JPH11229092A - 摺動性に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品 - Google Patents
摺動性に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品Info
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- JPH11229092A JPH11229092A JP5264798A JP5264798A JPH11229092A JP H11229092 A JPH11229092 A JP H11229092A JP 5264798 A JP5264798 A JP 5264798A JP 5264798 A JP5264798 A JP 5264798A JP H11229092 A JPH11229092 A JP H11229092A
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Abstract
(57)【要約】 (修正有)
【目的】摺り合わせを伴う機械部品等に最適な、使用時
の表面疵の発生を抑制した高強度複相組織ステンレス鋼
板を提供する。 【構成】表面硬さがHVで300以上を有する高強度複
相組織ステンレス鋼であって、必須成分として質量%で
C:0.01〜0.15%、Cr:10.0〜20.0%
およびNi,Mn,Cuの少なくとも1種又は2種以上
合計で0.3〜5.0%を含有し、実質的にフェライト
+マルテンサイト混合組織を有し、表面粗さがRz(十
点平均粗さ)で0.5〜3.0μmである摺り合わせに
よる表面疵の発生を抑制した摺動性に優れる高強度複相
組織ステンレス鋼帯(鋼板)およびこれを用いた機械部
品とする。
の表面疵の発生を抑制した高強度複相組織ステンレス鋼
板を提供する。 【構成】表面硬さがHVで300以上を有する高強度複
相組織ステンレス鋼であって、必須成分として質量%で
C:0.01〜0.15%、Cr:10.0〜20.0%
およびNi,Mn,Cuの少なくとも1種又は2種以上
合計で0.3〜5.0%を含有し、実質的にフェライト
+マルテンサイト混合組織を有し、表面粗さがRz(十
点平均粗さ)で0.5〜3.0μmである摺り合わせに
よる表面疵の発生を抑制した摺動性に優れる高強度複相
組織ステンレス鋼帯(鋼板)およびこれを用いた機械部
品とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種機械部品やば
ねなどに使用される高強度ステンレス鋼において、その
重要な材料特性の一つである高強度を損なうことなく、
摺り合わせによる焼付き・凝着摩耗等に起因した表面疵
の発生を軽減し、製品の長寿命化を達成でき得る摺動性
に優れる高強度複相組織ステンレス鋼およびこれを用い
た各種機械部品等に関する。
ねなどに使用される高強度ステンレス鋼において、その
重要な材料特性の一つである高強度を損なうことなく、
摺り合わせによる焼付き・凝着摩耗等に起因した表面疵
の発生を軽減し、製品の長寿命化を達成でき得る摺動性
に優れる高強度複相組織ステンレス鋼およびこれを用い
た各種機械部品等に関する。
【0002】
【従来の技術】機械、装置・設備の保護カハ゛ー等の各種機
械部品や一般汎用ばねなどの高強度部材として、オース
テナイト系ステンレス鋼板のSUS301HTやSUS
304HTは、その優れた強度、高い耐食性が認知され
多用されている。これらオーステナイト系ステンレス鋼
板では、冷間圧延により適度な所定強度に調質された
後、各種機械部品に加工される。また、使用部位によっ
ては耐食性をあまり必要としない高強度鋼として、特殊
鋼およびマルテンサイト系ステンレス鋼板のSUS42
0やSUS410などが用いられている。これらの鋼板
では、各種部品に成形加工した後に適度な強度を得る目
的で焼入れ・焼戻しの熱処理が必須である。
