JPH11322796A - 色素標識タンパク質複合体およびその製造方法 - Google Patents
色素標識タンパク質複合体およびその製造方法Info
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Abstract
複合体を提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明による色素標識タンパク質複合体
は、ジスルフィド結合によってタンパク質と結合した抗
体からなるタンパク質複合体が、次式(ただし、R1お
よびR2は水素またはアルキル基、Xはハロゲン、Mは
水素またはアルカリ金属、nは1〜4の整数を示す。)
で示されるシアニン系色素で標識されたものである。 【化1】
Description
した抗体からなるタンパク質複合体をシアニン系色素で
標識した色素標識タンパク質複合体およびその製造方法
に関する。
試料液中に含まれる抗原と特異的に反応し、かつ視認性
があるため、例えば、免疫学的抗原抗体反応を利用し
て、試料液中に含まれる検体の検出を行う免疫センサに
使用され、各種医療機関での診断に活用されている。抗
体を標識する色素としては、高いモル吸光係数を有し、
反応性の高いシアニン系標識色素が使用される場合が多
い(Bioconjugate Chemistry
VOL.4 No.2,pp105−111,1993)。
が抗体のアミノ基またはカルボキシル基と反応して共有
結合し、1分子の抗体に対して20〜50分子の前記色
素が結合する。このようにして作製されたシアニン系色
素標識抗体は、一般に視認性がよく、例えば免疫クロマ
トグラフィーに導入されて、妊婦の尿中にのみ存在する
ヒト絨毛性ゴナドトロピン等の微量成分を検出するのに
有効に用いられている。
から数千個のアミノ基またはカルボキシル基が存在す
る。しかし、抗体は3次元の立体構造を有するため、こ
れらの中で反応に関与できるのは50個程度であると考
えられ、1分子の抗体に対して、色素50分子が結合す
るのが限界であった。従って、この色素標識抗体を免疫
センサ等に利用した場合、検出対象物の濃度が低いと、
その検出が困難になる問題が生じた。本発明は、上記課
題に鑑み、多数の色素で標識された色素標識タンパク質
複合体およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
ンパク質複合体は、ジスルフィド結合によってタンパク
質と結合した抗体からなるタンパク質複合体が、式
(1)で示されるシアニン系色素で標識されたものであ
る。
キル基、Xはハロゲン、Mは水素またはアルカリ金属、
nは1〜4の整数を示す。)
ン系色素が結合できる面積が広がるため、タンパク質複
合体に結合するシアニン系色素の数は、抗体単体の場合
よりも多くなる。例えば、抗体1分子あたりに結合する
色素分子数が擬似的に従来法の約10倍にすることがで
きる。そのため、得られる色素標識タンパク質複合体
は、視認性に優れる。したがって、本発明による色素標
識タンパク質複合体を、例えば、免疫クロマトグラフィ
ーに用いれば、測定対象物(検体)の濃度が低い場合で
も、検体を高感度に検出できる。また、その高感度か
ら、本発明の色素標識タンパク質複合体は、バイオセン
サーにも適用可能である。また、本発明による色素標識
タンパク質複合体は、前記シアニン系色素のスクシンイ
ミジル基由来のアシル炭素と前記タンパク質複合体のア
ミノ基由来の窒素とが共有結合することにより、前記色
素の骨格がタンパク質複合体に結合している構成である
のが好ましい。
製造方法は、中性または弱アルカリ性のリン酸緩衝液中
でタンパク質を還元する工程、この緩衝液中に抗体を添
加してタンパク質複合体を作製する工程、およびこの緩
衝液中に式(1)で示されるシアニン系色素を添加して
前記タンパク質複合体を標識する工程を含む。また、中
性または弱アルカリ性のリン酸緩衝液中でタンパク質を
還元する工程、この緩衝液中に式(1)で示されるシア
ニン系色素を添加して前記還元されたタンパク質を標識
する工程、およびこの緩衝液中に前記抗体を添加する工
程を含む構成でもよい。還元されたタンパク質と抗体と
を結合させる工程の前に、抗体を中性または弱アルカリ
性のリン酸緩衝液中で、式(2)で示すようなスクシン
イミジルピリジルジチオプロピオネートを用いて標識す
る工程を含ませてもよい。いずれの方法においても、リ
ン酸緩衝液のpHは、7.0〜8.0の範囲が好まし
い。
ることができる抗体は、特に制限されず、その由来やサ
ブクラス等に関係なく使用できる。例えば、イムノグロ
ブリン(Ig)として、マウスIgG、マウスIgM、
マウスIgA、マウスIgE、ラットIgG、ラットI
gM、ラットIgA、ラットIgE、ラビットIgG、
ラビットIgM、ラビットIgA、ラビットIgE、ヤ
