JPH11319963A - プレス割れ抑制方法 - Google Patents

プレス割れ抑制方法

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JPH11319963A
JPH11319963A JP10129039A JP12903998A JPH11319963A JP H11319963 A JPH11319963 A JP H11319963A JP 10129039 A JP10129039 A JP 10129039A JP 12903998 A JP12903998 A JP 12903998A JP H11319963 A JPH11319963 A JP H11319963A
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JP
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press
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JP10129039A
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English (en)
Inventor
Atsushi Ogawa
淳 小川
Kenji Tamada
健二 玉田
Akihito Sato
章仁 佐藤
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】素材をプレス成形するに先立ち、その素材に局
部的に設定された予定圧縮部位を圧縮加工してその予定
圧縮部位を加工硬化させ、それにより、プレス成形時に
素材に割れが発生することを抑制する方法において、圧
縮加工に必要な力を低減させる。 【解決手段】その圧縮加工を、予定圧縮部位22の表面
に塑性変形により複数のディンプル54が形成されるよ
うに行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、素材のプレス成形
時にその素材に割れが発生することを抑制するプレス割
れ抑制方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】そのプレス割れ抑制方法の一従来例が特
開平8−117879号公報に記載されている。これ
は、素材をプレス成形するに先立ち、その素材のうちプ
レス成形時に割れが発生し易い部位を予定圧縮部位とし
て、その表面に圧縮工具をそれの平らな加工面において
押圧することにより、その予定圧縮部位を圧縮加工して
加工硬化させ、それにより、プレス成形時に素材に割れ
が発生することを抑制する方法である。すなわち、素材
の材料的性質を加工硬化により局部的に向上させること
により、プレス割れを抑制する方法なのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用お
よび発明の効果】上記圧縮加工はできる限り小さい力で
行い得ることが望ましい。しかし、上記従来のプレス割
れ抑制方法においては、圧縮工具をそれの平らな加工面
において素材の表面に押圧することにより圧縮加工が行
われる。そのため、この従来方法には、圧縮加工に大き
な力が必要であるという問題があった。このような事情
を背景として、本発明は、圧縮加工をできる限り小さい
力で行い得るプレス割れ抑制方法を提供することを課題
としてなされたものである。その課題は、下記の本発明
の各態様によって解決される。なお、以下の説明におい
て、本発明の各態様を、それぞれに項番号を付して請求
項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わ
せて採用することの可能性を明示するためであるが、こ
こに記載された組合せ以外の組合せを採用することを排
除したり、ここに記載された特徴以外の特徴を組み合わ
せることを排除するものではない。
【0004】(1) 素材をプレス成形するに先立ち、その
素材に局部的に設定された予定圧縮部位をその表面に塑
性変形によって複数のディンプルが形成されるように圧
縮加工してその予定圧縮部位を加工硬化させ、それによ
り、プレス成形時に素材に割れが発生することを抑制す
ることを特徴とするプレス割れ抑制方法〔請求項1〕。
本発明者らの研究により、素材の予定圧縮部位の表面を
塑性変形によりその表面に複数のディンプルが形成され
るように圧縮加工する場合には、その予定圧縮部位の表
面を平らな加工面を有する圧縮工具により圧縮加工して
その予定圧縮部位に塑性変形を生じさせる場合とほぼ同
等のレベルで、場合によってはそれより高いレベルで、
プレス成形時における素材割れが抑制されることが確認
された。一方、予定圧縮部位の表面をその表面に複数の
ディンプルが形成されるように圧縮加工する場合には、
平らな加工面を有する圧縮工具により圧縮加工する場合
におけるより、圧縮加工に必要な力が小さくなることも
確認された。そのような知見に基づいて本項に記載の方
法がなされたのであり、したがって、この方法によれ
ば、平らな加工面を有する圧縮工具を使用する場合にお
けるより小さい力で圧縮加工を行うことができる上に、
平らな加工面を有する圧縮工具を使用する場合に比べて
劣らないレベルで、プレス成形時における素材割れを抑
制できる。ここに「プレス成形」には例えば、絞り加
工,しごき加工,バルジ張出し加工,フランジ加工,曲
げ加工,ねじり加工等が含まれる。また「素材」には、
板材のみならずブロック材も含まれる。また「圧縮加
工」の方式には、工具をそれの加工面に形成された少な
くとも一つの点状突起において素材の表面に押圧する方
式や、鋼球等、ショットを少なくとも一つ、空気圧,遠
心力等によって加速して素材の表面に衝突させる方式
(吹付け加工)がある。また「圧縮加工」は例えば、素
材の両面の一方にのみディンプルが塑性変形により形成
される一方、それに起因した塑性変形が他方には生じな
いように行うことができる。 (2) 前記予定圧縮部位が、前記素材のうちプレス成形時
に割れが発生し易い破断危険部位を含む(1) 項に記載の
プレス割れ抑制方法。 (3) 前記圧縮加工が、その圧縮加工を受けた前記素材を
破断させた場合にその破断形態が前記複数のディンプル
