JPH1126230A - スパッタリング装置の磁界発生装置 - Google Patents

スパッタリング装置の磁界発生装置

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JPH1126230A
JPH1126230A JP10134524A JP13452498A JPH1126230A JP H1126230 A JPH1126230 A JP H1126230A JP 10134524 A JP10134524 A JP 10134524A JP 13452498 A JP13452498 A JP 13452498A JP H1126230 A JPH1126230 A JP H1126230A
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coil
magnetic field
coils
magnetic
coil group
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Tsukasa Kobayashi
司 小林
Kazuo Hirata
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スパッタリング装置で磁化容易軸の制御を行
いながら軟磁性薄膜を成膜する場合に、大面積基板内に
高い精度で方向が揃えられた直交または任意角度で交差
する2つの磁界を発生させる。 【解決手段】 比較的大きな面積を有する基板表面に、
スパッタ法を用いて、磁化容易軸が直交または任意角度
で交差する少なくとも2つの磁性膜を積層成膜すると
き、基板表面の近傍に当該表面に平行な方向の磁界を生
成する磁界発生装置であって、基板表面を囲むように配
置される環状の磁気ヨーク21と、この磁気ヨークの周囲
に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に磁界を生成する複
数のコイルからなるコイルグループ2a,2b,3a,3b,4a,4b
と、磁気ヨークの周囲に巻かれ、第2の磁化容易軸の方
向に磁界を生成する複数のコイルからなるコイルグルー
プ12a,12b,13a,13b,14a,14b から構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁界発生装置に関
し、特に、スパッタリング装置によるGMRヘッド作製
のための成膜で磁化容易軸の方向を高い精度で揃えられ
る磁界発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、マルチメディアやインターネット
等が著しい進展を示す中で、パソコン等に搭載される磁
気ハードディスク記憶装置の高密度化が進んでいる。現
在、面記録密度は1G bit/inch2 程度であるが、20
00年には10G bit/inch2に達することが予想され
ている。この高密度化を担う技術的要素の1つが磁気ヘ
ッドである。従来使用されていた磁気誘導型ヘッドに代
わって、磁気抵抗効果、特に巨大磁気抵抗効果(giant-
magnetoresistance :以下「GMR」と略す)を利用し
た磁気ヘッドが将来技術として非常に注目を浴びてい
る。GMRヘッドの特徴は、従来のヘッドに比べて極端
に再生感度が良いことであり、これに伴い、記録密度を
上げることができる。
【0003】GMRヘッドの構造としては種々提案され
ている。現時点で最も実用化に近いのはスピンバルブで
ある。スピンバルブの構造としては、反強磁性層の上に
軟磁性膜(ピン層)を形成し、さらに非常に薄い非磁性
膜を間にはさんで別の軟磁性膜(フリー層)を積層して
いる。これらの薄膜は、スパッタ法を利用して積層状態
に成膜される。これらの2つの軟磁性膜を作製する際に
は、以下の点に注意しなければならない。
【0004】スピンバルブ構造のCMRヘッドでは、記
録媒体からの磁場によりフリー層の磁化方向が変化し、
これによる電気抵抗の変化で記録信号を検出している。
普通の軟磁性膜は、多くの磁区から構成されているが、
このような膜をフリー層として使用すると、フリー層の
磁化方向が変化する際に、磁区の不連続的な移動に伴う
ノイズ(バルクハウゼンノイズ)が発生する。従って、
スピンバルブ構造のGMRヘッドに使用する軟磁性膜
は、できるだけ磁区の移動が少なく、バルクハウゼンノ
イズの少ない膜が望まれる。このような膜は、スパッタ
成膜中に均一で方向性の揃った磁界を基板に印加し、磁
化容易軸の方向を制御することによって作製できる。こ
こで問題になるのは、バルクハウゼンノイズを十分なレ
ベルまで減らすには、基板に印加する磁界の方向は、基
板面内で±1°以内で揃っていなければならないことで
ある。さらに、この磁界強度として100ガウス程度必
要である。
【0005】現在よく使用されている基板のサイズは直
径が3インチであるが、将来的に基板サイズは、直径が
6インチに拡大することは必至である。このような広い
空間内に、上記のような磁界をどのようにして作り出す
かは未解決の問題である。
【0006】さらに重要な点は、ピン層の軟磁性膜を作
製する際に印加する磁界方向と、フリー層の軟磁性膜を
作製する場合の磁界印加方向が、互いに直角でなければ
ならないことである。すなわち、ピン層の磁化容易軸と
フリー層の磁化容易軸は直交する。これは、磁気抵抗の
感度を良好にし、ヒステリシス特性を小さくするために
必要となる。これに関する従来技術は、例えば特開平8
−88424号公報に開示される。また関連する従来技
術を示す文献として特公昭61−36364号公報を挙
げることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の説明で明らかな
ように、スピンバルブ構造のGMRヘッドのごとく、同
一基板上に、間に非磁性層をはさんで磁化容易軸が直交
した2つの薄膜をスパッタ成膜するには、基板の成膜面
に対して、直交する2つの磁化容易軸の各々を決めるた
めの磁界を印加することのできる特別な磁界発生装置が
必要である。
【0008】上記磁界発生装置としてまず考えられるの
が、ヘルムホルツ型のコイルを使用することである。ヘ
ルムホルツ型のコイルでは、一対の円形コイルが、円形
コイルの半径と等しい距離をおいて配置してあり、両コ
イルの中心に均一な磁界が発生する。直交磁界を発生さ
せるためには、さらにもう一対のコイルを90°ずらし
て配置する必要がある。このような装置でまず問題にな
るのは、コイルの大きさである。3インチ基板内で磁界
の方向を±1°以内に揃えるためには、コイルの直径を
19cm程度にする必要がある。将来、6インチ基板を
同様に扱おうとすると、コイルの直径は38cm程度と
なってしまう。しかも、100ガウス程度の磁界強度を
得るにはコイル電流は1500アンペア・ターン程度必
要になるため、コイル冷却も必要になる。このような巨
大なコイルをスパッタリング装置の真空室内に配置する
ことは容易ではない。
【0009】次に永久磁石を用いる方法が考えられる。
この方式には種々の方式が考えられるが、前述の特開平
