JPH11253155A - 表皮細胞増殖活性化素材 - Google Patents

表皮細胞増殖活性化素材

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JPH11253155A
JPH11253155A JP10346537A JP34653798A JPH11253155A JP H11253155 A JPH11253155 A JP H11253155A JP 10346537 A JP10346537 A JP 10346537A JP 34653798 A JP34653798 A JP 34653798A JP H11253155 A JPH11253155 A JP H11253155A
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紘三 坪内
Hiroo Yamada
弘生 山田
Yoko Takasu
陽子 高須
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Natl Inst Of Sericultural & En
National Institute of Sericultural and Entomological Science
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヒトおよび哺乳動物の表皮細胞が基礎床表面
に効率的に付着、増殖するだけでなく、細胞間の接着が
促進されて平面状に層をつくることができる新規な表皮
細胞増殖活性化素材を提供すること。 【解決手段】 有機物または無機物の固体表面を、X線
回折図がα型またはα−ヘリックスの結晶形態を示す絹
フィブロインを主成分として含有する材料で被覆してな
る表皮細胞増殖活性化素材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はヒトおよび哺乳動物
の表皮細胞の付着、増殖および細胞層形成を促進するた
めの活性化素材に関する。この活性化素材は、表皮細胞
培養床として、また生体における欠損皮膚の修復のため
の素材あるいは創傷被覆材として利用できる。
【0002】
【従来の技術】生命の基本単位である細胞は、顕在的あ
るいは潜在的に自己増殖する能力を有しており、多細胞
生物においては生体を構成するそれぞれの細胞が種々の
機能を担うものに分化し、それぞれ決まった増殖の態様
を示す。このうち生体を外部環境の変化から守る表皮に
おいては、細胞は、該表皮の下層部の真皮を層状に覆う
ように形成されており、他の生体組織またはこれに代わ
るべき物質に付着してのみ増殖し、平面状に層を作る性
質を有する。
【0003】すなわち、ヒトの表皮の場合、表皮は、幾
つかの層から形成され、その細胞層の下にある真皮とは
基底層を介して波(凹凸)状に接することにより、緊密
な関係を保つべく大きな接触面を有するように構成され
ている。表皮は、一番外側に皮脂膜と呼ばれる薄い水分
保持機能を有するアブラの層があり、該皮脂膜の下に
は、水を充分に含むことができる角質層(主としてケラ
チンからなる)が形成されている。
【0004】角質層の下には、細胞が層状に並んで細胞
層が形成され、次いで該細胞層が基底層に連なる。この
基底層との接触面において、細胞は分裂を繰り返して新
しい細胞を作り出していく。つまり、基底層が細胞を誕
生、生成させる場所となっている。基底層で生成した表
皮細胞は、次第に表面側に押し出され、やがて皮膚表面
に達し、この時点で細胞は死んで細胞核は消滅し角質層
となる。
【0005】基底層は、このように表皮の最奥部にあっ
て複雑な凹凸を形成し、表皮細胞層と緊密な関係を保つ
ように接触面を形成している。その基底層において開始
される表皮細胞の生成・増殖は、生体組織以外では長い
間成功しなかったが、表皮細胞を付着させるための固体
表面基礎床が種々探索された結果、近年になってようや
