JPH11270678A - シリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製造方法 - Google Patents

シリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製造方法

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JPH11270678A
JPH11270678A JP10096653A JP9665398A JPH11270678A JP H11270678 A JPH11270678 A JP H11270678A JP 10096653 A JP10096653 A JP 10096653A JP 9665398 A JP9665398 A JP 9665398A JP H11270678 A JPH11270678 A JP H11270678A
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piston rod
tube
oxide film
piston
seal member
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JP10096653A
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Yuichi Kobayashi
裕一 小林
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Tokico Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンロッドの外周側に窒化膜と酸化膜を
形成した場合でも、ピストンロッドとシール部材との摺
動面間を常時潤滑状態に保持できるようにする。 【解決手段】 ピストンロッド4の基材となる金属体5
の外表面に、例えば0.1〜0.2μm程度の表面粗さ
Raをもって研削加工を施すことにより、この金属体5
の外表面には無数の凹凸穴を形成する。そして、この金
属体5の外表面には窒化膜6を形成し、この窒化膜6の
外表面には酸化膜7を形成する。そして、金属体5に形
成した酸化膜7の表面にバフ研磨を施すことにより、こ
の酸化膜7には、金属体5の凹凸穴と対応した位置に無
数の微小クレータ7Aを形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばワゴン車の
バックドア等を開閉するのに用いられるガススプリング
等のシリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、シリンダ装置としては、例えば
実開昭56−108036号公報(以下、第1の従来技
術という)等に記載のガススプリングが知られており、
このガススプリングは、内部に油液と共に圧縮ガスが封
入された筒状のチューブと、該チューブ内に摺動可能に
設けられ、該チューブ内を2つのガス室に画成したピス
トンと、一端側が該ピストンに設けられ、他端側が前記
チューブに設けられたロッドガイドを介して該チューブ
外に突出したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設
けられピストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッ
ドとロッドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の
流体が外部に漏洩するのを防止するシール部材とから構
成されている。
【0003】この第1の従来技術によるガススプリング
は、例えばワゴン車のバックドア等に適用され、車体側
とバックドア側に取付けるようにし、バックドアの開,
閉扉に伴いピストンロッドをシリンダに対し伸,縮動作
させる。
【0004】そして、このようなピストンロッドの伸,
縮動作に応じてピストンロッドがシリンダ内に出入りす
ることにより、シリンダ内の各ガス室がそれぞれ拡,縮
し、これにより該各ガス室内で反発力(ばね力)を発生
させる。また、このときに、各ガス室間で圧縮ガスをピ
ストンに設けられたオリフィス等を介して流通させるこ
とにより減衰力(緩衝効果)を発生させる。
