JPH11310441A - 製鋼還元スラグの改質方法 - Google Patents

製鋼還元スラグの改質方法

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JPH11310441A
JPH11310441A JP11806398A JP11806398A JPH11310441A JP H11310441 A JPH11310441 A JP H11310441A JP 11806398 A JP11806398 A JP 11806398A JP 11806398 A JP11806398 A JP 11806398A JP H11310441 A JPH11310441 A JP H11310441A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来、再利用が困難であった製鋼還元スラグを
有効に活用できるように改質する。 【解決手段】2CaO・SiO2を含有する還元スラグを一旦冷
却してγ組織への変態を起こさせて粉体とし、その粉体
を変態温度よりも高温に加熱して、αまたは/および
α’組織に変態させ、次いで変態温度よりも低温に急冷
して、上記αまたは/およびα’組織を常温で維持せし
めることを特徴とするスラグの改質方法。この方法で改
質したスラグはセメントと同等の水硬性を有し、セメン
トの代替物もしくは添加剤、土質改良剤、または建築材
料の原料もしくは添加剤として用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鋼の精錬過程で
発生し2CaO・SiO2を含有する、いわゆる「還元スラグ」
を改質する方法、および改質したスラグを有効利用する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼製造の過程では大量の性質の異なる
スラグが発生する。その中で、高炉スラグは路盤材やセ
メント原料として、ほぼ全量が既に有効利用されてい
る。
【0003】高炉で製造した銑鉄やスクラップを原料と
して鋼を製造するための転炉や電気炉による精錬の過程
でもスラグが発生する。転炉での精錬は、酸素の吹き込
みによって炭素等の不純物を酸化除去するのが狙いであ
り、その際に生成するスラグは酸化スラグと呼ばれる。
【0004】電気炉での精錬は、酸化期と還元期とから
なり、前者でのスラグは酸化スラグ、後者でのスラグは
還元スラグと呼ばれる。また、転炉または電気炉での精
錬の後、更に鋼の純度を高めたり、成分調整を行う目的
で取鍋や特殊な炉を使用して二次精錬を行うが、このよ
うな二次精錬では還元精錬を行われるので、このとき取
鍋等の湯面に生成するスラグも還元スラグと呼ばれる。
【0005】上記の製鋼過程で発生するスラグは、精錬
する鋼種や精錬方法が異なるため、その化学組成は様々
で性質も多様である。この中で、酸化スラグ、即ち、転
炉スラグと電気炉酸化スラグは、残留している未滓化石
灰(フリーCaO)の吸湿による粉化と膨張という問題が
あるが、この分野に重点を置いた研究が従来から盛んに
行われ、フリーCaOを無害化するエージング法が開発さ
れて、路盤材などに使用する道が開けている。
【0006】一方、還元スラグは、CaO、SiO2、MgO、Al
2O3の4成分が大部分を占めるが、これらが相互に結合
した他種類の複合酸化物も生成している。その中に残留
する未滓化石灰の影響もさることながら、含有される特
定の複合酸化物の結晶組織が、高温から常温に冷却され
る過程で結晶変態を生じ、この変態が体積膨張を伴うこ
とから、スラグの一部または全体が崩壊し、自己粉化す
る特性を持つ。そのために、これを再利用するのは著し
く困難である。
【0007】図1は、CaO−SiO2の2元平衡状態図であ
る。後に説明する表1に示すように、還元スラグ中のCa
OとSiO2の含有量の比はおよそ7:3である。従って、
このスラグ中では2CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケー
ト)が形成されており、さらに3CaO・2SiO2や3CaO・SiO2
のような複合酸化物も含まれている。
【0008】上記の自己粉化の原因となる複合酸化物
は、2CaO・SiO2である。図1に示されるように、2CaO・Si
O2は、通常の自然放冷を行うと、冷却過程でα組織から
α’組織へ、更に約725℃でα’組織からγ組織に変態
する。この変態の過程で体積が約10%膨張するので上述
の崩壊、自己粉化の現象が起きるのである。
【0009】上記の崩壊が生じると、その影響は、単に
2CaO・SiO2の粉化にとどまらず、冷却の過程で分離晶出
したCaOおよび結晶中に閉じ込められていた未滓化石灰
(これらを合わせて遊離石灰、即ち、フリーCaOと言
う)が露出して大気に触れることになって、その吸湿、
膨張がスラグの再利用を更に困難にする。
【0010】還元スラグは、溶製する鋼種や、製鋼工場
の操業条件によって組成が大きく異なるので、当然スラ
グに存在する複合酸化物の組成も異なる。また、スラグ
処理の条件も、大気中での放冷、強制冷却による急冷
等、様々であり、その条件次第では、塊状で取り扱うこ
とができる例も見られる。
【0011】しかし、基本的には、γ組織の2CaO・SiO2
