記構造を有するキャリ
ア50の第1のラチェット51はシャフトハウジング30の第1のつめ32と係
合し、第2のラチェット52は後述する第3の歯車61の第2のつめ62と係合
する。他方、キャリア50の遊星歯車54の内側部分は太陽歯車60の第3の歯
車61と係合し、前記遊星歯車の外側部分は後述するスプロケット・キャップ7
0の内側に形成される第4の歯車71と係合する。
キャリア50は、ペダルシャフト20からの動力の方向を維持または変更する
ことによってペダルシャフト20からの動力をスプロケット・キャップ70に伝
達する機能を果たしており、このことが本発明において最も重要な点である。キ
ャリア50の遊星歯車54は、動力の方向変更によって特定部分に集中する力を
分散しており、好ましくは、遊星歯車の個数は8個とする。
太陽歯車60は段付きの中空円筒状の形状を有しており、太陽歯車60の小直
径の左部分は、第2のつめ62が配置される複数個の開口63をその外側に有し
、左部分の内側は、左部分がペダルシャフト20に一体的に固定されるような六
角形のスプライン状の中央開口を有する。また、太陽歯車60の大直径の右部分
は、第3の歯車61をその外側に有する。前記構造を有する太陽歯車60におい
て、第2のつめ62はキャリア50の第2のラチェット52と係合し、第3の歯
車61はキャリア50の遊星歯車54と係合する。ここで、第2のつめの個数は
4個であることが好ましい。
この場合、下記の方法により、第1および第2のつめ32および62に弾性を
付与することができる。第1に、つめの下にコイルばねまたは重ね板ばねを挿入
する。第2に、第3図に示されるように各々のつめに所定の角度で段を形成し、
次に各つめを環状ばね65で接続して線形の張力を付与する。
さらに、本発明によれば、第1のつめ32と切換えリング40とは、キャリア
50の外側に配置されて、ペダルシャフト20が逆回転するときにのみキャリア
50を制御する。また、第2のつめ62は太陽歯車60の外側に配置されて、順
回転時にキャリア50を一方向に回転させる。
太陽歯車60はペダルシャフト20と一体的に係合するため、太陽歯車60は
ペダルシャフト20の回転方向と同じ方向に回転しながらペダルシャフト20か
らの動力をキャリア50に伝達する。
スプロケット・キャップ70は、第1図の右に自身の縁部内側の第4の歯車7
1を、そして縁部外側に複数個のねじまたはブラケット72を有しており、多数
の段を有する駆動スプロケット73が前記ブラケットに結合されるようになって
いる。また、軸受74がスプロケット・キャップ70の中央に固定されて、スプ
ロケット・キャップ70はペダルシャフト20から独立して自由回転しうるよう
になっている。前記構造を有するスプロケット・キャップ70の第4の歯車71
は、遊星歯車54と係合し、かくして、ペダルシャフト20からの動力をキャリ
ア50を介して受ける。
スプロケット・キャップ70は、ペダルシャフト20の回転方向にかかわりな
く常に順方向に回転する。
さらにまた、上記で説明されていない第1図の参照符号10、11、21およ
び22は、それぞれ、車枠、ペダルシャフトハブ、軸受およびワッシャを表す。
シャフトハウジング30を自転車のペダルシャフト20上でスプロケット・キ
ャップ70と結合させると、両者間に閉空間が形成されて、切換えリング40と
キャリア50と太陽歯車60とがこの閉空間内において互いに係合して組み合わ
され、固定ナット90がスプロケット・キャップ70の外側に取り付けられ、か
くして、一体的な動力方向変更装置が形成される。
この一体的な動力変更装置は、下記の手順で組み立てられる。第1に、ペダル
シャフト20がシャフトハウジング30内に回転可能に配設され、次に切換えリ
ング40とキャリア50と太陽歯車60とスプロケット・キャップ70とがシャ
フトハウジング30内においてペダルシャフト20を中心にして順番に組み付け
られる。その後、固定ナット90がスプロケット・キャップ70の外側に取り付
けられて、以て一体的な動力方向変更装置が得られる。
さらに、切換えリング40を制御する切換えレバー80がシャフトハウジング
30の側壁に配設されて、第1の歯車81に接続される。これにより、切換えレ
バー80は、第1の歯車81の動きを利用して切換えリング40を移動させる。
前記構造を有する本発明に係る動力方向変更装置の作用と効果とを以下に説明
する。
説明上の便宜のために、操作方法を「ペダルを前向きに踏むことによる前進走
行」と「ペダルを後向きに踏むことによる前進走行」と「ペダルを後向きに踏む
ことによる空転」とに分類して本発明の作用を説明する。
第1に、「ペダルを前向きに踏むことによる前進走行」とは、第4および5図
に示されるように、ペダルシャフト20を時計回りに駆動したときに(この方向
