JPH11230953A - 裏側部材の取付位置検知装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼板の表側から裏側部材の取付位置を効率よ
く正確に検知できる検知装置を提供する。 【解決手段】 超音波探触子１と、この超音波探触子１
を操作するスケール２３付きの治具２と、超音波を送受
信し表示部４を有する超音波送受信機３とからなり、鋼
板１１の裏面に隅肉溶接部１３、１４で取り付けられた
裏側部材１２の取付位置を、鋼板部と隅肉溶接部とで超
音波６の反射強度が変化することにより隅肉溶接部の端
部位置１５、１６を検知してこれら２つの位置間の距離
から検知する。超音波の反射強度が変化する点は表示部
４において異なる色の表示灯４１、４２に切り替えるこ
とにより知らしめる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板の裏面に隅肉
溶接で取り付けられた裏側部材の取付位置を超音波を利
用して鋼板の表側から検知する検知装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】造船、橋梁、建築等の重工業の分野にお
いては、溶接継手として十字継手を使用するところが多
い。この場合において、表側部材の取付位置を決めるた
めには裏側部材の取付位置を正確に知る必要がある。裏
側部材の取付位置を検知する方法として、従来次のよう
な方法がとられていた。 （１）定規等による計測方法 これは、巻き尺等を用いて鋼板の裏面に取り付けられて
いる裏側部材の指定点（一般には裏側部材の端面の角の
位置）のＸＹ座標を鋼板の端部から計測し、その指定点
座標を鋼板の表側の面に投影する方法である。 （２）超音波探傷法 これは、裏側部材の両側の溶着金属の間に存在する未溶
着部の端部位置を鋼板の表面側から超音波探傷法により
検出し、その未溶着部の中央位置を裏側部材の中央位置
として求める方法である。 （３）ポンチによる方法 これも超音波探傷法を利用したものであるが、鋼板の裏
面に裏側部材と平行にポンチを複数点打刻しておき、こ
れらのポンチ位置を鋼板の表面側から超音波探傷法によ
り検出し、そのポンチ位置から裏側部材の取付位置を求
める方法である。

【０００３】しかし、従来の方法では次のような問題点
があった。 （１）の方法では、鋼板の端部から当該裏側部材の間に
複数の中間部材が取り付けられている場合があり、この
ような場合にはこれらの中間部材に穴を開けなければ計
測ができず、このため穴開け作業とその埋め戻し作業が
必要となり、能率が非常に悪い。 （２）の方法では、隅肉溶接の溶け込み量が溶接方法と
開先形状により変わるため、両側の溶け込み部が近接な
いし融合している場合には未溶着部を検出できず、また
溶接欠陥との判別ができないため、信頼性が低い。 （３）の方法では、裏側部材の側面から測定した位置に
正確にポンチを打刻する必要があり、能率が悪い。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】十字継手の場合、力の
伝達がスムーズに行われるようにするためには表裏の取
付部材の位置にずれが生じないように表側部材を裏側部
材と対向する位置に正確に取り付ける必要があるが、実
際には裏側部材の取付位置に製作誤差があり、このため
裏側部材の取付位置を正確に知る必要がある。しかし、
従来の方法には前述したように多くの問題があり、ワー
クの製造上の障害となっていた。

【０００５】本発明は、このような問題点を解決するた
めになされたもので、鋼板の表側から裏側部材の取付位
置を効率よく正確に検知できる検知装置を提供すること
を目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係る裏側部材の
取付位置検知装置は、鋼板の裏面に隅肉溶接で取り付け
られた裏側部材の取付位置を該鋼板の表側から検知する
装置において、超音波を鋼板の表面に垂直に入射する超
音波探触子と、前記超音波探触子を摺動自在に保持し、
該超音波探触子の走査距離を計測する計測器を有する治
具と、超音波を送受信し、鋼板部と隅肉溶接部の超音波
の反射強度の変化によって該隅肉溶接部のビード表面が
鋼板と接する端部の位置を知らしめる表示部を有する超
音波送受信機とを備えたことを特徴とするものである。

