JPH11344475A - 被覆ケーブルの劣化診断方法および余寿命推定方法 - Google Patents

被覆ケーブルの劣化診断方法および余寿命推定方法

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JPH11344475A
JPH11344475A JP15492498A JP15492498A JPH11344475A JP H11344475 A JPH11344475 A JP H11344475A JP 15492498 A JP15492498 A JP 15492498A JP 15492498 A JP15492498 A JP 15492498A JP H11344475 A JPH11344475 A JP H11344475A
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毅 池田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被覆ケーブルの劣化診断方法、および劣化診
断時以降の被覆ケーブルの余寿命をも推定する方法を提
供することにある。 【解決手段】 劣化診断方法では、予め調査した超音波
伝搬特性の温度依存性を利用して求めた特定温度(基準
温度)での超音波伝搬特性Vtsにより被覆ケーブルの劣
化度を診断する。一方、余寿命推定方法では、被覆層を
形成する有機高分子材料についての超音波伝搬特性Vts
または劣化診断特性(例えば、破断伸び率)をパラメー
タとする複数のアレニウス曲線を利用して、劣化診断以
降の被覆ケーブルの予定運転温度に就いて、有機高分子
材料の余寿命推定スタート時点の特性が予め定めた寿命
値に達するに要する時間をもって余寿命と推定する。 【効果】 特定温度での超音波伝搬特性Vtsにより被覆
ケーブルの劣化を正しく診断できる。一方、推定寿命に
至る前に被覆ケーブルを撤去し得、被覆ケーブルの絶縁
破壊事故や火災事故を未然に防ぐことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被覆ケーブルの劣
化診断方法および余寿命推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの有機高分子材料は、熱、日光、放
射線あるいはその他の原因により劣化し、劣化の進行と
共にその超音波伝搬特性Vやその他の特性が変化するこ
とが知られている。例えば、劣化の進行と共に有機高分
子材料の破断伸び率が低下し、劣化した有機高分子材料
中での超音波の伝搬特性が変化する。この現象を利用し
て、有機高分子材料の劣化度を超音波の伝搬特性の変化
から診断する方法が周知である。一方、電力ケーブル、
通信ケーブル、屋内配電線などの各種絶縁電線は、その
電気絶縁層やシース層などの被覆層の劣化により停電や
火災事故が生じる可能性があるので、稼働中におけるそ
の被覆層の劣化度を定期的な測定により監視する必要が
ある。しかもその監視は、電線が稼働中である故にその
被覆層を破壊することなく行う必要があるために上記の
超音波診断法を絶縁電線の非破壊劣化診断に適用するこ
とが提案されている。
【0003】例えば、特開平7−35733号公報で
は、診断対象の電力ケーブルの被覆層の外表面上から超
音波をケーブルの半径方向、即ち垂直方向に入射し、被
覆層中での超音波伝搬特性V(超音波伝搬速度)を下式
(1) にて求める方法が提案されている。 V=2α/hm (1) 式(1) において、αは被覆層の厚みであり、hmは超音波
の入射から該被覆層の下層(例えば、導体)の表面で反
射して再び入射位置まで帰還するに要した時間である。
【0004】上記の方法では、被覆層の厚みαが既知で
あることが前提となるので、本発明者らは、先に被覆層
の厚みαに無関係に超音波伝搬特性Vを測定し得る方法
を提案した。その方法においては、検査対象の被覆層の
表面に超音波送信手段と超音波受信手段とを互いの設置
間隔L1 とL2 とで設置し、各設置間隔毎に超音波送信
手段から送信された超音波が検査対象の被覆層中を伝搬
して超音波受信手段にて受信される迄に要する伝搬時間
hm1 とhm2 とをそれぞれ測定し、超音波伝搬特性V(超
音波伝搬速度)を下式(2) にて求める。 V=(L2 −L1 )/(hm2 −hm1 ) (2)
【0005】ところで被覆層内での超音波伝搬特性V
は、被覆層を形成する有機高分子材料の化学的劣化の進
行により変化するのみならず、被覆層(有機高分子材
料)の温度によっても大きく変化し、このために被覆ケ
ーブルの劣化診断が正しく行えず信頼性に欠ける問題が
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
に鑑みて劣化診断の信頼性が改善された超音波伝搬特性
による被覆ケーブルの劣化診断方法を提供することにあ
る。更に本発明の課題は、劣化診断時以降における被覆
ケーブルの余寿命を推定する方法をも提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の各課題は、つぎに
示す方法により解決することができる。 (1) 診断対象とする被覆ケーブルの有機高分子材料にて
形成された被覆層の超音波伝搬特性Vの値から被覆ケー
ブルの劣化度を診断するにあたり、有機高分子材料中で
の超音波伝搬特性Vと温度tとの相関関係(V−t相関
関係)を確立する工程1、任意に選定した基準温度ts
を設定する工程2、超音波伝搬特性Vを測定したときの
被覆層の温度が基準温度tsと異なる場合には、工程1
で確立したV−t相関関係により該測定値を基準温度t
