JPH1134372A - サーマルヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドおよびその製造方法

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JPH1134372A
JPH1134372A JP18706897A JP18706897A JPH1134372A JP H1134372 A JPH1134372 A JP H1134372A JP 18706897 A JP18706897 A JP 18706897A JP 18706897 A JP18706897 A JP 18706897A JP H1134372 A JPH1134372 A JP H1134372A
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JP
Japan
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protective layer
thermal head
heating resistor
mol
forming
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JP18706897A
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Inventor
Kyoji Shirakawa
享志 白川
Hisafumi Nakatani
壽文 中谷
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Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保護層の密着力と耐クラック性を改善し、高
印字品質と長寿命を両立させたサーマルヘッド及びその
製造方法を提供する。 【解決手段】 基板11と、該基板11の上面に形成し
た保温層12と、該保温層12の上面に形成した発熱抵
抗体13と、該発熱抵抗体13に接続される電極14
と、前記発熱抵抗体13及び電極14の表面を被覆した
保護層15とからなり、前記保護層15はアルミニウム
窒化物またはアルミニウム酸化物を主組成としたAl−
Si−O−NまたはAl−Si−Oからなる絶縁性透明
体で形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サーマルプリンタ
に用いられるサーマルヘッド及びその製造方法に係り、
特に、保護層の密着性と耐クラック性及び熱応答性に優
れた長寿命のサーマルヘッドおよびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、サーマルプリンタに用いられて
いるサーマルヘッドは、アルミナ基板あるいはシリコン
基板上の端部に複数の発熱抵抗体を直線状に配列して、
印字情報に基づいて所望の発熱抵抗体に選択的に順次通
電を行って、この発熱抵抗体を加熱することにより、感
熱プリンタにおいては感熱記録紙を発色させて印字を行
い、熱転写プリンタにおいてはインクリボンのインクを
部分的に溶融して記録紙等に転写して印字を行うように
形成されている。
【0003】この種の従来のサーマルヘッドの構造及び
その製造方法は、図6の要部断面図に示すように、シリ
コン等からなる基板1の端部1a寄りに凸条部1bをフ
ォトリソ技術により形成し、該基板1の上面にスパッタ
リング技術により、シリコンと遷移金属と酸素とからな
る保温層2を形成している。また、該保温層2の上面に
TaーSiO2等からなる発熱抵抗体3をスパッタリン
グ等により積層し、フォトリソ技術で発熱抵抗体3のパ
ターンを形成して、前記基板1の凸条部1bの上方に発
熱部3aを形成している。
【0004】また、該発熱部3aを発熱させるために、
発熱抵抗体3に電力エネルギーを供給するためのAl等
からなる電極4をスパッタリング等で積層し、フォトリ
ソ技術により前記発熱部3aを挟んで基板1の端部側に
共通電極4a、その逆側に個別電極4b及び外部接続端
子部(図示せず)がそれぞれ同時に形成されている。ま
た、前記発熱抵抗体3および共通電極4a・個別電極4
bのそれぞれの表面には、酸化や摩耗を防ぐために、高
硬度で耐酸化性と耐摩耗性に優れているサイアロンまた
