JPH1144398A - 低温液化ガスタンクの液受入れ構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 液受入れ時におけるタンク圧力の低下を抑制
し得るようにした低温液化ガスタンクの液受入れ構造を
提供する。 【解決手段】 リード管１０のロート部１３直下から下
端に亘る全ての範囲を、鉛直方向に対し斜めに傾斜する
傾斜部１６として形成して液受入れ構造１７を構成し、
受入れ管９の吐出口１２から流下した受入れ液５’をリ
ード管１０の傾斜部１６に接触させ、リード管１０の内
周壁１０ａをつたわせて液膜状に流下させると共に、リ
ード管１０のロート部１３直下から下端に亘り斜めに時
間をかけて流下させ、受入れ液５’の落下速度を大幅に
低下して貯蔵空間６上側域の気相部分のガス５ｘが連続
的に液化されてしまう現象を抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ＬＮＧ等の低温液
化ガスを貯蔵する低温液化ガスタンクの液受入れ構造に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図４はＬＮＧ等の低温液化ガスを貯蔵す
る低温液化ガスタンクの一例を示すもので、上部にドー
ム状のタンク屋根１を備えたタンク本体２が地中に埋設
されており、該タンク本体２は、円筒状の胴部３と該胴
部３の下面を閉塞する底部４とにより構成され且つその
内部にＬＮＧ等の低温液化ガスを貯蔵液５として収容す
る為の貯蔵空間６が形成しており、該貯蔵空間６を取り
囲むタンク本体２の内側面には、貯蔵液５を液密に保持
する為のステンレス製の薄板から成るメンブレン７が内
張りされている。

【０００３】このようにタンク本体２を地中に埋設した
地下式の低温液化ガスタンク８においては、ＬＮＧ船等
の低温液化ガス運搬船からの受入れ液５’（低温液化ガ
ス）を、受入れ管９とリード管１０とから成る液受入れ
構造１１によりタンク屋根１を貫通して貯蔵空間６底部
へと搬入するようにしている。

【０００４】図５は前記液受入れ構造１１の詳細を示す
もので、前記受入れ管９は、タンク屋根１を貫通して貯
蔵空間６上側域に吐出口１２を開口しており、前記リー
ド管１０は、前記受入れ管９の吐出口１２を包囲するロ
ート部１３を上端に備え且つ下端を前記貯蔵空間６底部
まで延ばした構造となっており、前記ロート部１３の上
側には、貯蔵空間６上側域に解放された複数のスリット
１４が開口されている。

【０００５】即ち、例えば仮にタンク屋根１を貫通した
受入れ管９を、そのまま貯蔵空間６底部まで延ばしてし
まうと、管内で受入れ液５’の落下速度が加速されるこ
とにより圧力が低下して管内で沸騰現象が起こり、ガス
５ｘと液の二相流状態となって振動が発生してしまう
為、リード管１０上端のロート部１３で受入れ液５’中
からガス５ｘを解放してスリット１４から抜き出せるよ
うにしてある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た如き従来の液受入れ構造１１では、受入れ管９とリー
ド管１０とが同心状に配置され且つ受入れ管９の方がリ
ード管１０より小径に構成されていた為、受入れ管９の
吐出口１２から落下した受入れ液５’がリード管１０内
の軸心部を液柱となって周囲のガス５ｘを随伴しながら
落下することになり、特に貯蔵液５の液面レベルが低下
してロート部１３から貯蔵液５の液面レベルまでの落下
距離が大きくなっているような状態で受入れ液５’の搬
入作業を行うと、貯蔵空間６上側域の気相部分のガス５
ｘが、前記ロート部１３のスリット１４からリード管１
０内に巻き込まれる現象が発生してしまい、斯かるガス
巻き込み現象によりリード管１０内に取り込まれたガス
５ｘが、貯蔵液５の液面レベル下において液面衝突時の
圧力、液圧（液深）の作用、貯蔵液５との熱交換等を要
因として再び液化し、受入れ液５’の搬入作業を進める
うちに貯蔵空間６上側域の気相部分のガス５ｘが連続的
に液化されてタンク圧力が低下するという不具合があっ
た。

【０００７】即ち、一般的に、この種の低温液化ガスタ
ンク８は、タンク内が負圧になることを想定した設計と
なっていない為、液受入れ時においてタンク圧力が低下
してタンク内が負圧になるような事態になってしまう
と、タンク屋根１に凹みが生じたり、メンブレン７がタ
ンク本体２の胴部３から剥離して内側に膨出してしまっ
たりする虞れがあり、このような破損の発生を未然に回
避する為には、受入れ液５’の搬入流量を減らさざるを
得ないが、このように受入れ液５’の搬入流量を減らし
た場合には、受入れ液５’を搬入する作業に多大な時間
がかかり、ＬＮＧ船等の低温液化ガス運搬船の繋留時間
も長くかかるといった新たな問題を招いてしまうことに
なる。