の存在と、フリーCaOの存在は避けられず、たとえ塊状
になっていても、それを骨材として路盤材に使用した場
合には、内蔵する亀裂によって、全体の強度が低下する
上、亀裂から進入してきた水分とフリーCaOとの水和反
応で、体積が膨張し、道路が盛り上がるなどの不具合が
出ている。結果として、その再利用は大きく制約され、
一部が酸化スラグと混合されて路盤材に利用されるにし
ても、大部分は埋め立て等に使用されているにすぎな
い。
【0012】上記の粉化を防止する方策としては、たと
えば、溶融状態のスラグを特殊な容器に移し、散水強冷
を行って、結晶の成長を防ぐ方法や、高圧力の流水中に
溶融スラグを投入して、瞬間的に非結晶の砂状にしてし
まう方法、等が挙げられる。しかし、これらの方法は、
作業の安定性に欠ける上、製造されたスラグを活用する
ためには更に手を加えなければならず、総合的な処理費
が増加するので、実用化は困難である。
【0013】一方、還元スラグの持つ「水硬性」を利用
して、これを土木・建築原料に利用しようという研究が
進められている(「建築用原材料」Vol.1、No.1、pp.29
-35、1991、および「廃棄物学会論文誌」Vol.1、No.1、p
p.19-20、1990、参照)。
【0014】前述したように、還元スラグには、粉化を
生じる鉱物として2CaO・SiO2が含まれている。一方、土
木建設分野で、広く用いられているポルトランドセメン
トは、その主成分がCaOとSiO2で、これらの成分で構成
される複合酸化物の割合は、3CaO・SiO2が約50%、2CaO・
SiO2が約30%前後が一般的な例である。セメントには、
その用途および使用条件に応じて、これらの基礎成分に
加えて、Al2O3やFe2O3が配合されている。
【0015】セメントの特性は、上記の複合酸化物の中
のある種のものが水と反応して水和成分を作り、これが
強固な硬化体に変化するいわゆる「水硬性」を発揮する
ことである。その水硬性は、主に3CaO・SiO2とαまたは
α’組織の2CaO・SiO2によって発揮され、3CaO・Al2O3
よび4CaO・Al2O3・Fe2O3も水硬性に寄与する。
【0016】セメントの製造過程においては、前記の組
成の原料を一括して焼成炉(キルン)に投入して焼成
し、化合物を生成させた後、急速冷却する。この時の加
熱と急冷の熱履歴によって、2CaO・SiO2の結晶組織は、
常温で安定なγ組織への変態が抑えられ、高温組織であ
るα、α’組織が常温までもたらされるのである。ま
た、高温で安定な3CaO・SiO2もγ組織の2CaO・SiO2に変化
することなく、そのまま常温までもたらされる。水の添
加で水和反応を生じて水硬性を出現する特性は、主にこ
れらαまたはα’組織の2CaO・SiO2と3CaO・SiO2とによっ
ている。
【0017】先に述べたように、還元スラグにも多量の
2CaO・SiO2が含まれ、また、3CaO・SiO2も含まれている。
即ち、還元スラグの成分構成は、セメントと類似してい
る。しかし、通常の冷却処理を受けた還元スラグは水硬
性をほとんど持たない。それは、2CaO・SiO2の大部分が
低温で安定なγ組織に変態していること、および溶融状
態で3CaO・SiO2として存在する複合酸化物も温度の降下
に伴ってCaOを晶出しつつγ組織の2CaO・SiO2に変化する
ので、セメントに較べて3CaO・SiO2の含有量も少ないこ
と、による。なお、天然の鉱石として存在する2CaO・SiO
2もγ組織であり、これには水硬性がない。
【0018】なお、水冷のような急速冷却を受けた還元
スラグでは、2CaO・SiO2の一部がαまたはα’組織で残
り、これがスラグに水硬性をもたらす。また、若干量含
まれる3CaO・SiO2および12CaO・7Al2O3も水硬性に寄与す
る。しかし、その水硬性はセメントの水硬性に較べれば
極く小さく、セメントの代替物や添加剤等に使用するの
は困難である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従
来、再利用が困難であった還元スラグを有効に活用でき
るように改質する方法、具体的には、還元スラグの水硬
性をセメント代替物等に使用できる程度にまで高める方
法を提供することにある。さらに、その改質スラグの有
効利用方法を提供することも本発明の目的である。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は下記(1)
のスラグの改質方法、および(2)のスラグ有効利用方法
にある。
【0021】(1) 2CaO・SiO2を含有する製鋼スラグ(以
下、このようなスラグを「還元スラグ」と記す)を一旦
冷却してγ組織への変態を起こさせて粉体とし、その粉
体を変態温度よりも高温に加熱して、αまたは/および
α’組織に変態させ、次いで変態温度よりも低温に急冷
して、上記αまたは/およびα’組織を常温で維持せし
めることを特徴とするスラグの改質方法。
【0022】上記の変態温度よりも高温での加熱は、80
0〜1450℃の温度範囲において15秒から2時間の加熱で行
うのが望ましい。
【0023】(2) 上記の方法で改質したスラグをセメ
ント代替物もしくはセメント添加剤、土質改良剤、また
