JPH11278992A - 単結晶シリコン引上げ方法、引上げ装置および黒鉛るつぼならびに石英るつぼ - Google Patents

単結晶シリコン引上げ方法、引上げ装置および黒鉛るつぼならびに石英るつぼ

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JPH11278992A
JPH11278992A JP10040898A JP10040898A JPH11278992A JP H11278992 A JPH11278992 A JP H11278992A JP 10040898 A JP10040898 A JP 10040898A JP 10040898 A JP10040898 A JP 10040898A JP H11278992 A JPH11278992 A JP H11278992A
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JP
Japan
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crucible
quartz crucible
single crystal
graphite crucible
quartz
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JP10040898A
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English (en)
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Susumu Maeda
進 前田
Kazutaka Terajima
一高 寺嶋
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Sumco Techxiv Corp
Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Komatsu Electronic Metals Co Ltd
Japan Science and Technology Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 石英るつぼと黒鉛るつぼに生じる反応を抑制
することで、両るつぼの延命を図る。 【解決手段】 石英るつぼ14と、この石英るつぼ14
に密着する黒鉛るつぼ12とを有する単結晶シリコン引
上げ装置10において、石英るつぼ14と密着する黒鉛
るつぼ12の表面に反応抑制材となるSiCコート36
を施す。このようにSiCコート36を黒鉛るつぼ12
の表面に施すと、両るつぼが直接接触するのを防止する
ことができる。このため単結晶シリコン42の引上げ時
といった高温環境下でも両るつぼ間の反応が抑えられる
ので、両るつぼの減肉量を低減させることができる。こ
のため両るつぼの延命を図ることが可能となり、単結晶
シリコン42の引上げコストの低減や、単結晶シリコン
42の大口径化を促進させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単結晶シリコンの
製造に用いられる単結晶シリコン引上げ方法、引上げ装
置および黒鉛るつぼならびに石英るつぼに係り、特に単
結晶シリコン引上げの際、石英るつぼと黒鉛るつぼとに
生じる反応を抑制し、両るつぼの延命を図るようにした
単結晶シリコン引上げ方法、引上げ装置および黒鉛るつ
ぼならびに石英るつぼに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、単結晶シリコンの製造方法とし
て、CZ法や、同方法に磁場を加えるようにしたMCZ
法が知られている。図9はCZ法やMCZ法を用いた単
結晶シリコン引上げ装置を示す簡易構成図である。同図
に示すようにCZ法およびMCZ法では、石英るつぼ1
に満たされる溶融シリコン2に種結晶3を浸し、この種
結晶3を石英るつぼ1の上方へと引き上げることで単結
晶シリコン4を育成させるようにしている。
【0003】ところで単結晶シリコン4の引上げ作業中
