JPH11330544A - Iii族窒化物半導体発光素子 - Google Patents

Iii族窒化物半導体発光素子

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JPH11330544A
JPH11330544A JP12759898A JP12759898A JPH11330544A JP H11330544 A JPH11330544 A JP H11330544A JP 12759898 A JP12759898 A JP 12759898A JP 12759898 A JP12759898 A JP 12759898A JP H11330544 A JPH11330544 A JP H11330544A
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nitrogen
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JP12759898A
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Goro Shimaoka
五朗 島岡
Takashi Udagawa
隆 宇田川
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Showa Denko KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成膜のための煩雑な温度変更操作を必要とし
ない簡便な手段により、III 族窒化物半導体結晶層から
なる発光部を備えた発光素子を提供する。特に、青色或
いは緑色の短波長発光を放射できる発光部を備えた発光
素子を簡便に構成する技術手段を提供する。 【解決手段】 成膜が簡便で、低抵抗のp形伝導層も容
易に得られるAlGaAsとGaInAsとからなるヘ
テロ接合構造の構成層を素材として、構成層の砒素(A
s)元素を、窒素で置換する技術手段を利用してIII 族
窒化物半導体結晶層からなる発光部を構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外光或いは短波
長の可視光発光素子の発光部を構成するに好適なIII 族
窒化物半導体結晶層をもたらすための新たな技術手段に
関する。
【0002】
【従来の技術】(短波長発光素子の構成材料としてのII
I 族窒化物半導体)窒素(元素記号:N)をマトリック
ス(matrix)的に多量に含む一般式AlE GaF
InG1-HH (E+F+G=1、0≦E,F,G≦
1。記号Qは窒素以外の第V族元素で、0<H≦1)で
表記されるIII −V族化合物半導体は、特に、III 族窒
化物半導体と呼称されている。このIII 族窒化物半導体
は、例えば、紫外帯から緑色帯の短波長可視光を放射す
る発光ダイオード(英略称:LED)やレーザダイオー
ド(英略称:LD)などのIII 族窒化物半導体発光素子
の構成材料として重用されている(特公昭55−383
4号公報明細書参照)。
【0003】III 族窒化物半導体素子にあって、例え
ば、窒化ガリウム・インジウム混晶(GaF InG N:
F+G=1、0≦F,G≦1)は、発光層(活性層)と
して利用されている(例えば、特開平2−229475
号等公報明細書参照)。これは、窒化ガリウム・インジ
ウムが、(イ)高発光出力を得るに元来、都合の良い直
接遷移型半導体であること(特開平3−203388号
公報明細書参照)、及び(ロ)インジウム組成比を変化
させることに依って、理論上、短波長の発光に都合の良
い禁止帯幅を取り得るからである(特開昭49−197
82号公報明細書参照)。例えば、中心発光波長を約4
65ナノメータ(nm)とする青色ルミネッセンス発光
は、インジウム組成比(G)を約0.33とするGaF
InG N混晶から得られている(J.Vac.Sci.
&Technol.,Vol.13、No.3(199
5)、705〜710頁参照)。また、中心発光波長を
約520nmとする緑色LEDには、インジウム組成比
(G)を約0.45とするGa0.55In0.45N混晶が発
光層として利用されている(Jpn.J.Appl.P
hys.,34(1995)、L1332〜L1335
頁参照)。
【0004】即ち、より長波長の発光を得るためにイン
ジウム組成比(G)をより大とするGaF InG N(0
≦F,G≦1、F+G=1)混晶層を発光層とするのが
従来の通例である。インジウム組成比を大とする程、禁
止帯幅(バンドギップ)が小となり、長波長の可視光を
得るに都合が良くなるからである。従って、従来のIII
族窒化物半導体発光素子では、発光波長は、発光層を構
成する窒化ガリウム・インジウム混晶のインジウム組成
比の大小をもって調節されていた。
【0005】また、p形或いはn形のAlE GaF
(E+F=1、0≦E,F≦1)は、電気的な障壁作用
を有するクラッド(clad)層として用いられている
(特開平6−209120号、特開平6−2606
82号、特開平6−260683号、及び特開平6
−268259号公報明細書参照)。クラッド層として
利用するAlE GaF N混晶のアルミニウム(Al)組
成比(E)は、発光波長に拘わらず、概ね、20%
(0.20)前後であるのがもっぱらである(「固体物
理」、Vol.30(No.9)(1995)、44〜
50頁参照)。
【0006】(III 族窒化物半導体結晶層の成長方法)
III 族窒化物半導体結晶層の成長方法には、従来から有
機金属熱分解法(所謂、MOCVD法)、ハロゲン(h
alogen)或いはハイドライド(hydride)