は建築材料の原料もしくは添加剤として用いるスラグの
利用方法。
【0024】上記(1)の方法においては、処理前の溶融
スラグに様々な副次的添加物を添加することができる。
例えば、石炭燃焼残灰(フライアッシュ)、高炉スラ
グ、ガラス屑、耐火物屑のような、主にSiO2、または更
にCaO、Al2O3を含有する物質を溶融スラグに混合して、
(1)の方法で処理してもよい。また、排ガスの脱硫処理
等で発生する石膏(CaSO4・2H2O)も添加できる。硫酸
法による酸化チタンの製造過程では、廃液中和の工程で
微細なFe2O3を含む石膏が多量に発生するが、これも副
次的添加物として利用できる。なお、これらの添加物、
特に石膏系の物は、(1)の処理が終わったスラグに混合
して(2)の利用に供してもよい。
【0025】上記の副次的添加物は、主に産業廃棄物で
あり、その有効利用は環境保全という観点からも有意義
である。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明は、還元スラグの特異な組
成と、その中に含まれる複合酸化物の変態という現象に
着目し、これらを有効に利用しようという発想の基にな
されたものである。具体的には、還元スラグに含まれる
CaOおよびSiO2を主体とする複合酸化物を、セメント中
の主要構成成分で、水硬性のあるαまたはα’組織の2C
aO・SiO2を主体とするものに人為的に変化させることに
特徴がある。それによって、還元スラグを有効活用し易
い物に改質するのである。以下、本発明方法の各工程
を、図2の工程略図に基づいて順次説明する。
【0027】1.粉体化の工程 図1に示すように、還元スラグは、主に転炉1での精錬
後の二次精錬および電気炉2での精錬(その還元期精
錬)またはその後の二次精錬の過程で発生する。なお、
図2の二次精錬炉3としては、レードル・ファーネス
(LF)と呼ばれる装置が使用されることが多い。
【0028】本発明方法では、従来、還元スラグの再利
用の上での問題点とされていた粉体化する特性を逆に積
極的に活用して、スラグの粉体化を図る。従って、この
粉体化工程では、還元スラグを冷却する過程で、2CaO・S
iO2がα組織からα’組織、更にγ組織へと変態するの
を妨げないようにする。具体的には、特にα’からγへ
の変態温度近くおよびこれ以下の温度域を徐冷して、変
態による膨張・崩壊と自己粉体化を積極的に促進する。
【0029】徐冷の方法には特に制限はない。従来のよ
うに、変態、言い換えれば、粉体化を阻止するための強
制冷却を行わなければよい。スラグ(4)をヤード積み(5)
して自然冷却してもγ組織への変態とそれに伴う粉体化
は十分に進行する。ただし、粉体の飛散と雨水等による
甚だしい吸湿を防ぐために、適当なカバーをするか、屋
内貯蔵(6)するといった処置を講じるのが望ましい。
【0030】自然のままに粉体化させたばあいでも、50
〜500μm程度の微細な粒子からなる粉状スラグ7が得ら
れる。なお、部分的に塊状に凝固したものがある時に
は、破砕機を使用して粉砕する処理を行ってもよく、篩
い分けして塊状部分を除去してもよい。さらに、金属成
分、例えば金属鉄等は再利用に好ましくないので、比重
差や磁化特性を利用して分離除去するのがよい。
【0031】2.再加熱による結晶組織の変更工程 一旦冷却して粉体化したスラグ(2CaO・SiO2はγ組織に
なっている)を再度変態温度より上の温度、望ましくは
800〜1450℃の温度に加熱して、2CaO・SiO2をαまたは/
およびα’の組織を主体とする結晶組織に変える。これ
は、低温変態組織を高温変態組織に変化させる、いわゆ
る逆変態の処理で、本発明方法を最も特徴づける処理で
ある。従来、高炉スラグであれ、転炉または電気炉スラ
グであれ、一度冷却した後に再度加熱するという処理は
まったくなされていない。
【0032】α’からγへの変態温度は、図1に示した
状態図では725℃であるが、スラグ中には様々な成分が
共存し、その第3成分が2CaO・SiO2に固溶されると変態
温度は低下するので、実際の変態温度は700℃程度にな
ることが多い。従って、理論上は、加熱の下限温度は70
0℃でよいが、この程度の低温では変態完了までの長時
間を要して実操業には好ましくない。望ましい処理温度
は800℃以上である。なお、加熱温度が高いほど変態は
早く進むが、1450℃を超えるような高温では液相が出て
粉体が凝集し、処理操作に支障を来すおそれがある。加
熱の時間は、1450℃に近い高温で粉体を火炎に直接接触
させるような場合は15秒程度でよく、800℃に近い低温
では2時間程度が望ましい。
【0033】加熱は、耐熱容器に収容したスラグ粉体を
所定温度に保った炉(バッチ炉8)中に装入してバッチ
処理で行っても良いが、被処理物が粉体であるから、そ
れにふさわしい種々の方法が採用できる。例えば、バー
ナーの火炎中に粉体を吹き込んで急速加熱する方法、ロ
ータリーキルン10の一方から粉体を装入して炉内を移動
させながら加熱し、他方から排出する方法、流動床式の
炉9で粉体を浮遊させながら加熱する方法、等の連続式
加熱方法が生産効率の面から望ましい。
【0034】実際の操業では、前記1の還元スラグの粉
化工程で、露出したフリーCaOの吸湿や、粉自体の吸湿
などで、水分が含まれる場合があるが、再加熱工程は、