く、この生体外での表皮細胞の増殖が可能になった。
【0006】しかしながら、これらの方法で増殖させた
場合でも、細胞相互の接着が行われないため、生体での
表皮細胞層形成に準じた平面状の細胞層を作ることは極
めて困難であった。従来、細胞培養床としては、ポリス
チレン等の合成高分子物質、コラーゲン等の天然高分子
物質、そして、合成高分子物質に天然高分子物質をコー
ンティングしたものが開発されてきているが、必ずしも
表皮細胞の増殖に適したものとは言えず、更なる新しい
細胞培養床が望まれていた。
【0007】最近では、天然高分子として、水不溶性の
絹皮膜からなるを細胞培養床が提案されている(特公平
4−41595号公報参照)。この細胞培養床は、非結
晶性の絹皮膜をアルコールで結晶化させて水不溶化した
β型の絹皮膜であって、動物細胞の付着率が、従来のポ
リスチレン製培養床よりも優れているとされる。しか
し、表皮細胞の培養においては、もとより良好な付着性
は必要であるが、隣接した細胞が相互に強く接着し平面
状に層を作らなければならない。特に、表皮細胞培養技
術を創傷治療に応用するに当たっては、この平面状に細
胞層を形成する作用を促進する培養床の開発が要望され
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヒトおよび
哺乳動物の表皮細胞が基礎床表面に効率的に付着、増殖
するだけでなく、細胞間の接着が促進されて平面状に層
をつくることができる新規な表皮細胞増殖活性化素材を
提供することを目的とする。
【0009】また、本発明は、ヒトおよび哺乳動物の表
皮細胞層の生体外での形成再現を可能とする新規な培養
床を提供することを目的とする。更に、本発明は、ヒト
および哺乳動物の皮膚欠損部(創傷)を治癒するための
創傷被覆材を提供することを目的とする。
【0010】また別の観点からいえば、本発明は、表皮
細胞の生体外での生育再現を試みることによって、表皮
機能の基礎的研究に貢献し、また新規な表皮細胞増殖活
性化素材による皮膚欠損部治癒の作用機構等の研究に寄
与することを目的とするものでもある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、絹タンパ
ク質の結晶形態と表皮細胞との相互作用を綿密に検討し
た結果、主鎖がヘリックス構造を有する結晶形態の絹タ
ンパク質、特にα型またはα−ヘリックスの絹フィブロ
インが、上記目的を達成する上で格段に優れたものであ
ることを見出した。本発明は、この知見を基に達成され
たものであり、表皮細胞増殖活性化素材、それを細胞増
殖のための培養床として用いた表皮細胞培養床、およ
び、それを傷口の被覆材として用いた創傷被覆材を提供
するものである。
【0012】すなわち、本発明は、(1)、α型または
α−ヘリックスのX線回折図を示す絹フィブロインを主
成分として含有する材料からなる表皮細胞増殖活性化素
材に存する。
【0013】そして、(2)、α型またはα−ヘリック
スのX線回折図を示す絹フィブロインを主成分として含
有する材料に、α−ヘリックスの結晶形態を示す合成ポ
リアミノ酸を50重量%以下含有させてなる表皮細胞増
殖活性化素材に存する。
【0014】そしてまた、(3)、繊維状、皮膜状また
は粉末状の形態を有する上記(1)または(2)の表皮
細胞増殖活性化素材に存する。
【0015】そしてまた、(4)、有機物または無機物
の固体表面を、X線回折図がα型またはα−ヘリックス
の結晶形態を示す絹フィブロインを主成分として含有す
る材料で被覆してなる表皮細胞増殖活性化素材に存す
る。
【0016】そしてまた、(5)、α型またはα−ヘリ
ックスのX線回折図を示す絹フィブロインを主成分とし
て含有する材料からなる表皮細胞培養床に存する。
【0017】そしてまた、(6)、有機物または無機物
の固体表面を、X線回折図がα型またはα−ヘリックス
の結晶形態を示す絹フィブロインを主成分として含有す
る材料で被覆してなる表皮細胞培養床に存する。
