JPH1148356A - 染色プラスチックレンズ及びその製造方法 - Google Patents

染色プラスチックレンズ及びその製造方法

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JPH1148356A
JPH1148356A JP9211056A JP21105697A JPH1148356A JP H1148356 A JPH1148356 A JP H1148356A JP 9211056 A JP9211056 A JP 9211056A JP 21105697 A JP21105697 A JP 21105697A JP H1148356 A JPH1148356 A JP H1148356A
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JP
Japan
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dye
plastic lens
base material
lens
substrate
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JP9211056A
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English (en)
Inventor
Ichirou Ono
五千郎 小野
Koji Yamazaki
浩二 山崎
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一な色、性質等を有する染色レンズを容易
に得る。 【解決手段】 本願発明のプラスチックレンズの製造方
法は、プラスチックレンズ基材表面に真空蒸着法により
染料を付着させる真空蒸着工程と、前記染料が付着した
前記プラスチックレンズ基材を加熱し、前記プラスチッ
クレンズ基材に前記染料を浸透させる加熱浸透工程とを
有する

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、染色されたプラス
チックレンズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックレンズは成形が容易なこ
と、軽くて割れにくいこと、染色により容易に着色が可
能であることなどの特徴を持つことから、近年、光学レ
ンズ特に眼鏡用レンズとして広く用いられるようになっ
ている。従来のプラスチックレンズの染色方法は、分散
染料を界面活性剤と共に水中に分散させて染色液を調製
し、この染色液にプラスチックレンズを加熱下に浸漬す
るという、いわゆる浸漬染色方法(浸染法)が主として
用いられている。
【0003】また、上記浸漬染色方法に代わる方法とし
ては、例えば特公昭35−1384号公報には、有機顔
料を昇華させプラスチックレンズを着色する方法が、ま
た、特開昭56−153321号、特開昭56−159
376号、特開平1−277814号の各公報には昇華
性染料を昇華させてプラスチックレンズを染色する方法
が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のプラスチックレ
ンズの染色方法である、染色液中に浸漬する浸漬染色法
は、染色液中の分散染料濃度、染色助剤量、染色液の温
度、プラスチックレンズ基材の染色性のばらつきなどに
よって色調が大きく変わり易く、均一且つ安定した染色
プラスチックレンズを大量に得ることは大変困難でっ
た。
【0005】更に浸漬染色法では、長時間、同じ染色液
を使用していると染色液中の染料が劣化してしまい、色
相が大きく変わったり、染料が凝集して沈降してしまう
ために、染色液が使用できなくなっていた。このような
染色液は、廃棄することになる。廃液は染料を含むた
め、そのまま垂れ流しにすることはできず、廃液処理を
行わなければならなず、廃液処理に係わる経費が膨大に
なることに加え、環境問題を鑑みた場合、廃液が出てし
まう。このような方法は、改善しなければならない問題
点を有するものであった。更に、浸漬染色法で濃い濃度
の染色レンズの製造を試みた場合、染料液中への基材の
浸漬時間が長時間になってしまい、製造効率が悪化する
問題点もあった。
【0006】また、特開昭56−153321号、特開
昭56−159376号公報における固体染色性染料を
用いた気相染色方法では、レンズ面に染料が均一にふち
ゃくされなないという問題点や染色濃度の調整が難しい
といった問題がある。また、プラスチックレンズと染料
を直接接触させて加熱混合する方法では、染料がプラス
チックレンズ上に所々こびりつき、その部分のみ濃く染
色されてしまうといった欠点があった。これは、染料の
種類によっては生じない染料もあるが、ほとんどの染料
でむらが生じてしまう。従って、むらなく染色できる染
料の選定は莫大な種類の染料からの選択であるため、こ
の選択の作業を伴う染色方法は、大変困難なものであ
り、また使用できる染料も限定されてしまっていた。
【0007】本発明は上記したような従来技術の問題点
を解決し、均一且つ安定した染色プラスチックレンズを
得るための染色方法と、それにより製造されたプラスチ
ックレンズを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本願発明は第1に
「プラスチックレンズ基材表面に真空蒸着法により染料
を付着させる真空蒸着工程と、前記染料が付着した前記
プラスチックレンズ基材を加熱し、前記プラスチックレ
ンズ基材に前記染料を浸透させる加熱浸透工程を有する
ことを特徴とする染色プラスチックレンズの製造方法
(請求項1)」を提供する。第2に「プラスチックレン
ズ基材表面に有機化合物からなる被膜を形成する工程
と、該被膜の表面に真空蒸着法により染料を付着させる
真空蒸着工程と、前記染料が付着した前記被膜を加熱
し、前記皮膜に前記染料を浸透させる加熱浸透工程を有
することを特徴とする染色プラスチックレンズの製造方
法(請求項2)」を提供する。第3に「プラスチックレ
ンズ基材と、該基材上の真空蒸着により付着させた染料
とを備え、前記基材は前記染料が加熱浸透した領域を有
することを特徴とする染色プラスチックレンズ(請求項
3)」を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】本願発明の染色レンズの製造方法
は、真空蒸着法により染料をプラスチックレンズ基材表
面に付着させ、これを加熱することによってプラスチッ
クレンズ基材へ染料を浸透させるものである。本願発明
においてプラスチックレンズ基材となる高分子化合物と
して、エポキシ樹脂、アクリル酸エステルおよび/また
はメタクリル酸エステルの共重合体(この中には他のビ
ニルモノマとの共重合体も含む)、ポリアミド、ポリエ
ステル(いわゆるアルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹
脂を含む)、各種アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂
などを含む)、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリ
酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、スチレン樹脂、透
明塩化ビニル樹脂、繊維素系樹脂およびジエチレングリ
コールビスアリルカーボネート重合体(CR39)から
なるプラスチックレンズ等を使用することができる。
【0010】更に本願発明に用いるプラスチックレンズ
基材の材料は、以下に挙げる紫外線照射により重合が開
始される光ラジカル開始剤を含む紫外線硬化樹脂を使用
することも可能である。或いは紫外線に変えて紫外線、
電子線、可視光線、赤外線、エックス線、ガンマ線等の
電磁波を適宜使用することが可能であるが、紫外線、電
子線が好ましく使用される。このような光で硬化する樹
脂を用いれば、熱硬化性樹脂を用いた場合に比較して製
造時間をより短縮することができる。また光カチオン重
合系も適宜利用されている。
【0011】光ラジカル開始材としては、特に限定され
るものではなく公知のものが使用でき、代表的なものを
以下に示すと、ビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフ
ェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベン
ゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケター
ル、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブ
チルニトリル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェノ
ン、メチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ
ーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイ
ドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパー
オキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシ
イソプロピルカーボネート、ベンゾイルパーオキサイ
ド、ジ(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−
ブチルパーオキシベンゾエート、3,3’,4,4’−
テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェ
ノンなどが挙げられる。
【0012】光ラジカル種が効率よく硬化をおこすため
に、ラジカル重合性のオリゴマーが用いられ、また粘度
を調整する目的で重合性モノマーが適宜添加される。光
重合オリゴマーの種類は究めて多いが、不飽和ポリエス
テル/スチレン系、エポキシ/ルイス酸系、ポリエン/
チオール系およびアクリル酸エステルなどがある。ま
た、不飽和ポリエステル以外には、重合性の単位として
はアクリル基が多用されている。アクリル系のオリゴマ
ーとしては、その基本構造によりポリエステルアクリレ
ート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレー
ト、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、
アルキッドアクリレート、ポリオールアクリレート、に
大別されているが、希釈モノマーも含めたこれら素材の
選択が可能である。この中で重要なものは、ポリエステ
ル、エポキシ、ウレタン、ポリオール各アクリレートで
ある。
【0013】主な光重合性モノマーを挙げると、単官
能:ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリ
レート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒド
ロキシエチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオー
ルモノアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレー
ト等が挙げられる。また、2官能:1,3ブタンジオー
ルジアクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレー
ト、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレ
ングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコー
ルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレ
ート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、
ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール
ジアクリレートが挙げられる。更に3官能以上:トリメ
チロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリト
ールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ
アクリレートが挙げられる。
【0014】また紫外線硬化性と熱硬化性を兼ね備えた
性質の樹脂を用いてもよい。この場合、エポキシ樹脂、
アクリル酸エステル等を使用する場合の光重合反応系と
しては、紫外線照射によってラジカルを発生する光重合
ラジカル開始剤、ラジカル重合するモノマーあるいはオ
リゴマーやプレポリマーが必要な成分であり、この他に
増感剤、貯蔵安定剤,重合禁止剤や目的に応じたポリマ
ーや色材などが配合される。増感剤としては、アミン、
尿素、イオウ化合物、ニトリル、リン化合物、その他の
窒素化合物、塩素化合物が挙げられる。
【0015】貯蔵安定剤としては、第4級アンモニウム
クロライド、ジエチルヒドロキシアミン、環状アミド、
ニトリル化合物、置換尿素、ベンゾチア微粒子、ハイド
ロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、乳酸、
シュウ酸、安息香酸などの有機酸が挙げられる。本願発
明に用いられる染料は、三井東圧染料株式会社製のPS
−YELLOWGG,PS−YELLOW−S3G,P
S−YELLOW−SG,PS−YELLOW−SK,
PS−ORANGE−GG,PS−ORANGE−H
G,PS−RED−HGG,PS−RED−G,PS−
BRILLIANT−RED−FG,PS−RED−B
B,PS−RED−EB,PS−BRILLIANT−
PINK−FFR,PS−VIOLET−RR,PS−
VIOLET−RC,PS−BLUE−3R,PS−B
LUE−RR,PS−BLUE−BN,PS−GREE
N−B,PS−BLACK−ME1,PS−BLACK
−ME3,PS−RED−VC,日本化薬株式会社製の
KAYASET(KST)−FLAVINE−FN,K
ST−FLAVINE−FG,KST−YELLOW−
SFG,KST−YELLOW−2G,KST−YEL
LOW−GN,KST−ORANGE−G,KST−O
RANGE−SFR,KST−RED−G,KST−R
ED−B,KST−RED−130,KST−RED−
SF4G,KST−RED−SFB,KST−BLUE
−FR,KST−BLUE−N,KST−BLACK−
G,KST−BLUE−B,KST−YELLOW−A
G,KST−ORANGE−AN,KST−RED−A
2G,KST−RED−ABR,KST−VIOLET
−AR,KST−BLUE−A2R,KST−BLUE
−AD,KST−GREEN−AB,KST−BLAC
K−AN,KST−YELLOW−EG,KST−YE
LLOW−EL2G,KST−YELLOW−EL2
R,KST−YELLOW−EAR,KST−RED−
EOG,KST−RED−EBG,KST−RED−E
GRN,KST−BLUE−ACR,KST−FLAV
INE−FG,KST−YELLOW−AG,KST−
SCARLET−926,KST−BLUE−136,
KST−TUQUOISEBLUE−776,KST−
BLACK−922,KAYACT(KCT)−YEL
LOW−TDN,KCT−RED−TDFB,ダイスタ
−ジャパン製DIARESIN(D)−BRILLIA
NT−YELLOW6G,D−YELLOW−F,D−
YELLOW−L3G,D−YELLOW−H2G,D
−YELLOW−HG,D−YELLOW−HC,D−
YELLOW−HL,D−YELLOW−GR,D−O
RANGE−HS,D−ORANGE−G,D−RED
−Z,D−RED−S,D−RED−HS,D−RED
−A,D−RED−H,D−RED−K,D−RED,
H5B,D−VIOLET−D,D−BLUE−J,D
−BLUE−G,D−BLUE−N,D−BLUE−
K,D−BLUE−P,D−BLUE−LR,D−BL
UE−H3G,D−BLUE−4G,D−GREEN−
C,D−BLACK−B等が挙げられる。
【0016】本発明においては、プラスチック基材上に
樹脂被膜を形成し、樹脂膜を染色してもよい。この方法
を適応することにより、次のようなメリットが考えられ
る。現在プラスチックレンズ材料は、屈折率によって数
種類のモノマーを合成して使用している。従って、基材
の表面状態は各ポリマー毎に異なっており、染料の基材
内部への拡散速度が変わってくる。つまり、基材毎に異
なった染色性の影響を受けることになる。これに対し、
基材上に形成した樹脂膜上へ付着した染料の拡散は、基
材の種類の変化に係わる影響を受けにくく、染色性が同
様になり、基材を代えても基材の種類の影響を考慮する
ことなく染色レンズを製造することができる。ちなみ
に、樹脂被膜に染料を浸透させる方法においては、染料
が基材に浸透してもよい。
【0017】プラスチック基材上に形成する樹脂被膜の
材料は、特に熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、紫外線硬
化樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂を例示する
と、ポリアミド、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、メ
ラミン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース樹脂、
アルキド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹
脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等の樹脂が挙げら
れる。これらの樹脂は、一種類で使用可能であるが、数
種を混合したり、更に共重合体を使用することも可能で
ある。
【0018】本願発明において染料は、プラスチック基
材表面に濃度勾配(グラデーション状)を有するように
付着させてもよい。この場合、真空蒸着の際、蒸着源と
プラスチックレンズ基材との間に遮蔽板を設置すること
によって、蒸発した染料を部分的に遮蔽し、グラデーシ
ョン状に濃度勾配を有するように染料を付着させること
が可能である。この場合、真空蒸着装置のチャンバー内
の上部にレンズ基材を設置し、レンズ下部へ置かれた遮
蔽板(始めにレンズを約半分隠す)を徐々に動かすこと
によって、レンズ基材表面への染料の付着量を制御し、
染料がグラデーション状に付着するようにした。そして
このプラスチックレンズ基材を、熱処理することによっ
て、レンズ基材表面へ染料が濃度勾配を有して浸透し、
所望のグラデーションを有する染色プラスチックレンズ
を製造することが可能である。
【0019】また、真空蒸着法により染料をレンズ基材
の表面全面に均一に付着させた後、レンズ基材を加熱し
染料を浸透させる際、レンズ基材表面に熱勾配、つまり
レンズ基材表面の被加熱量の制御を行うことにより、グ
ラデーション状に染料を浸透させることも可能である。
