JPH11246965A - レーザ蒸着法による薄膜の形成方法、およびその方法に使用するレーザ蒸着装置 - Google Patents

レーザ蒸着法による薄膜の形成方法、およびその方法に使用するレーザ蒸着装置

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JPH11246965A
JPH11246965A JP5042698A JP5042698A JPH11246965A JP H11246965 A JPH11246965 A JP H11246965A JP 5042698 A JP5042698 A JP 5042698A JP 5042698 A JP5042698 A JP 5042698A JP H11246965 A JPH11246965 A JP H11246965A
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target
substrate
laser
thin film
laser light
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Naoki Koide
直城 小出
Yuji Komatsu
雄爾 小松
Toru Nunoi
徹 布居
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Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大面積かつ膜特性が均一な高品質の薄膜をレ
ーザ蒸着法を用いて成膜する。 【解決手段】 気密チャンバ4内において、ターゲット
ホルダ6をターゲット2がレーザ光3の光軸上に位置す
るように配置するとともに、光軸方向に沿って移動可能
に設ける。また、基板ホルダ5は、基板1がレーザ光3
の光軸に対して平行な平面上に位置するように配置す
る。レーザ光3をターゲット2に集光するための集光レ
ンズ8、ターゲット2上でのレーザ光の口径がターゲッ
ト2の位置にかかわらず一定となるようにターゲット2
と連動するように構成する。基板ホルダ5は、成膜中、
成膜面内で回転可能または成膜面内の任意の方向に平行
移動可能となるように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ蒸着法によ
り広い面積かつ均一な膜質の薄膜を成膜する方法および
その方法に使用するレーザ蒸着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、レーザ蒸着法は、大きなエネル
ギー密度を持ったレーザ光を減圧下でターゲットに照射
し、ターゲットから蒸着物を発生させて、基板物質上に
ターゲット組成に近い組成を有する薄膜を形成する。
【0003】図5はこのようなレーザ蒸着法を行うため
の従来の装置の概略図である。
【0004】このレーザ蒸着装置では、内部を高真空に
排気可能で任意に雰囲気ガスを導入できる気密チャンバ
4内に、基板1およびターゲット2を平行に配置し、気
密チャンバ4の外部に配置したレーザ発振装置7から発
生されるレーザ光3をミラー15、集光レンズ8などの
光学手段を介して気密チャンバ4内に誘導し、ターゲッ
ト2に斜め上方からレーザ光を照射するようになってい
る。
【0005】なお、図5中、5は基板ホルダ、6はター
ゲットホルダ、9は真空排気ポンプ、10は雰囲気ガス
導入管、11はレーザ光導入窓である。
【0006】ところで、レーザ蒸着法においては、成膜
時の圧力、基板温度、雰囲気、レーザ光のエネルギー密
度など多くのパラメータを独立に選択することが可能で
あり、また、薄膜の組成の制御が容易であること、成膜
速度が高いことなどの多くの利点があげられる。さらに
は、一切の電磁場を必要としないので、蒸着物中に荷電
粒子が含まれていてもそれによる影響を受けることがな
い。従って、高品質の薄膜を作製するのに適した方法で
ある。
【0007】実際、このような利点を有するレーザ蒸着
法を使用して特性の優れた酸化物超伝導薄膜や光電デバ
イスに応用可能な半導体薄膜を作製することが研究され
ている。
【0008】例えば、社団法人電気学会による光・量子
デバイス研究会資料(資料番号OQD−92−53)pp.
69〜77(1992年10月28日)には、エキシマレ
ーザを使用したレーザ蒸着法により、臨界温度が90.