これらの水分の除去にも効果がある。
【0035】3.急冷により高温組織の維持をはかる工
程 上記の処理で逆変態させた粉状のスラグを急速冷却し
て、高温変態組織、即ち、αまたはα’組織を固定し、
常温でその組織を常態化させる工程である。冷却温度
は、変態の再現を防ぐ温度であれば良く、およそ200℃
以下の温度に急冷すればよい。工業的に可能であれば、
常温まで急冷するのが望ましい。
【0036】この急冷処理は、前記の加熱装置に連続さ
せて設けた冷却装置11を使用して行うのがよい。例え
ば、加熱装置に接して、冷気(常温の大気でよい)を吹
き込む冷却塔を設けて、加熱装置から排出した高温の粉
状スラグを直ちに急冷する。また、水冷した金属製のジ
ャケットやロール等に高温粉体を接触させて急冷する方
法も採用できる。
【0037】以上の工程で、大部分の2CaO・SiO2がαま
たはα’組織の微細な粉状スラグが得られる。その水硬
性は、セメントの水硬性にほぼ匹敵する。従って、セメ
ントの代替物または添加物として十分に使用できる。ま
た、建造物の壁材のような硬質ボードの原料や添加材と
して、あるいは土質改良剤として軟弱地盤の強化に利用
できる。なお、このスラグ中には若干のフリーCaOが存
在するが、上記のような用途に使用する場合には何ら障
害にはならない。
【0038】
【実施例】還元スラグの代表として電気炉製鋼の二次精
錬で生成した還元スラグ(いわゆるLFスラグ)を使用し
て本発明方法による改質を行った。後述の表1に示すよ
うに、LFスラグの鉱物成分は大部分がCaOとSiO2で、そ
の他の成分としてAl2O3、Fe2O3、MgOが含まれる。この
組成は、ポルトランドセメントの組成とよく似ており、
還元スラグがセメント代替物または添加物として使用で
きる物であることが明かである。
【0039】常温での結晶組織は、上記の構成成分を固
溶した複雑な形ではあるが、通常の冷却によって粉体化
したスラグでは大部分が結晶組織の変態の際に粉化現象
をもたらすγ組織の2CaO・SiO2である。一方、ポルトラ
ンドセメントでは、2CaO・SiO2はαまたはα’の組織に
なっている。
【0040】1.粉体化の工程 二次精錬炉(LF)から排出した溶融スラグをスラグヤー
ドに熱い状態で山積みして自然冷却した。これによっ
て、変態温度前後の温度域で徐冷され、高温のαまたは
α’組織からγ組織への変態が完全に進行し、その際の
自己崩壊による粉体化でスラグのほぼ全量が10μmから
0.1mmの範囲の微細な粉体になった。わずかに残留して
いる塊状のスラグを篩い分けして分離した。
【0041】2.再加熱の工程 前記の粉体化したスラグを耐熱容器に入れて、組織変態
温度以上の1000℃にを選び、10分間加熱炉で保持した。
なお、前記のとおり、粉体の加熱には連続加熱方式とバ
ッチ加熱方式のいずれも採用が可能であり、また、直接
加熱法、間接加熱法のいずれも採用が可能であるが、こ
こでは、バッチ式の直接加熱で試験した。
【0042】3.急速冷却工程 所定の温度に達し、変態が完了した還元スラグ粉を200
℃以下に急冷して、高温組織(αまたはα’組織)を常
温までもたらした。急速冷却の方法は、被処理物が粉体
であることを利用し、常温空気の気流中に粉体を接触さ
せて、一気に冷却する方式をとった。
【0043】4.粉体製品の評価(水硬性) 得られた粉状スラグ(再加熱−急冷によって改質された
もの)の組成を表1に示す。参考にポルトランドセメン
トの組成も表1に併記した。
【0044】改質前、即ち、溶融状態から冷却されて粉
体化した状態でのスラグでは、2CaO・SiO2の組織はほぼ1
00%がγ組織である。また、このスラグには3CaO・SiO2
はほとんど含まれていない。前述したように、セメント
の水硬特性は、3CaO・SiO2やαまたはα’組織の2CaO・Si
O2によるとされる。従って、改質前のスラグの水硬性は
セメントのそれに較べればはるかに劣る。
【0045】本発明方法で処理した後の粉状スラグでは
2CaO・SiO2の大部分がαまたはα’組織になっている。
従って、この粉状スラグはセメントとほぼ同等の水硬性
を持つことが明かである。実際に、この粉状スラグ重量
比で約60%の水分を添加し撹拌した後、静置した結果、
1〜3週間で、水和反応による硬化特性が出現した。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】本発明方法によれば、従来、再利用が困
難で廃棄物として埋め立て処理されることが多かった還
元スラグをセメント代替物等として有効利用できる形に
改質することができる。さらに、SiO2−CaO系、SiO2−C
aO−Al2O3系、CaSO4・2H2O系等の産業廃棄物も併せて処
理して再利用することもできる。従って、本発明は、廃
棄物処理という環境問題の解決と資源リサイクルの拡大
に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】SiO2−CaO二元系平衡状態図である。
【図2】本発明方法を説明する工程略図である。
【符号の説明】
1.転炉、 2.電気炉、 3.二次精錬炉(LF)、 4.スラ
グ、 5.ヤード積み、6.屋内貯蔵、 7.粉状スラグ、
8.バッチ炉、 9.流動床炉、10.ロータリーキルン、11.