8−88424号公報に記載されている方法について述
べる。この方法では、図17に示すように、基板401
を含む平面内に、基板401をはさんで一対の永久磁石
402,403を配置している。磁界の方向を90°ず
らす場合は、基板401を設置しているステージ404
を、コントローラ405で制御されるモータ406によ
って機械的に90°回転させる。しかし、永久磁石を用
いる方法では、直径6インチ程度の基板面内の磁界の傾
き角を±1°以内にすることは非常に困難である。仮に
可能であるとしても、前述のヘルムホルツコイルの場合
と同様に、永久磁石のサイズは巨大なものとなるであろ
う。
【0010】さらに磁気ヨークとコイルを組み合わせる
方法が、前述の特公昭61−36364号公報に記載さ
れている。この方法では、図18の(A),(B)に示
すように、矩形平板型の磁気ヨーク501の周囲に、非
磁性・非伝導性の枠502を設け、その回りにコイルを
巻いている。ここでは磁界方向を90°変えるため、2
つのコイル503,504が設けられている。もし、こ
のような磁界発生装置をスピンバルブ膜作製用のスパッ
タリング装置に応用する場合、基板はコイルの上に載せ
て設置することになる。しかし、スパッタ成膜では膜質
を良好にするために、成膜中に基板を300℃程度に加
熱するのが一般的である。従って、このようなコイルを
スパッタリング装置で利用することは困難である。
【0011】以上のように、直径が6インチ程度の基板
内で磁界の傾き角を±1°以内にでき、かつ磁化容易軸
の制御に用られる実用的な磁界発生装置は、従来、存在
しなかった。
【0012】なお以上では、スピンバルブ構造のGMR
ヘッドの製作を前提として直交する2つの磁化容易軸の
各々を決める高い精度で直交する磁界を作ることのでき
る磁界発生装置の必要性を説明したが、一般的な課題と
して、直交する磁界だけではなく、これを含め任意の角
度で交差する高い精度の2つの磁界を発生することので
きる構成の提案が望まれている。
【0013】本発明の目的は、上記問題を解決すること
にあり、主にスパッタリング装置で磁化容易軸の制御を
行いながら軟磁性薄膜を成膜する場合に、大面積基板内
に高い精度で方向が揃えられた磁界を印加できる実用的
なスパッタリング装置の磁界発生装置を提供することに
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段および作用】本発明に係る
スパッタリング装置の磁界発生装置は、上記目的を達成
するため、次のように構成される。
【0015】第1の磁界発生装置(請求項1に対応):
比較的大きな面積を有する基板表面に、スパッタ法を
用いて、磁化容易軸が直交する少なくとも2つの磁性膜
を積層成膜するとき、基板表面の近傍に当該表面に平行
な方向の磁界を生成する磁界発生装置であって、基板表
面を囲むように配置される環状の磁気ヨークと、この磁
気ヨークの周囲に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に磁
界を生成する複数のコイルからなる第1のコイルグルー
プと、磁気ヨークの周囲に巻かれ、第2の磁化容易軸の
方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第2のコイ
ルグループから構成される。第1の磁化容易軸と第2の
磁化容易軸は、直交している。
【0016】上記の構成では、直交する2つの磁化容易
軸の各々に対応する方向の磁界を発生させる2つのコイ
ルグループを、環状磁気ヨークに設け、各コイルグルー
プのコイルの配置と通電流を望ましいものとして所望の
磁界を基板成膜面に印加するようにした。これにより、
スパッタ法を利用して磁化容易軸が直交する少なくとも
2つの磁性膜を積層成膜するとき、各磁性膜の磁化容易
軸の方向を6インチ基板に対応する広い面積にわたって
高い精度(±1°以内)で揃えることが可能となる。
【0017】第2の磁界発生装置(請求項2に対応):
上記第1の構成において、さらに電源と、この電源か
ら供給される直流電流を、第1のコイルグループと第2
のコイルグループのうちのいずれか一方に送給する切替
え器を備える。この構成によれば、例えば第1のコイル
グループで各コイルの通電量を設定すると、同じ電流を
第2のコイルグループに用いることができるので、電流
制御が容易となる。
【0018】第3の磁界発生装置(請求項3に対応):
上記第2の構成において、第1のコイルグループに含
まれるコイルまたは第2のコイルグループに含まれるコ
イルには、コイルごと(またはコイルの組ごと)に独立
に通電量を制御する電流制御部が設けられる。コイルご
とに独立に通電量を制御できるようにしたため、磁界の
方向を、必要とされる高い精度で一定方向に揃えること
が可能となる。
【0019】第4の磁界発生装置(請求項4に対応):
上記第3の構成において、好ましくは、第1のコイル
グループに含まれる各コイルの通電量または第2のコイ
ルグループに含まれる各コイルの通電量を、各々の上記
電流制御部によって制御し、これにより、成膜が必要と
される表面にて、生成される磁界の方向が±1°以内に
揃えられることを特徴とする。
【0020】第5の磁界発生装置(請求項5に対応):
上記第1の構成において、第1のコイルグループと第
2のコイルグループは、それぞれ、磁気容易軸の方向に
磁界を作る主コイルと、成膜が必要とされる表面にて磁
界の方向を磁気容易軸の方向に揃える副コイルを含むこ
とを特徴とする。
【0021】第6の磁界発生装置(請求項6に対応):
上記第5の構成において、好ましくは、第1のコイル
グループの主コイルと、第2のコイルグループの主コイ
ルは、実質的に直交する位置関係で配置される。
【0022】第7の磁界発生装置(請求項7に対応):
上記第5の構成において、好ましくは、第1のコイル
グループの副コイルと、第2のコイルグループの副コイ
ルは、実質的に同じ箇所に重ね合わせて配置される。
【0023】第8の磁界発生装置(請求項8に対応):
上記第5の構成において、好ましくは、第1のコイル
グループの副コイルと、第2のコイルグループの副コイ
ルは、共用されることを特徴とする。この構成によれ
ば、部品点数を少なくすることができ、さらに構成全体
を簡素化できる。
【0024】第9の磁界発生装置(請求項9に対応):
基板表面にスパッタ法を用いて磁化容易軸が任意の角
度で交差する少なくとも2つの磁性膜を積層成膜すると
き、前記基板表面近傍に当該表面に平行な方向の磁界を
生成する磁界発生装置であって、基板表面を囲むように
配置される環状の磁気ヨークと、この磁気ヨークの周囲
に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に磁界を生成する複
数のコイルからなる第1のコイルグループと、磁気ヨー
クの周囲に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に対して直
交する方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第2
のコイルグループと、直交方向の磁界の方向を変化させ
