JPH1130243A - 動力伝達機構及びその調整方法 - Google Patents

動力伝達機構及びその調整方法

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JPH1130243A
JPH1130243A JP16151197A JP16151197A JPH1130243A JP H1130243 A JPH1130243 A JP H1130243A JP 16151197 A JP16151197 A JP 16151197A JP 16151197 A JP16151197 A JP 16151197A JP H1130243 A JPH1130243 A JP H1130243A
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JP
Japan
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torsion coil
coil spring
limit spring
power transmission
transmission mechanism
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Pending
Application number
JP16151197A
Other languages
English (en)
Inventor
Masahiko Okada
昌彦 岡田
Takashi Ban
孝志 伴
Nobuaki Hoshino
伸明 星野
Kazuhiko Minami
和彦 南
Akihiro Amano
晃浩 天野
Osamu Hiramatsu
修 平松
Hisakazu Kobayashi
久和 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な構成で製作コストの高騰を抑制可能
で、ねじりコイルバネの初期締め付け力を調整すること
ができて、過大な負荷トルクの解放特性を容易に安定化
することができる動力伝達機構を提供する。 【解決手段】 動力源側のプーリ65と被動機器側の回
転軸26とを、動力伝達時に発生する負荷トルクによっ
てねじり変形可能なリミットバネ75を介して、動力伝
達可能に連結する。リミットバネ75は、回転軸26と
一体回転可能な結合板74に対し所定の初期締め付け力
でもって結合する。リミットバネ75の内周面及び結合
板74の外周面には、互いに係合可能なテーパ面75
a,74aを形成する。テーパ面75a,74aの係合
位置を変更することにより、リミットバネ75の結合板
74に対する初期締め付け力を調整する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、回転運動する動
力源側の第1回転体と被動機器側の第2回転体とを、常
には動力伝達可能に連結し、被動機器側における負荷ト
ルクが過大になったときには動力伝達を遮断する動力伝
達機構及びその調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の動力伝達機構としては、例えば
特開平8−121336号公報に記載の構成が知られて
いる。この従来構成においては、図14に示すように、
プーリ151が被動機器のハウジング152にアンギュ
ラベアリング153を介して支持されている。このプー
リ151は、ベルト154を介して動力源に連結されて
いる。プーリ151の連結筒155と駆動力伝達体15
6との間には、環状の緩衝ゴム157が接着固定されて
いる。駆動力伝達体156の中心孔156aには前記被
動機器側の回転軸158が挿通され、その端部にはナッ
ト158aが螺着されている。回転軸158の端部の近
傍には、ねじりコイルバネ159が自らのねじりバネ力
により、所定の初期締め付け力で締め付け結合されてい
る。ねじりコイルバネ159の一端は回転軸158の接
線方向に延出されており、この延出端部160が前記駆
動力伝達体156の被動機器側面に形成された掛止凹部
161に掛止されている。
【0003】そして、常には動力源の回転が、ベルト1
54、プーリ151、連結筒155、緩衝ゴム157、
駆動力伝達体156及びねじりコイルバネ159を介し
て、被動機器側の回転軸158に伝達されるようになっ
ている。一方、被動機器側における負荷トルクが過大に
なったときには、ねじりコイルバネ159が負荷トルク
により、その巻きが緩む方向にねじり変形する。このね
じり変形に伴ってねじりコイルバネ159はその内周面
が拡径し、ねじりコイルバネ159の回転軸158に対
する締め付け結合が解除される。そして、ねじりコイル
バネ159と回転軸158との間で滑りが生じて、動力
源から被動機器への動力伝達が遮断される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の動
力伝達機構では、各部材の加工及び組み付け上の公差や
被動機器側の状況から、回転軸158に対するねじりコ
イルバネ159の初期締め付け力にばらつきが生じるこ
とがある。このようなばらつきを調整するには、微妙に
寸法の異なる各部材を用意して、それらの部材の中から
所望の初期締め付け力が得られるような組み合わせを選
択して組み付ける必要があって、煩わしいという問題が
あった。また、このような各部材を選択して組み合わせ
ことによるばらつきの調整を回避するためには、各部材
を厳密に加工する必要があって、製作コストの高騰を招
くという問題があった。
【0005】さらに、前記の従来構成では、ねじりコイ
ルバネ159は、所定量のねじり荷重を付与して拡径変
形させた状態で回転軸158に挿通し、前記ねじり荷重
を解除して回転軸158に密着させる必要がある。この
ため、ねじりコイルバネ159には、その組付作業にお
いて、必要以上に大きな負荷トルクが作用するおそれが
ある。このため、ねじりコイルバネ159に余分なスト
レスが作用して、その過大な負荷トルクの解放特性が不
用意に変化するおそれがあるという問題があった。
【0006】この発明は、このような従来の技術に存在
する問題点に着目してなされたものである。その目的と
するところは、簡単な構成で、ねじりコイルバネの初期
締め付け力を調整でき、過大な負荷トルクの解放特性を
容易に安定化することができて、製作コストの高騰を抑
制可能な動力伝達機構及びその調整方法を提供すること
にある。また、組み付け時におけるねじりコイルバネへ
の余分なストレスを低減可能な動力伝達機構を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の発明では、動力源側の第1回転体
と被動機器側の第2回転体とを、動力伝達時に発生する
負荷トルクによってねじり変形可能なねじりコイルバネ
を介して、動力伝達可能に連結する動力伝達機構におい
て、前記ねじりコイルバネは、それに対向する部材に対
し所定の初期締め付け力でもって結合し、そのねじりコ
イルバネの初期締め付け力を調整するための調整手段を
設けたものである。
【0008】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の動力伝達機構において、前記調整手段は、前記ねじ
りコイルバネの外周面または内周面に形成された螺旋溝
を含むものである。
【0009】請求項3に記載の発明では、請求項2に記
載の動力伝達機構において、前記ねじりコイルバネとそ
れに対向する部材との間に介装部材を介装し、それらね
じりコイルバネと介装部材との軸線方向の接合距離を変
更することにより、ねじりコイルバネの初期締め付け力
を調整するようにしたものである。
【0010】請求項4に記載の発明では、請求項1また
は2に記載の動力伝達機構において、前記調整手段は一
対の係合可能なテーパ面からなり、それらのテーパ面の
係合位置を変更することにより、ねじりコイルバネの初
期締め付け力を調整するようにしたものである。
【0011】請求項5に記載の発明では、請求項4に記
載の動力伝達機構において、前記テーパ面は、ねじりコ
イルバネ自体の内周面と、その内周面に嵌合する部材の
外周面とに形成したものである。
【0012】請求項6に記載の発明では、請求項4に記
載の動力伝達機構において、前記テーパ面は、ねじりコ
イルバネに密着する外側部材の内周面と、その内周面に
嵌合する内側部材の外周面とに形成したものである。
【0013】請求項7に記載の発明では、請求項3に記
載の動力伝達機構において、その調整方法が、前記ねじ
りコイルバネにねじり荷重を作用させて、ねじりコイル
バネと介装部材とを相対回転させ、前記螺旋溝の螺進作
用により同ねじりコイルバネと同介装部材とを軸線方向
に予め所定量だけ相対移動させて、同ねじりコイルバネ
と同介装部材との軸線方向の接合距離を変更して、解放
時の負荷トルクの値を調整するものである。
【0014】請求項8に記載の発明では、請求項6に記
載の動力伝達機構において、その調整方法が、前記ねじ
りコイルバネにねじり荷重を作用させ、ねじりコイルバ
ネと外側部材とを相対回転させて、同ねじりコイルバネ
と同外側部材とを前記テーパ面に沿って相対移動させ