sでの超音波伝搬特性Vtsに換算する工程3、および超
音波伝搬特性Vtsの値から被覆ケーブルの劣化度を診断
する工程4とを有することを特徴とする被覆ケーブルの
劣化診断方法。 (2) 超音波伝搬特性Vが、超音波伝搬速度または超音波
伝搬時間である上記(1)記載の被覆ケーブルの劣化診断
方法。 (3) V−t相関関係が、被覆層を形成する有機高分子材
料と同じ組成を有する再現材料または該再現材料と類似
の材料について測定温度を変えて超音波伝搬特性Vを測
定することにより確立されたものである上記(1) または
(2) 記載の被覆ケーブルの劣化診断方法。 (4) 再現材料と類似の材料が、該有機高分子材料中の特
定有機高分子と同種の有機高分子をベースとし、その超
音波伝搬特性Vtsは再現材料の超音波伝搬特性Vtsの±
20%以下の差異内で一致するものである上記(3) 記載
の被覆ケーブルの劣化診断方法。 (5) 被覆層を形成する該有機高分子材料が、特定有機高
分子をベースとして可塑剤、充填剤、およびカーボンブ
ラックからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むも
のである場合には、上記の少なくとも1種が可塑剤であ
るときはその種類、充填剤であるときはその配合量、カ
ーボンブラックであるときはその配合量を含む該特定有
機高分子の組成物について超音波伝搬特性Vtsと超音波
伝搬特性Vts以外の劣化診断特性Cとの相関関係(Vts
−C相関関係)を確立して、Vts−C相関関係にて求め
た劣化診断特性Cから被覆ケーブルの劣化度を診断する
上記(1) 〜(4) のいずれかに記載の被覆ケーブルの劣化
診断方法。 (6) 劣化診断特性Cが、引張強さ、破断伸び率、弾性
率、ヤング率、モジュラス、誘電率、誘電正接、体積抵
抗率、交流破壊電圧強度、およびインパルス破壊電圧強
度からなる群から選ばれた少なくとも1種である上記
(5) 記載の被覆ケーブルの劣化診断方法。 (7) 有機高分子材料にて形成された被覆層を有する被覆
ケーブルの余寿命を推定するにあたり、被覆層を形成す
る有機高分子材料自体、該有機高分子材料と同じ組成を
有する再現材料、または該再現材料と類似の材料からな
る群から選ばれた少なくとも1材料について該材料の基
準温度tsでの超音波伝搬特性Vtsまたは劣化診断特性
Cをパラメータとして加熱温度tと加熱時間hとの相関
関係(t−h相関関係)を実験的に確立する工程α、該
t−h相関関係の中から任意に選定した少なくとも一パ
ラメータ値についてのt−h相関関係を寿命t−h相関
関係として定める工程β、一定期間布設された余寿命推
定対象の被覆ケーブルの被覆層を形成する有機高分子材
料の超音波伝搬特性Vtsまたは劣化診断特性Cの値を得
る工程γ、上記の一定期間布設以降における被覆ケーブ
ルの被覆層の平均温度における寿命t−h相関関係上の
加熱時間h1 と工程γにおいて得た超音波伝搬特性Vts
または劣化診断特性Cの値(パラメータ値)についての
t−h相関関係上の加熱時間h2 を求る工程δ、および
加熱時間h1 と加熱時間h2 との時間差をもって被覆ケ
ーブルの余寿命とする工程ε、とを有することを特徴と
する被覆ケーブルの余寿命推定方法。 (8) 被覆ケーブルが、上記(1) 〜(6) のいずれかに記載
の方法により劣化診断されたものである上記(7) 記載の
被覆ケーブルの余寿命推定方法。 (9) t−h相関関係における加熱温度tが、絶対温度T
の逆数であり、加熱時間hが加熱時間の対数である上記
(7) または(8) 記載の被覆ケーブルの余寿命推定方法。 (10)劣化診断特性Cが、引張強さ、破断伸び率、弾性
率、ヤング率、モジュラス、誘電率、誘電正接、体積抵
抗率、交流破壊電圧強度、およびインパルス破壊電圧強
度からなる群から選ばれた少なくとも1種である上記
(7) 〜(9) のいずれかに記載の被覆ケーブルの余寿命推
定方法。
【0008】
【作用】超音波伝搬特性Vを実測したときの被覆層の温
度tが基準温度tsと異なっている場合には、その実測
値を工程1において確立したV−t相関関係により超音
波伝搬特性Vtsに補正し、ついで超音波伝搬特性Vtsの
値にて被覆ケーブルの劣化度を診断する。よって実測時
の温度による超音波伝搬特性Vの変動を消去し得て、上
記の劣化診断上の課題を解決することができる。また本
発明の余寿命推定の課題は、工程αにて確立したt−h
相関関係を利用し、一定期間布設以降における被覆ケー
ブルの被覆層の予想されるあるいは人為的に決定する平
均温度を基に、工程εにて後記する方法により被覆ケー
ブルの余寿命を推定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】被覆ケーブルの劣化診断方法の工程1にお
いて、有機高分子材料中での超音波伝搬特性Vと温度t
との相関関係(以下、V−t相関関係)を確立する。そ
の際V−t相関関係は、基本的には診断対象とする被覆
ケーブル自体を検討対象とし、その被覆層の超音波伝搬
特性Vを種々の温度下で測定することによって確立する
ことができる。V−t相関関係は、被覆ケーブルの劣化
の程度による影響は一般的に小さい。よって上記の検討
対象としては、未劣化の被覆ケーブルであってよく、あ
るいは数年間の使用にてある程度劣化が進行している被
覆ケーブルであってもよい。
【0011】V−t相関関係は、上記の方法以外にもつ
ぎのような代替方法によっても確立することができる。
先ず、診断対象とする被覆ケーブルの被覆層を形成する
有機高分子材料と同じ組成であって別途実験室などで調
製した再現材料、あるいは該再現材料と組成並びに超音
波伝搬特性Vが類似する類似材料を用意する。再現材料
