JPH11335893A - 着色アルミニウム材の製造方法 - Google Patents

着色アルミニウム材の製造方法

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JPH11335893A
JPH11335893A JP15687598A JP15687598A JPH11335893A JP H11335893 A JPH11335893 A JP H11335893A JP 15687598 A JP15687598 A JP 15687598A JP 15687598 A JP15687598 A JP 15687598A JP H11335893 A JPH11335893 A JP H11335893A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高電圧型電解質を含有する電解液中で高電圧
で陽極酸化処理して得られるアルミニウム材の陽極酸化
皮膜を、陽極酸化電圧よりも低い電圧で短時間に電解着
色できる着色アルミニウム材の製造方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウム材を高電圧型電解質を含有
する電解液中で30V以上の高電圧で陽極酸化処理を行
った後、第一の態様によれば、導電率(pH2以下の酸
性浴の場合、強酸を除いたときの導電率)を3.0〜2
0mS/cmに調整した電解着色液中で、陽極酸化処理
時の電圧以下でかつその1/2以上のピーク電圧を有す
る交流電圧を印加して電解着色処理を行い、第二の態様
によれば、金属塩を含有する電解着色液中で、(+)成
分のピーク電圧が(−)成分のピーク電圧よりも大きな
交流電圧、好ましくは{(+)成分のピーク電圧}/
{(−)成分のピーク電圧}の比が2〜12の範囲内に
ある交流電圧を印加して電解着色処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着色アルミニウム
材の製造方法に関し、さらに詳しくは、アルミニウム材
を高電圧型電解質を含有する電解液中で陽極酸化処理し
て形成される陽極酸化皮膜を電解着色する技術に関す
る。なお、本明細書中において、アルミニウム材とは、
アルミニウム及びアルミニウム合金を総称するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年の消費生活、需要嗜好の多様化に伴
って、アルミニウム材製品についても種々の色に着色
し、又は着色模様を施すことが要求されるようになって
いる。従来、陽極酸化処理したアルミニウム材の着色方
法としては、金属塩を含有する浴中での交流電解による
電解着色法がよく知られている。特に、高電圧型電解質
を含有する電解液中で高電圧で陽極酸化処理して得られ
る陽極酸化皮膜、例えばリン酸や有機酸を用いて高電圧
で陽極酸化して得られる陽極酸化皮膜は、緻密なバリヤ
ー層を有し、耐食性や耐摩耗性等に優れるため、このよ
うな陽極酸化皮膜を電解着色することが望まれる場合が
ある。
【0003】しかしながら、交流電解着色法では、陽極
酸化処理時の印加電圧(以下、陽極酸化電圧という)よ
りもかなり低い電圧では着色できないという難点があ
る。これは、交流電流の(−)成分は陽極酸化電圧の影
響を受けないが、(+)成分はそのピーク電圧が陽極酸
化電圧の7〜8割程度以上となってから初めて流れ始め
るためである。また、交流電解着色時の電圧が高過ぎる
と、陽極酸化皮膜はアルミニウム地金から剥離するとい
う問題が発生する。特に前記したような高電圧で陽極酸
化処理して得られる酸化皮膜に電解着色を行う場合、高
電圧の交流が必要になり、省エネルギーの観点から望ま
しくなく、しかもそのために陽極酸化皮膜がアルミニウ
ム地金から剥離し易くなるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記したよ
うな従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その
基本的な目的は、高電圧型電解質を含有する電解液中で
陽極酸化処理して得られるアルミニウム材の陽極酸化皮
膜を、陽極酸化電圧よりも低い電圧で電解着色でき、皮
膜性能に優れた着色酸化皮膜を形成できる着色アルミニ
ウム材の製造方法を提供することにある。さらに本発明
の目的は、屋外で用いられても充分な耐光性、耐久性を
示すと共に、変・褪色もなく、堅牢で色鮮やかな所望の
色の着色酸化皮膜を有するアルミニウム材を比較的低濃
度の金属塩を含有する電解着色液中で短時間に製造でき