る合成用磁界を生成する複数のコイルからなる第3のコ
イルグループを備える。
【0025】上記の構成では、磁界の合成作用を利用し
て2つの磁界の交差角度を任意角度に設定することを可
能にする第3のコイルグループを設けることにより、直
交を含め任意角度で交差する2つの磁化容易軸の各々に
対応する方向の磁界を発生させることが可能である。
【0026】第10の磁界発生装置(請求項10に対
応): 上記第9の構成において、第1のコイルグルー
プと第2のコイルグループは同じコイルグループであ
り、電流源に対する結線関係を変更することにより第1
のコイルグループと第2のコイルグループを作るように
構成される。同じコイルグループで結線関係を変更する
ことで2種類のコイルグループを実現でき、構成が簡易
となる。
【0027】第11の磁界発生装置(請求項11に対
応): 上記の各構成において、スパッタリング装置が
マグネトロンカソードを備える場合においては、磁気ヨ
ークと複数のコイルからなる装置本体を収容するケース
のカソード側部分を軟磁性体で形成したことを特徴とす
る。この構成によれば、マグネトロンカソードによって
ターゲット上に形成された磁界に悪い影響を与える磁界
発生装置からの磁界漏洩を防止できる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0029】図1は本発明に係る磁界発生装置の第1の
実施形態を示す縦断面図で、図2は磁気ヨークとコイル
の部分のみの外観を示した斜視図である。
【0030】図2において、磁気ヨーク21は、外周が
例えば直径300mmの円環形状を有している。磁気ヨ
ーク21は例えば磁性ステンレス(SUS430)で作
製されている。磁気ヨーク21には、その全周囲にわた
って、複数(本実施形態では24個)のコイルが所定の
位置に巻かれている。これらのコイルに選択的に適宜に
所要の電流値の電流を流すことによって、磁気ヨーク2
1に囲まれかつ磁気ヨーク21の軸21aの方向に垂直
な平面(XY平面)内に含まれる磁界を生成することが
できる。
【0031】上記複数のコイルは、第1のグループに属
するコイル(以下「第1のコイルグループ」という)
と、第2のグループに属するコイル(以下「第2のコイ
ルグループ」という)とに分けられる。第1のコイルグ
ループは、通電されることによって図中Y方向(第1の
方向)に向く磁界を作り、これに対して第2のコイルグ
ループは、通電されることにより図中X方向(第2の方
向)に向く磁界を作る。X方向とY方向は直交してい
る。第1のコイルグループで作られる磁界の方向は、後
述する図4と図5に示すように、環状の磁気ヨーク21
によって囲まれるXY平面の大部分において±1°以内
でY軸方向を向くように揃えられる。また、第2のコイ
ルグループで作られる磁界の方向も、同様に、環状の磁
気ヨーク21によって囲まれるXY平面の大部分におい
て±1°以内でX軸方向を向くように揃えられる。
【0032】図1を参照し、上記の第1のコイルグルー
プと第2のコイルグループについて詳述する。図1は、
磁気ヨーク21における軸21aの方向のほぼ中心位置
(原点Oの位置)で、当該軸に垂直に切った断面を示し
ている。第1実施形態の構成によれば、磁気ヨーク11
の全周囲に合計24個のコイルが設置されている。これ
らのコイルは、その役割の上で、前述の通り、第1およ
び第2の2つのコイルグループに分けられる。
【0033】上記第1のコイルグループは12個のコイ
ル2a,2b,3a,3b,4a,4bで構成される。
コイル2a,2b,3a,3b,4a,4bはそれぞれ
2つずつ設けられている。図1で、第1のコイルグルー
プの各コイル2a〜4bは、磁気ヨーク21の円周方向
に対して縦の線で表した断面で示されている。第1のコ
イルグループのコイルの配置は、図1の中心(原点)O
を通る垂直線(Y軸10)および水平線(X軸11)に
関して線対称になるように設定されている。前述のコイ
ル2a,2b,3a,3b,4a,4bの各2つのコイ
ルは、X軸に関して線対称になるように配置されてい
る。
【0034】第1のコイルグループで、2つのコイル2
aおよび2つのコイル2bの計4つのコイルは同一形状
である。コイル2a,2bによって磁気ヨーク21中に
黒い矢印15a,15bで示されるごとき磁束が形成さ
れるように、各コイル2a,2bは電気的に直列に接続
されている。コイル2a,2bで、電流の流れる向きは
反対となる。この場合に、コイル2aによって生じる磁
束15aと、コイル2bによって発生する磁束15b
は、互いに反対の向きになっている。
【0035】また2つのコイル3aおよび2つのコイル
3bの計4つのコイルは同一形状である。コイル3a,
3bは、同様に、磁気ヨーク21中の磁束が図中の黒い
矢印15a,15bで示された方向になるように、それ
ぞれ直列に結線されている。コイル3a,3bで、電流
の流れる向きは反対となる。さらに2つのコイル4aお
よび2つのコイル4bの計4つのコイルも同一形状であ
る。コイル4a,4bについても、同様に、磁気ヨーク
21中の磁束が図中の黒い矢印15a,15bで示され
た方向になるように、それぞれ直列に結線されている。
コイル4a,4bでも電流の流れる向きは反対となる。
【0036】コイル2a,2bの組、コイル3a,3b
の組、コイル4a,4bの組には、それぞれ、独立に制
御された電流が供給される。さらに、各コイルの組に供
給される電流の値は独立に制御される。
【0037】次に、上記第2のコイルグループは12個
のコイル12a,12b,13a,13b,14a,1
4bで構成される。コイル12a,12b,13a,1
3b,14a,14bはそれぞれ2つずつ設けられる。
図1で、第2のコイルグループは、磁気ヨーク21の円
周方向に対して横の線で表した断面で示されている。第
2のコイルグループのコイルは、中心Oを通る垂直線
(Y軸10)および水平線(X軸11)に関して線対称
に配置されている。前述のコイル12a,12b,13
a,13b,14a,14bの各2つのコイルは、Y軸
に関して線対称になるように配置されている。第2のコ
イルグループは、第1のコイルグループの各コイルを反
時計回りに90°回転させたものに相当する配置となっ
ている。
【0038】第2のコイルグループで、2つのコイル1
2aおよび2つのコイル12bの計4つのコイルは同一
形状である。コイル12a,12bによって磁気ヨーク
21中に白抜き矢印16a,16bで示されるごとき磁
束が形成されるように、各コイル12a,12bは電気
的に直列に接続されている。この場合に、コイル12a
によって生じる磁束16aと、コイル12bによって発
生する磁束16bは、互いに反対の向きになっている。
従って、コイル12a,12bで、電流の流れる向きは
反対となる。なおコイル12a,12bはコイル2a,
2bと同一形状である。
【0039】また2つのコイル13aおよび2つのコイ
ル13bの計4つのコイルは同一形状である。コイル1
3a,13bは、同様に、磁気ヨーク21中の磁束が図
中の白抜き矢印16a,16bで示された方向になるよ
うに、それぞれ直列に結線されている。コイル13a,
