JPH11226721A - ピストンの製造方法 - Google Patents

ピストンの製造方法

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JPH11226721A
JPH11226721A JP4856098A JP4856098A JPH11226721A JP H11226721 A JPH11226721 A JP H11226721A JP 4856098 A JP4856098 A JP 4856098A JP 4856098 A JP4856098 A JP 4856098A JP H11226721 A JPH11226721 A JP H11226721A
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JP
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ring groove
groove member
piston
piston body
molten metal
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JP4856098A
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Hideki Otaka
秀樹 大高
Mitsuaki Nakamura
光明 中村
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Hino Motors Ltd
Original Assignee
Hino Motors Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡易に、かつ、低コストで、充分な強度を有
するピストンを製造する。 【解決手段】 リング溝部材14を予め加熱して、リン
グ溝部材14の表面14aに酸化被膜40を生成させ
る。その後、リング溝部材14を鋳型32内に配置し
て、この酸化被膜40が活性状態にある間に、ピストン
本体12を形成する溶融金属Mを、鋳型32内に流し込
んで、その溶湯流により酸化被膜40を剥離、除去し
て、リング溝部材14をピストン本体12により鋳包み
してピストンを製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車の
ディーゼルエンジン等に用いられるピストン、特に、ピ
ストン本体と、強度や耐摩耗性等を向上させるためピス
トン本体に鋳包みされ、ピストンリングが嵌合されるべ
きリング溝部材とから成るいわゆる鋳包み型ピストンの
製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、様々な部品において、その軽量化
が進み、例えば、自動車のディーゼルエンジン用のピス
トンについても、アルミニウム合金(以下、単に、『ア
ルミニウム』と称する。)から形成されたピストン等が
用いられることが多くなった。この場合、図9に示すよ
うに、ピストン10は、ピストンリング1を介して図示
しないシリンダ内を摺動するため、このピストンリング
1が嵌合するピストン10のリング溝16には、充分な
強度、耐摩耗性が要求される。
【0003】しかし、上記のように、ピストン10をア
ルミニウムから形成すると、軽量化や熱伝達性の向上は
図ることができるものの、このリング溝16の強度や耐
摩耗性を充分に確保することができない問題がある。こ
のため、一般に、アルミニウムからピストン10を形成
する場合には、図9に示すように、このピストンリング
1が嵌合するリング溝16部分を、例えば、オーステナ
イト球状黒鉛鋳鉄等の鉄系金属材料等の充分な強度を有
する材料から形成された別部品(即ち、リング溝部材1
4)とし、このリング溝部材14を、アルミニウムから
成るピストン本体12により鋳包みして、部分的にリン
グ溝16の強度を向上しつつ、軽量化を図ることが行わ
れていた。
【0004】この場合、ピストン本体12とリング溝部
材14とを結合させるため、かねてより広く用いられて
いる手段として、従来は、(1)鋳包みの前処理(鋳包
み材であるリング溝部材14の表面処理)として、リン
グ溝部材14を、溶融アルミニウム内に浸漬することに
より予熱して、図9に示すように、この鋳包み材である
リング溝部材14の表面14aにリング溝部材14の金
属材料とアルミニウムとの金属間化合物から成る中間層
42(接着層)を形成し、この中間層42を介して鋳包
みすることにより、この金属間化合物から成る中間層4
2をもってアルムニウムから成るピストン本体12と、
リング溝部材14との結合性を高めることが行われてい
た(いわゆるアルフィン処理)。
【0005】しかし、この従来技術では、アルミニウム
とリング溝部材14の金属材料との界面が脆弱で、結合
が必ずしも強固なものではないため、境界部が充分な強
度を有しない問題があった。また、この中間層42を形
成するためリング溝部材14を溶融アルミニウムにより
予熱する際に、リング溝部材14の表面14aに酸化被
膜40が形成され、この酸化被膜40等の不純物が存在
したまま、鋳包みすると、ピストン本体12とリング溝
部材14との結合が一層不安定となり、ピストン10の
強度が低下することがあった。加えて、予めピストン本
体12とは別に形成されたリング溝部材14の表面14
aには、この酸化被膜40のみならず、注湯までの後工
程で更に塵や埃等の不純物が付着して、これらの塵等に
よっても、リング溝部材14の表面14aが汚染され
て、結合強度に影響を与えるおそれがあった。一方で、