は、その結晶育成部5の温度をシリコン凝固点(168
5K)に保たなければならないため、加熱ヒータ8を稼
働させ石英るつぼ1の周囲温度を少なくともシリコン凝
固点以上に設定しておく必要がある。
【0004】しかし石英るつぼ1はこのような高温にさ
らされると、石英自体が軟化し機械的強度が低下する。
このため単結晶シリコン引上げ装置6では、石英るつぼ
1の外側に黒鉛製のるつぼ7(以下、黒鉛るつぼと称
す)を密着させるよう配置し、強度が低下する石英るつ
ぼ1を支えるようにしている。
【0005】そして単結晶シリコン4の引上げが終了し
た後はるつぼ周囲温度を常温へと戻し、前記単結晶シリ
コン4の取り出しを行う。しかしこのときの温度変化に
よって石英るつぼ1にストレスが加わり、当該石英るつ
ぼ1は破損してしまう(割れてしまう)。このため次回
の単結晶シリコン4の引上げは、前回の黒鉛るつぼ7に
新規の石英るつぼ1を装着して行うようにしている。な
お繰り返して使用される黒鉛るつぼ7の耐用回数は、る
つぼ径や周囲温度によっても変動するが30〜50回程
度が一般的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし石英るつぼの外
表面と、黒鉛るつぼの内表面とが高温環境下で密着する
と両者の間で反応が発生する。すなわち、
【化1】SiO2 +C→SiO+CO に示すように両者の反応にてシリコン酸化物(SiO)
と一酸化炭素(CO)のガスが発生する。そしてこの反
応により(ガスの発生により)両者に減肉が生ずる。こ
のため単結晶シリコンの引上げに繰り返して用いられる
黒鉛るつぼでは引上げ工程毎の消耗量が大きく、黒鉛る
つぼの繰り返し使用数を多くすることができないという
問題点があった。
【0007】さらにシリコン単結晶の大口径化が進む
と、結晶育成部と黒鉛るつぼの外周に配置された加熱ヒ
ータとの間隔が広くなる。しかし結晶育成部の温度をシ
リコン凝固点に維持するためには加熱ヒータの出力を上
げ、るつぼ小径時よりも温度を高くする必要がある。し
かし加熱ヒータの温度を上昇させると、上記石英るつぼ
と黒鉛るつぼとの反応がますます活性化され、最悪の場
合には単結晶シリコンの育成中に石英るつぼが消耗し、
育成の続行が不可能になったり、あるいは黒鉛るつぼの
寿命が著しく損なわれることが考えられる。特にMCZ
法においては、磁場により溶融シリコンの対流が抑制さ
れ熱交換効率が低下することから、上述した加熱ヒータ
の高温化がますます顕著になる。
【0008】本発明は上記従来の問題点に着目し、石英
るつぼと黒鉛るつぼに生じる反応を抑制することで、両
るつぼの延命を図ることのできる単結晶シリコン引上げ
方法、引上げ装置および黒鉛るつぼならびに石英るつぼ
を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、石英るつぼ
と、この石英るつぼに密着される黒鉛るつぼとの間に、
反応を抑制する材料を介在させれば、両者の延命を図る
ことができるという知見に基づいてなされたものであ
る。
【0010】すなわち本発明に係る単結晶シリコン引上
げ方法は、外表面を黒鉛るつぼで支持された石英るつぼ
に溶融シリコンを保持させ、この溶融シリコンから単結
晶シリコンの引上げをなす単結晶シリコンの引上げ方法
において、前記黒鉛るつぼと前記石英るつぼとの間に介
在された反応抑制材を前記黒鉛るつぼと前記石英るつぼ
とに密着させ、前記反応抑制材と両るつぼとの反応を抑
制させつつ前記単結晶シリコンの引上げをなす手順とし
た。
【0011】また本発明に係る単結晶シリコン引上げ装
置は、石英るつぼと、この石英るつぼの外表面に密着し
前記石英るつぼの支持をなす黒鉛るつぼとを有し、前記
石英るつぼに保持される溶融シリコンから単結晶シリコ
ンの引上げをなす単結晶シリコン引上げ装置において、
前記石英るつぼと前記黒鉛るつぼとの間に両るつぼに対
する反応抑制材を介在させ、反応による前記石英るつぼ
と前記黒鉛るつぼの減肉量を低減させるよう構成した。
【0012】そして前記黒鉛るつぼと前記石英るつぼと
の少なくともいづれか一方側をCVD(Chemica
l Vapor Deposition)装置などに投