て、同ねじりコイルバネと同外側部材との間の締め代を
予め所定量だけ変更して、解放時の負荷トルクの値を調
整するものである。
【0015】従って、請求項1に記載の動力伝達機構で
は、その組み立て時に、第1回転体から第2回転体への
動力伝達経路におけるねじりコイルバネの初期締め付け
力を、調整手段により調整することができる。このた
め、常にはねじりコイルバネがそれに対向する部材に対
して、所定の初期締め付け力でもって結合されている。
そして、被動機器側に過大な負荷トルクが発生した場合
には、ねじりコイルバネが初期締め付け力に抗してねじ
り変形して、ねじりコイルバネと対向する部材との結合
が解除される。
【0016】請求項2に記載の動力伝達機構では、ま
ず、ねじりコイルバネをそれに対向する部材上に組み付
けた状態で、いずれか一方の回転体を固定し、他方の回
転体を回転させて、ねじりコイルバネと対向する部材と
相対回転させる。この相対回転、及び、ねじりコイルバ
ネの外周面または内周面上の螺旋溝の螺進作用により、
ねじりコイルバネと対向する部材との間に、軸線方向へ
の相対移動力が発生する。
【0017】請求項3に記載の動力伝達機構及び請求項
7に記載の調整方法では、前記の相対移動力により、ね
じりコイルバネ、対向する部材、及び、それらの間の介
装部材が、軸線方向に相対移動される。そして、ねじり
コイルバネと介装部材との軸線方向の接合距離が変更さ
れて、ねじりコイルバネの初期締め付け力が調整され
る。このため、ねじりコイルバネ及びその周辺構成に厳
密な加工を必要とすることなく、簡単な構成でねじりコ
イルバネの初期締め付け力を容易に調整することができ
る。
【0018】請求項4に記載の動力伝達機構では、調整
手段を構成する一対の係合可能なテーパ面の係合位置を
変更することによって、ねじりコイルバネの初期締め付
け力が調整されるようになっている。このため、ねじり
コイルバネ及びその周辺構成に厳密な加工を必要とする
ことなく、簡単な構成でねじりコイルバネの初期締め付
け力を容易に調整することができる。
【0019】また、この動力伝達機構では、次のように
ねじりコイルバネを対向する部材に対して組み付けるこ
とも可能となる。すなわち、まず、ねじりコイルバネ
と、そのねじりコイルバネに対向する部材とを締め付け
力が存在しない状態で挿嵌する。次に、一対のテーパ面
の係合位置を徐々に変更して、ねじりコイルバネの初期
締め付け力が所定値となるように調整した状態で、ねじ
りコイルバネとそれに対向する部材とを密着させること
ができる。このため、ねじりコイルバネを予めねじり変
形させて組み付けた場合に比べて、ねじりコイルバネに
かかるストレスを小さくすることができる。
【0020】請求項5に記載の動力伝達機構では、調整
手段を構成する一対のテーパ面が、ねじりコイルバネ自
体の内周面と、その内周面に嵌合する部材の外周面とに
形成されている。このため、部品点数の増大を抑制する
ことができて、構成の一層の簡略化を図ることができ
る。
【0021】請求項6に記載の動力伝達機構及び請求項
8に記載の調整方法では、調整手段を構成する一対のテ
ーパ面が、ねじりコイルバネに密着する外側部材の内周
面と、その内周面に嵌合する内側部材の外周面とに形成
されている。このため、内側部材を外側部材に対して軸
線方向へ相対移動させることにより、両テーパ面の係合
位置が変更される。これにより、ねじりコイルバネの初
期締め付け力を容易に調整することができる。
【0022】特に、請求項2に記載の発明の下では、次
のような調整も可能となる。すなわち、ねじりコイルバ
ネを外側部材上に組み付けた状態で、いずれか一方の回
転体を固定し、他方の回転体を回転させて、ねじりコイ
ルバネと外側部材と相対回転させる。この相対回転、及
び、ねじりコイルバネの内周面上の螺旋溝の螺進作用に
よって、外側部材が軸線方向へ相対移動される。この相
対移動により、外側部材と内側部材との間のテーパ面の
係合位置が変更される。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)以下に、この発明をクラッチレス可
変容量圧縮機の動力伝達機構に具体化した第1の実施形
態について図1〜図3に基づいて説明する。
【0024】図1に示すように、被動機器としてのクラ
ッチレス可変容量圧縮機(以下、単に「圧縮機」とす
る)21は、シリンダブロック22と、その前端面に接
合されたフロントハウジング23と、その後端面にバル
ブプレート24を介して接合されたリヤハウジング25
とにより構成されている。なお、ここ、あるいは、以下
でいう前後は、圧縮機の後述するプーリ65側を前側と
し、その逆側を後側とする。
【0025】第2回転体としての回転軸26は、前記シ
リンダブロック22及びフロントハウジング23の中央
に、一対のラジアルベアリング27を介して回転可能に
支持されている。その回転軸26の前端外周とフロント
ハウジング23との間には、リップシール28が介装さ
れている。
【0026】複数のシリンダボア29は、前記回転軸2
6と平行に延びるように、シリンダブロック22に所定
間隔おきで貫通形成され、それらの内部には片頭型のピ
ストン30が往復動可能に嵌挿支持されている。クラン
ク室31はシリンダブロック22とフロントハウジング
23との間に区画形成されている。
【0027】回転支持体32は、前記クランク室31内
において回転軸26に一体回転可能に止着され、スラス
トベアリング33を介してフロントハウジング23の内
面に接合されている。支持アーム34は、回転支持体3
2の後面にシリンダブロック22側へ向かって突設さ
れ、その先端には一対のガイド孔35が形成されてい
る。
【0028】ほぼ円板状の斜板36は、前記回転軸26
に傾動可能に嵌挿され、その前面には一対の球状連結体
37が突設されている。そして、この球状連結体37が
支持アーム34のガイド孔35に回動及び摺動自在に係
入することによって、斜板36が回転支持体32に対し
て傾角の変更可能にヒンジ連結されている。
【0029】また、前記斜板36の外周部には、一対の
半球状のシュー38を介して各ピストン30が連結され
ている。そして、回転軸26が回転されたとき、回転支
持体32を介して斜板36が回転され、各ピストン30
がシリンダボア29内において往復動される。
【0030】収容室39は、前記回転軸26と同一軸線
上に位置するように、シリンダブロック22の中心に貫
通形成されている。吸入通路40は、回転軸26と同一
軸線上に延びるように、リヤハウジング25及びバルブ
プレート24の中心に形成されている。この吸入通路4
0の前端には、収容室39が連通されるとともに、後端
には外部冷媒回路41が接続されている。そして、この
外部冷媒回路41には、凝縮器42、膨張弁43及び蒸
発器44が接続されている。
【0031】吸入室45は、前記リヤハウジング25内
の中央部に環状に区画形成され、連通口46を介して収
容室39に連通されている。吐出室47は、リヤハウジ
ング25内の外周部に環状に区画形成され、吐出通路4
8を介して外部冷媒回路41に接続されている。
【0032】吸入弁機構49及び吐出弁機構50は、前
記各シリンダボア29に対応するように、バルブプレー
ト24に形成されている。そして、前記ピストン30の
上死点位置から下死点位置への復動動作により、吸入弁
機構49を介して吸入室45から各シリンダボア29内
に冷媒ガスが吸入される。さらに、シリンダボア29内
に吸入された冷媒ガスは、ピストン30の下死点位置か
ら上死点位置への往動動作により、所定の圧力に達する
まで圧縮された後、吐出弁機構50を介して吐出室47
に吐出される。
【0033】円筒状の遮断体51は、前記回転軸26と
同一軸線上に位置するように、シリンダブロック22の
収容室39内に移動可能に収容されている。吸入通路開
放バネ52は、遮断体51と収容室39の後端縁との間
に介装され、この吸入通路開放バネ52により遮断体5
1が斜板36側に向かって付勢されている。そして、こ
の遮断体51内には、前記ラジアルベアリング27を介
して回転軸26の後端が摺動可能に嵌挿支持されてい
る。スラストベアリング53は、遮断体51と斜板36
との間において、回転軸26に摺動可能に嵌挿されてい
る。
【0034】また、前記斜板36が最小傾角状態に傾動
されたときには、遮断体51が吸入通路開放バネ52の
付勢力に抗して後方の閉位置に移動される。そして、こ
の遮断体51が吸入通路40の前端開口縁に接合され
る。それにより、吸入通路40が閉じられて、外部冷媒
回路41から吸入室45内への冷媒ガスの導入が停止さ
れる。なお、この斜板36の最小傾角は0度よりも僅か
に大きくなるように設定されるとともに、その最小傾角
は遮断体51が閉位置に配置されることによって規制さ
れる。
【0035】これにより、この圧縮機21は、冷房負荷
の存在しない状態においても、最小傾角状態での運転が
継続可能となっている。つまり、この圧縮機21は、回
転軸26と動力源とをクラッチを介することなく常時連
結可能な、いわゆるクラッチレスタイプとなっている。
【0036】一方、斜板36が最大傾角状態に傾動され
たときには、遮断体51が吸入通路開放バネ52の付勢