VPE法或いは分子線エピタキシャル(MBE)法など
の気相成長法がある。中でも、MOCVD(MOVPE
或いはOMVPEとも称される)法は、III 族窒化物半
導体結晶層の成長方法として一般的となっている。従っ
て、従来のIII 族窒化物半導体発光素子の発光層には、
もっぱら、MOCVD法により成膜されたGaF InG
N(0≦F,G≦1、F+G=1)結晶層が利用されて
いる。また、クラッド層にも、MOCVD法で成膜した
AlE GaF N混晶気相成長層が利用されるのが通例で
ある。
【0007】(III 族窒化物半導体結晶層の成長上の煩
雑性)MOCVD気相成長法による成膜に於いて、クラ
ッド層として利用される窒化アルミニウム・ガリウム
(AlE GaF N:E+F=1,0≦E,F≦1)結晶
層の成膜に適する温度は大凡、約1000℃から約11
00℃である。一方、発光層として利用する窒化ガリウ
ム・インジウム結晶層は、その易昇華性のために一般に
は、約700〜約800℃で成膜される。即ち、従来の
気相成長技術に頼って、発光層とクラッド層とのヘテロ
接合を含む発光部を構成するには、約300℃程度或い
はそれ以上に亘って成長温度を変化させる必要があった
(J.Crystal Growth,145(199
4)、209〜213頁参照)。
【0008】従来のIII 族窒化物半導体発光素子の発光
部は、六方晶で電気的に絶縁性のサファイア(α−Al
23 単結晶)或いは六方晶の炭化珪素(SiC)から
なる基板上に配置されている。発光部をなすIII 族窒化
物半導体材料とこれらの基板材料とは格子整合を果たす
関係にはない。このため、従来に於いては、基板と発光
部との中間にその格子不整合性を緩和する目的でAlE
GaF N混晶(E+F=1、0≦E,F≦1)緩衝層が
挿入される。この緩衝層は、一般に約400℃〜約60
0℃の低温で成膜される(特開平2−229476号公
報明細書参照)。この発光部を形成する際の下地層とも
なる低温緩衝層の成膜温度をも考慮すると、発光素子用
途の積層構造体を得るに必要とされる温度領域の幅は約
400℃の広範囲に及ぶものとなっている(「光学」、
第22巻第11号(1993)、670〜675頁参
照)。
【0009】上記の如く、従来の気相成膜法を利用して
III 族窒化物半導体結晶層を逐一、成膜して発光部を構
成する手段は、工程の冗長さを付随する煩雑なものとな
っている。
【0010】(窒化ガリウム・インジウム結晶層の成長
上の問題点)加えて、発光層を構成する窒化ガリウム・
インジウム結晶層の気相成長法による成膜には、特別な
問題がある。高いインジウム組成比を有し、尚且、良好
な結晶性を保持する窒化ガリウム・インジウム混晶層の
形成が困難なことである。MOCVD法による窒化ガリ
ウム・インジウム混晶の成膜を例にすれば、実用上、イ
ンジウム組成比が約50%を越えて、尚且、結晶性に優
れる窒化ガリウム・インジウム混晶層を安定して得るの
は難しい。成膜温度を低下させれば、インジウム組成比
は増大する傾向にある。しかし、低温で成膜した窒化ガ
リウム・インジウム混晶層は、結晶性が劣るため(「電
子情報通信学会誌」、Vol.76、No.9(199
3年9月)、913〜917頁参照)、高発光強度を帰
結する発光層として常用に至らない状況にある。
【0011】(発光波長の制限の問題)窒化ガリウム・
インジウム混晶にあって、インジウム組成比に実用上の
限界があることは、窒化ガリウム・インジウム混晶から
なる発光層からの発光波長に制限が加わることを意味し
ている。仮に、インジウム組成比の最大限を50%
(0.50)とした場合、窒化ガリウム・インジウム混
晶に於ける禁止帯幅の曲折(bowing)を考慮する
としても(特公昭55−3834号公報明細書参照)、
禁止帯幅は約2.5エレクトロンボルト(eV)とな
る。この禁止帯幅は、波長に換算すれば、約496ナノ
メータ(nm)である。従って、従来の成膜技術に頼っ
た窒化ガリウム・インジウム混晶にあって、安定して制
御できる発光波長の範囲は、実用上、窒化ガリウム(化
学式:GaN)の禁止帯幅(約3.4eV)に対応する
約365nmから約496nmの範囲に限定されてしま
う問題がある。
【0012】(p形III 族窒化物半導体結晶層に関する
問題)また、従来のIII 族窒化物半導体発光素子用途の
積層構造体は、主にウルツァイト(wurzite)形
の六方晶(hexagonal)III 族窒化物半導体結
晶層から構成されている。六方晶の半導体では、価電子
帯(valenceband)のバンド構造の関係か
ら、閃亜鉛鉱型(zinc blende)立方晶半導
体に比較すれば、p形伝導層が得られ難い(特開平2−
275682号公報明細書参照)。従来では、p形の伝
導性を呈するIII 族窒化物半導体結晶層を得るには、p
形不純物をドーピング(doping)したIII 族窒化
物半導体層に対し、成膜後に熱処理を施すなどの付帯工
程が必要とされた(特開平5−183189号及び
特開平8−32113号公報明細書参照)。
【0013】即ち、pn接合構造の発光部を含む積層構
造体を得るには、III 族窒化物半導体結晶層の成膜が煩
雑な上に、良好な接合特性を有するpn接合構造を内包
する発光部の構築は、これまた、特別な付帯工程を要す
る冗長で、且つ煩雑な操作を要するものとなっていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】砒化アルミニウム・ガ
リウム(AlX GaY As:X+Y=1、0≦X,Y≦
1)、砒化ガリウム・インジウム(GaY InZ As:
Y+Z=1、0≦Y,Z≦1)に代表される一般的なII