13bで、電流の流れる向きは反対である。コイル13
a,13bは、磁気ヨーク21上で上記コイル4a,4
bと同一の位置に配置され、かつコイル4a,4bの外
側に重ねられ、隣接させて配置されている。さらに2つ
のコイル14aおよび2つのコイル14bの計4つのコ
イルも同一形状である。コイル14a,14bも、同様
に、磁気ヨーク21中の磁束が図中の白抜き矢印16
a,16bで示された方向になるように、それぞれ直列
に結線されている。コイル14a,14bで、電流の流
れる向きは反対である。コイル14a,14bは、磁気
ヨーク21上で上記コイル3a,3bと同一の位置に配
置され、コイル3a,3bの外側に重ねられ、隣接させ
て配置されている。
【0040】上記のように構成される磁気ヨークおよび
コイルの全体は、筒形であって、環形状を有する密閉さ
れたケース17の中に収容される。このケース17の内
部には、水入口18からコイル冷却用の水が導入され
る。冷却用の水は水出口19から外へ排出される。これ
により、各コイルに流す電流の値を大きくすることがで
き、発生させる磁界の強度を好ましくは100〜200
ガウスにすることができる。
【0041】次に図6を参照して前述の各コイルへの電
流供給機構について説明する。31はコイルに直流電流
を供給する電源である。電源31から出力される電流
は、電流制御器32を介してコイル2a,2bまたはコ
イル12a,12b、電流制御器33を介してコイル3
a,3bまたはコイル13a,13b、さらに電流制御
器34を介してコイル4a,4bまたはコイル14a,
14bに、それぞれ供給される。コイル2a,2bとコ
イル12a,12bの間の切替えは切替え器42によっ
て行われ、コイル3a,3bとコイル13a,13bの
間の切替えは切替え器43によって行われ、さらにコイ
ル4a,4bとコイル14a,14bの間の切替えは切
替え器44によって行われる。切替え器42,43,4
4の切替え動作は、第1のコイルグループに通電する
か、または第2のコイルグループに通電するかを選択す
るものであるから、同時に行われる。
【0042】上記の電流供給機構の構成によれば、第1
のコイルグループのコイル2a,2bと第2のコイルグ
ループのコイル12a,12bには同じ電流が流れ、第
1のコイルグループのコイル3a,3bと第2のコイル
グループのコイル13a,13bには同じ電流が流れ、
第1のコイルグループのコイル4a,4bと第2のコイ
ルグループのコイル14a,14bには同じ電流が流れ
ることになる。さらに切替え器42,43,44によっ
て、第1のコイルグループと第2のコイルグループに同
時に電流が流れることはなく、必ず、いずれか一方のグ
ループに電流が流される。
【0043】またコイルの各組には、各々に対応する電
流制御器32〜34によって励磁電流が適切に制御さ
れ、それによって、磁界の方向を広い範囲にわたって同
じ方向に高い精度(±1°以内)で揃えることが可能と
なる。
【0044】次に、上記構成を有する磁界発生装置の動
作原理を説明する。基本的に第2のコイルグループによ
って発生する磁界は、第1のコイルグループにより発生
する磁界を反時計方向に90°回転させたものとほとん
ど一致する。従って、第1グループのコイルにより発生
する磁界について説明する。
【0045】前述の通り、第1のコイルグループでは、
磁気ヨーク21の中心Oを通る垂直線10(Y軸)に対
して左と右のコイルで、磁気ヨーク21内に発生する磁
束15a,15bの方向が反対向きになるように電流を
流している。そのため、この2つの磁束15a,15b
の流れは、図1において、磁気ヨーク21の上側の部分
でぶつかり、磁気ヨーク21の外部に漏れ出す。このう
ち、磁気ヨーク21の内側空間に漏れ出した磁束は、図
1で磁気ヨーク21の下側、すなわち磁気ヨーク21に
よって囲まれる内部の領域に向かって流れ込む。以上の
磁束の流れの様子を図3に示す。この際に、磁気ヨーク
21の中心Oの周囲の空間(XY軸で定められるXY平
面)に非常に方向性の揃った磁界を発生させることがで
きる。図示例では、Y軸に平行な方向に揃った磁界が示
されている。また、前述の電流制御器32,33,34
の各々によってコイル2a,2b、コイル3a,3b、
コイル4a,4bに流す電流の比率が適切になるように
個別に調整することにより、極めて高い精度(±1°以
内)で方向性が揃えられた磁界の発生領域をさらに拡大
することが可能となる。
【0046】図4は外径300mm程度の大きさの磁気
ヨーク21を用い、コイル2a,2b、コイル3a,3
b、コイル4a,4bに流す電流の比率を適当に調整し
た場合に発生する磁界の分布を示したもので、磁気ヨー
ク21の中心Oを原点とした1/4の領域における分布
を示している。図4から磁界の方向性が非常に均一であ
ることがわかる。また図5は、上記磁界の傾き角の分布
を示したものであり、図4と同様に、磁気ヨーク21の
中心Oを原点とした1/4の領域の分布を示している。
図5によれば、φ6インチ基板(破線35で示してい
る)が含まれる領域内(半径76mm以内)において、
傾き角度が1°以内になっていることがわかる。
【0047】第2のコイルグループに属するコイル12
a,12b、コイル13a,13b、コイル14a,1
4bについても、各コイルに同じ条件で電流が流される
ので、第1のコイルグループの場合と同様な作用で、X
軸に平行な方向に揃えられた磁界が広い面積にわたって
生成される。
【0048】前述の実施形態において、第1または第2
のコイルグループの各コイルに関して、生成しようとす
る磁界の方向との関係で主コイルと副コイルとして把握
することもできる。例えば第1のコイルグループの各コ
イルに関しては、Y軸方向に生成される磁界との関連
で、コイル2a,2bを主コイル、コイル3a,3b,
4a,4bを副コイルとして把握できる。同様に、第2
のコイルグループの各コイルに関しては、X軸方向に生
成される磁界との関連で、コイル12a,12bを主コ
イル、コイル13a,13b,14a,14bを副コイ
ルとして把握できる。
【0049】上記の実施形態では、第1と第2のコイル
グループの各々に別個にコイル3a,3b,4a,4b
とコイル13a,13b,14a,14bを設け、隣接
して重ねるようにしたが、これらの副コイルについて
は、これらをいずれか一方のみとし、2つのコイルグル
ープで共用するように構成することもできる。この場合
には、切替え器43,44を省略できるという利点を有
している。ただし、切替え器42を切り替えるのと同時
に、電流制御器33,34の通電量を適当に変える必要
がある。
【0050】図7は、本発明による磁界発生装置の第2
の実施形態を示し、図1と同様な図である。図7におい
て、図1で示した要素と実質的に同一の要素には同一の
符号を付している。
【0051】本実施形態では、第1の実施形態と同様
に、磁気ヨーク21の周りに複数のコイルが設置されて
いるが、コイルの個数が第1の実施形態の場合よりも少
なくなっている。第1のコイルグループは、コイル2
a,53a,2b,53bの合計8個のコイルから構成