力により前方の開位置に移動される。そして、この遮断
体51が吸入通路40の前端開口縁から離間される。そ
れにより、吸入通路40が開かれて、外部冷媒回路41
から吸入通路40、収容室39、連通口46を介して吸
入室45内に冷媒ガスが導入され、斜板36の回転に伴
って最大吐出容量の圧縮運転が行われる。なお、この斜
板36の最大傾角は、斜板36の前面に形成された規制
突部54と回転支持体32との当接によって規制され
る。
【0037】傾角減少バネ55は、前記回転支持体32
と斜板36との間に介装され、この傾角減少バネ55に
より斜板36が最小傾角方向に付勢されている。放圧通
路56は、前記回転軸26の中心に形成され、その前端
がクランク室31内に開口されるとともに、後端が遮断
体51の内部に開口されている。放圧通口57は、遮断
体51の後端外周に形成され、この放圧通口57を介し
て遮断体51の内部が収容室39内に連通されている。
そして、クランク室31の圧力が、これらの放圧通路5
6、遮断体51の内部、放圧通口57、収容室39及び
連通口46を介して、吸入室45内へ放出されるように
なっている。
【0038】給気通路58は、前記リヤハウジング2
5、バルブプレート24及びシリンダブロック22に連
続して形成されている。この給気通路58により、吐出
室47とクランク室31とが接続されている。電磁開閉
弁59は、給気通路58の途中に位置するように、リヤ
ハウジング25に装着され、ソレノイド60の励磁また
は消磁に伴って閉止または開放される。そして、この電
磁開閉弁59が開放されたときには、吐出室47の圧力
が給気通路58を介して、クランク室31内へ供給され
て、クランク室31内の調圧が行われるようになってい
る。
【0039】次に、この実施形態の動力伝達機構につい
て説明する。図1〜図3に示すように、前記フロントハ
ウジング23には、支持筒部63が一体形成されてお
り、この支持筒部63にはアンギュラベアリング64が
嵌挿支持されている。アンギュラベアリング64の外輪
には、第1回転体としてのプーリ65が中央のボス部6
6において止着されている。このプーリ65は、回転軸
26と同心円上に配置され、ベルト67を介して動力源
としての車両エンジン68に連結されている。
【0040】前記回転軸26の前端部には、小径部69
が形成されており、この小径部69がスプライン軸70
となっている。回転軸26の小径部69には円筒状をな
すブッシュ71が挿嵌され、このブッシュ71の内周面
にはスプライン軸70と係合可能なスプライン溝72が
形成されている。また、ブッシュ71の前端外周には、
円環状の緩衝ゴム73が接着固定されている。緩衝ゴム
73の外周には、環状をなす結合板74が接着固定され
ている。この結合板74の外周には、前端から後端にか
けて次第に拡径するテーパ面74aが形成されている。
そして、これらの回転軸26、ブッシュ71及び緩衝ゴ
ム73により、第2回転体が構成されている。
【0041】リミットバネ75は、例えばバネ鋼製の素
線よりなるねじりコイルバネとなっている。このリミッ
トバネ75は、圧縮機21に何らかの原因で過大な負荷
トルクが発生した場合に、ねじり変形されてその巻きが
緩む方向に巻回された緩みバネとなっている。
【0042】このリミットバネ75の内周面の前端側部
分には、前端から後端にかけて次第に拡径するテーパ面
75aが形成されている。また、このリミットバネ75
の後方側部分は、ほぼ円筒状をなし、前記プーリ65の
ボス部66に嵌合されている。そのリミットバネ75の
後端部76は、プーリ65上に突設された掛止突部77
に係合されている。この係合により、リミットバネ75
がプーリ65に対して回り止めされている。また、リミ
ットバネ75の前方側部分は結合板74に嵌合され、そ
のリミットバネ75の内周のテーパ面75aが結合板7
4の外周のテーパ面74aに係合されている。
【0043】ボルト78は、座金79を介して前記回転
軸26の小径部69の前端に螺合されている。そして、
このボルト78の締め付けにより、ブッシュ71が小径
部69に固定されるとともに、リミットバネ75のテー
パ面75aが対向する部材としての結合板74のテーパ
面74aに対し、所定の初期締め付け力をもって密着嵌
合されている。
【0044】さらに、前記リミットバネ75のテーパ面
75aと結合板74のテーパ面74aとにより、リミッ
トバネ75の初期締め付け力を調整するための調整手段
が構成されている。そして、ボルト78のねじ込み量を
加減することにより、ブッシュ71、緩衝ゴム73及び
結合板74が軸線方向へ一体的に移動され、両テーパ面
75a,74aの係合位置が変更されて、リミットバネ
75の初期締め付け力が調整されるようになっている。
【0045】ところで、前記リミットバネ75は、その
素線がプーリ65及び回転軸26の回転方向と一致する
方向に巻かれている。このため、リミットバネ75は、
圧縮機21の回転軸26から、ブッシュ71、緩衝ゴム
73及び結合板74を介して、前記回転方向と逆方向の
負荷トルクが作用すると、巻きが緩む方向にねじり変形
する。この緩み方向へのねじり変形により、リミットバ
ネ75はその内周面が拡径して、結合板74に対する締
め付け力が減少するようになっている。
【0046】そして、図1〜図3に示すように、通常の
運転状態においては、車両エンジン68からの動力は、
ベルト67、プーリ65、リミットバネ75、結合板7
4、緩衝ゴム73及びブッシュ71を介して圧縮機21
の回転軸26に伝達されるようになっている。
【0047】次に、前記のように構成された圧縮機21
の動作について説明する。さて、図1に示す状態では、
ソレノイド60の励磁により電磁開閉弁59が閉止され
て、給気通路58が閉じられている。つまり、吐出室4
7内の高圧の圧縮冷媒ガスは、給気通路58を介してク
ランク室31内に供給されない状態となっている。この
ため、クランク室31の冷媒ガスは、もっぱら放圧通路
56、遮断体51の内部、放圧通口57、収容室39及
び連通口46を介して吸入室45内に流入する。従っ
て、クランク室31内の圧力が吸入室45内の低圧力、
すなわち吸入圧力に近付いていき、斜板36が最大傾角
状態に保持されて、最大吐出容量の圧縮運転が行われ
る。
【0048】このような最大吐出容量で圧縮運転が行わ
れて冷房負荷が小さくなると、外部冷媒回路41におけ
る蒸発器44の温度が次第に低下する。そして、蒸発器
44の温度がフロストを発生し始める設定温度以下にな
ると、ソレノイド60が消磁されて、電磁開閉弁59が
開放される。これにより、吐出室47内の高圧の圧縮冷
媒ガスが給気通路58を介してクランク室31内に供給
されるようになる。そして、クランク室31内の圧力が
高くなって、斜板36が最大傾角状態から最小傾角状態
へ迅速に移行される。
【0049】このように斜板36の傾角が減少される
と、その傾動に伴いスラストベアリング53を介して遮
断体51に後方への移動力が付与される。これにより、
遮断体51が吸入通路開放バネ52の付勢力に抗して、
前方の開位置から後方の閉位置に向かって移動される。
そして、斜板36が最小傾角状態になると、遮断体51
が閉位置に配置されて、その後端面が吸入通路40の前
端開口縁に接合する。これにより、吸入通路40が閉じ
られて、外部冷媒回路41から吸入室45内への冷媒ガ
スの導入が阻止される。
【0050】この斜板36の最小傾角は、0度よりも僅
かに大きくなるように設定されている。このため、斜板
36の最小傾角状態においても、シリンダボア29から
吐出室47内に、圧縮冷媒ガスが吐出され続けて、最小
吐出容量での圧縮運転が行われる。そして、この吐出室
47内に吐出された圧縮冷媒ガスは、給気通路58を通
ってクランク室31内に流入する。さらに、クランク室
31内の冷媒ガスは、放圧通路56、遮断体51の内
部、放圧通口57、収容室39及び連通口46を介して
吸入室45内に流入して、再びシリンダボア29内に吸
入される。つまり、この斜板36の最小傾角状態では、
圧縮機21の内部において、冷媒ガスの循環通路が形成
されている。
【0051】前記のように斜板36の最小傾角状態で圧
縮運転が行われて、冷房負荷が増大すると、外部冷媒回
路41における蒸発器44の温度が次第に上昇する。や
がて、蒸発器44の温度が設定温度を越えると、ソレノ
イド60が励磁され、電磁開閉弁59が閉止される。こ
れにより、吐出室47内の高圧の圧縮冷媒ガスが給気通
路58を介してクランク室31内に供給されなくなる。
そして、クランク室31の圧力のみが、放圧通路56、
遮断体51の内部、放圧通口57、収容室39及び連通
口46を介して吸入室45内に放出される。従って、ク
ランク室31内の圧力が次第に減少され、斜板36が最
小傾角状態から最大傾角状態に移行される。
【0052】このように、斜板36の傾角が増大される
と、その傾動に従って遮断体51が吸入通路開放バネ5
2の付勢力により、後方の閉位置から前方の開位置に向
かって移動される。そして、図1に示すように、遮断体
51の後端面が、吸入通路40の前端開口縁から離間す
る。これにより、吸入通路40が開かれて、外部冷媒回
路41から吸入室45内への冷媒ガスの導入が再開さ