I −V族化合物半導体成長層も、MOCVD法やMBE
法等の気相成長技術を利用して成膜される。しかし、II
I −V族化合物半導体成長層の成膜には、次に記す如く
の利点が付随している。 (1)一般に、成膜工程に於いて、成長温度の大幅な変
遷を必要としない。即ち、成膜温度の煩雑な変更操作を
要せずに、簡便に成長層が得られる。 (2)インジウム組成比が大である、例えば、GaY
Z As成長層も簡便に得られる。インジウムをマトリ
ックスとする、例えば、砒化インジウム(化学式:In
As)成長層も成膜できる(J.Electroche
m.Soc.,120(1973)、135参照)。 (3)閃亜鉛鉱型の結晶構造を有しており、価電子帯の
縮退が殆ど解放されていないため、p形の伝導を呈する
成長層が簡便に得られる(特開平2−275682号公
報明細書参照)。 (4)導電性のIII −V族化合物半導体単結晶などの結
晶材料を基板として利用できる。
【0015】従って、III −V族化合物半導体成長層を
III 族窒化物半導体結晶層に変換する手段があれば、
(イ)成膜温度の大幅な変遷を要せずに、III 族窒化物
半導体結晶層が得られる。また、(ロ)III 族構成元素
の構成比率に変化を与えない変換手段に依れば、高イン
ジウム組成比のIII 族窒化物半導体結晶層も得られる。
また、(ハ)伝導形を変化させない変換手段であれば、
成膜後の後工程としての従来の熱処理工程を要せずに、
p形のIII 族窒化物半導体結晶層が簡便に構成でき得
る。また、(ニ)オーミック性入・出電極の一方を導電
性基板に敷設できるなどの優位性がもたらされる。
【0016】成膜が容易で、且つ上記の如くの長所を有
するIII −V族化合物半導体成長層を、窒素含有量の大
きなIII 族窒化物半導体結晶層に変換できる技術手段が
あれば、短波長可視光を発光するに好都合となる禁止帯
幅のIII 族窒化物半導体結晶層が容易に構成できる。従
って、短波長可視光を出射するIII 族窒化物半導体発光
素子が簡便に得られる。
【0017】本発明の課題は、簡便に成膜できるIII −
V族化合物半導体成長層を素材として、それを短波長可
視光を放射するに都合良く利用できるIII 族窒化物半導
体結晶層に変換する技術手段を提示することにある。ま
た、上記の手段を用いて変換されたIII 族窒化物半導体
結晶層からなる発光部を備えてなるIII 族窒化物半導体
発光素子を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、砒化ガ
リウム・インジウム混晶(GaY InZ As:0≦Z≦
1、Y+Z=1)成長層を構成する砒素(元素記号:A
s)原子を窒素(元素記号:N)原子で置換してなる窒
化砒化ガリウム・インジウム混晶(GaY InZM
1-M :0<Z≦1、Y+Z=1、0<M≦1)結晶層
と、アルミニウム組成比(X)を0≦X≦0.3とする
砒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlX GaY As:
X+Y=1)成長層を構成する砒素(As)原子を窒素
原子で置換してなる窒化砒化アルミニウム・ガリウム混
晶(AlX GaYM As1-M :0≦X≦0.3、X+
Y=1、0<M≦1)結晶層をもって構成されるヘテロ
接合を含む発光部を備えたIII 族窒化物半導体発光素子
を提供するものである。
【0019】また本発明は、上記のIII 族窒化物半導体
発光素子であって、特に短波長可視光発光素子に適し
た、砒素(As)原子の総量の80%以上を窒素(N)
原子で置換してなる窒化砒化ガリウム・インジウム混晶
(GaY InZM As1-M :0<Z≦1、Y+Z=
1、0.8≦M≦1)結晶層を発光層とする発光部を備
えたIII 族窒化物半導体発光素子を提供するものであ
る。
【0020】本発明では、砒素(As)原子を窒素
(N)原子で置換する窒素置換処理を行う対象(素材)
を、導電性の立方晶半導体基板などの表面上に予め、気
相成長法などにより成膜されたGaY InZ As成長層
とAlX GaY As成長層とする。これらのIII −V族
化合物半導体成長層を素材とすれば、短波長可視光を出
射する発光層に都合良く利用できるGaY InZM
1-M 結晶層と、クラッド層として都合良く利用できる
AlX GaYM As1-M 結晶層が、従来の煩雑な成膜
技術に依らずにもたらされるからである。
【0021】半導体基板としては、ゲルマニウム(元素
記号:Ge)やシリコン(Si)などの単元素半導体か
らなる単結晶や、II−VI族化合物半導体或いはIII −V
族化合物半導体からなる単結晶を用いることができる。
本発明では、窒素置換処理の対象とするIII −V族化合
物半導体成長層からなる発光部を予め、構成する関係
上、III −V族化合物半導体成長層との格子整合が果せ
るIII −V族化合物半導体単結晶が基板として好ましく
利用できる。具体的には、砒化ガリウム(化学式:Ga
As)、リン化ガリウム(化学式:GaP)、リン化イ
ンジウム(化学式:InP)などの閃亜鉛鉱型の等軸立
方晶からなる単結晶基板が好ましい。
【0022】半導体基板となす単結晶の表面の面方位
は、特に限定はない。{001}或いは{011}、ま
たは{111}方位面などが利用できる。主たる面方位
からのオフ−アングル(off−angle)を持つ方
位面を有する単結晶も利用できる。例えば、{001}
±0.5゜off、{001}±2゜off、或いは
{001}±10゜offなどの面方位の基板が利用で
きる。off−angleによって、窒素で置換する効
率に多少の差異が発生する場合があるが、窒素以外の第
