JPH11291040A - 鋼板の重ねすみ肉溶接用シールドガス及び該シールドガスを使用した重ねすみ肉溶接方法 - Google Patents

鋼板の重ねすみ肉溶接用シールドガス及び該シールドガスを使用した重ねすみ肉溶接方法

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JPH11291040A
JPH11291040A JP9788798A JP9788798A JPH11291040A JP H11291040 A JPH11291040 A JP H11291040A JP 9788798 A JP9788798 A JP 9788798A JP 9788798 A JP9788798 A JP 9788798A JP H11291040 A JPH11291040 A JP H11291040A
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fillet welding
bead width
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JP9788798A
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Takeshi Yamanishi
剛士 山西
Toyoyuki Sato
豊幸 佐藤
Jun Yamagishi
潤 山岸
Tomoaki Sasaki
智章 佐々木
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Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
Original Assignee
Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄板鋼板を欠落無く確実に重ねすみ肉溶接す
るのに、ビード幅を広げ得て好適なシールドガスと該ガ
スを使用した重ねすみ肉溶接方法の提供。 【解決手段】 鋼板3と鋼板4との端部を重ね合わせ、
該重ね合わせの重ね代部Lをソリッドワイヤー2が供給
されているトーチ1によりすみ肉溶接するため、その雰
囲気を形成するのに用いるシールドガスを、アルゴンガ
スをベースガスとして、酸素ガス、ヘリウムガスの3種
の混合ガスとしたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板特に薄板の鋼
板を重ね合わせて、該部をすみ肉溶接するのに適した雰
囲気を形成するためのシールドガスと該シールドガスを
使用した重ね合わせすみ肉溶接方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】金属加工業界をはじめとして各種業界に
おいて、軽量化した高強度の製品開発が進められ、その
ために薄板の鋼板が大量に使用されている状況にある。
そして、かかる使用の状況下において、その加工作業で
効率的な生産及び品質の安定化のために自動溶接機が多
く使用されている。例えば、自動車等での薄肉の鋼材を
溶接する場合、溶接強度、溶接効率(生産効率)を上げ
るために鋼板の端部を重ねて、該重ね代部分を溶接する
方法が採られている。そしてその溶接方法としてソリッ
ドワイヤを用いて、間欠的にアークをとばすパルスマグ
溶接によって重ね合わせ部をすみ肉溶接する方法が行わ
れている。
【0003】この方法によると、被溶接材料である鋼板
としては、約0.5〜1.5mmの板厚の薄板鋼板に好
適に用いられ、重ね合わせする端部の代(「重ね代部」
という)は数mmであり、該部をトーチから連続して送
給されるソリッドワイヤにて、正確にとばされるアーク
によりこれを溶融して、溶接を行うものである。そこ
で、アークが重ね代部から少し“ずれ”が生じると、溶
接によってできるビードが重ね代部から外れ、一方の薄
板のみが溶けてしまい、重ねすみ肉溶接ができない(架
橋性が悪い)という問題があった。この重ね代部へのア
ークの“ずれ”が生じる原因としては、各薄板鋼板の固
定方法自体の固定精度に問題があるために“ずれ”が生
じたり、溶接の進行に伴って被溶接部に歪みが生じ、そ
の歪みのために薄板鋼板が引っ張られることにより“ず
れ”が生じることにあった。
【0004】このようなことより、各薄板を精度をもっ
てきちんと固定することは勿論のこと、溶接に伴って生
じる歪みの影響が出ないように、治具等によって精度あ
