JPH1149620A - 抗菌性ブレンド塊状物およびその製造方法 - Google Patents

抗菌性ブレンド塊状物およびその製造方法

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JPH1149620A
JPH1149620A JP9215080A JP21508097A JPH1149620A JP H1149620 A JPH1149620 A JP H1149620A JP 9215080 A JP9215080 A JP 9215080A JP 21508097 A JP21508097 A JP 21508097A JP H1149620 A JPH1149620 A JP H1149620A
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益裕 塚田
Akira Shirata
昭 白田
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NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU NOGYO GIJUTSU KENKYUSHO
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NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU NOGYO GIJUTSU KENKYUSHO
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成型性に優れかつ抗菌機能を有する抗菌材料
の提供。 【解決手段】 水溶性高分子と下記式で表されるポリリ
ジン化合物: 【化6】 (式中、Rは、CH2−CH2−CH2−CH2−NH2
示し、nは、10以上である。)との混合水溶液を有機
高分子膜上で乾燥固化せしめることにより、該水溶性高
分子とポリリジン化合物とを含む抗菌性ブレンド塊状物
を得る。 【効果】 膜状、多孔質体状、ブロック状、粉末状、ゲ
ル状等のように形態が異なる抗菌性ブレンド塊状物が提
供できる。このブレンド塊状物は植物由来の各種細菌お
よび糸状菌の増殖を制御でき、また、黄色ブドウ状球菌
をはじめ動物由来の病原細菌の増殖も抑えることが出来
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水溶性高分子とポ
リリジン化合物とを含むブレンド塊状物およびこのブレ
ンド塊状物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリリジン化合物は、広い抗菌性スペク
トルを持ち、かびなどの真菌の増殖を効率的に阻止する
抗菌活性を有するポリアミノ酸である。生体に対する安
全性も高いので抗菌材料およびそれを製造するための出
発物質として有望である。従来、ポリリジン化合物が持
つ抗菌活性機能を用いて、肌着、靴下、ブラウス、各種
裏地用の一般の衣料製品、または、包帯、衛生布巾、皮
膚貼付剤基布等の医療用繊維製品に洗濯耐久性と抗菌・
抗かび性を付与するために、これら繊維製品をまず溶解
し、繊維を形成する前段階の繊維溶解液である紡糸原液
に、抗菌性を有するポリリジン化合物を添加し、これを
湿式紡糸することにより抗菌性繊維および繊維製品を製
造したり、または、ナイロン12ポリマーのチップにポ
リリジン化合物をブレンドし、ナイロン12ポリマーの
融点の180℃以上に加熱し、これを溶融紡糸すること
により抗菌性合成繊維を製造していた(特開平第8−1
70217号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来法では、紡糸
液の調製、紡糸工程などの複雑で繁雑な工程が必要であ
り、そのために溶解工程、紡糸工程に付属する種々の製
造処理装置が必要であった。従来法では、各種繊維およ
び繊維製品にポリリジン化合物を含有させるために、各
種繊維を形成する前段階の紡糸工程で、繊維原料の溶解
液である紡糸液にポリリジン化合物を添加しており、そ
の後の紡糸工程で繊維形成させた後に抗菌性繊維および
繊維製品が製造されていたが、上記のような問題があっ
た。かくして、効率、経済面で優れ、安い価格で、しか
も容易に抗菌性材料を製造すことのできる技術の開発が
望まれてきた。
【0004】従来の抗菌性材料が植物由来または動物由
来の細菌の増殖を抑制する程度は、材料に含まれるポリ
リジン化合物の分子量により左右される。通常、ポリリ
ジン化合物の抗菌活性は、分子量が一定以上の高分子物
となると向上する。紡糸過程で、処理溶液の作用を受け
高分子量のポリリジン化合物の重合度(構造単位の繰り
返し単位)が低く(10未満に)なると、抗菌活性が低
下して所望の用途に利用できない抗菌性材料になってし
まう。そのため、抗菌性を持つポリリジン化合物が低分
子化されないようにして抗菌性繊維材料を製造してい
た。
【0005】上記従来の方法、すなわち有機高分子から
なる紡糸液にポリリジン化合物を溶解させ、その後に紡
糸工程を経る方法では、繊維を溶解するために用いる薬
剤が、紡糸工程に至る間に、ポリリジン化合物の抗菌活
性を低下させるという問題があった。例えば、セルロー
ス系繊維を溶解させるために用いる銅アンモニア溶液
は、銅とアンモニアの錯体であり、ポリリジン化合物に
作用し、その結果ポリリジン化合物の抗菌活性を低下さ
せるという問題があった。また、ナイロン12ポリマー
のチップにポリリジン化合物をブレンドして、加熱後溶
融紡糸する方法では、ナイロン12ポリマーの融点の1
80℃以上に加熱する必要があり、一定温度以上に加熱