5Kであり、ゼロ磁場下、77.3Kにおける臨界電流
密度が8,000,000A/cm2である高品質のY−Ba
−Cu−O系酸化物超伝導薄膜を成膜する方法が開示さ
れている。
【0009】また、Thin Solid Films Vol.29
9,pp.94(1997年)には、エキシマレーザを使用
したレーザ蒸着法により、バンドギャップが6.2eVで
あり、X線ロッキングカーブの全半値幅が0.06゜と
極めて配向性の高い高品質のAlN薄膜を成膜する方法
が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、レーザ蒸着
法では、レーザ光がターゲットに照射されて発生するプ
ルームと呼ばれる発光の先端付近の狭い範囲でしか成膜
が行われないため、図5に示したような構成の装置で
は、レーザ光の照射位置やターゲットが固定されたまま
なので、大面積の薄膜を成膜することが困難である。
【0011】そこで、この問題を解決するために、従
来、たとえば特開平8−85865号公報(以下、前
者)や、特開平7−216539号公報(以下、後者)
にそれぞれ開示されている技術が提案されている。
【0012】前者(上記)の技術は、基板を回転させ、
かつレーザ光をターゲット上で走査しながら成膜を行う
ようにしている。また、後者(上記)の技術では、ター
ゲットを基板に対して平行かつ直線的に移動させながら
成膜を行うようにしている。
【0013】しかしながら、上記の,の従来技術に
おいては、それぞれ次のような問題が残されている。
【0014】すなわち、前者(上記)の場合には、水平
に設置されるレーザ発振装置から発振されるレーザ光を
走査するために揺動可能に設けられたミラーを配置する
必要があるが、現在一般に用いられている紫外線用のミ
ラーは、例えばエネルギー束が100mJ,パルス幅1
0ns以下の強度の大きな紫外線パルス光を照射すると破
壊されてしまう。したがって、導入するレーザ光の強度
には自ずと制限があり、高品質な薄膜を形成するのに限
界がある。
【0015】また、走査位置によって焦点位置が変わる
など、レーザ光を精密に走査することも非常に困難であ
り、さらに、ターゲット全面をレーザ光が走査できるよ
うにするためには、基板をターゲットに対して垂直に配
置する必要があり、ターゲット上で発生する火炎状をし
た蒸着物(いわゆるプルーム)の大きさ以上の大面積化は
不可能である。
【0016】一方、後者(上記)の場合には、ターゲッ
トが基板に対して平行に配置されているため、基板上に
ターゲットの大きさ以上の大面積の薄膜を成膜すること
が困難である。
【0017】その理由を、図6を参照しながら、さらに
詳しく説明する。
【0018】図6において、ターゲット2は基板1に対
して平行かつ直線的に移動可能に構成されている。
【0019】ここで、いま、レーザ光3とターゲット2
の表面とのなす角をθ、基板1とターゲット2との間の
距離をd,成膜可能なターゲット2の可動範囲、すなわ
ち成膜可能な基板1の最大長さをlとした時、lとdの間
には、 l=d/tanθ (1) という関係式が成立する。
【0020】例えば、Applied Physics Letters Vo
l.71,pp.102(1997年)において、高品質なGa
N薄膜を得たと開示されている距離d=7cm、最も一般
的な照射角度と考えられるθ=45°という値を上記の
(1)に適用すると、l=7cmとなる。実際、後者()に
おいて、基板の大きさは6×6cm角と開示されている。
【0021】基板1上に大面積の薄膜を成膜する、つま
り、lを大きくするには、(1)式の関係から、基板1と
ターゲット2との間の距離dを大きくするか、レーザ光
とターゲット2表面とのなす角θを小さくするか、ある
いは、両者d,θを変化させる必要があった。
【0022】しかし、dを大きくすると、プルームと基
板1との距離が大きく離れてしまい、プルームと雰囲気
ガスとの相互作用の増大や蒸発粒子の基板1への付着力
の低下など、堆積される薄膜の膜質が悪化してしまう。
さらには、dがプルームの全長よりも大きくなってしま
うと、最早、基板1上への堆積が行われなくなってしま
う。
【0023】また、θを小さくすると、ターゲット2上
でのレーザ光の口径が大きくなるため、十分なエネルギ
ー密度を得ることが困難になる。
【0024】このように、従来技術では、大面積かつ均