は該有機高分子材料自体の仕様書から、あるいは該材料
自体を分析することによりその組成を把握して配合調製
することができる。上記の類似材料としては、有機高分
子材料自体に使用されている特定有機高分子と同じ有機
高分子をベースとする種々の組成物であって、後記する
基準温度tsにおけるその超音波伝搬特性Vtsが同温度
における該再現材料の超音波伝搬特性Vtsの±20%以
下の差異内で一致するものが用いられる。
【0012】つぎに上記の再現材料または類似材料のう
ちの少なくとも1種を用い、その材料を適当な加工品、
例えば、厚さ0.5〜5mm程度のシートや診断対象と
する被覆ケーブルと同構造の被覆ケーブルに成形加工す
る。診断対象とする被覆ケーブルの該有機高分子材料が
架橋体である場合には、上記で採用した材料は成形加工
の際に架橋される。最後にかくして得られた加工品につ
いて超音波伝搬特性Vを種々の温度下で測定する。その
際、加工品の劣化の程度は前記と同様に不問としてよ
い。
【0013】〔V−t相関関係の例〕外径10mmの撚
線銅導体の上に厚さ2mmの架橋ポリエチレン絶縁層を
有し、その上に厚さ1.5mmの可塑化ポリ塩化ビニル
組成物のシース層を有する600V用電力ケーブルを対
象として、該ケーブルから採取した未劣化のケーブル試
験片と該ケーブル試験片を110℃に温度調節したオー
ブン中で300時間加熱劣化させた劣化ケーブル試験片
とを用意し、それぞれについて5℃、25℃、および4
0℃にそれぞれ温度調節したオーブン中に約2時間放置
し、その後オーブン中で各シース層の超音波伝搬特性V
を測定した。その結果を図1に示す。図1において、A
は未劣化のケーブル試験片についてのグラフであり、B
は劣化ケーブル試験片についてのグラフである。A、B
両グラフにおける超音波伝搬特性V〔ここでは正しく
は、超音波伝搬速度(m/s)〕と温度t(℃)とは、
それぞれ下式(3) 、式(4) にて表すことができるV−t
相関関係がり、また両式中の比例定数aは、共に−5.
5であることがわかる。しかして、上記の電力ケーブル
におけるシース層については、未劣化あるいは劣化ケー
ブルを問わず、式(3) または式(4) のV−t相関関係に
より下記の一般式(5) を有する超音波伝搬特性Vts−温
度関係式が成立することを確認した。 V =at+2280 (3) V =at+2020 (4) Vts=−5.5(ts−tx)+Vtx (5) (ここに、Vtxは温度tx( 測定時の温度) における超
音波伝搬特性V、Vtsは基準温度tsにおける超音波伝
搬特性である。)。
【0014】特定有機高分子の種類が異なる各種有機高
分子材料の被覆層を有する多くの被覆ケーブルも、概し
て上記の一般式(5) のような一次式型の(但し比例定数
は材料種により異なる。)超音波伝搬特性Vts−温度関
係式を示す。なお劣化の進行とともにV−t相関関係の
比例定数aの値が変化する場合、あるいは一次式型から
二次式型へあるいはその逆へ変化する場合などもある
が、かかる場合でも引張強さや破断伸び率などの初期値
からの残率が70%程度以上であるような軽度劣化段階
と残率が70%程度以下であるような重度劣化段階との
二段階にわけて、各段階毎の超音波伝搬特性Vts−温度
関係式を用意して、劣化の度合いに応じて該関係式を使
い分けるだけで実際上十分であることが多い。
【0015】工程2において基準温度tsとしては、こ
れを任意に選定し得るが、工程1にて確立したV−t相
関関係にて無理なく超音波伝搬特性Vを補正し得る温度
であることが好ましい。該関係を例えば15〜50℃の
温度範囲で確立した場合には、基準温度tsは例えば2
5℃である。
【0016】本発明における劣化診断のために実測され
る被覆ケーブルの特性は、診断対象とする被覆ケーブル
の被覆層の超音波伝搬特性Vと温度tである。超音波伝
搬特性V自体は、前記した式(1) や式(2) で示される方
法など、周知の方法によって測定することができる。被
覆層の温度tは、正しくは各超音波伝搬特性Vの測定方
法において超音波が伝搬する被覆層内の通路の平均温度
であるが、多くの場合、被覆層の表面温度で代替えする
ことができる。
【0017】超音波伝搬特性Vを実測したときの該被覆
層の温度tが基準温度tsと異なっている場合には、工
程3において超音波伝搬特性Vts−温度関係式により該
実測値を超音波伝搬特性Vtsに換算し、ついで工程4に
て超音波伝搬特性Vtsの値から被覆ケーブルの劣化度を
診断する。
【0018】本発明での劣化診断においては、超音波伝
搬特性Vts自体の値を基に被覆ケーブルの劣化診断を行
ってもよい。またその際に超音波伝搬特性Vtsとして
は、超音波伝搬特性Vtsに対応する超音波伝搬速度、超
音波伝搬時間(超音波伝搬時間の逆数も含む)などであ
ってもよい。しかし、有機高分子材料の劣化による超音
波伝搬特性Vtsと超音波伝搬特性Vts以外の後記する劣
化診断特性Cとの相関関係(以下、Vts−C相関関係)
を予め別途確立しておき、非破壊検査の故に測定が容易
な超音波伝搬特性Vtsの変化からVts−C相関関係によ
り劣化診断特性Cの変化を把握し、かく把握した劣化診
断特性Cの変化を基に劣化診断を行った方が誤診の可能
性が少なくて好ましい。なお本発明において、劣化診断
特性Cとしては、超音波伝搬特性Vのような有機高分子
材料の表面を主たる測定対象とする機械的特性とは異な
って、該材料の表面および/またはその内部を測定対象
とする各種の特性を意味する。例えば、引張強さ、破断
伸び率、弾性率、ヤング率、モジュラスなどの機械的特
性、誘電率、誘電正接、体積抵抗率、交流破壊電圧強
度、インパルス破壊電圧強度などの電気的特性などがあ