ギIgG、ヤギIgM、ヤギIgE、ヤギIgA、ヒツ
ジIgG、ヒツジIgM、ヒツジIgA、ヒツジIgE
等が挙げられる。これらの抗体は、市販品として入手し
ても、直接その動物から採取してもよい。
の機能を発揮しないタンパク質であればよい。また、水
溶性に富むものであればより好ましい。例えば、血清由
来のアルブミン等は、抗体の反応を阻害しないうえに、
高い水溶性を有しているので好適である。
眼で確認することが容易な赤色系統の色素で、共役炭素
の数が少ないため、シアニン系色素の中では最も水溶性
に富んでいる。式(1)において、Xで示されるハロゲ
ンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素
が挙げられる。また、Mで示される金属としては、リチ
ウム、ナトリウムおよびカリウム等が挙げられる。
結合反応のメカニズムを説明する。
し、スクシンイミジル基を有するシアニン系色素を配合
すると、前記色素のスクシンイミジル基のエステル結合
部分に、抗体のアミノ基が接近する。そして、式(4)
に示すように、前記アミノ基と前記エステル結合部分と
が反応し、前記アミノ基から水素原子が一個奪われる。
そして、このアミノ基から脱離した水素原子は、前記ス
クシンイミジル基のスクシンイミドと結合する。スクシ
ンイミドはスクシンイミジル基からヒドロキシスクシン
イミドとなって脱離し、これと同時に、前記スクシンイ
ミジル基の残りの部分と、前記水素原子が一個奪われた
アミノ基とがアミド結合を形成し、このアミド結合によ
って前記色素と前記抗体とが結合する。
ン系色素の合成経路の一例を示す。
(5)とイソプロピルメチルケトンとを酸性溶媒に溶解
し加熱することによってインドレニウムスルホネート
(6)を作製する。そして、インドレニウムスルホネー
ト(6)のアルコール溶液に金属水酸化物飽和のアルコ
ール溶液を加えることによって、インドレニウムスルホ
ネートの金属塩(7)を得る。次に、前記金属塩(7)
の有機溶媒溶液にハロゲン化アルキル酸を加えて、加熱
してカルボキシアルキルインドレニウムスルホネートの
金属塩(8)を得る。ハロゲン化アルキル酸の炭素数
は、水への溶解性を考え、1〜4が好ましい。そして、
前記金属塩(8)とN−カルボキシエチル−3,3−ジ
メチルインドレニンを塩基性有機溶媒に溶解し、加熱す
ることによってカルボン酸誘導体(9)を作製し、最後
に、カルボン酸誘導体(9)の有機溶媒溶液中に、ヒド
ロキシコハク酸イミドと、縮合剤としてジシクロヘキシ
ルカルボジイミドとを加えて攪拌することにより、式
(1)で示されるシアニン系標識色素を得る。
で示される各化合物に含まれるハロゲンとしては、例え
ばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。また、式
(1)、式(7)〜(9)で示される各化合物に含まれ
る金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウ
ムなどがあげられる。
より詳細に説明する。 《実施例1》 (1)マウスIgGのスクシンイミジルピリジルジチオ
プロピオネート標識 5mg(3.3×10-5mmol)のマウスIgG(以
下、IgGと略す。)を2mlのリン酸緩衝液(以下、
PBSという。)に溶解した。これを室温で攪拌しなが
ら、0.52mg(1.67×10-3mmol)のスク
シンイミジルピリジルジチオプロピオネート(以下、S
PDPとする。)のエタノール溶液0.1mlを滴下し
た。滴下したSPDPのエタノール溶液中には、0.5
2mg(1.67×10-3mmol)のSPDPが含ま
れていた。この後、室温で30分間攪拌した後、セファ
ロースゲル(ファルマシア社製;セファデックスG25
Mカラム)を用いて濾過し、約6mlのSPDP標識I
gG(以下、IgG−SPDPとする。)のPBS溶液
を得た。得られた溶液の濃度及び抗体に対するSPDP
の結合分子数を次のように計算して求めた。
80nmでの吸光度を測定した結果、吸光度は、1.2
5であった。次に、この溶液に、0.025mlの10
0mMのジチオスレイトール(以下、DTTとする。)
水溶液を加え、1分間静置した後、343nmでの吸光
度を測定した。得られた吸光度は0.39であった。I
gGには343nmに吸収がないので、観測された34
3nmの吸光はDTT還元によって放出されたチオピリ
ドンに由来するものである。この放出チオピリドンはS
PDPのピリジルジチオ基が還元されたもので、この濃
度は抗体に結合しているSPDPの濃度に等しい。従っ
てSPDPの濃度[SPDP]は、次のように求めるこ
とができる。ただし、チオピリドンの343nmにおけ
るモル吸光係数を8.08×103とした。 [SPDP]=0.39/(8.08×103)=4.