械部品や一般汎用ばねなどの高強度部材として、オース
テナイト系ステンレス鋼板のSUS301HTやSUS
304HTは、その優れた強度、高い耐食性が認知され
多用されている。これらオーステナイト系ステンレス鋼
板では、冷間圧延により適度な所定強度に調質された
後、各種機械部品に加工される。また、使用部位によっ
ては耐食性をあまり必要としない高強度鋼として、特殊
鋼およびマルテンサイト系ステンレス鋼板のSUS42
0やSUS410などが用いられている。これらの鋼板
では、各種部品に成形加工した後に適度な強度を得る目
的で焼入れ・焼戻しの熱処理が必須である。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかし、冷間圧延に
より加工硬化したオーステナイト系ステンレス鋼板は、
ロット間およびコイル長手方向の表面硬さの変化が大き
く、特性変動による最終加工製品の寸法精度が悪い等の
問題がある。また、オーステナイト系ステンレス鋼は上
記のごとく加工硬化が大きい上に、熱伝導率が小さいと
いう特徴を有し、このため焼き付きを生じ易く本質的に
摺動性に劣るという欠点を有している。
より加工硬化したオーステナイト系ステンレス鋼板は、
ロット間およびコイル長手方向の表面硬さの変化が大き
く、特性変動による最終加工製品の寸法精度が悪い等の
問題がある。また、オーステナイト系ステンレス鋼は上
記のごとく加工硬化が大きい上に、熱伝導率が小さいと
いう特徴を有し、このため焼き付きを生じ易く本質的に
摺動性に劣るという欠点を有している。
【0004】一方、焼入れ・焼戻し熱処理により高強度
化するマルテンサイト系ステンレス鋼や特殊鋼は、軟質
な状態で部品加工を施した後、高強度化のための熱処理
を行うのが一般的であるが、その際に製品形状が変化す
る等の問題があった。これらの最終製品の形状変化は焼
き付き・凝着摩耗等による表面疵発生の原因ともなり、
必要に応じて機械研削加工を行うことにより寸法精度を
確保する必要があった。 このため掻き疵等の表面欠陥
の発生を抑制した、摺動性に優れる高強度素材が広く求
められていた。
化するマルテンサイト系ステンレス鋼や特殊鋼は、軟質
な状態で部品加工を施した後、高強度化のための熱処理
を行うのが一般的であるが、その際に製品形状が変化す
る等の問題があった。これらの最終製品の形状変化は焼
き付き・凝着摩耗等による表面疵発生の原因ともなり、
必要に応じて機械研削加工を行うことにより寸法精度を
確保する必要があった。 このため掻き疵等の表面欠陥
の発生を抑制した、摺動性に優れる高強度素材が広く求
められていた。
【0005】本発明は、各種機械部品や一般汎用ばねな
どの高強度ステンレス鋼において、使用に際し凝着摩耗
等による掻き疵の発生を抑制し、機械部品としての長寿
命化、軽量化を可能とする摺動性に優れた高強度複相組
織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品を
提供することを目的とする。
どの高強度ステンレス鋼において、使用に際し凝着摩耗
等による掻き疵の発生を抑制し、機械部品としての長寿
命化、軽量化を可能とする摺動性に優れた高強度複相組
織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、必須成
分として質量%でC:0.01〜0.15%、Cr:1
0.0〜20.0%およびNi、Mn,Cuの少なくと
も1種又は2種以上合計で0.3〜5.0%を含有し、
実質的にフェライト+マルテンサイト混合組織を有し、
表面粗さがRzで0.5〜3.0μmであり、表面硬さ
がHVで300以上を有する摺り合わせ使用時の摺動性
に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこ
れで構成される機械部品を提供する。
分として質量%でC:0.01〜0.15%、Cr:1