る固定が必要でであり、このため作業効率を非常に損な
うという問題があった。さらに、この重ね代部の“ず
れ”が生じないようにするために、アークによって高速
に溶接することができず、作業性が悪く生産効率におい
ても限界が生じていた。
【0005】この重ね代部で発生する“ずれ”の対応策
として、溶接時おいてビード幅を広くすることが要望さ
れていた。このビード幅を広げる一つの方法としては、
パルスマグ溶接に用いるソリッドワイヤの直径を太くす
ることによりビード幅を広げることができる。しかしこ
の方法では、使用するソリッドワイヤの径によって使用
可能な電流範囲が決まるものである。即ち、径が太いワ
イヤは使用可能な電流範囲が高く、それ故薄板鋼板で
は、溶け落ちが生ずる恐れがあり、溶け落ちを生じない
ような低電流域ではアークが不安定になり使用できな
い。従って、太いワイヤを用いてビード幅を広げようと
すると、ワイヤの適正電流域では溶け落ちの可能性が極
めて高くなるという問題があった。
【0006】また、ビード幅を広げ得る他の方法として
は、発生するアーク電圧を上げることによりビード幅を
広げることができる。即ち、例えばパルスマグ溶接にお
いては、溶接電流によりワイヤの供給量を制御し、溶接
電流に応じてワイヤを溶かすのに必要な適正溶接電圧を
設定しアークを発生させている。そして、ワイヤを溶か
すことからすれば溶接電圧を高くするに越したことはな
い。溶接電圧を上げることによりアーク長さを長くする
ことができ、その先端は拡がりを持っているため、ビー
ド幅を広げることができる。従って、ねらい部分に多少
“ずれ”が生じた場合でも溶接することができる。
【0007】しかし、ワイヤと溶接物の間の電圧を上げ
すぎると、アークが不安定になり、連続したアークを得
ることができず、アークが途切れてワイヤを溶かすに到
らず、ワイヤが溶接部をつつき、溶接ができないという
問題が生じる。また、特に薄肉鋼板の場合、電圧を上げ
て溶け込みが深くなり過ぎると、溶接部が抜け落ちると
いう問題が生じる。
【0008】このようなことより、電圧・電流を下げる
こととなり、その結果アークが安定せずビード幅が細く
なる。このため、溶接速度を抑えざるを得ず、溶接速度
を50〜60cm/min以上に上げることはできず、
低電圧、低速度で溶接を行わざるを得なかった。また、
電流が低い場合、アークが不安定になりやすく、その対
策として、アルゴンガスに酸素ガスや炭酸ガスを添加し
た混合ガスを雰囲気シールドガスとして使用して溶接す
ることにより、低電流域の溶接でのアークを安定させて
いた。特にアルゴンガスに酸素ガスを添加した混合ガス
では、溶融金属の表面張力を低下させる効果があるた
め、溶滴の大きさがワイヤの径よりも小さくなり、スプ
レー状に移行するスプレー移行促進がなされて、ビード
幅が拡がり易くなるという効果がある。一般に薄板のよ
うな低電流域でスパッタの発生が少ない溶接を行う場合
には、アルゴンガスに5容量%の酸素ガスを混合した混
合ガスが用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、薄板鋼板を
重ね合わせして、該部をすみ肉溶接をする場合、シール
ドガスとして、上記したアルゴンガスに酸素ガスを添加
した混合ガスでは、充分なビード幅を得るには到らな
い。それ故、溶接の初期設定条件や溶接の進行に伴い、
溶接の重ね代部に対してアークに“ずれ”が生じた時
に、この“ずれ”をビード幅で吸収することができず、
一部に溶接がなし得なかった部分が生じ、溶接欠陥をも
たらすこととなる。このような現状に鑑み、本発明は特
に薄板鋼板の溶接での重ね代部を確実に溶接することを
可能にすることを目的とし、このために溶接時に発生す
るアークの“ずれ”を吸収するに足る充分なビード幅
を、如何なる組成の混合ガスをシールドガスとすること
によって得られるかを、鋭意検討考究したものである。
そして本発明はこれに基づき、特に薄板鋼板を重ねすみ
肉溶接するのに好適なシールドガスとこれに伴う溶接方
法を提供することを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の上記課題の解決手段として、本発明の請求項1では、
アルゴンガス、ヘリウムガス及び酸素ガス3種類の混合
ガスでなることを特徴とする鋼板の重ねすみ肉溶接用シ
ールドガスとしたものであり、請求項2の発明では、3
種類の混合ガスの組成が、ヘリウムガス25〜75容量