る方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の第一の態様によれば、アルミニウム材を高
電圧型電解質を含有する電解液中で30V以上の高電圧
で陽極酸化処理を行った後、金属塩を含有し、導電率
(pH2以下の酸性浴の場合には強酸を除いたときの導
電率をいう)が3.0〜20mS/cmの電解着色液中
で、陽極酸化処理時の電圧以下でかつその1/2以上の
ピーク電圧を有する交流電圧を印加して電解着色処理を
行うことを特徴とする着色アルミニウム材の製造方法が
提供される。好適な態様においては、金属塩を0.5〜
100g/lの割合で含有する電解着色液を用いる。
【0006】本発明の第二の態様によれば、アルミニウ
ム材を高電圧型電解質を含有する電解液中で30V以上
の高電圧で陽極酸化処理を行った後、金属塩を含有する
電解着色液中で、(+)成分のピーク電圧が(−)成分
のピーク電圧よりも大きな交流電圧を印加して電解着色
処理を行うことを特徴とする着色アルミニウム材の製造
方法が提供される。好適な態様においては、上記電解着
色処理時の交流電圧の(+)成分のピーク電圧は、陽極
酸化処理時の電圧以下でかつその1/2以上であり、ま
た、上記交流電圧の{(+)成分のピーク電圧}/
{(−)成分のピーク電圧}の比が2〜12の範囲内に
ある。なお、本明細書中において、(−)成分のピーク
電圧は絶対値で表わした値を意味する。
【0007】
【発明の実施の形態】従来の交流電解着色法は、主とし
て、アルミニウム材を硫酸水溶液中で陽極酸化処理して
得られる陽極酸化皮膜(以下、特に言及するときには硫
酸アルマイトという)を対象としている。この場合、交
流電解は比較的低い電圧で行うことができ、一般に陽極
酸化処理時の使用電圧(約13〜16V)近辺、すなわ
ちAC8〜25V程度で行われている。交流電解時の使
用電圧が8V程度以下では電流が流れないため着色せ
ず、一方、25V程度以上になると電流が流れすぎ、陽
極酸化皮膜が剥離してしまう現象(皮膜破壊)が多く見
られる。これは、陽極酸化皮膜の着色機構として、以下
のような現象が生ずるからである。
【0008】(1)電解着色の際には、交流電解により
陽極酸化皮膜が交互に陽極になっている時(瞬間)と陰
極になっている時(瞬間)が必要であり、それぞれの時
期に酸素の発生(発生した酸素による金属の酸化・固定
と陽極酸化皮膜の修復が行われると理解されている)と
金属イオンを引き付ける作用(金属イオンの陽極酸化皮
膜細孔内への泳動析出)を生ずることが必要とされてい
る。 (2)陽極酸化処理を15V程度で行って硫酸アルマイ
トを生成した場合、陽極酸化皮膜が陽極の時には交流電
圧の(+)成分のピーク電圧が12V程度以下では電流
が流れない(流れた場合に着色に不可欠な酸素が発生す
る)。逆に、陽極酸化皮膜が陰極の時には交流電圧の
(−)成分のピーク電圧が1〜2V程度でも電流は流
れ、水素が発生する。 (3)また、陽極酸化皮膜が陰極の時にはその抵抗がな
いため、電圧の増大に伴って流れる電流が直線的に多く
なる。一方、陽極の時には、酸素の発生により陽極酸化
皮膜孔底のバリヤー層が成長し、これが抵抗となるた
め、電流は次第に流れなくなる。従って、AC電圧(ピ
ーク電圧はその1.41倍)が約8V以上(ピーク電圧
が約12V以上)で酸素の発生と金属イオンの引き付け
が起こり、硫酸アルマイトが着色し、約25V以上では
水素の発生が多くなり、皮膜剥離を生じ易くなる。
【0009】上記硫酸アルマイトについての考察は、高
電圧型電解質を含有する電解液中で陽極酸化処理した場
合についても当てはまる。但し、この場合、より高い電
圧で交流電解着色を行う必要があるため、前記した問題
はより厳しいものとなる。実際、リン酸水溶液中で12
0Vで陽極酸化処理したアルミニウム材は、AC80V
程度で従来の電解着色液を用いて交流電解すると大電流
が流れ、陽極酸化皮膜側から多量のガス(水素)が発生
し、陽極酸化皮膜が剥離してしまう。この場合に前記硫
酸アルマイトについての考察をさらにもう一歩進めて適
用すると、120V程度の陽極酸化処理により生成した
皮膜についても、酸素が適当に発生し、水素があまり発
生しない条件で交流電解着色を行えばよいことになる。
このような条件にするために、本発明によれば2つの方
策が提案され、その第一の態様は、陽極酸化皮膜が陽極
のときには酸素が適当に発生するような交流電圧に設定
すると共に、陰極のときに電流があまり流れないように
電解着色液組成を調整すること、すなわち電解着色液の
導電率を一定範囲に規定することを特徴としており、一
方、第二の態様は、交流電圧の(+)成分のピーク電圧