【０００８】特に、近年においては、低温液化ガスタン
ク８の大容量化に伴い貯蔵空間６の深さが増してきてお
り、貯蔵液５の液面レベルが低下している時のロート部
１３から貯蔵液５の液面レベルまでの落下距離が益々大
きくなる傾向にあるので、液受入れ時におけるタンク圧
力の低下は問題となりつつあり、具体的な解決手段の提
供が求められている。

【０００９】本発明は上述の実情に鑑みてなしたもの
で、液受入れ時におけるタンク圧力の低下を抑制し得る
ようにした低温液化ガスタンクの液受入れ構造を提供す
ることを目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、タンク屋根を
貫通して貯蔵空間上側域に吐出口を開口した受入れ管
と、前記貯蔵空間上側域に解放されたスリットを有して
前記受入れ管の吐出口を包囲したロート部を上端に備え
且つ下端を前記貯蔵空間底部まで延ばしたリード管とに
より構成される低温液化ガスタンクの液受入れ構造であ
って、前記リード管の少くともロート部直下に、鉛直方
向に対し斜めに傾斜する傾斜部を形成したことを特徴と
するものである。

【００１１】このようにすれば、受入れ管の吐出口から
流下した受入れ液がリード管の傾斜部に接触し、リード
管の内周壁をつたって液膜状に流下する流れが形成され
るので、従来の如くリード管の軸心部を液柱となって自
由落下する場合と比較して落下速度が大幅に低下され、
これによって、受入れ液の流れに随伴されるガスが少な
くなり、貯蔵空間上側域の気相部分からロート部のスリ
ットへのガスの巻き込み量が低減される。

【００１２】また、受入れ液の落下速度が低下すること
により、受入れ液が貯蔵液の液面レベルで激しく液面に
落下衝突するような事態が回避されるので、貯蔵液の液
面レベル下までガスが随伴されて液化される現象も抑制
されることになる。

【００１３】尚、本発明においては、リード管のロート
部直下から下端に亘る全ての範囲を傾斜部として形成す
ることが好ましく、このようにすれば、リード管の内周
壁をつたって液膜状に流下する流れとなった受入れ液
が、リード管のロート部直下から下端に亘り斜めに時間
をかけて流下されることになり、前記受入れ液の落下速
度が更に低下される。

【００１４】また、リード管の傾斜部については、タン
ク本体の胴部内周壁に沿うように形成することが好まし
く、このようにすれば、前記タンク本体の胴部内周壁か
ら必要最小限の支持構造により安定してリード管を支持
することが可能となる。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を
参照しつつ説明する。

【００１６】図１〜図３は本発明を実施する形態の一例
を示すもので、図５と同一の符号を付した部分は同一物
を表わしている。

【００１７】本形態例においては、リード管１０のロー
ト部１３直下から下端に亘る全ての範囲を鉛直方向に対
し斜めに傾斜する傾斜部１６として形成し、しかも、該
傾斜部１６をタンク本体２の胴部３の内周壁に沿うよう
螺旋の一部を成す如く形成して液受入れ構造１７を構成
している。

【００１８】尚、図３中における１８は前記傾斜部１６
の支持構造を示す。

【００１９】このようにすれば、受入れ管９の吐出口１
２から流下した受入れ液５’がリード管１０の傾斜部１
６に接触し、リード管１０の内周壁１０ａをつたって液
膜状に流下する流れが形成されるので、従来の如くリー
ド管１０の軸心部を液柱となって自由落下する場合と比
較して落下速度が大幅に低下され、これによって、受入
れ液５’の流れに随伴されるガス５ｘが少なくなり、貯
蔵空間６上側域の気相部分からロート部１３のスリット
１４へのガス５ｘの巻き込み量が低減される。

【００２０】また、受入れ液５’の落下速度が低下する
ことにより、受入れ液５’が貯蔵液５の液面レベルで激
しく液面に落下衝突するような事態が回避されるので、
貯蔵液５の液面レベル下までガス５ｘが随伴されて液化
される現象も抑制されることになる。

【００２１】特に本形態例においては、リード管１０の
ロート部１３直下から下端に亘る全ての範囲を傾斜部１
６として形成しているので、リード管１０の内周壁１０
ａをつたって液膜状に流下する流れとなった受入れ液
５’が、リード管１０のロート部１３直下から下端に亘
り斜めに時間をかけて流下されることになり、前記受入
れ液５’の落下速度が更に低下される。

【００２２】また、前述した如く、リード管１０の傾斜
部１６を、タンク本体２の胴部３の内周壁に沿うように
形成すれば、図３に二点鎖線で示す如く、胴部３の内周
壁から必要最小限の支持構造１８により安定してリード
管１０を支持することが可能となる。