%、酸素ガス2〜5容量%、残部アルゴンガスであるこ
とを特徴とする請求項1記載の鋼板の重ねすみ肉溶接用
シールドガスとしたものである。
【0011】また、その溶接方法として、請求項3の発
明では、鋼板の端部を重ね合わせ、該重ね合わせ部をア
ルゴンガス、ヘリウムガスおよび酸素ガスの3種類混合
ガスでなるシールドガス雰囲気中でパルスマグ溶接する
ことを特徴とする鋼板の重ねすみ肉溶接方法としたもの
であり、請求項4の発明では、3種類の混合ガスの組成
が、ヘリウムガス25〜75容量%、酸素ガス2〜5容
量%、残部アルゴンガスであることを特徴とする請求項
3記載の鋼板の重ねすみ肉溶接方法としたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の重ねすみ肉溶接について
図1により説明する。図1は重ねすみ肉溶接の一例とし
てパルスマグ溶接を説明するための概略図である。この
実施の形態では、0.5〜1.5mmの薄肉鋼板3、4
の各端部を重ね、重ね代部分Lにトーチ1よりソリッド
ワイヤ2を供給し、該ソリッドワイヤ2の先端と母材で
ある薄板鋼板の重ね代部Lとの間にアークを間欠的に発
生せしめて、母材である重ね代部Lを加熱するととも
に、ソリッドワイヤ2を溶融して、重ね代部Lをすみ肉
溶接するものである。
【0013】そして、本発明は、この溶接時に溶接部
を、アルゴンガスをベースガスとして、ヘリウムガス、
酸素ガスの3種の混合ガスよりなるシールドガスで覆っ
てその雰囲気下で溶接するものである。そして前記シー
ルドガスとしての3種混合ガスの混合比率を好ましく
は、ヘリウムガス25〜75容量%、酸素ガス2〜5容
量%、残部アルゴンガスとしたものである。このような
混合比率のガスをシールドガスとして用いることによ
り、溶接電流・溶接電圧を上げることができる。そのた
めシールドガス自体が保有するアークを拡大せしめる性
質に加え、溶接電流を上げて溶着量を増加させ、また溶
接電圧を上げることによりアーク長を更に延ばすことが
できるため、ビード幅を更に広げることができる。
【0014】従って、溶接の進行に伴って溶接歪みが生
じても、溶接重ね代部からビードが外れることがなくな
り、確実な重ねすみ肉溶接を行うことができ、製品の歩
留まりを向上せしめることができる。更に、前記組成比
の混合ガスをシールドガスに用いることにより、鋼板の
重ね合わせに際して重ね代に細かい精度をもって配置作
業を必要としなくなるため、重ね設定に要する時間を短
縮することができて、作業性の向上とともに、コストを
低減することができる。
【0015】
【実施例】本発明の重ねすみ肉溶接するのに適したシー
ルドガスを得るため、混合ガスのの組成分と混合比率に
ついて確認実験を行った。以下、これについて説明す
る。シールドガスとしては、該種溶接で従来より用いら
れているアルゴンガスをベースとして、酸素ガスを添加
した混合ガスを基本にして、該混合ガスにヘリウムガス
を添加量を変化せしめて、その添加量の変化によって、
ビード幅等のビード状態への影響を確認した。
【0016】この確認実験に使用した溶接は、図1に図
示した如き、トーチ1よりソリッドワイヤ2が供給さ
れ、ソリッドワイヤ2の先端と母材である薄板重ね代部
Lとの間にアークを間欠的(パルス的)に発生せしめ
て、母材である重ね代部Lを加熱するとともに、ソリッ
ドワイヤ2を溶融して、重ね代部Lをすみ肉溶接するパ
ルスマグ溶接である。 ・ 鋼板3、4は板厚0.8mmの冷間圧延亜鉛メッキ
鋼板を用いた。 ・ ソリッドワイヤ2は直径0.8mmのソリッドワイ
ヤ(JIS Z 3312YGW12)を用いた。
【0017】●溶接条件: ・ 電源はインバータ制御パルス電源を用いた。 ・溶接電流は60A。 ・パルス条件はピーク電流400A、ピーク時間1.4
x10ー3sec。 ・ソリッドワイヤ2の突き出し長さsは15mmとし
た。 ・トーチ角度αは母材薄板鋼板3、4の面の垂線に対し
て20度の角度を保ち、前進角度10度で行った。
【0018】●薄板鋼板3、4の設定条件: ・重ね代部Lを3mmとし、溶接設定部は上側の薄板鋼
板4の重ね代部Lの角部とし、トーチ(アーク)の狙い
ずれ1aを1.0mmとして行った。このトーチ(アー
ク)の狙いずれ1aの値1.0mmは、溶接機に被溶接
物が自動的に給送されて来る時、被溶接物を固定位置決
めする際に、本来の定位置より若干ずれを生じるもの
で、一般的な自動溶接におけるロボットでの繰り返し動
作精度や固定精度を考慮して、予測し得る最大の狙いず