するとポリリジン化合物の抗菌特性が変化したり、分子
量が低下して抗菌活性が十分に発現しないという問題が
あった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、成型性に
優れかつ抗菌活性を有する抗菌性材料に関して鋭意検討
した結果、水溶性高分子とポリリジン化合物とをブレン
ドさせることによって、成型性、抗菌性に優れた材料が
できることを見出して、上記課題を解決し本発明を完成
させるに至った。本発明においては、水溶性高分子とポ
リリジン化合物とを水溶液状態で混合させて、抗菌性機
能を持ち、さまざまな形態を有するブレンド塊状物を製
造しようとするものである。水溶性高分子とポリリジン
化合物とを水溶液状態で機械的に混合し、その後水分を
蒸発せしめ、乾燥固化することによって、ポリリジン化
合物を含有し、かつポリリジン化合物と水溶性高分子と
の組成が均一なブレンド塊状物ができるという特性を利
用することにより、前記の問題点を解消した。
【0007】本発明のブレンド塊状物は、水溶性高分子
と下記式(1)で表されるポリリジン化合物:
【0008】
【化4】
【0009】(式中、RはCH2−CH2−CH2−CH2
−NH2を示し、nは10以上である。)との混合水溶
液から乾燥固化させることにより得られる。水溶性高分
子とポリリジン化合物との混合水溶液の蒸発過程で乾燥
速度を変えることにより、膜状、多孔質体状、ブロック
状、粉末状、ゲル状等のような種々の形態で抗菌性を有
するブレンド塊状物を成型できることが本発明の特徴で
ある。また、ポリリジン化合物と水溶性高分子水溶液と
の混合物を所定の物体表面にスプレーし、乾燥固化する
ことにより抗菌性表面を有する物体を形成することがで
きる。また、支持体表面上に水溶性高分子とポリリジン
化合物との混合水溶液を広げ、水分を蒸発させ、乾燥固
化させると抗菌性を持つ薄い被膜状のブレンド塊状物を
形成することができる。さらに、高濃度の混合水溶液を
用いれば抗菌性を持つ厚い板状であるブロック状ブレン
ド塊状物を製造できる。このように成型性の良いのが本
発明の特徴である。
【0010】本発明で用いられる水溶性高分子として
は、従来公知のものはいずれも利用できる。例えば、カ
ルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、
ポリビニルアルコールおよびその変性物またはその誘導
体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレオキサイド、ポ
リアクリルアミド、ポリアクリル酸またはその塩、ポリ
酢酸ビニル等、ならびに絹蛋白質(絹セリシン、絹フィ
ブロイン)、ケラチン蛋白質等が挙げられ、好ましく
は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ
アクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、
絹蛋白質、およびケラチン蛋白質、さらに好ましくは、
ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアク
リル酸、絹フィブロイン、およびケラチン蛋白質が挙げ
られる。これらの水溶性高分子は単独で用いてもまたは
組み合わせて用いてもよい。なお、天然蛋白質の羊毛ケ
ラチン、絹フィブロイン等は、下記に述べるように、水
溶性高分子として特に好ましい。
【0011】また、水溶性高分子としては、水溶液状態
でのpHがポリリジン化合物の等電点以上のもの、一般
には中性〜アルカリ性のもの、好ましくは5以上のも
の、さらに好ましくは5.8以上のものが使用される。
pHが5未満の水溶性高分子水溶液とポリリジン化合物
水溶液とを混合すると、ポリリジン化合物水溶液のpH
が酸性に傾き、ポリリジン化合物の分子鎖が凝固し、そ
の結果ポリリジン化合物が凝固・沈殿してしまうため、
ブレンド塊状物の透明度が低下し、成型性が劣悪とな
り、所望の形状、特性を持つブレンド塊状物が製造でき
なくなるからである。絹フィブロイン、羊毛ケラチンの
誘導体等の昆虫生体高分子の水溶液は、通常の状態では
pHが中性付近であり、ポリリジン化合物と任意に混っ
ても白濁することは無く、機械的性質に優れ、透明度の
高いブレンド塊状物を得るのに特に好ましい。
【0012】絹蛋白質繊維から絹フィブロイン水溶液を
調製するための原料としては、家蚕または野蚕由来の絹
糸が用いられる。組成の均一な抗菌性ブレンド塊状物を
製造するには家蚕由来の蛋白質が好ましい。例えば、家
蚕生糸を炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液で煮沸し、
絹糸表面にある膠状の接着物質、セリシンを除去して調
製できる絹フィブロイン繊維を中性塩で溶解し、セルロ
ース製の透析膜で十分透析することにより純粋な絹フィ
ブロイン水溶液を調製できる。この絹フィブロイン水溶
液にポリリジン化合物を加えてできるブレンド塊状物の
成型性は良好であり、透明度の高い抗菌性材料ができ
る。天然生体高分子である絹フィブロインは、手術用縫
合絹糸の例からも明らかなように、生体組織との生体適
合性が良いため、また、ブレンド塊状物も優れた生体適
合性を持つため、このブレンド塊状物は体内埋め込み用
材料として利用することができる。
【0013】上記したように、絹フィブロイン繊維を溶
解するには、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リ
チウムなど一般に知られた中性塩が利用できる。絹糸の
溶解性を高め、未変性状態に近い絹フィブロインを製造