【００２３】従って上記形態例によれば、リード管１０
の吐出口１２から落下した受入れ液５’をリード管１０
の内周壁１０ａにつたわせて液膜状に流下させると共
に、液膜状に流下する流れとなった受入れ液５’をリー
ド管１０のロート部１３直下から下端に亘り斜めに時間
をかけて流下させるようにしているので、従来の如くリ
ード管１０の軸心部を液柱となって自由落下する場合と
比較して受入れ液５’の落下速度を大幅に低下すること
ができ、これによって、貯蔵空間６上側域の気相部分か
らロート部１３のスリット１４へのガス５ｘの巻き込み
量を低減することができ、また、受入れ液５’が貯蔵液
５の液面レベルで激しく液面に落下衝突するような事態
を回避して貯蔵液５の液面レベル下まで随伴されたガス
５ｘが液化される現象も抑制することができるので、液
受入れ時におけるタンク圧力の低下を抑制することがで
きる。

【００２４】更に、タンク本体２の胴部３の内周壁から
必要最小限の支持構造１８により安定してリード管１０
を支持することができるので、リード管１０に傾斜部１
６を形成しても大幅なコスト増を招くことなく安価に実
施することができる。

【００２５】尚、本発明の低温液化ガスタンクの液受入
れ構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではな
く、リード管の吐出口から落下した受入れ液をリード管
の内周壁につたわせて液膜状に流下させる作用だけを期
待して、リード管のロート部直下における所要範囲にだ
け傾斜部を形成し、該傾斜部以降を従来通り下方向きに
直伸させるようにしても良いこと、また、地上式の低温
液化ガスタンクにおいてもタンク屋根を貫通して貯蔵空
間底部へと搬入する方式が採用されているものについて
は同様に適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱
しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論で
ある。

【００２６】

【発明の効果】上記した本発明の低温液化ガスタンクの
液受入れ構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を
奏し得る。

【００２７】（Ｉ）本発明の請求項１に記載の発明によ
れば、受入れ管の吐出口から流下した受入れ液がリード
管の傾斜部に接触し、リード管の内周壁をつたって液膜
状に流下する流れが形成されるので、従来の如くリード
管の軸心部を液柱となって自由落下する場合と比較して
落下速度を大幅に低下することができ、これによって、
貯蔵空間上側域の気相部分からロート部のスリットへの
ガスの巻き込み量を低減することができ、また、受入れ
液が貯蔵液の液面レベルで激しく液面に落下衝突するよ
うな事態を回避して貯蔵液の液面レベル下まで随伴され
たガスが液化される現象も抑制することができるので、
液受入れ時におけるタンク圧力の低下を抑制することが
できる。

【００２８】（ＩＩ）本発明の請求項２に記載の発明に
よれば、リード管の内周壁をつたって液膜状に流下する
流れとなった受入れ液を、リード管のロート部直下から
下端に亘り斜めに時間をかけて流下させることができる
ので、受入れ液の落下速度を更に低下することができ、
液受入れ時におけるタンク圧力の低下を一層効果的に抑
制することができる。

【００２９】（ＩＩＩ）本発明の請求項３に記載の発明
によれば、タンク本体の胴部内周壁から必要最小限の支
持構造により安定してリード管を支持することができる
ので、リード管に傾斜部を形成しても大幅なコスト増を
招くことなく安価に実施することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を実施する形態の一例を示す断面図であ
る。

【図２】図１の液受入れ構造の詳細を示す断面図であ
る。

【図３】図１のＩＩＩ−ＩＩＩ方向の矢視図である。

【図４】従来例を示す断面図である。

【図５】図４の液受入れ構造の詳細を示す断面図であ
る。

【符号の説明】

１ タンク屋根 ２ タンク本体 ３ 胴部 ６ 貯蔵空間 ８ 低温液化ガスタンク ９ 受入れ管 １０ リード管 １２ 吐出口 １３ ロート部 １４ スリット １６ 傾斜部 １７ 液受入れ構造

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 タンク屋根を貫通して貯蔵空間上側域に
   吐出口を開口した受入れ管と、前記貯蔵空間上側域に解
   放されたスリットを有して前記受入れ管の吐出口を包囲
   したロート部を上端に備え且つ下端を前記貯蔵空間底部
   まで延ばしたリード管とにより構成される低温液化ガス
   タンクの液受入れ構造であって、前記リード管の少くと
   もロート部直下に、鉛直方向に対し斜めに傾斜する傾斜
   部を形成したことを特徴とする低温液化ガスタンクの液
   受入れ構造。
2. 【請求項２】 リード管のロート部直下から下端に亘る
   全ての範囲を傾斜部として形成したことを特徴とする請
   求項１に記載の低温液化ガスタンクの液受入れ構造。
3. 【請求項３】 リード管の傾斜部をタンク本体の胴部内
   周壁に沿うように形成したことを特徴とする請求項１又
   は２に記載の低温液化ガスタンクの液受入れ構造。