これらの酸化被膜40等の不純物を除去する作業を別途
行うと手間がかかる。
【0006】そのため、この一般的なアルフィン処理の
問題点を考慮し、(2)中間層42を、アルミニウムと
リング溝部材14の金属材料の金属間化合物ではなく、
ある程度、耐酸化性を有する、例えば、ニッケル自溶性
合金や、すず(Sn)、亜鉛(Zn)等の金属材料から
形成し、その後予熱して鋳包みする手段も提案されてい
る。この手段においては、これらの中間層42となる金
属は、アーク溶射、プラズマ溶射等の溶射、又は、めっ
き、浸漬等の方法で、鋳包み材であるリング溝部材14
の表面14aに施される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この(2)の
従来技術のように、異種材料を中間層42とすると、溶
射等により形成される中間層42の表面が不均一であっ
たりすると、ピストン本体12とリング溝部材14との
境界面の強度や脆性に悪影響を及ぼすおそれがある。ま
た、このように中間層42を異種金属から形成しても、
中間層42の施工後、注湯までの後工程で不純物が付着
するおそれがある点では、上記のアルフィン処理と変わ
りがない。
【0008】また、中間層42として異種材料を使用す
ると、その分コストが嵩む問題が生じる。このコストの
増大は、中間層42の表面を均一化するため、中間層4
2として、上記の耐酸化性の金属層に加えて更にクロム
層等を設けた場合には、一層顕著となる。
【0009】更に、以上の(1)、(2)のいずれの従
来技術においても、中間層42を設けるため、その分、
製造工程が複雑となり手間がかかる問題を生じていた。
加えて、いずれの従来技術でも、酸化被膜40(不純
物)の介在を防止するためには、例えば、上記(2)の
従来技術のように、中間層42として耐酸化性材料を使
用したり、また、鋳包み材であるリング溝部材14を不
活性ガス雰囲気下において予熱する必要が生じる等の問
題があり、また、このことが、手間やコストを一層要す
る原因ともなっていた。その一方で、これらの酸化防止
のための手段を講じないと、上記(1)の従来技術のよ
うに、ピストン本体12とリング溝部材14との間に酸
化被膜40による不純物が介在することになり、結合強
度が低下する問題が生じる。
【0010】また、上記のように、アルムニウムから成
るピストン本体12と、部分強化のためのリング溝部材
14という異なる2つの材料の金属を結合させたいわゆ
る鋳包み型結合ピストン10においては、2つの部材の
材料の物理的性質の相違により、鋳包み製造後に、ピス
トン本体12やリング溝部材14のそれぞれに残留応力
が生じ、高温下において、高速で摺動するピストン10
全体の強度が低下する問題も有していた。
【0011】一方、以上のようなアルミニウムから成る
ピストン10ではなく、従来より用いられている鋳鉄か
ら成るピストン10においては、ある程度充分な耐摩耗
性、強度を有するために、アルミニウムから成るピスト
ン10と異なり、図10に示すように、特に部分強化の
ためのリング溝部材14の如き部材は使用されておら
ず、ピストン本体12自体にリング溝16を直接形成し
ていた。
【0012】もっとも、このような鋳鉄ピストン10に
おいても、ピストン10は、過酷な使用条件において
は、図示しないシリンダ内を高速で摺動するうちに、リ
ング溝16部分が摩耗・変形したり、場合によっては、
破壊へと至り、その結果、エンジンオイルの消費量が不
必要に増大したり、また、ピストン10の耐久性へ影響
を与えるおそれがある。このため、従来から、図10に
示す鋳鉄ピストン10においても、ピストンリング1が
嵌合されるリング溝16部分を、焼入れにより部分強化
することが行われていた。
【0013】しかし、このように焼入れ等の熱処理を必
要とすると、手間がかかると共にコストが上昇する問題
が生じると同時に、そもそも焼入れ深さにはある程度限
界があるため、充分に強化を行うことが必ずしもできな
かった。特に、近年においては、エンジンの排気ガス対
策や性能の向上に伴い、鋳鉄から成るピストン10であ
っても必ずしも充分な強度を有するとはいえず、より一
層強度を向上させることが必要となってきた。
【0014】この場合、図9に示すアルミニウムから成
るピストン10と同様に、リング溝部材14等を使用し
て強度を向上することが考えられるが、従来の鋳包み型
のアルミニウムから成るピストン10と同様の方法によ
り、鋳包みすると、上記と同様に、製造に手間やコスト
を要したり、また、酸化被膜40等による結合性の低下
等の問題が生じる。
【0015】本発明の課題は、上記の問題点を解決する
ため、簡易に、かつ、低コストで、充分な強度を有する
鋳包み型ピストンを製造することができるピストンの製
造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するための第1の手段として、ピストンリングが嵌
合されるべきリング溝部材をピストン本体に鋳包みして
ピストンを製造する方法において、リング溝部材を予め
加熱してリング溝部材の表面に酸化被膜を生成させた
後、このリング溝部材を鋳型内に配置してリング溝部材
の表面の酸化被膜が活性状態にある間にピストン本体を
形成する溶融金属を鋳型内に流し込んで、リング溝部材
がピストン本体により鋳包みされたピストンを製造する
ことを特徴とするピストンの製造方法を提供するもので
ある。
【0017】このように、リング溝部材に酸化被膜を生
成させ、この酸化被膜が活性状態にあるうちに、ピスト
ン本体を形成する溶融金属を鋳型内に流し込んで鋳包み
すると、活性状態にあるリング溝部材表面の酸化被膜は
脆いことから、鋳型内に流し込まれたピストン本体を形