が(−)成分のピーク電圧よりも大きな特殊な波形を用
いることを特徴としている。
【0010】すなわち、本発明の第一態様の着色アルミ
ニウム材の製造方法によれば、アルミニウム材を高電圧
型電解質を含有する電解液中で30V以上の高電圧で陽
極酸化処理を行った後、導電率(pH2以下の酸性浴の
場合には強酸を除いたときの導電率をいう)が3.0〜
20mS/cmの範囲内となるように調整した電解着色
液中で、皮膜破壊を生じないような陽極酸化処理時の電
圧以下でかつその1/2以上のピーク電圧を有する交流
電圧を印加し、例えば前記の例で言えばピーク電圧が約
80〜120Vの正弦波を用いて電解着色処理を行うも
のである。この方法は、電解着色液中の金属塩濃度をか
なり低くでき、しかも短時間処理で陽極酸化皮膜を濃色
に着色できるという特徴を有する。ここでいう導電率
3.0〜20mS/cmとは、電解着色液のpHが約3
〜7の弱酸〜中性浴の場合にはその電解着色液の導電率
をいい、電解着色液のpHが2以下の酸性浴の場合、強
酸を除いた電解着色液の導電率をいう。これは、電解着
色液中に硫酸、スルファミン酸、酢酸、シュウ酸のよう
な強酸が存在する場合、電解着色時に陽極酸化皮膜の修
復が行われるため、このような強酸を含む電解着色液
(原液)で規定できない(陽極酸化皮膜が陰極のときに
電流があまり流れないように規定した意味にならない)
からである。電解着色液の導電率が上記範囲内となるよ
うに調整することにより、陽極酸化皮膜が陽極のときに
酸素が適当に発生するような交流電圧に設定しても、陰
極のときに電流があまり流れないので皮膜破壊を生ずる
ことはない。
【0011】電解着色液の導電率に影響を及ぼす因子と
しては、電解液中に含まれる金属塩や酸が考えられる
が、大きな影響を及ぼす成分として各種アンモニウム塩
があり、最も大きな影響を及ぼす成分としては硫酸アン
モニウムがある。従って、本発明の方法で電解着色液の
導電率を前記範囲に調整する最も好適な方法としては、
硫酸アンモニウムの添加が挙げられる。硫酸アンモニウ
ムを添加する場合、電解着色液中の硫酸アンモニウム含
有量は約30g/l以下が適当であり、好ましくは0〜
15g/l、より好ましくは3〜10g/l程度であ
る。また、電解着色液の導電率を前記範囲に調整するた
めには、液中の金属塩の濃度を低く、例えば0.5〜1
00g/l程度に調整したり、電解着色液中の強酸の酸
基の一部を弱酸の酸基と置換する方法も有効である。一
般に電解着色液は強酸の金属塩、例えば硫酸ニッケル等
を含有しているが、硫酸酸基を含有する電解着色液は、
電導度がどうしても高くなってしまう。そのため、電解
着色液中にホウ酸などの弱酸を添加して、電導度を低目
に調整することが好ましい。
【0012】一方、本発明の第二態様の着色アルミニウ
ム材の製造方法は、アルミニウム材を高電圧型電解質を
含有する電解液中で30V以上の高電圧で陽極酸化処理
を行った後、金属塩を含有する電解着色液中で、(+)
成分のピーク電圧が(−)成分のピーク電圧よりも大き
い、好ましくは{(+)成分のピーク電圧}/{(−)
成分のピーク電圧}の比が2〜12の範囲内にある交流
電圧を印加して電解着色処理を行うものである。例え
ば、前記した例で言えば、(+)成分のピーク電圧が約
80〜120V(通常の交流の呼び値では約50〜90
V)、(−)成分のピーク電圧が約10〜35Vとなる
ように設定した波形を用いて電解着色処理を行う。この
方法は、従来の硫酸アルマイトを電解着色するための比
較的に金属塩濃度が高い電解着色液をそのまま用いて行
うことができ、短時間処理で陽極酸化皮膜を濃色に着色
できるという特徴を有する。なお、上記第二態様の方法
においても、電解着色処理時の交流電圧の(+)成分の
ピーク電圧が陽極酸化処理時の電圧以下でかつその1/
2以上となるように設定し、また電解着色液の導電率を
前記した範囲内となるように調整することが好ましい。
【0013】このように、本発明の方法によれば、高電
圧型電解質を含有する電解液中で30V以上の高電圧で
陽極酸化処理して形成される陽極酸化皮膜であっても、
陽極酸化条件に応じて電解着色液組成(導電率)や交流
電解処理電圧を適切に選定することにより、皮膜破壊を
生ずることなく短時間に電解着色することができる。本
発明の方法によれば、電解着色液中の金属塩の種類や濃
度を変えることにより、種々の色調の着色アルミニウム
材を製造することができ、また、マスキング方法など他
の適当な方法と組み合わせることにより、多色模様に着
色することもできる。従って、本発明の方法で得られる
着色アルミニウム材は、ビルや住宅用の建材、サッシ、