れである。 ・薄板鋼板3と4との重ね代部LのギャップGを0.6
mmとした。このギャップの値0.6mmは、実際の溶
接で、薄板鋼板の端部を重ね合わせた時、溶接治具の精
度や、薄板鋼板の曲率の若干の相違を考慮し、溶接の進
行に伴って重ね代部Lの2枚の薄板鋼板の端部がそれぞ
れ引き寄せられて行くことによって生じる、予測し得る
最大のギャップである。
【0019】以上の如き共通する条件下で、以下の実験
を行った。 (実験1)シールドガスとしてアルゴンガスをベースガ
スにして酸素ガスを含有せしめた混合ガス(従来よりシ
ールドガスとして使用されている混合ガス)を使用し、
酸素ガス含有量(1〜7容量%)を変化せしめ、各酸素
ガス含有量の混合ガスについて、溶接電圧(V)の変化
に伴う溶接部のビード幅(mm)等のビード状態の確認
実験を行った。なお、この実験での溶接速度は80cm
/minで行った。その結果として電流60Aの時のビ
ード幅等のビード状態を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】表1より明らかなように、酸素ガスの含有
量が2〜7容量%の範囲で良好な溶接を行うことがで
き、特に2〜5容量%の含有量の範囲で良好なビード幅
を形成した溶接部を得ることができた。酸素ガスの含有
量が2容量%未満になるとアークが不安定になり、溶接
ができなくなった。また、酸素ガスの含有量が5容量%
を超えるとビードが凸形状となり、ビード幅が狭くな
り、ビード幅が広い溶接を行うことができず、本発明の
課題であるビード幅を広げることを成し得なかった。従
って、酸素ガス含有量は2〜5容量%の範囲がビード幅
を広げる溶接に最も良好な混合比であることが確認し得
た。なお、表1においてビード幅が確認し得た領域(表
中に数値が記載されている条件領域)では、ビード幅は
安定していて、その幅の増減は全て±3%以内に納まっ
ていた。
【0022】(実験2)シールドガスとしてアルゴンガ
スに代えてヘリウムガスをベースガスにして酸素ガスを
含有せしめた混合ガスを使用し、酸素ガス含有量(1〜
7容量%)を変化せしめ、各酸素ガス含有量の混合ガス
について、溶接電圧(V)の変化に伴う溶接部のビード
幅(mm)等のビード状態の確認実験を行った。なお、
この実験での溶接速度は80cm/minで行った。そ
の結果として電流60Aの時のビード幅等のビード状態
を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】表2で明らかなように、実験1でのアルゴ
ンガスをベースガスとした混合ガスと同様に、酸素ガス
の含有量が2〜5容量%の範囲で良好な溶接を行うこと
ができ、そしてそのビード幅は、実験1でのアルゴンガ
スをベースガスとしたものより良好な広いビード幅を形
成した溶接部を得ることが確認できた。また、使用し得
る適正な電圧範囲も、実験1でのアルゴンガスをベース
ガスとしたものよりは広くなることが確認できた。そし
てこの2〜5容量%の酸素ガス含有量の範囲では、酸素
ガス含有量が2容量%の方が5容量%の混合ガスに比べ
て、電圧を高く上げても適正なビード幅を有した溶接を
行うことができることが確認できた。なお、表2におい
てビード幅が確認し得た領域(表中に数値が記載されて
いる条件領域)では、ビード幅は安定していて、その幅
の増減は全て±3%以内に納まっていた。
【0025】(実験3)上記実験1及び実験2の結果に
基づき、シールドガスとしてアルゴンガスをベースガス
にして、酸素ガス、ヘリウムガスの3種混合ガスを使用
し、酸素ガス含有量を2容量%と固定し、ヘリウムガス
含有量(25〜80容量%)を変化せしめ、各ヘリウム
ガスガス含有量の混合ガスについて、溶接電圧(V)の
変化に伴う溶接部のビード幅(mm)等のビード状態の
確認実験を行った。なお、この実験での溶接速度は80
cm/minで行った。その結果として電流60Aの時
のビード幅等のビード状態を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】表3で明らかなように、ヘリウムガス含有
量が25〜75容量%においては、ある程度のビード幅
を形成した溶接部を得ることができた。また、ヘリウム
ガス含有量を50〜75容量%の範囲では、電圧を21
Vまで上げることができた。そして、実験2で行ったヘ
リウムガスと酸素ガスとの混合ガスで得られたビード幅
とほぼ同じか、それ以上のビード幅が得られた。これら