一な膜質の薄膜を基板上に形成することが大変困難であ
った。
【0025】本発明は、従来の上述した問題点を解決
し、基板上にできるだけ大面積の薄膜が形成できるよう
にすることを第1の課題とし、さらに、大面積であるに
もかかわらず、膜特性が均一な高品質の薄膜が成膜でき
るようにすることを第2の課題とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために、次の構成を採用している。
【0027】すなわち、請求項1ないし請求項5に記載
のレーザ蒸着法による薄膜の形成方法では、次の点に特
徴がある。
【0028】請求項1記載の発明では、ターゲットにレ
ーザ光を照射して、基板上に薄膜を堆積させる方法にお
いて、ターゲットをレーザ光の光軸上に配置するととも
に、光軸に沿って移動させることで基板上に成膜を行う
ようにしている。
【0029】また、請求項2記載の発明では、請求項1
記載の方法において、前記レーザ光をターゲットに集光
するための集光レンズをターゲットと連動させることに
よって、ターゲット上でのレーザ光の口径がターゲット
の位置にかかわらず一定となるように制御するようにし
ている。
【0030】請求項3記載の発明では、請求項1または
請求項2記載の方法において、前記レーザ光の光軸と平
行な平面上に基板を配置し、この基板上に成膜を行うよ
うにしている。
【0031】請求項4記載の発明では、請求項1ないし
請求項3のいずれかに記載の方法において、前記基板を
成膜面内て回転させるようにしている。
【0032】請求項5記載の発明では、請求項1ないし
請求項4のいずれかに記載の方法において、前記基板を
成膜面内の任意の方向に平行移動させるようにしてい
る。
【0033】また、請求項6ないし請求項10に記載の
レーザ蒸着法による薄膜の形成方法を使用するレーザ蒸
着装置では、次の点に特徴がある。
【0034】請求項6記載の発明では、ターゲットを保
持するターゲットホルダと、基板を保持する基板ホルダ
と、レーザ光を発生するレーザ発振装置と、レーザ発振
装置が発振するレーザ光をターゲットに照射されるよう
に誘導する光学手段とを具備するレーザ蒸着装置におい
て、前記ターゲットホルダは、ターゲットがレーザ光の
光軸上に位置するように配置されるとともに、光軸方向
に沿って移動可能に設けられている。
【0035】請求項7記載の発明では、請求項6記載の
構成において、前記光学手段は、レーザ光をターゲット
に集光するための集光レンズを有し、この集光レンズ
は、ターゲット上でのレーザ光の口径がターゲットの位
置にかかわらず一定となるようにターゲットと連動する
ように構成されている。
【0036】請求項8記載の発明では、請求項6または
請求項7記載の構成において、前記基板ホルダは、これ
に保持される基板がレーザ光の光軸に対して平行な平面
上に配置されるように構成されている。
【0037】請求項9記載の発明では、請求項6ないし
請求項8のいずれかに記載の構成において、前記基板ホ
ルダは、これに保持される基板が成膜面内で回転可能に
設けられている。
【0038】請求項10記載の発明では、請求項6ない
し請求項9のいずれかに記載の構成において、前記基板
ホルダは、これに保持される基板が成膜面内の任意の方
向に平行移動可能に設けられている。
【0039】上記の請求項1または請求項6記載の発明
によれば、ターゲットをレーザ光の光軸上を光軸に沿っ
て移動させるので、従来のターゲット移動型レーザ蒸着
法における課題であったターゲットの可動範囲の限界が
なくなり、基板上への大面積の薄膜形成が可能になる。
【0040】請求項2または請求項7記載の発明によれ
ば、レーザ光をターゲットに集光するための集光レンズ
がターゲットと連動するため、ターゲット上でのレーザ
光の口径がターゲットの位置にかかわらず一定となり、
ターゲット上でのレーザ光の入射エネルギー密度をター
ゲットの位置によらず一定に保つことができる。これに
より安定したエネルギー密度のレーザ光入射が可能とな
り、大面積かつ均一な膜質の薄膜形成が可能となる。
【0041】請求項3または請求項8記載の発明によれ
ば、レーザ光の光軸と平行な平面上に配置された基板上
に成膜が行われるので、ターゲットと基板の間の距離を
ターゲットの位置によらず常に一定に保つことができ、
大面積化の際にも均一な膜質の薄膜形成が可能となる。
【0042】請求項4または請求項9記載の発明によれ