【0018】そしてまた、(7)、皮膜状の形態を有す
る(5)または(6)の表皮細胞培養床に存する。
【0019】そしてまた、(8)、α型またはα−ヘリ
ックスのX線回折図を示す絹フィブロインを主成分とし
て含有する材料からなる創傷被覆材に存する。
【0020】そしてまた、(9)、α型またはα−ヘリ
ックスのX線回折図を示す絹フィブロインを主成分とし
て含有する材料に、α−ヘリックスの結晶形態を示す合
成ポリアミノ酸を50重量%以下含有させてなる創傷被
覆材に存する。
【0021】そしてまた、(10)、繊維状、皮膜状ま
たは粉末状の形態を有する(8)または(9)の創傷被
覆材に存する。
【0022】そしてまた、(11)、有機物の固体表面
を、X線回折図がα型またはα−ヘリックスの結晶形態
を示す絹フィブロインを主成分として含有する材料で被
覆してなる創傷被覆材に存する。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の表皮細胞増殖活性化素材
とは、ヒトおよび哺乳動物の表皮細胞が基礎床表面に効
率的に付着、増殖し、かつ細胞間の接着が平面状に層を
作ることができ、表皮細胞の付着、増殖および細胞層形
成を促進する素材をいう。従って、表皮細胞培養床や創
傷被覆材を含む概念である。そして、その形状、構造は
特に限定されず、皮膜状(シート状ないしフィルム
状)、粉末状、ビーズ状、繊維状等の各種形状、構造の
態様を採用することができる。
【0024】また、表皮細胞増殖活性化素材を製造する
ための原料としては、 a)繭糸、生糸、絹織物、絹糸(フィブロイン繊維)ま
たはそれらの未精練物から選ばれる原料、 b)繭糸、生糸、絹織物、絹糸またはそれら未精練物か
らそれぞれ別個に分離調製したフィブロインもしくはセ
リシン、 c)繭糸、生糸、絹織物、絹糸またはそれら未精練物か
ら選ばれる原料に、別個に分離調製したフィブロインも
しくはセリシンを混合して得た原料、並びに、 d)セリシンおよびフィブロインを含有する繊維、粉
末、フィルム等の使用済製品等の、家蚕および野蚕等の
絹糸虫類が吐糸するタンパク繊維物質および蚕体内の液
状絹等すべてが対象になる。 これらの原料中に含まれるセリシンの量は、相分離の観
点から、全体の40%以下、特に20%以下であること
が好ましい。
【0025】また、上記原料には、成形性の観点から、
ヘリックス構造をとり得る合成ポリアミノ酸(例えば、
主鎖の繰り返し単位が−A−,−A−G−,−A−G−
S−,−A−G−A−G−S−,等で表される物質、こ
こでAはアラニン、Gはグリシン、Sはセリシン)を5
0重量%を超えない範囲で混合することも行われる。例
えば、原料が分離調製したフイブロインである場合は、
それに50重量%を越えない範囲で、上記ヘリックス構
造をとり得る合成ポリアミノ酸が、混合される。本発明
の絹フィブロインを主成分として含有する材料とは、上
記原料中の絹フィブロインを以下に示されるα化処理方
法によりα型またはα−ヘリックス構造に変換させた絹
フィブロインを含有する材料をいう。
【0026】〔α化処理方法〕フィブロインおよびセリ
シンを含む上記原料を精練し、その後、中性塩の存在下
に水性溶媒に溶解し、脱塩して得たフィブロイン水溶液
を平滑な固体表面に流延し乾燥させることにより、水溶
性の乾燥絹皮膜を作成する。次いで、上記水溶性の乾燥
絹皮膜をα型またはα−ヘリックス構造の結晶形態の水
不溶性の絹皮膜(シート状又はフイルム状)に変換する
ために、室温で上記絹皮膜を含水率が40%±15%と
なるように環境湿度(例えば、相対湿度が80〜90%
程度)を調整し、長時間(例えば、12〜24時間程
度)放置する。
【0027】その方法には次の2つがある。 1)乾燥過程で結晶化する方法 フィブロイン水溶液を平滑な固体表面に流延した後、乾
燥過程で、フィブロイン水溶液の含水率が40%±15
%の状態まで乾燥したとき、この状態を長時間保つよう
にする。 2)乾燥後に結晶化する方法 フィブロイン水溶液をいったん乾燥後、室温で40%±