のことより、実験2で使用した高価なヘリウムガスと酸
素ガスの混合ガスより、安価で、かつ同等あるいはそれ
以上の効果を奏する本実験3でのアルゴンガスをベース
ガスとしたヘリウムガス、酸素ガスの3種混合ガスの方
が薄板鋼板の重ねすみ肉溶接のシールドガスとして適し
ていることが確認された。
【0028】なお、この実験3でのヘリウムガスの含有
量が75容量%以上では、ビード幅はそれなりに形成さ
れるが、スパッタの発生が増加し、溶接部が不完全な溶
接となり実用的な溶接ではなくなる。またヘリウムガス
の含有量を25容量%以下にすると、電圧を上げること
ができなくなり、効果的ではない。なおまた、表3にお
いてビード幅が確認し得た領域(表中に数値が記載され
ている条件領域)では、ビード幅は安定していて、その
幅の増減は全て±3%以内に納まっていた。
【0029】上記表3では、酸素ガスの含有量を2容量
%に固定してヘリウムガスとアルゴンガスの含有量を変
化せしめた溶接での、ビード幅等のビードの状態を確認
したが、実験1及び実験2の結果に基づき、酸素ガス含
有量を5容量%に固定して、同様にアルゴンガスとヘリ
ウムガスの含有量を変化せしめて実験を行った。その結
果、前記酸素ガス2容量%のものと同様に、ヘリウムガ
ス含有量が25〜75容量%が薄板鋼板の溶接用のシー
ルドガスとして適していることが確認された。
【0030】(実験4)すみ肉溶接する薄板鋼板の板厚
を上記各実験では0.8mmで行ったのを、本実験4で
は板厚を1.2mmの鋼板を使用し、実験3と同様の条
件の実験を行った。即ち、アルゴンガスをベースガスに
して、酸素ガス、ヘリウムガスの3種混合ガスを使用
し、酸素ガス含有量を2容量%と固定し、ヘリウムガス
含有量(25〜80容量%)を変化せしめ、各ヘリウム
ガスガス含有量の混合ガスについて、溶接電圧(V)の
変化に伴う溶接部のビード幅(mm)等のビード状態の
確認実験を行った。なお、この実験での溶接速度は80
cm/minで行った。その結果として電流60Aの時
のビード幅等のビード状態を表4に示す。
【0031】
【表4】
【0032】表4で明らかなように、実験3と同様にヘ
リウムガス含有量が25〜75容量%においては、ある
程度のビード幅を形成した溶接部を得ることが確認し得
た。また、ヘリウムガス含有量を50〜75容量%の範
囲では、電圧を21Vまで上げることができた。そし
て、薄板鋼板の板厚を1.2mmにしても、実験3で使
用したものと同じのアルゴンガスをベースガスとしたヘ
リウムガス、酸素ガスの3種混合ガスが薄板鋼板の重ね
すみ肉溶接のシールドガスとして適していることが確認
された。なお、ヘリウムガスの含有量が75容量%以上
では、ビード幅はそれなりに形成されるが、スパッタの
発生が増加し、溶接部が不完全な溶接となり実用的な溶
接ではなくなる。またヘリウムガスの含有量を25容量
%以下にすると、電圧を上げることができなくなり、効
果的ではなかった。なおまた、表4においてビード幅が
確認し得た領域(表中に数値が記載されている条件領
域)では、ビード幅は安定していて、その幅の増減は全
て±3%以内に納まっていた。
【0033】上記表4では、酸素ガスの含有量を2容量
%に固定してヘリウムガスとアルゴンガスの含有量を変
化せしめた溶接での、ビード幅等のビードの状態を確認
したが、実験3の結果に基づき、酸素ガス含有量を5容
量%に固定して、同様にアルゴンガスとヘリウムガスの
含有量を変化せしめて実験を行った。その結果、2容量
%のものとほぼ同様な状態が確認され、ヘリウムガス含
有量が25〜75容量%が薄板鋼板の溶接用のシールド
ガスとして適していることが確認された。
【0034】なお、上記実験3、及び実験4において
は、0.8mmと1.2mmとのそれぞれの板厚の薄板
鋼板を用いて実験を行ったが、これより板厚が厚い場合
には、電流を高く設定できることから、実験3、4より
もアークが不安定になることはない。従って、板厚が厚
い鋼板を溶接する場合は、適正電流を高く設定できるの
で、本発明のアルゴンガスをベースガスとした酸素ガ
ス、ヘリウムガスの3種混合ガスをシールドガスとして
用いることにより、ビード幅を広くすることができる。
【0035】本発明のシールドガスは、上記実施例にお
ける実験3、実験4では、パルスマグ溶接による薄板鋼
板の重ねすみ肉溶接に使用した例について説明したが、
パルスマグ溶接に限らず、薄板鋼板の重ねすみ肉溶接等
のアークの狙いずれが生じて溶接不良を起こすようなマ
グ溶接等の薄板鋼板の溶接であれば、如何なる溶接方法