するためには、溶解性の高いリチウムイオンを含む中性
塩が望ましく、臭化リチウムなどが特に好ましく用いら
れる。野蚕絹糸の表面にはタンニンが付着し、蛋白質を
強く不溶化させているので、これを除去するには、柞蚕
あるいは天蚕等から得られる野蚕繭糸を繭糸重量に対し
て50倍量の0.1%過酸化ナトリウム水溶液に浸漬
し、98℃で1時間処理してセリシンを予め除去してお
く必要がある。セリシンを除去した野蚕絹フィブロイン
繊維をチオシアン酸リチウム等の溶解性の高い中性塩で
溶解し、さらにセルロース製透析膜に入れて純水で透析
することで野蚕絹フィブロイン水溶液が調製できる。
【0014】羊毛はケラチンと呼ぶ蛋白質からできてお
り、本発明で利用できるのは、次のようにして調製でき
るケラチン水溶液またはS−カルボキシメチルケラテイ
ン水溶液である。羊毛繊維を溶解するには、まず、分子
間のCys結合を窒素雰囲気下、メルカプトエタノール
またはチオグリコール酸等の還元剤を用いて切断し、ケ
ラチン分子を還元して可溶化する必要がある。メルカプ
トエタノールを用いる場合には、尿素溶液中で還元処理
を行うと良い。尿素の濃度は一般に7.5〜8.8M、
好ましくは7.8〜8Mである。チオグリコール酸を用
いる場合には、1〜4%のNaClを添加すると良い。
【0015】還元剤として、例えば、メルカプトエタノ
ールを用いる場合、羊毛繊維を上記濃度の尿素水溶液に
浸漬し、脱気後、窒素雰囲気下、45℃以下、望ましく
は20〜25℃の温度で、メルカプトエタノールを10
gの羊毛繊維に対し3〜5ml加え、さらに約3時間攪
拌する。こうしてケラチン分子が還元されて、分子間の
ジスルフィド結合(−S−S−結合)が還元され、SH
となったケラテインが得られる。純水を用いて透析し、
尿素、過剰のメルカプトエタノールを除去するとケラテ
イン水溶液が得られる。これは、本発明における水溶性
高分子として利用できる。このようにして還元したSH
基を有するケラテインをさらにアルキル化剤、例えば
(置換)アルキルハライドと反応させてS−(置換)ア
ルキルケラテインとしても利用することができる。アル
キル化は公知の方法に従って行えばよい。一例としてア
ルキル化剤としてヨード酢酸を用いた場合について説明
する。上記の還元ケラテインに、窒素雰囲気下、20〜
25℃の温度で、攪拌しながら、10gの羊毛繊維に対
して10〜17gのヨード酢酸(分子量185.95)
を加え、反応させる。1〜2時間後、pHを8.5に調
整し、純水を用いて透析することによって過剰のヨード
酢酸を除いてS−カルボキシメチルケラテイン水溶液を
得る。この水溶液が、本発明における水溶性高分子とし
て利用される。
【0016】上記の水溶性高分子水溶液にポリリジン化
合物水溶液を混合して均一に撹拌し、この混合水溶液を
ポリエチレンテレフテレート、ナイロン、ポリエチレ
ン、ポリスチレンまたはテフロン等の有機高分子表面、
ならびにガラス表面などのような支持体の表面上に広
げ、水分を蒸発させ、乾燥固化させることによりポリリ
ジン化合物を含む膜状のブレンド塊状物を製造すること
ができる。かかる支持体としては、乾燥後のブレンド塊
状物が容易に剥がれるものであれば、特に制限はない。
ブレンド膜に混合すべきポリリジン化合物の量は、特に
制限はなく、使用用途、特に所望の抗菌性機能および物
性に応じて変化させることができる。ポリリジン化合物
の含有量が多いと、得られるブレンド塊状物は白濁し、
不透明となり、強度的にも弱くなるが、抗菌性能の面か
らは優れた抗菌性材料が製造できるので、用途に合わせ
てポリリジン化合物の含有量を変化させればよい。ポリ
リジン化合物の含有量が少ないと、その分抗菌性は低下
するが、成型性を向上させることができるという利点が
ある。上記したように、ポリリジン化合物含有量は、用
途に合わせて変化させることが出来るが、一般には、ブ
レンド塊状物重量基準で約20%以上であることが望ま
しい。
【0017】水溶性高分子とポリリジン化合物とから成
るブレンド塊状物は、通常は水溶性であるので、成型
後、所望により不溶化処理を施すとよい。水溶性のまま
だと、使用環境の湿度が高い場合には水分を吸って膜状
ブレンド塊状物は溶解してしまい不都合である。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明で利用できるポリリジン化
合物は、下記式(1)で表され、ポリリジン化合物の末
端のアミノ基および分子側鎖のアミノ基が、アンモニウ
ム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、もしくは臭酸塩と配位
結合していてもよい化合物、またはその化合物の混合物
である。
【0019】
【化5】
【0020】(式中、RはCH2−CH2−CH2−CH2
−NH2を示し、nは構造単位の繰り返し数である重合
度を意味し、10以上である。) このポリリジン化合物の立体配位としては、D体、L
体、DL体であればいずれも利用できる。重合度を示す
nが10以上であれば効率的な抗菌性を示す。本発明で
使用するポリリジン化合物は、上記したように、末端の
アミノ基および分子側鎖のアミノ基がアミノ基のままで
ある化合物であっても、このアミノ基が塩と配位結合し
た塩型の化合物であっても、またこれら化合物の混合物
であってもよい。例えば、分子末端のアミノ基および分
子側鎖のアミノ基が、上記したように、アンモニウム
塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、または臭酸塩と配位結合
した水溶性のポリアミノ酸であってもよい。ポリリジン
化合物と絹フィブロインとは、両者の水溶液を機械的に