る。上記の機械的特性は、例えば被覆ケーブルの被覆層
などから打ち抜き採取したダンベル試料に就いてJIS
やASTMなどに規定する通常の方法で測定することが
できる。
【0019】有機高分子材料には、該材料のベースとし
て用いられている特定有機高分子に特有の各種の配合
剤、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの老化防止
剤、加工助剤、可塑剤、安定剤、顔料、架橋剤、架橋助
剤、充填剤、カーボンブラックあるいはその他、のうち
の数種が各配合剤に固有の通常量にて配合されている。
【0020】上記の特定有機高分子としては、一般的に
は所謂、機械的構造材料として使用し得る程度の機械強
度を有する合成または天然のものなどが対象となる。有
機高分子の例を挙げると、樹脂ではポリエチレン、架橋
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4
−メチルペンテン−1などのポリオレフィン、ナイロン
などのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデ
ン、熱可塑性ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重
合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリテ
トラフルオロエチレンなど、ゴムでは天然ゴム、イソプ
レンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴ
ム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム、ス
チレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブ
タジエン共重合ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴ
ム、エチレン−エチルアクリレート共重合ゴム、クロロ
プレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピ
クロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムな
ど、熱可塑性エラストマーではABA型トリブロックや
(AB)n X型ラジアルブロックなどのスチレン系熱可
塑性エラストマー、ブレンド型TPO、部分架橋ブレン
ド型TPO、完全架橋ブレンド型TPOなどのポリオレ
フィン系熱可塑性エラストマー、ニトリルゴムブレンド
体や部分架橋ニトリルゴムブレンド体などのポリ塩化ビ
ニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系やポリエ
ーテル系などのポリウレタン系熱可塑性エラストマー、
ポリエステル・ポリエーテル型やポリエステル・ポリエ
ステル型などのポリエステル系熱可塑性エラストマーな
どである。就中、ケーブル用の有機高分子として多用さ
れているポリ塩化ビニル、ポリエチレン、架橋ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンな
どの樹脂類、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン
共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合
ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコーン
ゴムなどのゴム類である。
【0021】ところで本発明者らの研究によれば、多く
の配合剤についてはそれらの各通常量での配合の有無は
有機高分子材料の劣化によるVts−C相関関係に影響を
及ぼさないが、可塑剤、充填剤、およびカーボンブラッ
クについてはそれらのうちの少なくとも1種が配合され
ている場合には、可塑剤についてはその種類、充填剤と
カーボンブラックについては各配合量によって多少変わ
る。よって本発明においては、つぎに示す改良診断方法
にて劣化診断を行うことが好ましい。改良診断方法にお
いては、先ず診断対象の被覆ケーブルの被覆層を形成す
る有機高分子材料が、可塑剤、充填剤、およびカーボン
ブラックのうちの少なくとも1種を含むものであるか否
かを調べる。該有機高分子材料がそれらの少なくとも1
種を含む場合、それが可塑剤であるとその種類、充填剤
であるとその配合量、カーボンブラックであるとその配
合量に着目し、かかる可塑剤種あるいは配合量を有する
有機高分子材料についてそのVts−C相関関係を確立す
る。一方、該診断対象被覆ケーブルの超音波伝搬特性V
tsを求め、ついで確立したVts−C相関関係から被覆ケ
ーブルの劣化状態を劣化診断特性Cにて診断する。
【0022】可塑剤の例を挙げると、ジメチル−フタレ
ート、ジエチル−フタレート、ジブチル−フタレート、
ジ−n−オクチル−フタレート、ジフェニル−フタレー
ト、ジイソデシル−フタレート、ジ−n−アルキル−フ
タレートなどのフタル酸誘導体類、ジメチル−イソフタ
レートなどのイソフタル酸誘導体類、ジ−(2−エチル
ヘキシル)テトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロ
フタル酸誘導体類、ジブチル−アジペート、ジイソデシ
ル−アジペート、ジ−n−オクチル−アジペート、ジ−
n−アルキル−アジペートなどのアジピン酸誘導体類、
トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−