ば、基板が成膜面内で回転し、また、請求項5または請
求項10記載の発明によれば、基板が成膜面内の任意の
方向に平行移動するので、ターゲットのみを移動させる
場合よりも、一層広い面積の薄膜を均一に基板上に形成
することが可能になる。
【0043】
【発明の実施の形態】実施形態1 図1は、本発明の実施形態1に係るレーザ蒸着装置の構
成図である。
【0044】この実施形態1のレーザ蒸着装置は、レー
ザ発振装置7を備える。この装置7から発生されるレー
ザ光3としては、エキシマレーザ、Nd:YAGレーザ
の高調波等を使用することが望ましく、本例では、N
d:YAGレーザの第4高調波(波長266nm)を使用し
ている。
【0045】気密チャンバ4には、レーザ光導入窓11
が設けられ、このレーザ光導入窓11に近接してレーザ
発振装置7から発振したレーザ光3を集光してチャンバ
4内に誘導する集光レンズ8が配置されている。
【0046】気密チャンバ4内には、基板1を保持する
基板ホルダ5、ターゲット2を保持するターゲットホル
ダ6、および真空排気ポンプ9が設けられるとともに、
チャンバ4内に雰囲気ガスを導入するための雰囲気ガス
導入管10の一端が開口しており、内部の圧力および雰
囲気を任意に変更することが可能である。
【0047】上記の基板ホルダ5は、基板1がレーザ光
3の光軸に対して平行な平面上に位置するように配置さ
れている。そして、この基板ホルダ5は、その内蔵した
モータ(図示せず)によって搭載した基板1をその表面の
成膜面内で回転可能、かつ、基板1の位置を回転軸方向
に対し垂直な方向に移動可能に設けられて、ターゲット
2と基板1との間の距離dを調節できるようになってい
る。たとえば、最短で約15mmまで近づけることができ
る。さらに、基板ホルダ5の内部には基板1を所定の温
度に加熱するためのヒータ(図示せず)が内蔵されてい
る。
【0048】また、上記のターゲットホルダ6は、内蔵
したモータ(図示せず)によって搭載したターゲット2を
ターゲット表面内で回転可能に設けられていて、レーザ
光導入窓11から入射したレーザ光3がターゲット2に
当たるように、入射するレーザ光3の光軸上の位置に配
置されている。
【0049】よって、レーザ発振装置7から発振したレ
ーザ光3は、ミラーを介することなく直接に集光レンズ
8に誘導され、レーザ光導入窓11を通して気密チャン
バ4内に入射してターゲット2上に集光されるようにな
っている。
【0050】さらに、気密チャンバ4には、ターゲット
ホルダ6をターゲット2とともにレーザ光の光軸に沿っ
て移動可能にするためのターゲット駆動装置12が取り
付けられている。
【0051】この場合、ターゲット2がレーザ光3の光
軸上を移動すると、ターゲット2上に集光されたレーザ
光3の口径が変化してしまうので、これを防ぐために、
集光レンズ8に集光レンズ駆動装置13が連設されてお
り、このレンズ駆動装置13によって集光レンズ8がレ
ーザ光3の光軸方向および光軸に垂直な方向にそれぞれ
駆動されるようになっている。
【0052】14は上記のターゲット駆動装置13およ
び集光レンズ駆動装置12を連動させるための制御装置
である。
【0053】この制御装置14は、単にターゲット2と
集光レンズ8との間を等距離に保って連動するだけの簡
単な装置であってもよいし、これよりも一層正確な制御
を必要とする場合は、コンピュータなどを用いた制御装
置であってもよい。
【0054】次に、上記構成のレーザ蒸着装置を用いた
レーザ蒸着方法について説明する。
【0055】レーザ蒸着による成膜に際しては、予め基
板ホルダ5を上下動させてターゲット2と基板1との間
の距離dを適切な値になるように設定しておく。
【0056】レーザ発振装置7からレーザ光3が発生さ
れ、このレーザ光3が集光レンズ8を介して気密チャン
バ4内に誘導されてターゲット2上に集光される。そし
て、ターゲット2にレーザ光3を照射することにより発
生される蒸着物は、基板1上に蒸着されて薄膜が形成さ
れる。
【0057】その際、均一な膜質の薄膜を得るために、
図2に示すように、基板1およびターゲット2はそれぞ
れ回転軸19を軸を中心として回転される。
【0058】また、ターゲットホルダ6は、ターゲット
駆動装置12によってレーザ光3の光軸に沿って水平移
動されることで、従来のようなターゲット2の可動範囲
の限界がなくなり、ターゲット2が基板1の広い範囲に