【0005】ここで、シリンダとピストンロッドとの間
に設けるシール部材の下部側には、該ピストンロッドの
外周側との間で油液を溜めるための空所が形成されてお
り、ピストンロッドが伸縮動作を行うときに、シリンダ
内で該ピストンロッドに付着した油液(油膜)の一部が
前記シール部材により掻き落されると、この掻き落され
た油液が前記空所内で一時的に貯留(捕獲)される。
【0006】そして、この空所内に貯留された油液によ
って、シリンダ内の加圧ガスの漏洩を防止すると共に、
ピストンロッドの伸長行程では、前記空所内で油液を予
めピストンロッドに付着させて、該ピストンロッドとシ
ール部材との摺動面間に油液を含ませた状態、所謂「湿
り接触」の状態でピストンロッドをシール部材に対し摺
動させ、前記各摺動面間の摺動抵抗等を小さくして良好
な摺動特性を得るようにしている。
【0007】また、第2の従来技術として実開昭56−
72945号公報に記載のガススプリングが知られてい
る。この第2の従来技術では、シリンダとピストンロッ
ドとの間に第1のシール部材を設け、該第1のシール部
材により圧縮ガスからのガス圧を直接受圧させると共
に、前記シリンダとピストンロッドとの間には該第1の
シール部材を挟んでシリンダ内の各ガス室とは反対側と
なる大気側に第2のシール部材を配設し、該第1,第2
のシール部材間でピストンロッドの外周側に油液を充填
する油溜り空間を形成する構成としている。
【0008】この場合には、ピストンロッドの縮小行程
で、ピストンロッドが第1のシール部材に対して摺動す
るときに、油溜り空間内で油液を予めピストンロッドに
付着させることができ、これによっても前記第1の従来
技術と同様にピストンロッドをシール部材に対し「湿り
接触」の状態で摺動させることができ、良好な摺動特性
が得られる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した第
1の従来技術では、ピストンロッドをシリンダから伸長
させたままの状態で、該ピストンロッドを外気と長く接
触させた場合には、ピストンロッドの外周面の油膜(極
めて薄い膜)が大気中で蒸発してしまうことがある。こ
のため、この状態で次の縮小行程を行うと、ピストンロ
ッドとシール部材との摺動面間に油液がほとんど含まれ
ない状態、所謂「乾き接触」の状態でピストンロッドを
シリンダ内に縮小移動させてしまう。
【0010】この結果、ピストンロッドとシール部材と
の間の摺動抵抗が非常に大きくなってしまい、該シール
部材が早期に摩耗、損傷等し、該シール部材の寿命を早
めてしまうという問題がある。
【0011】一方、第2の従来技術では、シリンダ内の
ガス圧を直接受圧する第1のシール部材よりも上側(大
気側)に第2のシール部材を設け、該各シール部材間で
油液が充填される油溜り空間を形成することにより、縮
小行程でもピストンロッドを前記油溜り空間内の油液に
より第1のシール部材に対し「湿り接触」の状態で摺動
させることができ、これにより前記第1の従来技術によ
る問題点を解決をすることができる。
【0012】しかし、このような従来技術にあっては、
前記第1のシール部材の他に第2のシール部材等を新た
に設ける必要があり、部品点数が増加してしまう上に、
全体の構造等が複雑化してしまうという問題がある。
【0013】また、ピストンロッドの表面に硬質クロム
メッキ処理等を施することにより、該ピストンロッドの
耐食性や耐摩耗性等を高めることも検討されている。そ
して、該硬質クロムメッキ層の表面にはチャンネルクラ
ックと称される複数の微細な「割れ」が形成されるか
ら、前記シール部材側に滞留したシリンダ内の油液の一
部は、前記硬質クロムメッキの「割れ」を介してシール
部材とピストンロッドとの摺動面にガススプリングの寿
命を左右しない程度で滲み出すようになる。
【0014】これにより、ピストンロッドの伸長行程で
も縮小行程でも、シール部材とピストンロッドとの間の
摺動面間を常時潤滑状態に保持することが可能になるも
のである。従って、この場合には、前記第2の従来技術
で述べたような第2のシール部材等を特別に設ける必要
をなくすことができ、全体の構造を簡略化できるという
利点がある。
【0015】一方、最近の傾向としては、環境上の配慮
からピストンロッドの耐食性や耐摩耗性を高めるため