83×10-5(M)
Gに由来するものであるが、結合しているSPDPが2
80nmにも吸収を持つので、この影響を差し引いてI
gGの濃度[IgG]を求めると次のようになる。但
し、IgGに由来する280nmの吸光度をAb280,
IgGとし、SPDPの280nmにおけるモル吸光係数
を5.1×103、IgGの280nmにおけるモル吸
光係数を2.10×105とした。 Ab280,IgG =1.25−(4.83×10ー5×5.
1×103)=1.00 [IgG]=1.00/(2.10×105)=4.7
8×10-6(M) したがって、IgG1分子当たりに結合したSPDPの
分子数は次のようになった。 [SPDP]/[IgG]=4.83×10-5/4.78
×10-6=10.1(個)
トールによる還元 110mgのウシ血清アルブミン(以下、BSAとい
う。)を10mlのPBSに溶解し、これに1mlのP
BSに溶解した77mgのDTTを加えて室温で15分
間攪拌した。速やかにセファデックスG25Mカラムを
用いてゲル濾過し、約24mlのBSA(SHfre
e)のPBS溶液を得た。
P−BSA)の作製 得られたBSA(SHfree)溶液は、速やかに上記
で得られたIgG−SPDPのPBS溶液(6ml)と
混合し、4℃で20時間静置した。未反応のBSAを除
くため、PBSに防腐剤としてナトリウムアジドを添加
した溶液(以下、PBS・Azという。)20リットル
(5リットル×4)に対して透析し、約25mlのIg
G−SPDP−BSAのPBS溶液を得た。
P−BSA)の色素標識 式(1)で示す色素122.7mgを1mlのPBSに
溶解し(総タンパク量の400倍等量)、色素溶液(以
下、SLIC1とする。)を調製した。ただし、式
(1)におけるXはヨウ素、Mはカリウム、炭素数nは
2のものを用いた。そして、SLIC1を、(3)で得
られたIgG−SPDP−BSA溶液(総タンパク量を
3.18×10-4mmolとする)にゆっくりと滴下し
た。この後、4℃で20時間静置した後、未反応の色素
分子を除くため20リットルのPBS・Azに対して透
析して、約26mlのSLIC1標識タンパク質複合体
のPBS溶液を得た。得られたSLIC1標識タンパク
質複合体の、タンパク質複合体1分子あたりのSLIC
1の分子数を次のように計算して求めた。
を測定した。吸光度は80であった。IgG−SPDP
−BSAは430nmに吸収を持たないので、観測され
た吸光は結合したSLIC1に由来するものである。し
たがって、SLIC1の濃度[SLIC1]は次のよう
に求めることができる。ただし、SLIC1の430n
mにおけるモル吸光係数を1×105とする。 [SLIC1]=80/1×105=8.0×10
-4(M) SLIC1標識タンパク質複合体のPBS溶液中のIg
Gの濃度[IgG]を1.06×10-6M(SPDP標
識以降の各ステップで、IgGの損失がないものとす
る。)として、タンパク質複合体1分子あたりのSLI
C1の分子数を求めると次のようになる。 [SLIC1]/[IgG]=8.0×10-4/1.06×
10-6=755(個)
を行った。全体量は6ml、IgG濃度は4.10×1
0-6M、そしてIgG1分子あたりのSPDPの分子数
は11.5個であった。
0mlのPBSに溶解した。次に、これを室温で撹拌し
ながら、SLIC1をゆっくりと1ml滴下した。ただ
し、滴下したSLIC1中には、実施例1と同様の色素
が、162.7mg(0.162mmol、100等
量)が含まれていた。この後、4℃で一晩攪拌した後、
20リットル(5リットル×4)のPBS・Azに対し
て透析し、6mlのSLIC1標識BSAのPBS溶液
を得た。溶液の濃度、およびBSA1分子あたりに結合
しているSLIC1の分子数を次のように計算して求め
た。
nmにおける吸光度を測定した。吸光度はそれぞれ9.