入し、前記反応抑制材をコーティングにより設けたり、
あるいは前記黒鉛るつぼと前記石英るつぼとの間に別部
材として設けるようにしてもよく、さらに前記反応抑制
材は、前記石英るつぼの直胴部が密着する範囲と、前記
直胴部と前記石英るつぼの底部とを結ぶコーナ部にとい
った範囲に設けるようにしてもよい。そしてこのような
前記反応抑制材は、炭化珪素または窒化珪素であること
が好ましい。
【0013】また本発明に係る黒鉛るつぼは、溶融シリ
コンを保持する石英るつぼの外表面に密着し前記石英る
つぼの支持をなす黒鉛るつぼにおいて、前記石英るつぼ
との密着表面に両るつぼに対する反応抑制材を設けるよ
う構成し、前記反応抑制材は、炭化珪素または窒化珪素
であることが好ましい。
【0014】さらに本発明に係る石英るつぼは、黒鉛る
つぼに外表面が密着され前記黒鉛るつぼに支持されつつ
溶融シリコンの保持をなす石英るつぼにおいて、前記黒
鉛るつぼとの密着表面に両るつぼに対する反応抑制材を
設けるよう構成し、前記反応抑制材は、炭化珪素または
窒化珪素であることが好ましい。
【0015】
【作用】上記構成によれば、石英るつぼと黒鉛るつぼと
の間に反応抑制材が介在されるので、石英るつぼと黒鉛
るつぼとが直接接触して反応することがない。このため
過度な反応が抑えられ、両るつぼに発生する減肉量を低
減させることができる。そして前記黒鉛るつぼと前記石
英るつぼとの少なくともいづれか一方側をCVD(Ch
emical Vapor Deposition)装
置などに投入し、前記反応抑制材をコーティングにより
設けるようにすれば、両るつぼを密着させるだけで反応
抑制材が両るつぼの間に介在することとなり取り付け工
数を低減させることができる。
【0016】また反応抑制材を黒鉛るつぼと石英るつぼ
との間に別部品として設ければコーティングが難しい材
料でも反応抑制材として用いることができる。また加熱
ヒータに最も接近し高温になる石英るつぼの外表面の直
胴部や、コーナの位置に反応抑制材を設ければ、局部的
に減肉が発生するのを防止することができる。またるつ
ぼの全表面を対象にしないことから反応抑制材のコーテ
ィングや貼り付ける工数を少なくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明に係る単結晶シリコ
ン引上げ方法、引上げ装置および黒鉛るつぼならびに石
英るつぼを図面を参照して詳細に説明する。図2は本実
施の形態に係る単結晶シリコン引上げ装置の構造を示す
断面図である。同図に示すように単結晶シリコン引上げ
装置10は、その中央部に図示しない外部モータによっ
て回転可能な黒鉛るつぼ12と、当該黒鉛るつぼ12に
取付可能とされる非晶質からなる石英るつぼ14と、黒
鉛るつぼ12の外周に配置される加熱ヒータ16と、当
該加熱ヒータ16の外周に配置される断熱材18とが設
けられており、加熱ヒータ16を加熱させることでホッ
トゾーン20を形成するようにしている。
【0018】また断熱材18の外側には、外気との隔離
をなす真空容器22が設けられている。そして石英るつ
ぼ14の上側には引上げ軸24が設けられ、この引上げ
軸24を動作させることで当該引上げ軸24の先端に取
り付けられる種結晶ホルダ26の上下移動を可能にして
いる。なお種結晶ホルダ26は、所定の方位をもつ種結
晶28を保持可能にしている。
【0019】真空容器22の上部には不活性ガス導入口
30が設けられ、一方真空容器22の下部には不活性ガ
ス排気口32が設けられており、シリコン単結晶の引上
げ時には、ホットゾーン(カーボン材)の酸化防止や、
融液からの蒸発物(シリコン酸化物)のパージ効果を高
める目的から、不活性ガス導入口30より高純度のアル
ゴンガス29を導入させるとともに、不活性ガス排気口
32よりこれを排気させ、真空容器22の内部、すなわ
ち石英るつぼ14の周辺をアルゴンガス29の雰囲気に
するようにしている。
【0020】図1は、単結晶シリコン引上げ装置10に
おける黒鉛るつぼ12と石英るつぼ14との取り付け状
態を示した簡易断面図である。同図に示すように、黒鉛
るつぼ12の内表面、すなわち黒鉛るつぼ12における
石英るつぼ14との密着面34には、炭化珪素のコーテ