れ、斜板36が最大傾角に配置された状態にて、最大吐
出容量の圧縮運転が行われる。
【0053】一方、車両エンジン68が停止された場合
には、圧縮機21の運転も停止されて、電磁開閉弁59
が開放されて、斜板36は前記と同様に最小傾角状態に
配置される。
【0054】次に、この実施形態の動力伝達機構の動作
について説明する。通常の運転状態においては、前記の
ように車両エンジン68からの動力は、ベルト67、プ
ーリ65、リミットバネ75、結合板74、緩衝ゴム7
3及びブッシュ71を介して圧縮機21の回転軸26に
伝達される。
【0055】この動力伝達に際して、圧縮機21側の運
転状況に応じて、回転軸26にはプーリ65の回転方向
と逆向きの負荷トルクが発生する。この負荷トルクによ
って、リミットバネ75が緩む方向にねじり変形する。
ところが、このように負荷トルクが発生しても、リミッ
トバネ75のねじり変形が所定の初期締め付け力を越え
ない範囲である場合には、リミットバネ75と結合板7
4との密着が保たれている。このため、プーリ65から
回転軸26への動力伝達が継続される。
【0056】一方、圧縮機21側において何らかの原因
で過大な負荷トルクが発生して、その負荷トルクが所定
値を越えると、リミットバネ75の締め付け力が減少
し、リミットバネ75と結合板74との摩擦がトルクに
耐えられなくなりリミットバネ75が開放する。このた
め、リミットバネ75と結合板74との間で滑りが生じ
て、プーリ65から回転軸26への動力伝達が遮断され
る。そして、リミットバネ75が結合板74の外周面上
を滑りながら回転すると、摩擦熱が発生する。このた
め、結合板74の内周面の緩衝ゴム73が溶融変形し
て、ブッシュ71と結合板74との連結も解放される。
【0057】ところで、この実施形態の動力伝達機構に
おいては、プーリ65から回転軸26への動力伝達経路
において、リミットバネ75の内周面及び結合板74の
外周面には、互いに係合可能なテーパ面75a,74a
が形成されている。そして、常には、リミットバネ75
が結合板74の外周面に対して、所定の初期締め付け力
でもって密着されている。
【0058】このリミットバネ75の組み付け時には、
リミットバネ75を、結合板74に対し締め付け力が存
在しない状態で挿嵌する。まず、前記一対のテーパ面7
5a,74aの係合位置を変更することにより、リミッ
トバネ75と結合板74とを密着嵌合させる。そして、
ボルト78のねじ込み量を加減することにより、ブッシ
ュ71、緩衝ゴム73及び結合板74が軸線方向へ一体
的に移動される。これにより、テーパ面75a,74a
の係合位置がさらに変更されて、リミットバネ75に初
期締め付け力が付与され、その初期締め付け力が調整さ
れる。
【0059】そのため、この動力伝達機構の組み付け時
において、負荷トルクを測定しながら、その負荷トルク
が所定値に達すると動力伝達を遮断するように、リミッ
トバネ75の初期締め付け力を調整しておくことができ
る。そして、このように初期締め付け力を予め調整して
おけば、圧縮機21側の負荷トルクが所定値に達したと
きに、プーリ65から回転軸26への動力伝達が正確に
遮断されることになる。
【0060】また、リミットバネ75を、プーリ65の
ボス部66及び結合板74に対して、予め拡径変形させ
ることなく組み付けることができる。このため、リミッ
トバネ75に余分がストレスが作用することがなく、リ
ミットバネ75の過大な負荷トルクの解放特性が不用意
に変更されるおそれが低減される。
【0061】以上のように構成されたこの第1の実施形
態によれば、以下の効果が期待される。・ この第1の
実施形態の動力伝達機構においては、プーリ65から回
転軸26への動力伝達経路において、リミットバネ75
の内周面及び結合板74の外周面には、互いに係合可能
なテーパ面75a,74aが形成されている。そして、
これらのテーパ面75a,74aにより、リミットバネ
75の初期締め付け力を調整するための調整手段が構成
されている。
【0062】このため、動力伝達機構の組み立て時に、
このテーパ面75a,74aの係合位置を変更すること
により、リミットバネ75の初期締め付け力を、所定値
となるように予め調整しておくことができる。これによ
り、プーリ65から回転軸26への動力伝達を、所定の
負荷トルク値で遮断することができる。従って、製品間
における過大な負荷トルクの解放特性のばらつきを、多
数の微妙に寸法の異なる部材の中から選択して、所望の
解放特性を得るように組み付けるといった面倒な作業に
よることなく解消できる。
【0063】・ この第1の実施形態の動力伝達機構に
おいては、リミットバネ75を予め拡径変形させること
なく組み付けられるようになっている。このため、リミ
ットバネ75に余分なストレスが作用するのが抑制され
て、リミットバネ75の過大なトルクの解放特性に不用
意な変化が生じるおそれを低減できる。
【0064】・ この第1の実施形態の動力伝達機構に
おいては、調整手段を構成する一対の係合可能なテーパ
面75a,74aの係合位置を変更することによって、
リミットバネ75の初期締め付け力を調整するようにな
っている。このため、リミットバネ75及びその周辺構
成に厳密な加工を必要とすることなく、簡単な構成でリ
ミットバネ75の初期締め付け力を容易に調整すること
ができる。従って、製作コストの高騰を抑制することが
できる。
【0065】・ この第1の実施形態の動力伝達機構に
おいては、調整手段を構成する一対のテーパ面75a,
74aが、リミットバネ75自体の内周面と、その内周
面に嵌合する結合板74の外周面とに形成されている。
このため、部品点数の増大を抑制することができて、構
成の一層の簡略化を図ることができる。
【0066】(第2の実施形態)この第2の実施形態の
動力伝達機構では、リミットバネ75の初期締め付け力
の調整構造において、前記第1の実施形態と異なってい
る。
【0067】すなわち、この実施形態においては、図4
及び図5に示すように、プーリ65の側面に、ほぼ円環
状をなす支持板82が複数箇所でねじ止め固定されてい
る。支持板82の前面内周側には、環状の緩衝ゴム83
が接着固定されている。緩衝ゴム83の前面には、連結
板84が接着固定されている。そして、この支持板8
2、緩衝ゴム83及び連結板84により、プーリ65に
一体回転可能に止着した連結部材が構成されている。つ
まり、支持板82、緩衝ゴム83及び連結板84は、プ
ーリ65と同様に第1回転体を構成している。
【0068】前記連結板84は、1枚の板金をプレス加
工することによって形成され、ほぼ円筒状をなす嵌挿筒
部85と、その嵌挿筒部85の後端から外方に向かって
延出する円板状のフランジ部86とを備えている。嵌挿
筒部85の前端縁には、係止突片87が径方向の内側に
向かって折曲形成されている。
【0069】ほぼ円筒状をなす内側部材としてのブッシ
ュ88は、前記回転軸26の小径部69に挿嵌され、ボ
ルト78により座金79を介して締め付け固定されてい
る。このブッシュ88の内周面には、小径部69のスプ
ライン軸70に係合可能なスプライン溝89が形成され
ている。ブッシュ88の前端外周にはフランジ部90が
突設されるとともに、その他の外周面には前端から後端
にかけて次第に縮径するテーパ面88aが形成されてい
る。そして、フランジ部90には複数の挿通孔91が形
成されている。
【0070】断面ほぼ扇形状をなす外側部材としての複
数の結合板92は、前記ブッシュ88の外周に配設され
ている。この結合板92の内周面には、前記ブッシュ8
8のテーパ面88aに係合可能なテーパ面92aが、前
端から後端にかけて次第に縮径するように形成されてい
る。複数のバネ93は、ブッシュ88のフランジ部90
と各結合板92との間に介装されている。複数のボルト
94はフランジ部90の挿通孔91及びバネ93を通し
て結合板92に螺合され、このボルト94のねじ込み量
を加減することにより、各結合板92が軸線方向に相対
移動されて、テーパ面88a,92aの係合位置が変更
されるようになっている。
【0071】前記各結合板92の外周面には、樹脂層9
5が形成されている。この樹脂層95は、例えばガラス
繊維、炭素繊維、タルク、クレー等の無機物等が充填さ
れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエー
テルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイ
ミド、エポキシ樹脂等の合成樹脂材料によりなってい
る。
【0072】リミットバネ75は、ほぼ円筒状をなし、
前記各結合板92の外周を取り巻くように配設されてい
る。このリミットバネ75は、その内周面が結合板92
の外周面に対し、所定の初期締め付け力をもって密着さ
れている。また、この実施形態においては、前記ブッシ
ュ88のテーパ面88aと各結合板92のテーパ面92
aとにより、リミットバネ75の初期締め付け力を調整
するための調整手段が構成されている。そして、ボルト
94のねじ込み量を加減して、テーパ面88a,92a
の係合位置を変更することにより、結合板92の外周面
に対するリミットバネ75の初期締め付け力が調整され