V族元素を窒素で置換することに本質的な支障を来さな
いからである。
【0023】発光素子にあっては、基板に導電性の半導
体単結晶を利用するのが高い発光強度の素子を得る上で
有利である。サファイアを基板とする従来のLEDで
は、基板が絶縁性であるが故に、基板の同一主面上に両
電極を併設せざるをえない。このため、一方の電極を敷
設するために、発光層の一部を敢えて切り欠くことを余
儀なくされていた。しかし、n形若しくはp形の導電性
の結晶基板、例えば、GaAsやGaP等の導電性の閃
亜鉛鉱型結晶を基板とすれば、正・負電極の何れか一方
のオーミック電極を基板に配備でき、従来の電極の配置
上の制約を回避することができる。即ち、本発明から
は、陰陽両電極を敷設するために、徒に、発光層(発光
面積)を縮小する必要がなくなるため、そもそも高発光
強度のLEDを得るに優位となる電極形成上の利点もも
たらされる。
【0024】また、LDにあっては、導電性の結晶を基
板とすれば、駆動に伴って素子が過度に高温となるのを
抑制でき、素子動作の安定性を確保するに効果がある。
電気的な伝導性を有する結晶は、熱伝導性にも優れるた
め、発熱量の大きいLDからの放熱が促進されるからで
ある。
【0025】これらの基板上に、MOCVD法等の気相
成長法により予め構築した、AlXGaY As成長層
と、GaY InZ As成長層(0≦Z≦1、Y+Z=
1)とを含むヘテロ接合構造体に窒素置換処理を及ぼ
す。窒素置換処理の対象となるヘテロ接合構造体の素材
には、InP基板上のGa0.47In0.53As/AlX
YAsヘテロ接合系などが例示できる。本発明の窒素
置換処理の前後では、III 族構成元素の組成比に然した
る変化は、認められない。従って、例示したインジウム
組成比を比較的大とするヘテロ接合系を素材とすれば、
高インジウム組成比のIII 族窒化物半導体結晶層を含む
ヘテロ接合系が構成できる。
【0026】本発明の窒素置換処理では、その前後で半
導体層の伝導形に変化を来さない。従って、pn接合を
内包するヘテロ接合構造体を素材として、III 族窒化物
半導体からなるpn接合構造が得られる。例えば、低抵
抗のp形伝導層の成膜の容易性を利用して予め、構成し
たAlX GaY As成長層とGaY InZ As成長層
(0≦Z≦1、Y+Z=1)とからなるpn接合型のヘ
テロ接合構造体を素材とすれば、pn接合型のIII 族窒
化物半導体接合構造体が簡便に得られる。n形のGaY
InZ As成長層(0≦Z≦1、Y+Z=1)と、p形
のAlX GaY As成長層からなるpn接合を内包する
ヘテロ接合構造体からは、窒素置換処理によりIII 族窒
化物半導体結晶層からなるpn接合型ヘテロ構造の発光
部が構成できる。
【0027】半絶縁性(i形)のGaY InZ As成長
層とAlX GaY As成長層との多重接合を含む接合構
造体も窒素置換処理の対象となる。例えば、キャリア濃
度が大凡、約1×1016cm-3以下のアンドープ(un
dope)のGaY InZ Asを井戸(well)層と
し、アンドープの高抵抗のAlX GaY As成長層を障
壁(barrier)層とする単一量子井戸構造(英略
称:SQW)はもとより、多重量子井戸構造(英略称:
MQW)のヘテロ接合構造体も窒素置換処理の対象であ
る。
【0028】砒素(As)原子の窒素(N)原子による
置換は、主に次の手段により達成できる。(1)窒素原
子を含む雰囲気中で加熱して、Asの空格子点を窒素で
置換して窒素置換処理を果たす熱処理法。本手段では、
窒素置換処理が成膜炉内で成膜操作に連続して簡便に実
施できるのが特徴である。また、熱処理温度と処理時間
と雰囲気内の窒素分圧(窒素含有気体の分圧)の制御に
よって、窒素置換が波及する深さや窒素原子による置換
効率を単純に制御できる利点がある。
【0029】この他、(2)真空中で発生させた含窒素
物質のプラズマ(plasma)に曝して窒素置換処理
する真空プラズマ法がある。本法では、素材をAsの脱
離が促進される真空環境内に保持されるため、窒素原子
によるAs原子の置換効率が、上記の熱処理法に比較し
てより高くなり易いのが特徴である。
【0030】また、(3)窒素イオンの注入を利用する
イオン注入法などがある。イオン注入法にあっては、選
択イオン注入技法を利用して特定の領域に窒素イオンを
注入できる。即ち、限定された領域に於いて、窒素置換
効率を高められる。また、領域毎に注入量(ドーズ(d
ose)量)を変化させれば、窒素置換効率を異にする
III 族窒化物半導体結晶層が帰結される。
【0031】窒素置換処理は、単独の手段により、或い
は複数の手段を併合して利用して窒素置換処理を施して
も構わない。例えば、窒素イオンを注入するイオン注入
法と、イオン注入に因る注入損傷を回復するためのアニ
ール(anneal)を兼ねた熱処理法とを併用して、
窒素置換処理となすことができる。
【0032】窒素置換処理を実施する時期は、実施者の
選択の範囲である。例えば、(イ)発光部を構成する各
III −V族化合物半導体成長層の成膜後に逐一、窒素置
換処理を施す手法がある。例えば、窒素置換処理の素材
たる成長層上に、更に厚膜を積層する場合、厚膜を介し
ての処理では、素材に対する窒素置換効率が不均一とな
る可能性がある。この様な場合でも、本法に則り、逐
一、窒素置換処理を施しておけば、III 族窒化物半導体
結晶層を確実に得ることができる。
【0033】また、(ロ)発光部の全体を一旦構成した
後、発光部を構成するIII −V族化合物半導体層につい
て一括して窒素置換処理を施す手法がある。この方法
は、特に、薄いIII 族窒化物半導体結晶層からなる積層