される。前述の実施形態と同様に、第1のコイルグルー
プのコイルには、磁気ヨーク21中の磁束の方向が図1
の黒い矢印15a,15bで示された方向になるように
電流が供給される。また第2のコイルグループは、コイ
ル12a,63a,12b,63bの合計8個のコイル
から構成される。第2のコイルグループのコイルには、
磁気ヨーク21中の磁束の方向が図1の白抜きの矢印1
6a,16bで示された方向になるように電流が供給さ
れる。コイル全体はケース17で覆われ、冷却水用の水
入口18と水出口19が設けられている。
【0052】本実施形態による磁界発生装置の特徴は、
第1実施形態の構成に比べて、コイルの構造が簡略化さ
れている点である。これに伴って、均一な磁界が得られ
る空間の面積が多少減少するが、小さい基板の場合には
十分に実用的である。また第2の実施形態の電流供給機
構では、第1の実施形態に比較すると、電流制御器34
と切替え器44を省略でき、構成が簡素になると共に、
電流制御による磁界方向の調整を容易に行うことができ
る利点を有する。
【0053】また本実施形態においても、第1または第
2のコイルグループの各コイルに関して、生成しようと
する磁界の方向との関係で主コイルと副コイルとして把
握できる。第1のコイルグループに関しては、コイル2
a,2bを主コイル、コイル53a,53bを副コイル
として把握できる。同様に第2のコイルグループに関し
ては、コイル12a,12bを主コイル、コイル63
a,63bを副コイルとして把握できる。
【0054】上記実施形態では、第1と第2のコイルグ
ループの各々に別個にコイル53a,53bとコイル6
3a,63bを設け、隣接して重ねるようにしたが、こ
れらの副コイルについては、これらをいずれか一方のみ
とし、2つのコイルグループで共用するように構成する
こともできる。この場合にも副コイルの切替え器を省略
できるという利点を有している。
【0055】図8は、本発明による磁界発生装置の第3
の実施形態を示し、図1または図7と同様な図である。
図8において、図1または図7で示した要素と実質的に
同一の要素には同一の符号を付している。本実施形態の
構成は、ほとんど第2の実施形態と同じである。相違す
る点は、コイル2a,2b,12a,12bに相当する
コイルが、前述の各実施形態では各々2個を用いている
のに対し、本実施形態ではそれぞれ1個ずつ72a,7
2b,82a,82bとなっている点である。これに伴
って、本実施形態のコイル72a,72b,82a,8
2bはサイズがより大きくなっている。その他の構成
は、第2実施形態の構成と同じである。本実施形態によ
る磁界発生装置の特徴は、第2実施形態と同じである
が、第2実施形態に比べて、さらにコイルの構造が簡略
化されている点である。
【0056】また本実施形態においても、第1または第
2のコイルグループの各コイルに関して、生成しようと
する磁界の方向との関係で主コイルと副コイルとして把
握できる。第1のコイルグループに関しては、コイル7
2a,72bを主コイル、コイル53a,53bを副コ
イルとして把握できる。同様に第2のコイルグループに
関しては、コイル82a,82bを主コイル、コイル6
3a,63bを副コイルとして把握できる。上記実施形
態では、第1と第2のコイルグループの各々に別個にコ
イル53a,53bとコイル63a,63bを設け、隣
接して重ねるようにしたが、これらの副コイルについて
は、これらをいずれか一方のみとし、2つのコイルグル
ープで共用するように構成することもできる。この場合
にも副コイルの切替え器を省略できるという利点を有し
ている。
【0057】次に図9〜図13に基づいて本発明による
磁界発生装置の第4の実施形態を説明する。前述の第1
から第3の実施形態では、スピンバルブ構造を有するG
MRヘッドの膜構造において間に非磁性層を挟んだ2つ
の軟磁性層の磁化容易軸が直交することを前提としてい
た。しかし最近になって、ヘッドの種類・構造また使用
される薄膜の材質によってはこの2つの軟磁性層の磁化
容易軸が正確に直交している場合よりも或る程度ずれて
いた方が、GMRヘッド膜としてのノイズ特性が良好で
あることがわかってきた。そこで本実施形態によれば、
2つの軟磁性層の磁化容易軸の間の角度を高精度に制御
することを可能とし、直交で交差する場合を含め、適切
な任意の角度で交差することを可能にする。
【0058】図9は、本実施形態による磁界発生装置の
要部構造を示し、磁気ヨークとコイルの部分のみを示す
正面図である。図9では、円環形状の磁気ヨーク21と
これの円周方向に沿って配置された例えば24個のコイ
ル101a〜106a,101b〜106b,111a
〜116a,111b〜116bの位置関係が示されて
いる。24個のコイルの各々は単体のコイルであり、磁
気ヨーク21における1つの箇所には1種類のコイルが
巻かれている。24個のコイルはそれぞれ大きさと巻数
が等しく、磁気ヨーク21上で等角度おきに配置されて
いる。
【0059】ここで、各コイルに順方向の電流を流した
場合に、図9で反時計回りの方向に磁界が発生するよう
なコイルの巻き方を順方向巻と定義し、その反対を逆方
向巻と定義する。図9に示した構成において、逆方向巻
のコイルは104a,104b,105a,105b,
106a,106bの6個であり、他の残りの18個の
コイルは順方向巻のコイルとなっている。
【0060】図10と図11は本実施形態における電流
供給機構を示し、図10はコイル101a〜106a,
101b〜106bからなるコイルグループに対応する
電流供給機構であり、図11はコイル111a〜116
a,111b〜116bからなるコイルグループに対応
する電流供給機構である。図10において各コイルに紙
面上左から右へ電流が流れるとき順方向の電流であると
する。コイルを示すブロック内に記した番号の上線は当
該コイルが逆方向巻であることを示している。図10に
示すごとくコイル101a〜106a,101b〜10
6bからなるコイルグループに対しては3つの電流源1
21A,121B,121Cが設置され、各電流源は電
流値を適当に設定・可変できる構成を有している。コイ
ル101b,106a、コイル102b,105a、コ
イル103b,104aは連動スイッチ122,12
3,124によってその電流方向を同時に反転すること
ができる構成となっている。また図11に示すごとくコ
イル111a〜116a,111b〜116bからなる
コイルグループに対しても、3つの電流源121D,1
21E,121Fが設置され、各電流源は同様にその電
流値を適当に設定・可変できる構成を有している。
【0061】本実施形態においても24個のコイルはグ
ループに分けられる。しかし本実施形態では、前述の各
実施形態に比較してグループの分け方が異なる。まず大
きく分けると、上記24個のコイルは、斜線で示したコ
イル101a〜106a,101b〜106bからなる
コイルグループ(以下「コイルグループA」という)
と、白抜きで示したコイル111a〜116a,111
b〜116bからなるコイルグループ(以下「コイルグ
ループB」という)に分けられる。さらにコイルグルー
プAに関して、後述するごとく、さらに2つのコイルグ