るようになっている。
【0073】一方、リミットバネ75の前端側部分は、
連結板84の嵌挿筒部85に嵌挿されている。そして、
このリミットバネ75の前端部96が、嵌挿筒部85の
前端の係止突片87に係合されている。これにより、リ
ミットバネ75が連結板84に対して、プーリ65の回
転方向に回り止めされるとともに、軸線方向の前方側へ
の移動が規制されている。
【0074】次に、この第2の実施形態の動力伝達機構
の動作について説明する。通常の運転状態においては、
前記車両エンジン68からの動力は、ベルト67、プー
リ65、支持板82、緩衝ゴム83、連結板84、リミ
ットバネ75、結合板92及びブッシュ88を介して圧
縮機21の回転軸26に伝達される。
【0075】この動力伝達に際しては、圧縮機21側の
運転状況に応じて、回転軸26に負荷トルクが発生し
て、リミットバネ75が緩む方向にねじり変形する。と
ころが、このリミットバネ75のねじり変形が所定の初
期締め付け力を越えない範囲では、リミットバネ75と
結合板92との密着が保たれている。このため、プーリ
65から回転軸26への動力伝達が継続される。
【0076】一方、圧縮機21側において過大な負荷ト
ルクが発生すると、リミットバネ75の締め付け力が減
少し、リミットバネ75と結合板92との摩擦がトルク
に耐えられなくなりリミットバネ75が開放する。ここ
で、リミットバネ75は、前端部において連結板84に
対して回り止めされている。このため、リミットバネ7
5と結合板92との間で滑りが生じて、プーリ65から
回転軸26への動力伝達が遮断される。
【0077】そして、リミットバネ75が結合板92の
外周面上を滑りながら回転すると、摩擦熱が発生する。
このため、結合板92の外周面上の樹脂層95が変形し
やすくなって、結合板92の外径が小さくなる方向に変
形される。やがて、結合板92の外径が、無負荷時のリ
ミットバネ75の内径とほとんど変わらない状態とな
る。この状態では、リミットバネ75は動力伝達が遮断
された状態で結合板92に対してほとんど抵抗なく空転
される。
【0078】ところで、この実施形態の動力伝達機構に
おいては、プーリ65から回転軸26への動力伝達経路
において、結合板92の内周面及びそれに嵌合するブッ
シュ88の外周面には、互いに係合可能なテーパ面92
a,88aが形成されている。そして、常には、リミッ
トバネ75が結合板92の外周面に対して、所定の初期
締め付け力でもって密着されている。
【0079】このリミットバネ75の組み付け時には、
リミットバネ75を、結合板92に対し締め付け力が存
在しない状態で挿嵌する。この状態で、複数のボルト9
4をねじ込むことにより、各結合板92が軸線方向に移
動される。これにより、テーパ面92a、88aとの係
合位置が変更されて、各結合板92が径方向に相対移動
される。このため、リミットバネ75と結合板92とが
密着嵌合される。そして、ボルト94をねじ込み量をさ
らに加減することにより、リミットバネ75に初期締め
付け力が付与されるとともに、その初期締め付け力が所
定値となるように調整される。
【0080】このため、この第2の実施形態の動力伝達
機構においても、前記第1の実施形態の動力伝達機構と
同様に、圧縮機21側の負荷トルクが所定値に達したと
きに、プーリ65から回転軸26への動力伝達が正確に
遮断される。また、リミットバネ75に余分がストレス
が作用することがなく、リミットバネ75の過大な負荷
トルクの解放特性が不用意に変更されるおそれが低減さ
れる。
【0081】以上のように構成されたこの第2の実施形
態によれば、前記第1の実施形態の動力伝達機構とほぼ
同様の効果に加えて、以下の効果が期待される。・ こ
の第2の実施形態の動力伝達機構においては、調整手段
を構成する一対のテーパ面92a,88aが、リミット
バネ75の内周に密着する結合板92の内周面と、その
結合板92内に嵌合するブッシュ88の外周面とに形成
されている。このため、結合板92をブッシュ88に対
して軸線方向へ相対移動させることにより、両テーパ面
92a,88aの係合位置を変更して、リミットバネ7
5の初期締め付け力を容易に調整することができる。
【0082】・ この第2の実施形態の動力伝達機構に
おいては、複数の扇形状の結合板92が、ボルト94に
よりブッシュ88のフランジ部90に対し、それぞれ軸
線方向へ移動可能に装着されている。そのため、各ボル
ト94のねじ込み量を加減して、結合板92を各別に移
動調節することにより、それらの結合板92に対するリ
ミットバネ75の初期締め付け力を、微細に調整するこ
とができる。
【0083】(第3の実施形態)この第3の実施形態の
動力伝達機構では、リミットバネ75の初期締め付け力
の調整構造において、前記第2の実施形態と異なってい
る。
【0084】すなわち、この実施形態においては、図6
に示すように、ブッシュ88の外周のテーパ面88a
が、第2の実施形態とは逆に、前端から後端にかけて次
第に拡径するように形成されている。また、各結合板9
2の内周のテーパ面92aも、同様に前端から後端にか
けて次第に拡径するように形成されている。
【0085】そして、各結合板92をブッシュ88に対
して軸線方向へ相対移動させて、両テーパ面92a,8
8aの係合位置を変更することにより、結合板92に対
するリミットバネ75の初期締め付け力を所定値に調整
できるようになっている。さらに、この初期締め付け力
の調整状態で、各結合板92の前端内周縁97を、ブッ
シュ88の外周面にカシメ付けることにより、各結合板
92がブッシュ88に対して移動不能に固定されてい
る。
【0086】以上のように構成されたこの第3の実施形
態によれば、前記第1及び第2の実施形態の動力伝達機
構とほぼ同様の効果に加えて、以下の効果が期待され
る。・ この第3の実施形態の動力伝達機構において
は、各結合板92が、それらの前端内周縁97のカシメ
付けによって、ブッシュ88の外周面に固定されてい
る。このため、前記第2の実施形態のように、ブッシュ
88にフランジ部90及び複数の挿通孔91を形成する
必要がなくなるとともに、複数のボルト94及びバネ9
3を省略することができて、構成の簡略化を図ることが
できる。
【0087】(第4の実施形態)この第4の実施形態の
動力伝達機構では、リミットバネ75の初期締め付け力
の調整構造において、前記第2の実施形態と異なってい
る。
【0088】すなわち、この実施形態においては、図7
に示すように、ほぼ円筒状の取付板98、緩衝ゴム73
及び連結板99よりなる連結部材が、ボルト78により
回転軸26の小径部69に挿嵌固定されている。そし
て、取付板98の後端側部分の内周面には、小径部69
のスプライン軸70に係合可能なスプライン溝89が形
成されている。つまり、取付板98、緩衝ゴム73及び
連結板99は、回転軸26と同様に第2回転体を構成し
ている。
【0089】一方、プーリ65のボス部66の外周面に
は、前端から後端にかけて次第に拡径するテーパ面66
aが形成されている。また、プーリ65の後壁には、複
数の挿通孔91が所定間隔おきに形成されている。そし
て、この実施形態においては、プーリ65のボス部66
により、外側部材としての結合板92に対向する内側部
材が構成されている。
【0090】前記プーリ65のボス部66の外周には、
複数の断面ほぼ扇形状の結合板92が配設されている。
各結合板92にはプーリ65上の挿通孔91を介してボ
ルト94が螺合され、これらのボルト94により、各結
合板92がプーリ65に対して軸線方向へ相対移動可能
に固定されている。各結合板92の内周面には、ボス部
66のテーパ面66aに係合可能なテーパ面92aが、
前端から後端にかけて次第に拡径するように形成されて
いる。また、各結合板92の外周面には樹脂層95が形
成されている。
【0091】リミットバネ75は前記結合板92の外周
を取り巻くように配設され、所定の初期締め付け力でも
って結合板92の外周面に密着されている。また、この
リミットバネ75の前端側部分は、連結板99の外周に
形成された嵌挿筒部99a内に嵌挿されるとともに、そ
の嵌挿筒部99aの内周面に接合されている。そして、
この実施形態においては、プーリ65のボス部66上の
テーパ面66aと、各結合板92のテーパ面92aとに
より、リミットバネ75の初期締め付け力を調整するた
めの調整手段が構成されている。
【0092】従って、この第4の実施形態においても、
前述した第2の実施形態とほぼ同様に、各ボルト94の
ねじ込み量を加減することにより、結合板92が軸線方
向へ移動調節される。これにより、テーパ面66a,9
2aの係合位置が変更されて、結合板92に対するリミ
ットバネ75の初期締め付け力を調整することができ
る。従って、この第4の実施形態によれば、前記第1及
び第2の実施形態の動力伝達機構とほぼ同様の効果を発
揮させることができる。
【0093】(第5の実施形態)この第5の実施形態の
動力伝達機構では、リミットバネ75の初期締め付け力
の調整構造において、前記第4の実施形態と異なってい
る。
【0094】すなわち、この実施形態においては、図8
及び図9に示すように、プーリ65のボス部66の外周