0.0〜20.0%およびNi、Mn,Cuの少なくと
も1種又は2種以上合計で0.3〜5.0%を含有し、
実質的にフェライト+マルテンサイト混合組織を有し、
表面粗さがRzで0.5〜3.0μmであり、表面硬さ
がHVで300以上を有する摺り合わせ使用時の摺動性
に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこ
れで構成される機械部品を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、高強度複相組織ス
テンレス鋼の成分・製造方法の観点から摺動性の改良に
ついて検討を加え、本発明に至ったものである。前記鋼
によれば、摺動時の表面性状を損なうことなく、使用時
の焼付き・凝着摩耗等による掻き疵の発生を著しく軽減
できることを見出した。本発明における各成分の作用と
含有量限定の理由は以下の通りである。
テンレス鋼の成分・製造方法の観点から摺動性の改良に
ついて検討を加え、本発明に至ったものである。前記鋼
によれば、摺動時の表面性状を損なうことなく、使用時
の焼付き・凝着摩耗等による掻き疵の発生を著しく軽減
できることを見出した。本発明における各成分の作用と
含有量限定の理由は以下の通りである。
【0008】C:0.01〜0.15質量% 強力なオーステナイト生成元素であると共に、マルテン
サイト強化能が大きいことから、Ac1点以上の温度に
加熱・冷却の熱処理を行った後のマルテンサイト量を調
整でき、強度の制御及び高強度化に有効に作用する。こ
れらの作用は、0.01質量%以上のC含有量で顕著に
なる。しかし、0.15質量%を超える多量のCが含ま
れると、熱間圧延中にマルテンサイトが過剰に生成し、
熱間加工性を低下させる。また、C含有量の増加に伴っ
て、熱処理後に多量の炭化物が生成するようになり、表
面疵の発生要因および耐食性や靱性が低下するため0.
15質量%を上限とする。
サイト強化能が大きいことから、Ac1点以上の温度に
加熱・冷却の熱処理を行った後のマルテンサイト量を調
整でき、強度の制御及び高強度化に有効に作用する。こ
れらの作用は、0.01質量%以上のC含有量で顕著に
なる。しかし、0.15質量%を超える多量のCが含ま
れると、熱間圧延中にマルテンサイトが過剰に生成し、
熱間加工性を低下させる。また、C含有量の増加に伴っ
て、熱処理後に多量の炭化物が生成するようになり、表
面疵の発生要因および耐食性や靱性が低下するため0.
15質量%を上限とする。
【0009】Cr:10.0〜20.0質量% ステンレス鋼としての耐食性を維持する上で、少なくと
も10.0質量%以上のCrを含有する必要がある。し
かし、20.0質量%を超える過剰のCr量は靱性を低
下させる。また、マルテンサイト相を生成させ高強度を
得るに必要なC,Ni,Cu,N等のオーステナイト生
成元素の添加量がCr量に応じて多くなり、素材コスト
の上昇を招くため20.0質量%を上限とする。
も10.0質量%以上のCrを含有する必要がある。し
かし、20.0質量%を超える過剰のCr量は靱性を低
下させる。また、マルテンサイト相を生成させ高強度を
得るに必要なC,Ni,Cu,N等のオーステナイト生
成元素の添加量がCr量に応じて多くなり、素材コスト
の上昇を招くため20.0質量%を上限とする。
【0010】Ni,Mn,Cuの少なくとも1種または
2種以上合計で0.3〜5.0質量%Ni,Mn及びC
uは、いずれもオーステナイト生成元素として有効に作
用し、高温でフェライト+オーステナイトの二相組織
(常温でフェライト+マルテンサイトの複相組織)を得
るために必要な合金元素である。Ni,Mn及び/又は
Cuの含有量が増加するにしたがってマルテンサイト量
が増加し、硬さ(強度)を増加することができる。この
ような作用は、Ni,Mn,Cuの少なくとも1種また
は2種以上合計で0.3質量%以上含有したとき顕著に
現れる。しかし、過剰にNi,Mn,Cuなどを含有す