n−オクチル−トリメリテート、トリ−イソオクチル−
トリメリテート、トリ−イソデシル−トリメリテート、
トリ−イソノニル−トリメリテート、高級アルコール−
トリメリテートなどのトリメリット酸誘導体類、あるい
はその他の酸誘導体類である。
【0023】充填剤の例を挙げると、軽質炭酸カルシウ
ム、重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム類、ハー
ドクレー、ソフトクレー、焼成クレー、シラン改質クレ
ーなどのクレー類、ミストロベーパタルクなどのタルク
類、シリカ、ウォラストナイト、ゼオライト、けい藻
土、けい砂、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リトボ
ン、酸化マグネシウム、二硫化モリブデンなどである。
【0024】カーボンブラックの例を挙げると、チャン
ネルブラック類、SAF、ISAF、N−339、HA
F、MAF、FEF、SRF、GPF、ECFなどのフ
ァーネスブラック類、FT、MTなどのサーマルブラッ
ク類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの
導電性ブラック類などである。
【0025】診断対象の被覆ケーブルの被覆層を形成す
る有機高分子材料が、可塑剤、充填剤、およびカーボン
ブラックのうちの少なくとも1種を含むものであるか否
かは種々の方法で調べることができる。ケーブルメーカ
ーが自社製の被覆ケーブルを診断対象とする場合にはそ
の製造仕様書からそれがわかり、ケーブルユーザーが有
機高分子材料を指定してケーブルメーカーに製造させた
被覆ケーブルを診断対象とする場合も同様である。
【0026】上記のケースでない場合でも、被覆ケーブ
ルの表面に施された印字から有機高分子材料のベースた
る特定有機高分子の種類がわかり、特定有機高分子の種
類がわかると可塑剤、充填剤、およびカーボンブラック
の配合の有無をかなり高い確率で推定することができ
る。あるいは、被覆ケーブルから少量の有機高分子材料
を採取し、これを熱重量分析や赤外線吸収スペクトルの
測定にかけてそれを判別することができる。
【0027】特定有機高分子がポリ塩化ビニルであれ
ば、通常、可塑剤が配合されており、その種類の判別お
よび配合量の測定は、例えば溶剤(アセトン、メタノー
ル、THFなど)を含ませた脱脂綿にて被覆ケーブルの
有機高分子材料の表面を擦って可塑剤を採取し、その脱
脂綿中の成分を赤外線吸収スペクトル、GPC(ゲル濾
過クロマトグラフィー)、HPLC(高速液体クロマト
グラフィー)で分析することで可能である。
【0028】特定有機高分子がポリ塩化ビニルやゴム系
材料であると、通常、充填剤が配合されており、その配
合量は被覆ケーブルから少量のサンプル(数mg)を採
取し、これをTGA(熱重量分析)により分析すること
で定量できる。特定有機高分子がゴム系材料であれば、
充填剤の他にカーボンブラックも配合されており、その
配合量も充填剤の配合量の測定と同様にサンプルを採取
して行えば良い。
【0029】つぎにVts−C相関関係の確立方法につい
て述べる。該関係における可塑剤の種類の影響について
は、一般的に各酸誘導体類のうちの個々のメンバー間の
差は意外に小さく、むしろ各酸誘導体類間の差のほうが
大きい。よって本発明においては、配合されている可塑
剤の具体名が判明しているときにはその具体名の可塑剤
についてVts−C相関関係を確立してよいが、具体名を
分析するまでもなく、可塑剤の酸誘導体類名、例えば、
フタル酸誘導体類、イソフタル酸誘導体類などにて該関
係を確立してよい。
【0030】有機高分子材料が、例えば、ある種のフタ
ル酸誘導体にて可塑化されたポリ塩化ビニルである場
合、該フタル酸誘導体を含むポリ塩化ビニルのモデル組
成物を調製し、その組成物を適当な成形品、例えば、厚
さ0.5〜5mm程度のシートあるいは被覆ケーブルな
どに成形加工し、かかる成形品の形態にて放射線照射や
加熱などにより種々の程度に劣化させ、劣化度の異なる
成形品毎に前記した劣化診断特性Cの一種と超音波伝搬
特性Vとを測定し、ついで超音波伝搬特性Vを超音波伝
搬特性Vtsに補正し、かくしてVts−C相関関係を得
る。
【0031】有機高分子材料が、例えば、特定量の充填
剤と特定量のカーボンブラックとを含むエチレン−プロ
ピレン−ジエン三元共重合ゴムである場合、該特定量の
充填剤を含む該ゴムのモデル組成物、または該特定量の
カーボンブラックを含む該ゴムのモデル組成物を調製
し、その何れかの組成物について上記したポリ塩化ビニ
ルのモデル組成物の場合と同様にしてVts−C相関関係
を確立する。
【0032】有機高分子材料が、特定量の充填剤と特定
量のカーボンブラックとを含むエチレン−プロピレン−
ジエン三元共重合ゴムのように充填剤とカーボンブラッ
クとを含むものである場合、前記したように特定量の充
填剤を含む該ゴムのモデル組成物または該特定量のカー
ボンブラックを含む該ゴムのモデル組成物の何れか一方
を対象としてVts−C相関関係を確立してもよく、それ
らの両方から確立してもよい。後者の場合において一方
から確立されたものと他方から確立されたものとで差が
生じることがあるが、その場合には両者の平均値を採用
すると劣化診断の精度が向上する。さらに特定量の充填
剤と特定量のカーボンブラックとの両方を含むモデル組
成物についてVts−C相関関係を確立すると、一層精度
のよい劣化診断が可能となる。同様のことが、可塑剤と
充填剤および/またはカーボンブラックとを含む有機高
分子材料についても該当する。
【0033】可塑剤は、前記の通り、その種類特にその