つまり、加熱量が大きい領域ほど染料の含浸量が多くな
り、濃い色を呈させることが可能となる。
【0020】この他、加熱時間を制御することで染料の
浸透量を制御し、グラデーション状に染料を浸透させる
ことが可能である。つまり、被加熱時間の多い領域では
染料が相対的に多く浸透し、少ない領域では染料が相対
的に少なく浸透することにより、グラデーション状に染
料を浸透させることが可能となる。加熱源としては、赤
外線、電磁波、熱風、加熱水、加熱油などの熱媒体など
が用いられる。
【0021】本願発明における染色レンズ基材上にはハ
ードコート膜を形成することが可能である。染色レンズ
においては、基材表面近傍に染料が浸透している領域が
存在しているため、レンズ基材表面の耐擦傷性を特に向
上させる必要がある。ハードコート膜は、下記一般式
(I)で表わされる有機ケイ素化合物またはその加水分
解物が好ましい。
【0022】一般式(I): R1aR2bSi(OR34-(a+b) (但し、式中、R1 は、官能基又は不飽和2重結合を有
する炭素数4〜14の有機基であり、R2 は、炭素数1
〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基でり、R3
は炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基又
はアシル基あり、a及びbは、それぞれ0又は1であ
り、かつa+bは、1又は2である。) 一般式(I)
の化合物のうち、R1 が官能基としてエポキシ基を有す
るものついて言うと、例えば、次のものが使用される。
【0023】1)一般式(II) :
【0024】
【化1】
【0025】(但し、式中、R4 は、炭素数1〜4のア
ルキル基又はアルコキシアルキル基はアシル基、R5
炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭素化水素基
R6 は、水素またはメチル基、mは2又は3、pは1〜
6、qは0〜2である)で表わされる化合物。 (2)一般式(III):
【0026】
【化2】
【0027】(但し、R7 は、炭素数1〜4のアルキル
基又はアルコキシアルキル基又はアシル基、R8 は、炭
素数1〜4の炭化水素基又はハロゲン化炭素化水素基、
1は又は3、rは1〜4である。)で表わされる化合
物。上記一般式で表わされる化合物は、いずれもエポキ
シ基を有するので、エポキシシランとも呼ばれる。
【0028】エポキシシランの具体例としては、例え
ば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グ
リシドキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−
エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランな
どが挙げられる。
【0029】また、一般式(I)の化合物のうち、R1
が官能基としてエポキシ基を有すもの以外(a=0のも
のを含む)の例としては、例えば次のものが使用され
る。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシ
シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメト
キシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、3
−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラ
ン、フェニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピル
トリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエト
キシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメ
トキシシランなどの各種トリアルコキシシラン、トリア
シロキシシランあるいはトリアルコキシアルコキシシラ
ン化合物。
【0030】以上に挙げた一般式(I)の例示化合物
は、いずれもSi原子に結合するOR 3 基が3個ある
(a+b=1)3官能の例であるが、OR3 基が2個あ
る(b=2)2官能の相当する化合物ももちろん使用す
ることができる。2官能の相当する化合物の例として
は、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシ
シラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニ
ルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが
ある。
【0031】一般式(I)の化合物は、1種で使用して
もよいが、目的に応じて2種以上を混合して使用しても
よい。特に、2官能の化合物を使用するときには、3官
能の化合物と併用することが好ましい。併用した場合に
は、平均で2>a+b>1となる。更に、a+b=0の
4官能の相当する化合物を併用することも可能である。
4官能の相当する化合物の例としては、メチルシリケー
ト、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−
プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、t−ブチ
ルシリケート、sec−ブチルシリケートなどが挙げら
れる。
【0032】一般式(I)の化合物は、そのまま使用し
てもよいが、反応速度を増し、硬化温度を下げる目的で
加水分解物として使用することが望ましい。2〜4官能
の化合物の中で同一官能数の化合物を2種以上を併用す
る場合、或いは異なる官能数の化合物を2種以上を併用
する場合、加水分解後に併用してもよいし、加水分解前
に併用して共加水分解を行なってもよい。加水分解によ
りHOR3 なるアルコールが遊離され、一般式(I)の
化合物は、相当するシラノール:
【0033】
【化3】
【0034】になる。シラノールは、速やかに脱水縮合
が進み、オリゴマーになる。従って、この反応が十分に
進むように、加水分解後、1〜24時間放置(養生)さ
せてもよい。これら組成物を使用した場合、硬度向上、
干渉縞の防止、帯電防止効果の付与のために無機微粒子
を添加することも可能である。また、塗布時における流
れ性を向上し、硬化膜の平滑性を向上するために、例え
ば、水、低級アルコール、アセトン、エーテル、ケト
ン、エステルなど各種の溶媒を使用することが可能であ
る。
【0035】上記した無機微粒子としては、例えば、酸
化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタニウ
ム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸
化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウム、酸化
鉄、酸化スズと酸化タングステンの複合微粒子等の無機
微粒子の微粒子が使用可能である。また、これらの微粒
子は、単独で使用するだけでなく、必要に応じて2種以
上を混合または固溶体の状態で使用することも可能であ
る。本発明での混合物とは、異なった物質からなる複数
のものが、各々の物質の構造を保ったまま存在している
状態を言い、固溶体とは、異なった複数の物質どおしが
新たな化学結合を形成して存在するものを称している。
【0036】特に、酸化チタニウム、酸化アンチモン、
酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、
酸化スズを使用した場合には、組成物の屈折率を高くす
ることができ、基材に高屈折率のものを用いた場合、干
渉縞の発生を抑止することが可能となる。分散媒として
は、水、アルコールその他の有機溶媒が使用される。微
粒子には、有機アミンその他の安定剤を添加することが
好ましい。
【0037】微粒子の粒子径は、1〜200nm、特に
5〜100nmのものが好ましい。これより小さいと製
造が困難であり、微粒子自身の安定性も悪く、かつ効果
も小さい。これより大きいと、コーティング組成物の安
定性、塗膜の透明性、平滑性などが低下する。
【0038】このような微粒子は、市販品として入手可
能である。以上の成分の他に更に必要に応じて、例え
ば、塗布される側の基材(成形物)との接着性改良を目
的として、或いは、コーティング組成物の安定性を向上
させる目的で、各種添加剤を併用してもよい。添加剤の
例としては、pH調節剤、粘度調節剤、レベリング剤、
つや消し剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが
ある。
【0039】塗布時におけるフローを向上させ、塗膜の
平滑性を向上させて塗膜表面の摩擦係数を低下させる目
的で、各種の界面活性剤をコーティング組成物に併用す
ることも可能であり、特に、ジメチルシロキサンとアル
キレンオキシドとのブロックまたはグラフト共重合体、
さらにはフッ素系界面活性剤などが有効である。その塗
布方法は、刷毛塗り、浸漬、ロール塗り、スプレー塗
装、流し塗り等、通常の塗布法を用いることができる。
この際、塗布条件は、主としてビヒクルの性質によって
決定される。
【0040】反応を促進し、低温で硬化させるために、
下記のような硬化触媒を用いることができる。低温で硬
化させることにより、基材への熱の影響を軽減させるこ
とができる。硬化触媒は、ビヒクル成分を重合させて3
次元網目構造の塗膜を形成させる上で時間を短縮させる