面には、前端から後端にかけて次第に拡径するテーパ面
66aが形成されている。そして、このボス部66の外
周面上には、前記第2の実施形態に記載の樹脂層95と
同様の合成樹脂材料によりなる外側部材としての円筒体
101が嵌挿されている。この円筒体101の内周面に
は、前記ボス部66の外周面上のテーパ面66aに係合
可能なテーパ面101aが、前端から後端にかけて次第
に拡径するように形成されている。
【0095】また、リミットバネ75は前記円筒体10
1の外周を取り巻くように配設され、所定の初期締め付
け力でもって円筒体101の外周面に密着されている。
このリミットバネ75の両端には、その素線の端部がそ
れぞれ接線方向に延出された前方延出部102及び後方
延出部103が形成されている。また、リミットバネ7
5の内周面には、調整手段の一部を構成する螺旋溝10
4が形成されている。螺旋溝104は、リミットバネ7
5の素線の接合部により形成されている。
【0096】前記回転軸26の前端の小径部69には、
円筒状をなすブッシュ71が挿嵌され、取付板105を
介してボルト78により抜け止め固定されている。前記
取付板105の外周部には、フランジ部105aが形成
されている。そのフランジ部105aの後方面には、円
環状の緩衝ゴム73が接着固定されている。緩衝ゴム7
3の後側面には、ほぼ有底円筒状をなす結合筒106が
その底面106aにおいて接着固定されている。そし
て、これらボルト78、取付板105、緩衝ゴム73及
び結合筒106は、前記回転軸26と一体回転可能に装
着されており、第2回転体の一部を構成している。
【0097】リミットバネ75の前端側は、前記結合筒
106の嵌挿筒部106b内に挿嵌されている。そのリ
ミットバネ75の前方延出部102は、結合筒106の
底面106aから内面側に向かって突設された係止突部
106cに係合されている。この係合により、リミット
バネ75と結合筒106とが一体回転可能に連結され、
そしてリミットバネ75が前記回転軸26とほぼ一体的
に回転されるようになっている。
【0098】また、このリミットバネ75の後端側部分
は、前記円筒体101に対して所定の締め代をもって接
合されている。つまり、このリミットバネ75の内径
は、ねじり荷重が作用していない無荷重状態において、
前記円筒体101の外径よりもわずかに小さくなるよう
に形成されている。そして、この締め代の存在により、
リミットバネ75が所定の初期締め付け力をもって円筒
体101に締め付け接合されるようになっている。
【0099】次に、この実施形態の動力伝達機構の組付
及び調整方法について、その組付作業に使用する組付調
整装置の構成と併せて説明する。図10及び図11に示
すように、組付調整装置111は、次のように構成され
ている。
【0100】すなわち、組付調整装置111は、後端固
定部材112と、前端固定部材113と、プレート11
4と、固定ボルト115とから構成されている。後端固
定部材112は、後端側の小径円筒部116と前端側の
大径円筒部117とからなっている。小径円筒部116
の内周面は、前記リミットバネ75の外周と対応するよ
うに形成されている。すなわち、図11に示すように、
小径円筒部116の内周面の後端部には、リミットバネ
75の後方延出部103に係合可能な第1係合凹部11
8が形成されている。また、リミットバネ75の前方延
出部102の通過を許容する通過凹部119は、前記第
1係合凹部118にほぼ対向する内周面にその全幅にわ
たって形成されている。大径円筒部117の前端側内周
面の段部120には、前記前端固定部材113の後端部
が収容されるようになっている。大径円筒部117に
は、複数のネジ孔121が穿設されている。
【0101】前記前端固定部材113は略円板状をな
し、その後端面には前記リミットバネ75の前端部と対
応する形状の収容凹所122が形成されている。その収
容凹所122の内周面には、リミットバネ75の前方延
出部102に係合可能な第2係合凹部123が形成され
ている。一方、前端固定部材113の前側面上には、そ
の前端固定部材113の軸線に沿って、トルク付与ハン
ドル124が突設されている。
【0102】前記プレート114は平面正方形状の平板
によりなり、その中央には前記前端固定部材113のト
ルク付与ハンドル124が挿通される挿通孔125が形
成されている。また、このプレート114には、その外
周縁近傍において、前記後端固定部材112のネジ孔1
21に対応するように、複数の透孔126が穿設されて
いる。
【0103】前記固定ボルト115は、前記プレート1
14の透孔126を通して、前記後端固定部材112の
ネジ孔121に螺合されている。この螺合により、プレ
ート114が、前記後端固定部材112の前端面に対し
て固定される。そして、後端固定部材112とプレート
114との間において、前端固定部材113が相対回動
可能に収容されている。
【0104】次に、前記のように構成された組付調整装
置111を用いた動力伝達機構の組付及び調整方法につ
いて説明する。まず、プーリ65を、前記圧縮機21の
フロントハウジング23のボス部63の外周面上に、ア
ンギュラベアリング64を介して取着する。
【0105】組付調整装置111の前端固定部材113
を回転させて、その第2係合凹部123の端面を後端固
定部材112の通過凹部119の端面に連続させる。こ
の状態で、リミットバネ75を後端固定部材112の開
口部内に挿入する。そして、そのリミットバネ75の前
方延出部102を前端固定部材113の第2係合凹部1
23に、後方延出部103を後端固定部材112の第1
係合凹部118にそれぞれ係合させる。
【0106】ついで、プレート114を万力等で固定し
た状態で、前端固定部材113のトルク付与ハンドル1
24を、レンチ等を用いてリミットバネ75の巻きが緩
む方向に回転させ、リミットバネ75に、ねじり荷重を
付与する。リミットバネ75の内径がプーリ65のボス
部66の外径よりもわずかに大きくなったところで、前
端固定部材113の回転をやめる。これにより、リミッ
トバネ75がねじり荷重が付与された状態で組付調整装
置111内に保持される。
【0107】この状態で、組付調整装置111に保持さ
れたリミットバネ75に、プーリ65のボス部66を、
円筒体101を介装しつつ挿嵌する。そして、レンチ等
によりリミットバネ75の巻きが締まる方向に、前端固
定部材113を回動させる。これにより、リミットバネ
75が、自身の元の形状に復帰しようとするねじりバネ
力により、徐々に円筒体101を締め付けていく。ここ
で、前述のように、リミットバネ75と円筒体101と
の間の締め代の存在により、リミットバネ75が所定の
初期締め付け力をもって円筒体101上に接合される。
これにより、付与されたねじり荷重が、初期締め付け力
に相当する分を除いて解除される。
【0108】そして、組付調整装置111のプレート1
14を万力等から取り外し、再度、リミットバネ75の
前方延出部102を前端固定部材113の第2係合凹部
123に、後方延出部103を後端固定部材112の第
1係合凹部118にそれぞれ係合させる。そして、プー
リ65を回転不能に固定する。
【0109】この状態で、前端固定部材113のトルク
付与ハンドル124を、レンチ等を用いてプーリ65の
回転方向とは逆方向に、いつでもすぐに停止できるよう
な極低速で回転させる。この回転により、リミットバネ
75は、巻きが緩む方向にねじり変形され、その内周が
拡径される。そして、円筒体101は、リミットバネ7
5に対して滑りながら相対回転される。この相対回転状
態で、前記前端固定部材113に作用するトルクを測定
することによって、リミットバネ75に作用するねじり
荷重の大きさを測定する。このねじり荷重の大きさは、
リミットバネ75がトルク伝達を遮断する負荷トルクの
値、つまり解放トルクの値に相当する。
【0110】このねじり荷重の大きさが所定の範囲内で
あるときには、直ちに前端固定部材113の回転を停止
して、ねじり荷重を解除し、組付調整装置111を取り
外す。これにより、リミットバネ75は、その内周が縮
径し、所定の初期締め付け力をもって円筒体101に対
して締め付け接合される。
【0111】一方、前記ねじり荷重の大きさが所定の範
囲を超えて大きいときには、前端固定部材113に作用
するトルク値を観察しながら、その前端固定部材の11
3の回転を継続させる。このとき、リミットバネ75と
円筒体101とが、滑りながら相対回転する。この相対
回転の際に、図12に示すように、リミットバネ75の
内周面上の螺旋溝104の螺進作用により、円筒体10
1には軸線方向への相対移動力が作用する。そして、円
筒体101は、この相対移動力により、テーパ面66
a、101aに沿って軸線方向に移動して、それらのテ
ーパ面66a、101aの係合位置が鎖線で示すように
変更される。これによって、リミットバネ75と円筒体
101との間の締め代が徐々に減少するように調整され
る。これにより、図10及び図11に示す前端固定部材
113に作用するトルク値も低下してくる。そして、ね
じり荷重の大きさが所定の範囲内に到達したところで、
前記と同様に直ちに前端固定部材113の回転を停止し