成する溶融金属の溶湯流により、この酸化被膜がリング
溝部材の表面から機械的に剥離されるため、リング溝部
材を酸化被膜その他の不純物が存在しない無垢の表面を
もってピストン本体に溶着させることができ、ピストン
本体と鋳包み材であるリング溝部材との結合強度を向上
させて、充分な強度を有する鋳包み型ピストンを製造す
ることができる。
【0018】この場合、特に、ピストン本体とリング溝
部材とを結合させるために、中間層を施したり、また、
中間層を形成するための異種材料金属を使用する必要が
ないため、ピストンの製造に手間とコストがかからず、
簡易に、かつ、低コストで製造することができる。
【0019】更に、鋳包み材であるリング溝部材の表面
に敢えて酸化被膜を生成させて、この酸化被膜を、その
活性状態を利用して溶湯流により鋳包みと同時に剥離
し、除去するため、特に、耐酸化性を有する金属材料
や、不活性ガスなどを使用して、酸化被膜の生成を防
止、考慮したり、あるいは鋳包み工程とは別の工程を設
けて酸化被膜を除去する必要がないにもかかわらず、ピ
ストン本体とリング溝部材との間に不純物が介在しない
結合面を得ることができ、簡易に、かつ、低コストで、
充分な結合強度を確保することができる。
【0020】なお、この第1の課題解決手段において
は、鋳包み材であるリング溝部材としては、充分な耐摩
耗性、耐熱性、強度を有する金属材料であれば、例え
ば、オーステナイト球状黒鉛鋳鉄等の種々の材料を使用
することができるが、特に、ニッケルクロムモリブデン
鋼(以下、単に『SNCM』と略称する。)を使用する
ことが望ましい。このSNCMは、充分な耐摩耗性や強
度等を有しているため、リング溝部材に適していると同
時に、特に、以下に述べるように、本発明において、リ
ング溝部材の材料として使用するのに、好適だからであ
る。
【0021】即ち、特に、上記第1の課題解決手段にお
いて、上記のようにリング溝部材をSNCMから形成す
る場合には、リング溝部材を、350℃から450℃で
予め加熱してリング溝部材の表面に酸化被膜を生成させ
ることにより、酸化被膜を適切に活性状態とすることが
でき、この酸化被膜を、ピストン本体を形成する溶融金
属の溶湯流により、リング溝部材の表面から確実に剥
離、除去させることができる。
【0022】本発明は、上記の課題を解決するための第
2の手段として、ピストンリングが嵌合されるべきリン
グ溝部材をピストン本体に鋳包みしてピストンを製造す
る方法において、ピストン本体を形成する溶融金属の凝
固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材料から
形成されたリング溝部材を鋳型内に配置してピストン本
体を形成する溶融金属を鋳型内に流し込み、この鋳型内
に流し込まれたピストン本体を形成する溶融金属により
リング溝部材を加熱した後、リング溝部材をピストン本
体を形成する溶融金属が凝固した後に冷却して焼入れし
て、リング溝部材がピストン本体により鋳包みされたピ
ストンを製造することを特徴とするピストンの製造方法
を提供するものである。
【0023】このように、鋳包み材であるリング溝部材
を、ピストン本体を形成する溶融金属の凝固後の冷却速
度に合致した焼入れ条件を有する材料から形成すると共
に、溶融しているピストン本体を形成する高温の溶融金
属により加熱した後、冷却して焼入れすると、鋳包みと
同時に適切に焼きを入れて熱処理を行うことができるた
め、鋳包み工程とは別にピストンを加熱する等の焼入れ
工程を設定する必要がなく、手間や時間、コストのいず
れも削減することができ、簡易に、かつ、低コストで、
リング溝部の強度が高いピストンを製造することができ
る。
【0024】特に、この場合、リング溝部材をピストン
本体の凝固後に冷却して焼入れし、リング溝部材として
この凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を持つ高強
度材を使用しているため、熱処理後の冷却速度の差によ
り生じる残留応力の発生もある程度抑制することができ
ると共に、全体で強度を有するリング溝部材を使用する
ため、特に鋳鉄から成るピストンにおいて焼入れ深さに
限界があった従来技術に比べてリング溝部分全体の強度
を向上させることができ、リング溝の強度を充分に向上
させることができ、充分な強度を有する鋳包み型ピスト
ンを製造することができる。
【0025】なお、本発明において、「ピストン本体を
形成する溶融金属の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ
条件を有する材料」とは、ピストン本体の凝固後の冷却
速度として設定された、ある冷却速度による冷却で焼入
れ硬化する材料を意味し、凝固後のピストン本体の冷却
速度との関係で相対的に選択、決定することができる。
したがって、このリング溝部材の材料としては、充分な
耐摩耗性等を有することを前提とした上で、ピストン本
体の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材
料であれば、種々の材料を使用することができる。即
ち、各種金属材料は、各材質毎に、その特性に応じて、
焼入れ硬化するための冷却速度が異なるため、例えば、
ピストン本体を凝固後強制冷却する場合には、その設定
した強制冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材料を
選択し、また、ピストン本体を自然冷却する場合には、
空冷により焼入れ硬化する材料を選択して、リング溝部
材を形成することができる。換言すれば、このリング溝
部材の材質に応じて、凝固後の冷却速度を設定すること