構造に適し、一時期にして、III 族窒化物半導体結晶層
からなる積層構造に変換できる利便性がある。
【0034】窒素置換処理は、単一(同一)の手段を共
通して、或いは、処理対象とする層毎に異なる手段をも
って施すことができる。窒素置換処理は、処理対象物の
層厚と上記の窒素置換処理手段の能力などとの対応状況
に鑑みて、適宣、選択することができる。同一の窒素置
換処理に於いても、発光部構成層の層厚等に応じて処理
条件の設計及び変更は可能である。
【0035】本発明では、窒素置換処理を施した結果と
して帰結される、窒化砒化ガリウム・インジウム混晶
(GaY InZM As1-M :0≦Z ≦1、Y+Z=
1、0<M≦1)層を主に、発光層として利用すること
を意図している。
【0036】また、窒素置換処理を施した結果として帰
結される、窒化砒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al
X GaYM As1-M )層を、特にクラッド層として利
用することを意図している。GaY InZM As1-M
とAlX GaYM As1-Mとのヘテロ接合構造を内包
する発光部は、主に、短波長の可視光を発光するに都合
が良いからである。
【0037】GaY InZ As(Y+Z=1、0≦Y,
Z≦1)とAlX GaY As(X+Y=1、0≦X,Y
≦1)とを直接、接合したヘテロ接合は、格子不整合系
の接合である。この不整合性は、窒素置換処理後でも保
持される。従って、窒素置換処理により帰結されるGa
Y InZM As1-M とAlX GaYM As1-M との
ヘテロ接合も格子不整合系となる。同接合系にあって、
ミスマッチ(mis−match)度は、アルミニウム
組成比(X)を増加させることによっても増加する。こ
れより、アルミニウム組成比を極端に大とすると、発光
層としての利用を意図するGaY InZM As1-M
晶層に印加される歪みの量が極端に大となり、成長層或
いは結晶層の結晶性が損なわれる不具合が発生する。
【0038】GaY InZ As/AlX GaY Asヘテ
ロ接合系、或いはGaY InZMAs1-M /AlX
YM As1-M ヘテロ接合系の接合界面に、ミスマッ
チに起因して、そもそも内在する、或いは残留する適度
の大きさの格子歪は、都合良く青色帯或いは緑色帯の短
波長可視光の発光をもたらすに適する禁止帯幅の曲折を
与える。しかし、発光層に接合するクラッド層をアルミ
ニウム組成比を極端に大とするAlX GaYM As
1-M から構成すると、発光層とするGaY InZM
1-M には過大な歪が印加される。それに伴いバンドの
曲折もより大となり、伝導帯−価電子帯間のエネルギー
差も縮小される。ヘテロ接合界面でのバンドの曲折が過
度であると、発光層から出射される波長は、緑色帯より
更に長波長となる。
【0039】AlX GaYM As1-M 結晶層にあっ
て、アルミニウム組成比(X)を概ね、0.5以下とす
れば、GaY InZM As1-M 結晶層との格子不整合
性を徒に大とするのを抑止するに効果を奏する。即ち、
ヘテロ接合界面での、格子不整合性の増大に起因するミ
スフィット転位の増殖を抑制できる。また、アルミニウ
ム組成比(X)を0.3以下とすれば、短波長可視光の
発光に都合の良いバンド、特に伝導帯側のバンドの曲折
がもたらされる。従って、AlX GaYM As1-M
晶層のアルミニウム組成比(X)を0.3以下とすれ
ば、過大の格子歪の導入と過度のバンドの曲折が回避で
き、高い強度で、青色帯から緑色帯に掛けての短波長可
視光を出射するに好都合となる。
【0040】本発明に係わる窒素置換処理では、III 族
構成元素の構成比率(組成比)には然したる変化を生じ
ない。従って、アルミニウム組成比(X)を0.3以下
とするAlX GaYM As1-M 結晶層は、予め、アル
ミニウム組成比を0.3以下に調整したAlX GaY
s成長層を素材として獲得できる。
【0041】短波長可視光の発光の出射を意図する本発
明にあっては、発光層となすGaYInZM As1-M
結晶層の窒素組成比(M)は80%以上とする。青色帯
から緑色帯の発光をもたらすに都合の良い禁止帯幅がも
たらされるからである(Mat.Res.Soc.Sy
mp.Proc.,Vol.449(1997)、20
3〜208頁参照)。As原子の全量を窒素原子に置換
しても何ら差し支えはない。
【0042】窒素組成比(M)は、上記に例示した各窒
素置換処理手段に於ける条件、特に、処理温度や処理時
間の調節をもって制御できる。例えば、上記の熱処理手
段に依る窒素置換処理手段にあっては、処理温度をより
高温に設定する程、一般には、より多くの砒素(As)
原子が窒素(N)原子で置換されるため、窒素組成比は
大となる。また、真空プラズマ法では、処理環境の真空
度が高い程、また、プラズマを励起するパワー(pow
er)が大である程、高い窒素組成比がもたらされる。
また、イオン注入法では、ドーズ量を大とする程、大き
な窒素組成比が得られる傾向にある。
【0043】砒素(As)原子が窒素(N)原子で置換
された割合(比率)、即ち、窒素組成比は、例えば、2
次イオン質量分析法(英略称:SIMS)またはオージ
ェ(Auger)電子分光法(英略称:AES)をもっ
て定量的に分析されるAs原子とN原子との信号強度比
を基に測り知れる。また、フォトルミネッセンス(英略
称:PL)の発光波長に対応する禁止帯幅を基に、禁止
帯幅とGaNAs混晶に於ける窒素組成比との対応から
求められる(上記のMat.Res.Soc.Sym
p.Proc.,Vol.449(1997)参照)。
【0044】例えば、インジウム組成比(Z)を、0.