への応力集中を支配因子とする破断形態とならない強さ
で行われる(1) または(2) 項に記載のプレス割れ抑制方
法〔請求項2〕。圧縮加工の程度が強いほど、素材の材
料的性質(例えば、降伏点)は向上するが、強すぎる
と、素材の破断形態が、素材のうち圧縮加工が行われた
部位への応力集中を支配因子として破断する形態となっ
てしまい、この形態は、製品設計上、素材が結晶の滑り
を支配因子として破断する形態より望ましくない。これ
に対して、本項に記載の方法によれば、応力集中を支配
因子とする破断を防止しつつ、素材の材料的性質を向上
させ得る。 (4) 前記圧縮加工が、その圧縮加工により前記予定圧縮
部位に形成されるディンプルの深さを予定圧縮部位の原
板厚で割った値が約53%以下となるように行われる
(3) 項に記載のプレス割れ抑制方法。 (5) 前記圧縮加工が、前記予定圧縮部位をその圧縮加工
により形成される前記ディンプルを通過する一平面で切
断した断面につき、そのディンプルの断面積を予定圧縮
部位の、ディンプル1個当たりの原断面積で割った値が
約48%以下となるように行われる(3) 項に記載のプレ
ス割れ抑制方法。 (6) 前記圧縮加工が、その圧縮加工により前記予定圧縮
部位に形成されるディンプルの体積を予定圧縮部位の、
ディンプル1個当たりの原体積で割った値が約7%以下
となるように行われる(3) 項に記載のプレス割れ抑制方
法。 (7) 前記圧縮加工が、前記複数のディンプルの、前記プ
レス成形時に前記予定圧縮部位に引張力が作用する方向
と直角な方向における間隔より、それら複数のディンプ
ルをその引張力作用方向において投影することにより得
られる複数の投影ディンプルの間隔の方が小さくなるよ
うに行われる(1) ないし(6) 項のいずれかに記載のプレ
ス割れ抑制方法。この方法によれば、プレス成形時に予
定圧縮部位に引張力が作用する方向において複数のディ
ンプルを見た場合のディンプル間の間隔が、それら複数
のディンプルを予定圧縮部位の表面に直角な方向におい
て見た場合のディンプル間の間隔と等しい場合に比較し
て、複数のディンプルが、みかけ上、引張力作用方向と
直角な方向においてより密に配置されることとなり、よ
って、それら複数のディンプルが、素材のその引張力に
起因する割れの抑制に効果的に作用する。 (8) 前記圧縮加工が、少なくとも一つの点状突起が形成
された加工面を有する圧縮工具を前記予定圧縮部位の表
面に押圧することにより行われる(1) ないし(7) 項のい
ずれかに記載のプレス割れ抑制方法。なお「点状突起」
の形状には、角を有しない形状や、角を有する形状があ
り、また、角を有しない形状には、半球等があり、ま
た、角を有する形状には、正多角錐,正多角錐台等があ
る。なお、この解釈は他の項における「点状突起」につ
いても妥当する。 (9) 前記圧縮加工が、複数の点状突起が形成された加工
面を有する圧縮工具を前記予定圧縮部位の表面に押圧す
ることにより行われる(1) ないし(7) 項のいずれかに記
載のプレス割れ抑制方法。この方法によれば、同じ圧縮
工具に複数の点状突起が形成されているため、同じ圧縮
工具に点状突起が一つしか形成されていない場合に比較
して、圧縮加工を能率よく行うことが可能となる。 (10)前記圧縮加工が、複数の点状突起が表面に形成され
た圧縮加工用ロールが前記予定圧縮部位の表面に押圧さ
れつつ転がるようにそれら圧縮加工用ロールと予定圧縮
部位とが相対運動させられることにより行われる(1) な
いし(7) 項のいずれかに記載のプレス割れ抑制方法〔請
求項3〕。この方法によれば、ロール表面に形成された
複数の点状突起のすべてが一度に予定圧縮部位の表面に
押圧されるのではなく、順次押圧されるため、同じ数の
点状突起が一平面に並んで形成された加工面を有する圧
縮工具を用いる場合におけるより、圧縮加工に必要な力
が小さくて済む。 (11)前記圧縮加工が、圧縮工具と前記予定圧縮部位とを
その予定圧縮部位の表面と交差する方向に相対的に接近
させて圧縮工具を予定圧縮部位の表面に押圧することに
より行われ、それら圧縮工具と予定圧縮部位との接近限
度が、圧縮工具またはそれと一緒に運動する部材に設け
られたストッパが前記素材の表面に当接することにより
規制される(1) ないし(9) 項のいずれかに記載のプレス
割れ抑制方法〔請求項4〕。この方法によれば、素材板
厚のばらつきにもかかわらず、圧縮加工の強さを安定化
させ得る。 (12)前記素材が、板状を成すとともに、前記プレス成形
に先立ち、その素材より大きいプレス用鋼板が切断され
て製造されるものであり、前記圧縮加工が、その切断と
並行して行われる(1) ないし(11)項のいずれかに記載の
プレス割れ抑制方法〔請求項5〕。この方法によれば、
圧縮加工と切断とを互いに異なる時期に行う場合に比較
して、それら圧縮加工と切断とを行うのに必要な時間を
短縮し得る。 (13)(1) ないし(12)項のいずれかに記載のプレス割れ抑
制方法に従って前記予定圧縮部位に前記複数のディンプ
ルを形成するディンプル形成工程と、そのディンプル形
成工程の実行後に、前記素材を成形するプレス成形工程
とを含むことを特徴とするプレス加工方法。 (14)素材に局部的に設定された予定圧縮部位の表面に押
圧されることにより、その予定圧縮部位を圧縮加工して
加工硬化させる圧縮工具と、その圧縮工具を前記素材の
表面に押圧する押圧装置と、それら圧縮工具と押圧装置
とにより素材に対して行われる前記圧縮加工の強さを複
数の素材間で安定化させる圧縮加工度安定化装置とを含
むことを特徴とする圧縮加工装置〔請求項6〕。この装
置によれば、素材に対して行われる圧縮加工の強さを複
数の素材間で安定化させ得る。ここに「圧縮加工の強
さ」は例えば、前記(4) 項における「ディンプルの深さ
を予定圧縮部位の原板厚で割った値」,前記(5) 項にお
ける「ディンプルの断面積を予定圧縮部位の原断面積で
割った値」,前記(6) 項における「ディンプルの体積を
予定圧縮部位の原体積で割った値」等として表現するこ
とができる。なお、本項に記載の装置は、前記(1) ない
し(13)項のいずれかに記載の方法を実施するために用い
ることができるのはもちろんであるが、それ以外の方法
を実施するために用いることもできる。 (15)前記圧縮加工度安定化装置が、前記圧縮工具が前記
素材に接近する接近限度位置と圧縮工具が素材に押圧さ