のシールドガスとして使用することができ、ビード幅を
広くする同様な作用効果を奏することは勿論である。そ
して、その薄板の板厚も0.5〜1.5mmの範囲の鋼
板の溶接に効果的に使用することができる。
【0036】
【発明の効果】本発明の鋼板の重ねすみ肉溶接用のシー
ルドガスは、上記のような形態で実施され、以下の如き
効果を奏する。本発明のアルゴンガスをベースとした、
酸素ガス、ヘリウムガスの3種混合ガスを溶接用のシー
ルドガスとして用いることにより溶接電圧を高く設定す
ることができ、そしてビード幅を広げることができる。
それ故。本発明のシールドガスを使用して、鋼板の板厚
に応じて可能な限り高い電圧に設定して溶接することに
より、アークによる溶接部への狙いずれを吸収し得て、
溶接欠陥が生じることなく適切なビードで確実な重ねす
み肉溶接をすることが可能となった。しかも、前記狙い
ずれを吸収し得ることから、溶接設定部である重ね代部
の設定においても、特別な設定治具を用いる必要がな
く、設定作業が容易となる。
【0037】また、本発明のシールドガスでは、前記し
た如き広いビード幅を得ることができるばかりでなく、
適正なビード幅が得ることができる適正電圧の範囲が広
くなることより、従来のアルゴンガスと酸素ガスとの混
合ガスをシールドガスでの如き厳しい制御設定をする必
要がなくなり、運転操作が容易となるばかりか、溶接速
度を上げることができて生産効率を向上せしめる。更
に、上記した如き、溶接欠陥を解消して確実な重ねすみ
肉溶接を可能とするとともに、溶接部の設定や運転操作
性の容易性から、本発明のシールドガスを用いることに
より、溶接の歩留まりの向上と品質の安定した溶接が可
能となる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 重ねすみ肉溶接の一例としてパルスマグ溶接
を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1…トーチ、 1a…狙いずれトーチ(アーク)、 2
…ソリッド ワイヤ、3、4…薄板鋼板、 t…板厚、
s…ソリッド ワイヤの突き出し長さ、L…重ね代
部、 G…重ね代部のギャップ、 α…トーチ角度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐々木 智章 東京都港区西新橋一丁目16番7号 日本酸 素株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルゴンガス、ヘリウムガス及び酸素ガ
    ス3種類の混合ガスでなることを特徴とする鋼板の重ね
    すみ肉溶接用シールドガス。
  2. 【請求項2】 3種類の混合ガスの組成が、ヘリウムガ
    ス25〜75容量%、酸素ガス2〜5容量%、残部アル
    ゴンガスであることを特徴とする請求項1記載の鋼板の
    重ねすみ肉溶接用シールドガス。
  3. 【請求項3】 鋼板の端部を重ね合わせ、該重ね合わせ
    部をアルゴンガス、ヘリウムガスおよび酸素ガスの3種
    類混合ガスでなるシールドガス雰囲気中でパルスマグ溶
    接することを特徴とする鋼板の重ねすみ肉溶接方法。
  4. 【請求項4】 3種類の混合ガスの組成が、ヘリウムガ
    ス25〜75容量%、酸素ガス2〜5容量%、残部アル
    ゴンガスであることを特徴とする請求項3記載の鋼板の
    重ねすみ肉溶接方法。
JP9788798A 1998-04-09 1998-04-09 鋼板の重ねすみ肉溶接用シールドガス及び該シールドガスを使用した重ねすみ肉溶接方法 Pending JPH11291040A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105583497A (zh) * 2014-10-21 2016-05-18 无锡红旗船厂有限公司 高强度合金钢板焊接工艺
JP2021112763A (ja) * 2020-01-17 2021-08-05 フタバ産業株式会社 接合体の製造方法
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CN115180092A (zh) * 2022-08-18 2022-10-14 上海外高桥造船有限公司 船体薄板分段连接方法和船体

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