ると、高温でのオーステナイト量が多くなり熱間加工性
が低下する。したがって、Ni,MnおよびCuの含有
量は、合計で5.0質量%以下に規制する。
2種以上合計で0.3〜5.0質量%Ni,Mn及びC
uは、いずれもオーステナイト生成元素として有効に作
用し、高温でフェライト+オーステナイトの二相組織
(常温でフェライト+マルテンサイトの複相組織)を得
るために必要な合金元素である。Ni,Mn及び/又は
Cuの含有量が増加するにしたがってマルテンサイト量
が増加し、硬さ(強度)を増加することができる。この
ような作用は、Ni,Mn,Cuの少なくとも1種また
は2種以上合計で0.3質量%以上含有したとき顕著に
現れる。しかし、過剰にNi,Mn,Cuなどを含有す
ると、高温でのオーステナイト量が多くなり熱間加工性
が低下する。したがって、Ni,MnおよびCuの含有
量は、合計で5.0質量%以下に規制する。
【0011】本発明が対象とする高強度複相組織ステン
レス鋼では、各合金成分の個々の含有量を以上のように
規制すると共に、常温でフェライト+マルテンサイトの
複相組織が得られるように各合金成分を相互に調整す
る。なお、必要とする強度を低下させない限り、耐食性
を一層向上させる目的でMoを添加したり、耐酸化性を
向上させる目的でYやREM(希土類金属)を添加した
り、更に各種の特性向上を目的としてB,V,Al等の
合金元素を添加することができる。
レス鋼では、各合金成分の個々の含有量を以上のように
規制すると共に、常温でフェライト+マルテンサイトの
複相組織が得られるように各合金成分を相互に調整す
る。なお、必要とする強度を低下させない限り、耐食性
を一層向上させる目的でMoを添加したり、耐酸化性を
向上させる目的でYやREM(希土類金属)を添加した
り、更に各種の特性向上を目的としてB,V,Al等の
合金元素を添加することができる。
【0012】本発明が対象とする高強度複相組織ステン
レス鋼帯の表面粗さは、あまり粗さが小さすぎると摺り
合わせ時の接触抵抗が高く、表面疵が発生し易いためR
zの下限値を0.5μmとする。また、大きすぎると摺
動時に振れが発生し表面疵や機械部品としての機能低下
をもたらすため上限値をRzで3.0μmとする。
レス鋼帯の表面粗さは、あまり粗さが小さすぎると摺り
合わせ時の接触抵抗が高く、表面疵が発生し易いためR
zの下限値を0.5μmとする。また、大きすぎると摺
動時に振れが発生し表面疵や機械部品としての機能低下
をもたらすため上限値をRzで3.0μmとする。
【0013】本発明における複相組織ステンレス鋼の製
造条件についてはとくに規制するものではないが、以下
に代表的な製造方法と製造条件について述べる。本発明
が対象とする複相組織ステンレス鋼は、高温でフェライ
ト+オーステナイト組織を呈するように成分調整された
鋼帯または鋼板に、Ac1点〜(Ac1+100℃)の
温度域ではCがオーステナイト基地中に十分固溶し硬さ
変動が実質的に生じないので、複相化処理温度はAc1
点+100℃以上に設定することが好ましい。しかし、
過度に高い複相化処理温度では却って硬さが低下する傾
向がみられ、多量の熱源を必要とすることから製造コス
トが上昇する。そのため、複相化処理温度の上限は12
00℃程度に設定することが好ましい。
造条件についてはとくに規制するものではないが、以下
に代表的な製造方法と製造条件について述べる。本発明
が対象とする複相組織ステンレス鋼は、高温でフェライ
ト+オーステナイト組織を呈するように成分調整された
鋼帯または鋼板に、Ac1点〜(Ac1+100℃)の
温度域ではCがオーステナイト基地中に十分固溶し硬さ
変動が実質的に生じないので、複相化処理温度はAc1
点+100℃以上に設定することが好ましい。しかし、
過度に高い複相化処理温度では却って硬さが低下する傾
向がみられ、多量の熱源を必要とすることから製造コス
トが上昇する。そのため、複相化処理温度の上限は12
00℃程度に設定することが好ましい。