酸誘導体類の違いがVts−C相関関係に大きく影響す
る。しかしトリメリット酸誘導体類などのように、酸誘
導体類のうちにはその配合量も該関係に大きく影響する
ものがある。よって該関係の確立に際し、使用されてい
る可塑剤の具体名または酸誘導体類名が判明すると、そ
の可塑剤またはその酸誘導体類について事前に配合量の
影響の有無を調査し、影響ある場合には特定量の該可塑
剤または同類の酸誘導体を配合したモデル組成物を用い
て該関係を確立するとよい。
【0034】Vts−C相関関係の確立にあたり、診断対
象となる被覆ケーブルにおける有機高分子材料中での可
塑剤、充填剤あるいはカーボンブラックの配合量と各モ
デル組成物中でのそれとは互いに一致していることが好
ましいが、有機高分子材料中での配合量の±5%程度の
誤差は許容できる。
【0035】上記の各モデル組成物には、可塑剤、充填
剤あるいはカーボンブラック以外で有機高分子材料に通
常配合される他の配合剤、例えば安定剤、酸化防止剤、
顔料、加工助剤などは配合してもしなくてもよい。なお
ゴム組成物の場合には、通常の架橋剤と架橋技術にて予
め架橋して用いられる。
【0036】Vts−C相関関係は、一般的に、有機高分
子材料の劣化条件によって多少変わる。しかし本発明の
改良診断方法においては、上記の各モデル組成物を例え
ば室温〜250℃程度の温度域および/または放射線照
射例えば10Gy/h〜10kGy/h程度のγ線照射
にて劣化させた場合に得られるVts−C相関関係は、他
の条件で劣化した多くの被覆ケーブルの劣化診断に実際
的に使用することができる。しかし一層精度の高い劣化
診断を行うには、診断対象の被覆ケーブルが遭遇する劣
化環境またはそれに近い環境にてモデル組成物を劣化さ
せ、かかる劣化組成物についてVts−C相関関係を確立
しておくことが好ましい。
【0037】一方、改良診断方法を被覆ケーブルの有機
高分子材料の組成が未知である場合や既知の場合を問わ
ず、一般的あるいは広範囲の被覆ケーブルの劣化診断に
適用する場合には、つぎのようにする。まず各有機高分
子毎に可塑剤の種類とその配合量、充填剤の配合量、お
よびカーボンブラックの配合量を変えた多数のモデル組
成物を調製し、各モデル組成物毎に前記と同様にして劣
化させ、劣化した試料について必要な項目の測定を行
う。かくすると、可塑剤の種類とその配合量、充填剤の
配合量、およびカーボンブラックの配合量をパラメータ
とする多数のVts−C相関関係を確立することができ
る。
【0038】なお被覆ケーブルの有機高分子材料として
高頻度で使用される有機高分子の種類は前記したような
ものを含めてせいぜい十数種程度であり、そのうちで可
塑剤が配合されるのはポリ塩化ビニルのみであり、可塑
剤としても個々の具体名でなくても酸誘導体類名でよく
て高頻度で使用される酸誘導体類にしてもフタル酸誘導
体類やトリメリット酸誘導体類である。よって、高頻度
で使用される有機高分子や可塑剤に限定して上記のデー
タ群を確立しておいても実用的に頗る有用である。Vts
−C相関関係を確立する際のモデル組成物における可塑
剤、充填剤およびカーボンブラックの配合量は、実用の
被覆ケーブルにおける配合量範囲を含み、それよりやヽ
広い範囲内で約5〜10点、変量する程度でよい。
【0039】上記の一般的な改良診断方法において、つ
ぎのような劣化診断プログラムを記録した記録媒体を用
意しておくとよい。該記録媒体は、診断対象とする被
覆ケーブルの有機高分子材料に用いられた特定有機高分
子の種類、該有機高分子に配合される可塑剤の種類と配
合量、充填剤の配合量およびカーボンブラックの配合量
を入力情報として入力させる手順と、上記の多数のV
ts−C相関関係の中から、前記入力情報と同じ条件を持
つVts−C相関関係を選択させる手順と、診断対象と
する有機高分子材料の超音波伝搬特性Vtsを入力させ、
その入力値と前記選択されたデータとから劣化診断特性
Cを算出させる手順とをコンピュータに実行させるプロ
グラムを記録したものである。
【0040】本発明においては、一定期間布設された被
覆ケーブルの余寿命はつぎに示す工程α〜工程εを有す
る方法により推定することができる。まず工程αにおい
ては、被覆層を形成する有機高分子材料自体、該有機高
分子材料と同じ組成を有する再現材料、または該再現材
料と類似の材料からなる群から選ばれた少なくとも1材
料(以下、試験材料)について、その超音波伝搬特性V
tsまたは劣化診断特性Cをパラメータとして加熱温度t
と加熱時間hとの相関関係(以下、t−h相関関係)を
実験的に確立する。その際の上記した再現材料や該再現
材料と類似の材料については、本発明の劣化診断方法に
おいて前記したものと同じものであってよく、また劣化
診断特性Cも前記と同じもの、例えば破断伸び率、であ
ってよい。
【0041】以下、劣化診断特性Cとして破断伸び率を
取り上げて、それをパラメータとする一般的なt−h相
関関係の確立方法、並びにそのt−h相関関係を利用し
た被覆ケーブルの一般的な余寿命推定方法について説明
する。t−h相関関係の確立方法並びに余寿命推定方法
についての以下の説明は、破断伸び率以外の他の劣化診
断特性Cおよび超音波伝搬特性Vtsについても当てはま
る。
【0042】まず上記の試験材料について、それをプレ
ス加工にて例えば厚さ1〜5mm程度のシートに加工
し、該シートを加熱劣化試料としてこれを種々の加熱温
度tで適当時間、オーブン中で加熱して各加熱温度t毎
に加熱時間hに対する破断伸び率の変化を測定する。そ
の際、加熱温度tは可及的に広温度範囲で且つ小刻みと
することが好ましいが、一般的に90℃以下の低温度で
の加熱では劣化の進行が遅いので通常は100〜200