ために、必要に応じ、使用されるもの(但し、コーティ
ング組成物の安定性を損なうものは好ましくない)であ
り、例えば、次のようなものが使用される。
【0041】(1)アミン類:モノエタノールアミン、
ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、エチレ
ンジアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミ
ン、モルホリン、トリエタノールアミン、ジアミノプロ
パン、アミノエチルエタノールアミン、ジシアンジアミ
ド、トリエチレンジアミン、2−エチル−4−メチルイ
ミダ微粒子。
【0042】(2)各種金属錯化合物: 一般式:AlXn Y3-n (但し、式中、XはOL(Lは低級アルキル基)、Yは
一般式M1 COCH2 OM2 (M1 、M2 は低級アルキ
ル基)及びM1 COCH2 COOM2る配位子から選ば
れる少くとも1つで、nは0又は1又は2である)で示
されるアルミニウムキレート化合物。
【0043】特に有用なキレート化合物としては、溶解
性、安定性、触媒硬化の観点から、アルミニウムアセチ
ルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテ
ートモノアセチルアセトネート、アルミニウム−ジ−n
−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニ
ウム−ジ−iso−プロポキシド−モノメチルアセトア
セテートなどである。
【0044】その外、クロムアセチルアセトネート、チ
タニルアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセト
ネート、鉄(III)アセチルアセトネート、マンガンアセ
チルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、E
DTA、さらには、Al、Fe、Zn、Zr、Tiの錯
化合物。 (3)金属アルコキシド:アルミニウムトリエトキシ
ド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アルミニウム
トリn−ブトキシド、テトラエトキシチタン、テトラn
−ブトキシチタン、テトラi−プロポキシチタン。
【0045】(4)有機金属塩:酢酸ナトリウム、ナフ
テン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オ
クチル酸スズ。 (5)過塩素酸塩:過塩素酸マグネシウム、過塩素酸ア
ンモニウム。 (6)有機酸又はその無水物:マロン酸、コハク酸、酒
石酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、O−フ
タル酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、オキザ
ロ酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン
酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、無水フタル
酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ナフタル酸。
【0046】(7)ルイス酸:塩化第二鉄、塩化アルミ
ニウム。 (8)ハロゲン化金属:塩化第一スズ、塩化第二スズ、
臭化スズ、塩化亜鉛、臭化亜鉛、四塩化チタン、臭化チ
タン、臭化タリウム、塩化ゲルマニウム、塩化ハフニウ
ム、塩化鉛、臭化鉛。
【0047】これらの触媒は、単独で使用することな
く,2種以上混合して使用してもよい。中でもアルミニ
ウムキレート化合物は好ましい触媒の1つである。ま
た、従来、前記のようなハードコートとなる有機ケイ素
化合物を主成分とする液状高分子(ハードコート液)を
用いてレンズ基材表面に塗布する湿式法で形成されてい
た。しかし湿式法の場合、レンズ基材の屈折率、その他
の膜性能の差異に合わせてハードコート液を用意しなけ
ればならず、製造ラインを複数用意する必要があり製造
コストが増大する問題点が生じることがある。更に、ハ
ードコート液の無駄が多く材料にかかるコストが増加し
てしまうこともある。このような湿式法に代わり、乾式
法であるCVD法によりハードコート膜を形成すること
も可能である。CVD法によりハードコート膜を形成す
れば、より低コストで耐擦傷性の優れた染色レンズがよ
り容易に製造可能となる。
【0048】CVD法により形成されたハードコート膜
は、Si及びOを有する材料で形成される。好ましくは
Si系および/またはTi系化合物の少なくとも一方を
含み、厚さ方向に向かって屈折率が変化している、CV
D法により形成された変性層をレンズ基材上に形成する
ことが好ましい。また、基材上に厚さ方向に向かって屈
折率が変化している変性層を設け、その上に変性層より
も相対的に厚い膜厚を有し、かつ、屈折率が一定であ
り、Si及びOを有するハードコート膜をCVD法によ
り形成することも可能である。変性層及びハードコート
膜の製造工程において用いられるSiを含む有機化合物
としては、テトラエトキシシラン、ジメトキシシラン、
メチルメトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチル
トリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチ
ルトリエトキシシラン等が好適に用いられる。
【0049】第一工程において用いられるTiを含む有
機化合物としては、テトラメトキシチタン、テトラエト
キシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n
−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テ
トライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチ
タン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラジエチルア
ミノチタン等が好適に用いられる。
【0050】これらのSiおよびTiを含む有機化合物
は、その一種類を単独で用いてもよく、また、2種類以
上を併用してもよい。前記ハードコート膜の膜厚は0.
4μmよりも厚く、5μmよりも薄いことが好ましい。
また変性層の膜厚は100nmよりも厚く、900nm
よりも薄いことをが好ましい。化学気相成長法は、原料
ガスに熱エネルギー及び電気エネルギーを与えることに
より放電させ、そのプラズマ雰囲気中の非熱平衡状態に
おいて反応を促進させ、基体上に薄膜を堆積させる方法
であり、通常使われているものには平行平板電極型、容
量結合電極型、または誘導結合型がある。特に本発明に
おいては、基体の主平面に平行に電界と磁界をかけるプ
ラズマ促進CVD法により形成することが好適である。
【0051】本願発明の変性層とは、基材表面上に形成
され、基材側から膜厚方向に徐々に屈折率が変化してい
る層であり、変性層内の物質の組成比が変化しているも
のである。またさらに、変性層を設けることにより、耐
衝撃性が向上する事も確認している。これは、従来のハ
ードコート膜の膜厚が3ミクロン以上であったためにハ
ードコート膜の内部応力が高くなっていたものを、本発
明のような変性層を基材とハードコート膜との間に設け
ることにより、ハードコート膜に残留する内部応力を低
くすることが可能である。従って、内部応力を低く出来
るために、耐温水性、耐熱性によって引き起こされるク
ラックなどが回避できる効果がある。また、本願発明に
おけるフォトクロミック物質は好ましくは前記したよう
に真空蒸着法、加熱により形成されるが湿式法、例えば
浸漬法やスピンコート法、スプレー塗装により塗布する
ことも可能である。
【0052】ハードコート膜上に真空蒸着法により形成
された無機酸化物からなる反射防止膜を形成すれば反射
防止効果が優れ、染色した色が反射光でかすむことがな
い、外観に優れた染色レンズを製造することができる。
反射防止膜に用いられる材料としては、酸化ケイ素、酸
化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等があ
る。
【0053】更に染料が浸透したレンズ基材とハードコ
ート膜の間に密着性や耐衝撃性を向上させるプライマー
層を形成すれば、さらに耐衝撃性の優れた染色プラスチ
ックレンズが製造できる。プライマー層の材料として
は、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール
樹脂などが好ましい。ウレタン溶液からなるプライマー
層の組成物は、活性水素含有化合物とポリイソシアネー
トとからなる。
【0054】ここで、活性水素含有化合物としては、エ
チレングリコール、1,2−プロピレングリコール,
1,3−ブタンジオール,1,6ヘキサンジオール,ネ
オペンチルグリコール,ジプロピレングリコー,ジエチ
レングリコールなどのアルキレングリコール類;ポリプ
ロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリテ
トラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコー
ル類;ポリ(ジエチレンアジペート),ポリ(テトラメ
チレンアジペート),ポリ(ヘキサメチレンアジペー
ト),ポリ(ネオペンチレンアジペート)などのポリア
ルキレンアジペート類;ポリ−ε−カプロラクトン;ポ
リ(1,4−ブタンジエン)グリコール、ポリ(1,2