急速冷却、 12.回収・貯蔵、 13.利用
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年3月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】明細書
【発明の名称】製鋼還元スラグの改質方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鋼の精錬過程で
発生し2CaO・SiO2を含有する、いわゆる「還元スラグ」
有効利用できるように改質する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼製造の過程では大量の性質の異なる
スラグが発生する。その中で、高炉スラグは路盤材やセ
メント原料として、ほぼ全量が既に有効利用されてい
る。
【0003】高炉で製造した銑鉄やスクラップを原料と
して鋼を製造するための転炉や電気炉による精錬の過程
でもスラグが発生する。転炉での精錬は、酸素の吹き込
みによって炭素等の不純物を酸化除去するのが狙いであ
り、その際に生成するスラグは酸化スラグと呼ばれる。
【0004】電気炉での精錬は、酸化期と還元期とから
なり、前者でのスラグは酸化スラグ、後者でのスラグは
還元スラグと呼ばれる。また、転炉または電気炉での精
錬の後、更に鋼の純度を高めたり、成分調整を行う目的
で取鍋や特殊な炉を使用して二次精錬を行うがあるが、
このような二次精錬では還元精錬行われるので、この
とき取鍋等に湯面に生成するスラグも還元スラグと呼ば
れる。
【0005】上記の製鋼過程で発生するスラグは、精錬
する鋼種や精錬方法が異なるため、その化学組成は様々
で性質も多様である。この中で、酸化スラグ、即ち、転
炉スラグと電気炉酸化スラグは、残留している未滓化石
灰(フリーCaO)の吸湿による粉化と膨張という問題が
あるが、この分野に重点を置いた研究が従来から盛んに
行われ、フリーCaOを無害化するエージング法が開発さ
れて、路盤材などに使用する道が開けている。
【0006】一方、還元スラグは、CaO、SiO2、MgO、Al
2O3の4成分が大部分を占めるが、これらが相互に結合
した他種類の複合酸化物も生成している。その中に残留
する未滓化石灰の影響もさることながら、含有される特
定の複合酸化物の結晶組織が、高温から常温に冷却され
る過程で結晶変態を生じ、この変態が体積膨張を伴うこ
とから、スラグの一部または全体が崩壊し、自己粉化す
る特性を持つ。そのために、これを再利用するのは著し
く困難である。
【0007】図1は、CaO−SiO2の2元平衡状態図であ
る。後に説明する表1に示すように、還元スラグ中のCa
OとSiO2の含有量の比はおよそ7:3である。従って、
このスラグ中では2CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケー
ト)が形成されており、さらに3CaO・2SiO2や3CaO・SiO2
のような複合酸化物も含まれている。
【0008】上記の自己粉化の原因となる複合酸化物
は、2CaO・SiO2である。図1に示されるように、2CaO・Si
O2は、通常の自然放冷を行うと、冷却過程でα組織から
α’組織へ、更に約725℃でα’組織からγ組織に変態
する。この変態の過程で体積が約10%膨張するので上述
の崩壊、自己粉化の現象が起きるのである。
【0009】上記の崩壊が生じると、その影響は、単に
2CaO・SiO2の粉化にとどまらず、冷却の過程で分離晶出
したCaOおよび結晶中に閉じ込められていた未滓化石灰
(これらを合わせて遊離石灰、即ち、フリーCaOと言
う)が露出して大気に触れることになって、その吸湿、
膨張がスラグの再利用を更に困難にする。
【0010】還元スラグは、溶製する鋼種や、製鋼工場
の操業条件によって組成が大きく異なるので、当然スラ
グに存在する複合酸化物の組成も異なる。また、スラグ
処理の条件も、大気中での放冷、強制冷却による急冷
等、様々であり、その条件次第では、塊状で取り扱うこ
とができる例も見られる。
【0011】しかし、基本的には、γ組織の2CaO・SiO2
の存在と、フリーCaOの存在は避けられず、たとえ塊状
になっていても、それを骨材として路盤材に使用した場
合には、内蔵する亀裂によって、全体の強度が低下する
上、亀裂から進入してきた水分とフリーCaOとの水和反
応で、体積が膨張し、道路が盛り上がるなどの不具合が
出ている。結果として、その再利用は大きく制約され、
一部が酸化スラグと混合されて路盤材に利用されるにし
ても、大部分は埋め立て等に使用されているにすぎな
い。
【0012】上記の粉化を防止する方策としては、たと
えば、溶融状態のスラグを特殊な容器に移し、散水強冷
を行って、結晶の成長を防ぐ方法や、高圧力の流水中に
溶融スラグを投入して、瞬間的に非結晶の砂状にしてし
まう方法、等が挙げられる。しかし、これらの方法は、
作業の安定性に欠ける上、製造されたスラグを活用する
ためには更に手を加えなければならず、総合的な処理費
が増加するので、実用化は困難である。
【0013】一方、還元スラグの持つ「水硬性」を利用
して、これを土木・建築原料に利用しようという研究が