6、および59.0であった。BSAは430nmに吸
収を持たないので、観測された430nmの吸光はBS
Aに結合したSLIC1に起因するものである。したが
って、SLIC1の濃度[SLIC1]は次のように求
めることができる。ただし、SLIC1の430nmに
おけるモル吸光係数を1×105とする。 [SLIC1]=59.0/1×105=5.9×10
-4(M)
Aに由来するものであるが、結合しているSLIC1が
280nmにも吸収を持つので、この影響を差し引いて
BSAの濃度[BSA]を求めると次のようになる。た
だし、BSAに由来する280nmの吸光度をA
b280,BSAとし、SLIC1の280nmにおけるモル
吸光係数を9.8×103、BSAの280nmにおけ
るモル吸光係数を4.36×104とする。 Ab280,BSA=9.6−(5.9×10-4×9.8×1
03)=3.818 [BSA]=3.818/4.36×104=8.76
×10-5(M) したがって、BSA1分子当たりに結合したSLIC1
の分子数は次のようになる。 [SLIC1]/[BSA]=5.9×10-4/8.76×
10-5=6.7(個)
l)に、1mlのPBSに溶解した100mgのDTT
(最終濃度50mM)を加えて室温で15分間攪拌し
た。速やかにセファデックスG25Mカラムを用いてゲ
ル濾過し、約24mlのBSA−SLIC1(SHfr
ee)のPBS溶液を得た。
述のSPDP標識IgG溶液とを混合し、4℃で一晩攪
拌した後、20リットルのPBS・Azに対して透析
し、未反応のBSA−SLIC1を除いた。約30ml
の色素標識タンパク質複合体のPBS溶液を得た。得ら
れたSLIC1標識タンパク質複合体1分子あたりのS
LIC1の分子数を次のように計算して求めた。
を測定した。吸光度は30.2であった。IgGは43
0nmに吸収を持たないので、観測された吸光はBSA
に結合したSLIC1に由来するものである。したがっ
て、SLIC1の濃度[SLIC1]は次のように求め
ることができる。ただし、SLIC1の430nmにお
けるモル吸光係数を1×105とする。 [SLIC1]=30.2/1×105=3.02×1
0-4(M) SLIC1標識タンパク質複合体のPBS溶液中のIg
Gの濃度[IgG]を8.20×10-7M(SPDP標
識以降の各ステップで、IgGの損失がないものとす
る。)として、タンパク質複合体1分子あたりのSLI
C1の分子数を求めると次のようになる。 [SLIC1]/[IgG]=3.02×10-4/8.20
×10-7=368(個)
ンパク質複合体は、タンパク質1分子あたりに結合して
いる色素分子数が擬似的に従来法の約10倍になる。そ
のため、例えば、これを免疫クロマトを利用したセンサ
ーに導入すると、高感度のセンサーを作製することがで
きる。
Claims (4)
- 【請求項1】 ジスルフィド結合によってタンパク質と
結合した抗体からなるタンパク質複合体が、式(1)で
示されるシアニン系色素で標識された色素標識タンパク
質複合体。 【化1】 (ただし、R1およびR2は水素またはアルキル基、Xは
ハロゲン、Mは水素またはアルカリ金属、nは1〜4の
整数を示す。) - 【請求項2】 前記シアニン系色素のスクシンイミジル
基由来のアシル炭素と前記タンパク質複合体のアミノ基
由来の窒素との共有結合により前記色素の骨格がタンパ
ク質複合体に結合している請求項1記載の色素標識タン
パク質複合体。 - 【請求項3】 中性または弱アルカリ性のリン酸緩衝液
中でタンパク質を還元する工程、この緩衝液中に抗体を
添加してタンパク質複合体を作製する工程、およびこの
緩衝液中に式(1)で示されるシアニン系色素を添加し
て前記タンパク質複合体を標識する工程を含むことを特
徴とする色素標識タンパク質複合体の製造方法。 【化2】 (ただし、R1およびR2は水素またはアルキル基、Xは
ハロゲン、Mは水素またはアルカリ金属、nは1〜4の
整数を示す。) - 【請求項4】 中性または弱アルカリ性のリン酸緩衝液
中でタンパク質を還元する工程、この緩衝液中に式
(1)で示されるシアニン系色素を添加して前記還元さ
れたタンパク質を標識する工程、およびこの緩衝液中に
前記抗体を添加する工程を含むことを特徴とする色素標
識タンパク質複合体の製造方法。 【化3】 (ただし、R1およびR2は水素またはアルキル基、Xは
ハロゲン、Mは水素またはアルカリ金属、nは1〜4の
整数を示す。)
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