ィング(以下SiCコートと称す)36が施され、黒鉛
るつぼ12と石英るつぼ14はそれぞれSiCコート3
6に接触し、両るつぼ同士が直接接触しないようになっ
ている。
【0021】このように構成された単結晶シリコン引上
げ装置10を用い、単結晶シリコンの引上げを行う手順
を説明する。まず石英るつぼ14にあらかじめ投入され
た多結晶シリコンを、加熱ヒータ16によって溶融させ
る。このとき加熱ヒータ16は、多結晶シリコンを素早
く溶融させ工程時間の短縮を図ろうとする目的から、結
晶育成部38付近の温度をシリコン融点より高い約17
73K程度になるよう設定する。
【0022】こうして石英るつぼ14内の多結晶シリコ
ンが溶け、溶融シリコン40になった後は、今度は加熱
ヒータ16の出力を下げ、結晶育成部38付近の温度が
シリコン凝固点(1685K)になるよう温度設定を行
う。
【0023】そして結晶育成部38付近の温度がシリコ
ン凝固点(1685K)になるよう調整した後は、石英
るつぼ14の上方から種結晶28を下降させ、当該種結
晶28を溶融シリコン40の液表面に接触させる。そし
て種結晶28を溶融シリコン40に浸した後は、この種
結晶28を少しずつ上昇させ、種結晶28に続く単結晶
シリコン42の育成を図るようにする。
【0024】ところでこの単結晶シリコン42の引上げ
育成時には、結晶育成部38の温度がシリコン凝固点
(1685K)になるよう、加熱ヒータ16の出力を調
整する必要がある。また多結晶シリコンを溶融させる場
合には、さらに加熱ヒータ16の出力を上げる必要があ
る。このため結晶育成部38より加熱ヒータ16寄りの
黒鉛るつぼ12と石英るつぼ14との境界部分は結晶育
成部38よりも高温にさらされる。
【0025】このように黒鉛るつぼ12と石英るつぼ1
4との境界部分が高温にさらされると、この両者の間に
反応が生じ、シリコン酸化物(SiO)と一酸化炭素
(CO)のガスが発生し、両るつぼ12、14が減肉す
ることが考えられるが、この両者の間、すなわち黒鉛る
つぼ12の密着面34にはSiCコート36が施されて
いるので、黒鉛るつぼ12と石英るつぼ14が直接接触
することがない。このため黒鉛るつぼ12と石英るつぼ
14とはSiCコート36と密着し、当該SiCコート
36と反応しようとする。しかし当該SiCコート36
は、高温環境下でも黒鉛および石英と殆ど作用しない性
質を有していることから、黒鉛るつぼ12および石英る
つぼ14と接触しても反応が抑えられ、もってガス発生
による減肉の進行を抑えることができる。
【0026】そしてこの状態が継続され、単結晶シリコ
ン42の引上げ作業が終了した後は、加熱ヒータ16を
停止させ真空容器22内部の温度を常温へと戻し、単結
晶シリコン42を取り出す。
【0027】ところで石英るつぼ14には、単結晶シリ
コン42を引き上げた後も溶融シリコン40が僅かなが
ら残留している。このため(石英るつぼ14の底に溶融
シリコン40を残留させた状態で)真空容器22内部の
温度を常温に向けて下げていくと、温度の低下とともに
溶融シリコン40が凝固し始める。ここで溶融シリコン
40と、石英るつぼ14との熱膨張率は著しく異なるこ
とから溶融シリコン40の凝固とともに、石英るつぼ1
4にはストレスが加わり始める。そしてこのストレスは
温度の低下とともに増大し、石英るつぼ14は、常温に
達する途中でこのストレスに耐えきれず破損してしま
う。このため真空容器22内の温度を常温に戻した後に
は、単結晶シリコン42の取り出しを行うとともに、石
英るつぼ14の残骸を黒鉛るつぼ12の内側から取り除
く必要がある。
【0028】一方黒鉛るつぼ12は、単結晶シリコン4
2の引上げが終了し、石英るつぼ14が破損しても、密
着面34にSiCコート36が残るので、石英るつぼ1
4の残骸を取り除いた後は、再び新規の石英るつぼ14
を装着し、繰り返し単結晶シリコン42の引上げ工程に
投入すればよい。そしてSiCコート36の密着面34
への施しにより、黒鉛るつぼ12の減肉の進行が抑えら
れたことから、黒鉛るつぼ12の延命が図れ、当該黒鉛
るつぼ12の耐用回数増大による単結晶シリコン42の
製作コスト低減を図ることができる。
【0029】また発明者は、上記結果を導くために種々