【0014】鋼帯(鋼板)を製造するにあたっては、
1回で所望の板厚まで冷間圧延し複相化処理を施す方
法、また、冷間圧延後、中間焼なましを行って再度冷
間圧延を行い複相化処理する方法、冷間圧延後、焼な
ましを行い、さらに複相化処理を施す方法、複相化処
理後に冷間圧延し、さらに必要に応じて再度複相化処理
を施すなどいずれの方法により製造してもよい。なお、
冷間圧延に際しては、表面粗さを制御するために上・下
面とも粒度♯150で研磨したワークロールを使用する
ことが好ましい。
1回で所望の板厚まで冷間圧延し複相化処理を施す方
法、また、冷間圧延後、中間焼なましを行って再度冷
間圧延を行い複相化処理する方法、冷間圧延後、焼な
ましを行い、さらに複相化処理を施す方法、複相化処
理後に冷間圧延し、さらに必要に応じて再度複相化処理
を施すなどいずれの方法により製造してもよい。なお、
冷間圧延に際しては、表面粗さを制御するために上・下
面とも粒度♯150で研磨したワークロールを使用する
ことが好ましい。
【0015】以下、実施例により本発明を具体的に説明
する。
する。
【0016】[実施例1]表1に示す化学成分の高強度
複相組織ステンレス鋼A〜Eを溶製した後、板厚4.5
mmの熱延鋼帯とし拡散焼鈍・酸洗後、粒度番号♯15
0で研磨したワークロールにより板厚1.0mmの冷延
鋼帯を製造した。その後、いずれの鋼帯も長手方向に2
分割(A〜E−1,2)し連続焼鈍炉を用いて、A〜D
-1の鋼帯については温度950〜1170℃に加熱・
冷却する複相化処理を行い酸洗し鋼帯とした。また、A
〜B-2の冷延鋼帯については軟質化を目的にAc1点
以下の温度で焼鈍後に1000,1020℃に加熱・冷
却する複相化処理を施し酸洗し鋼帯とした。C,D-2
の冷延鋼帯については、1000,1020℃で複相化
処理後、圧延率10%,30%の冷間圧延を行い、いず
れも1000℃の加熱・複相化処理を施し酸洗し鋼帯と
した。また、Eの鋼帯については本発明鋼の成分範囲に
あるがE-1は900℃の温度、E-2は1250℃の温
度に加熱・冷却する複相化処理を行い酸洗し鋼帯として
比較鋼とした。 これらの方法により製造した高強度複
相組織ステンレス鋼帯からサンプルを採取し試験に供し
た。なお、試験片は製造仕上げままの状態であり表面粗
さはRz(十点平均粗さ)で0.50〜1.50μmで
ある。また、鋼種記号F,Gは通常の製造工程で製造し
た比較鋼の化学成分を示す。
複相組織ステンレス鋼A〜Eを溶製した後、板厚4.5
mmの熱延鋼帯とし拡散焼鈍・酸洗後、粒度番号♯15
0で研磨したワークロールにより板厚1.0mmの冷延
鋼帯を製造した。その後、いずれの鋼帯も長手方向に2
分割(A〜E−1,2)し連続焼鈍炉を用いて、A〜D
-1の鋼帯については温度950〜1170℃に加熱・
冷却する複相化処理を行い酸洗し鋼帯とした。また、A
〜B-2の冷延鋼帯については軟質化を目的にAc1点
以下の温度で焼鈍後に1000,1020℃に加熱・冷
却する複相化処理を施し酸洗し鋼帯とした。C,D-2
の冷延鋼帯については、1000,1020℃で複相化
処理後、圧延率10%,30%の冷間圧延を行い、いず
れも1000℃の加熱・複相化処理を施し酸洗し鋼帯と
した。また、Eの鋼帯については本発明鋼の成分範囲に
あるがE-1は900℃の温度、E-2は1250℃の温
度に加熱・冷却する複相化処理を行い酸洗し鋼帯として
比較鋼とした。 これらの方法により製造した高強度複
相組織ステンレス鋼帯からサンプルを採取し試験に供し
た。なお、試験片は製造仕上げままの状態であり表面粗
さはRz(十点平均粗さ)で0.50〜1.50μmで
ある。また、鋼種記号F,Gは通常の製造工程で製造し
た比較鋼の化学成分を示す。
【0017】
【表1】
【0018】評価方法については、摺動試験機を用い寸
法:t(板厚)×幅50mm×長さ100mmの面に2
5mm角の同材を接触させ、荷重500gの分銅を載せ