わたって走査される。
【0059】このとき、集光レンズ8も集光レンズ駆動
装置13によってターゲット2に連動されるため、ター
ゲット2上でのレーザ光3の口径がターゲット2の移動
位置にかかわらず一定に保たれて、ターゲット2上での
レーザ光3の入射エネルギー密度が常に一定になり、タ
ーゲット2から発生するプルームが安定する。
【0060】また、ターゲット2と基板1との間の距離
dは、ターゲット2が水平移動しても変化せずに一定で
あるから、ターゲット2を基板1に十分に近づけた状態
のまま成膜を行え、プルームと基板1との距離も安定す
る。
【0061】これにより、基板1には、大面積かつ均一
な膜質の薄膜が形成されることになる。
【0062】また、この実施形態1では、レーザ光3を
気密チャンバ4内に入射する際には、ミラーを使わず直
接レーザ発振装置7から集光レンズ8を介して気密チャ
ンバ内4へ入射しているので、従来のように反射ミラー
が反射できるエネルギー束やパルス幅の制限を受けない
ため、従来の課題であったレーザ光強度の制限の問題も
解決されている。
【0063】なお、この実施形態1では、基板ホルダ5
は、基板1をその表面の成膜面内で回転可能、かつ、基
板1の位置を回転軸方向に対し垂直な方向に移動可能に
設けられているが、さらに、基板ホルダ5をレーザ光3
の光軸を含む平面に沿って縦横に平行移動できるように
しておけば、基板1が成膜面内の任意の方向に平行移動
するため、ターゲット2のみを水平移動させる場合より
も、一層広い面積の薄膜を均一に基板上に形成すること
が可能になるため都合がよい。
【0064】実施形態2 図3は、本発明の実施形態2に係るレーザ蒸着装置の構
成図であり、図1に示した実施形態1に対応する部分に
は同一の符号を付す。
【0065】この実施形態2の特徴は、ターゲット2を
支持するターゲットホルダ6が四角柱形状のもので、そ
の四角柱の側面にそれぞれターゲット2が配置されてい
る。そして、ターゲット2は、四角柱の中心軸を回転軸
として回転可能に設けられている。しかも、このターゲ
ット2は、回転が停止されたとき、ターゲット2の表面
がレーザ光3の光軸と平行になって基板1の表面と対向
してしまわないように、光軸と所定の角度θとなるよう
に切り換えられる。
【0066】その他の構成は、図1に示した実施形態1
の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略す
る。
【0067】この実施形態2によれば、ターゲットホル
ダ6がレーザ光3の光軸方向に沿って移動することに加
え、ターゲットホルダ6の全ての側面に設置された4つ
のターゲット2を高真空度を保ったまま回転させて次々
と新しいターゲット2を提供することができるため、基
板1上に極めて大面積かつ膜質の均一な高品質の薄膜を
形成することが可能となる。
【0068】たとえば、同一の物質を長時間にわたって
成膜するときは、ターゲットホルダ6の各側面に同一種
のターゲット2を取り付け、1面の表面を使用し終わっ
た後、ターゲットホルダ6を回転させ、次のターゲット
2を使うといった操作を繰り返すと良い。
【0069】また、異種物質を積層した多層膜などを作
製するときには、ターゲットホルダ6の各側面に所望の
異種のターゲット2をそれぞれ設置し、ターゲット2を
交互に切り換えて使用することができる。
【0070】多層膜を作製する際には、例えば水晶振動
子による膜厚計などを用いて、所望の膜厚になったら次
のターゲット2に切り替えるという操作を行うと良い。
【0071】さらに、正確な膜厚制御を行うためには、
例えばコンピュータなどを用いたターゲットの駆動装置
を用いることが好ましい。
【0072】なお、この実施形態2では、四角柱状のタ
ーゲットホルダ6を使用したが、これに限定されるもの
ではなく、多角柱形状てあればどのようなものを用いて
もかまわない。
【0073】実施形態3 図4は、本発明の実施形態3に係るレーザ蒸着装置の構
成図であり、図1に示した実施形態1に対応する部分に
は同一の符号を付す。
【0074】従来から、レーザ蒸着法の特徴の一つとし
て、2つのレーザビームを用い、一方はレーザ蒸着用と
してターゲットに照射し、他方は基板励起光用として基
板に照射して、基板上で生成した薄膜の結晶化を促進さ
せるという技術が公知となっている(例えば、応用物理
第62巻第12号、pp.1244(1993年)など参