検討し実験を行った。この実験内容と実験により得られ
た結果を以下に述べる。図3は、発明者が使用した実験
装置の構造を示す断面図である。同図に示すように実験
装置44は、約40mmの直径と約50mmの全長を持
つ試験用黒鉛るつぼ46を収容可能にする真空容器48
を有している。そして当該真空容器48の内部は、前述
した単結晶シリコン引上げ装置10と同様に減圧環境を
作り出せるとともに、真空容器48の内部に設けた加熱
ヒータ49にて試験用黒鉛るつぼ46の外表面を加熱出
来るようにしている。
【0030】さらに実験装置44の特有の設備として
は、真空容器48の上方に吊下天秤50が設けられてい
る。そして当該吊下天秤50から垂らされたタングステ
ンワイヤ52により試験用黒鉛るつぼ46を吊り下げ、
当該吊下天秤50を真空容器48内に収容可能にしてい
る。なお吊下天秤50の分解能は0.1gとなってお
り、試験用黒鉛るつぼ46側に生じる僅かな重量変化も
捕らえられるようになっている。また真空容器48内に
収容される試験用黒鉛るつぼ46の底部近傍には熱電対
54が設けられ、試験用黒鉛るつぼ46の周囲温度を計
測できるようにしている。
【0031】このように構成された実験装置44を用
い、高温環境下で黒鉛と石英を密着させた場合、両者が
反応し重量がどのくらい低減するか実験を行った。なお
本実験では石英側の試料として、試験用黒鉛るつぼ46
の内側に密着可能な試験用石英るつぼ56を用いること
とした。
【0032】図4は設定した各温度に黒鉛と石英を放置
した場合、単位時間内でどれだけ重量が変化するか(軽
減するか)を示したグラフである。なお同グラフにおい
ては、横軸が温度を示し、縦軸が重量の損失分を示して
いる。そして同グラフによるとシリコンの凝固点(16
85K)より下の1650K付近では、殆ど重量損失は
起こらないものの周囲温度が上昇するにつれ、試験用黒
鉛るつぼ46と試験用石英るつぼ56との反応が活発に
なり、重量損失が増大していくことがわかる。なお実験
では真空容器48内の圧力を大気圧と減圧環境の2段階
に設定し、このときの重量損失を確認したが、温度が同
一であればより真空に近い方が重量損失が大きくなるこ
とが確認された。この実験結果から黒鉛と石英との重量
損失の主原因は、黒鉛と石英との間に、
【化2】SiO2 +C→SiO+CO に示すような反応が起こり、真空容器48内にシリコン
酸化物(SiO)と一酸化炭素(CO)のガスとして飛
散していくためだと推定できる。
【0033】そして発明者は、高温環境化でも黒鉛と石
英との反応を抑制することができれば、シリコン酸化物
(SiO)と一酸化炭素(CO)のガスの発生が抑えら
れ、黒鉛と石英との重量損失を少なくすることができる
のではないかという知見に基づき確認実験を行った。
【0034】すなわちこの実験は、SiCコートがなさ
れた黒鉛るつぼに石英を投入し、実験装置44にてこれ
を加熱し、重量損失がどの程度になるかを確認したもの
である。なお真空容器48内の圧力は、前述の実験と同
様に大気圧と減圧環境との2段階に設定するようにし
た。
【0035】この実験結果を図5に示す。当該図5は黒
鉛と石英との間に介在するSiCコートの有無により、
重量損失がどの程度変化するかを比較したグラフであ
る。ところで同グラフでは、黒鉛と石英との間にSiC
コートが無い場合のデータとして前述した図4で示した
結果を用いるようにしている。しかしこのデータ(図4
で示した結果)は、SiCコートがなされた黒鉛るつぼ
に石英を投入した実験に対して接触面積等で違いがあ
り、両者の結果を単純に比較することができない。この
ため同グラフにおいては、縦軸で示す重量損失の値を単
位時間、単位面積あたりで示すようにし、接触面積の大
小等などの条件の違いを吸収することで、両者を直接比
較できるようにしている。
【0036】同グラフによれば、黒鉛と石英とをSiC
を介さず密着させたものは、前述の通りシリコンの凝固
点付近から重量の損失が増大し、高温になるにつれ重量
損失の傾向は顕著になる。
【0037】これに対し黒鉛と石英との間にSiCコー
トを介在させたものは、1730K程度まで殆ど重量損