れる押圧力との少なくとも一方を制御することにより、
前記圧縮加工の強さを複数の素材間で安定化させるもの
である(14)項に記載の圧縮加工装置。 (16)前記圧縮加工度安定化装置が、前記圧縮工具または
それと一緒に運動する部材に設けられ、前記素材の表面
に当接してそれら圧縮工具と素材との接近限度を規制す
るストッパを含む(14)または(15)項に記載の圧縮加工装
置。この装置によれば、圧縮加工が行われるべき素材表
面の位置を利用した比較的簡単な構造により、素材板厚
のばらつきにもかかわらず、圧縮加工の強さを安定化さ
せ得る。 (17)前記素材が、板状を成すとともに、プレス成形に先
立ち、その素材より大きいプレス用鋼板が、プレス切断
装置において一対の型の相対移動によって相対移動させ
られる一対の切刃により切断されて製造されるものであ
り、前記圧縮工具が、前記一対の型の一方に、前記素材
の表面と交差する方向において移動可能に取り付けられ
ており、前記圧縮加工度安定化装置が、(a) 前記一方の
型のうち前記圧縮工具が取り付けられたものに取り付け
られた駆動源と、(b) その駆動源により前記圧縮工具が
前記素材の表面に押圧される力を調整する押圧力調整装
置とを含む(14)または(15)項に記載の圧縮加工装置。こ
の装置によれば、圧縮工具が素材表面に押圧される力が
調整可能とされることにより、素材に対して行われる圧
縮加工の強さを複数の素材間で安定化させ得る。さら
に、この装置によれば、圧縮加工を素材切断と並行して
行い得ることにより、それら圧縮加工と素材切断とを行
うのに必要な時間を短縮化し得る。さらにまた、圧縮加
工に必要な力を素材切断に必要な力から独立して設定可
能となり、圧縮加工と素材切断とをそれぞれに好適な条
件下に行い得る。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明のさらに具体的な実
施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0006】図1には、本発明の第1実施形態であるプ
レス割れ抑制方法を含むプレス加工方法の内容が経時的
に示されている。図示の例においては、プレス加工方法
が、板状の素材10を成形して製品としての自動車のド
アパネルインナ20を製造するために行われる。
【0007】具体的には、このプレス加工方法において
は、まず、素材10を得るために、図示しないプレス用
鋼板を適当なサイズに切断するためのせん断が行われ
る。次に、切断された素材10のうちの予定圧縮部位2
2に対してディンプル圧縮が行われる。予定圧縮部位2
2の表面に塑性変形により複数の圧痕部としての複数の
ディンプルが形成されるのである。本実施形態において
は、予定圧縮部位22が、プレス成形時に素材10に割
れが発生し易い部位である破断危険部位24に設定され
ている。破断危険部位24は例えば、素材10のうち深
絞りによるポンチ肩破断が生じ易い部位としたり、張出
し破断が生じ易い部位としたり、伸びフランジ破断が生
じ易い部位とすることができる。予定圧縮部位22は、
それに対してディンプル圧縮が行われることにより、加
工硬化が生じさせられたディンプル圧縮部位26とな
る。ディンプル圧縮後に図示しないプレス成形型により
プレス成形が行われる。すなわち、このプレス加工方法
は、せん断工程とプレス割れ抑制方法としてのディンプ
ル圧縮工程とプレス成形工程とを含むように構成されて
いるのである。
【0008】図2には、そのプレス割れ抑制方法を実施
するのに好適な圧縮加工装置30が示されている。この
圧縮加工装置30は基本的には、通常のプレス型(プレ
ス成形型を含む)と同じ構造を有している。具体的に
は、ラム32とボルスタ34とを備えていて、ラム32
には上型36、ボルスタ34には下型38がそれぞれ固
定されている。上型36には、圧縮加工により素材10
に複数のディンプルを形成するための圧縮工具40が取
り付けられている。また、上型36には、下型38との
衝撃を緩和するために、ウレタンゴム製のクッション4
4が設置されている。
【0009】圧縮工具40には図3に示すように、加工
面50が形成されている。加工面50には、各々半球状
を成す複数の点状突起52が一平面上において縦横にほ
ぼ等間隔で配置させられている。点状突起52の半径は
例えば、約0.5mm〜約2.0mmの範囲内の値とす
ることができる。図4には、その加工面50が素材10
の予定圧縮部位22の表面に押圧されることにより、そ
の表面に複数のディンプル54が配置されるパターンが
概念的に示されている。同図にはさらに、プレス成形時
に予定圧縮部位22に、その素材10の表面上において
互いに直交する2軸のいずれの方向にも引張力が作用す
る様子も概念的に示されている。複数のディンプル54
が並ぶ方向は、引張力の作用方向に平行とされている。
【0010】図2に示すように、圧縮工具40は上型3
6に、加工面50が下型38を向く姿勢で取り付けられ
ている。一方、下型38にその加工面50に対向する位
置において当て具(バッキング部材)60が取り付けら
れている。当て具60は、圧縮工具40に対向する平ら
な当て面62を有している。当て具60はその当て面6
2において素材10を下方から支持しており、ラム32
が圧縮工具40が当て具60に接近するように駆動され
ることにより、それら圧縮工具40と当て具60とで素
材10を挟み、圧縮工具40が素材10に押圧され、そ
れにより、素材10がそれの板厚方向(素材10の表面
と交差する方向)に圧縮される。
【0011】下型38には、当て具60から水平方向に
離れた位置において、素材10を下方から支持する複数
の支持部64が形成されている。素材10は、それら複
数の支持部64と上記当て具60とにより、下方から支
持されるとともに上下方向における位置が規制される。
下型38には、それの複数箇所においてゲージ68が取
り付けられている。複数のゲージ68は、素材10の水
平方向における位置を規制するために設けられている。
【0012】ところで、圧縮加工は、プレス成形時に素
材10に破断危険部位24において割れが発生しないよ
うにするために行われ、一方、そのためには、圧縮加工
により、素材10の材料的特性値としての降伏点YPが
破断危険部位24において上昇させられることが望まし