ループA1,A2に分けられる。
【0062】コイルグループAとコイルグループBから
なる24個のコイルは各電流供給機構に関して上記のよ
うな結線構造を有しているので、各コイルグループはそ
れ自体で前述した実施形態の場合と同様に方向性の揃っ
た互いに直交する磁界を発生する。すなわち図10に示
した連動スイッチ122,123,124を上側に接続
することにより、図12に示すごとく、コイルグループ
Aのうちコイル101a,101b,106a,106
bを主コイル、その他のコイルを副コイルとして動作さ
せることにより(コイルグループAの第1接続状態)、
磁気ヨーク21の中央部空間に左から右へ向かう方向
(水平方向)に方向性の揃った磁界(矢印125で示
す)を生成する。この時、コイルグループBの各コイル
には電流を供給しないようにする。この磁界125はG
MRヘッド膜の第1の軟磁性層を作る際に用いられる。
【0063】次にGMRヘッド膜の第2の軟磁性層を成
膜する際には、図10に示した連動スイッチ122,1
23,124を下側に接続し、コイルグループAのうち
コイル103a,103b,104a,104bを主コ
イル、その他のコイルを副コイルとして動作させること
により(コイルグループAの第2接続状態)、図13に
示すごとく、上から下に向かう方向(垂直方向)に方向
性の揃った磁界(図13で矢印126で示す)を発生す
る。コイルグループAの第2接続状態で作られる磁界1
26は、コイルグループAの第1接続状態で作られる上
記磁界125に対して直交した位置関係にある。
【0064】コイルグループAは、上記連動スイッチに
おける第1接続状態に対応して決まるコイルグループA
1と、上記連動スイッチにおける第2接続状態に対応し
て決まるコイルグループA2に分けることができる。コ
イルグループA1とコイルグループA2は、グループを
構成するコイル要素という観点からは同じコイルグルー
プである。しかし、電流源121A,121B,121
Cに対する結線関係が異なるという観点で異なるコイル
グループとして認識する。
【0065】GMRヘッド膜の第2の軟磁性層を成膜す
る場合には、さらにコイルグループBの各コイルも同時
に動作させる。コイルグループBについては、コイル1
13a,113b,114a,114bを主コイルとし
て、他のコイルを副コイルとして動作させることによ
り、上記コイルグループAの第2接続状態の作る磁界1
26の方向から15゜だけ時計回りに傾いた方向に方向
性の揃った磁界(図13で矢印127で示す)を発生す
る。この場合、コイルグループBのコイル配置は、コイ
ルグループAのコイル配置を丁度15゜回転させた位置
になっている。実際の磁界は、コイルグループAとコイ
ルグループBの各々の作る磁界のベクトル和の方向にな
る(図13で点線矢印128の方向)。ここで、コイル
グループAとコイルグループBの各々に流す電流は最終
的な合成磁界(図13の矢印128)の大きさが、第1
の軟磁性層を作る際に用いられた横方向磁界125の大
きさと等しくなるように、適当に調整される。このよう
な調整を行いつつ、コイルグループAとコイルグループ
Bの各コイルに流す電流の割合を適当に設定すると、最
終的な合成磁界の方向を角度0゜から15゜の間で自由
に設定することが可能となる。
【0066】以上の第4実施形態において、上記構成で
は第2の軟磁性層を成膜する際にコイルグループAは発
生磁界の方向が丁度垂直に上から下になるように配置さ
れていたが、磁界の方向が元々傾いた方向になるように
コイルを配置することも可能である。例えばコイルグル
ープAのうちコイル104a,105a,102b,1
03bを主コイルとし、他の残りのコイルを副コイルと
することにより、垂直方向から30゜傾いた磁界を発生
することができる。この場合も、コイルグループBのコ
イル配置をコイルグループAのコイル配置から15゜回
転させるように設定すれば、最終的な合成磁界の方向
を、垂直方向からの角度30゜から45゜の間で自由に
設定することができる。
【0067】さらに上記の第4実施形態では第2の軟磁
性層を成膜する際のコイルグループBのコイル配置はコ
イルグループAのコイル配置を15゜だけ回転したもの
であったが、例えば45゜等の他の異なる角度に設定す
ることもできる。仮にこれを45゜にした場合、合成磁
界の方向は0゜から45゜の角度範囲で設定できること
になる。しかしこの回転角を大きくしてしまうと、磁気
ヨーク21の中央部空間に生成される磁場の方向の均一
性が失われてしまうため、やはり回転角度としては15
゜以下にすることが好ましい。さらに上記実施形態では
コイルの数を24個としたが、36個のコイルを10゜
間隔で配置してもよく、配置方法にはいろいろ変形が考
えられる。以上のようにしてGMRヘッドの膜構造にお
いて、2つの軟磁性層の磁化容易軸の間の角度を、直交
から任意の角度だけずれた関係にて高精度で設定するこ
とができる。
【0068】上記第4の実施形態ではコイルグループA
の結線関係を変更することによりコイルグループA1,
A2を作って直交する磁界125,126を生成するよ
うにしたが、前述の第1から第3の実施形態による第1
および第2のコイルグループの構成を利用して直交する
2つの磁界を生成しかつ第4実施形態のコイルグループ
Bを組み合わせることにより同様な磁界128を作るこ
とも可能である。
【0069】以上、各種の実施形態を挙げて本発明によ
る磁界発生装置について説明したが、本発明では種々の
変形が考え得る。例えば磁気ヨークを円環ではなく、多
角形状の環にしても良い。またコイルの配置位置や個数
も任意に変形可能である。また少なくとも2つのコイル
グループを使用して例えば90°の差異のごとく2つの
方向の磁界を発生させるような形式のものはすべて本発
明に含まれる。さらに上記の第1から第3の実施形態で
は、第1のコイルグループのコイルと第2のコイルグル
ープのコイルには、同時に電流を流すことがないように
していたが、もし必要であれば2つのコイルグループの
コイルに同時に電流を流し、それらを時間的に適当に変
化させることにより、非常に方向性の揃った回転磁界を
発生させることも可能である。またコイルに流す電流を
正弦的、矩形的に変化させることにより磁界の方向を時
間的に変化させ反転させることもできる。さらに、磁界
強度をあまり必要としないのであれば、水冷の機構など
は省略することも可能である。
【0070】次に、図14と図15を参照して、前述し
た本発明による磁界発生装置を利用したスパッタリング
装置の実施形態について説明する。図14は、前述の磁
界発生装置を装備したスパッタリング装置の構成を模式
的に示した縦断面図である。また図15はターゲットと
基板と磁界発生装置の関係を示した平面図である。図1
4と図15では、一部を省略化し、各要素の形状、配置
を分かりやすくしている。
【0071】各図において、200は、真空成膜チャン
バが内部に形成される真空容器である。スパッタリング
装置のチャンバの内部には、必須要素であるカソード本
体201aとその上に設置されたターゲット202aが
配置されている。本実施形態では、同様なターゲットと