は、自転車を自転車の走行方向に対して右から見た場合の方向であり、このこと
は以下の説明にも当てはまる)、自転車が前進走行することを意味する。この場
合、ペダルシャフト20からの動力は下記のように伝達される。
ペダルシャフト20を時計回りに駆動すると、太陽歯車60はペダルシャフト
20と協働して時計回りに回転する。ここで、第2のつめ62は第2のラッチ5
2と係合しているため、キャリア50はペダルシャフト20と同じ方向に回転す
る。従って、遊星歯車54そのものは回転せずに、遊星歯車54と係合している
スプロケット・キャップ70の第4の歯車71が時計回りに回転する。このよう
にして、ペダルシャフト20とスプロケット・キャップ70とが互いに同じ方向
に回転し、そのために自転車は前進走行する。
第2に、「ペダルを後向きに踏むことによる前進走行」とは、ペダルシャフト
20を反時計回りに駆動したときに自転車が前進走行することを意味する。この
場合、ペダルシャフト20からの動力は下記のように伝達される。この動作のた
めには、第4図Aに示されるように切換えリング40を制御することにより、第
1のつめ32と第1のラッチ51とを互いに係合させなければならない。
ペダルシャフト20を反時計回りに駆動すると、太陽歯車60はペダルシャフ
ト20と協働して反時計回りに回転する。ここで、第2のつめ62は第2のラッ
チ52を乗り越えて摺動するため、キャリア50に動力を伝達することは不可能
となる。その一方で、第5図に示されるように、太陽歯車60の第3の歯車61
は、太陽歯車60と係合している遊星歯車54に動力を伝達し、そのために遊星
歯車54は時計回りに回転する。この場合、遊星歯車54の前記回転は、遊星歯
車54と一体的に結合されているキャリア50を回転させる力をもたらす。しか
しながら、キャリア50は、第4図Aに示されたように第1のつめ32がキャリ
ア50の第1のラチェット51と係合しているために反時計回りに回転すること
ができない。このため、遊星歯車54と係合しているスプロケット・キャップ7
0が時計回りに回転する一方で、遊星歯車54だけが第5図に示されるように回
転する。この動作により、ペダルシャフト20に反時計回りに加えられる駆動力
の方向は、本発明の動力方向変更装置により変更され、かくして、スプロケット
・キャップ70が時計回りに回転する。
第3に、「ペダルを後向きに踏むことによる空転」とは、ペダルシャフト20
を反時計回りに駆動したときに、動力がスプロケット・キャップ70に伝達され
ないために自転車は走行できずに空転するだけになることを意味する。この動作
のためには、第4図Bに示されるように切換えリング40を制御することにより
シャフトハウジング30の第1のつめ32とキャリア50の第1のラチェット5
1とを非係合状態にしなければならない。
この場合、前記動作のための動力伝達過程は、キャリア50そのものがペダル
シャフト20のまわりで回転する一方で、遊星歯車54は、第1のつめ32が第
1のラチェット51と係合しないため、自転するという点を除いて、「ペダルを
後向きに踏むことによる前進走行」の過程と、遊星歯車54により反時計回りの
力がキャリア50に加えられる段階までは同じである。このように、ペダルシャ
フト20からの動力は、キャリア50のみに伝達されて、スプロケット・キャッ
プ70には伝達されないために、自転車は走行できないのである。
一般的な自転車におけるペダルを後向きに踏むことによる空転は、本発明の動
力方向変更装置による「ペダルを後向きに踏むことによる空転」とは下記の点で
異なる。すなわち、一般的な自転車におけるペダルを後向きに踏むことによる空
転では、駆動スプロケットおよびチェーンは、ペダルシャフトと協働して逆回転
する。しかしながら、本発明においては、駆動スプロケットおよびチェーンは回
転しない。
前記のように、「双方向前進走行装置」のひとつとしての本発明の装置は、新
しい部品を採用することにより従来の装置とは異なる態様で動力を伝達する。ま
た、各構成部品の形状が最適化されるため、特定部分への負荷の集中が防がれる
。さらにまた、各部品は一体化されるため、組立を簡単に行なうことができる。
加えて、本発明の以下の具体例で説明するように、レバーが取り付けられて装置
の操作が簡便化され、かつ、シャフトハウジングの構造が改良されて従来式自転
車に直接取付可能とされている。
前記の本発明に基づいて、以下に本発明の第1、第2および第3の具体例を説
明する。第1の具体例では、順回転に用いられる一方向ラチェットと逆回転を制
御するラチェットとの位置は互いに変更される。第2の具体例では、切換えレバ
ーは針金に置き換えられる。さらに、第3の具体例では、シャフトハウジングの