て、リミットバネ75を円筒体101上に締め付け接合
させて、組付調整装置111を取り外す。
【0112】そして、図8及び図9に示すように、スプ
ライン軸70とスプライン溝74とが係合するように、
回転軸26の小径部69に対してブッシュ71を挿嵌す
る。ついで、取付板105及び緩衝ゴム83と一体化さ
れた結合筒106を、その係止突部106cがリミット
バネ75の前方延出部102の端面に係合するように、
結合筒部106bをリミットバネ75の前端部に挿冠す
る。そして、ブッシュ71及び取付板105を、回転軸
26に対してボルト78により締め付け固定する。これ
により、リミットバネ75が、結合筒106、緩衝ゴム
83、取付板105、ボルト78及びブッシュ71を介
して回転軸26と一体回転可能に連結される。
【0113】以上のように構成されたこの第5の実施形
態によれば、前記各実施形態の動力伝達機構とほぼ同様
の効果に加えて、以下の効果が期待される。 ・ この第5の実施形態の動力伝達機構の調整方法で
は、リミットバネ75を組み付けた状態で、円筒体10
1を相対移動させることにより、リミットバネ75と円
筒体101との締め代が調整される。このため、リミッ
トバネ75を組み付けた状態で、解放トルクが所定の範
囲を越えて大きい場合であっても、リミットバネ75を
取り外して煩わしい選択嵌合を行うことなく、前記解放
トルクを所定の範囲内に収まるように設定することがで
きる。このように、リミットバネ75の解放トルクを容
易に調整することができる。従って、解放トルクの調整
作業に多くの工数を要したり、微妙に寸法の異なるリミ
ットバネ75及び円筒体101を多数用意する必要がな
い。また、プーリ65のボス部66及び円筒体101、
リミットバネ75を厳密に加工したりする必要もない。
従って、簡単な方法で、各製品の過大な負荷トルクの解
放特性を容易に安定化することができて、製作コストの
高騰を抑制することができる。
【0114】・ この第5の実施形態の動力伝達機構の
調整方法では、リミットバネ75に作用するねじり荷重
の大きさを測定しながら、リミットバネ75と円筒体1
01との締め代の調整を行うようになっている。このね
じり荷重の大きさは、リミットバネ75と円筒体101
とが滑りを生じ始める負荷トルクと等価である。このた
め、前記締め代の調整作業は、解放トルクを測定しなが
ら、その解放トルクを調整しているということに他なら
ない。従って、製品の組付作業において、その解放トル
クを確実に所定の範囲内に収めることができて、製品の
歩留まりを向上させることができる。
【0115】・ この第5の実施形態の動力伝達機構で
は、リミットバネ75の初期締め付け力を調整するため
の調整手段が、リミットバネ75自身の内周面に形成さ
れた螺旋溝104と、一対のテーパ面66a、101a
とからなっている。このため、初期締め付け力の調整の
ために特段の追加部材を必要とせず、構成の簡素化を図
ることができる。従って、動力伝達機構の製作コストの
高騰を一層抑制することができる。
【0116】(別例)なお、前記各実施形態は、以下の
ように変更して具体化することもできる。 ・ 前記第1の実施形態において、リミットバネ75の
内周のテーパ面75aの前方側部分の内径を、負荷トル
ク等の外力が作用していない状態(無荷重状態)におい
て結合板74の外径よりも小さくなるように設定し、リ
ミットバネ75を一旦拡径変形させて結合板74と挿嵌
し、拡径変形を解除してリミットバネ75と結合板74
に密着させること。
【0117】このように構成した場合、組み付け時にお
いて、リミットバネ75に対し若干のストレスを与える
ことにはなるが、一対のテーパ面74a、75aの係合
位置を調整することで、過大な負荷トルクの解放特性を
容易に安定化させることができる。
【0118】・ 前記第1の実施形態において、リミッ
トバネ75の内周の後方側部分をほぼ円筒状をなすよう
に巻回し、その後方側部分の内径を負荷トルク等の外力
が作用していない状態(無荷重状態)においてプーリ6
5のボス部66の外径よりも小さくなるように設定し、
リミットバネ75を一旦拡径変形させてプーリ65のボ
ス部66と挿嵌し、拡径変形を解除してリミットバネ7
5をプーリ65のボス部66に対して締め付け固定する
こと。つまり、リミットバネ75において、テーパ面7
5aを有する部分を過大な負荷トルクの解放を担うトル
クリミット部とし、他の部分をリミットバネの対向する
部材に対する固定を担う固定部とすること。
【0119】このように構成した場合、リミットバネ7
5がプーリ65のボス部66に一体回転可能に固定さ
れ、そのボス部66上に掛止突部77を形成することな
く、リミットバネ75をプーリ65に対し回り止めする
ことができる。従って、プーリ65の加工工数を低減で
きて、製作上有利である。
【0120】・ 前記第1の実施形態において、結合板
74をほぼ円筒状に形成し、その前端に、例えば前記第
2の実施形態に記載したようなリミットバネ75の前端
部に係合する係止突片87を設け、リミットバネ75の
内周の前方側部分をほぼ円筒状をなすように巻回し、リ
ミットバネ75の後方側部分の内周にテーパ面75aを
形成し、そのテーパ面75aと対をなすようにプーリ6
5のボス部66に、例えば前記第4の実施形態に記載し
たようなテーパ面66aを形成して、それらテーパ面7
5a、66aの係合位置を変更してリミットバネ75の
初期締め付け力を調整可能にすること。なお、この場
合、プーリ65のボス部66の掛止突部77は省略す
る。
【0121】このように構成した場合、リミットバネ7
5が結合板74に対して回り止めされて、結合板74、
緩衝ゴム73及びブッシュ71を介して、回転軸26と
に一体回転可能となる。ここで、圧縮機21側で過大な
負荷トルクが発生した場合には、リミットバネ75の締
め付け力が減少し、リミットバネ75の後方側部分と、
プーリ65のボス部66との一対のテーパ面75a、6
6aの間で滑りを生じて、プーリ65から回転軸への動
力伝達が遮断される。
【0122】・ 前記の別例において、結合板74の係
止突片87を省略し、リミットバネ75の前方側部分の
内径を負荷トルク等の外力が作用していない状態(無荷
重状態)において結合板74の外径よりも小さくなるよ
うに設定して、リミットバネ75を一旦拡径変形させて
結合板74と挿嵌し、拡径変形を解除してリミットバネ
75を結合板74に締め付け固定すること。
【0123】・ 前記第1の実施形態において、リミッ
トバネ75の内周のテーパ面75a及び結合板74の外
周のテーパ面74aを、第1の実施形態とは逆に、前端
から後端にかけて次第に縮径するように形成すること。
【0124】・ 前記第1の実施形態において、結合板
74の外周面上に、第2〜4の実施形態と同様の樹脂層
95を形成すること。 ・ 前記第2〜4の各実施形態において、結合板92の
外周面上の樹脂層95を省略すること。ただし、この場
合、結合板92の外径を、樹脂層95の厚み分だけ大き
く設定する必要がある。
【0125】・ 前記第2〜4の各実施形態において、
リミットバネ75を、圧縮機21に何らかの原因で過大
な負荷トルクが発生した場合に、その巻きが締まる方向
に巻回された締まりバネとすること。この場合、テーパ
面66a、88a、92aの係合位置を変更して、リミ
ットバネ75の連結板84、99の嵌挿筒部85、99
aに対する初期締め付け力を調整するようにする。ま
た、連結板84の係止突片87を省略する必要がある。
そして、この別例の動力伝達機構では、圧縮機21にお
いて過大な負荷トルクが発生すると、リミットバネ75
の外周が縮径されて、リミットバネ75の締め付け力が
減少される。このため、リミットバネ75と連結板84
との間で滑りを生じて、プーリ65から回転軸26への
動力伝達が遮断される。
【0126】・ 前記第5の実施形態において、リミッ
トバネ75を、圧縮機21に何らかの原因で過大な負荷
トルクが発生した場合に、その巻きが締まる方向に巻回
された締まりバネとすること。この場合、結合筒106
の嵌挿筒部106bの内周面に前端側から後端側に向か
って拡径するテーパ面を形成し、その嵌挿筒部106b
とリミットバネ75の外周面との間に、外周面上に前記
嵌挿筒部106bに対応するテーパ面を備えた円筒体を
介装する。また、結合筒106の係止突部106cを省
略するとともに、リミットバネ75をプーリ65に対し
て回り止めする。
【0127】このように構成した場合、リミットバネ7
5と円筒体との相対回転に伴って、リミットバネ75の
外周面上の螺旋溝の螺進作用により、円筒体が軸線方向
に相対移動される。これにより、前記テーパ面の係合位
置が変更されて、リミットバネ75の初期締め付け力が
調整される。
【0128】・ 前記第5の実施形態において、図13
(a)に示すように、介装部材としての円筒体101の
内周面、及び、その円筒体101が接合するプーリ65
のボス部66の外周面にテーパ面を設けず、リミットバ
ネ75と円筒体101とが相対回転されたときの螺旋溝
104の螺進作用によって、図13(b)に示すよう
に、円筒体101を軸線方向に移動させて、リミットバ
ネ75と円筒体101との軸線方向の接合距離を変更し