照)。
【0075】そこで、この実施形態3においては、前記
の実施形態1の構成に加えて、基板励起用のレーザ光1
6を発生するための手段としてレーザ発振装置17およ
び反射ミラー15を新たに設置し、気密チャンバ4にそ
のレーザ光16の導入窓18を設けている。
【0076】その場合のレーザ発振装置17から発生さ
れるレーザ光16は、ターゲット2に照射されるレーザ
光3と異なっていて、強度が弱いので、反射ミラー15
が損傷するおそれはない。また、このレーザ光16は、
パルス光でなく連続光であってもよく、波長域も紫外光
でなくてもよい。
【0077】その他の構成は、図1に示した実施形態1
の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略す
る。
【0078】この構成では、レーザ発振装置17から発
生された基板励起用のレーザ光16は、反射ミラー15
により反射され、レーザ光導入窓18を通してチャンバ
4内に入射して基板1上に集光される。その際、反射ミ
ラー15は回転駆動されることにより、この反射ミラー
15で反射された基板励起用のレーザ光16が基板1上
に照射される。この場合、基板励起用のレーザ光16
は、ターゲット励起用のレーザ光3と同期して走査され
るのが好ましいが、非同期で任意の場所に照射されるも
のであってもよい。
【0079】このように、この実施形態3によれば、タ
ーゲットホルダ6がレーザ光3の光軸上を光軸方向へ移
動することに加え、基板励起用のレーザ光16が基板1
に照射されることにより、結晶化率の高い極めて高品質
な大面積薄膜を形成することが可能になる。
【0080】なお、この実施形態3では、実施形態1の
構成に基板励起用のレーザ光16を発生する手段17,
15を付加したが、実施形態2の構成に基板励起用のレ
ーザ光16を発生する手段を付加することも勿論可能で
ある。
【0081】
【実施例】以下、本発明の装置および方法を用いた実施
例について、具体的に説明する。
【0082】実施例1 実施形態1で示したレーザ蒸着装置を使用して、本発明
の方法で微結晶Si薄膜の成膜を行った。ターゲット2
には、直径40mm、厚さ約10mmの円板状のSi単結晶
を使用し、基板1には、25cm×5cm角、厚さ0.7mm
の石英基板を使用した。また、レーザ光3とターゲット
2表面の法線とのなす角θは45゜に設定した。
【0083】この条件の下での成膜工程を以下に説明す
る。
【0084】最初に、石英基板1をアルカリ洗剤(エキ
ストラン)にて20分間、純水にて30分間(3回)、ア
セトンにて5分間の順に超音波洗浄を行った。
【0085】その後、ターゲット2をターゲットホルダ
6に、基板1を基板ホルダ5にセットした。気密チャン
バ4の内部を真空排気ポンプ9で1×10-7Torrに排
気してから、雰囲気ガス導入管10より純度99.99
95%のHeガスを導入し、圧力を0.5Torrに調整し
た。
【0086】基板1の表面温度を700℃,基板1とレ
ーザ光3の光軸との間の距離を20mm、レーザ光3のエ
ネルギーを180mJ/パルス、レーザパルスレートを
10Hz、ターゲット2の回転速度を20rpm、ターゲッ
ト2および集光レンズ8の光軸方向への移動速度を40
mm/分、基板の位置は固定して、5分間成膜を行った。
【0087】その結果、得られた薄膜の20cm×1cmに
わたる平均膜厚は1100nmであり、膜厚分布は±9%
程度であった。
【0088】また、波長457.9nm、入射パワー密度
30W/cm2のAr+レーザを薄膜上の2cmおき計10点
に照射し、各点におけるフォトルミネッセンスを測定し
たところ、全ての点において発光のピークエネルギーは
1.60±0.05eVであり、発光強度スベクトルの全
半値幅は約0.4eVであった。
【0089】このように、本実施例において均一性の高
い高品質な大面積微結晶Si薄膜が得られた。
【0090】実施例2 次に、本発明のレーザ蒸着を用いた薄膜形成法の第2の
実施例を説明する。
【0091】この実施例2で用いたレーザ蒸着装置は実
施形態1で使用した装置と同一の装置である。
【0092】この実施例2において、実施例1の成膜条
件と異なる点は、(1)成膜中に基板1を回転させる、
(2)ターゲット2および集光レンズ8を光軸方向へ移動
させる際、基板1の中心付近では速く、基板1の端付近