−ブタンジエン)グリコールなどのポリブタジエングリ
コール類;ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)などの
ポリ(アルキレンカーボネート)類;シリコンポリオー
ル等が挙げられるが、その他の公知の活性水素含有化合
物の使用も可能である。
【0055】ポリイソシアネートの例としては,トリレ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5
−ナフタレンジイソシアネート、3,3’ジメチル−
4,4’ジフェニルジイソシアネート、芳香族系ジイソ
シアネート、;1,6ヘキサメチレンジイソシアネー
ト,イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロ
ヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソ
シアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート
が挙げられる。さらにポリイソシアネートとして、ブロ
ック型ポリイソシアネートを用いることもできる。
【0056】ここで、ウレタン溶液とは、活性水素含有
化合物とポリイソシアネートとの混合物でも、また重合
物でもよい。また、ウレタンを主成分とするエマルジョ
ンを用いてもよい。また、架橋されたポリビニルアセタ
ールからなるプライマー層を形成することも可能であ
る。ポリビニルアセタールからなるプライマー層は、主
成分であるポリビニルアセタールと、加水分解性オルガ
ノシラン化合物又はその加水分解縮合物、アルミニウム
又はチタニウムのアルコキシド化合物あるいはアルミニ
ウム又はチタニウムのアルコキシドジケトネート化合物
及び硬化触媒を溶解したプライマー組成物をプラスチッ
クレンズ表面に塗布し、加熱処理することにより形成可
能である。
【0057】本願発明に適用するポリビニルアセタール
からなるプライマー組成物の主成分であり、下記一般式
【0058】
【化4】
【0059】で示されるポリビニルアセタールは、アセ
タール部のアルキル基の炭素数が0から20のものが利
用でき、好ましくは0から10のものであり、特に好ま
しくはアルキル基の炭素数が3であるポリビニルブチラ
ールである。アセタール化度は10から90%のものが
使用でき、好ましくは20から80%のアセタール化度
のポリビニルアセタールである。
【0060】アセタール化度が10%未満では衝撃強度
の改善が不十分であり、またアセタール化度が90%以
上のポリビニルアセタールは合成が困難であるほか、合
成できたとしてもプラスチック基材との密着性の低下が
予測される。ポリビニルアセタールの重合度は好ましく
は5,000以下のものであるが、より好ましくは10
0から3,000である。重合度が高すぎては溶媒に溶
解しにくくなるほか、最適アセタール化度のポリビニル
アセタールを合成するのが困難である。逆に、重合度が
低すぎては衝撃強度の改善が不十分となる。
【0061】なお、前記一般式のポリビニルアセタール
中のアセチル基は本発明においては必須成分ではない
が、ポリビニルアセタールの原料であるポリビニルアル
コールがポリ酢酸ビニルの加水分解によって合成される
ため、少量残存するものである。 プライマー組成物中
のポリビニルアセタールの添加量としては1〜20重量
%、好ましくは1〜10重量%である。ポリビニルアセ
タールの添加量が多すぎるとプライマー組成物の粘度が
高くなりすぎプラスチック光学部品への塗布が困難にな
るほか、プライマー塗布層が厚くなりすぎ塗布面の均一
性が失われる。逆にポリビニルアセタールの添加量が少
なすぎるとプライマー塗布層が薄くなりすぎ衝撃強度の
改善が不十分となる。
【0062】架橋剤として、一般式(IV)
【0063】
【化5】
【0064】又は一般式(V)
【0065】
【化6】
【0066】のオルガノシラン化合物の有機金属アルコ
キシド化合物が用いられる。オルガノシラン化合物中の
加水分解基が加水分解してシラノール基を生成し、一般
式(VI)
【0067】
【化7】
【0068】で表される有機金属アルコキシド化合物と
反応する。そして、さらに触媒の作用と熱によりポリビ
ニルアセタール中の水酸基と脱水縮合反応がおこり分子
間又は分子内で架橋が行われる。架橋にあずかる分子
は、オルガノシラン化合物の加水分解物又はその縮合物
である。オルガノシラン化合物はそのまま添加されても
よいし、あらかじめ加水分解されたものが添加されても
よい。また、1種類のオルガノシラン化合物を単独で用
いてもよいし、2種類以上のオルガノシラン化合物を混
合して用いてもよい。
【0069】オルガノシラン化合物としては、加水分解
基がハロゲン原子であるハロシラン化合物類、加水分解
基がアルコキシ基であるアルコキシシラン化合物類、加
水分解基がカルボキシ基であるカルボキシシラン化合物
類、又は加水分解基がケトオキシム基であるケトオキシ
ムシラン化合物類などを用いることができるが、好まし
くはアルコキシシラン化合物類である。
【0070】一般式(IV)で示される加水分解性オルガ
ノシラン化合物の具体的な例としては、ジメチルジメト
キシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメ
トキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメ
チルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラ
ン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−
クロロプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリ
ロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリ
ロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプ
トプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプ
ロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメ
チルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエ
トキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチル
ビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメ
チルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチ
ルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチ
ルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、
メチルトリブトキシシラン、メチルトリス(2−メトキ
シエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチ
ルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、
エチルトリブトキシシラン、エチルトリス(2−メトキ
シエトキシ)シラン、プロピルトリメトキシシラン、プ
ロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラ
ン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシ
シラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメト
キシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス
(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキ
シシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−クロロプ
ロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエ
トキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリ
メトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルト
リエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメ
トキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキ
シシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ
−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプト
プロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピル
トリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラ
ン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−β−アミノ
エチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N