に、前述のような硬質クロムメッキ処理に替え、該ピス
トンロッドの外周面にガス軟窒化処理と酸化処理とを施
し、ピストンロッドの摺動(外周)面を保護する方法が
検討されている。
【0016】しかし、ガス軟窒化処理と酸化処理とを施
したピストンロッドは、硬質クロムメッキ処理を施した
ときに生じていた「割れ」が全く存在しなくなる。この
ため、シリンダ内からシール部材とピストンロッドとの
摺動面間への油液の滲み出し量(供給量)が著しく減少
してしまう。この結果、前記摺動面間の摺動抵抗が大き
くなり、これによってもシール部材を早期に摩耗、損傷
させてしまうという問題がある。
【0017】本発明は上述した従来技術の問題点に鑑み
なされたもので、本発明は、ガス軟窒化処理と酸化処理
とを施したピストンロッドを用いた場合でも、シール部
材とピストンロッドとの摺動面間を常時潤滑状態に保持
して該摺動面間の摺動抵抗を大幅に小さくでき、該シー
ル部材の寿命等を大幅に延ばすことができるようにした
シリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製造方
法を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、本発明は、内部に油液が封入された筒状のチュ
ーブと、該チューブ内に摺動可能に設けられたピストン
と、一端側が該ピストンに接続され、他端側が前記チュ
ーブに設けられたロッドガイドを介して該チューブ外に
突出したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設けら
れピストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッドと
ロッドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の油液
が外部に漏洩するのを防止するシール部材とからなるシ
リンダ装置に適用される。
【0019】そして、請求項1の発明が採用する構成の
特徴は、ピストンロッドは、表面に無数の凹凸穴が形成
された円柱状の金属体と、該金属体の外表面に設けられ
た窒化膜と、該窒化膜の外表面に設けられ、バフ研磨を
施すことによって前記凹凸穴に対応して無数のクレータ
が形成された酸化膜とから構成したことにある。
【0020】このように構成したことにより、ピストン
ロッドの金属体表面には凹凸穴が形成されるから、金属
体の表面に窒化膜を形成し、該窒化膜の表面に酸化膜を
形成することにより、この酸化膜の表面を凹凸状に形成
することができる。そして、凹凸状に形成された酸化膜
の表面にバフ研磨を施すことによって、この酸化膜の表
面には凹凸穴に対応して無数のクレータを形成すること
ができる。
【0021】これにより、シリンダ装置を倒立状態で用
いた場合には、シリンダ内の油液の一部がピストンロッ
ドとシール部材との摺接面間に浸入し、この浸入した油
液をクレータ内にそれぞれ貯えることができる。そし
て、クレータ内に貯えられた油液によって、ピストンロ
ッドとシール部材との摺接面間を常に潤滑状態に保持し
ておくことができる。
【0022】また、請求項2の発明では、金属体の表面
に形成された無数の凹凸穴は、表面粗さRaが0.1〜
0.2μmとなるように形成されたことにある。
【0023】このように構成したことにより、金属体の
表面には表面粗さRaが0.1〜0.2μmの凹凸穴を
形成することができる。
【0024】さらに、請求項3の発明では、内部に油液
が封入された筒状のチューブと、該チューブ内に摺動可
能に設けられたピストンと、一端側が該ピストンに接続
され、他端側が前記チューブに設けられたロッドガイド
を介して該チューブ外に突出したピストンロッドと、前
記ロッドガイドに設けられピストンロッドの外周に摺接
して該ピストンロッドとロッドガイドとの間をシール
し、前記チューブ内の油液が外部に漏洩するのを防止す
るシール部材とからなるシリンダ装置に用いるピストン
ロッドの製造方法に適用される。
【0025】そして、本発明による製造方法は、低炭素
鋼を用いたピストンロッドの素材表面に表面粗さRaが
0.1〜0.2μmとなる研削加工を施す研削加工工程
と、該研削加工が施されたピストンロッドの表面にガス
軟窒化処理を施し、窒化膜を形成する軟窒化処理工程