【０００７】超音波探触子は裏側部材の隅肉溶接部を横
切る方向に鋼板の表面上を走査する。超音波探触子から
垂直に入射された超音波は鋼板部ではその裏面で反射
し、反射波は再び同じ超音波探触子に戻ってくるが、隅
肉溶接部ではそのビード表面で反射し、ビード表面の傾
きのため反射方向が大きく変化するので、反射波はほと
んどその超音波探触子に戻ってこない。したがって、鋼
板部と隅肉溶接部とでは超音波の反射強度が異なる。こ
の反射強度の変化する、走査方向の最初の点及び最後の
点を検知することにより、これらの点を隅肉溶接部のビ
ード表面が鋼板と接する端部の位置として検知すること
ができる。また、反射強度の変化する点は表示部におけ
る表示灯の色の切り替えなどで知ることができる。そし
て、上記２点間の距離を治具の計測器で求めれば、その
中央位置を裏側部材の中央位置として検知することがで
きる。なお、本発明においては、隅肉溶接部の鋼板に沿
う方向の横脚長は両側ともほぼ等しいものであることを
前提としている。横脚長のずれは最大で２ｍｍ程度ある
が、裏側部材の取付中心線に対する誤差は最大のずれの
ときでもその半分の１ｍｍとなるため、誤差は半減さ
れ、裏側部材の取付位置のずれの許容値である最大５ｍ
ｍ以下となり、支障を生じない。

【０００８】

【発明の実施の形態】図１は本発明の検知装置の概要を
示す構成図である。対象とするワーク１０は、水平な鋼
板１１の裏面に裏側部材１２が両側の隅肉溶接部１３、
１４で垂直に取り付けられたものとして例示されてい
る。これら隅肉溶接部１３、１４のビード表面が鋼板１
１に接する端部の位置というのは、符号１５、１６で示
される位置をいう。ビード表面の端部の位置１５、１６
をそれぞれ検知することにより、その中央位置１７を算
出することができるので、その中央位置１７を裏側部材
１２の中央位置として検知することができる。中央位置
１７を通る中心線１８が裏側部材１２に対向して鋼板１
１の表面上に取り付けられるべき表側部材１９の取付予
定線である。実際にはこの取付予定線１８から板厚の半
分だけ離れた位置に平行に罫書き線を引き、その罫書き
線に表側部材１９の一方の側面を合わせて取り付けられ
る。

【０００９】そこで、本発明装置の構成をその作用とと
もに以下に説明する。本発明装置は、超音波探触子１
と、この超音波探触子１を走査する治具２と、超音波を
送受信する超音波送受信機３とからなるハンディタイプ
のものとして構成されている。超音波探触子１は治具２
のスライダー２１に取り付けられ、このスライダー２１
をスケール２３を設けたホルダー２２に摺動自在に設け
ている。治具２のホルダー２２は、超音波探触子１が鋼
板１１の表面上を隅肉溶接部１３、１４を横切る方向に
走査できるよう適当な着脱自在な固定手段（例えば、マ
グネット）もしくは滑り止め手段（例えば、裏張りされ
たゴム板）で鋼板１１上に固定できるようになってい
る。上記の超音波探触子１にケーブル５で接続された超
音波送受信機３はパネル前面に表示部４が設けられてお
り、この例では表示部４は赤色の表示灯４１と青色の表
示灯４２とからなっている。

【００１０】超音波送受信機３によりパルス信号を超音
波探触子１に送ることにより超音波探触子１を励振し
て、超音波６を鋼板１１に垂直に入射させる。超音波６
は鋼板１１の裏面で反射し、反射波は再び同じ超音波探
触子１で受波され、電気信号に変換されてその受信信号
を超音波送受信機３に入力し処理するようになってい
る。

【００１１】いま、超音波探触子１を治具２のスライダ
ー２１で隅肉溶接部１３、１４を横切る方向に走査する
と、そのときの超音波の反射強度は図２（ｂ）に示すよ
うな走査による反射強度曲線となる。すなわち、鋼板部
（溶接の溶着金属が存在しない母材の未溶着領域）では
超音波６の反射波は全面的に超音波探触子１に戻り、そ
の反射強度はハイレベルＨとなる。これに対して、隅肉
溶接部１３、１４では大部分がビード表面で反射する
が、そのビード表面の傾きのため反射方向が超音波探触
子１から外れ、ほとんど超音波探触子１に戻ってこな
い。このため反射強度はローレベルＬへと変化する。表
示部４は、図２（ａ）に示すように反射強度が設定レベ
ル以上のとき、例えば赤色表示灯４１を点灯させ、設定
レベル以下のとき青色表示灯４２を点灯させる。したが
って、鋼板部では赤色表示灯４１が点灯し、隅肉溶接部
１３、１４では青色表示灯４２が点灯する。