混合することでブレンドできる。ブレンド状態を均一に
するには、両者を機械的に混合した後、ガラス棒で穏や
かに攪拌するとよい。これらの水溶液の混合温度には、
ポリリジン化合物の抗菌活性が失われない範囲であれ
ば、特に制約はない。
【0021】ポリリジン化合物と水溶性高分子との水溶
液は、混合水溶液を用いた抗菌性材材として利用できる
し、混合水溶液の蒸発速度や調製条件を変えることによ
って、膜状にも、多孔質体状にも、ブロック状にも、粉
末状にも、ゲル状その他にも形成できる。粉末または多
孔質体の調製は、ポリリジン化合物と絹フィブロインと
のブレンド水溶液を−7℃以下、好ましくは−30℃以
下で、一旦凍結乾燥させたものを、さらに減圧下で凍結
乾燥することにより行われる。一方、ブレンド膜は、両
者の水溶液の混合水溶液を、例えばポリエチレン膜上に
広げ、水分を自然状態で穏やかに蒸発させ、乾燥固化せ
しめることにより製造できる。
【0022】ポリリジン化合物と水溶性高分子との混合
水溶液からゲル状材料を製造するには、まず、ポリリジ
ン化合物と水溶性高分子との混合溶液に、硫酸、塩酸等
の無機酸、蟻酸、クエン酸等の有機酸の水溶液を加えて
pHを等電点以下にするとよい。生理活性物質、医薬
品、抗生物質を固定化させたゲル状材料は、徐放担体と
して医用分野で先端的な利用が可能である。前記したよ
うに、従来技術によれば、ポリリジン化合物を含む抗菌
性繊維は、紡糸の前段階として調製できる紡糸液にポリ
リジン化合物を添加し、その後、これを紡糸することよ
って製造されていた(特開平第8−170217号公
報)が、本発明では、ポリリジン化合物と水溶性高分子
水溶液とを混合するだけで、紡糸することなく抗菌性材
料を調製することができる。
【0023】通常、水溶性高分子とポリリジン化合物と
の水溶液を乾燥固化して調製できるブレンド塊状物は水
に溶解するが、本発明では、所望によりこれを不溶化さ
せることができる。不溶化剤としては、アルデヒド化合
物、エポキシ化合物など分子架橋の形成作用を有する不
溶化剤であれば何れも利用できる。反応の容易さ、試薬
の取り扱いの簡便さから、グルタルアルデヒド、または
ホルムアルデヒドが好ましく用いられる。さらに天然生
体高分子である絹フィブロインは、アルコ−ル水溶液に
より簡単に物理化学的処理をするだけで、試料分子の分
子凝集状態が密となって水に不溶化するという特徴があ
る。そのため、ポリリジン化合物と絹フィブロインとか
らなるブレンド塊状物は、人体や環境に悪影響を与える
恐れの無いアルコールによる浸漬処理により、水溶性ブ
レンド塊状物を水不溶性の材料に変えることが可能であ
る。
【0024】グルタルアルデヒドにより本発明のブレン
ド塊状物を不溶化させるには、0.1〜4%、特に好ま
しくは0.5〜2%のグルタルアルデヒド溶液にブレン
ド塊状物を30秒〜2時間、浸漬処理するとよい。浸漬
時間が十分でないと不溶化させることができず、所望の
効果が得られなかったり、また、浸漬時間が必要以上に
長いとブレンド塊状物は不溶化するが該塊状物内に架橋
剤が入り過ぎて、除去するのが困難となり、調製後のブ
レンド塊状物を体内埋め込み材料として用いたときに、
生体組織に害を与える恐れがある。ブレンド塊状物の厚
さが薄いものは、浸漬時間が30秒〜1分、または30
秒より短くても、浸漬処理で十分不溶化するが、厚いも
のは時間をかけて不溶化させるとよい。不溶化薬剤で処
理したブレンド塊状物では、塊状物内の未反応アルデヒ
ドを完全に除去することが材料の安全性の観点から望ま
れるが、そのためには水洗いを十分するとよい。固体の
水溶性高分子の溶解性が高いときにはグルタルアルデヒ
ドの浸漬時間を短くするのがよい。
【0025】古くから、絹糸は外科分野で手術用絹縫合
糸として用いられている。これは、絹糸の減菌が容易で
あり、体内に埋め込んでも抗原抗体反応が起こり難いた
めである。ポリリジン化合物は生体組織の化学構造に似
たポリアミノ酸であり、生体組織に対して安全であり、
また、絹フィブロインとポリリジン化合物とからできる
ブレンド塊状物も生体組織に対して安全である。そのた
め、本発明のブレンド塊状物を生体内に埋め込んでも生
体反応が起こらず、また、ブレンド塊状物から有害な物
質が流出することはないため、このブレンド塊状物は安
全性に優れた材料であるといえる。分子架橋反応で不溶
化させるとブレンド塊状物は生体内での生分解性が低く
なるので、その分生体安全性はさらに良好となり、本発
明のポリリジン化合物を合むブレンド塊状物は抗菌性に
優れた体内埋め込み用のバイオ材料として適する。
【0026】水溶性高分子に含まれるポリリジン化合物
の量は、前記したように、使用用途に合わせて決めるこ
とが望ましい。ポリリジン化合物の量が増えると当然各
種植物由来および動物由来の病原細菌の増殖を抑制する
効果は高まるが、引張り強度、伸度などの力学的特性は
低下するので、使用目的に合わせてポリリジン量を決め
ることが望ましい。本発明の水溶性高分子と抗菌性を有
するポリリジン化合物とは、水溶液状態および固体状態
において、相溶性が良好である。水分を蒸発させ、乾燥
固化してできるブレンド塊状物は、成形性が良いので、
筒状試料の内部、任意の形態の物質の内面あるいは外面
を被覆するのに有用である。
【0027】
【実施例】次に、本発明を実施例および比較例によりさ
らに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。以下の実施例において細菌活性を評価
するための抗菌性評価は、次の方法に基づいて行われ
た。まず、実施例で用いた植物病原細菌は次の通りであ
る。実施例で用いた植物病原細菌は、植物病原細菌全体