では遅くなるように滑らかに移動させる、(3)成膜時間
を20分間にする、の3点である。それ以外は、実施例
1と全く同じ条件の下で、微結晶Si薄膜の成膜を行っ
た。
【0093】この実施例2では、20cm×20cm角、厚
さ0.7mmの石英基板を30rpmの速さで回転させながら
成膜を行った。ターゲットの基板中心からの距離をrcm
としたとき、ターゲット2および集光レンズ8を光軸方
向へ移動する速度υ(r)cm/minについては、全体の膜厚
が一定となるように、r<0.25cmではυ(r)=5.63
cm/min、r≧0.25cmではυ(r)=1.4l/r cm/min
で決定される値に、ターゲットおよび集光レンズ連動駆
動制御装置14を用いて制御を行った。
【0094】その結果、直径l5cmの円周内の領域全休
にわたって平滑な平均膜厚が500nmて膜厚分布が±6
%程度の極めて均一な大面積薄膜が得られた。また、実
施例1と同様に、薄膜上10点におけるフォトルミネッ
センスを測定したところ、全ての点において発光のピー
クエネルギーは1.60±0.05eVであり、発光強度
スペクトルの全半値幅は約0.4eVであった。
【0095】このように、この実施例2においても極め
て均一性の高い高品質な大面積微結晶Si薄膜が得られ
た。
【0096】
【発明の効果】本発明によれば、次の効果を奏する。
【0097】(1) 請求項1または請求項6記載の発明
によれば、ターゲットをレーザ光の光軸上を光軸に沿っ
て移動させるので、従来のようなターゲットの可動範囲
の限界がなくなり、基板上への大面積の薄膜形成が可能
になる。
【0098】(2) 請求項2または請求項7記載の発明
によれば、レーザ光をターゲットに集先するための集光
レンズをターゲットと連動させるので、ターゲット上で
のレーザ光の口径がターゲットの位置にかかわらず一定
となり、ターゲット上でのレーザ光の入射エネルギー密
度をターゲットの位置によらず一定に保つことができ
る。これにより安定したエネルギー密度のレーザ光入射
が可能となり、大面積かつ均一な膜質の薄膜形成が可能
となる。
【0099】また、レーザ光をミラーを用いることなく
直接チャンバ内へ導入するため、従来の反射ミラーを用
いた場合よりもエネルギー束やパルス幅の制限を受けな
くなる。すなわち、高エネルギー密度のレーザ光をター
ゲットに照射することが可能となり、高品質の薄膜の形
成が可能になる。
【0100】(3) 請求項3または請求項8記載の発明
によれば、レーザ光の光軸と平行な平面上に配置された
基板上に成膜を行うので、ターゲットと基板の間の距離
をターゲットの位置によらず常に一定に保つことができ
る。これにより、大面積化の際にも均一な膜質の薄膜形
成が可能となる。
【0101】(4) 請求項4または請求項9記載発明で
は、成膜中基板を成膜面内で回転させ、また、請求項5
または請求項10記載の発明では、成膜中に基板を成膜
面内の任意の方向に平行移動させるので、ターゲットの
みを単独移動させるよりもより広い面積の薄膜を均一に
基板上に形成することができるため、一層大面積かつ膜
特性が均一な高品質の薄膜形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るレーザ蒸着装置の構
成図である。
【図2】同装置の基板、ターゲット、およびレーザ光の
位置関係を示した概略図である。
【図3】本発明の実施形態2に係るレーザ蒸着装置の構
成図である。
【図4】本発明の実施形態3に係るレーザ蒸着装置の構
成図である。
【図5】従来のレーザ蒸着装置の構成図である。
【図6】従来のレーザ蒸着装置の基板およびターゲット
部分を拡大した構成図である。
【符号の説明】
1…基板、2…ターゲット、3…レーザ光、4…気密チ
ャンバ、5…基板ホルダ、6…ターゲットホルダ、7,
17…レーザ発振装置、8…集光レンズ、9…真空排気
ポンプ、10…雰囲気ガス導入管、11,18…レーザ
光導入窓、12…ターゲット駆動装置、13…集光レン
ズ駆動装置、14…制御装置、15…反射ミラー、16
…基板励起用のレーザ光、19…回転軸。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ターゲットにレーザ光を照射して、基板
    上に薄膜を堆積させる方法であって、 ターゲットをレーザ光の光軸上に配置するとともに、光
    軸に沿って移動させることで基板上に成膜を行うことを