い。そこで、本発明者らは、圧縮加工の強さと降伏点Y
Pの上昇率との関係を把握するために実験を行った。
【0013】図5には、その実験に用いられた試験片7
0が示されている。この試験片70は、SPCE相当の
鋼板であり、板厚は1.0mmである。この試験片70
の形状および寸法は、JIS Z 2201に示されて
いる5号試験片と同じとされている。試験片70の中央
部は、同一断面を有する平行部72とされている。この
平行部72の中央に位置する長さが30mmの部分が、
試験片70にとっての予定圧縮部位74とされている。
【0014】図6には、その実験に用いられた圧縮工具
80の形状が示されている。この圧縮工具80の形状
は、図2および図3に示す圧縮工具40と基本的には共
通するが、細部においては異なっている。具体的には、
図6に示すように、加工面82のうち、予定圧縮部位7
4に変形力が作用する方向、すなわち、試験片70の長
手方向と平行な方向における両端部において傾斜部84
が設けられていて、圧縮加工の強さが予定圧縮部位74
の境界を長手方向に通過する際に徐々に変化するように
なっている。試験片70の材料的性質が予定圧縮部位7
4の境界において急変すると、その境界において試験片
70が破断し易くなるからである。さらに、図7に示す
ように、加工面82に、予定圧縮部位74に引張力が作
用する方向と直角な方向、すなわち、試験片70の幅方
向と平行な方向に一定ピッチ(3mm)で一列に並んだ
複数の点状突起86から成る突起列が複数、一定ピッチ
(3mm)で試験片70の長手方向に並んでいるが、互
いに隣接する突起列間で位相が半ピッチ分ずらされてい
る。複数の点状突起86を試験片70の長手方向におい
て見た場合に複数の点状突起86が狭い間隔で配置され
るようにし、それにより、試験片70に、それの長手方
向に延びる領域であって点状突起86が存在しないもの
ができる限り発生しないようになっている。
【0015】試験片70は、そのような圧縮工具80に
より圧縮加工され、その後、その試験片70に対して、
試験片70の両端部である一対のつかみ部88をつかみ
装置によりつかんで試験片70の長手方向にのみ引っ張
る一軸引張試験が行われ、その際、試験片70の降伏点
YPが測定される。
【0016】図8には、その一軸引張試験の結果に基づ
いて把握された面積比とYP上昇率との関係がグラフ
(ただし、丸印でプロットしたもの)で示されている。
【0017】ここに、面積比は、圧縮加工により予定圧
縮部位74に形成されるディンプルの断面積を予定圧縮
部位74の原断面積で割った値であると定義されてい
る。具体的には、まず、図9の(a) に示すように、圧縮
工具80により複数のディンプル90が形成された試験
片70の一代表断面が、試験片70の幅方向に、一列を
成すディンプル90の数と同数、仮想的に分割される。
次に、同図の(b) に示すように、仮想的に分割された複
数の要素のうちの一代表要素につき、その代表要素に形
成されたディンプル90の断面積がその代表要素の原断
面積(ディンプル90の形成前の、ディンプル1個当た
りの断面積)で割り算され、その結果値が面積比とされ
る。
【0018】また、降伏点YPの上昇率は、圧縮加工後
における予定圧縮部位74の降伏点YPから原降伏点を
引いた値である上昇量ΔYPを原降伏点YPで割った値
であると定義されている。
【0019】そして、図8のグラフ(ただし、丸印でプ
ロットしたもの)から明らかなように、圧縮加工が面積
比が約33%ないし約55%の間で行われれば、予定圧
縮部位74の降伏点YPが約7%ないし約20%の間で
上昇することが確認された。
【0020】本発明者らは、さらに、圧縮加工の強さと
試験片70の破断形態との関係を把握するために、圧縮
加工後の試験片70に対して上記の場合と同様にして一
軸引張試験を、試験片70が破断するまで行った。その
結果、図8に示すように、面積比が約46%以下の領域
Iでは、図10に示すように、滑りを支配因子とする破
断(図においては単に「滑りによる破断」と称する)が
生じることが確認され、また、面積比が約48%以上の
領域III では、応力集中を支配因子とする破断(図にお
いては単に「応力集中による破断」と称する)が生じる
ことが確認され、また、面積比が約46%以上かつ約4
8%以下の領域IIでは、滑りを支配因子とする破断と応
力集中を支配因子とする破断との中間の性質を有する破
断が生じることが確認された。
【0021】したがって、素材10の破断危険部位24
の破断が応力集中を支配因子とする破断として生ずるこ
とがないようにするためには、圧縮加工を面積比が約4
8%以下となるように行うことが望ましく、また、滑り
を支配因子とする破断として生じるようにするために
は、圧縮加工を面積比が約46%以下となるように行う
ことが望ましい。
【0022】図11には、圧縮加工の強さと降伏点YP
の上昇率との関係が、体積比と降伏点YPの上昇率との
関係としてグラフ(ただし、丸印でプロットしたもの)
で示されている。ここに、体積比は、試験片70の予定
圧縮部位74が、図12に示すように、その予定圧縮部
位74に形成されたディンプル90の数と同数の要素
(六角柱を成す)に仮想的に分割され、それら複数の要
素のうちの一代表要素に形成されたディンプル90の体
積をその代表要素の原体積(ディンプル形成前の、ディ
ンプル1個当たりの体積)で割った値であると定義され
ている。図11のグラフから明らかなように、圧縮加工
を体積比が約2%ないし約10%の間で行った場合に
は、予定圧縮部位74の降伏点YPが約6%ないし約2
0%の間で上昇することが確認された。
【0023】図13には、圧縮加工の強さと降伏点YP
の上昇率との関係が、圧縮率と降伏点YPの上昇率との
関係としてグラフで示されている。ただし、試験片70
の板厚が0.65mmの場合と1.00mmの場合とに
ついて示されている。ここに、圧縮率は、図14に示す
ように、予定圧縮部位74に形成されたディンプル90
の深さをh、予定圧縮部位74の原板厚をtとした場合
に、深さhを原板厚tで割った値であると定義されてい
る。また、図13には、圧縮率と試験片70の破断形態
との関係も示されている。
【0024】そして、同図から、素材10の破断危険部
位24の破断が応力集中を支配因子とする破断として生
じることがないようにするためには、圧縮加工を圧縮率