をできる限り代表するように選んだ。すなわち、限られ
た作物を宿主とする細菌の代表としてXanthomo
nas属細菌を、また、普遍的な植物病原菌の代表で耐
性菌も出現しやすく多くの植物を犯すものとしてPse
udomonas属細菌を、また、植物病原細菌の中で
も比較的少ないグラム陽性菌としてCorynebac
terium属細菌を選んだ。
【0028】また、胞子を作って増殖する植物病原糸状
菌の代表としては、稲の病原菌で、黒い大きな胞子をつ
け、生物検定に多く利用されるイネゴマ葉枯病菌、およ
び広範囲の作物を犯すFusarium属菌の中から防
除薬剤がなく強い病原性を示すクワ芽枯病菌を用いた。
本発明で用いた具体的な植物病原菌は次の通りである。
【0029】A:Corynebacterium
ichiganese pv.michiganese
(トマトかいよう病菌) B:Pseudomonas cichorii(各種
腐敗病(レタス)) C:Xanthomonas campestris
pv.campestris(アブラナ科野菜黒腐病
菌) D:Biporaris leersiae(イネごま
葉枯病菌) E:Fusarium solani f.sp.mo
ri(クワ芽枯病菌) なお、実施例中では、上記の細菌、糸状菌の名称の代わ
りに英字1文字(すなわち、A〜E)で表記することも
ある。また、実施例中では、動物由来の病原細菌とし
て、黄色ブドウ状球菌を用いる。次ぎに、前記各種の菌
に対する抗菌活性検定評価について記載する。
【0030】(1)細菌に対する抗菌活性検定評価:加
熱溶解後55℃に保持したキングB培地25mlと、検
定菌(濃度109-10個/ml)2mlとを混合してシャ
ーレに流し込んで平板状に固めた。この菌液混合平板培
地上に約2cm四方の膜状ブレンド塊状物を置き、ピン
セットで注意深く試料全体を培地に密着させるようにし
た。2日間20〜25℃に保った後、検定試料付近の培
地での菌増殖阻害程度を下記の判定基準により4段階で
評価した。 ++:強い(明瞭で幅5mm以上の菌増殖阻止帯を形
成) +:弱い(不明瞭な阻止帯を形成、または幅5mm未満
の明瞭な阻止帯を形成) ±:軽微(わずかに阻害が認められる) −:抗菌活性は認められない。 (2)糸状菌に対する抗菌活性検定法:加熱溶解後55
℃に保持したPSA培地と、検定菌の胞子液(濃度10
6-7個/ml)2mlとを混合してシャーレに流し込ん
で平板状に固め、上記(1)の細菌の場合と同様に観察
した。 (3)黄色ブドウ状球菌(Staphylococcu
aureus ATCC 6538P)に対する抗
菌活性検定試験法:実施例中では、黄色ブドウ状球菌を
Fとも表記する。黄色ブドウ状球菌に対する抗菌活性検
定に関しては、繊維製品衛生加工協議会による下記の如
き衛生加工製品加工効果評価試験方法に基づく菌数測定
法に拠った。
【0031】普通ブイヨン培地で調整した黄色ブドウ
状球菌を5×105〜30×105個/ml含有する試験
菌懸濁液0.2mlを、約0.2gの試料の上に均一に
接種する。 試料は、ブランクを6検体、評価試料を3検体用意
し、接種後、ブランク3検体、および評価試料3検体を
直ちに35〜37℃で18時間静置培養する。 培養しないブランク3検体は接種直後に、また培養し
たブランク3検体および評価試料3検体は培養終了後
に、減菌緩衝生理食塩液20mlを加え、振とうして試
料中の生菌を液中に分散させ、この分散菌液から減菌緩
衝生理食塩液で希釈系列を作り、下記のX、Y、Zのそ
れぞれの菌数を測定する。 X:接種直後分散回収したブランク(3検体) Y:18時間培養後分散回収したブランク(3検体) Z:18時間培養後分散回収した評価試料(3検体) 菌数測定は、希釈液1mlをシャーレに入れ、標準寒
天培地の約15ml混合平板を作成(同一希釈液につき
平板を2枚作成)後、35〜37℃で24〜48時間培
養し、成育したコロニー数を測定し、その希釈倍数を乗
じて試料中の生菌数を算出する。 X、Y、Zの菌数の平均したものをそれぞれx、y、
zとし、次式により増減値差を計算する。この増減値差
の数値の大きいものほど抗菌性に優れる。 増減値差=[Log(y/x)−Log(z/x)] 増減値差により、菌増殖の阻害の程度(抗菌活性度)
を下記の判定基準により3段階で評価する。 ++:増減値差が2.5以上 +:増減値差が1.6以上2.5未満 −:増減値差が1.6未満 また、実施例1で得られた膜状ブレンド塊状物の機械的
特性、透過度、吸湿率、成型性能、熱分解温度、および
熱形態安定度についての評価は、以下の方法に基づいて
行われた。
【0032】(1)機械的特性 膜状ブレンド塊状物の機械的特性は、機械的性質測定に
より検討した。これらの機械的性質の測定では、切断時
の試料の強度と伸度の値を示したものである。なお、測
定条件は試料長12mm、引張り速度1000mm/m
in、チャートフルスケール200gであり、島津式オ
ートグラフにより求めたものである。ただし、強度(g
f)は膜状試料1枚当たりの切断強度を示している。膜
状試料の厚さは約20μm、幅3mm、引き抜き速度1
0mm/minであった。 (2)透過度 ポリリジンと絹フィブロインとからできる膜状ブレンド
塊状物の透明度を次のようにして測定した。パーキンエ
ルマー社製(UV−2100S型)のUV/VIS分光
計(UV/VIS Spectrometer)を使
い、350nm〜740nmの波数範囲で膜状試料を直
接用いてその透過度を求めた。試料表面の反射による光
透過率の低下が起こらないように、湿潤状態の試料を石
英セルに挟み込んで測定した。ただし、試料を挟み込ま
ない石英セルのみをレファレンスとして用いた。光透過