はSiC等からなる着色したSi系セラミックの保護層
5を、スパッタリングにより積層形成して従来のサーマ
ルヘッドは構成されている。
【0005】そして、前記Si系セラミックの保護層5
の形成方法は、保護層5がサイアロンからなる場合に
は、Si34とAl23を主成分とするセラミック焼結
体からなるスパッタリングターゲットを用い、また、保
護層5がSiCからなる場合には、SiCのスパッタリ
ングターゲットを用い、何れもArガス中でスパッタリ
ングを行うことで形成している。
【0006】このような、従来のサーマルヘッドは、前
記発熱抵抗体3の発熱部3aがジュール熱を発生して、
前記保護層5の表面に密着した感熱紙や熱転写リボン等
(図示せず)を加熱することにより、感熱紙の発色又は
記録紙へのインク転写が行われて文字や画像が印字され
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来のサーマルヘッドは、発熱部3aが基板1と保温
層2の凸条部2a上に形成され、プラテン(図示せず)
に強く圧接した状態で、感熱紙またはインクリボンと繰
り返し摩擦して発熱部3aを発熱させて印字を行うた
め、前記発熱部3a上の保護層5に、大きな剪断応力と
熱応力とが繰り返し加わり、疲労破壊モードの剥離(浮
き)が発生し易いと言う問題があった。そして、一旦保
護層5に発熱抵抗体3との境界面で剥離が発生すると、
Ta−SiO2等からなる耐酸化性に乏しいサーメット
抵抗材料は、容易に酸化されてドット抵抗値が高くな
り、発熱部3aの温度が所望の温度まで上がらず、印字
時にインクリボンのインクの転写が行われない、ドット
抜けが発生して印字不良となる。
【0008】また、特に表面の凹凸が大きいラフ紙等に
印字するためのリアルエッジタイプのサーマルヘッドが
あり、このリアルエッジタイプは基板1の端部1aに接
近した位置に、保温層2の凸条部2aを略10μm以上
に突出形成させて、該凸条部2aの上に、発熱部3aを
形成している。このようなリアルエッジタイプのサーマ
ルヘッドを搭載したラフ紙対応のプリンタは、プラテン
側に位置する前記ラフ紙の表面の凹凸を押しつぶす程
の、強い圧接力でサーマルヘッドがラフ紙を圧接しなが
ら印字して、前記ラフ紙等に対する印字品質を高めてい
る。そのため、前記リアルエッジタイプのサーマルヘッ
ドの発熱部3a上の保護層5には、より大きな剪断力と
熱応力とが繰り返し加わることになり、発熱抵抗体3や
電極4との界面における密着力不足による疲労破壊モー
ドの剥離が発生しやすく、印字寿命のバラツキが大きい
と言う問題があった。
【0009】また、前記保護層5は、耐摩耗性を高める
ために、高硬質のサイアロンあるいはSiCのSi系セ
ラミック材料を数μmの厚みで形成していたため、Si
系セラミックの保護層5は内部応力が大きく、且つ下地
層との密着界面の結合が物理結合性であるため、特に、
印字中に記録紙等の表面に異物等があると、異物の噛み
込みにより集中荷重が発生して、それによりクラックが
発生して保護層5が容易に剥離する問題があった。
【0010】本発明は上記の問題点に鑑みなされたもの
で、保護層の密着力と耐クラック性を改善し、高印字品
質と長寿命を両立させたサーマルヘッド及びその製造方
法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的の達成のため
に、本発明のサーマルヘッドは、基板と、該基板の上面
に形成した保温層と、該保温層の上面に形成した発熱抵
抗体と、該発熱抵抗体に接続される電極と、前記発熱抵
抗体及び電極の表面を被覆した保護層とからなり、前記
保護層はアルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物
を主組成としたAl−Si−O−NまたはAl−Si−
Oからなる絶縁性透明体で形成したことにある。すなわ
ち、前記保護膜は高硬度のAl−NまたはAl−O結合
を主成分に、低高度のSi−O結合を適量存在させたも
のであり、保護膜の硬度をSi−O結合の存在割合によ
り容易に調整できる。
【0012】また、本発明のサーマルヘッドは、前記保
護層のアルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物の
組成比が略60〜90mol%からなることにある。従