カーテンウォール、パネル、門扉等の建築内外装用形材
だけでなく、オーディオ機器等の電気製品フレーム、看
板等の景観材など、各種の分野で用いることができる。
【0014】以下、本発明の着色アルミニウム材の製造
方法の各工程について詳しく説明する。まず、必要に応
じてアルミニウム材表面に脱脂、エッチング、中和等の
前処理を施す。次いで、前記のように前処理したアルミ
ニウム材を陽極に接続して、高電圧型電解質を含有する
酸性電解液中で、直流もしくはこれに類似の電流波形又
は交流波形、交直重畳波形を使用して、前記アルミニウ
ム材を電解酸化して陽極酸化皮膜を形成する。電解液と
しては、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、スルファミ
ン酸、酒石酸、スルホサリチル酸等の高電圧型有機酸、
リン酸、ホウ酸、ホウ酸アンモン等の高電圧型無機酸、
及びそれらの混合物を含有する電解液を用いることがで
きる。これらはいずれも高電圧型電解質であり、用いる
電解質によって陽極酸化電圧は異なるが、電圧30〜2
00V、好ましくは30〜150V程度である。上記の
ような高電圧型電解質自体は周知であり、例えば特公昭
55−24510号などに記載されている。電解液中の
高電圧型電解質の濃度としては、0.05〜20W/V
%程度が適当である。
【0015】前記のように陽極酸化されたアルミニウム
材は、次いで電解着色法により着色される。電解着色法
に用いられる金属塩としては、例えばニッケル、コバル
ト、クロム、銅、錫、カドミウム、チタン、マンガン、
モリブデン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、
鉄、金、銀、鉛、亜鉛などの硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、
シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クロム酸塩、リン酸塩
などが挙げられる。電解着色は、これらの金属塩と、鉱
酸又は有機酸(例えばホウ酸、硫酸、シュウ酸、リン
酸、クロム酸、スルフアミン酸、酢酸)、好ましくは弱
酸、それらのアンモニウム塩、アミノ塩、イミノ塩等を
含む着色浴中で、前記陽極酸化アルミニウム材を交流電
解又は交直重畳電解などの適宜の電解処理して行う。そ
れによって、陽極酸化皮膜はブロンズ、アンバー、黒、
グレー、緑、青、褐色などの各種色調に着色される。
【0016】電解着色の条件としては、前記したよう
に、本発明の第一態様の方法においては、導電率が所定
範囲内となるように調整した電解着色液中で、皮膜破壊
を生じないような陽極酸化処理時の電圧以下でかつその
1/2以上のピーク電圧を有する交流電圧を印加して行
う。電解着色液中の金属塩の濃度は、前記したように
0.5〜100g/l程度、好ましくは1.0〜70g
/l程度が適当である。一方、本発明の第二態様の方法
においては、(+)成分のピーク電圧が(−)成分のピ
ーク電圧よりも大きい、好ましくは{(+)成分のピー
ク電圧}/{(−)成分のピーク電圧}の比が2〜12
の範囲内にある交流電圧を用いて電解着色処理を行う。
この方法の場合、従来の硫酸アルマイトを電解着色する
ための比較的に金属塩濃度が高い電解着色液をそのまま
用いて行うことができるが、好ましくは前記したように
金属塩濃度としては0.5〜100g/l程度が望まし
い。なお、この第二態様の方法においても、電解着色処
理時の交流電圧の(+)成分のピーク電圧が陽極酸化処
理時の電圧以下でかつその1/2以上となるように設定
し、また電解着色液の導電率が前記範囲内となるように
硫酸アンモニウムなどの各種アンモニウム塩やホウ酸な
どの弱酸を添加することが好ましい。このようにして得
られたアルミニウム材の着色皮膜には、さらに必要に応
じて封孔処理やクリヤー塗装を施すことができる。
【0017】以下、実施例を示して本発明についてさら
に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定され
るものでないことはもとよりである。
【0018】実施例1 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を30g/
l、マレイン酸を30g/l含有する30℃の電解液
中、DC120Vで50分間陽極酸化を行い、皮膜厚さ
約9μmの陽極酸化皮膜を生成させた。また、参考のた
めに、常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をした