もできる。
【0026】この場合、上記第2の課題解決手段におい
て、リング溝部材をSNCMから形成し、リング溝部材
をピストン本体の凝固後その自然冷却と共に空気焼入れ
すると、このSNCMは、充分な耐摩耗性・強度を有す
ると同時に、空冷で焼きが入り空気焼入れする場合の凝
固後の冷却速度(空冷)に合致した焼入れ条件を有する
ため、空冷で適切に焼きが入り、鋳包み工程とは別に焼
入れ工程を設定する必要がなくなると共に、残留応力の
発生も抑制することができ、簡易に、かつ低コストで、
充分な強度を有するピストンを製造することができる。
特に、このように空冷とすると、焼入れのための加熱は
勿論、冷却する工程も省略することができる。
【0027】本発明は、上記の課題を解決するための第
3の手段として、ピストンリングが嵌合されるべきリン
グ溝部材をピストン本体に鋳包みしてピストンを製造す
る方法において、ピストン本体の凝固後の冷却速度に合
致した焼入れ条件を有する材料から形成されたリング溝
部材を予め加熱してリング溝部材の表面に酸化被膜を生
成させた後、このリング溝部材を鋳型内に配置してリン
グ溝部材の表面の酸化被膜が活性状態にある間にピスト
ン本体を形成する溶融金属を鋳型内に流し込み、その
後、リング溝部材をピストン本体を形成する溶融金属が
凝固した後に冷却して焼入れして、リング溝部材がピス
トン本体により鋳包みされたピストンを製造することを
特徴とするピストンの製造方法を提供するものである。
【0028】この第3の課題解決手段は、いわば、上記
の第1と第2の手段を組合せたものである。従って、第
1と第2の手段の両方の作用・効果、利点を同時に達成
することができ、より一層、簡易に、かつ、低コスト
で、更なる強度を有する鋳包み型ピストンを製造するこ
とができる。
【0029】また、この第3の課題解決手段において
も、上記第1又は第2の課題解決手段と同様に、リング
溝部材をニッケルクロムモリブデン鋼から形成し、リン
グ溝部材を、350℃から450℃で予め加熱してリン
グ溝部材の表面に酸化被膜を生成させ、リング溝部材を
ピストン本体を形成する溶融金属の自然冷却と共に冷却
して空気焼入れすることができる。
【0030】なお、以上のいずれの課題解決手段におい
ても、ピストン本体を形成する溶融金属としては、アル
ミニウムや球状黒鉛鋳鉄(以下、単に『FCD』と略称
する。)等を使用することができ、これにより、目的・
用途や必要性等に応じて、軽量化や、充分な強度の向上
等を適切に図ることができる。特に、FCDを使用する
と、鋳鉄から成るピストンにおいて鋳包みを行うことに
より、従来技術と比べて、特に、中間層の形成や焼入れ
等の面倒な熱処理を要することなく、ピストンの更なる
強度の向上を図ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、図
面を参照しながら詳細に説明すると、図1及び図2は本
発明の方法により製造されたピストン10を示し、この
ピストン10は、ピストン本体12と、ピストンリング
1が嵌合されるべきリング溝部材14とから成ってい
る。このピストン10は、図5及び図6に示すように、
リング溝部材14を、ピストン本体12に鋳包みして製
造される。
【0032】この鋳包みは、図3乃至図6に示すよう
に、予めピストン本体12とは別に形成されたリング溝
部材14を、鋳型32内の所定の箇所に配置した上で、
ピストン本体12を形成する溶融金属M(ピストン本体
12となる溶融金属)を、この鋳型32内に流し込むこ
とにより行う。その後、この溶融金属Mを凝固させるこ
とによりピストン本体12が形成されると同時に、リン
グ溝部材14がこのピストン本体12により鋳包みされ
て、図1に示すピストン10が形成される。
【0033】この場合における本発明のピストン10の
製造方法の具体的な実施の形態を以下に述べる。初め
に、第1の実施の形態においては、まず、図3に示すよ
うに、リング溝部材14を、適宜な方法により、予め、
ピストン本体12とは別に、所定のリング状に形成す
る。次いで、このリング溝部材14の形成時等にリング
溝部材14の表面14aに強固に付着した酸化スケール
等を、ショットブラスト処理等により除去して、リング
溝部材14の表面14aを清浄する。
【0034】この鋳包み材であるリング溝部材14は、
第1の実施の形態においては、ピストン本体12の材料
となる金属との組合せを考慮した上で、従来からリング
溝部材として使用されている金属材料、例えば、オース
テナイト球状黒鉛鋳鉄等の、ある程度の耐摩耗性、強
度、耐熱性を有する種々の材料から形成することができ
るが、本発明においては、特に、SNCMを使用するこ
とが望ましい。これは、このSNCMが、充分な耐摩耗
性や強度等を有しているため、リング溝部材に適してい
ると同時に、SNCMを使用すると、後述するように、
ピストン本体12とリング溝部材14とを適切に結合さ
せることができ、本発明において、リング溝部材14と
して使用するのに好適だからである。
【0035】なお、このリング溝部材14は、図2
(A)に示すように、このリング溝部材14の内部をオ
イルが循環する中空のリング溝部材14であってもよい
し、図2(B)に示すように、中実のリング溝部材14
であってもよい。また、このリング溝部材14に形成さ
れ、図2に示すように、ピストンリング1が嵌合される
リング溝16は、このリング溝部材14の形成時に同時
に(鋳包み前に)形成することもできるし、また、鋳包
み後にリング溝部材16を切削加工すること等により形
成することもできる。なお、図示の実施の形態では、3
つのリング溝16が形成されているのが示されている