って、保護層のビッカース硬度を略700〜1000k
g/mm2にし得る。
【0013】また、本発明のサーマルヘッドの製造方法
は、基板の上面に保温層を形成する工程と、該保温層の
上面に発熱抵抗体を形成する工程と、該発熱抵抗体に接
続される電極を形成する工程と、前記発熱抵抗体及び前
記電極の表面を被覆する保護層を形成する工程とを有
し、該保護層を形成する工程は、AlNとSiO2また
はAlNとAl23とSiO2の焼結体からなるスパッ
タリングターゲットを用い、ArとO2またはArとN2
の混合ガスであって、O2またはN2のガスの流量が総ガ
ス流量に対して略3〜10%の混合ガスによりリアクテ
ィブスパッタリング蒸着を行い、絶縁性透明体からなる
前記保護層を積層形成することにある。すなわち、本発
明は、リアクティブスパッタ蒸着時に、活性なメタルA
lを多量に生成し、この活性なメタルAlの一部が密着
界面において発熱抵抗体の材料と化学結合を発生する。
また、O2またはN2のガス流量が総ガス流量に対して略
3〜10%であるため、透明化した保護層となる。
【0014】また、本発明のサーマルヘッドの製造方法
は、前記スパッタリングターゲットの組成比は、AlN
が略60〜90mol%、残部のSiO2が略10〜4
0mol%、または残部のAl23とSiO2が略10
〜40mol%とすることにある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッド及
びその製造方法の実施の形態を図面により説明する。図
1は本発明のサーマルヘッドの構造の要部断面図であ
り、シリコン等からなる半絶縁性の基板11の端部11
a寄りに台形状の凸条部11bをフォトリソ技術により
形成し、前記基板11の上面にスパッタリング技術によ
り、シリコンと遷移金属と酸素とからなる保温層12が
形成されている。また、該保温層12の上面にTa−S
iO2等からなる発熱抵抗体13をスパッタリング等に
より積層し、フォトリソ技術で発熱抵抗体13のパター
ンを所定の間隔をおいて整列状に形成して、前記保温層
12の凸条部12aの上方に発熱部13aをドット状に
形成している。
【0016】また、該発熱部13aを発熱させるため
に、発熱抵抗体13に電力エネルギーを供給するための
Al等からなる電極14が、フォトリソ技術により前記
発熱抵抗体13上の一方の斜面側に共通電極14aを、
また、前記発熱抵抗体13の他方の斜面側に個別電極1
4bを一対に形成している。そして、両電極14a,1
4bに挟まれた各発熱抵抗体13の発熱部13aは通電
により発熱され実際の印字に寄与する。また、前記発熱
抵抗体13および共通電極14a・個別電極14bの酸
化あるいは摩耗を防ぐために、これら発熱抵抗体13及
び電極14の露出表面に、耐酸化性、耐摩耗性、耐クラ
ック性のバランスの取れた、アルミニウム窒化物または
アルミニウム酸化物を主組成としたAl−Si−O−N
またはAl−Si−Oからなる保護層15がスパッタリ
ングにより略5μmの厚さで積層形成されて本発明のサ
ーマルヘッドが構成されている。
【0017】そして、前記保護層15の形成方法として
は、AlNが略60〜90mol%、SiO2が略10
〜40mol%の2元系の焼結体、またはAlNが略6
0〜90mol%、残部のAl23とSiO2とが合わ
せて略10〜40mol%の3元系の焼結体からなるス
パッタリングターゲットを用い、ArとO2またはAr
とN2の混合ガスであって、反応性ガスのO2またはN2
のガス流量が、Ar+O2またはAr+N2の総ガス流量
に対して略3〜10%の混合ガスによりリアクティブス
パッタ蒸着を行うものである。なお、前記2元系及び3
元系の焼結体を用い、Ar+O2の混合ガスでリアクチ
ブスパッタ蒸着を行った場合には、AlNはAl−Oに
変化し、軽元素であるNは消失してしまい、保護層15
の材料はAl−Si−Oとなる。
【0018】前記保護層15は、高硬度のAlNに対し
て、低硬度のSiO2を適量添加した焼結体をスパッタ
リングターゲットとしてリアクティブスパッタ蒸着した
ものであり、生成した保護層15の硬度は成膜条件に影
響されずに、スパッタリングターゲットに添加された低
硬度のSiO2の添加量に支配される。このSiO2の添
加量を前述した範囲内に調整することにより、保護層1
5のビッカース硬度を700〜1000kg/mm2