℃の範囲で少なくとも50℃刻み、特に20℃刻みとす
ることが好ましい。一方、各加熱温度t毎の加熱時間h
は、少なくとも1ケ月間、特に少なくとも3ケ月間とす
ることが好ましい。図2はその結果のモデルグラフであ
って、加熱温度t(t1 〜t4)をパラメータとして横軸
を加熱時間hとし、縦軸を破断伸び率(%)としてい
る。なお上記した試験材料の加熱劣化試料としては、上
記のプレス加工シートに代えて劣化診断対象(余寿命推
定対象)の未劣化の被覆ケーブル自体であってもよいこ
とは勿論である。
【0043】つぎに、一定の破断伸び率( 例えば、20
0%)における加熱温度(t1 〜t4)と加熱時間hとの
関係を図2から読み取ってグラフ化する。図3はその一
例であって、そこでは横軸に加熱温度tの絶対温度Tの
逆数を取り縦軸に加熱時間hの対数を取って、破断伸び
率をパラメータとして、それが100%、150%、2
00%、250%、および300%である場合の各t−
h相関関係、所謂アレニウス曲線を示している。図2か
ら読み取ったデータから図3上でアレニウス曲線を求め
る際には最少二乗法にて相関係数が最少となる一次式
(直線)、あるいは二次以上の多次式を求めるとよい
が、多くの場合、実際的には一次式(直線)で近似する
ことができる。
【0044】工程βにおいて、図3に示す破断伸び率1
00%、150%、200%、250%、300%など
についての複数のt−h相関関係の中から任意に選定し
た特定パラメータ値についてのt−h相関関係を寿命t
−h相関関係として定める。その際、被覆ケーブルの種
類、ケーブルユーザーのケーブル管理基準、あるいはそ
の他の事情を考慮して寿命t−h相関関係を選択し設定
してよい。いまここでは本発明の説明のために、太線で
示す破断伸び率が100%のt−h相関関係を寿命t−
h相関関係と仮に定めておく。
【0045】工程γにおいては、一定期間布設された被
覆ケーブルの被覆層を形成する有機高分子材料の破断伸
び率が調べられるが、それは本発明の劣化診断方法につ
いて前記した方法にて測定した、Vts−C相関関係の一
つたる、超音波伝搬特性Vtsと破断伸び率との相関関係
とから知ることができる。
【0046】つぎに工程δにおいて、上記の一定期間布
設以降における被覆ケーブルの被覆層の平均温度を把握
する。その平均温度は、ケーブルユーザーが定めた被覆
ケーブルの予定運転温度であったり、ケーブル布設環境
から予想される被覆ケーブルの予想運転温度であったり
する。あるいはケーブルユーザーが、今後のケーブル運
転計画を策定するための仮の運転温度である場合もあ
る。いずれにせよ、かかる平均温度における寿命t−h
相関関係上の加熱時間h1 と工程γにおいて得た超音波
伝搬特性Vtsまたは劣化診断特性Cの値のt−h相関関
係上の加熱時間h2 を求る。工程γにて得た被覆層の破
断伸び率が例えば250%であったとし、それ以降にお
いて被覆ケーブルを被覆層の平均温度が60℃、70
℃、80℃、あるいは90℃となる温度で運転する場合
を考えるとする。運転温度が90℃の場合、破断伸び率
が100%(図3のa点)および250%(図3のb
点)となるそれぞれの縦軸の加熱時間h1 とh2 とを読
み取る。
【0047】工程εにおいては、加熱時間h1 と加熱時
間h2 との時間差(h1 −h2 )を算出し、かく算出し
た時間差をもって被覆ケーブルの余寿命と推定する。運
転温度90℃の場合と同様の方法にて、運転温度80
℃、70℃、および60℃の場合の推定余寿命を知るこ
とができる。
【0048】例えば60℃で運転されたポリ塩化ビニル
シース層を有する絶縁電線について、超音波伝搬速度か
ら該シース層の破断伸び率を算出したところ、250%
であった。該シース層の破断伸び率が100%になる時
をもって該絶縁電線の寿命であると設定すると、250
%から100%に低下するのに要する期間、即ち余寿命
は14年と推定された。
【0049】
【発明の効果】超音波伝搬特性Vは、非破壊検査である
ためにその測定は容易であるが、被覆層の温度によって
大きく変化し、このために従来は被覆ケーブルの劣化診
断が正しく行えない問題があったが、本発明の劣化診断
方法によれば、超音波伝搬特性Vの実測値に温度補正を
行った超音波伝搬特性Vts(基準温度tsでの超音波伝
搬特性)を採用するので、被覆ケーブルの劣化診断を正
しく行うことができる。また本発明の余寿命推定方法に
よれば、一定期間運転した被覆ケーブルのその後の運転
温度毎の余寿命を推定することができるので、推定寿命
に至る前にそれを撤去し必要に応じて新品と交換し得
て、しかして被覆ケーブルの絶縁破壊事故や火災事故を
未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆ケーブルの被覆層における超音波伝搬特性
Vと温度tとの関係を示すグラフ例である。
【図2】被覆ケーブルの余寿命を推定するために用いら
れ、被覆ケーブルの被覆層を形成する有機高分子材料な
どについての加熱温度をパラメータとする加熱時間と破
断伸び率との関係を示すモデルグラフである。
【図3】図2から読み取った数値にて作成され、破断伸
び率値をパラメータとする加熱温度(絶対温度T)の逆
数と加熱時間の対数との関係(t−h相関関係)を示す
グラフである。
【符号の説明】
A 未劣化のケーブル試験片についてのグラフ B 劣化ケーブル試験片についてのグラフ a 破断伸び率が100%であるt−h相関関係上に
おける運転温度(平均温度)が90℃の点 b 破断伸び率が250%であるt−h相関関係上に
おける運転温度(平均温度)が90℃の点