が約53%以下となるように行うことが望ましく、ま
た、滑りを支配因子とする破断として生じるようにする
ためには、圧縮加工を圧縮率が約44%以下となるよう
に行うことが望ましいことが分かる。
【0025】ところで、本発明者らは、上記実験結果と
比較するため、試験片の表面を複数の点状突起ではなく
一平面で圧縮加工する実験も行った。図15には、その
ときの圧縮工具100が示されている。圧縮工具100
は、平らな加工面102を有する。図16には、その実
験に用いられた試験片104が示されている。この試験
片104は先の実験に用いられた試験片70と同じ形状
とされている。ただし、試験片104の平行部72の中
央における長さ10mmの部分のみが予定圧縮部位10
6とされ、その部分が圧縮工具100により圧縮加工さ
れる。
【0026】圧縮工具100により圧縮加工した場合の
面積比と降伏点YPの上昇率との関係は図8に、黒い四
角形の印でプロットしたグラフで示されている。面積比
は、圧縮工具80により圧縮加工する場合におけると同
じように定義されていて、図17に示すように、圧縮加
工により予定圧縮部位106に形成された凹み108の
断面積を予定圧縮部位106の原断面積で割った値とさ
れている。図8の、黒い四角形の印でプロットしたグラ
フから明らかなように、試験片104の表面を一平面で
局部的に圧縮加工する場合には、圧縮加工を面積比が約
2%ないし約12%の間で行うと、予定圧縮部位106
の降伏点YPが約1%ないし約17%の間で上昇するこ
とが確認された。
【0027】圧縮工具100により圧縮加工した場合の
体積比と降伏点YPの上昇率との関係は図11に、黒い
四角形の印でプロットしたグラフで示されている。体積
比は、圧縮工具80により圧縮加工する場合におけると
同じように定義されていて、図18に示すように、圧縮
加工により予定圧縮部位106に形成された凹み108
の体積を予定圧縮部位106の原体積で割った値とされ
ている。図11の、黒い四角形の印でプロットしたグラ
フから明らかなように、試験片104の表面を一平面で
局部的に圧縮加工する場合には、圧縮加工を体積比が約
2%ないし約12%の間で行うと、予定圧縮部位106
の降伏点YPが約1%ないし約17%の間で上昇するこ
とが確認された。
【0028】図19には、圧縮工具100により圧縮加
工した場合の圧縮率と降伏点YPの上昇率との関係がグ
ラフで示されている。圧縮率は、圧縮工具80により圧
縮加工する場合におけると同じように定義されていて、
図20に示すように、予定圧縮部位106に形成された
帯状の凹み108の深さをh、予定圧縮部位106の原
板厚をtとした場合に、深さhを原板厚tで割った値と
されている。図19のグラフから明らかなように、試験
片104の表面を一平面で局部的に圧縮加工する場合に
は、圧縮加工を圧縮率が約2%ないし約12%の間で行
うと、予定圧縮部位106の降伏点YPが約2%ないし
約17%の間で上昇することが確認された。
【0029】図21には、試験片70の相当塑性ひずみ
(塑性ひずみの一例)が、点状突起86を有する圧縮工
具80による圧縮加工によって低減される様子がグラフ
で示されている。このグラフにおいては、縦軸に相当塑
性ひずみが取られる一方、横軸にひずみ測定位置の番号
が取られている。測定位置の番号は、試験片70の平行
部72についてそれの一端部から他端部に向かって1ず
つ増加するように付されている。そして、試験片70の
うち測定位置7と11との間で挟まれる部分が予定圧縮
部位74である。また、相当塑性ひずみの低減効果を確
認するための試験片70の引張試験は、圧縮加工なしで
試験片70を引っ張ったときに予定圧縮部位74に15
%の相当塑性ひずみが生じたときの引張力を圧縮加工後
の試験片70に作用させることにより行われる。グラフ
から明らかなように、予定圧縮部位74の相当塑性ひず
みが、圧縮加工なしの場合には15%であったが、圧縮
加工ありの場合には、約5%にまで低減されることが確
認された。そして、同じ引張力が作用する状況におい
て、予定圧縮部位74の相当塑性ひずみが低減されるこ
とは、プレス成形時にその予定圧縮部位74に割れが発
生し難くなることを意味する。また、試験片70におい
ては、予定圧縮部位74の両側に位置する部位における
塑性相当ひずみが増加していることも確認された。
【0030】試験片70の相当塑性ひずみの分布が圧縮
加工によって変化する現象は、前記素材10について考
えると、予定圧縮部位22に複数のディンプル54が塑
性変形により形成されると、予定圧縮部位22における
相当塑性ひずみが低減される一方、素材10のうちその
予定圧縮部位22の周辺の部位における相当塑性ひずみ
が増加する現象として把握することができる。すなわ
ち、素材10の相当塑性ひずみが破断危険部位26にお
いて低減される一方、そうでない部位において増加する
現象として把握することができるのであり、このように
相当塑性ひずみが圧縮加工により、素材10の耐破断特
性に応じて適正に分布するように変化させられ、その結
果、素材10が破断危険部位26において破断すること
が抑制されるのである。
【0031】図22には、図21のグラフと比較するた
め、前記試験片104の相当塑性ひずみが、平らな加工
面102を有する圧縮工具100による圧縮加工によっ
て低減される様子がグラフで示されている。このグラフ
においても、縦軸に相当塑性ひずみが取られる一方、横
軸にひずみ測定位置の番号が取られている。測定位置の
番号は、図21のグラフにおけると異なり、試験片14
0の平行部72についてその中央位置からその平行部7
2の一端部に向かって1ずつ増加するように付されてい
る。そして、試験片104のうち測定位置1と3との間
で挟まれる部分が予定圧縮部位106である。また、相
当塑性ひずみの低減効果を確認するための試験片140
の引張試験は、圧縮加工なしで試験片104を引っ張っ
たときに予定圧縮部位106に25%の相当塑性ひずみ
が生じたときの引張力を圧縮加工後の試験片104に作
用させることにより行われる。このグラフから明らかな
ように、予定圧縮部位106の相当塑性ひずみが、圧縮
加工なしの場合には25%であったが、圧縮加工ありの
場合には、約15%にまで低減されることが確認され
た。
【0032】なお付言すれば、以上説明した実施形態に