度は380〜780nmでの透過率の単純な平均値を基
にして算出した。 (3)吸湿率 20℃、65%RHに調節した恒温恒湿中に試料を1週
間放置して吸湿量が平衡状態となったものの重量を計測
し、この試料の105℃で2時間乾燥後の重量との差よ
り吸湿率(%)を測定した。 (4)成型性能 試料の成型機能を次のようにして求めた。試料水溶液を
20℃に設定した恒温恒湿度雰囲気下のポリエチレン膜
上に広げ、12時間かけて試料水溶液を乾燥固化させて
製造できる膜状試料の形態および製膜状態を観察した。
膜状試料の成型性を下記の判定基準により3段階で評価
した。 ++:非常にしなやかで良好である。 +:良好である。 −:成型膜が脆くて少し力を加えただけで構造が破壊し
てしまい、良好な成型性でない。 (5)熱分解温度 理学電機(株)製示差走査熱量計(DSC 10A)に
よる測定で、25〜330℃の温度範囲、200℃以上
の温度領域で認められる主要な吸熱ピーク温度を熱分解
温度として表示した。試料重量2.5mg、昇温速度1
0℃/min、測定はN2ガス中で行った。 (6)熱形態安定度 膜状ブレンド塊状物の熱形態安定度は、理学電機(株)
製の熱機械測定(TMA)により評価した。ただし、熱
形態安定度TS(%)は次式により求めた: TS(%)=a/b×100 但し、上式中、aは25〜180℃の温度領域で試料長
が一番収縮したときの長さ、bは測定開始時の試料寸法
である。測定はN2ガス中で行った。
【0033】実施例1 絹フィブロイン繊維を60℃、8M臭化リチウム水溶液
で完全に溶解し、セルロース系の透析膜中で純水と5日
間置換しながら透析することで調製した0.8%絹フィ
ブロイン(以下、再生絹フィブロインと呼ぶこともあ
る)水溶液5mlに、ポリ−L−リジン臭酸塩(シグマ
ケミカル社(Sigma Chemical Comp
any)製、製品番号P1274(Product N
o.P1274))(以下、単にポリリジン臭酸塩と称
することもある)の8mg、50mg、165mgを別
々に加えて溶解させた後、ガラス棒で静かに攪拌し均一
な溶液とし、この溶液を25℃でポリエチレンフィルム
上に広げ、扇風機を用いて送風乾燥させて膜状ブレンド
塊状物を調製した。用いたポリリジン臭酸塩は、分子重
合度549、分子量114,700である。種々の植物
病原細菌(前記A〜F)の増殖抑制に及ぼすこれら水溶
性の膜状ブレンド塊状物の効果を調べるために、抗菌性
実験を行った。得られた結果を表−1に示す。以下、ポ
リリジン臭酸塩をPLL、絹フィブロインをSF、両者
のブレンド塊状物をPLL/SFと略記することもあ
る。表−1のPLL直後の数字はポリリジンの添加量で
ある。すなわち、PLL 50/SFとは、PLL 5
0mgを0.8%SF 5mlに混合し、乾燥固化して
得られる膜状ブレンド塊状物を意味する。
【0034】
【表1】
【0035】注:表中、「明」の記号は、阻止円の外周
が明瞭に現れているものであり、阻止限界濃度が明瞭に
認められるものを意味する。
【0036】表−1から明らかなように、ポリリジン化
合物は広い植物および動物由来の病原細菌の増殖を効果
的に抑制する。膜状ブレンド塊状物に含まれるポリリジ
ン化合物の量が増えるにつれて、これら病原細菌の増殖
を抑制するようになるが、ポリリジン化合物が僅か入っ
ただけでイネごま葉枯病細菌(D)等の増殖が抑えられ
るようになった。表−1に示した全ての膜状試料を2%
グルタルアルデヒド水溶液で2分間処理した後、十分水
洗いすることにより得られた不溶化処理した試料の抗菌
性も、不溶化処理していない試料についての表−1の結
果と同様であった。
【0037】実施例2 実施例1で用いたポリ−L−リジン臭酸塩のかわりに、
ポリ−D−リジン塩酸塩(シグマケミカル社製、P−7
886、Lot No.25H5543、分子重合度3
21、分子量67,100)またはポリ−DL−リジン
臭酸塩(シグマケミカル社製、P−9011、Lot
No.17H5526、分子重合度215、分子量4
5,000)を用いて、実施例1と同様の方法で膜状ブ
レンド塊状物を調製した。表−1に示した全ての検定菌
の繁殖に及ぼす阻害程度を評価したところ、調製した膜
状ブレンド塊状物は強い抗菌性を示すことが分かった。
【0038】実施例3 実施例1で用いた水溶性の膜状ブレンド塊状物の破断時
の強度(gf)および伸度(%)、透過度、吸湿率、成
型性能、熱分解温度、ならびに熱形態安定度を測定し
た。得られた結果を表−2に示す。表−2では、絹フィ
ブロイン水溶液をポリエチレン膜上に広げて水分を蒸発
させ、乾燥固化せしめることにより得られた透明な絹フ
イブロインをSFと略記した。
【0039】 ※:PLLの成型性が劣悪で測定が不可能 上記表−2から明らかなように、ポリリジン化合物のみ
の成分からなる膜状の水溶性PLLは、成型性能が劣悪
で、機械的に脆く強度や伸度は測定できない。絹フィブ
ロインを混入することで、水溶性の膜状ブレンド塊状物
の強度は絹フィブロイン膜よりも向上し、伸びやすくし
なやかとなる。ポリリジン膜は白濁しており不透明であ
るが、絹フィブロインが混在することにより透明とな
る。ポリリジン化合物の成型性は劣悪であるが、絹フィ
ブロインが僅かに入ることで成型性が良好となる。
【0040】実施例4 実施例1で用いたポリリジン臭酸塩の代わりに分子量
1,000〜4,000のポリリジン臭酸塩(シグマケ
ミカル社製、製品番号P0879)と絹フィブロインと
を水溶液状態で混合して、実施例1の操作を繰り返し、
数種の膜状ブレンド塊状物を調製した。実施例1の場合
と同様にして測定した試料の抗菌性は表−1の結果と同
様であった。