と、該窒化膜の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程
と、前記酸化膜の表面にバフ研磨を施すことによって無
数のクレータを形成するクレータ形成工程とからなって
いる。
【0026】このように構成したことにより、切削加工
工程では、ピストンロッドの素材表面に0.1〜0.2
μm程度の表面粗さRaとなる研削加工を施すことによ
り、ピストンロッドの表面には無数の凹凸穴を形成する
ことができる。そして、ガス軟窒化処理工程では、凹凸
穴が形成されたピストンロッドの素材表面に窒化膜を形
成し、酸化膜工程では、この窒化膜の表面に酸化膜を形
成することにより、酸化膜の表面を前記凹凸穴に対応し
て凹凸状に形成することができる。そして、クレータ形
成工程では、凹凸状に形成された酸化膜の表面のうち凹
面側を残して凸面側のみを部分的にバフ研磨することに
より、この酸化膜の表面には無数のクレータを形成する
ことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態による
シリンダ装置を倒立型の(チューブのロッド突出端を下
に向けた)ガススプリングに適用した場合を例に挙げて
説明する。
【0028】ここで、図1ないし図10は本発明の実施
の形態を示している。図中、1は有蓋筒状のチューブ
で、該チューブ1内には、加圧ガスと一定量の油液2と
が封入され、該油液2を後述のシール部材9によって封
止させる構成となっている。3はチューブ1内に摺動可
能に設けられたピストンで、該ピストン3は、チューブ
1内を上,下で2つのガス室A,Bに画成している。そ
して、該ピストン3にはガス室A,B間を互いに連通す
るオリフィス通路3Aが形成されている。
【0029】4はピストンロッドで、該ピストンロッド
4は、一端側となる上端側がピストン3に一体に設けら
れ、他端側となる下端側は後述のロッドガイド8を介し
てチューブ1外へと突出している。そして、ピストンロ
ッド4は、図2および図9に示す如く、例えば低炭素鋼
(S25C)等を用いて円柱状に形成された素材として
の金属体5と、該金属体5の外表面に全周に亘って形成
された窒化膜6と、該窒化膜6の表面上に全周に亘って
形成された酸化膜7とから構成されている。
【0030】ここで、ピストンロッド4の金属体5に
は、図10に示すようにその表面に無数の凹凸穴5A,
5A,…が形成され、該各凹凸穴5Aは、表面粗さRa
が例えば0.1〜0.2μm程度になるように形成され
ている。また、このピストンロッド4に設けた酸化膜7
の表面は、後述するようにバフ研磨を施すことによって
各凹凸穴5Aと対応した位置に無数のクレータ7A,7
A,…が形成されている。そして、この酸化膜7のクレ
ータ7Aは、シール部材9との間に浸入した油液2を貯
える油溜りとして構成されるものである。
【0031】8はチューブ1の開口端側(下端側)に設
けられたロッドガイドで、該ロッドガイド8は、短軸の
筒状体として形成され、その外周側はチューブ1の開口
端側内周に嵌着されている。そして、ロッドガイド8は
その内周側に微小な隙間を介してピストンロッド4を挿
通させ、該ピストンロッド4をチューブ1の軸方向
(上,下方向)に移動可能に案内している。
【0032】9はチューブ1とピストンロッド4との間
に設けられたシール部材を示し、該シール部材9は、図
2に示す如く外周側がチューブ1の内周面に嵌着され、
内周側はリップ部9Aとなってピストンロッド4の酸化
膜7表面に締代をもって摺接している。そして、このシ
ール部材9のリップ部9Aは、ピストンロッド4の酸化
膜7との間を液密にシールし、チューブ1内の油液2が
外部に漏洩するのを最小限に抑える構成になっている。
【0033】本実施の形態によるガススプリングは上述
の如き構成を有するもので、当該ガススプリングを例え
ばワゴン車のバックドア等に装着する場合には、チュー
ブ1の上端側に設けられた取付ブラケット10をワゴン
車のボデー側に取付け、ピストンロッド4の下端側に設
けられた取付ブラケット11をバックドア側に取付ける
ようにし、バックドアの開,閉扉に伴いガススプリング
本体は回転し、さらにピストンロッド4をチューブ1に
対し伸,縮動作させる。この場合、バックドアを閉じた
状態では、ピストンロッド4の突出端側が下向きに倒立
した状態となるが、バックドアを開いたときにはピスト