−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキ
シシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)トリメトキ
シシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)
トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘ
キシルエチル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エ
ポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、テ
トラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプ
ロポキシシラン、テトラブトキシシラン、などがあげら
れる。
【0071】また、一般式(V)で示される加水分解性
オルガノシラン化合物の具体的な例としては、1,1−
ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1−ビス(ト
リエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキ
シシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリ
ル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロ
パン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、
2,2−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、2,2
−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、などがあげら
れる。
【0072】プライマー組成物中のオルガノシラン化合
物の添加量としては0.01〜10重量%、好ましくは
0.1〜5重量%である。有機金属アルコキシド化合物
としては、アルミニウムもしくはチタニウムのアルコキ
シド又はアルコキシドジケトネート化合物が用いられ
る。これらは1種類の化合物を単独で用いてもよいし、
2種類以上の化合物を混入して用いてもよい。有機金属
アルコキシド化合物はオルガノシラン化合物又はその加
水分解縮合物と容易に反応し、その生成物はポリビニル
アセタール中の水酸基と触媒及び熱の作用により反応す
る。有機金属アルコキシド化合物には、加水分解で生じ
たオルガノシラン化合物中のシラノール基とポリビニル
アセタール中の水酸基との脱水縮合反応を促進する触媒
としての作用と、オルガノシラン化合物とともに加水分
解縮合する架橋剤としての作用があるものと考えられ
る。
【0073】有機金属アルコキシド化合物の具体的な例
としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウム
トリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アル
ミニウムトリブトキシド、チタニウムテトラメトキシ
ド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラプ
ロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、アルミニウ
ムジプロポキシドアセチルアセトネート、アルミニウム
ジプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム
ジブトキシドアセチルアセトネート、アルミニウムジブ
トキシドエチルアセトアセテート、チタニウムジメトキ
シドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジエト
キシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジプ
ロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウム
ジブトキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウ
ムジプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チ
タニウムジブトキシドビス(エチルアセトアセテート)
などがあげられる。この中でも特にチタニウムアルコキ
シドが好ましい。
【0074】プライマー組成物中の有機金属アルコキシ
ド化合物の添加量としては、0.01〜10重量%、好
ましく0.1〜3重量%であるが、オルガノシラン化合
物の50モル%以下が好ましい。有機金属アルコキシド
化合物の添加量がオルガノシラン化合物の添加量の50
モル%を越えると耐衝撃性が低下する。
【0075】硬化触媒としては、オルガノシラン化合物
と有機金属アルコキシド化合物の加水分解縮合物とポリ
ビニルアセタール中の水酸基との脱水縮合、及びシラノ
ール基間の脱水縮合反応を促進するものであれば特に制
限はない。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジ
ブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテートな
どの有機スズ化合物、プロピルアミン、ブチルアミン、
ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリエタノールア
ミン、テトラメチルグアニジン、メチルイミダ微粒子、
ジシアンジアミドなどの有機アミン類、アルミニウムア
セチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどの有
機金属錯体を用いることができる。この中で特に好まし
いのは有機スズ化合物である。これらは単独で用いても
よいし、2種類以上の触媒を混合して用いてもよい。
【0076】プライマー組成物中の硬化触媒の添加量と
しては、0.002〜1重量%、好ましくは0.005
〜1重量%である。プライマー組成物中の有機溶媒とし
ては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール
類、ケトン類、エステル類、エーテル類その他公知の溶
媒で、ポリビニルアセタールをよく溶解し、かつ無機酸
化物微粒子をよく分散するものが使用できる。特に好ま
しくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノ
ール、ヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソ
ルブであるが、これらは単独で用いてもよいし、2種類
以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0077】プライマー組成物中の水はオルガノシラン
化合物の加水分解に必要な成分として0.1〜20重量
%添加される。水の添加量が多すぎるとプライマー塗布
面の平滑性が失われ、逆に水の添加量が少なすぎるとプ
ライマー溶液の使用可能時間が短くなる。本発明におけ
るプライマー組成物はさらに、塗布性の改善を目的とし
た各種レベリング剤あるいは耐候性の向上を目的とした
紫外線吸収剤や酸化防止剤、さらに染料や顔料、フォト
クロミック染料やフォトクロミック顔料その他、膜性能
を高めたり機能を付加するための公知の添加剤を併用す
ることができる。 本発明におけるプライマー組成物の
プラスチック光学部品上への塗布方法は、スピンコート
法、ディッピング法など公知の方法であれば特に制限は
ない。また、プラスチック光学部品の表面は必要に応じ
てアルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処
理を行っておくことが好ましい。
【0078】プライマー層の膜厚は、熱硬化後の段階で
0.1〜5μm、好ましくは0.2〜3μmである。プ
ライマー層の膜厚が0.1μmより薄いと耐衝撃性の改
善が十分でなく、また5μmより厚いと耐衝撃性の点で
は問題がないが、耐熱性と面精度が低下する。また、プ
ライマー溶液には前記ハードコート膜に添加したような
無機微粒子を含んでもよい。これら無機微粒子として
は、水又は有機溶媒に分散した市販されている微粒子を
そのまま用いることができる。
【0079】無機微粒子又はこれらの無機酸化物の複合
体の平均粒子径は1〜300nmであり、好ましくは1
〜50nmである。平均粒子径が300nmを越えると
光の散乱によるレンズの曇りが生ずる。プライマー組成
物中の無機酸化物微粒子の添加量は固形分濃度として
0.1〜30重量%であるが、プライマー硬化膜の屈折
率がプラスチックレンズの屈折率に一致するかもしくは
極めて近くなるよう、無機酸化物微粒子の種類、添加量
が調整される。
【0080】屈折率が1.60以上の高屈折率プラスチ
ックレンズ基材の場合には、ポリビニルアセタール1重
量部にたいして、高屈折率であるTiO2、ZrO2、F
23、Sb25、SnO2、CeO2、WO3などの無
機酸化物微粒子又はそ複合体を1〜5重量部添加するの
が好ましい。この プライマー層の膜厚は、0.01〜
30μmであるのが好ましい。特に好ましくは、1〜2
0μmである。
【0081】プライマー層となる樹脂の塗布方法として
は、スピンナー法,ディップ法,スプレー法等の公知の