失が生じない。またそれ以上に温度が上昇しても重量損
失は僅かである。このように黒鉛と石英との間にSiC
コートを介在させると、黒鉛と石英との間にSiCコー
トが無いものと比較して、重量損失が40〜50%程度
低減されることが確認された。
【0038】これらの実験結果から、黒鉛るつぼや石英
るつぼに生じる減肉は(重量低減は)、両るつぼの反応
によりシリコン酸化物(SiO)と一酸化炭素(CO)
がガスとして生じ、両るつぼから放出されることが原因
であるといえる。そして減肉量を減らし、両るつぼの延
命を図るには、両るつぼの間に反応抑制材(SiCコー
ト)を介在させることが効果的であることが判明した。
【0039】なお上述した実験では、黒鉛るつぼにSi
Cコートを施す方法としてCVD法を用いることとし、
また本実施の形態で取り上げた密着面34へのSiCコ
ート36の施しも前記CVD法が有力であるが、この形
態にこだわる必要もなく他の方法を用いてコーティング
するようにしてもよい。さらにコーティング材をSiC
コートとしたが、高温環境下でも黒鉛および石英と反応
が少ないものであればよいことから、他の形態としてS
iNコート(窒化珪素のコーティング)を用いるように
してもよい。また本実施に形態では、黒鉛るつぼ12に
コーティングを施すようにしたが、当該黒鉛るつぼ12
の代わりに石英るつぼ14にコーティングを施したり、
あるいはその両方に行うようにしてもよい。
【0040】このように両るつぼの反応を抑えられるこ
とから、例えば多結晶シリコンを投入しつつ単結晶シリ
コンの引上げをなす連続CZ法など長時間るつぼ同士を
密着させる方法においても、両るつぼに障害が生じるこ
となく確実に単結晶シリコンの引上げを行うことができ
る。
【0041】ところで本実施の形態では、反応抑制材を
コーティングさせるようにしたが、この形態に限定され
るものではなく、黒鉛るつぼ12と石英るつぼ14との
間に反応抑制材を別部品として介在させるようにしても
よい。
【0042】図6は反応抑制材を別部品として形成した
場合のるつぼ間の展開図を示す。同図に示すように黒鉛
るつぼ12と、石英るつぼ14との間に、るつぼ形状に
倣った反応抑制材58を設けるようにすれば、コーティ
ングと同様に黒鉛るつぼ12と石英るつぼ14とが直接
に接触するのを防止することができる。また反応抑制部
58の材質は、前述のSiCあるいはSiNであっても
よいが、本方式はCVDなどでコーティングできない部
材も適用することができ、より幅広い材質の選定が可能
になる。
【0043】また前述の説明では、るつぼの全面を覆い
反応を抑制する形態を説明したが、黒鉛るつぼ12と石
英るつぼ14の高温になる部分だけ、両るつぼが接触す
るのを防止するようにしてもよい。図7は石英るつぼ1
4の直胴部分60と、当該直胴部分60と底部62とを
結ぶ円弧部64の外表面にリング状の反応抑制材58を
設けた場合の簡易断面図を示す。同図に示すように直胴
部分60と円弧部64付近は加熱ヒータ16から距離が
近いため高温になる。一方底部62の付近は加熱ヒータ
16から遠いために比較的温度が低い。このようにるつ
ぼ表面において温度分布が異なることから、減肉し易い
高温の直胴部分60と円弧部64だけに反応抑制材58
を設けるようにして、減肉の速度を調整するようにして
もよい。
【0044】なお本発明の内容を従来の単結晶シリコン
引上げ作業に適用する場合、以下に示す形態がより好適
であると考える。図8は、黒鉛るつぼの内壁に段差を設
け、この段差部分に反応抑制材を装着した状態を示す断
面図である。同図(1)に示すように、黒鉛るつぼ66
の内壁68に段差を形成するには、黒鉛るつぼ66を軸
心70を中心として回転させるとともに、内壁68に切
削用バイト72を押し当て、当該切削用バイト72を
(あるいは黒鉛るつぼ66を)軸心70に沿って移動さ
せればよい。このように黒鉛るつぼ66と切削用バイト
72とを軸心70に沿って相対移動させれば、内壁68
に黒鉛るつぼ66の開口と同心円状に段差74が形成さ
れる。そして同図(2)に示すように黒鉛るつぼ66の
開口上側から、内壁68の段差形状に一致するリング状
の反応抑制材76を黒鉛るつぼ66に装着すればよい。