ンロッド4の突出端側が上向きに正立した状態となる。
【0034】そして、バックドアの開,閉扉時にピスト
ンロッド4の伸,縮動作に応じてピストン3がチューブ
1内を移動(摺動)すると、チューブ1内の各ガス室
A,Bが拡,縮し、これにより該各ガス室A,B内で反
発力(ばね力)を発生させる。また、このときには、各
ガス室A,B間を加圧ガスがピストン3のオリフィス通
路3A等を介して流通することにより減衰力を発生させ
る。
【0035】次に、ガススプリングに用いるピストンロ
ッド4の製造方法について、図3ないし図10により説
明する。
【0036】まず、図3、図4に示す研削加工工程で
は、金属体5の外周に研削加工等の機械加工を施すこと
によって、この金属体5の表面粗さRaを例えば0.1
〜0.2μm程度に形成する。これにより、金属体5の
外表面には全周に亘って無数の凹凸穴5Aを形成する。
【0037】次に、図5、図6に示す軟窒化処理工程で
は、アンモニア、窒素ガスおよび炭酸ガス等からなる混
合ガスの雰囲気中で約580℃、2時間程度のガス軟窒
化処理を施すことによって、金属体5の外周表面にはF
e2 N3 からなる窒化膜6を20μm程度の厚みをもっ
て形成する。これにより、窒化膜6の表面は、金属体5
の凹凸穴5Aの形状に対応して凹凸状に形成される。
【0038】次に、図7、図8に示す酸化膜形成工程で
は、窒化膜6が形成された金属体5の外周に水蒸気雰囲
気中で約480℃、約1時間程度の酸化処理を施すこと
により、窒化膜6の表面にはFe3 O4 からなる酸化膜
7を1μm程度の厚みをもって形成する。これにより、
酸化膜7の表面は、金属体5の凹凸穴5A(窒化膜6)
の形状に対応して凹凸状に形成される。
【0039】次に、図9、図10に示すクレータ形成工
程では、酸化膜7の表面にバフ研磨加工を施すことによ
って、凹凸状に形成された酸化膜7の表面のうち凹面側
を残して凸面側のみを部分的に研磨する。これにより、
酸化膜7の表面には、凹凸穴5Aと対応した位置に無数
のクレータ7Aを形成することができる。
【0040】かくして、本実施の形態では、ピストンロ
ッド4の金属体5を窒化膜6と酸化膜7とによって二重
に被覆(保護)することができ、この金属体5の耐摩耗
性および耐食性を高めことができると共に、環境面への
配慮を図ることができる。
【0041】また、バックドアの閉扉時にガススプリン
グが倒立状態となるように取付けることによって、チュ
ーブ1内の油液2の一部がピストンロッド4とシール部
材9のリップ部9Aとの摺接面間に浸入したときに、こ
の浸入した油液2をピストンロッド4の酸化膜7に形成
したクレータ7A内に貯えることができる。そして、前
記摺接面同士をクレータ7A内に貯えられた油液2によ
って互いに「湿り接触」の状態で接触させることができ
る。
【0042】そこで、次に酸化膜7に形成した各クレー
タ7Aが、ピストンロッド4とシール部材9との間の摺
動特性に与える影響について調査するため、実験を、実
施の形態の実施例と比較例とに基づいて行い、表1に示
す実験結果を得ることができた。
【0043】なお、本実験ではピストンロッド4を0.
17Hz(100mm/s)の周期で、50000回ま
で伸,縮動作させた。また、表1に示す摺動抵抗はピス
トンロッド4の伸長時と縮小時とで、ガス室A内のガス
圧をそれぞれ測定することにより、両者のガス圧の差と
して算出した。
【0044】まず、実施例では、上述した研削加工工
程、軟窒化処理工程、酸化膜形成工程およびクレータ形
成工程をそれぞれ実施したことにより、ピストンロッド
の酸化膜の表面には無数のクレータを形成した。
【0045】一方、比較例によるピストンロッドについ
ても、実施例と同様に金属体の外表面に窒化膜および酸
化膜をそれぞれ形成している。しかし、この比較例で
は、ピストンロッドの酸化膜表面は、実施例のものに比
べて凹凸の少ない、即ち実施例のようにクレータの存在
しない平滑面として仕上げている。
【0046】
【表1】
【0047】この結果、実施例の場合では、表1に示す
ようにピストンロッドを最初の数回から10回まで伸,
縮動作させる間に、摺動抵抗値はそれぞれ100N,8
0Nとなった。そして、50000回の耐久試験後で
も、摺動抵抗値は10回の耐久試験後と同様に80N程
度の大きさに小さく抑えることができ、シール部材9の