形状は、動力方向変更装置が従来式自転車を改変することなしに直接取り付けら
れるように改良される。
〈実施形態1〉
第6〜9図を参照すると、この具体例の基本的な特徴は、順回転に用いられる
一方向ラチェットと逆回転を制御するラチェットとの位置が移動されるところに
ある。すなわち、順回転に用いられるラチェットの位置は、キャリアの内側から
その外側に移動される一方で、逆回転を制御するのに用いられるラチェットの位
置はそれと反対に移動される。
前記2つのラチェットの位置を移動するために、各々の構成部品は、上述の本
発明のものとは異なる形状を有して製造される。しかしながら、部品の個数は前
記本発明と同じであり、その作用も前記発明と同様である。改良された部品の形
状を以下に説明する。
第6および7図に示されるように、シャフトハウジング130は、自身の右に
中空円筒状の突起を、そして自身の外側に複数個の開口131を有しており、こ
れらの開口に複数個の第3のつめ132が挿入される。シャフトハウジング13
0は、円板状側壁と、シャフトハウジング30の縁部を取り除くことによってシ
ャフトハウジング130が得られるため、前記本発明の穴33と比べてペダルシ
ャフト120に近い位置に前記本発明の第1の歯車81を受ける穴133とを有
する。
本具体例の切換えリング140は、第5の歯車141がその一方の側部におい
てペダルシャフト120の外側寄りに形成されるという点で前記本発明の切換え
リング40とは異なる。切換えリング140は第3のつめ132とキャリア15
0の第3のラチェット151との間に配置される。
第6および8図に示されるように、本具体例のキャリア150は、複数個の第
4のつめ152が挿入される複数個の開口153をキャリア150の左部分外側
に、そして第3のラチェット151を左部分内側に有する。また、キャリア15
0の右部分は、前記本発明のキャリア50のものと同じである。前記構造を有す
るキャリア150において、第4のつめ152はスプロケット・キャップ170
の第4のラチェット172と係合し、第3のラチェットはシャフトハウジング1
30の第3のつめ132と係合する。
本具体例の太陽歯車160は、ペダルシャフト160に固定される内側と、複
数個の遊星歯車154とのみ係合する第6の歯車161を有する外側とを有する
。
さらにまた、第6および9図に示されるように、スプロケット・キャップ17
0は、第6図の縁部内側の右に第7の歯車171を、そしてその左に第4のラチ
ェット172を有する。このため、第7の歯車171はキャリア150の遊星歯
車154と係合し、第4のラチェット172はキャリア150の第4のつめ15
2と係合する。
その他の部分は前記本発明のものと同じである。また、第6〜9図において、
参照符号110は車枠を表し、参照符号111はペダルシャフトハブを表し、参
照符号153はキャリア・リングを表し、参照符号155は遊星歯車のシャフト
を表し、参照符号173はスプロケット・ブラケットを表す。
前記構造を有する本具体例の作用と効果とを以下に説明する。
第1に、「ペダルを前向きに踏むことによる前進走行」は、下記のメカニズム
で行なわれる。ペダルシャフト120が時計回りに回転すると、太陽歯車160
はペダルシャフト120と同じ方向に回転し、遊星歯車154は反時計回りに回
転する。しかし、キャリア150そのものはペダルシャフト120の回転速度と
はる異なる回転速度で時計回りに回転し、キャリア150の第4のつめ152は
スプロケット・キャップ170の第4のラチェット172と係合して、以てスプ
ロケット・キャップ170を時計回りに回転させる。
次に、「ペダルを後向きに踏むことによる前進走行」は、切換えリング140
により第3のつめ132が切換えリング140の穴から解放された後に、シャフ
トハウジング130の第3のつめ132がキャリア150の第3のラチェット1
51と係合する場合に行なわれる。すなわち、ペダルを後向きに踏むことによる
前進走行は、キャリア150が固定されているときに行なわれるのである。この
ため、遊星歯車154は、自身のシャフトのまわりを回転しながら太陽歯車16
0からの動力の方向を変更し、以てスプロケット・キャップ170に時計回りに
動力を供給する。
最後に、「ペダルを後向きに踏むことによる空転」は、下記のメカニズムで行
なわれる。切換えリング140が第3のつめ132がシャフトハウジングの開口
から解放されるのを阻止して、キャリア150をペダルシャフト120と同じ方
向に回転させるようにする。その結果として、太陽歯車160からの動力はスプ
ロケット・キャップ170には伝達され得ない。
〈実施形態2〉
本発明の第2の具体例は切換えリング40の制御に関する。
前記本発明の切換えリング40は、シャフトハウジング30の側壁に形成され