【0041】実施例5 実施例1で用いたポリリジン臭酸塩の代わりにポリリジ
ン塩酸塩(シグマケミカル社製、製品番号P9404)
と絹フィブロインとを水溶液状態で混合して、実施例1
の操作を繰り返し、数種の膜状ブレンド塊状物を調製し
た。実施例1の場合と同様にして測定した試料の抗菌性
は表−1の結果と同様であった。なお、ポリリジン塩酸
塩の分子量は、30,000〜70,000であった。
【0042】実施例6 実施例1の場合と同様にして得た絹フィブロインとポリ
リジン化合物との混合水溶液に1/20N硫酸水溶液を
少量づつ加え、試料水溶液のpHを2に調整することに
よって、混合水溶液全体が白濁し、ゲル状物が得られ
た。pHを調整することによって、ゲル状物を得ること
が出来るので、使用用途を広げることが出来る。
【0043】実施例7 実施例1と同様にして得た絹フィブロイン水溶液とポリ
リジン化合物水溶液との等量混合水溶液をビーカーに取
り−30℃で一旦凍結する。これを凍結乾燥器により減
圧下で乾燥すると、12時間後に再生絹フィブロインと
ポリリジン化合物とからなる多孔質体が調製できた。こ
の多孔質体は、表面積が大きくスポンジ状であった。
【0044】実施例8 水溶性高分子として羊毛を溶解したケラチン水溶液を次
のようにして調製した。メリノ種羊毛(64’S)に含
まれる色素、脂肪分は、ベンゼン−エタノール50/5
0容積%の混合溶液を用いて、ソックスレー抽出器で
2.5時間処理することで除去した。
【0045】三つ口フラスコの一つの口には三方コック
を介して乾燥窒素ボンベからのゴム管を接続した。反応
系のpH調節のためのpH電極を別の口に常時挿入し、
もう一方の口は必要な薬剤投与用として利用する。繊維
長が約1cmとなるようにハサミで細断した8.18g
のメリノ種羊毛繊維を三つ口フラスコに投入し、これに
450mlの8M尿素溶液を加えた。窒素ガスをパージ
させ、アスピレータで15分間三つ口フラスコ内を45
mmHg程度に減圧させ、次いで急激に大気圧に戻す操
作を3〜4回繰り返した。このようにすると、三つ口フ
ラスコ内の羊毛繊維間に含まれる空気が完全に除去で
き、尿素水溶液とケラチン分子との反応が効率的とな
る。窒素置換が完了した後、三つ口フラスコ内に還元剤
として4.8m1のメルカプトエタノールを加えて、8
M尿素水溶液中で2〜3時間放置した。更に、約100
mlの5N KOH溶液を微量づつ加えて三つ口フラス
コの混合溶液のpHを10.5に調節した。室温で3時
間かけて羊毛繊維が完全に溶解するのを待った。繊維状
の羊毛繊維が溶解したものがケラテイン水溶液である。
セルロース透析膜を用いケラテイン水溶液を純水で2日
間透析した。ケラテイン水溶液の濃度が低い場合には送
風乾燥させながら、また、該濃度が高い場合には純水を
加えることにより、絶乾濃度で0.01%のケラテイン
水溶液を調製した。
【0046】このケラチン水溶液450mlに,室温で
9.5gのヨード酢酸を加えてケラチンのS−カルボキ
シメチル化反応を1時間行った。5N KOH水溶液で
ケラチンの溶液のpHを8.5に調製することにより、
S−カルボキシメチルケラテインの水溶液を得た。セル
ロース製の透析膜を用いてこの水溶液を純水で2日間透
析した。実施例1で述べたと同様の方法で、水溶性高分
子水溶液としてのS−カルボキシメチルケラテイン水溶
液に実施例1で使用したポリリジン臭酸塩を加え、膜状
のブレンド塊状物を調製した。このブレンド塊状物は、
トマトかいよう病細菌(A)の増殖を阻害したことか
ら、抗菌性機能を持つことが明らかとなった。
【0047】実施例9 ポリビニルアルコ−ル(PVA)、ポリアクリルアミド
(PAAmと略記)、ポリアクリル酸(PAacと略
記)について、それぞれ1.1%w/vの水溶性高分子
溶液を調製した。すなわち、重合度約2000のポリビ
ニルアルコール(和光純薬工業(株)、Lot No.
TSJ0964)、アクリルアミド ポリマー10%水
溶液(和光純薬工業(株)、ロット番号LTJ2704
(Lot.No.LTJ2704))、ポリアクリル酸
水溶液(和光純薬工業(株)、Lot.No.WEE5
784)に適宜蒸留水を加えて希釈し、1.1%のポリ
マー水溶液を調製した。これらの水溶性高分子水溶液の
各4.5mlに、1.5mlのPLLの1%水溶液を加
えて水溶液状態で均一に混合した。20℃、65%RH
の常温常湿下で、ポリエチレンフィルム上に各混合水溶
液を広げて、一昼夜かけて水分を蒸発させ、乾燥固化さ
せてブレンド膜を調製した。こうして得られる3種類の
膜状ブレンド塊状物を、ここでは、それぞれPVA/P
LL、PAAm/PLL、PAac/PLLと略記す
る。乾燥固化直後の試料膜は、水に溶解性であるため、
2%のグルタルアルデヒド水溶液に1分間浸漬し、ドラ
フト中で乾燥させて水不溶性のブレンド膜を調製した。
トマトかいよう病細菌および黄色ブドウ状球菌の増殖に
及ぼすこれら試料の抗菌性を、実施例1の場合と同様の
方法で調べた。得られた結果を表−3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】PVA、PAAm、PAacを水溶性高分
子として用いて得られたブレンド塊状物は、表−3から
明らかなように、グルタルアルデヒドで不溶化させた後
もトマトかいよう病細菌および黄色ブドウ状球菌の増殖
を効果的に阻止する働きを有することがわかる。なお、
不溶化処理前の試料の場合も、上記した不溶化処理後の
場合と同じように、トマトかいよう病細菌および黄色ブ
ドウ状球菌の増殖を効果的に阻止する働きがあった。
【0050】実施例10 実施例9で得られたPVA/PLLの水溶性試料から次
ぎのようにして水不溶性試料を調製した。23℃の0.