05〜0.30とするGaY InZAsを窒素置換処理
してなしたGaY InZQ AsM (0≦Z≦1、Y+
Z=1、0.8<Q≦1、Q+M=1)を発光層とし、
アルミニウム組成比(X)を0≦X≦0.30とするA
X GaY Asに窒素置換処理をなしたAlX GaYQ
AsM (0≦X≦0.3、X+Y=1、0<Q≦1、
Q+M=1)をクラッド層として含む発光部は、青色帯
の発光を呈する発光部として好ましく利用できる。
【0045】
【作用】本発明の云う窒素置換処理方法とは、III −V
族化合物半導体成長層の第V族構成元素であるAsを窒
素原子で置換する作用を有するものである。特に、この
窒素置換処理をもって、煩雑な成膜プロセスに頼ること
なくIII 族窒化物半導体結晶層を含む発光部を備えた請
求項1に記載のIII 族窒化物半導体発光素子を形成する
ことができる。
【0046】また、積層操作により発光部を構成する従
来の手段を回避して、簡便にIII 族窒化物半導体結晶層
からなる、pn接合型DH構造の発光部をもたらすこと
ができる。
【0047】
【実施例】(第1の実施例)以下、本発明の内容を具体
例をもって詳細に説明する。第1の実施例では、n形G
aAs/n形GaInAs/p形AlGaAsからなる
pn接合型DH構造III −V族化合物半導体積層系に窒
素置換処理を施してなる発光部を備えたIII族窒化物半
導体LEDを例にして説明する。
【0048】[011]方向に角度にして2゜傾斜(オ
フ(off))させて切り出した{001}−珪素(S
i)ドープGaAs単結晶を基板(101)とした。基
板には、光デバイス用途として、特に転位密度(エッチ
ピット密度:EPD)が約103 cm2 未満と小さく、
低抵抗のn形伝導を呈するSiドープGaAs単結晶を
選択して使用した。
【0049】基板上には、トリメチルガリウム(化学
式:(CH33 Ga)/アルシン(AsH3 :10%
AsH3 −90%水素混合ガス)/水素(H2 )反応系
を利用した一般的な常圧MOCVD法により、660℃
でSiをドープしたn形GaAs緩衝層(102)を積
層した。n形GaAs層のキャリア濃度は、2×1018
cm-3とし、層厚は約1μmとした。Siのドーピング
源としては、体積濃度にして約10ppmのジシラン
(化学式:Si26 )を含む水素ガスを利用した。
【0050】緩衝層(102)上には、Siをドープし
たn形GaAs層を下部クラッド層(103)として積
層した。成膜温度は、緩衝層の場合と同じく660℃と
した。キャリア濃度は、1×1018cm-3とし、層厚は
約0.3μmとした。
【0051】n形の下部クラッド層(103)上には、
キャリア濃度を約2×1016cm-3とする硫黄(元素記
号:S)をドーピングしてなるn形の砒化ガリウム・イ
ンジウム(GaY InZ As)からなる発光層(10
4)を660℃で積層した。インジウム源には、結合価
を1価とするシクロペンタジエニルインジウム(化学
式:C55 In)を使用した。インジウム組成比
(Z)は、0.50(50%)とした。層厚は、約0.
1μmとした。硫黄源には、体積濃度にして5ppmの
硫化水素(化学式:H2 S)を含む硫化水素−水素混合
ガスを利用した。
【0052】発光層の成膜を終了した後、基板温度を6
60℃に維持して、キャリア濡度を約2×1018cm-3
とし、層厚を約0.1μmとするマグネシウム(Mg)
をドーピングしたp形砒化アルミニウム・ガリウム混晶
(Al0.15Ga0.85As)からなる上部クラッド層(1
05)を積層させた。アルミニウム源には、トリメチル
アルミニウム(化学式:(CH33 Al)を用いた。
Mgのドーピング源には、ビスシクロペンタマグネシウ
ム(化学式:bis−(C552 Mg)を用いた。
【0053】上記のn形下部クラッド層(103)、発
光層(104)及びp形上部クラッド層(105)か
ら、III −V族化合物半導体層からなるpn接合型DH
構造発光部(10)を構成した。
【0054】基板温度を660℃に維持したまま、発光
部の形成に供したMOCVD成長炉内を一旦、3×10
-3トール(Torr)の真空に排気した。真空中に正確
に15分間、暴露した。その後、水素ガスをMOCVD
成長炉内に供給して、炉内を常圧(〜760Torr)
に復帰させた。炉内を大気圧とした後、水素ガスの供給
を停止し、直ちにアンモニア(化学式:NH3 )ガスを
成長炉内に流通させた。アンモニアガスの流量は、英略
称MFC(所謂、電子式質量流量計)で精密に毎分1リ
ットルに制御した。アンモニアの流通を15分間に亘り
継続して、発光部を構成する各III −V族化合物半導体
層の第V族構成元素である砒素(As)を窒素原子で置
換して、III 族窒化物半導体結晶層となす処理を施し
た。即ち、III −V族化合物半導体発光部を、窒素原子
を含む雰囲気内で加熱してIII 族窒化物半導体となす熱
処理によりIII 族窒化物半導体結晶層からなる発光部と
なした。
【0055】一般的な2次イオン質量分析法(SIM
S)により、窒素原子は、積層構造体の最表層の上部ク
ラッド層(105)の表面より、約0.7μmの深さに
至る領域に略一定の濃度で存在するのが認められた。即
ち、緩衝層を構成するn形GaAs結晶層の表面側から
約0.2μmの領域に迄、窒素置換処理が及んでいた。
また、窒素置換処理が波及した領域に於ける窒素原子と
As原子の構成比率は、85:15と定量された。従っ
て、この加熱処理法に依る窒素置換処理では、発光部を
構成する各III −V族化合物半導体層の第V族構成元素
であるAs原子の約85%が窒素原子に置換された。
【0056】即ち、本実施例では、III −V族化合物半
導体層からなる発光部を、n形GaN0.85As0.15から
なる下部クラッド層とIn0.50Ga0.500.85As0.15
からなる発光層とp形Al0.15Ga0.850.85As
0.15からなる上部クラッド層とからなるIII 族窒化物半
導体層からなるpn接合型DH構造の発光部へと変換し
た。
【0057】得られた積層構造体に裁断加工を施して、
一辺を約300μmとする正方形の平面形状を有する各
LEDチップ(chip)に分割する以前に、各チップ
の略中央部に該当する領域にp側電極(正電極)(10
8)を配置した。p側電極は、真空蒸着した金(元素記
号:Au)・亜鉛(元素記号:Zn)合金(95重量%