範囲に制御でき、保護層15の耐クラック性と耐摩耗性
のバランスを容易にとることができるため、印字寿命を
長寿命化することが可能となる。
【0019】また、AlNを含有するターゲットをリア
クティブスパッタ蒸着するときに生成する多量の活性な
メタルAlは、酸化物自由生成エネルギーが(−400
kcal/mol)とSiのそれ(−200kcal/
mol)に対して2倍の酸化性を有しており、その活性
なメタルAlを用いて下地の発熱抵抗体材料と化学結合
を発生させることにより、密着性を著しく向上させるこ
とができ、剪断応力の繰り返しによる保護層の疲労剥離
寿命を長寿命化することが可能となる。
【0020】また、リアクティブスパッタ蒸着の際の、
反応ガスのO2またはN2のガス流量を、Ar+O2また
はAr+N2の総ガス流量に対して略3〜10%とする
ものであり、スパッタレートの低下なく、透明な保護層
15が得られる。このような透明化した保護層15は、
従来の着色したものに対して保護層15内部の蓄熱性が
低減でき、熱応答性が改善され高速印字における印字品
位を向上する作用を有する。また、前記保護層15はア
ルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物を主成分と
するものであり、前記電極14がAl配線からなる場合
には、同種の材料であるため、保護層15の密着性を低
下させたり、電極14の耐食性を低下させたりする問題
も解消できる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の保護層の実施例について、説
明する。 (実施例1)AlN90mol%、SiO210mol
%の2元系の焼結体を作成した。該焼結体をスパッタリ
ングターゲットとして、成膜ガス圧が0.5Paで、A
rとO2の混合ガス(Arのガス流量150SCCM、
2のガス流量5SCCM)中で、リアクティブスパッ
タ蒸着を行い、5μmの厚さの透明な保護層を得た。
【0022】(実施例2)前記実施例1に記載したスパ
ッタリングターゲットを用いて、成膜ガス圧が0.5P
aで、ArとN2の混合ガス(Arのガス流量150S
CCM、N2のガス流量15SCCM)中で、リアクテ
ィブスパッタ蒸着を行い、5μmの厚さの透明な保護層
を得た。
【0023】(実施例3)AlN60mol%、SiO
230mol%、Al2310mol%の3元系の焼結
体を作成した。該焼結体をスパッタリングターゲットと
して、成膜ガス圧が0.5Paで、ArとO2の混合ガ
ス(Arのガス流量150SCCM、O2のガス流量5
SCCM)中で、リアクチブスパッタ蒸着を行い、5μ
mの厚さの保護層を得た。
【0024】(実施例4)前記実施例3に記載したスパ
ッタリングターゲットを用いて、成膜ガス圧が0.5P
aで、ArとN2の混合ガス(Arのガス流量150S
CCM、N2のガス流量10SCCM)中で、リアクテ
ィブスパッタ蒸着を行い、5μmの厚さの透明な保護層
を得た。
【0025】(実施例5)AlN60mol%、Al2
330mol%、SiO210mol%の3元系の焼結
体を作成した。該焼結体をスパッタリングターゲットと
して、成膜ガス圧が0.5Paで、ArとO2の混合ガ
ス(Arのガス流量150SCCM、O2のガス流量5
SCCM)中で、リアクチブスパッタ蒸着を行い、5μ
mの厚さの保護層を得た。
【0026】(実施例6)前記実施例5に記載したスパ
ッタリングターゲットを用いて、成膜ガス圧が0.5P
aで、ArとN2の混合ガス(Arのガス流量150S
CCM、N2のガス流量10SCCM)中で、リアクテ
ィブスパッタ蒸着を行い、5μmの厚さの透明な保護層
を得た。
【0027】(比較例1)βサイアロンをスパッタリン
グターゲットとして、成膜ガス圧が0.5Paで、Ar
ガスのみでスパッタ蒸着を行い、5μmの厚さの茶褐色
の保護層を得た。
【0028】(比較例)SiCをスパッタリングターゲ
ットとして、成膜ガス圧が0.5Paで、Arガスのみ
でスパッタ蒸着を行い、5μmの厚さの黒色の保護層を
得た。
【0029】次に、上記実施例1〜6のサーマルヘッド
と上記比較例1、2で作成した従来のサーマルヘッドと
の特性を測定した。図2に示すグラフは、サーマルヘッ
ドの熱特性を評価するステップストレステスト(SS
T)を行った結果で、縦軸が発熱抵抗体の抵抗値の変化