    特徴とする薄膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記レーザ光をターゲットに集光するた
    めの集光レンズをターゲットと連動させることによっ
    て、ターゲット上でのレーザ光の口径がターゲットの位
    置にかかわらず一定となるように制御することを特徴と
    する請求項1記載の薄膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記レーザ光の光軸と平行な平面上に基
    板を配置し、この基板上に成膜を行うことを特徴とする
    請求項1または請求項2記載の薄膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 前記基板を成膜面内て回転させることを
    特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の
    薄膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記基板を成膜面内の任意の方向に平行
    移動させることを特徴とする請求項1ないし請求項4の
    いずれかに記載の薄膜の形成方法。
  6. 【請求項6】 ターゲットを保持するターゲットホルダ
    と、基板を保持する基板ホルダと、レーザ光を発生する
    レーザ発振装置と、レーザ発振装置が発振するレーザ光
    をターゲットに照射されるように誘導する光学手段とを
    具備するレーザ蒸着装置において、 前記ターゲットホルダは、ターゲットがレーザ光の光軸
    上に位置するように配置されるとともに、光軸方向に沿
    って移動可能に設けられていることを特徴とするレーザ
    蒸着装置。
  7. 【請求項7】 前記光学手段は、レーザ光をターゲット
    に集光するための集光レンズを有し、この集光レンズ
    は、ターゲット上でのレーザ光の口径がターゲットの位
    置にかかわらず一定となるようにターゲットと連動する
    ように構成されていることを特徴とする請求項6記載の
    レーザ蒸着装置。
  8. 【請求項8】 前記基板ホルダは、これに保持される基
    板がレーザ光の光軸に対して平行な平面上に配置される
    ように構成されていることを特徴とする請求項6または
    請求項7記載のレーザ蒸着装置。
  9. 【請求項9】 前記基板ホルダは、これに保持される基
    板が成膜面内で回転可能に設けられていることを特徴と
    する請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のレーザ
    蒸着装置。
  10. 【請求項10】 前記基板ホルダは、これに保持される
    基板が成膜面内の任意の方向に平行移動可能に設けられ
    ていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいず
    れかに記載のレーザ蒸着装置。
JP5042698A 1998-03-03 1998-03-03 レーザ蒸着法による薄膜の形成方法、およびその方法に使用するレーザ蒸着装置 Pending JPH11246965A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003105530A (ja) * 2001-09-27 2003-04-09 Vacuum Products Kk レーザアブレーション装置
JP2008531845A (ja) * 2005-02-23 2008-08-14 ピコデオン エルティーディー オイ パルスレーザ蒸着方法
JP2009527645A (ja) * 2006-02-23 2009-07-30 ピコデオン エルティーディー オイ ガラス基材の塗装方法及び塗装されたガラス製品
US7608307B2 (en) 2002-11-08 2009-10-27 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Method of forming film upon a substrate

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