【0045】このように段差が設けられた黒鉛るつぼ6
6の内壁68に反応抑制材76を装着すれば、単結晶シ
リコン引上げ装置に変更を施すことなく本発明を適用す
ることができる。すなわち単結晶シリコン引上げ装置に
おいては、引き上げる単結晶シリコンの外径が決まって
いると、その外径に応じて(単結晶シリコンの引上げ体
積に見合うだけの)石英るつぼの大きさが決まる。この
ため現状より石英るつぼの形状を小さくしてその空隙に
反応抑制材76を設置することができない。
【0046】一方黒鉛るつぼ66の形状を大きくしてそ
の空隙に反応抑制材76を設置しようとすると黒鉛るつ
ぼ66のの大型化により、当該黒鉛るつぼ66と、この
黒鉛るつぼ66の外側に位置する加熱ヒータとのクリア
ランスが不足する。このため加熱ヒータをさらに外方に
移動させなくてはならず装置自体の改造が必要になると
ともに、加熱ヒータの出力も上げなければならない。
【0047】しかし黒鉛るつぼ66の内壁68に段差7
4を設け、反応抑制材76の厚みを黒鉛るつぼ66の肉
厚で吸収するようにすれば、装置自体の変更も不要にな
り、また加熱ヒータの出力を必要以上に上げる必要もな
い。このため図8に示すような形態を用いれば従来と同
様の設備で本発明を適用することができる。なお段差7
4が形成された黒鉛るつぼ66の薄肉部分は、最低でも
石英るつぼを保持できるだけの強度をもった厚みに設定
すればよい。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、外
表面を黒鉛るつぼで支持された石英るつぼに溶融シリコ
ンを保持させ、この溶融シリコンから単結晶シリコンの
引上げをなす単結晶シリコンの引上げ方法において、前
記黒鉛るつぼと前記石英るつぼとの間に介在された反応
抑制材を前記黒鉛るつぼと前記石英るつぼとに密着さ
せ、前記反応抑制材と両るつぼとの反応を抑制させつつ
前記単結晶シリコンの引上げをなしたことから、両るつ
ぼの延命を図ることができ高品質の単結晶シリコンを安
価で提供することができる。また両るつぼの延命により
単結晶シリコンの大口径化を促進することが可能にな
る。さらに上記効果に加え、黒鉛と石英との反応を抑え
たことにより一酸化炭素の発生を抑えることができる。
このため単結晶シリコン引上げ作業中に、溶融シリコン
あるいは気相(アルゴン雰囲気)を介して単結晶シリコ
ンに取り込まれる炭素の量を低減させることも可能とな
り、もって単結晶シリコンの品質の向上を図ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単結晶シリコン引上げ装置10における黒鉛る
つぼ12と石英るつぼ14との取り付け状態を示した簡
易断面図である。
【図2】本実施の形態に係る単結晶シリコン引上げ装置
の構造を示す断面図である。
【図3】発明者が使用した実験装置の構造を示す断面図
である。
【図4】設定した各温度に黒鉛と石英を放置した場合、
単位時間内でどれだけ重量が変化するか(軽減するか)
を示したグラフである。
【図5】黒鉛と石英との間に介在するSiCコートの有
無により、重量損失がどの程度変化するかを比較したグ
ラフである。
【図6】反応抑制材を別部品として形成した場合のるつ
ぼ間の展開図を示す。
【図7】石英るつぼ14の直胴部分60と、当該直胴部
分60と底部62とを結ぶ円弧部64の表面に反応抑制
材58を設けた場合の簡易断面図を示す。
【図8】黒鉛るつぼの内壁に段差を設け、この段差部分
に反応抑制材を装着した状態を示す断面図である。
【図9】CZ法やMCZ法を用いた単結晶シリコン引上
げ装置を示す簡易構成図である。
【符号の説明】
1 石英るつぼ 2 溶融シリコン 3 種結晶 4 単結晶シリコン 5 結晶育成部 6 単結晶シリコン引上げ装置 7 黒鉛るつぼ 8 加熱ヒータ 10 単結晶シリコン引上げ装置 12 黒鉛るつぼ 14 石英るつぼ 16 加熱ヒータ 18 断熱材 20 ホットゾーン 22 真空容器 24 引上げ軸 26 種結晶ホルダ 28 種結晶 29 アルゴンガス 30 不活性ガス導入口 32 不活性ガス排気口 34 密着面 36 炭化珪素のコーティング(SiCコー