方法の中から適宜選択され、真空蒸着法等の乾式法でも
形成可能である。反射防止膜上には水やけ防止層を形成
することも可能である。材料としては、有機ポリシロキ
サン系重合物またはパーフルオロアルキル基材含有化合
物を重合してなる重合物からなる有機物含有硬化物が好
ましく用いられ、フッ素原子を有する1から3官能(官
能基がアミノ基)のシラザン化合物、シロキサザン化合
物、フッ素基を有するアルコキシ化合物等が使用可能で
ある。形成方法としては、浸漬法や乾式法である真空蒸
着法やCVD法、スパッタリング法等で形成可能であ
る。
【0082】また本発明では、例えば水晶式膜厚計で蒸
着膜厚を制御しながら染料を蒸着することが可能であ
る。また、光学式膜厚計で着色濃度を制御することも可
能である。これらの膜厚計を用いて基材に染料を蒸着す
ることにより、容易に濃度の制御を行うことができ、再
現性よく着色することができる。
【0083】
【実施例1】以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例においては、基材としてジエチレングリコール
ビスアリルカーボネート(CR39)を重合してなるプ
ラスチックレンズ基材を用い、その凹表面に真空蒸着に
て染料であるKAYASET−RED−130を付着さ
せる。レンズの透過率は、光学式モニター(シンクロン
製:OPM−1)により50%に制御した。
【0084】真空度が5×10-5Torrになるまでポ
ンプで引いた後、蒸発源である染料を加熱して染料をレ
ンズ基材表面へ付着させた。蒸着されたレンズは、ムラ
なく均一に着色された。このレンズを、熱風オーブン中
で、120℃で1時間加熱を行い、表面に付着した染料
をプラスチックレンズ基材内部に拡散させた。耐擦傷性
の付与および反射防止のため、有機シリコン系ハードコ
ートをディッピングによりコーティングを施し、110
℃で4時間加熱を行い硬化させた。その上に、Si
2、Al23、TiO2からなる無機多層薄膜を真空蒸
着によって成膜した。
【0085】これにより耐擦傷性及び反射防止効果の優
れた染色レンズが容易に製造できた。
【0086】
【実施例2】実施例1と同じように、基材表面に染料が
付着した塗膜3を有するプラスチックレンズ基材を用
い、図1に示す様にこのレンズ基材4を凹面を上にし
て、レンズ保持具5に設置し、レンズ基材4表面から1
0cm上部に遠赤外線光源1を設置し、これにより約1
0分間基材の加熱を行った。本実施例においては、蒸着
源とレンズ基材との間に蒸着物質の基材表面への付着を
遮蔽する遮蔽板2を有する装置を用いる。蒸着の際に、
まず遮蔽板2でレンズ基材4表面の約半分が隠れるよう
にセットし、徐々に遮蔽板2が移動し、付着領域が変化
していくようにする。遮蔽板2は、モーター(不図示)
で移動させた。この移動速度、領域等のプログラムは予
め、所望のパターンに従って作成した。これにより、蒸
着物質の付着が遮蔽されていない領域は、染料の付着量
が多くなり、また遮蔽時間が長かった領域は、付着量が
少なくなることになり、この付着量の差違が色の濃度の
差違になる。
【0087】このように染料が付着したレンズ基材を実
施例1と同じ条件で加熱し、染料を基材内部に拡散させ
た。耐擦傷性および反射防止のため、有機シリコン系ハ
ードコートをディッピングによりコーティングを施し、
110℃で4時間加熱を行い硬化させた。その上に、S
iO2、Al23、TiO2からなる無機多層薄膜を真空
蒸着によって成形した。
【0088】このようにして反射防止効果及び耐擦傷性
が向上した、グラデーション状の染色レンズを得ること
ができた。
【0089】
【実施例3】以下、本発明の実施例について説明する。
本実験例においては、基材として紫外線硬化型アクリル
系樹脂を用い、その凹表面に真空蒸着にて染料であるK
AYASET−RED−130を付着させた。紫外線硬
化型アクリル系樹脂をガラス母型に注入し、メタルハラ
イドランプ120W−2分間、雰囲気温度100℃の紫
外線硬化装置に入れて硬化させた。ランプは上下から照
射し、ワークからの距離は25cmとした。蒸着時には
レンズ基材は蒸発源から10cm上部に設置した。染料
が蒸着されたレンズ基材は、ムラなく均一に付着してい
た。このレンズを、熱風オーブン中で、120℃で1時
間加熱を行い、表面に付着した染料をプラスチックレン
ズ基材内部に拡散させた。
【0090】耐擦傷性および反射防止のため、有機シリ
コン系ハードコートをディッピングによりコーティング
を施し、110℃で4時間加熱を行い硬化させた。その
上に、SiO2、Al23、TiO2からなる無機多層薄
膜を真空蒸着によって成膜した。このように紫外線硬化
型アクリル系樹脂からなる基材を有する染色レンズを容
易に製造することができた。
【0091】
【実施例4】本実施例においては、基材として実施例1
と同様にプラスチックレンズ基材を用いた。使用した染
料は、KAYASET−RED−130,KAYASE
T−BLUE−FR,KAYASET−YELLOW−
AGである。これらの染料をブラウンに着色するように
予め求められた配合比に従って充分に混ぜ合わせ、その
中から約0.01gを秤量し蒸発源に入れる。レンズは
蒸発源から10cm上部に設置した。また、透過率は、
光学式モニター(シンクロン製:OPM−1)により、
50%に制御した。真空度が5×10-5Torrになる
までポンプで引いた後、蒸発源を加熱して染料をレンズ
基材表面へ付着させた。蒸着されたレンズは、ブラウン
に着色し、均一でムラなく付着した。このレンズを、熱
風オーブン中で、120℃1時間加熱を行い、表面に付
着した染料をプラスチックレンズ基材内部に拡散させ
た。
【0092】本実施例では、耐擦傷性の付与のために染
料が拡散された上記レンズ基材上に、CVD法により形
成されるハードコート膜を設ける。ハードコート膜は、
バルザース(Balzers)社製PECVD装置を用
いて形成した。本蒸着装置は、電子ビームによって蒸着
源を加熱する構成である。
【0093】まず基材表面に基材とハードコート膜との
屈折率差を調節する変性層を形成する工程について説明
する。この変性層は、屈折率が徐々に変化している層で
ある。 変性層となる物質としてメチルトリエトキシシ
ランを用いた。真空室に接続されたメチルトリエトキシ
シランの入った容器を加熱することにより、メチルトリ
エトキシシランを気化させ、メチルトリエトキシシラン
ガスを流量100SCCMで真空室内に流す。真空室の
圧力が0.7Paになったら、真空室外の電磁石コイル
に5Aの電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、
カソードに高周波出力2KWを3分間印加する。これに
より,電極間にプラズマが発生する。その後、カソード
の高周波出力を段階的に40W/minの割合で徐々に
上げていき、12分間で2.5KWに達するように制御
する。この12分間で、屈折率が段階的に変化した変性
層が形成される。変性層の膜厚は、200nmとした。
【0094】次に、変性層上にハードコート膜を形成す
る工程について説明する。変性層を形成する工程に連続
させて、酸素ガスを真空室に50SCCM流し、真空室
圧力を0.5Paにして、メチルトリエトキシシランガ
スの流量180SCCM、高周波出力2.5KW、電磁
石コイル5A、20分間で第一のハードコート膜を形成
する。その後、酸素ガスを真空室に100SCCM流
し、真空室圧力を0.8Paにして、メチルトリエトキ
シシランガスの流量180SCCM、高周波出力3K
W、電磁石コイル5Aのままで、さらに20分間で第二
のハードコート膜を形成する。最後に、酸素ガスを真空
室に200SCCM流し、真空室圧力を1.0Paにし
て、メチルトリエトキシシランガスの流量180SCC
M、高周波出力3KW、電磁石コイル5Aのままで、さ
らに第三のハードコート膜を形成する。ハードコート膜
の膜厚は、2μmとした。
【0095】その上に、SiO2、Al23、TiO2
らなる無機多層薄膜を真空蒸着によって成形した。これ
によりCVD法により形成されたハードコート膜を有し耐
擦傷性に優れ、かつ反射防止効果も優れた染色レンズが
乾式法のみで容易に製造することができた。
【0096】
【実施例5】本実験例においては、基材として実施例1
と同様のプラスチックレンズ基材を用いた。使用した染
料は、KAYASET−RED−130,KAYASE
T−BLUE−FR,KAYASET−YELLOW−
AGである。これらの染料をブラウンに着色するように
予め求められた配合比に従って充分に混ぜ合わせ、その
中から約0.01gを秤量し蒸発源に入れる。レンズは
蒸発源から10cm上部にセットした。また、光学式モ
ニター(・シンクロン製:OPM−1)により、透過率
を50%に制御した。
【0097】真空度が5×10-5Torrになるまでポ
ンプで引いた後、蒸発源を加熱して染料をレンズ表面へ
付着させた。蒸着されたレンズは、ブラウンに着色し
た。このレンズを、熱風オーブン中で、120℃1時間
加熱を行い、表面に付着した染料をプラスチックレンズ
内部に拡散させた。染料が拡散されたレンズ基材表面に
耐衝撃性を付与するコーティング膜として、以下の様な
プライマー層を形成した。
【0098】(1ー1)プライマー組成物の調製 ブロック型のポリイソシアネート「コロネート252
9」(日本ポリウレタン工業社製)25重量部、ポリエ
ステルポリオール18重量部、エチルセロソルブ100
重量部を混合して、これに市販の酸化スズと酸化タング
ステンの複合微粒子(メタノール分散微粒子、平均粒子
径10〜15mμ、酸化スズと酸化タングステンの比率
100重量部/40重量部、固形分30%)を140重
量部(固形分ではない)、シリコン系界面活性剤を0.