カソード本体が、他にも2組設置されており、図中では
201b,202bおよび201c,202cで示さ
れ、それぞれ成膜チャンバを形成している。これら3組
のカソード本体およびターゲットの各々は、他の部分か
ら電気的に絶縁されている。外部の電源からこれらに電
力を供給することにより、ターゲットの上の空間にプラ
ズマが生成され、成膜が行われる。この3組のカソード
本体およびターゲットには、別々の電源から別々に電力
を供給することができる。
【0072】真空容器200の上壁には円盤状の基板ホ
ルダ203が設置されている。基板ホルダ203にはス
ペーサ204を介して基板205が設置されている。ま
たスペーサ204内にはヒータが設けられており、基板
205を約300℃〜400℃に加熱することが可能で
ある。基板ホルダ203は、基板ホルダ軸206に結合
されていて、この基板ホルダ軸206を中心に回転運動
であり、かつ上下運動可能となっている。図14でこれ
らの運動を可能にする駆動機構の図示は省略されてい
る。
【0073】真空容器200の側壁には、前述した磁界
発生装置207が支持部208を介して取り付けられて
いる。基板ホルダ203を上下に動かすことにより、磁
界発生装置207の中心部空間に基板205を位置させ
ることができる。支持部208は、コイル冷却用水の出
入口(前述の18および19)も兼ねている。また、基
板205に対してターゲット202aの必要部分以外と
カソード本体201aを覆うように、ターゲットシール
ド209が設置されている。各ターゲットの間には、隔
壁210が設置されており、或る1つのターゲットによ
るスパッタリングで、他の2つのターゲットが汚染され
るのを防いでいる。基板ホルダ203が下側に移動し、
基板205が磁界発生装置207の中心部空間に位置す
る状態で、隔壁210と基板ホルダ203の間の間隔は
約3mmとなるように調整されている。
【0074】次に、上記スパッタリング装置を用いてス
ピンバルブ構造の積層膜を作製する手順を説明する。
【0075】この場合、ターゲット202aの材質とし
て、典型的な軟磁性体であるパーマロイ(Fe−Ni)
を使用する。ターゲット202bの材質は反強磁性体で
あるFe−Mnである。また、ターゲット202cの材
質は伝導性の非磁性体であるCuとする。基板205を
スペーサ204上に設置した後、真空容器200内を圧
力1×10-8Torr程度になるまで排気する。この状態で
は基板ホルダ203の位置は上側にあり、基板ホルダ2
03を回転させても、基板205が磁界発生装置207
と衝突しない。Arガスを導入しながら1×10-3Torr
程度の一定の圧力に保持する。
【0076】まず始めに、基板205がFe−Mnター
ゲット202bと対向するように基板ホルダ203を回
転させ固定する。この状態で基板上に膜厚約5nmのF
e−Mn膜を成膜する。次に、基板205がパーマロイ
ターゲット202aに対向するように、基板ホルダ20
3を回転させ、基板ホルダ203を下側に移動させて磁
界発生装置207の中心部空間に基板205が位置する
ように調節する。この状態で基板上に膜厚約5nmのパ
ーマロイ膜を積層させる。次に基板ホルダ203を上側
に移動させ、基板205がCuターゲット202cと対
向するように基板ホルダ203を回転させ固定する。こ
の状態で基板205上に膜厚約2nmのCu膜を積層す
る。最後に、再び基板205がパーマロイターゲット2
02aに対向するように基板ホルダ203を回転させ、
基板ホルダ203を上下運動させて磁界発生装置207
の中心部空間に基板205が位置するように調節し、基
板上に膜厚約5nmのパーマロイ膜を積層させる。以上
の手順に基づいてスピンバルブ構造の積層膜が作製され
る。
【0077】次に、図16を参照して本発明のスパッタ
リング装置の変形例を説明する。図16はスパッタリン
グ装置内に配置された磁界発生装置301とスパッタ成
膜を行うためのカソード本体302との配置関係のみを
示している。このスパッタリング装置ではカソード本体
302としてマグネトロン型カソードが使用されてい
る。当該マグネトロン型カソード302では、その本体
303の内部に、ターゲット304の表面にトンネル状
の磁界305を発生させるための磁石306が設置され
ている。磁石306は中心磁石とこれを囲む周囲磁石と
からなる。磁界306の作用により高密度のプラズマが
形成され、当該プラズマでターゲット304がスパッタ
される。一方、マグネトロン型カソード302の上方に
配置された磁界発生装置301からは、矢印307で示
された磁界が漏れ出す。この磁界は、元々バランスを保
って適切に設定されていた磁石306による磁界305
を乱す。磁界305が乱れると、放電電力が小さい場合
には、発生するプラズマをしばしば不安定にする。
【0078】そこで本実施形態による磁界発生装置で
は、磁界306に対して磁界307ができるだけ干渉し
ないように、磁界307の発生を抑制すべく、コイルの
ケース17のうちターゲット304側に面する部分およ
び外側に面する部分17aを軟磁性材料で形成してい
る。本実施形態ではコイルのケース17のうち内側部分
およびターゲット304の反対側に面する部分17bは
非磁性材料で形成されている。このような構成を採用す
ることにより、ターゲット304の前面に発生するプラ
ズマを安定化させ、GMRヘッド膜の作製を安定して行
うことができる。
【0079】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、次の効果を奏する。
【0080】本発明による磁界発生装置を用いることに
より、広い面積の平面領域内に、互いに直交する2つの
磁界であって±1°以内の非常に方向性の揃った磁界を
発生させることができる。これにより2つの軟磁性層の
磁化容易軸の間の角度を直交関係に高精度で設定するこ
とができる。またコイルのレイアウトを所定のものにす
ることにより構成を簡素にすることができる。さらに電
流制御を各コイルにつき独立に行えるようにしたため、
磁界方向の調整を容易に行うことができ、高い精度に磁
界方向を揃えることができる。さらに、第1および第2
のコイルグループについて、切替え器を利用することに
より、対応するコイル部分には同じ電流を流すようにし
たため、電流制御を1回行うだけで、2方向の各磁界に
関してそれぞれ高い精度で広い面積にわたり方向を揃え
ることができる。
【0081】また合成用の磁界を作るコイルグループを
付設することにより、前述のごとく±1°以内の非常に
方向性の揃った2つの磁界を任意の角度で交差するよう
に発生させることができ、2つの軟磁性層の磁化容易軸
の間の角度を直交から任意角度だけずれた関係に高精度
で設定することができる。
【0082】またスパッタリング装置がマグネトロンカ
ソードを備えるときには、磁界発生装置のケースの一部
を軟磁性材料で形成するようにしたため、ターゲットの
表面に形成される磁界に対して悪い影響を与える漏洩磁
界の発生を防止することができる。
【0083】さらに本発明による磁界発生装置をスパッ
タリング装置を用いると、優れた特性のスピンバルブ構