ト) 38 結晶育成部 40 溶融シリコン 42 単結晶シリコン 44 実験装置 46 試験用黒鉛るつぼ 48 真空容器 49 加熱ヒータ 50 吊下天秤 52 タングステンワイヤ 54 熱電対 56 試験用石英るつぼ 58 反応抑制材 60 直胴部分 62 底部 64 円弧部 66 黒鉛るつぼ 68 内壁 70 軸心 72 切削用バイト 74 段差 76 反応抑制材

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外表面を黒鉛るつぼで支持された石英る
    つぼに溶融シリコンを保持させ、この溶融シリコンから
    単結晶シリコンの引上げをなす単結晶シリコンの引上げ
    方法において、前記黒鉛るつぼと前記石英るつぼとの間
    に介在された反応抑制材を前記黒鉛るつぼと前記石英る
    つぼとに密着させ、前記反応抑制材と両るつぼとの反応
    を抑制させつつ前記単結晶シリコンの引上げをなすこと
    を特徴とする単結晶シリコン引上げ方法。
  2. 【請求項2】 石英るつぼと、この石英るつぼの外表面
    に密着し前記石英るつぼの支持をなす黒鉛るつぼとを有
    し、前記石英るつぼに保持される溶融シリコンから単結
    晶シリコンの引上げをなす単結晶シリコン引上げ装置に
    おいて、前記石英るつぼと前記黒鉛るつぼとの間に両る
    つぼに対する反応抑制材を介在させ、反応による前記石
    英るつぼと前記黒鉛るつぼの減肉量を低減させることを
    特徴とする単結晶シリコン引上げ装置。
  3. 【請求項3】 前記反応抑制材は、前記黒鉛るつぼと前
    記石英るつぼとの少なくともいづれか一方側にコーティ
    ングにより設けられることを特徴とする請求項2に記載
    の単結晶シリコン引上げ装置。
  4. 【請求項4】 前記反応抑制材は、前記黒鉛るつぼと前
    記石英るつぼとの間に別部材として設けられたことを特
    徴とする請求項2に記載の単結晶シリコン引上げ装置。
  5. 【請求項5】 前記反応抑制材は、前記石英るつぼの直
    胴部が密着する範囲と、前記直胴部と前記石英るつぼの
    底部とを結ぶコーナ部に設けることを特徴とする請求項
    2乃至請求項4に記載の単結晶シリコン引上げ装置。
  6. 【請求項6】 前記反応抑制材は、炭化珪素または窒化
    珪素であることを特徴とする請求項2乃至請求項5に記
    載の単結晶シリコン引上げ装置。
  7. 【請求項7】 溶融シリコンを保持する石英るつぼの外
    表面に密着し前記石英るつぼの支持をなす黒鉛るつぼに
    おいて、前記石英るつぼとの密着表面に両るつぼに対す
    る反応抑制材を設けたことを特徴とする黒鉛るつぼ。
  8. 【請求項8】 前記反応抑制材は、炭化珪素または窒化
    珪素であることを特徴とする請求項7に記載の黒鉛るつ
    ぼ。
  9. 【請求項9】 黒鉛るつぼに外表面が密着され前記黒鉛
    るつぼに支持されつつ溶融シリコンの保持をなす石英る
    つぼにおいて、前記黒鉛るつぼとの密着表面に両るつぼ
    に対する反応抑制材を設けたことを特徴とする石英るつ
    ぼ。
  10. 【請求項10】 前記反応抑制材は、炭化珪素または窒
    化珪素であることを特徴とする請求項9に記載の石英る
    つぼ。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20030052467A (ko) * 2001-12-21 2003-06-27 주식회사 실트론 실리콘 잉곳 성장용 흑연 도가니
JP2014521585A (ja) * 2011-08-05 2014-08-28 プランゼー エスエー 結晶成長用のるつぼ
CN113355740A (zh) * 2020-03-06 2021-09-07 内蒙古中环光伏材料有限公司 一种直拉单晶石英坩埚用承载装置
CN115448752A (zh) * 2022-09-26 2022-12-09 攀钢集团研究院有限公司 一种提高钒氮合金用石墨坩埚使用寿命的方法

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