アルミニウム材A1050Pを陽極とし、硫酸を180
g/l含有する20℃の電解液中、DC15V(電流密
度1.0A/dm2 )の条件で35分間陽極酸化を行
い、皮膜厚さ約10μmの陽極酸化皮膜を生成させた。
その後、得られた各陽極酸化アルミニウム材を、硫酸ニ
ッケル(6水化物)20g/l、ホウ酸7g/l、硫酸
マグネシウム(7水化物)4g/l、硫酸アンモニウム
9g/lを含有し、アンモニア水を加えてpH5.5に
調整した電解着色浴(導電率=18mS/cm)中で室
温で3分間、表1に示す種々の電圧で交流電解を行い、
陽極酸化皮膜を着色した。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】 表1に示されるように、高電圧型陽極酸化皮膜であって
も、導電率が所定範囲内となるように調整した電解着色
液を用い、交流電解電圧を適切な範囲内に設定すれば、
陽極酸化皮膜の破壊を生じることなく、交流電解条件に
応じた種々の色調に電解着色できることがわかる。
【0020】比較例1 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を30g/
l、マレイン酸を30g/l含有する30℃の電解液
中、DC120Vで50分間陽極酸化を行い、皮膜厚さ
約9μmの陽極酸化皮膜を生成させた。また、参考のた
めに、常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をした
アルミニウム材A1050Pを陽極とし、硫酸を180
g/l含有する20℃の電解液中、DC15V(電流密
度1.0A/dm2 )の条件で35分間陽極酸化を行
い、皮膜厚さ約10μmの陽極酸化皮膜を生成させた。
その後、得られた各陽極酸化アルミニウム材を、硫酸ニ
ッケル(6水化物)55g/l、ホウ酸44g/l、硫
酸マグネシウム(7水化物)25g/l、硫酸アンモニ
ウム55g/lを含有するpH約5.5の電解着色浴
(導電率=59mS/cm)中で室温で3分間、表2に
示す種々の電圧で交流電解を行い、陽極酸化皮膜を着色
した。その結果を表2に示す。
【0021】
【表2】 表2に示されるように、高電圧型陽極酸化皮膜の場合に
は、導電率が本発明で規定する所定範囲内となるように
調整しなかった従来の硫酸アルマイト電解着色用の電解
着色液を用いた場合、交流電解電圧が低いと陽極酸化皮
膜を着色できず、一方、交流電解電圧が高くなると陽極
酸化皮膜の破壊を生じた。
【0022】実施例2 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を30g/
l、マレイン酸を30g/l含有する30℃の電解液
中、DC120Vで50分間陽極酸化を行い、皮膜厚さ
約9μmの陽極酸化皮膜を生成させた。その後、得られ
た陽極酸化アルミニウム材を、硫酸40g/l、硫酸第
一錫3g/l、硫酸アンモニウム30g/l、チオ硫酸
ナトリウム0.6g/lを含有する電解着色浴(以下、
酸性錫浴という。硫酸を除いたものの導電率=36mS
/cm)、その5倍希釈液(硫酸第一錫のみ同一濃度に
調整した。pH=1以下、硫酸を除いたものの導電率=
9.5mS/cm)又は10倍希釈液(硫酸第一錫のみ
同一濃度に調整した。pH=1、硫酸を除いたものの導
電率=6.5mS/cm)中でそれぞれ表3に示す種々
の電圧で交流電解を行い、陽極酸化皮膜を着色した。そ
の結果を表3に示す。
【表3】
【0023】実施例3 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、シュウ酸を10g/
l含有する電解液中、DC120Vで25分間陽極酸化
を行い、陽極酸化皮膜を生成させた。次いで、このアル
ミニウム材を、硫酸ニッケル(6水化物)15g/l、
ホウ酸4g/l、硫酸マグネシウム(7水化物)4g/
l、チオ硫酸アンモニウム1.0g/lを含有するpH
5.6の電解着色浴(導電率=7.3mS/cm)中、
AC75Vで3分間、交流電解を行ったところ、陽極酸
化皮膜は灰褐色に着色された。
【0024】実施例4 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を40g/l
含有する電解液中、DC140Vで40分間陽極酸化を
行い、陽極酸化皮膜を生成させた。次いで、このアルミ
ニウム材を、硫酸ニッケル(6水化物)15g/l、ホ
ウ酸4g/l、硫酸マグネシウム(7水化物)4g/
l、チオ硫酸アンモニウム1.0g/lを含有するpH
5.6の電解着色浴(導電率=7.3mS/cm)中、
AC75Vで1分間、交流電解を行ったところ、陽極酸