フロントページの続き (72)発明者 芦田 哲哉 兵庫県尼崎市東向島西之町8番地 三菱電 線工業株式会社内 (72)発明者 藤井 政徳 兵庫県尼崎市東向島西之町8番地 三菱電 線工業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 診断対象とする被覆ケーブルの有機高分
    子材料にて形成された被覆層の超音波伝搬特性Vの値か
    ら被覆ケーブルの劣化度を診断するにあたり、有機高分
    子材料中での超音波伝搬特性Vと温度tとの相関関係
    (V−t相関関係)を確立する工程1、任意に選定した
    基準温度tsを設定する工程2、超音波伝搬特性Vを測
    定したときの被覆層の温度が基準温度tsと異なる場合
    には、工程1で確立したV−t相関関係により該測定値
    を基準温度tsでの超音波伝搬特性Vtsに換算する工程
    3、および超音波伝搬特性Vtsの値から被覆ケーブルの
    劣化度を診断する工程4とを有することを特徴とする被
    覆ケーブルの劣化診断方法。
  2. 【請求項2】 超音波伝搬特性Vが、超音波伝搬速度ま
    たは超音波伝搬時間である請求項1記載の被覆ケーブル
    の劣化診断方法。
  3. 【請求項3】 V−t相関関係が、被覆層を形成する有
    機高分子材料と同じ組成を有する再現材料または該再現
    材料と類似の材料について測定温度を変えて超音波伝搬
    特性Vを測定することにより確立されたものである請求
    項1または2記載の被覆ケーブルの劣化診断方法。
  4. 【請求項4】 再現材料と類似の材料が、該有機高分子
    材料中の特定有機高分子と同種の有機高分子をベースと
    し、その超音波伝搬特性Vtsは再現材料の超音波伝搬特
    性Vtsの±20%以下の差異内で一致するものである請
    求項3記載の被覆ケーブルの劣化診断方法。
  5. 【請求項5】 被覆層を形成する該有機高分子材料が、
    特定有機高分子をベースとして可塑剤、充填剤、および
    カーボンブラックからなる群から選ばれた少なくとも1
    種を含むものである場合には、上記の少なくとも1種が
    可塑剤であるときはその種類、充填剤であるときはその
    配合量、カーボンブラックであるときはその配合量を含
    む該特定有機高分子の組成物について超音波伝搬特性V
    tsと超音波伝搬特性Vts以外の劣化診断特性Cとの相関
    関係(Vts−C相関関係)を確立して、Vts−C相関関
    係にて求めた劣化診断特性Cから被覆ケーブルの劣化度
    を診断する請求項1〜4のいずれかに記載の被覆ケーブ
    ルの劣化診断方法。
  6. 【請求項6】 劣化診断特性Cが、引張強さ、破断伸び
    率、弾性率、ヤング率、モジュラス、誘電率、誘電正
    接、体積抵抗率、交流破壊電圧強度、およびインパルス
    破壊電圧強度からなる群から選ばれた少なくとも1種で
    ある請求項5記載の被覆ケーブルの劣化診断方法。
  7. 【請求項7】 有機高分子材料にて形成された被覆層を
    有する被覆ケーブルの余寿命を推定するにあたり、被覆
    層を形成する有機高分子材料自体、該有機高分子材料と
    同じ組成を有する再現材料、または該再現材料と類似の
    材料からなる群から選ばれた少なくとも1材料について
    該材料の基準温度tsでの超音波伝搬特性Vtsまたは劣
    化診断特性Cをパラメータとして加熱温度tと加熱時間
    hとの相関関係(t−h相関関係)を実験的に確立する
    工程α、該t−h相関関係の中から任意に選定した少な
    くとも一パラメータ値についてのt−h相関関係を寿命
    t−h相関関係として定める工程β、一定期間布設され
    た余寿命推定対象の被覆ケーブルの被覆層を形成する有
    機高分子材料の超音波伝搬特性Vtsまたは劣化診断特性
    Cの値を得る工程γ、上記の一定期間布設以降における
    被覆ケーブルの被覆層の平均温度における寿命t−h相
    関関係上の加熱時間h1 と工程γにおいて得た超音波伝
    搬特性Vtsまたは劣化診断特性Cの値(パラメータ値)
    についてのt−h相関関係上の加熱時間h2 を求る工程
    δ、および加熱時間h1 と加熱時間h2 との時間差をも
    って被覆ケーブルの余寿命とする工程ε、とを有するこ
    とを特徴とする被覆ケーブルの余寿命推定方法。
  8. 【請求項8】 被覆ケーブルが、請求項1〜6のいずれ
    かに記載の方法により劣化診断されたものである請求項
    7記載の被覆ケーブルの余寿命推定方法。
  9. 【請求項9】 t−h相関関係における加熱温度tが、
    絶対温度Tの逆数であり、加熱時間hが加熱時間の対数
    である請求項7または8記載の被覆ケーブルの余寿命推
    定方法。
  10. 【請求項10】 劣化診断特性Cが、引張強さ、破断伸
    び率、弾性率、ヤング率、モジュラス、誘電率、誘電正
    接、体積抵抗率、交流破壊電圧強度、およびインパルス
    破壊電圧強度からなる群から選ばれた少なくとも1種で
    ある請求項7〜9のいずれかに記載の被覆ケーブルの余
    寿命推定方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001194350A (ja) * 2000-01-07 2001-07-19 Mitsubishi Cable Ind Ltd 鉄道設備用低圧電線ケーブルのための超音波劣化診断装置
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