る第1の歯車81(第1および2図参照)を用いることによって第1のつめ32
を解放および解放阻止する。シャフトハウジング30に形成される第1の歯車8
1を制御するためには、シャフトハウジング30を穿孔して穴33を形成し、こ
の穴を介して切換えレバー80を外側から取り付けるべきである。切換えレバー
80を前後に回転させると、第1の歯車81は切換えレバーと協働して回転し、
第1の歯車81に係合する切換えリング40は切換えレバー80と同じ方向に回
転して、以て第1のつめ32の解放および解放阻止が行なわれる。
前記切換えレバー80はシャフトハウジング30の外側に張り出しており、こ
の張り出した切換えレバー80が動力方向変更装置と従来式自転車との結合達成
を妨害している。
このため、第2の具体例は、前記欠点を改良するものである。ここでは、鋼線
を切換えレバーの代わりに採用することで動力方向変更装置を従来式自転車に容
易に接続して、以て切換えリングを制御する。
第10図に示されるように、第2の具体例の切換えリング43を制御する手段
は、複数個の穴45を持つ切換えリング43の一方の端部に輪44を有する。こ
の場合、輪44は、鋼線46をシャフトハウジング30の外側から穴33を介し
て接続して、以て切換えリング43を制御するためのものである。すなわち、切
換えリング43は、鋼線が引かれると、第1のつめ32を解放阻止するとともに
、切換えリング43は、鋼線46が押されると、第1のつめ32を解放するので
ある。
〈実施形態3〉
第3の具体例は、シャフトハウジング30に関しており、シャフトハウジング
30の形状は、本発明の動力方向変更装置を従来式自転車に従来式自転車を改良
することなしに直接取り付けるのに適した形状に改良される。
第11図は、本発明の動力方向変更装置が従来式自転車に取り付けられた状態
を示す。第3の具体例では、中空円筒状の形状を有するシャフトハウジング30
の外観が改良される。
本具体例のシャフトハウジング34は、多数の段を有する外観である。すなわ
ち、円筒状シャフトハウジング34は、左側に順番に多数の段を有しており、シ
ャフトハウジング34の左側の直径は右側の直径より小さくなっている。また、
接続管15が採用されて、動力方向変更装置を従来式自転車のペダル・ハブ11
に接続する場合に互換性を提供する。右ねじ35は、接続管15の外側に形成さ
れる。さらにまた、接続管35の外径はペダル・ハブ11の外径と同じであり、
その内径はシャフトハウジング34の外径と同じである。他方、付加的なナット
36は、下記のように製造される。左ねじ37がナット36の外側に形成され、
ナット36の左内側は勾配38を有して加工される。
従って、シャフトハウジング34は以下の手順により従来式自転車に取り付け
られる。第1に、右ねじ35を用いて接続管をペダル・ハブ11と結合させ、ス
プライン結合により接続管11をシャフトハウジング34と結合させる。次に、
左ねじ37による左螺合によりナット36を反対側に螺合させ、その後、ワッシ
ャ39を用いて組立を完了させる。
本具体例の動力方向変更装置を従来式自転車に接続すると、シャフトハウジン
グ34は、自転車を後ろに引くことによって引き起こされる逆負荷が駆動スプロ
ケットを介して本発明の動力方向変更装置に加わっても、ペダル・ハブ11には
るかに緊密に接続される。すなわち、動力方向変更装置に加えられる逆負荷が増
大すると、シャフトハウジング34は、接続管15の右ねじ35とナット36の
左ねじ37とが互いに反対方向に結合しているため、ナット36の内側に形成さ
れた勾配38によりペダル・ハブ11にはるかに緊密に接続されるのである。
また、シャフトハウジング30およびペダル・ハブ11の側部間の接触部分を
山谷形に加工することによってシャフトハウジング30とペダル・ハブ11とを
互いに緊密に結合させてもよい。
産業上の利用可能性
従って、この動力方向変更装置が自転車に取り付けられている状態において、
自転車は、ペダルを前向きに踏んでも後向きに踏んでも前進走行する。また、動
力方向変更装置が自転車に取り付けられている状態においてペダルを後向きに踏
むと、必要な場合に空転させることができる。「双方向ペダル駆動装置」の1つ
としての本発明の動力方向変更装置は、従来の双方向ペダル駆動装置とは構成部
品および動作メカニズムにおいて異なる。加えて、本発明の動力方向変更装置に
よれば、各々の構成要素の形状が最適化され、そのために特定部分への負荷の集
中が防がれる。さらにまた、全ての構成部品は一体的に形成され、それ故、組立
工程が簡単になる。この動力方向変更装置は、同装置を容易に操作できるように
するための切換えレバーと、動力方向変更装置を従来式自転車に従来式自転車を
改良することなしに取り付けるための補助リングとを採用している。