性能を十分に維持できることが分かった。
【0048】これに対し、比較例の場合では、ピストン
ロッドを最初の数回から10回まで伸,縮動作させる間
に、摺動抵抗値はそれぞれ120N,110Nとなり、
実施例の場合よりも大きくなった。そして、50000
回の耐久試験後には、ピストンロッドとシール部材9と
の間の摺動抵抗は120Nとなり、シール部材9にむし
れ等の異常が発生し、ガススプリングのガス反力が低下
することが分かった。
【0049】従って、本実施の形態によれば、ピストン
ロッド4の酸化膜7にクレータ7Aを形成することによ
って、ピストンロッド4とシール部材9のリップ部9A
との摺接面間には安定した油膜を形成することができ、
両者間の摺動抵抗を小さくすることができる。これによ
って、シール部材9の耐久性、耐摩耗性等を高めて、寿
命等を延ばすことができ、ガス軟窒化処理と酸化処理と
を施したピストンロッド4を当該ガススプリングに容易
に適用することができる。また、前記第2の従来技術で
述べたような第2のシール部材等を追加して設ける必要
がなくなり、全体の構造等を簡略化することができる。
【0050】また、金属体5の表面に設けた無数の凹凸
穴5Aを、表面粗さRaが0.1〜0.2μmとなるよ
うに形成したから、ピストンロッド4とシール部材9と
の摺動面間を適度の「湿り接触」の状態とすることがで
き、シール部材9の性能を長期に亘り維持することがで
きる。
【0051】なお、前記実施の形態では、ピストンロッ
ド4の製造時には、ピストンロッド4の金属体5に窒化
膜6および酸化膜7をそれぞれ形成し、次にこの酸化膜
7に対してバフ研磨を施すものとして述べたが、これに
替えて、例えば、ピストンロッド4の金属体5に窒化膜
6および酸化膜7をそれぞれ形成し、次に、この酸化膜
7の表面に対してショットブラスト処理またはショット
ピーニング処理を施し、最後に、酸化膜7に対してバフ
研磨を施すようにしてもよい。
【0052】そして、この場合には、酸化膜7の表面に
ショットブラスト処理等を施すことによって、酸化膜7
の表面にはさらに多数のクレータ7Aを形成することが
できる。
【0053】また、前記実施の形態では、ガススプリン
グを倒立状態で適用するものとして述べたが、これに替
えて、正立状態に適用してもよい。
【0054】また、前記実施の形態では、ガススプリン
グをバックドア用の開扉装置に適用するものとして述べ
たが、本発明はこれに限らず、自動車のボンネット、リ
ヤウインド、または自動車以外の開扉装置等に適用して
もよい。
【0055】さらに、前記実施の形態では、シリンダ装
置としてガススプリングを例に挙げて述べたが、本発明
はこれに限らず、例えば油圧緩衝器等からなる他のシリ
ンダ装置にも広く適用されるものである。
【0056】
【発明の効果】以上詳述した通り本発明によれば、請求
項1に記載の如く、ピストンロッドを構成する金属体の
外表面に窒化膜を設け、この窒化膜の表面には酸化膜を
形成する構成としたから、金属体の耐摩耗性および耐食
性を高めことができると共に、環境面への配慮を図るこ
とができる。また、ピストンロッドの金属体外表面には
無数の凹凸穴を形成すると共に、この金属体の外表面に
は窒化膜および酸化膜を形成し、酸化膜の表面にはバフ
研磨によって凹凸穴と対応して無数のクレータを形成し
たから、チューブ内の油液の一部がピストンロッドとシ
ール部材との摺接面間に浸入したときには、この油液を
クレータ内に貯えることができ、このクレータ内に貯え
られた油液によってピストンロッドとシール部材との摺
接面間の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0057】また、クレータ内に油液を貯えることがで
きるので、前記第1の従来技術で述べたような「乾き接
触」になることがない。
【0058】これによって、シール部材の耐久性、耐摩
耗性等を高めて、寿命等を延ばすことができ、ガス軟窒
化処理と酸化処理とを施したピストンロッドを当該ガス
スプリングに容易に適用することができる。また、前記
第2の従来技術で述べたような第2のシール部材等を追
加して設ける必要がなくなり、全体の構造等を簡略化す
ることができる。
【0059】また、請求項2の発明では、金属体の表面
に設けた無数の凹凸穴を、表面粗さRaが0.1〜0.