率で、横軸が発熱部の温度の変化を示している。グラフ
中の曲線はサーマルヘッドが破壊するまで通電して、発
熱部の温度を上げて、この温度変化に対する抵抗値の変
化率を表すSSTカーブである。
【0030】まずTaーSiO2からなる発熱抵抗体の
安定化熱処理(アニーリング)を例えば700℃とする
と、この700℃以上の領域において、前記従来例のサ
ーマルヘッドの保護層の前記SSTカーブは、温度がA
点まで上昇した時に発熱抵抗体の表面と保護層との境界
面に剥離が発生して、この剥離によるストレスで保護層
にクラックが発生してサーマルヘッドが破壊し、サーマ
ルヘッドの温度上昇はA点でストップして、抵抗値が急
激に上昇する。このときのA点の抵抗値の降下率は略0
〜10%である。
【0031】これに対して、本発明に係る前記実施例1
〜6のサーマルヘッドの保護層15のSSTカーブは、
前記A点より温度が高く上昇しても保護層15は剥離が
発生しない。そして、発熱部13aの温度がB点まで上
昇すると、発熱部13aの一部が高温で溶融して、この
溶融によるストレスで保護層15にストレスクラックが
発生してサーマルヘッドは破壊している。そして、この
ときの抵抗値の降下率は略15〜20%と、前記従来例
のサーマルヘッドに対して本発明のサーマルヘッドの方
が、著しく抵抗値が降下してから発熱部13a上部の保
護層15にストレスクラックが発生して破壊していた。
即ち、前記ステップストレステスト(SST)の抵抗値
の降下率の大きさで、発熱抵抗体と保護層との密着力と
耐クラック性の評価指標とすることができる。
【0032】また、図3は本発明に係る前記実施例1〜
6のサーマルヘッドを前記ステップストレステストで、
B点まで温度上昇させて、発熱部13a上部の保護層1
5にストレスクラック15bが発生して破壊した時の概
略図である。発熱部13aの中心部には、該中心部が異
常に高温化した時に発生する発熱抵抗体13が溶融した
ときの溶融痕15aと、この溶融痕15aによるストレ
スクラック15bが発生している。そして、本発明に係
るサーマルヘッドは、前記従来例のサーマルヘッドのよ
うに、クラック15b部分から剥離伝播(変色域の拡
大)がないことからも、明らかに本発明のサーマルヘッ
ドの保護層15の密着力が優れていることが証明でき
る。
【0033】また、図4に示すグラフは、本発明に係る
前記実施例1〜6のサーマルヘッドを各3個、従来例に
係る前記比較例1、2のサーマルヘッドを各3個用意
し、インクリボンを用いる同一の溶融熱転写印字条件下
で、印字寿命の比較テストを行った結果で、横軸が発熱
抵抗体のドット抵抗値に異常が発生した時の印字文字数
である。その結果、前記従来例のサーマルヘッドAは1
千万字〜7千万字の印字で発熱抵抗体と保護層との層間
剥離によるストレスクラックで、発熱抵抗体のドット抵
抗値に異常が発生した。しかし、本発明に係るサーマル
ヘッドBは、8千万字〜1億2千万字の印字まで異常が
発生せず、明らかに印字寿命において顕著な差が確認さ
れ、発熱抵抗体13と保護層15との境界面における層
間剥離の発生を防止することができることの結果を得
た。この結果から本発明のサーマルヘッドは長寿命であ
ることが明白となった。
【0034】更に、図5に示すグラフは、サーマルヘッ
ドの発熱抵抗体に連続パルスの電力を印加した時の熱応
答カーブを、横軸を時間、縦軸を温度で示したもので、
着色した保護層からなる従来例のサーマルヘッドAに対
して、本発明に係る透明な保護層からなるサーマルヘッ
ドBは通電OFF時の温度降下の熱応答性に優れてお
り、高速印字性に適するものとなっている。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のサーマル
ヘッドは、保護層がアルミニウム窒化物またはアルミニ
ウム酸化物を主組成としたAl−Si−O−NまたはA
l−Si−Oからなる絶縁性透明体で形成したものであ
り、高硬度のAl−NまたはAl−O結合と低硬度のS
i−O結合との割合を調整することにより、保護層のビ
ッカース硬度を略700〜1000kg/mm2の範囲
に設定でき、異物の噛み込み等に対する耐クラック性と
耐摩耗性とのバランスがよくて、印字寿命が長寿命で、
また、絶縁性の透明体であるため、熱応答性を高めて高
速印字性を改善したサーマルヘッドを提供することがで
きる。