Au:5重量%Zn)被膜を、直径を約110μmとす
る円形の平面電極にエッチング加工して形成した。
【0058】一方のn側電極(負電極)は、積層構造体
の構築に導電性のn形結晶基板を使用していることを利
用して、p側電極とは同一主面側ではなく、基板(10
1)の裏面側に所謂、「ベタ(全面)」電極として設け
た。n側電極(107)は、ゲルマニウム(元素記号:
Ge)を重量にして約5%含むAu・Ge合金(95%
Au:5%Ge)を基板(チップ)の裏面の略全面に真
空蒸着して形成した。
【0059】第1図は、本実施例に係わる一LEDチッ
プの平面構成を示す模式図である。また、第2図は、第
1図の平面模式図に於ける破線A−A’に沿った、断面
模式図である。
【0060】正・負両電極((108)及び(10
7))間に順方向に直流動作電流を流通させた。順方向
電流の流通により、緑色の発光が認められた。10ミリ
アンペア(mA)の順方向電流を通電した際のチップ状
態での主たる発光の波長は約560nmであった。主た
る発光は緑色で、スペクトルの半値幅は約35nmであ
った。通常の積分球を利用する測定では、発光強度は約
5マイクロワット(μW)であった。
【0061】(第2の実施例)本実施例では、n形Ga
As/n形GaInAs/p形AlGaAsのpn接合
型DH構造積層系に、第1の実施例とは異なる窒素置換
処理を施してなる発光部を備えたIII 族窒化物半導体L
EDを例にして本発明を説明する。
【0062】[011]方向に角度にして2゜傾斜(オ
フ(off))させて切り出した{001}−Siドー
プGaAs単結晶を基板(101)とした。基板には、
特に転位密度(エッチピット密度:EPD)が約103
cm-2 未満と小さく、低抵抗のn形伝導を呈するSi
ドープGaAs単結晶を選択して使用した。
【0063】基板上には、トリメチルガリウム(化学
式:(CH33 Ga)/アルシン(AsH3 :10%
AsH3 −90%水素混合ガス)/水素(H2 )反応系
を利用した一般的な減圧MOCVD法により、680℃
でSiをドープしたn形GaAs緩衝層(102)を積
層した。n形GaAs層のキャリア濃度は、1×1018
cm-3とし、層厚は約3μmとした。Siのドーピング
源としては、体積濃度にして約5ppmのジシラン(化
学式:Si24 )を含む水素ガスを利用した。
【0064】緩衝層(102)上には、Siをドープし
たn形GaAs層を下部クラッド層(103)として積
層した。成膜温度は、緩衝層の場合と同じく680℃と
した。キャリア濃度は、1×1018cm-3とし、層厚は
約0.2μmとした。Siのドーピング源には、上記の
ジシラン−水素ガスを利用した。
【0065】n形の下部クラッド層(103)上には、
キャリア濃度を約2×1016cm-3とする硫黄(元素記
号:S)をドーピングしてなるn形砒化ガリウム・イン
ジウム混晶(GaY InZ As)からなる発光層(10
4)を680℃で積層した。インジウム源には、トリメ
チルインジウム(化学式:(CH33 In)を使用
し、インジウム組成比(Z)は、0.15(15%)と
した。層厚は、約5nmとした。
【0066】発光層の成膜を終了した後、基板温度を6
80℃として、キャリア濡度を約2×1018cm-3
し、層厚が約0.1μmのMgをドーピングしたp形砒
化アルミニウム・ガリウム混晶(AlX GaY As)か
らなる上部クラッド層(105)を積層させた。アルミ
ニウム源には、トリメチルアルミニウム(化学式:(C
33 Al)を用いた。Mgのドーピング源には、ビ
スシクロペンタマグネシウムを使用した。
【0067】上部クラッド層を構成するAlX GaY
s混晶層のアルミニウム組成比(X)は、所望の発光波
長を450nmとしていることから、15%(0.1
5)とした。即ち、上部クラッド層は、p形のAl0.15
Ga0.85Asから構成した。
【0068】上記のn形下部クラッド層(103)、発
光層(104)及びp形上部クラッド層(105)によ
って、III −V族化合物半導体層からなるpn接合型D
H構造発光部(10)を、成膜温度を変化させずに構成
した後、MOCVD成長炉内へのアルシンガスの供給を
停止し、代替として水素ガスを流通させた。水素の流量
をMFCを利用して毎分2リットルに維持したままで室
温に冷却した。冷却は、従来技術(特開平8−3211
3号公報明細書参照)の如く、低抵抗のp形III 族窒化
物半導体層を形成するために冷却速度を特別に調整する
手段は利用せず、自然放冷に依った。冷却後、積層構造
体をMOCVD成長炉内から取り出した。
【0069】冷却後に低抵抗p形III 族窒化物半導体を
得るための熱処理(特開平5−183189号公報明細
書参照)を行わずに、マイクロ波プラズマ処理炉内に、
積層構造体を載置した。然る後、処理炉内を2×10-2
Torrの真空に排気した。略同一の真空度を保持しな
がら、真空環境内で積層構造体を700℃に昇温した。
この状態に保持して10分が経過した後、アンモニアの
プラズマを発生させ、発光部にプラズマ窒化法による窒
素置換処理を施した。アンモニアのプラズマは、周波数
を13.56メガヘルツ(MHz)とするマイクロ波
を、毎分15ccの流量で通流させたアンモニアに10
0ワット(W)のパワーで入射させて発生させた。
【0070】一般的なオージェ電子分光分析法(AE
S)により、窒素原子は、上記の方法で得られた積層構
造体の最表層の上部クラッド層(105)の表面より、
約2μmの深さに至る領域に略一定の濃度で存在するの
が認められた。即ち、緩衝層を構成するn形GaAs結
晶層の表面から約1.7μmの深さ領域に至る迄、窒素
置換処理が及んでいた。また、窒素置換処理が波及した
領域に於ける窒素原子とAs原子の構成比率は、9:1
と定量された。従って、この真空プラズマ法に依る窒素
置換処理では、発光部を構成する各III −V族化合物半
導体層の第V族構成元素であるAs原子の約90%が窒
素原子に置換された。
【0071】即ち、本実施例では、III −V族化合物半
導体層からなる発光部を、n形GaN0.90As0.10から
なる下部クラッド層と、Ga0.85In0.150.90As
0.10からなる発光層と、p形Al0.15Ga0.850.90
As0.10からなる上部クラッド層とからなるIII 族窒化