進められている(「建築用原材料」Vol.1、No.1、pp.29
-35、1991、および「廃棄物学会論文誌」Vol.1、No.1、
pp.19-20、1990、参照)。
【0014】前述したように、還元スラグには、粉化を
生じる鉱物として2CaO・SiO2が含まれている。一方、土
木建設分野で、広く用いられているポルトランドセメン
トは、その主成分がCaOとSiO2で、これらの成分で構成
される複合酸化物の割合は、3CaO・SiO2が約50%、2CaO・
SiO2が約30%前後が一般的な例である。セメントには、
その用途および使用条件に応じて、これらの基礎成分に
加えて、Al2O3やFe2O3が配合されている。
【0015】セメントの特性は、上記の複合酸化物の中
のある種のものが水と反応して水和成分を作り、これが
強固な硬化体に変化するいわゆる「水硬性」を発揮する
ことである。その水硬性は、主に3CaO・SiO2とαまたは
α’組織の2CaO・SiO2によって発揮され、3CaO・Al2O3
よび4CaO・Al2O3・Fe2O3も水硬性に寄与する。
【0016】セメントの製造過程においては、前記の組
成の原料を一括して焼成炉(キルン)に投入して焼成
し、化合物を生成させた後、急速冷却する。この時の加
熱と急冷の熱履歴によって、2CaO・SiO2の結晶組織は、
常温で安定なγ組織への変態が抑えられ、高温組織であ
るα、α’組織が常温までもたらされるのである。ま
た、高温で安定な3CaO・SiO2もγ2CaO・SiO2に変化するこ
となく、そのまま常温までもたらされる。水の添加で水
和反応を生じて水硬性を出現する特性は、主にこれらα
またはα’組織の2CaO・SiO2と3CaO・SiO2とによってい
る。
【0017】先に述べたように、還元スラグにも多量の
2CaO・SiO2が含まれ、また、3CaO・SiO2も含まれている。
即ち、還元スラグの成分構成は、セメントと類似してい
る。しかし、通常の冷却処理を受けた還元スラグは水硬
性をほとんど持たない。それは、2CaO・SiO2の大部分が
低温で安定なγ組織に変態していること、および溶融状
態で3CaO・SiO2として存在する複合酸化物も温度の降下
に伴ってCaOを晶出しつつγ組織の2CaO・SiO2に変化する
ので、セメントに較べて3CaO・SiO2の含有量も少ないこ
と、による。なお、天然の鉱石として存在する2CaO・SiO
2もγ組織であり、これには水硬性がない。
【0018】なお、水冷のような急速冷却を受けた還元
スラグでは、2CaO・SiO2の一部がαまたはα’組織で残
り、これがスラグに水硬性をもたらす。また、若干量含
まれる3CaO・SiO2および12CaO・7Al2O3も水硬性に寄与す
る。しかし、その水硬性はセメントの水硬性に較べれば
極く小さく、セメントの代替物や添加剤等に使用するの
は困難である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従
来、再利用が困難であった還元スラグを有効に活用でき
るように改質する方法、具体的には、還元スラグの水硬
性をセメント代替物等に使用できる程度にまで高める方
法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は下記(1)
のスラグの改質方法にある。
【0021】(1) 2CaO・SiO2を含有する製鋼スラグ(以
下、このようなスラグを「還元スラグ」と記す)を一旦
冷却してγ組織への変態を起こさせて粉体とし、その粉
体を変態温度よりも高温の800〜1450℃に加熱して、α
または/およびα’組織に変態させ、次いで変態温度よ
りも低温に急冷して、上記αまたは/およびα’組織を
常温で維持せしめることを特徴とするスラグの改質方
法。
【0022】上記の変態温度よりも高温の800〜1450℃
での加熱は、15秒から2時間行うのが望ましい。
【0023】上記の方法で改質したスラグは、セメント
代替物もしくはセメント添加剤、土質改良剤、または建
築材料の原料もしくは添加剤として用いることができ
【0024】上記(1)の方法においては、処理前の溶融
スラグに様々な副次的添加物を添加することができる。
例えば、石炭燃焼残灰(フライアッシュ)、高炉スラ
グ、ガラス屑、耐火物屑のような、主にSiO2、または更
にCaO、Al2O3を含有する物質を溶融スラグに混合して、
(1)の方法で処理してもよい。また、排ガスの脱硫処理
等で発生する石膏(CaSO4・2H2O)も添加できる。硫酸
法による酸化チタンの製造過程では、廃液中和の工程で
微細なFe2O3を含む石膏が多量に発生するが、これも副
次的添加物として利用できる。なお、これらの添加物、
特に石膏系の物は、(1)の処理が終わったスラグに混合
して利用に供してもよい。
【0025】上記の副次的添加物は、主に産業廃棄物で
あり、その有効利用は環境保全という観点からも有意義
である。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明は、還元スラグの特異な組
成と、その中に含まれる複合酸化物の変態という現象に
着目し、これらを有効に利用しようという発想の基にな
されたものである。具体的には、還元スラグに含まれる