15重量部添加し、充分に撹拌混合することにより、溶
液状のコーティング組成物を得た。
【0099】(1ー2)プライマー組成物の塗布および
硬化 本実施例では、染色されたレンズ基材とプライマー層の
密着性強化を目的としてプラズマ処理を施した。条件は
酸素ガス圧力約0.2Torr、RF出力200W、処
理時間30秒間とした。その後、前記高屈折率プラスチ
ックレンズの凹面上に(1ー1)にて調製したプライマ
ー組成物を浸漬法(引き上げ速度180mm/min)
で塗布した。プライマー層厚は、約2μmであった。
塗布後、プライマー組成物が塗布された高屈折率プラス
チックレンズを加熱炉に入れ、130℃で60分間加熱
処理し、プライマー組成物を硬化させた。硬化後のプラ
イマー層の屈折率は約1.60であった。
【0100】さらに、耐擦傷性および反射防止のため、
有機シリコン系ハードコートをディッピングによりコー
ティングを施し、110℃で4時間加熱を行い硬化させ
た。その上に、SiO2、Al23、TiO2からなる無
機多層薄膜を真空蒸着によって成膜した。これにより、
耐衝撃性、耐擦傷性、反射防止効果が優れた染色レンズ
を容易に製造することができた。
【0101】
【実施例6】本実施例では実施例5と同様にプライマー
層を形成するが、組成物として実施例5の組成物とは異
なる物質を用いてプライマー層を形成した。プラスチッ
クレンズ基材への染料の付着、浸透は実施例5と同様の
方法で行った。 (2−1) プライマー組成物の調製 回転子を備えた反応容器中にメチルトリメトキシシラン
2.2重量部とメタノール19.8重量部を仕込み、
0.001N塩酸0.9重量部を加え、1時間撹拌し加
水分解を行なった。
【0102】上記加水分解物に、チタニウムテトラn−
ブトキシド2.2重量部をn−プロパノール19.8重
量部に溶解した溶液を加え30分撹拌し、オルガノアル
コキシシラン/オルガノチタネート加水分解縮合物を得
た。得られた加水分解縮合物の溶液に、日産化学(株)
製SnO2/WO3複合微子分散メタノール微粒子(HI
S−30M、平均粒子径25nm、固形分濃度30%)
133.3重量部、硬化触媒としてジブチルスズジラウ
レート2.0重量部、レベリング剤として住友スリーエ
ム(株)製フッ素系界面活性剤フロラードFC430
1.3重量部を順次加える。
【0103】更に、積水化学(株)製ポリビニルブチラ
ール樹脂エスレックBM−2(平均重合度800、ブチ
ラール化度68%)40重量部をメタノール360重量
部に溶解した溶液と、さらにメタノール70.2重量
部、n−プロパノール328.3重量部、純水20重量
部を加え1時間撹拌する。その後、3μmのメンブラン
フィルターで濾過しプライマー組成物を調製した。
【0104】イ)無機酸化物微粒子分散微粒子 前記樹脂中には以下に示される無機酸化物微粒子を添加
することができる。 HIS−30M 日産化学(株)製SnO2/WO3複合微粒子メタノー分 散微粒子、平均粒子径25nm、固形分濃度30% HIS−30MN 日産化学(株)製SnO2/WO3複合微粒子メタノー分 散微粒子、平均粒子径30nm、固形分濃度30% AMT−130S 日産化学(株)製Sb25微粒子メタノール分散微粒子 平均粒子径15〜20nm、固形分濃度30% ロ)ポリビニルブチラール樹脂 エスレックBM−1 積水化学(株)製、平均重合度600、ブチラール化 度65% エスレックBM−2 積水化学(株)製、平均重合度800、ブチラール化 度68% エスレックBM−5 積水化学(株)製、平均重合度850、ブチラール化 度65% エスレックBH−S 積水化学(株)製、平均重合度1,000、ブチラー ル化度70% ハ)界面活性剤 フロラードFC430 住友スリーエム(株)製フッ素系界面活性剤 SH30PA 東レダウコーニング(株)製シリコン系界面活性剤 L7001 日本ユニカー(株)製シリコン系界面活性剤 回転子を備えた反応容器中に、γ−グリシドキシプロピ
ルトリメトキシシラン180重量部を仕込み、マグネチ
ックスターラーを用いて激しく撹拌しながら,0.01
規定塩酸水溶液40重量部を一度に添加し、1時間加水
分解を続け、部分的に縮合した加水分解物を得た。
【0105】上記の加水分解物に、日産化学(株)製S
nO2/WO3複合微粒子分散メタール微粒子(HIS−
30M)を630重量部と、硬化触媒としてエチレンジ
アミン四酢酸アルミニウム4重量部と、レベリング剤と
して東レダウコーニング(株)製シリコン系界面活性剤
SH30PAを0.45重量部添加し、十分に撹拌混合
した後、3μmのメンブランフィルターで濾過しハード
コート液を調製した。
【0106】(2−1)プライマー組成物の塗布及び硬
化 度数が−4.00ジオプタで、中心厚が1.0mm、屈
折率が1.66の熱硬化性ウレタン樹脂製眼鏡用プラス
チックレンズを、前処理として60℃の10%NaOH
水溶液に5分間浸し、温水で洗浄後乾燥した。このプラ
スチックレンズの両面にディッピング法(引き上げ速度
5mm/秒)にてプライマー組成物を塗布し、90℃で
30分間加熱処理してプライマー組成物を硬化させプラ
イマー層を形成した。
【0107】プライマー層及びハードコート層を有する
プラスチックレンズの両面に、SiO2/ZrO2系の5
層反射防止膜を真空蒸着法により形成させた。
【0108】
【発明の効果】本発明では、染料を蒸着により基材上に
付着させるため、染色レンズ製造における濃度管理が容
易となる。従って、再現性よく均一な濃度を有する染色
プラスチックレンズを得ることができる。また着色ムラ
がなく均一且つ安定した染色ができる。また、染料の蒸
着は、短時間でできるため、濃い濃度の染色プラスチッ
クレンズを短時間で容易に製造することができる。
【0109】更に本発明の染色レンズは、レンズ基材表
面またはレンズ基材上に形成された被膜を加熱処理し、
染料を基材内部または被膜内部に熱拡散させるので、ム
ラがなく色調が安定している。また、真空蒸着法で染料
の付着を行うので、浸漬染色法のような廃液処理もな
く、廃液処理にかかる手間、装置がなくてよい。従っ
て、染色プラスチックレンズの製造に係わるコストダウ
ンが図れる。また廃液が出ないので、環境に悪影響を及
ぼすことなく染色レンズを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本実施例に係わるグラデーションを有する
染色レンズの製造装置の概略図である。
【主要部分の符号の説明】
1・・・・・光源 2・・・・・遮蔽板 3・・・・・染料からなる塗膜 4・・・・・基材 5・・・・・レンズ保持具

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラスチックレンズ基材表面に真空蒸着法
    により染料を付着させる真空蒸着工程と、前記染料が付
    着した前記プラスチックレンズ基材を加熱し、前記プラ
    スチックレンズ基材に前記染料を浸透させる加熱浸透工
    程を有することを特徴とする染色プラスチックレンズの
    製造方法。
  2. 【請求項2】プラスチックレンズ基材表面に有機化合物
    からなる被膜を形成する工程と、該被膜の表面に真空蒸
    着法により染料を付着させる真空蒸着工程と、前記染料
    が付着した前記被膜を加熱し、前記皮膜に前記染料を浸
    透させる加熱浸透工程を有することを特徴とする染色プ
    ラスチックレンズの製造方法。
  3. 【請求項3】プラスチックレンズ基材と、該基材上の真
    空蒸着により付着させた染料とを備え、前記基材は前記
    染料が加熱浸透した領域を有することを特徴とする染色
    プラスチックレンズ。
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