が、必ずしも3つに限定されるものではなく、必要に応
じて他の適宜な数のリング溝16を形成することができ
るのは勿論である。これらのことは、後に述べる本発明
の第2、第3の実施の形態においても同様である。
【0036】次いで、以上のようにして形成されたリン
グ溝部材14を、上記のショットブラストによる処理
後、図4に示すように、表面14aに不純物が付着しな
いように直ちに、加熱炉30内に配置して、鋳包み前に
予め加熱して、リング溝部材14の表面14aに酸化被
膜40を生成させる。具体的には、リング溝部材14全
体が、加熱炉30内温度に均一に加熱されるまで加熱炉
30内に保持する。この間に、リング溝部材14の表面
14aには、薄い酸化被膜40が生成される。
【0037】この場合、酸化被膜40は、最終的には、
後述するように、ピストン本体12を形成する溶融金属
Mの溶湯流によりリング溝部材14の表面14aから剥
離・除去されるため、この剥離・除去や設計寸法等に悪
影響を与えないように、その生成状態や厚み等がある程
度適切となるように生成することが望ましい。
【0038】そのためには、具体的には、例えば、上述
したように、リング溝部材14をSNCMから形成する
ことにより対応することができる。即ち、このSNCM
から形成されたリング溝部材14を使用する場合には、
予め、350℃から450℃に予熱された加熱炉30に
より、SNCMから形成されたリング溝部材14全体
を、加熱炉30内温度である350℃から450℃に均
一に加熱することにより、生成される酸化被膜40を適
切に活性状態とすることができ、この酸化被膜40を、
後述するように、ピストン本体12を形成する溶融金属
Mの溶湯流により、リング溝部材14の表面14aから
確実に剥離、除去させることができる。
【0039】また、この場合、本発明では、鋳包み材で
あるリング溝部材14の表面14aに敢えて酸化被膜4
0を生成させて、この酸化被膜40を、後述するよう
に、その活性状態を利用して溶湯流により鋳包みと同時
に剥離し、除去するため、リング溝部材14を通常の大
気中で予熱すれば良く、特に、耐酸化性を有する金属材
料や、酸化防止のための不活性ガス等を使用して、酸化
被膜40の生成を防止、考慮したり、あるいは生成され
た酸化被膜40を敢えて鋳包み工程とは別の工程を設け
て除去する必要がないにもかかわらず、後述するよう
に、ピストン本体12とリング溝部材14との間に不純
物が介在しない結合面を得ることができ、簡易に、か
つ、低コストで、充分な結合強度を確保することができ
る。
【0040】即ち、図4に示すように、加熱炉30によ
り、リング溝部材14を予熱する場合には、この加熱炉
30内の雰囲気は、通常の大気でよく、加熱炉30内の
雰囲気を、特に不活性ガス等に置換する必要がないた
め、余分な作業・配慮を必要としない。なお、図4に示
す実施の形態では、加熱炉30により、リング溝部材1
4を予熱したが、本発明においては、リング溝部材14
は大気中で予熱すれば足りるため、上記のように、SN
CMから成るリング溝部材14を使用する場合において
350℃から450℃でリング溝部材14を加熱してそ
の表面14aに酸化被膜40を適切に生成させることが
できれば、必ずしも、加熱炉30には限定されず、他の
適宜な予熱手段を用いることができる。
【0041】その後は、このリング溝部材14の表面1
4aに生成された酸化被膜40が活性状態にあるうち
に、リング溝部材14を、加熱炉30より取り出し、図
5に示すように、予め用意された所定の形状の鋳型32
内の所定の箇所に配置する。この場合、酸化被膜40が
活性状態にあるうちに、リング溝部材14を鋳型30内
に配置する必要があるため、リング溝部材14は、加熱
炉30からの取り出し後、直ちに鋳型32内に配置され
る。したがって、この迅速な処理によっても、予熱後鋳
型32内に配置するまでの間やその後のピストン本体1
2を形成する溶融金属Mの流し込みまでの間の後工程に
おいて、リング溝部材14の表面14aへの塵や埃等の
不純物の付着をある程度抑制することができる。
【0042】その後は、上記のように、鋳型32内に配
置したリング溝部材14の表面14aに生成された酸化
被膜40が活性状態にある間に、図6に示すように、ピ
ストン本体12を形成する溶融金属Mを鋳型32内に流
し込む。
【0043】この場合、活性状態にあるリング溝部材1
4の表面14aの酸化被膜40は脆いことから、図7に
示すように、鋳型32内に流し込まれたピストン本体1
2を形成する溶融金属Mの溶湯流により、この酸化被膜
40がリング溝部材14の表面14aから機械的に剥離
される。このため、その後、この溶融金属Mが凝固する
ことにより、図2に示すように、リング溝部材14を酸
化被膜40その他の塵や埃等の不純物が存在しない無垢
の表面をもってピストン本体12に溶着させることがで
き、ピストン本体12と鋳包み材であるリング溝部材1
4との結合強度を向上させて、充分な強度を有する鋳包
み型ピストン10を製造することができる。
【0044】特に、ピストン本体12とリング溝部材1
4とを結合させるために、図9に示す従来技術のよう
に、中間層42を施したり、また、中間層42を形成す
るための異種材料金属を使用する必要がないため、ピス
トン10の製造に手間とコストがかからず、簡易に、か
つ、低コストで強度の高いピストン10を製造すること
ができる。
【0045】なお、ピストン本体12は、本発明におい
ては、後に述べる第2、第3の実施の形態を含め、いず
れの形態においても、アルミニウムやFCD等の金属材
料から形成することができる。即ち、ピストン本体12
を形成する溶融金属Mとしては、アルミニウムやFCD