造の積層膜を作製でき、バルクハウゼンノイズが小さく
再生感度が良好なGMRヘッドに作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁界発生装置の第1の実施形態を
示す縦断面図である。
【図2】第1の実施形態の磁気ヨークとコイル部分のみ
を示す外観図である。
【図3】磁束線の分布状態を示す図である。
【図4】環状の磁気ヨークの中心を原点とする1/4の
領域における磁界の詳細な分布を示す図である。
【図5】環状の磁気ヨークの中心を原点とする1/4の
領域における磁界の傾き角の分布を示す図である。
【図6】各コイルへの電流供給機構の構成図である。
【図7】本発明に係る磁界発生装置の第2の実施形態を
示す図1と同様な図である。
【図8】本発明に係る磁界発生装置の第3の実施形態を
示す図1と同様な図である。
【図9】本発明に係る磁界発生装置の第4の実施形態を
示し、磁気ヨークとコイル配置を示す図である。
【図10】コイルグループAに対する電流供給機構を示
す回路図である。
【図11】コイルグループBに対する電流供給機構を示
す回路図である。
【図12】コイルグループAの第1の接続状態に基づい
て生じる磁界を示す図である。
【図13】コイルグループAの第2の接続状態とコイル
グループBに基づいて生じる磁界を示す図である。
【図14】本発明に係る磁界発生装置を備えたスパッタ
リング装置の縦断面図である。
【図15】上記スパッタリング装置の要部を示す平面図
である。
【図16】磁気ヨークと複数のコイルを収容するケース
の実施形態を示す図である。
【図17】従来の磁界発生装置の一例を示す斜視図であ
る。
【図18】従来の磁界発生装置の他の例を示す斜視図で
ある。
【符号の説明】
2a〜4b 第1のコイルグループ 12a〜14b 第2のコイルグループ 15a〜16b 磁束 17 ケース 21 磁気ヨーク 103 基板ホルダ 105 基板 107 磁界発生装置

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 比較的大きな面積を有する基板表面にス
    パッタ法を用いて磁化容易軸が直交する少なくとも2つ
    の磁性膜を積層成膜するとき、前記基板表面近傍に当該
    表面に平行な方向の磁界を生成するスパッタリング装置
    の磁界発生装置において、 前記基板表面を囲むように配置される環状の磁気ヨーク
    と、この磁気ヨークの周囲に巻かれ、第1の前記磁化容
    易軸の方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第1
    のコイルグループと、前記磁気ヨークの周囲に巻かれ、
    第2の前記磁化容易軸の方向に磁界を生成する複数のコ
    イルからなる第2のコイルグループからなり、前記第1
    の磁化容易軸と前記第2の磁化容易軸は直交しているこ
    とを特徴とするスパッタリング装置の磁界発生装置。
  2. 【請求項2】 電源と、この電源から供給される直流電
    流を、前記第1のコイルグループと前記第2のコイルグ
    ループのうちのいずれか一方に送給する切替え器を備え
    ることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置
    の磁界発生装置。
  3. 【請求項3】 前記第1のコイルグループに含まれるコ
    イルまたは前記第2のコイルグループに含まれるコイル
    には、コイルごとに独立に通電量を制御する電流制御部
    が設けられることを特徴とする請求項2記載のスパッタ
    リング装置の磁界発生装置。
  4. 【請求項4】 前記第1のコイルグループに含まれる各
    コイルの通電量または前記第2のコイルグループに含ま
    れる各コイルの通電量を、各々の前記電流制御部によっ
    て制御し、これにより、成膜が必要とされる表面にて、
    生成される磁界の方向が±1°以内に揃えられることを
    特徴とする請求項3記載のスパッタリング装置の磁界発
    生装置。
  5. 【請求項5】 前記第1のコイルグループと前記第2の
    コイルグループは、それぞれ、前記磁気容易軸の方向に
    磁界を作る主コイルと、成膜が必要とされる表面にて磁
    界の方向を前記磁気容易軸の方向に揃える副コイルを含
    むことを特徴とする請求項1のスパッタリング装置の磁
    界発生装置。
  6. 【請求項6】 前記第1のコイルグループの前記主コイ
    ルと、前記第2のコイルグループの前記主コイルは、実
    質的に直交する位置関係で配置されることを特徴とする
    請求項5記載のスパッタリング装置の磁界発生装置。
  7. 【請求項7】 前記第1のコイルグループの前記副コイ
    ルと、前記第2のコイルグループの前記副コイルは、実
    質的に同じ箇所に重ね合わせて配置されることを特徴と
    する請求項5記載のスパッタリング装置の磁界発生装
    置。
  8. 【請求項8】 前記第1のコイルグループの前記副コイ
    ルと、前記第2のコイルグループの前記副コイルは、共
    用されることを特徴とする請求項5記載のスパッタリン
    グ装置の磁界発生装置。
  9. 【請求項9】 基板表面にスパッタ法を用いて磁化容易
    軸が任意の角度で交差する少なくとも2つの磁性膜を積
    層成膜するとき、前記基板表面近傍に当該表面に平行な
    方向の磁界を生成するスパッタリング装置の磁界発生装
    置において、 前記基板表面を囲むように配置される環状の磁気ヨーク
    と、この磁気ヨークの周囲に巻かれ、第1の前記磁化容
    易軸の方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第1
    のコイルグループと、前記磁気ヨークの周囲に巻かれ、
    前記第1の磁化容易軸の方向に対して直交する方向に磁
    界を生成する複数のコイルからなる第2のコイルグルー
    プと、前記直交方向の磁界の方向を変化させる合成用磁
    界を生成する複数のコイルからなる第3のコイルグルー
    プを備えることを特徴とするスパッタリング装置の磁界
    発生装置。
  10. 【請求項10】 前記第1のコイルグループと前記第2
    のコイルグループは同じコイルグループであり、電流源
    に対する結線関係を変更することにより前記第1のコイ
    ルグループと前記第2のコイルグループを作るようにし
    たことを特徴とする請求項9記載のスパッタリング装置
    の磁界発生装置。
  11. 【請求項11】 前記スパッタリング装置がマグネトロ
    ンカソードを備えるとき、前記磁気ヨークと複数の前記
    コイルからなる装置本体を収容するケースのカソード側
    部分を軟磁性体で形成したことを特徴とする請求項1〜
    10のいずれか1項に記載のスパッタリング装置の磁界
    発生装置。
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