おいては、圧縮工具40において複数の点状突起52が
配置されるパターンが、上記実験に用いた圧縮工具80
におけるパターンと異なるものとされているが、それと
同じものとすることが可能であるのはもちろんである。
【0033】さらに付言すれば、以上説明した実施形態
においては、圧縮工具40に形成される各点状突起52
の形状が、半球とされていたが、点状突起52の形状は
その他にも種々のものを採用可能である。例えば、半球
の場合とは異なり、表面に角を有するものとすることが
できる。例えば、図23に示すように、多角錐としての
四角錐120としたり、図24に示すように、多角錐の
頂点を含む部分を一平面で切り取った多角錐台としての
四角錐台122とすることができる。
【0034】また、予定圧縮部位22に複数のディンプ
ル54が配置されるパターンも種々のものを採用可能で
あり、例えば、図25に示すように、正多角形としての
正六角形の6個の頂点の位置に配置されるパターンとす
ることができる。このパターンは例えば、プレス成形時
に素材10の予定圧縮部位22にそれを変形させるよう
に作用する変形力の作用方向が予め正しく把握できない
場合に採用すれば、そのような場合であるにもかかわら
ず、プレス成形時における素材割れを有効に抑制可能と
なる。また、複数のディンプル54がランダムに配置さ
れるパターンとすることによっても、同様な効果が得ら
れる。
【0035】さらに付言すれば、プレス成形時に予定圧
縮部位22に作用する変形力の方向が予め正しく把握で
きなてもプレス成形時における素材割れを有効に抑制す
るために、例えば、図26に示すように、各々帯状また
は線状を成して真っ直ぐに延びる複数の圧痕部140で
あって、各々互いに平行な複数の圧痕部140から成る
2つのグループに分けられ、かつ、それら2つのグルー
プが互いに交差するものが形成されるように予定圧縮部
位22に圧縮加工することもできる。
【0036】さらにまた付言すれば、試験片70をそれ
の長手方向にのみ引っ張る場合のように、予定圧縮部位
22に、一平面上において互いに直交する2軸の一方に
おいては引張力、他方については圧縮力が作用する場合
には、一方の軸方向においては割れ抑制、他方の軸方向
においてはしわ抑制を行うことが望ましい。この要望を
満たすため、それら2軸にそれぞれ平行な成分を有して
それら2軸の一方(例えば、割れまたはしわを抑制する
ことを強く望む方向)に沿って真っ直ぐに延びる圧痕部
が形成されるように予定圧縮部位22を圧縮加工するこ
とが望ましく、その圧痕部は例えば、図27に示すよう
に、圧縮力が作用する方向に蛇行しつつ引張力が作用す
る方向に延びる圧痕部160とすることができる。
【0037】さらに付言すれば、素材10の予定圧縮部
位22が、互いに直交する2軸の一方のみにおいて引張
力が作用し、他方においては引張力も圧縮力も作用しな
い部位である場合には、例えば、図28に示すように、
各々帯状を成して引張力が作用する方向に互いに平行に
延びる複数の圧痕部180が形成されるように予定圧縮
部位22を圧縮加工することができる。
【0038】次に、本発明の第2実施形態であるプレス
割れ抑制方法を説明する。ただし、本実施形態は、第1
実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素につ
いては同一の符号を使用することによって詳細な説明を
省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0039】本実施形態であるプレス割れ抑制方法は、
ディンプル圧縮工程を構成するとともに、せん断工程お
よびプレス成形工程と共同してプレス加工方法を構成す
る。せん断工程においては、送り抜き型が使用され、プ
レス用鋼板が円筒状に巻かれたコイル材からプレス用鋼
板が巻ほどかれて素材10として送り抜き型に送られて
適当なサイズに切断される。その送り抜き型に圧縮加工
装置が装着されており、本実施形態においては、ディン
プル圧縮とせん断とが互いに並行して行われるようにな
っている。
【0040】図29には、その送り抜き型200が示さ
れている。この送り抜き型200は、第1実施形態にお
ける圧縮加工装置30と同様に、ラム32に固定された
上型202と、ボルスタ34に固定された下型204と
を互いに上下に対向する位置に備えている。送り抜き型
200はさらに、素材10が送られる経路上のうちの上
流位置において、素材10を下方から支持して案内する
ガイド206を備えている。さらに、送られる素材10
をそれの両側から小さい摩擦抵抗で支持して案内するガ
イドローラ208も備えている。上型202と下型20
4とには、素材10が送られる経路上のある位置におい
て、互いに共同して素材10をせん断するための一対の
切刃210,212がそれぞれ固定されている。送り抜
き型200にはさらに、一対の切刃210,212より
下流側の位置においてシュート216が設けられてい
る。このシュート216により、切断された素材10が
自重によって下方に滑り落ち、その後、図示しないプレ
ス成形型に供給される。また、送り抜き型200は、前
記圧縮加工装置30と同様に、上型202にクッション
218が装着されている。
【0041】上型202には、圧縮工具40を駆動する
駆動装置220が設けられている。この駆動装置220
は、上型202またはラム32に固定の駆動源222を
備えている。駆動源222は、エアシリンダ,油圧シリ
ンダ等、高圧の気体または液体により作動する圧力作動
装置とすることができる。駆動装置220はさらに、駆
動源222により駆動される駆動部材224を備えてい
る。駆動部材224に圧縮工具40が固定されている。
圧縮工具40は第1実施形態におけると同じ形状を有す
るものとされている。駆動装置220は、圧縮工具40
が素材10に押圧される力を適正範囲に調整する押圧力
調整装置225も備えている。この押圧力調整装置22
5は例えば、駆動源222としての圧力作動装置に接続
された電磁弁とその電磁弁を制御するコントローラとを
含むように構成される。
【0042】これに対して、下型204には、圧縮工具
40に対向する位置において、当て具226が固定され
ている。この当て具226は、素材10を下方から支持
するとともに、圧縮工具40からの力を受けて、圧縮工
具40と共同して素材10を圧縮するものである。