等を溶融させたものを使用することができ、これによ
り、目的・用途や必要性等に応じて、軽量化や、充分な
強度の向上等を適切に図ることができる。特に、FCD
を使用すると、従来取り立てて鋳包み処理を行っていな
かった鋳鉄から成るピストン10において鋳包みを行う
ことにより、従来技術と比べて、特に、中間層42の形
成(第1の実施の形態や、後述する第3の実施の形態の
場合)や焼入れ等の面倒な熱処理(後述する第2、第3
の実施の形態の場合)を要することなく、ピストン10
の更なる強度の向上を図ることができる。
【0046】もっとも、この場合、前述したように、ピ
ストン本体12を形成する溶融金属Mの種類に応じて、
リング溝部材14の材質も決定することが望ましい。具
体的には、リング溝部材14は、強度・耐摩耗性の向上
のために行うものであることから、ピストン本体12を
アルミニウムから形成する場合には、リング溝部材14
の材料としては、このアルミニウムよりも強度・耐摩耗
性において優れるSNCM、FCDのいずれも使用する
ことができ、ピストン本体12をFCDから形成する場
合には、強度・耐摩耗性の向上という観点からは同じ材
質を鋳包みする技術的意味は少ないことから、リング溝
部材14は、FCDよりも強度、耐摩耗性において優れ
るSNCMを選択することが望ましい。
【0047】次に、本発明のピストンの製造方法の第2
の実施の形態について以下に具体的に述べると、まず、
第1の実施の形態と同様、図3に示すように、リング溝
部材14を、適宜な方法により、予め、ピストン本体1
2とは別に、所定のリング状に形成する。この場合、こ
の第2の実施の形態においては、このリング溝部材14
を、ピストン本体12の溶融金属の凝固後の冷却速度に
合致した焼入れ条件を有する材料から形成する。
【0048】このピストン本体12を形成する溶融金属
の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材料
とは、前述したように、ピストン本体12の凝固後の冷
却速度として設定された、ある冷却速度による冷却で焼
入れ硬化する材料を意味し、凝固後のピストン本体12
の冷却速度との関係で相対的に選択、決定することがで
きる。したがって、このリング溝部材14の材料として
は、充分な耐摩耗性等を有することを前提とした上で、
ピストン本体12の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ
条件を有する材料であれば、種々の材料を使用すること
ができる。
【0049】即ち、各種金属材料は、各材質毎に、その
特性に応じて、焼入れ硬化するための冷却速度が異なる
ため、例えば、ピストン本体12を凝固後強制冷却する
場合には、その設定した強制冷却速度に合致した焼入れ
条件を有する材料を選択し、また、ピストン本体12を
自然冷却する場合には、空冷により焼入れ硬化する材料
を選択して、リング溝部材14を形成することができ
る。換言すれば、このリング溝部材14の材質に応じ
て、凝固後の冷却速度を設定することもできる。
【0050】なお、この場合、この第2の実施の形態に
おいては、鋳包み後のピストン本体12とリング溝部材
14との結合性を考慮して、リング溝部材14の表面
に、図9に示すような中間層42を形成してもよいが、
後述する第3の実施の形態によれば、この中間層42の
形成も不要となる。
【0051】次いで、上記のリング溝部材14を、第1
の実施の形態と同様に、ショットブラスト処理等により
表面14aを清浄する過程を経て、予め用意された所定
の形状の鋳型32内の所定の箇所に配置した上で、図6
に示すように、ピストン本体12を形成する溶融金属M
をこの鋳型32内に流し込む。
【0052】この場合、この第2の実施の形態において
は、この鋳型32内に流し込まれたピストン本体12を
形成する溶融金属Mによりリング溝部材14を加熱した
後、リング溝部材14をピストン本体12を形成する溶
融金属Mが凝固した後に冷却して焼入れする。
【0053】具体的には、例えば、溶融金属Mの鋳型3
2内への流し込み(注湯)後、図8(A)に示すよう
に、この溶融金属Mが凝固した後、図8(B)に示すよ
うに、ピストン10を鋳型32内より直ちに取り出し
て、冷却する。この場合、リング溝部材14は、ピスト
ン本体12の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を
有する材料から形成されているため、このように、ピス
トン本体12を形成する溶融金属Mが凝固した後に冷却
して焼入れすると、鋳包みと同時に適切に焼きを入れて
熱処理を行うことができるため、鋳包み工程とは別に焼
入れ工程を設定する必要がなく、手間や時間、コストの
いずれも削減することができ、簡易に、かつ、低コスト
で、リング溝部16の強度が高いピストン10を製造す
ることができる。
【0054】即ち、本発明では、リング溝部材14とし
てピストン本体12の凝固後の冷却速度に合致した焼入
れ条件を有する材料を使用しているため、鋳包みの際の
融点以上の温度で加熱されて溶融し高温状態にある溶融
金属Mによる加熱を焼入れ処理のための加熱として利用
して、焼入れ硬化させることができ、従来技術のよう
に、鋳包み後、リング溝16部分を別工程で加熱等して
焼入れ処理をするのではなく、鋳包みと同時に焼入れ処
理も行うことができる。
【0055】また、この場合、リング溝部材14をピス
トン本体12が凝固した後に冷却して入れし、リング
溝部材14としてこの凝固後の冷却速度に合致した焼入
れ条件を持つ高強度材を使用しているため、熱処理後の
冷却速度の差により生じる残留応力の発生もある程度抑
制することができると共に、全体で強度を有するリング