50mmの距離を速度5000mm/minで100往
復摺動した。表2に製造条件と表面硬さおよび試験後の
目視判定による表面疵発生の評価を示す。
法:t(板厚)×幅50mm×長さ100mmの面に2
5mm角の同材を接触させ、荷重500gの分銅を載せ
50mmの距離を速度5000mm/minで100往
復摺動した。表2に製造条件と表面硬さおよび試験後の
目視判定による表面疵発生の評価を示す。
【0019】
【表2】
【0020】表2から明らかなように、本発明鋼はいず
れの製造条件で製造した鋼板も、表面硬さはHVで33
5〜395の範囲を示し、いずれの鋼板もHVで300
以上を有しており摺動試験後の表面疵の発生の程度も小
さい。写真1に本発明鋼板、写真2にSUS301HT
(冷間圧延材)比較鋼板の摺動試験後の表面状態を万能
投影機を用い、倍率10倍で撮影した代表例の外観写真
を示す。
れの製造条件で製造した鋼板も、表面硬さはHVで33
5〜395の範囲を示し、いずれの鋼板もHVで300
以上を有しており摺動試験後の表面疵の発生の程度も小
さい。写真1に本発明鋼板、写真2にSUS301HT
(冷間圧延材)比較鋼板の摺動試験後の表面状態を万能
投影機を用い、倍率10倍で撮影した代表例の外観写真
を示す。
【0021】写真1からも明らかなように、本発明鋼の
表面疵の発生の程度は非常に軽微であり、優れた表面状
態を有している。
表面疵の発生の程度は非常に軽微であり、優れた表面状
態を有している。
【0022】一方、写真2に示す比較鋼板のSUS30
1HT材の表面状態は、試験中に焼付き・凝着摩耗に起
因したと考えられる掻き疵の発生が認められる。
1HT材の表面状態は、試験中に焼付き・凝着摩耗に起
因したと考えられる掻き疵の発生が認められる。
【0023】[実施例2]実施例1の方法により製造し
た板厚1.0mmの鋼帯から、酸洗および研磨により表
面粗さ(Rz:十点平均粗さ)を種々変更した鋼板を作
製し、表面粗さの異なる鋼板を用いステンレス鋼板製品
の水冷槽の間口(寸法:250mm角)を摺動方法によ
り開閉する上面扉(寸法:275mm角)を製造した。
製造したステンレス製水冷槽上面扉の100回摺動開閉
テストを行い、ステンレス製品天板と接触する摺動部分
の表面疵発生の程度を目視判定で行った。その結果を表
3をもって説明する。
た板厚1.0mmの鋼帯から、酸洗および研磨により表
面粗さ(Rz:十点平均粗さ)を種々変更した鋼板を作
製し、表面粗さの異なる鋼板を用いステンレス鋼板製品
の水冷槽の間口(寸法:250mm角)を摺動方法によ
り開閉する上面扉(寸法:275mm角)を製造した。
製造したステンレス製水冷槽上面扉の100回摺動開閉
テストを行い、ステンレス製品天板と接触する摺動部分
の表面疵発生の程度を目視判定で行った。その結果を表
3をもって説明する。
【0024】
【表3】
【0025】表3において本発明例であるNo.A〜C
は、表面疵の発生も小さく高強度かつ優れた摺動性を有
している。一方、比較例No.D〜Gは、本発明条件の
いずれかを満足していないため、いずれも試験後に写真
2と同程度の表面疵が多く認められ製品の摺動部分の表
面外観において劣っている。なお、表面仕上げの方法
は、酸洗およびバイブレーションやヘアーライン仕上げ
を含む表面研磨やショトピーニング加工などいずれの方
法により製造してもよい。
は、表面疵の発生も小さく高強度かつ優れた摺動性を有
している。一方、比較例No.D〜Gは、本発明条件の
いずれかを満足していないため、いずれも試験後に写真
2と同程度の表面疵が多く認められ製品の摺動部分の表
面外観において劣っている。なお、表面仕上げの方法
は、酸洗およびバイブレーションやヘアーライン仕上げ
を含む表面研磨やショトピーニング加工などいずれの方
法により製造してもよい。
【0026】
【発明の効果】以上のように、表面硬さがHV300以
上且つ表面粗さがRzで0.5〜3.0μmを有する高
強度複相組織ステンレス鋼板を使用すれば、摺動中に発