15%程度の環境にそのまま長時間保って結晶化する。
この様にして製造されたα型またはαヘリックス構造の
水不溶性の絹皮膜を乾燥した後、粉砕して粉末状素材を
得ることができる。
【0028】ここで、上記絹皮膜においては、絹皮膜の
厚さに注意しなければならない。絹皮膜の厚さが薄い場
合、被覆下地の材質によって絹皮膜の分子形態は影響を
受け、目的とする結晶形態が必ずしも満足するものとは
ならない場合がある。一方、絹皮膜の厚さが厚い場合、
該皮膜は剥がれ易くなる。このような観点から、絹皮膜
の厚さは、0.05〜20μmが採用されるとよく、更
に好ましくは0.5〜10μmである。
【0029】
【発明の効果】本発明は、表皮細胞活性化のための基本
的要件である細胞付着率および増殖性、細胞相互の接着
性、細胞層の伸展性等において極めて優れた性質を有す
る素材を提供することができる。したがって、表皮科学
における重要な諸問題、すなわち、表皮の細胞層形成の
際に起こる生化学反応の研究、また創傷皮膚医療への表
皮細胞培養技術の応用などに大きく貢献することが期待
できる。
【0030】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳し
く述べるが、本発明は、必ずしも実施例に限定されるも
のではないことは当然である。
【0031】
【実施例】〔実施例1〕家蚕の生糸を0.1%Na2CO3水
溶液、浴比100倍で2時間煮沸し、洗浄した後、乾燥
することで精練を行った。セリシンがほぼ除かれたこの
絹糸(フィブロイン含有率97%以上)を、塩化カルシ
ウム、エタノール、水のモル比が1:2:8の溶液に溶
解し、これを水に透析して脱塩し、絹フィブロインの水
溶液を作成する。この水溶液を、細胞培養用の容器(ポ
リスチレン製;平底、直径35mm)に入れて室温で乾
燥せしめ、容器の底に絹フィブロイン皮膜(フイルム
状)を形成させる。
【0032】次いで、上記絹フィブロイン皮膜を底に形
成した細胞培養用容器を、室温で相対湿度が約90%の
環境下に放置することにより、絹フィブロイン皮膜の含
水率を約40%に調整する。そして、そのまま20時間
静置してα化処理する。
【0033】次いで、α化処理して得られたフィブロイ
ン皮膜の一部を剥がして取り出し、X線回折図を撮っ
た。その結果を図1示す。このX線回折図から見て、α
型の結晶構造に変換した絹フィブロイン皮膜が得られた
ことが理解できる(なお、α型の結晶構造の判定につい
ての詳細は、「高分子論文集」Vol.33,No.8
(1976),第453〜462頁参照のこと。)
【0034】次に、α型の結晶構造に変換した絹フィブ
ロイン皮膜が形成された上記細胞培養容器に、約5万個
のヒト表皮細胞を1mlの培養液〔培養液、表皮細胞用
培地、極東製薬工業(株)K110〕に懸濁させたもの
を入れて、これを水蒸気で飽和した炭酸ガス5%、空気
95%とした37℃のインキュベーター内で静置培養し
た。
【0035】培養開始後5時間および培養開始後20時
間の細胞の位相差顕微鏡写真(100倍)を図3に示
す。また、培養20時間後に容器に付着して生育中の細
胞の上の培養液を取り除き、生理食塩水で浮遊細胞およ
び死細胞を洗い去り、次いでトリプシン溶液を加えて3
7℃に保って付着した表皮細胞を分離させた。そして、
顕微鏡下でその付着した表皮細胞数を計測して表皮細胞
付着の度合い〔表皮細胞付着率(%)〕を調べた。その
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】ここで、表皮細胞付着率(%)=20時間
後の付着細胞数/始めに細胞培養容器に入れた数×10
0で示す。なお、追加実験として、上記のα型の結晶構
造に変換した絹フィブロイン皮膜に、更にα−ヘリック
スの結晶形態を示す合成ポリアミノ酸を35重量%含有
させた混合物を対象として同様な静置培養実験を行っ
た。その結果は、図3及び表1の絹フィルム(α型)と