溝部材14を使用するため、特にFCDから成るピスト
ン10において焼入れ深さに限界があった従来技術に比
べてリング溝16部分全体の強度を向上させることがで
き、リング溝16の強度を充分に向上させることがで
き、充分な強度を有する鋳包み型ピストン10を製造す
ることができる。
【0056】なお、この場合、ピストン本体12を形成
する金属としては、アルムニウム又はFCDのいずれを
用いても、鋳包みのために溶融させるに際しては、これ
らの金属材料はその融点以上の温度で加熱され、例え
ば、アルミニウムであれば、約700℃以上に、また、
FCDであれば、約1350℃以上に保持されているた
め、充分にリング溝部材14の焼入れのための加熱とし
て利用することができる。
【0057】このピストン本体12の凝固後の冷却及び
リング溝部材14の冷却は、強制冷却により行い、リン
グ溝部材14としてその強制冷却の冷却速度に合致した
焼入れ条件を有する材料から形成することもできるが、
ピストン本体12を自然冷却し、リング溝部材14をこ
のピストン本体12の自然冷却と共に大気放冷して空気
焼入れすることが望ましい。このように、自然冷却によ
る空気焼入れとすると、リング溝部材の焼入れのための
加熱工程は勿論のこと、焼入れのための冷却工程を特別
に行う必要がなくなり、ピストン10の強度をより一層
簡易に向上させることができる。
【0058】このように、リング溝部材14をピストン
本体12の自然冷却と共に焼入れする場合(即ち、リン
グ溝部材14を空気焼入れする場合)には、このピスト
ン本体12の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を
有する材料(即ち、空冷で焼入れ硬化する材料)とし
て、上記のSNCMを使用することができる。リング溝
部材14を、このSNCMから形成すると、SNCM
は、充分な耐摩耗性・強度を有すると同時に、空冷で焼
きが入りピストン本体12の自然冷却と共に空気焼入れ
する場合の凝固後の冷却速度(空冷)に合致した焼入れ
条件を有するため、空冷で適切に焼入れ硬化し、鋳包み
工程とは別に焼入れ工程を設定する必要がなくなると共
に、残留応力の発生も抑制することができ、簡易に、か
つ、低コストで、充分な強度を有するピストン10を製
造することができる。
【0059】従って、この第2の実施の形態において、
リング溝部材14を空気焼入れする場合には、ピストン
本体12を形成する溶融金属Mとして、アルミニウム又
はFCDのいずれを使用する場合であっても、このリン
グ溝部材14の材料としては、SNCMその他の空冷で
焼入れ硬化する材料を使用する。なお、これとは異な
り、ピストン本体12及びリング溝部材14を強制冷却
してリング溝部材14を焼入れする場合には、ピストン
本体12を形成する溶融金属Mとして、アルミニウム、
FCDのいずれを使用する場合にも、第1の実施の形態
と同様にこれらの金属材料よりも耐摩耗性や強度におい
て優れる材料の中から、更に、ピストン本体12の凝固
後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材料を適宜
選択して使用することができる。
【0060】なお、上記では、ピストン本体12の凝固
後直ちに大気放冷して自然冷却により空気焼入れした
が、併せて、内部残留応力を充分に除去するため、臨界
温度以下の温度、即ち、例えば、ピストン本体12を形
成する材料としてFCDを使用した場合には、約500
℃前後で一定時間加熱することにより焼なまし(焼鈍)
して大気放冷することもできる。この場合でも、鋳包み
工程とは別に焼入れ後、焼鈍する場合に比べて、処理工
程が少ない分、簡易にリング溝16の強度が高いピスト
ン10を得ることができる。
【0061】更に、本発明の第3の実施の形態として、
上記の第1と第2の実施の形態を組合せて実施する形態
を挙げることができる。即ち、具体的には、まず、図3
に示すように、リング溝部材14を、第2の実施の形態
と同様に(この第3の実施の形態においても、強制冷
却、自然冷却は問わないが、以下の第3の実施の形態の
説明においては、上記の望ましいといえる自然冷却によ
る空気焼入れを例に挙げて述べる)、例えば、SNCM
等の空冷で焼入れ硬化する材料から、予め別部品として
形成する。次いで、第1の実施の形態と同様に、このリ
ング溝部材14を、ショットブラスト処理等により表面
14aを清浄した後、図4に示すように、表面14aに
不純物が付着しないように直ちに、加熱炉30内に配置
して、リング溝部材14全体が、加熱炉30内温度(上
記の通り、リング溝部材14としてSNCMを使用する
場合には、酸化被膜40を適切に生成、活性させるため
に、望ましくは、350℃から450℃)に均一に加熱
されるまで加熱炉30内に保持することにより、鋳包み
前に予め加熱して、リング溝部材14の表面14aに酸
化被膜40を生成させる。
【0062】その後、第1の実施の形態と同様に、この
リング溝部材14の表面14aに生成された酸化被膜4
0が活性状態にあるうちに、リング溝部材14を、加熱
炉30より取り出し、図5に示すように、予め用意され
た所定の形状の鋳型32内の所定の箇所に直ちに配置
し、上記のように、鋳型32内に配置したリング溝部材
14の表面14aに生成された酸化被膜40が活性状態
にある間に、図6に示すように、ピストン本体12を形
成する溶融金属Mを鋳型32内に流し込む。
【0063】この場合、図7に示すように、第1の実施
の形態と同様、ピストン本体12を形成する溶融金属M
の溶湯流により、この酸化被膜40がリング溝部材14
の表面14aから機械的に剥離され、リング溝部材14