CaOおよびSiO2を主体とする複合酸化物を、セメント中
の主要構成成分で水硬性のあるαまたはα’組織の2CaO
・SiO2を主体とするものに人為的に変化させることに特
徴がある。それによって、還元スラグを有効活用し易い
物に改質するのである。以下、本発明方法の各工程を、
図2の工程略図に基づいて順次説明する。
【0027】1.粉体化の工程図2 に示すように、還元スラグは、主に転炉1での精錬
後の二次精錬および電気炉2での精錬(その還元期精
錬)またはその後の二次精錬の過程で発生する。なお、
図2の二次精錬炉3としては、レードル・ファーネス
(LF)と呼ばれる装置が使用されることが多い。
【0028】本発明方法では、従来、還元スラグの再利
用の上での問題点とされていた粉体化する特性を逆に積
極的に活用して、スラグの粉体化を図る。従って、この
粉体化工程では、還元スラグを冷却する過程で、2CaO・S
iO2がα組織からα’組織、更にγ組織へと変態するの
を妨げないようにする。具体的には、特にα’からγへ
の変態温度近くおよびこれ以下の温度域を徐冷して、変
態による膨張・崩壊と自己粉体化を積極的に促進する。
【0029】徐冷の方法には特に制限はない。従来のよ
うに、変態、言い換えれば、粉体化を阻止するための強
制冷却を行わなければよい。スラグ(4)をヤード積み(5)
して自然冷却してもγ組織への変態とそれに伴う粉体化
は十分に進行する。ただし、粉体の飛散と雨水等による
甚だしい吸湿を防ぐために、適当なカバーをするか、屋
内貯蔵(6)するといった処置を講じるのが望ましい。
【0030】自然のままに粉体化させたばあいでも、50
〜500μm程度の微細な粒子からなる粉状スラグ7が得ら
れる。なお、部分的に塊状に凝固したものがある時に
は、破砕機を使用して粉砕する処理を行ってもよく、篩
い分けして塊状部分を除去してもよい。さらに、金属成
分、例えば金属鉄等は再利用に好ましくないので、比重
差や磁化特性を利用して分離除去するのがよい。
【0031】2.再加熱による結晶組織の変更工程 一旦冷却して粉体化したスラグ(2CaO・SiO2はγ組織に
なっている)を再度変態温度より上の温度、望ましくは
800〜1450℃の温度に加熱して、2CaO・SiO2をαまたは/
およびα’の組織を主体とする結晶組織に変える。これ
は、低温変態組織を高温変態組織に変化させる、いわゆ
る逆変態の処理で、本発明方法を最も特徴づける処理で
ある。従来、高炉スラグであれ、転炉または電気炉スラ
グであれ、一度冷却した後に再度加熱するという処理は
まったくなされていない。
【0032】α’からγへの変態温度は、図1に示した
状態図では725℃であるが、スラグ中には様々な成分が
共存し、その第3成分が2CaO・SiO2に固溶されると変態
温度は低下するので、実際の変態温度は700℃程度にな
ることが多い。従って、理論上は、加熱の下限温度は70
0℃でよいが、この程度の低温では変態完了までの長時
間を要して実操業には好ましくない。望ましい処理温度
は800℃以上である。なお、加熱温度が高いほど変態は
早く進むが、1450℃を超えるような高温では液相が出て
粉体が凝集し、処理操作に支障を来すおそれがある。加
熱の時間は、1450℃に近い高温で粉体を火炎に直接接触
させるような場合は15秒程度でよく、800℃に近い低温
では2時間程度が望ましい。
【0033】加熱は、耐熱容器に収容したスラグ粉体を
所定温度に保った炉(バッチ炉8)中に装入してバッチ
処理で行っても良いが、被処理物が粉体であるから、そ
れにふさわしい種々の方法が採用できる。例えば、バー
ナーの火炎中に粉体を吹き込んで急速加熱する方法、ロ
ータリーキルン10の一方から粉体を装入して炉内を移動
させながら加熱し、他方から排出する方法、流動床式の
炉9で粉体を浮遊させながら加熱する方法、等の連続式
加熱方法が生産効率の面から望ましい。
【0034】実際の操業では、前記1の還元スラグの粉
化工程で、露出したフリーCaOの吸湿や、粉自体の吸湿
などで、水分が含まれる場合があるが、再加熱工程は、
これらの水分の除去にも効果がある。
【0035】3.急冷により高温組織の維持をはかる工
程 上記の処理で逆変態させた紛状のスラグを急速冷却し
て、高温変態組織、即ち、αまたはα’組織を固定し、
常温でその組織を常態化させる工程である。冷却温度
は、変態の再現を防ぐ温度であれば良く、およそ200℃
以下の温度に急冷すればよい。工業的に可能であれば、
常温まで急冷するのが望ましい。
【0036】この急冷処理は、前記の加熱装置に連続さ
せて設けた冷却装置11を使用して行うのがよい。例え
ば、加熱装置に接して、冷気(常温の大気でよい)を吹
き込む冷却塔を設けて、加熱装置から排出した高温の紛
状スラグを直ちに急冷する。また、水冷した金属製のジ
ャケットやロール等に高温粉体を接触させて急冷する方
法も採用できる。
【0037】以上の工程で、大部分の2CaO・SiO2がαま
たはα’組織の微細な粉状スラグが得られる。その水硬
性は、セメントの水硬性にほぼ匹敵する。従って、セメ
ントの代替物または添加物として十分に使用できる。ま
た、建造物の壁材のような硬質ボードの原料や添加材と
して、あるいは土質改良剤として軟弱地盤の強化に利用
できる。なお、このスラグ中には若干のフリーCaOが存