【００１２】このように超音波６の反射強度が変化する
ので、超音波探触子１を図１のように左側から右側へ走
査していくと、反射強度が設定レベル以下に低下する点
が検知できる。したがって、この点を隅肉溶接部１３の
端部の位置１５とし、その位置１５を治具２のスケール
２３で読み取る。次に、超音波探触子１をさらに走査し
ていくと、隅肉溶接部１３の溶着金属境界層１３ａが鋼
板１１の裏面を横切る点１３ｂで反射強度が設定レベル
以上に上がり、次の隅肉溶接部１４の溶着金属境界層１
４ａが鋼板１１の裏面を横切る点１４ｂでも反射強度が
設定レベル以下に下がるので、これらの点１３ｂ、１４
ｂも検知することができるが、本発明ではこれらの点１
３ｂ、１４ｂは対象としていない。その理由は、既に述
べたようにこれらの点１３ｂ、１４ｂが必ずしも明確に
分離しているとは限らず、溶接法や開先形状により両者
の溶け込み部が融合している場合もあるからである。次
に、右側の隅肉溶接部１４の端部の位置１６でも反射強
度が設定レベル以上に上がるので、この位置１６を同様
にスケール２３で読み取る。このようにして読み取られ
た２つの位置１５と１６との間の距離Ｗを求め、その中
央位置１７を求めることにより、裏側部材１２の中央位
置として検知することができる。そして、裏側部材１２
の長手方向に同様にして複数点中央位置を求め、それら
の点を結ぶ線から板厚の半分の位置で罫書き線を引くこ
とで表側部材の取付線とすることができる。また、裏側
部材１２の取付線が湾曲ないし屈折している場合でも長
手方向の検出間隔を適正にとることにより対処すること
ができる。

【００１３】表示部４は超音波６の反射強度が変化する
位置で表示灯の色が切り替わるので、表示灯の色の切り
替わりにより隅肉溶接部１３、１４の端部の位置１５、
１６を知ることができる。もちろん、表示部４はブザー
音等を併用させるものとしてもよい。また、超音波探触
子１の走査治具２はスケール等の計測手段を設けたもの
であるが、表示灯の切替信号と超音波探触子１の走査距
離信号を利用することにより、裏側部材１２の取付位置
を自動的に算出する演算手段を設けることも可能であ
る。この場合、演算結果をデジタル表示させる。

【００１４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
超音波の反射強度が鋼板部と隅肉溶接部とでは異なるた
め、超音波探触子を計測器付きの治具を用いて鋼板の表
面上で走査し、超音波の反射強度が変化する点を検知す
ることにより、裏側部材の両側の隅肉溶接部の端部位置
を検知することができ、その２つの端部位置間の距離か
ら裏側部材の取付位置を正確に検知することができる。
また、鋼板の裏面側にポンチ打ちなどの何らの予備的操
作を必要とせず、鋼板の表側から裏側部材の取付位置を
検知できるので効率がよく、しかも隅肉溶接部のビード
表面が鋼板に接する端部の位置を検知するので精度が高
い。また、本発明装置はハンディ型であるので作業性が
よいなどの効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の裏側部材の取付位置検知装置の概要図
である。

【図２】表示信号及び超音波反射強度と探触子走査位置
との関係を示す図である。

【符号の説明】

１ 超音波探触子 ２ 治具 ３ 超音波送受信機 ４ 表示部 ５ ケーブル ６ 超音波 １０ ワーク １１ 鋼板 １２ 裏側部材 １３、１４ 隅肉溶接部 １５、１６ 隅肉溶接部の端部の位置 ２１ スライダー ２２ ホルダー ２３ スケール

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 利明 三重県津市雲出伊倉津町14−1187

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋼板の裏面に隅肉溶接で取り付けられた
   裏側部材の取付位置を該鋼板の表側から検知する装置に
   おいて、 超音波を鋼板の表面に垂直に入射する超音波探触子と、 前記超音波探触子を摺動自在に保持し、該超音波探触子
   の走査距離を計測する計測器を有する治具と、 超音波を送受信し、鋼板部と隅肉溶接部の超音波の反射
   強度の変化によって該隅肉溶接部のビード表面が鋼板と
   接する端部の位置を知らしめる表示部を有する超音波送
   受信機と、を備えたことを特徴とする裏側部材の取付位
   置検知装置。