ほぼ同じとなった。
【0038】〔実施例2〕この実施例では、参考まで
に、絹フイブロインβ型結晶粉末の創傷被覆材との比較
も行った。絹フイブロインのα型とβ型結晶粉末は、次
の如くして得た。先ず、〔実施例1〕の処理にて得られ
た絹フイブロイン水溶液をアクリル板上に流延し、風乾
して、厚さ約30μmの非結晶皮膜を作った。そして、
下記の如くこれをα型とβ型に結晶化した。
【0039】結晶化においては、α化は、フイブロイン
皮膜への含水率が約40%になるように、室温で相対温
度約90%の室内に1日放置することで行った。β化
は、エチルアルコール70%水溶液をフイブロイン皮膜
に噴霧することで行った。これらのα型とβ型フイブロ
イン皮膜を乾燥して物理的に粉砕し、それぞれ平均粒子
径50μm以下の粉末とした。
【0040】これら絹フイブロインのα型及びβ型結晶
粉末を創傷被覆材とした治癒効果を見るため犬(ヘアレ
スドッグ)を対象として実験を行った。ヘアレスドッグ
の背部皮膚を3ヵ所の部分で1cm2 の面積だけ、真皮
まで剥離した。そして、それぞれ3ヵ所の創傷部分に
は、グリコン酸クロルヘキジン0.05%液を数滴滴下
して消毒した。
【0041】次に、3ヵ所の創傷部分のうち、1ヵ所を
α型結晶粉末、他の1ヵ所をβ型結晶粉末で被覆した。
残りの1ヵ所については、消毒した状態のままで、対照
区とした。その後、これら3ヵ所の創傷部分を透湿性の
フイルム状保護材(商品名、テガダーム)で保護した。
1週間後の創傷部分の皮膚組織再生状況を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】α型結晶粉末やβ型結晶粉末で創傷分を被
覆した方が、創傷被覆材を使わなかった対照区より治癒
効果が大きい。一方、α型結晶粉末とβ型結晶粉末との
比較では、肉眼観察では明確な差異は認められないが、
別途、組織像の緻密な観察を行ったところ、前者のα型
結晶粉末の方が後者のβ型結晶粉末より良好な治癒経過
を示した。
【0044】
【比較例】〔比較例1〕(β化処理) 実施例1のα化処理に代えて、β化処理(α化処理前
の、容器の底に形成された絹フィブロイン皮膜を乾燥
し、次いで、エタノールの70%水溶液を噴霧したのち
室温で乾燥する)する以外は、実施例1と同様にして、
結晶化絹フィブロイン皮膜を作成した。そのX線回折図
を図2に示す。また、培養開始後5時間および20時間
の細胞の位相差顕微鏡写真(100倍)を図4に示す。
ここでも、実施例1と同じようにして、培養開始後20
時間の表皮細胞付着率(%)を調べた。その結果を表1
に示す。
【0045】〔比較例2〕(ポリスチレン) 市販のポリスチレン容器(具体的説明;Becton
Dickinsonand Company社のFAL
CON1008)を直接に用いて、実施例1と同様にし
てヒト表皮細胞を静置培養した。また、培養開始後5時
間および20時間の細胞の位相差顕微鏡写真(100
倍)を図5に示す。
【0046】ここでも、実施例1と同じようにして、培
養開始後20時間の表皮細胞付着率(%)を調べた。そ
の結果を表1に示す。
【0047】図6〜図8(それぞれ、図3〜図5を上か
ら見た模式図;α型、β型およびポリスチレン)および
表1に示されるように、本発明の表皮細胞増殖活性化素
材(培養床)を用いてヒト表皮細胞を培養した場合に
は、比較例1、2の場合に比べ、培養床表面への細胞の
付着、増殖が均一になされると共に、細胞相互の接着
性、細胞層の成長伸展性において極めて優れていること
が分かる。
【0048】この原因は、ヘリックス構造を有する表皮
細胞増殖活性化素材表面が、生体表皮の基低層の膜(基
低膜)に類似する微細な凹凸面を形成し、該素材表面へ
の細胞の配位が緊密になされ、付着及び増殖が均一かつ
効率的に行われる結果、生体表皮の細胞層に準ずる細胞
層が形成されるものと考えられる。因みに、図6(α
型)では、細胞間に間隙が殆どなく、図7(β型)で
は、細胞間に間隙がかなりあり、図8(ポリスチレン)