在するが、上記のような用途に使用する場合には何ら障
害にはならない。
【0038】
【実施例】還元スラグの代表として電気炉製鋼の二次精
錬で生成した還元スラグ(いわゆるLFスラグ)を使用し
て本発明方法による改質を行った。後述の表1に示すよ
うに、LFスラグの鉱物成分は大部分がCaOとSiO2で、そ
の他の成分としてAl2O3、Fe2O3、MgOが含まれる。この
組成は、ポルトランドセメントの組成とよく似ており、
還元スラグがセメント代替物または添加物として使用で
きる物であることが明かである。
【0039】常温での結晶組織は、上記の構成成分を固
溶した複雑な形ではあるが、通常の冷却によって粉体化
したスラグでは大部分が結晶組織の変態の際に粉化現象
をもたらすγ組織の2CaO・SiO2である。一方、ポルトラ
ンドセメントでは、2CaO・SiO2はαまたはα’の組織に
なっている。
【0040】1.粉体化の工程 二次精錬炉(LF)から排出した溶融スラグをスラグヤー
ドに熱い状態で山積みして自然冷却した。これによっ
て、変態温度前後の温度域で徐冷され、高温のαまたは
α’組織からγ組織への変態が完全に進行し、その際の
自己崩壊による粉体化でスラグのほぼ全量が10μmから
0.1mmの範囲の微細な粉体になった。わずかに残留して
いる塊状のスラグを篩い分けして分離した。
【0041】2.再加熱の工程 前記の粉体化したスラグを耐熱容器に入れて、組織変態
温度以上の1000℃を選び、10分間加熱炉で保持した。な
お、前記のとおり、粉体の加熱には連続加熱方式とバッ
チ加熱方式のいずれも採用が可能であり、また、直接加
熱法、間接加熱法のいずれも採用が可能であるが、ここ
では、バッチ式の直接加熱で試験した。
【0042】3.急速冷却工程 所定の温度に達し、変態が完了した還元スラグ粉を200
℃以下に急冷して、高温組織(αまたはα’組織)を常
温までもたらした。急速冷却の方法は、被処理物が粉体
であることを利用し、常温空気の気流中に粉体を接触さ
せて、一気に冷却する方式をとった。
【0043】4.粉体製品の評価(水硬性) 得られた粉状スラグ(再加熱−急冷によって改質された
もの)の組成を表1に示す。参考にポルトランドセメン
トの組成も表1に併記した。
【0044】改質前、即ち、溶融状態から冷却されて紛
体化した状態でのスラグでは、2CaO・SiO2の組織はほぼ1
00%がγ組織である。また、このスラグには3CaO・SiO2
はほとんど含まれていない。前述したように、セメント
の水硬特性は、3CaO・SiO2やαまたはα’組織の2CaO・Si
O2によるとされる。従って、改質前のスラグの水硬性は
セメントのそれに較べればはるかに劣る。
【0045】本発明方法で処理した後の粉状スラグでは
2CaO・SiO2の大部分がαまたはα’組織になっている。
従って、この粉状スラグはセメントとほぼ同等の水硬性
を持つことが明かである。実際に、この紛状スラグ重量
比で約60%の水分を添加し撹拌した後、静置した結果、
1〜3週間で、水和反応による硬化特性が出現した。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】本発明方法によれば、従来、再利用が困
難で廃棄物として埋め立て処理されることが多かった還
元スラグをセメント代替物等として有効利用できる形に
改質することができる。さらに、SiO2−CaO系、SiO2−C
aO-Al2O3系、CaSO4・2H2O系等の産業廃棄物も併せて処
理して再利用することもできる。従って、本発明は、廃
棄物処理という環境問題の解決と資源リサイクルの拡大
に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】SiO2−CaO二元系平衡状態図である。
【図2】本発明方法を説明する工程略図である。
【符号の説明】 1.転炉、 2.電気炉、 3.二次精錬炉(LF)、 4.スラ
グ、 5.ヤード積み、6.屋内貯蔵、 7.粉状スラグ、
8.バッチ炉、 9.流動床炉、10.ロータリーキルン、11.
急速冷却、 12.回収・貯蔵、 13.利用

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2CaO・SiO2を含有する製鋼還元スラグを一
    旦冷却してγ組織への変態を起こさせて粉体とし、その
    粉体を変態温度よりも高温に加熱してαまたは/および
    α’組織に変態させ、次いで変態温度よりも低温に急冷
    して、上記αまたは/およびα’組織を常温で維持せし
    めることを特徴とするスラグの改質方法。
  2. 【請求項2】変態温度よりも高温での加熱を800〜1450
    ℃における15秒から2時間の加熱とする請求項1のスラ
    グの改質方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2の方法で改質したスラグ
    をセメント代替物もしくはセメント添加剤、土質改良
    剤、または建築材料の原料もしくは添加剤として用いる
    スラグの利用方法。
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