5%のグルタルアルデヒドを含むpH7.0の0.05
Mリン酸緩衝液に、このPVA/PLLの水溶性試料を
2分間浸漬し、試料を取り出し、室温で乾燥させること
により水不溶性試料を得た。トマトかいよう病細菌の増
殖阻害に及ぼすこの水不溶性試料の効果を、実施例1と
同様の方法で評価したところ、評価段階で++の結果が
得られた。PVA/PLLは水溶性であっても、水不溶
性であっても植物細菌の増殖を阻害することが明らかと
なった。
【0051】なお、前記ポリリジン化合物として、実施
例記載の臭酸塩、塩酸塩の型の化合物以外に、アンモニ
ウム塩、硫酸塩、硝酸塩の型の化合物を使用した場合
も、塩型にしない化合物を使用した場合も、また、それ
らの化合物の混合物を使用した場合も、上記実施例の場
合と同様な結果が得られる。ポリリジン化合物は、塩の
型になることによって水溶性になっている。前記水溶性
高分子として、実施例記載のもの以外の前記水溶性高分
子を使用した場合も、上記実施例と同様な結果が得られ
る。また、ブレンド塊状物としては、実施例記載の膜
状、多孔質体状、ゲル状の他に、使用用途に合った任意
の形状、例えば粉末状、ブロック状等の形状のものを調
製することができる。
【0052】
【発明の効果】本発明によれぱ、ポリリジン化合物と水
溶性高分子とからなり、膜状、多孔質体状、ブロック
状、粉末状、ゲル状等のように形態が異なる抗菌性ブレ
ンド塊状物が提供できる。このブレンド塊状物は、植物
由来のトマトかいよう病菌、各種腐敗菌(レタス)、ア
ブラナ科野菜黒腐病等の細菌およびクワ芽枯病等の糸状
菌の増殖を制御でき、また、最近院内感染菌として問題
となっている黄色ブドウ状球菌をはじめ動物由来の病原
細菌の増殖も抑える効果を持つ。
【0053】昆虫生体高分子として絹蛋白質水溶液また
は羊毛ケラチン水溶液を用いると、調製できるブレンド
塊状物は、透明性に優れ、機械的強度も特に良好とな
る。例えば、ポリリジン化合物と絹フィブロインとから
なるブレンド塊状物は、透明で強度的にも優れ、生体適
合性も良好であるので、医療分野を中心としたバイオ材
料として利用できる。また、本発明のブレンド塊状物
は、所望により水に対する溶解性を簡単に制御すること
が可能であり、膜状、多孔質体状、ブロック状、粉末
状、ゲル状等の形態で形成することができる。所望によ
り、ポリリジン化合物と水溶性高分子との混合水溶液を
物体の表面上にスプレーし、乾燥固化してできる薄膜を
不溶化させれば、耐久性に富んだ抗菌性薄膜を該物体の
表面に被覆することができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性高分子と下記式(1)で表される
    ポリリジン化合物: 【化1】 (式中、RはCH2−CH2−CH2−CH2−NH2を示
    し、nは10以上である。)との混合水溶液からの乾燥
    固化物であり、該水溶性高分子とポリリジン化合物とを
    含むことを特徴とする抗菌性ブレンド塊状物。
  2. 【請求項2】 前記ポリリジン化合物は、その末端のア
    ミノ基および分子側鎖のアミノ基がアンモニウム塩、塩
    酸塩、硫酸塩、硝酸塩、もしくは臭酸塩と配位結合して
    いる塩型の化合物、またはその化合物の混合物であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の抗菌性ブレンド塊状物。
  3. 【請求項3】 前記水溶性高分子が、、ポリビニルアル
    コール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビ
    ニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、絹蛋白質、およびケ
    ラチン蛋白質から選ばれる少なくとも1種である請求項
    1または2記載の抗菌性ブレンド塊状物。
  4. 【請求項4】 前記乾燥固化物が、前記水溶性高分子と
    ポリリジン化合物との混合水溶液を、支持体表面上に広
    げ水分を蒸発させて得られるものであることを特徴とす
    る請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性ブレンド塊状
    物。
  5. 【請求項5】 前記水溶性高分子とポリリジン化合物と
    を含むブレンド塊状物の形状が、膜状、多孔質体状、ブ
    ロック状、粉末状、またはゲル状であることを特徴とす
    る請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性ブレンド塊状
    物。
  6. 【請求項6】 水溶性高分子と下記式(1)で表される
    ポリリジン化合物: 【化2】 (式中、RはCH−CH2−CH2−CH2−NH2を示
    し、nは10以上である。)との混合水溶液のpHを等
    電点以下にしたものから得られる、該水溶性高分子とポ
    リリジン化合物とを含むことを特徴とする抗菌性ブレン
    ド塊状物。
  7. 【請求項7】 水溶性高分子と下記式(1)で表される
    ポリリジン化合物: 【化3】 (式中、RはCH2−CH2−CH2−CH2−NH2を示
    し、nは10以上である。)との混合水溶液から水分を
    蒸発させて、乾燥固化せしめ、該水溶性高分子とポリリ
    ジン化合物とを含むブレンド塊状物を得ることを特徴と
    する抗菌性ブレンド塊状物の製造方法。
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