【0036】本発明のサーマルヘッドの製造方法は、該
保護層を形成する工程が、AlNとSiO2またはAl
NとAl23とSiO2の焼結体からなるスパッタリン
グターゲットを用い、ArとO2またはArとN2の混合
ガスであって、O2またはN2のガスの流量が総ガス流量
に対して略3〜10%の混合ガスによりリアクティブス
パッタリング蒸着を行い、絶縁性透明体からなる前記保
護層を積層形成するものであり、リアクティブスパッタ
蒸着時に、活性なメタルAlを多量に生成し、この活性
なメタルAlの一部が密着界面において発熱抵抗体の材
料と化学結合を発生する。従って、保護層と発熱抵抗体
との界面での剥離(浮き)の発生を抑えることができ、
長寿命化を図ることができる。また、O2またはN2のガ
ス流量が総ガス流量に対して略3〜10%とすることに
より、保護層を透明化し、熱応答性を高めることができ
る。
【0037】また、本発明の保護層は、材料が安価で、
反応ガスのO2またはN2のどちらで成膜しても、製造工
程における硬度の変化が少なく制御も容易で、単層で密
着力、耐クラック性、絶縁性、熱応答性に優れ、長寿命
で高印字品位のサーマルヘッドを安価に製造できる効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサーマルヘッドの要部断面図である。
【図2】本発明と従来例のサーマルヘッドのSSTカー
ブを比較するグラフである。
【図3】本発明のサーマルヘッドのステップストレステ
スト(SST)で発生したクラックを説明する概略図で
ある。
【図4】本発明と従来例のサーマルヘッドの印字寿命試
験結果示す図である。
【図5】本発明と従来例のサーマルヘッドの連続パルス
の電力を印加した時の熱応答カーブを示すグラフであ
る。
【図6】従来のサーマルヘッドの要部断面図である。
【符号の説明】 1、11 基板 2、12 保温層 3、13 発熱抵抗体 4、14 電極 4a、14a 共通電極 4b、14b 個別電極 5、15 保護層

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、該基板の上面に形成した保温層
    と、該保温層の上面に形成した発熱抵抗体と、該発熱抵
    抗体に接続される電極と、前記発熱抵抗体及び電極の表
    面を被覆した保護層とからなり、前記保護層はアルミニ
    ウム窒化物またはアルミニウム酸化物を主組成としたA
    l−Si−O−NまたはAl−Si−Oからなる絶縁性
    透明体で形成したことを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 【請求項2】 前記保護層のアルミニウム窒化物または
    アルミニウム酸化物の組成比が略60〜90mol%か
    らなることを特徴とする請求項1記載のサーマルヘッ
    ド。
  3. 【請求項3】 基板の上面に保温層を形成する工程と、
    該保温層の上面に発熱抵抗体を形成する工程と、該発熱
    抵抗体に接続される電極を形成する工程と、前記発熱抵
    抗体及び前記電極の表面を被覆する保護層を形成する工
    程とを有し、前記保護層を形成する工程は、AlNとS
    iO2またはAlNとAl23とSiO2の焼結体からな
    るスパッタリングターゲットを用い、ArとO2または
    ArとN2の混合ガスであって、O2またはN2のガスの
    流量が総ガス流量に対して略3〜10%の混合ガスによ
    りリアクティブスパッタ蒸着を行い、絶縁性透明体から
    なる前記保護層を積層形成することを特徴とするサーマ
    ルヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記スパッタリングターゲットの組成比
    は、AlNが略60〜90mol%、残部のSiO2
    略10〜40mol%、または残部のAl23とSiO
    2が略10〜40mol%とすることを特徴とするサー
    マルヘッドの製造方法。
JP18706897A 1997-07-11 1997-07-11 サーマルヘッドおよびその製造方法 Withdrawn JPH1134372A (ja)

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