物半導体結晶層からなるpn接合型DH構造の発光部へ
と変換した。
【0072】係る窒素置換処理後に、発光部を試験的に
メサ(mesa)加工して、接合特性を調査した。その
結果得られた電流−電圧(I−V)特性は、逆方向の漏
洩(リーク)電流が矮小であり、且つマイクロプラズマ
などに起因する耐圧不良もなく良好な整流性を示したこ
とから、発光部は、良好なpn接合構造を保有している
と認知された。また、特に、積層構造体の最表層を構成
する上部クラッド層は、依然として窒素置換処理前のp
形の低抵抗性を維持していると判断された。
【0073】上記の積層構造体を用いて、第1の実施例
と同様にLEDを試作した。試作したLEDは、図1及
び図2に示したものと同じであって、一方のオーミック
電極を導電性の基板裏面側に敷設して、両オーミック電
極の敷設のための発光面積の損失を回避した構造とし
た。
【0074】順方向電流の流通による発光の主たる発光
波長は、約455nmとなった。この主たる発光の他
に、約360から380nmの波長帯に掛けて幅広い
(ブロードな)副次的なスペクトルが観測された。しか
し、この副次的なスペクトルの発光強度は、主たる発光
スペクトルのそれの約1/20未満と微弱であり、発光
の単色性を損なう程の発光ではなかった。通常の積分球
を利用して、チップ状態で測定した発光強度は約7マイ
クロワット(μW)であった。
【0075】(第3の実施例)第2の実施例に記載のS
iドープn形GaAs単結晶基板上に、n形GaAs緩
衝層、n形GaAs下部クラッド層、及びGa0.85In
0.15As層を第2の実施例の手順に則り、順次、積層さ
せた。
【0076】Ga0.85In0.15As層の上部に形成して
接合させるMgドープp形AlX GaY As層のアルミ
ニウム組成比(X)は、所望の発光波長が520nmで
あることから、第2の実施例とは異なる、18%(0.
18)とした。成膜温度は、第2の実施例と同一とし、
第2の実施例と同様にp形Al0.18Ga0.82As層を形
成した。
【0077】上記のようにして作製した各層の層厚並び
にキャリア濃度を第2の実施例と略同一とするIII −V
族化合物半導体結晶層からなるpn接合型DH構造を備
えた積層構造体に、第2の実施例と同一の条件下で窒素
置換処理を施した。これより、上記の積層構造体のIII
−V族化合物半導体層からなる発光部を、n形GaN
0.90As0.10からなる下部クラッド層と、In0.15Ga
0.850.90As0.10からなる発光層と、p形Al0.18
0.820.90As0.10からなる上部クラッド層とからな
るIII 族窒化物半導体層からなるpn接合型DH構造の
発光部へと変換した。
【0078】その後、第2の実施例の手法に従い、図1
及び図2に示したものと同様のLEDを試作した。チッ
プ状態で正・負両電極間への順方向の電流を流通し、緑
色の発光を得た。順方向電流の流通による発光では、波
長を約520nmとする主たるスぺクトル以外に、約3
60から380nmにかけて幅広い(ブロードな)副次
的なスペクトルが観測された。しかし、この副次的なス
ペクトルの発光強度は、主たるスペクトルのそれの約1
/20未満と微弱であり、発光の単色性を損なう程の発
光ではなかった。通常の積分球を利用する測定から、発
光強度は、チップ状態で約8マイクロワット(μW)と
なった。
【0079】
【発明の効果】本発明の請求項1に記す第1の発明は、
短波長の可視光を出射するに好適なIII 族窒化物半導体
層からなる発光部を煩雑な成膜プロセスを用いずに形成
することができたIII 族窒化物半導体発光素子である。
【0080】請求項2に記す第2の発明は、短波長帯域
の発光、特に青色から緑色の光を出射するIII 族窒化物
半導体発光部を有するIII 族窒化物半導体発光素子であ
る。
【0081】さらに本発明は、オーミック電極の敷設に
伴う発光面積の減少を来さずに、III 族窒化物半導体か
らなる短波長可視発光素子の作製を行うことができる効
果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1、第2および第3の実施例に係わ
る発光ダイオード(LED)の平面構成を示す模式図で
ある。
【図2】図1に示すLEDの破線A−A’に沿った断面
構造を示す模式図である。
【符号の説明】
10 pn接合型DH構造発光部 101 結晶基板、特にn形GaAs等の導電性III −
V族化合物半導体基板 102 緩衝層 103 下部クラッド層 104 発光層 105 上部クラッド層 107 n側電極(負電極) 108 p側電極(正電極)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 砒化ガリウム・インジウム混晶(GaY
    InZ As:0≦Z≦1、Y+Z=1)成長層を構成す
    る砒素(元素記号:As)原子を窒素(元素記号:N)
    原子で置換してなる窒化砒化ガリウム・インジウム混晶
    (GaY InZM As1-M :0≦Z ≦1、Y+Z=
    1、0<M≦1)結晶層と、アルミニウム組成比(X)
    を0≦X≦0.3とする砒化アルミニウム・ガリウム混
    晶(AlX GaY As:X+Y=1)成長層を構成する
    砒素(As)原子を窒素原子で置換してなる窒化砒化ア
    ルミニウム・ガリウム混晶(AlX GaYM As
    1-M :0≦X≦0.3、X+Y=1、0<M≦1)結晶
    層とのヘテロ接合を含む発光部を備えたIII 族窒化物半
    導体発光素子。
  2. 【請求項2】 砒素(As)原子の総量の80%以上を
    窒素(N)原子で置換してなる窒化砒化ガリウム・イン
    ジウム混晶(GaY InZM As1-M :0≦Z ≦1、
    Y+Z=1、0.8≦M≦1)結晶層を発光層とする発
    光部を備えた請求項1に記載のIII 族窒化物半導体発光
    素子。
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JP2002261335A (ja) * 2000-07-18 2002-09-13 Sony Corp 画像表示装置及び画像表示装置の製造方法

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