【0043】圧縮工具40は駆動装置220なしで直接
に上型202またはラム32である固定部材に固定する
ことが可能である。しかし、圧縮工具40が素材10を
押圧する力に適正範囲があり、一方、その適正範囲が、
素材10をせん断する力の適正範囲と一致しない場合が
ある。そのような場合においても、せん断も圧縮も適正
な力で行い得るように、本実施形態においては、送り抜
き型200には、圧縮工具40が駆動装置220を介し
て固定部材に装着されているのである。また、圧縮工具
40が素材10を押圧する力を調整可能とすれば、素材
10の板厚のばらつきにもかかわらず、素材10に対し
て行われる圧縮加工の強さを複数の素材間で安定化させ
得る。
【0044】なお付言すれば、圧縮加工をせん断と同時
に行う技術や、圧縮加工を行う加工力を調整する技術
は、圧縮工具40が素材10に接触する部分の形状の如
何を問わず、採用可能な技術である。
【0045】次に、本発明の第3実施形態であるプレス
割れ抑制方法を説明する。ただし、本実施形態は、第1
実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素につ
いては同一の符号を使用することによって詳細な説明を
省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0046】第2実施形態においては、圧縮加工を行う
加工力を調整可能に圧縮工具40を固定部材に装着する
ことにより、圧縮工具40が素材10に押圧される力が
適正範囲に調整され、それにより、素材10の実際の前
記断面比,体積比または圧縮率、すなわち、圧縮加工の
強さが適正範囲内で安定化させられる。これに対して、
本実施形態においては、より簡易な技術により、圧縮加
工の強さが安定化させられる。具体的には、図30に示
すように、第1実施形態における上型36に、素材10
の表面に当接するストッパ250が設けられ、そのスト
ッパ250により、圧縮工具40が素材10に接近する
限度が規制される。
【0047】なお付言すれば、ストッパ250により圧
縮加工の強さを安定化させる技術は、圧縮工具40が素
材10に接触する部分の形状の如何を問わず、採用可能
な技術である。
【0048】次に、本発明の第4実施形態であるプレス
割れ抑制方法を説明する。以上説明した実施形態におい
ては、圧縮工具40が、複数の点状突起52が一平面上
に、かつ、素材10の表面全体にディンプル54を形成
すべき数と同様で並んで形成されたものとされるととも
に、その圧縮工具40が素材10の表面にそれと交差す
る方向に押圧されることにより、複数のディンプル54
が一度に素材10の表面に形成されるようになってい
る。
【0049】これに対して、本実施形態においては、図
31に示すように、複数の点状突起270が表面に形成
された圧縮加工用ローラ272が圧縮工具40に代えて
使用される。それら複数の点状突起270は圧縮加工用
ローラ272の外周面に、素材10の表面全体に複数の
ディンプル54を図32に示す如く形成するのに必要な
数および配置パターンで形成されている。
【0050】図33には、その圧縮加工用ローラ272
を備えた圧縮加工装置280が示されている。この圧縮
加工装置280は、素材10を局部的に圧縮して塑性変
形させる圧縮加工部282を備えている。圧縮加工部2
82は、具体的には、素材10を上下から挟む圧縮加工
用ローラ272と当て用ローラ284との少なくとも一
方を他方に向かって加圧する加圧装置286を備えてい
る。この加圧装置286は、それら一対のローラ27
2,284間の距離が一定となるように、それら一対の
ローラ272,284の加圧を行う。圧縮加工部282
はさらに、それら一対のローラ272,284の少なく
とも一方を回転させることにより、素材10を一方向に
送る回転装置288を備えている。
【0051】圧縮加工装置280はさらに、素材10を
支持する支持部290を備えている。支持部は、素材1
0の面に沿って延びるとともにその素材10を下方から
支持して案内するガイド292を有している。
【0052】圧縮加工装置280はさらに、素材10を
保持するとともに素材10をそれの面に沿って一方向に
送る送り装置296を備えている。この送り装置296
は、素材10が送られる方向において上記圧縮加工部2
82より上流側に配置された供給ロール300と、圧縮
加工部282より下流側に配置された巻取りロール30
2とを備えている。供給ロール300には、素材10が
予め巻き付けられている。一方、巻取りロール302に
は、供給ロール300から圧縮加工部282に供給され
て圧縮加工を受けた素材10が巻き付けられる。
【0053】次に、本発明の第5実施形態であるプレス
割れ抑制方法を説明する。第1実施形態においては、複
数の点状突起52が一平面上に並んで、かつ、素材10
の表面全体にディンプル54を形成すべき数と同数で形
成された圧縮工具40が素材10の表面に押圧されるこ
とにより、複数のディンプル54が一度に素材10の表
面に形成されるようになっている。
【0054】これに対して、本実施形態においては、図
34に示すように、素材10の表面に形成すべき複数の
ディンプル54が、各々同じ数で互いに近接した複数の
グループ(図示の例では、10個のグループ)に分けら
れており、それらグループに対して圧縮加工が順次行わ
れる。そのため、複数の点状突起322が一平面上に並
んで、かつ、上記各グループに属するディンプル54の
数と同数で形成された圧縮工具322が上記圧縮工具4
0に代えて使用される。本実施形態によれば、素材10
の全体に形成すべき複数のディンプル54を一度に形成
する場合に比較して、小さな押圧力で一回の圧縮加工を
行い得る。
【0055】以上、本発明の実施形態のいくつかを図面
に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請
求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて
種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるプレス割れ抑制方
法を含むプレス加工方法の内容を経時的に示す図であ
る。
【図2】上記プレス割れ抑制方法を実施するのに好適な