では、細胞間の接触が少ない上に細胞の外形が不均一と
なっている現象が生じている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における実施例1の絹フィブロ
インのα型のX線回折写真を示。
【図2】図2は、本発明における比較例1の絹フィブロ
インのβ型のX線回折写真を示す。
【図3】図3は、本発明における実施例1の細胞の位相
差顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、本発明における比較例1の細胞の位相
差顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は、本発明における比較例2の細胞の位相
差顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、本発明における実施例1の細胞の模式
図である。
【図7】図7は、本発明における比較例1の細胞の模式
図である。
【図8】図8は、本発明における比較例2の細胞の模式
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 597143731 高須 陽子 茨城県つくば市並木2丁目14−301−504 (72)発明者 坪内 紘三 茨城県北相馬郡守谷町松前台6丁目15−8 (72)発明者 山田 弘生 茨城県つくば市二の宮1丁目8−10 時計 台ハイツA107 (72)発明者 高須 陽子 茨城県つくば市並木2丁目14−301−504

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α型またはα−ヘリックスのX線回折図
    を示す絹フィブロインを主成分として含有する材料から
    なる表皮細胞増殖活性化素材。
  2. 【請求項2】 α型またはα−ヘリックスのX線回折図
    を示す絹フィブロインを主成分として含有する材料に、
    α−ヘリックスの結晶形態を示す合成ポリアミノ酸を5
    0重量%以下含有させてなる表皮細胞増殖活性化素材。
  3. 【請求項3】 繊維状、皮膜状または粉末状の形態を有
    する請求項1または請求項2に記載の表皮細胞増殖活性
    化素材。
  4. 【請求項4】 有機物または無機物の固体表面を、X線
    回折図がα型またはα−ヘリックスの結晶形態を示す絹
    フィブロインを主成分として含有する材料で被覆してな
    る表皮細胞増殖活性化素材。
  5. 【請求項5】 α型またはα−ヘリックスのX線回折図
    を示す絹フィブロインを主成分として含有する材料から
    なる表皮細胞培養床。
  6. 【請求項6】 有機物または無機物の固体表面を、X線
    回折図がα型またはα−ヘリックスの結晶形態を示す絹
    フィブロインを主成分として含有する材料で被覆してな
    る表皮細胞培養床。
  7. 【請求項7】 皮膜状の形態を有する請求項5または請
    求項6に記載の表皮細胞培養床。
  8. 【請求項8】 α型またはα−ヘリックスのX線回折図
    を示す絹フィブロインを主成分として含有する材料から
    なる創傷被覆材。
  9. 【請求項9】 α型またはα−ヘリックスのX線回折図
    を示す絹フィブロインを主成分として含有する材料に、
    α−ヘリックスの結晶形態を示す合成ポリアミノ酸を5
    0重量%以下含有させてなる創傷被覆材。
  10. 【請求項10】 繊維状、皮膜状または粉末状の形態を
    有する請求項8または請求項9に記載の創傷被覆材。
  11. 【請求項11】 有機物の固体表面を、X線回折図がα
    型またはα−ヘリックスの結晶形態を示す絹フィブロイ
    ンを主成分として含有する材料で被覆してなる創傷被覆
    材。
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