生する表面疵も軽減でき、各種汎用機械部品等の摺動部
材への好適素材として提供することが可能であり、製品
の長寿命化も図れ一般産業機械分野の発展に大きく貢献
できる。
上且つ表面粗さがRzで0.5〜3.0μmを有する高
強度複相組織ステンレス鋼板を使用すれば、摺動中に発
生する表面疵も軽減でき、各種汎用機械部品等の摺動部
材への好適素材として提供することが可能であり、製品
の長寿命化も図れ一般産業機械分野の発展に大きく貢献
できる。
【図1】本発明鋼(A−1)板の摺動試験後の表面外観
を倍率10倍で撮影したもの。
を倍率10倍で撮影したもの。
【図2】比較鋼(G−2)板の摺動試験後の表面外観を
倍率10倍で撮影したもの。
倍率10倍で撮影したもの。
Claims (2)
- 【請求項1】 必須成分として、C:0.01〜0.1
5質量%、Cr:10.0〜20.0質量%およびN
i、Mn、Cuの少なくとも1種又は2種以上合計で
0.3〜5.0質量%を含有し、実質的にフェライト+
マルテンサイト混合組織を有し、表面粗さがRz(十点
平均粗さ)で0.5〜3.0μmであり、HVで300
以上を有する摺動性に優れる高強度複相組織ステンレス
鋼帯および鋼板。 - 【請求項2】 摺動部分または全体が請求項1に記載の
高強度複相組織ステンレス鋼で構成されている機械部
品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5264798A JPH11229092A (ja) | 1998-02-19 | 1998-02-19 | 摺動性に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5264798A JPH11229092A (ja) | 1998-02-19 | 1998-02-19 | 摺動性に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11229092A true JPH11229092A (ja) | 1999-08-24 |
Family
ID=12920647
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5264798A Withdrawn JPH11229092A (ja) | 1998-02-19 | 1998-02-19 | 摺動性に優れる高強度複相組織ステンレス鋼帯および鋼板とこれを用いた機械部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11229092A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100351509B1 (ko) * | 1999-10-05 | 2002-10-25 | 학교법인 포항공과대학교 | 절삭용 스테인리스강 및 그 가공방법 |
RU2721668C2 (ru) * | 2014-04-01 | 2020-05-22 | ЭйТиАй ПРОПЕРТИЗ ЭлЭлСи | Двухфазная нержавеющая сталь |
-
1998
- 1998-02-19 JP JP5264798A patent/JPH11229092A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100351509B1 (ko) * | 1999-10-05 | 2002-10-25 | 학교법인 포항공과대학교 | 절삭용 스테인리스강 및 그 가공방법 |
RU2721668C2 (ru) * | 2014-04-01 | 2020-05-22 | ЭйТиАй ПРОПЕРТИЗ ЭлЭлСи | Двухфазная нержавеющая сталь |
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