2μmとなるように形成したから、ピストンロッドとシ
ール部材との摺動面間を適度の「湿り接触」の状態とす
ることができ、シール部材の性能を長期に亘り維持する
ことができる。
【0060】また、請求項3では、低炭素鋼を用いたピ
ストンロッドの素材表面に表面粗さRaが0.1〜0.
2μmとなる研削加工を施し、このピストンロッドの素
材表面には窒化膜および酸化膜を形成すると共に、酸化
膜にはバフ研磨を施すようにしたから、ピストンロッド
の表面には無数の凹凸穴を容易に形成でき、このような
凹凸穴の加工時における作業性を向上することができ
る。また、酸化膜の表面をバフ研磨することによって、
酸化膜の表面を無数のクレータを有する平滑面として容
易に形成することができ、このようなクレータの形成時
における作業性についても高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるガススプリングを示
す縦断面図である。
【図2】図1中のピストンロッドおよびシール部材等を
拡大して示す部分断面図である。
【図3】金属体の外表面に研削加工を施す研削加工工程
を一部破断にして示すピストンロッドの部分拡大図であ
る。
【図4】図3中のA部を拡大して示す断面図である。
【図5】金属体の外表面に窒化膜を形成する軟窒化処理
工程を一部破断にして示すピストンロッドの部分拡大図
である。
【図6】図5中のB部を拡大して示す断面図である。
【図7】窒化膜の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工
程を一部破断にして示すピストンロッドの部分拡大図で
ある。
【図8】図7中のC部を拡大して示す断面図である。
【図9】酸化膜の表面にバフ研磨を施すことによりクレ
ータを形成するクレータ形成工程を一部破断にして示す
ピストンロッドの部分拡大図である。
【図10】図9中のD部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】 1 チューブ 2 油液 3 ピストン 4 ピストンロッド 5 金属体(素材) 5A 凹凸穴 6 窒化膜 7 酸化膜 7A クレータ 9 シール部材

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に油液が封入された筒状のチューブ
    と、該チューブ内に摺動可能に設けられたピストンと、
    一端側が該ピストンに接続され、他端側が前記チューブ
    に設けられたロッドガイドを介して該チューブ外に突出
    したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設けられピ
    ストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッドとロッ
    ドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の油液が外
    部に漏洩するのを防止するシール部材とからなるシリン
    ダ装置において、 前記ピストンロッドは、表面に無数の凹凸穴が形成され
    た円柱状の金属体と、該金属体の外表面に設けられた窒
    化膜と、該窒化膜の外表面に設けられ、バフ研磨を施す
    ことによって前記凹凸穴に対応して無数のクレータが形
    成された酸化膜とから構成したことを特徴とするシリン
    ダ装置。
  2. 【請求項2】 前記金属体の表面に形成された無数の凹
    凸穴は、表面粗さRaが0.1〜0.2μmとなるよう
    に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のシリン
    ダ装置。
  3. 【請求項3】 内部に油液が封入された筒状のチューブ
    と、該チューブ内に摺動可能に設けられたピストンと、
    一端側が該ピストンに接続され、他端側が前記チューブ
    に設けられたロッドガイドを介して該チューブ外に突出
    したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設けられピ
    ストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッドとロッ
    ドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の油液が外
    部に漏洩するのを防止するシール部材とからなるシリン
    ダ装置に用いるピストンロッドの製造方法において、 低炭素鋼を用いたピストンロッドの素材表面に表面粗さ
    Raが0.1〜0.2μmとなる研削加工を施す研削加
    工工程と、該研削加工が施されたピストンロッドの表面
    にガス軟窒化処理を施し、窒化膜を形成する軟窒化処理
    工程と、該窒化膜の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成
    工程と、前記酸化膜の表面にバフ研磨を施すことによっ
    て無数のクレータを形成するクレータ形成工程とからな
    るシリンダ装置に用いるピストンロッドの製造方法。
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