化皮膜は褐色に着色された。他方、AC80Vで3分
間、交流電解を行ったところ、陽極酸化皮膜は灰黒色に
着色された。
【0025】実施例5 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を40g/l
含有する電解液中、DC140Vで40分間陽極酸化を
行い、陽極酸化皮膜を生成させた。次いで、このアルミ
ニウム材を、硫酸ニッケル(6水化物)15g/l、ホ
ウ酸4g/l、硫酸マグネシウム(7水化物)4g/
l、硫酸アンモニウム9g/l、チオ硫酸アンモニウム
1.0g/lを含有するpH約5.6の電解着色浴(導
電率=18mS/cm)中、AC80Vで1分間、交流
電解を行ったところ、陽極酸化皮膜は黒色に着色され
た。
【0026】実施例6 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を30g/
l、マレイン酸を50g/l含有する30℃の電解液
中、DC140V(電流密度1.0A/dm2 )の条件
で30分間陽極酸化を行い、陽極酸化皮膜を生成させ
た。次いで、このアルミニウム材を、硫酸ニッケル(6
水化物)30g/l、ホウ酸20g/l、硫酸マグネシ
ウム(7水化物)20g/l、硫酸アンモニウム30g
/lを含有し、アンモニア水でpH6に調整した電解着
色浴(導電率=42mS/cm)中、図1に示すように
電源電圧が(+)成分のピーク電圧75V、(−)成分
のピーク電圧15Vの正弦波(60Hz)を用いて3分
間交流電解を行ったところ、陽極酸化皮膜は濃いブロン
ズ色に着色された。なお、上記のように高導電率の電解
着色液を用いた場合、通常の交流電解では皮膜破壊が生
じるが、本実施例では上記のような特殊電源波形を用い
たことにより良好に着色できた。
【0027】
【発明の効果】以上のように、本発明の方法によれば、
高電圧型電解質を含有する電解液中で30V以上の高電
圧で陽極酸化して得られるアルミニウム材の陽極酸化皮
膜を、皮膜破壊を生じることなく、陽極酸化電圧よりも
低い電圧で短時間に電解着色できる。また、第一態様の
方法によれば比較的低濃度の金属塩を含有する電解着色
液を用いることができ、コスト的にも有利である。いず
れの態様の方法によっても、得られる着色アルミニウム
材は、皮膜性能に優れ、屋外で用いられても充分な耐光
性、耐久性を示すと共に、変・褪色もなく、堅牢で色鮮
やかな所望の色の着色酸化皮膜を有するので、各種分野
において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例6における電解着色処理に用いた交流電
圧の波形を示すグラフである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム材を高電圧型電解質を含有
    する電解液中で30V以上の高電圧で陽極酸化処理を行
    った後、金属塩を含有し、導電率(pH2以下の酸性浴
    の場合には強酸を除いたときの導電率をいう)が3.0
    〜20mS/cmの電解着色液中で、陽極酸化処理時の
    電圧以下でかつその1/2以上のピーク電圧を有する交
    流電圧を印加して電解着色処理を行うことを特徴とする
    着色アルミニウム材の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記電解着色液が、金属塩を0.5〜1
    00g/lの割合で含有することを特徴とする請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム材を高電圧型電解質を含有
    する電解液中で30V以上の高電圧で陽極酸化処理を行
    った後、金属塩を含有する電解着色液中で、(+)成分
    のピーク電圧が(−)成分のピーク電圧よりも大きな交
    流電圧を印加して電解着色処理を行うことを特徴とする
    着色アルミニウム材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記電解着色処理時の交流電圧の(+)
    成分のピーク電圧が、陽極酸化処理時の電圧以下でかつ
    その1/2以上であることを特徴とする請求項3に記載
    の方法。
  5. 【請求項5】 前記交流電圧の{(+)成分のピーク電
    圧}/{(−)成分のピーク電圧}の比が2〜12の範
    囲内にあることを特徴とする請求項3又は4に記載の方
    法。
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