圧縮加工装置を示す正面図である。
【図3】図2における圧縮工具を示す斜視図である。
【図4】図3の圧縮工具により素材の表面に複数のディ
ンプルが形成される様子を示す平面図である。
【図5】上記プレス割れ抑制方法の効果を確認するため
の引張試験に用いた試験片を示す平面図である。
【図6】その試験片を圧縮加工するために用いた圧縮工
具を示す側面図および部分拡大斜視図である。
【図7】その圧縮工具の加工面に複数の点状突起が配置
されるパターンを示す平面図である。
【図8】上記引張試験の結果に基づいて取得された面積
比と降伏点YPの上昇率との関係を示すグラフである。
【図9】その面積比の定義を説明するための断面図であ
る。
【図10】その面積比に応じて試験片の破断形態が変化
する様子を示す図である。
【図11】上記引張試験の結果に基づいて取得された体
積比と降伏点YPの上昇率との関係を示すグラフであ
る。
【図12】その体積比の定義を説明するための断面図で
ある。
【図13】上記引張試験の結果に基づいて取得された圧
縮率と降伏点YPの上昇率との関係を示すグラフと、圧
縮率に応じて試験片の破断形態が変化する様子を示す図
である。
【図14】その圧縮率の定義を説明するための断面図で
ある。
【図15】比較例としての圧縮工具を示す斜視図であ
る。
【図16】その圧縮工具により試験片が圧縮加工される
様子を示す平面図である。
【図17】その圧縮加工された試験片についての面積比
の定義を説明するための断面図である。
【図18】比較例としての圧縮工具により圧縮加工され
た試験片についての体積比の定義を説明するための断面
図である。
【図19】その試験片についての圧縮率と降伏点YPの
上昇率との関係を示すグラフである。
【図20】その圧縮率の定義を説明するための断面図で
ある。
【図21】図6の圧縮工具を用いた圧縮加工により、試
験片の予定圧縮部位における相当塑性ひずみが低減され
る様子を示すグラフである。
【図22】比較例としての圧縮工具を用いた圧縮加工に
より、試験片の予定圧縮部位における相当塑性ひずみが
低減される様子を示すグラフである。
【図23】図3の圧縮工具の加工面の形状の一変形例を
示す側面図および部分拡大斜視図である。
【図24】別の変形例を示す側面図および部分拡大斜視
図である。
【図25】予定圧縮部位に複数のディンプルが配置され
るパターンの一変形例を示す平面図である。
【図26】予定圧縮部位に形成される圧痕部の別の例を
示す平面図である。
【図27】さらに別の例を示す平面図である。
【図28】さらに別の例を示す平面図である。
【図29】本発明の第2実施形態であるプレス割れ抑制
方法を実施するのに好適な圧縮加工装置を示す正面図で
ある。
【図30】本発明の第3実施形態であるプレス割れ抑制
方法を実施するのに好適な圧縮加工装置の要部を示す正
面図である。
【図31】本発明の第4実施形態であるプレス割れ抑制
方法を実施するのに好適な圧縮加工装置における圧縮加
工用ローラを示す斜視図である。
【図32】その圧縮加工用ローラにより複数のディンプ
ルが形成された素材を示す斜視図である。
【図33】その圧縮加工用ローラを用いた圧縮加工装置
を示す正面図である。
【図34】本発明の第5実施形態であるプレス割れ抑制
方法を実施するのに用いられる圧縮工具の側面図および
背面図と、その圧縮工具により複数のディンプルが形成
された素材を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 素材 20 ドアパネルインナ 22,74 予定圧縮部位 24 破断危険部位 26 ディンプル圧縮部位 30,280 圧縮加工装置 40,322 圧縮工具 50 加工面 52,270,320 点状突起 54 ディンプル 250 ストッパ 272 圧縮加工用ローラ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】素材をプレス成形するに先立ち、その素材
    に局部的に設定された予定圧縮部位をその表面に塑性変
    形によって複数のディンプルが形成されるように圧縮加
    工してその予定圧縮部位を加工硬化させ、それにより、
    プレス成形時に素材に割れが発生することを抑制するこ
    とを特徴とするプレス割れ抑制方法。
  2. 【請求項2】前記圧縮加工が、その圧縮加工を受けた前
    記素材を破断させた場合にその破断形態が前記複数のデ
    ィンプルへの応力集中を支配因子とする破断形態となら
    ない強さで行われる請求項1に記載のプレス割れ抑制方
    法。
  3. 【請求項3】前記圧縮加工が、複数の点状突起が表面に
    形成された圧縮加工用ロールが前記予定圧縮部位の表面
    に押圧されつつ転がるようにそれら圧縮加工用ロールと
    予定圧縮部位とが相対運動させられることにより行われ
    る請求項1または2に記載のプレス割れ抑制方法。
  4. 【請求項4】前記圧縮加工が、圧縮工具と前記予定圧縮
    部位とをその予定圧縮部位の表面と交差する方向に相対
    的に接近させて圧縮工具を予定圧縮部位の表面に押圧す
    ることにより行われ、それら圧縮工具と予定圧縮部位と
    の接近限度が、圧縮工具またはそれと一緒に運動する部
    材に設けられたストッパが前記素材の表面に当接するこ
    とにより規制される請求項1または2に記載のプレス割
    れ抑制方法。
  5. 【請求項5】前記素材が、板状を成すとともに、前記プ
    レス成形に先立ち、その素材より大きいプレス用鋼板が
    切断されて製造されるものであり、前記圧縮加工が、そ
    の切断と並行して行われる請求項1ないし4のいずれか
    に記載のプレス割れ抑制方法。
  6. 【請求項6】素材に局部的に設定された予定圧縮部位の
    表面に押圧されることにより、その予定圧縮部位を圧縮
    加工して加工硬化させる圧縮工具と、 その圧縮工具を前記素材の表面に押圧する押圧装置と、 それら圧縮工具と押圧装置とにより前記素材に対して行
    われる前記圧縮加工の強さを複数の素材間で安定化させ
    る圧縮加工度安定化装置とを含むことを特徴とする圧縮
    加工装置。
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