て、リミットバネ75の初期締め付け力を調整するよう
にすること。
【0129】・ 前記第5の実施形態においては、リミ
ットバネ75の素線間に形成される隙間を螺旋溝104
として利用したが、リミットバネ75の内周面に別途溝
加工を施し、螺旋溝を形成してもよい。螺旋溝はリミッ
トバネ75と対向する部材との相対回転に基づき両部材
間に軸方向への相対移動力を発生させる溝であれば、そ
の形状や製法は適宜変更してもよい。
【0130】・ 前記各実施形態において、回転軸26
に動力源を連結し、プーリ65にベルト67等を介して
被動機器を連結すること。 ・ 前記各実施形態において、リミットバネ75を複数
の素線が互いに平行をなすように巻回した多条ねじりコ
イルバネとすること。
【0131】これらのように構成した場合でも、前記各
実施形態とほぼ同様の効果が期待される。
【0132】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれば
以下の優れた効果を奏する。請求項1に記載の発明によ
れば、動力伝達機構の組み立て時に、第1回転体から第
2回転体への動力伝達経路において、ねじりコイルバネ
の初期締め付け力を、調整手段により予め調整すること
ができる。従って、過大な負荷トルクの解放特性を容易
に安定化することができる。
【0133】請求項2に記載の発明によれば、ねじりコ
イルバネと、それに対向する部材との間の相対回転によ
り、それらの間の軸線方向への相対移動力が生じる。こ
の相対移動力を前記初期締め付け力の調整に利用するこ
とができて、構成の簡素化を図ることができる。
【0134】請求項3及び7に記載の発明によれば、ね
じりコイルバネとそれに対向する部材とを軸線方向へ相
対移動させることにより、両者の軸線方向の接合距離が
変更される。従って、ねじりコイルバネの初期締め付け
力を容易に調整することができる。
【0135】請求項4に記載の発明によれば、一対の係
合可能なテーパ面により調整手段が構成されているた
め、簡単な構成でねじりコイルバネの初期締め付け力を
容易に調整することができて、製作コストの高騰を抑制
することができる。
【0136】また、ねじりコイルバネを予めねじり変形
させることなく、対向部材に密着させることができる。
従って、ねじりコイルバネの組み付け時に、過大なトル
クの解放特性に不用意な変化が生じるおそれを低減でき
る。
【0137】請求項5に記載の発明によれば、調整手段
を構成する一対のテーパ面が、ねじりコイルバネ自体の
内周面と、その内周面に嵌合する部材の外周面とに形成
されている。従って、部品点数の増大を抑制することが
できて、構成の一層の簡略化を図ることができる。
【0138】請求項6及び8に記載の発明によれば、調
整手段を構成する一対のテーパ面が、外側部材の内周面
と内側部材の外周面とに形成されている。このため、内
側部材と外側部材との一方を他方に対して軸線方向へ相
対移動させることにより、両テーパ面の係合位置が変更
される。従って、ねじりコイルバネの初期締め付け力を
容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態の動力伝達機構を備えたクラ
ッチレス可変容量圧縮機を示す断面図。
【図2】 図1の動力伝達機構を拡大して示す断面図。
【図3】 図2の3−3線において一部を断面にして示
す側面図。
【図4】 第2の実施形態の動力伝達機構を示す断面
図。
【図5】 図4の5−5線における部分断面図。
【図6】 第3の実施形態の動力伝達機構を示す断面
図。
【図7】 第4の実施形態の動力伝達機構を示す断面
図。
【図8】 第5の実施形態の動力伝達機構を示す断面
図。
【図9】 図8の9−9線において一部を断面にして示
す側面図。
【図10】 図8の動力伝達機構に組付調整装置を取着
した状態を示す断面図。
【図11】 図10の各部材を分解して示す斜視図。
【図12】 図8のリミットバネの調整方法に関する説
明図。
【図13】 第5の実施形態の動力伝達機構の別例に関
し、(a)は調整前の状態、(b)は調整後の状態を示
す説明図。
【図14】 従来の動力伝達機構を拡大して示す断面
図。
【符号の説明】
21…被動機器としてのクラッチレス可変容量圧縮機、
26…第2回転体の一部を構成する回転軸、65…第1
回転体としてのプーリ、66…内側部材を構成するボス
部、66a、74a、75a、88a、92a、101
a…調整手段を構成するテーパ面、68…動力源として
の車両エンジン、71…第2回転体の一部を構成するブ
ッシュ、73…第2回転体の一部を構成する緩衝ゴム、
74…嵌合する部材としての結合板、75…ねじりコイ
ルバネとしてのリミットバネ、82…第1回転体の一部
を構成する支持板、83…第1回転体の一部を構成する
緩衝ゴム、84…第1回転体の一部を構成する連結板、
88…内側部材としてのブッシュ、92…外側部材とし
ての結合板、98、105…第2回転体の一部を構成す
る取付板、99…第2回転体の一部を構成する連結板、
101…外側部材または介装部材としての円筒体、10
4…螺旋溝、106…第2回転体の一部を構成する結合
筒。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 南 和彦 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 天野 晃浩 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 平松 修 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 小林 久和 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動力源側の第1回転体と被動機器側の第
    2回転体とを、動力伝達時に発生する負荷トルクによっ
    てねじり変形可能なねじりコイルバネを介して、動力伝
    達可能に連結する動力伝達機構において、 前記ねじりコイルバネは、それに対向する部材に対し所
    定の初期締め付け力でもって結合し、そのねじりコイル
    バネの初期締め付け力を調整するための調整手段を設け
    た動力伝達機構。
  2. 【請求項2】 前記調整手段は、前記ねじりコイルバネ
    の外周面または内周面に形成された螺旋溝を含む請求項
    1に記載の動力伝達機構。
  3. 【請求項3】 前記ねじりコイルバネとそれに対向する
    部材との間に介装部材を介装し、それらねじりコイルバ
    ネと介装部材の軸線方向の接合距離を変更することによ
    り、ねじりコイルバネの初期締め付け力を調整するよう
    にした請求項2に記載の動力伝達機構。
  4. 【請求項4】 前記調整手段は一対の係合可能なテーパ
    面からなり、それらのテーパ面の係合位置を変更するこ
    とにより、ねじりコイルバネの初期締め付け力を調整す
    るようにした請求項1また2に記載の動力伝達機構。
  5. 【請求項5】 前記テーパ面は、ねじりコイルバネ自体
    の内周面と、その内周面に嵌合する部材の外周面とに形
    成した請求項4に記載の動力伝達機構。
  6. 【請求項6】 前記テーパ面は、ねじりコイルバネに密
    着する外側部材の内周面と、その内周面に嵌合する内側
    部材の外周面とに形成した請求項4に記載の動力伝達機
    構。
  7. 【請求項7】 請求項3に記載の動力伝達機構におい
    て、 前記ねじりコイルバネにねじり荷重を作用させて、ねじ
    りコイルバネと介装部材とを相対回転させ、前記螺旋溝
    の螺進作用により同ねじりコイルバネと同介装部材とを
    軸線方向に予め所定量だけ相対移動させて、同ねじりコ
    イルバネと同介装部材との軸線方向の接合距離を変更し
    て、解放時の負荷トルクの値を調整する動力伝達機構の
    調整方法。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の動力伝達機構におい
    て、 前記ねじりコイルバネにねじり荷重を作用させ、ねじり
    コイルバネと外側部材とを相対回転させて、同ねじりコ
    イルバネと同外側部材とを前記テーパ面に沿って相対移
    動させて、同ねじりコイルバネと同外側部材との間の締
    め代を予め所定量だけ変更して、解放時の負荷トルクの
    値を調整する動力伝達機構の調整方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008057763A (ja) * 2005-10-31 2008-03-13 Mitsuboshi Belting Ltd プーリ構造体
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CN113685456A (zh) * 2020-05-19 2021-11-23 株式会社日立大厦系统 机器人的动力传递机构以及使用该动力传递机构的机器人

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