を酸化被膜40その他の塵や埃等の不純物が存在しない
無垢の表面をもってピストン本体12に溶着させること
ができる。
【0064】同時に、この場合、第2の実施の形態と同
様に、この鋳型32内に流し込まれたピストン本体12
を形成する溶融金属Mによりリング溝部材14を加熱
し、その後、図8に示すように、この溶融金属Mが凝固
した後、ピストン10を鋳型32内より直ちに取り出し
て、大気放冷して、このピストン本体12の自然冷却と
共に、加熱されたリング溝部材14を空冷して空気焼入
れする。これにより、第2の実施の形態と同様、空冷で
焼入れ硬化するSNCM等の材料から形成されているリ
ング溝部材14に、鋳包みと同時に適切に焼きを入れて
熱処理を行うことができる。
【0065】以上により、ピストン本体12を形成する
溶融金属Mの溶湯流により酸化被膜40が除去されると
共に鋳包みと同時に適切に熱処理を行うことができるの
で、中間層42の形成や別工程での面倒な熱処理などを
することなく、より一層、簡易に、かつ、低コストで、
図1及び図2に示すピストン本体12とリング溝部材1
4との結合強度及びリング溝部分16の強度が高い充分
な強度を有する鋳包み型ピストン10を製造することが
できる。
【0066】
【実施例】更に、上記の第2の実施の形態によりピスト
ン10を製造した本発明の実施例について説明する。具
体的には、リング溝部材14の材料として、空冷で焼入
れ硬化する材料であるSNCM630H(JIS G
4103の種類記号)を使用し、また、ピストン本体1
2をの材料(溶融金属M)としてFCD500(JIS
G 5502の種類記号)を使用して、上記第2の実
施の形態(自然冷却)により、図1及び図2に示すピス
トン10を製造した。
【0067】その結果、製造されたピストン10の各部
材の硬度(Hv)を測定したところ、FCD500から
形成されたピストン本体12の硬度Hvは250程度で
あった。一方、鋳包み前には硬度Hvが230程度であ
ったSNCM630Hから形成されたリング溝部材14
にあっては、本発明の第2の実施の形態の製造方法によ
り、その硬度Hvが550程度にまで向上した。これに
より、リング溝16部分の強化のために鋳包み工程とは
別に特別に面倒な熱処理をすることなく、ピストン10
のリング溝16部分を強化することができることが確認
された。
【0068】
【発明の効果】本発明によれば、上記のように、リング
溝部材に酸化被膜を生成させ、この酸化被膜が活性状態
にあるうちに直ちに、ピストン本体を形成する溶融金属
を鋳型内に流し込んで鋳包みするため、活性状態にあっ
て脆いリング溝部材表面の酸化被膜が、鋳型内に流し込
まれたピストン本体を形成する溶融金属の溶湯流によ
り、リング溝部材の表面から機械的に剥離されるため、
リング溝部材を酸化被膜等の不純物が存在しない無垢の
表面をもってピストン本体に溶着させることができるの
で、ピストン本体と鋳包み材であるリング溝部材との結
合強度を向上させて、充分な強度を有する鋳包み型ピス
トンを製造することができる実益がある。
【0069】同時に、本発明によれば、上記のように、
特に、ピストン本体とリング溝部材とを結合させるため
に、中間層を施したり、また、中間層を形成するための
異種材料金属を使用する必要がないため、ピストンの製
造に手間とコストがかからず、簡易に、かつ、低コスト
でピストンを製造することができる実益がある。
【0070】更に、この場合、本発明によれば、上記の
ように、酸化被膜の生成を防止、考慮したり、生成され
た酸化被膜を鋳包み工程とは別の工程を設けて除去する
必要がなく、むしろ、鋳包み材であるリング溝部材の表
面に、敢えて酸化被膜を生成させて、この酸化被膜の活
性状態を利用して溶湯流により鋳包みと同時に剥離し、
除去されるため、特に、耐酸化性を有する金属材料や、
不活性ガスなどを使用する必要がないにもかかわらず、
ピストン本体とリング溝部材との間に不純物が介在しな
い結合面を得ることができ、簡易に、かつ、低コスト
で、充分な結合強度を確保することができる実益があ
る。
【0071】加えて、この場合、本発明によれば、上記
のようにリング溝部材を予め加熱してリング溝部材の表
面に酸化被膜を生成させる場合において、このリング溝
部材をSNCMから形成し、このリング溝部材を350
℃から450℃で予熱しているため、酸化被膜を適切に
活性状態とすることができ、この酸化被膜を、ピストン
本体を形成する溶融金属の溶湯流により、リング溝部材
の表面から確実に剥離、除去させることができると共
に、このSNCMは充分な耐摩耗性や強度を有している
ため、充分な強度を有するピストンを製造することがで
きる実益がある。
【0072】また、本発明によれば、上記のように、鋳
包み材であるリング溝部材を、ピストン本体を形成する
溶融金属の凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有
する材料から形成すると共に、溶融しているピストン本
体を形成する高温の溶融金属により加熱した後、冷却し
て焼入れするため、鋳包みと同時に適切に焼きを入れて
熱処理を行うことができるので、鋳包み工程とは別に焼
入れ工程を設定する必要がなく、手間や時間、コストの
いずれも削減することができ、簡易に、かつ、低コスト
で、リング溝部の強度が高いピストンを製造することが
できる実益がある。
【0073】特に、この場合、本発明によれば、上記の
ように、リング溝部材をピストン本体の凝固後に冷却し
て焼入れし、リング溝部材としてこの凝固後の冷却速度
に合致した焼入れ条件を持つ高強度材を使用しているた
め、熱処理後の冷却速度の差により生じる残留応力の発
生もある程度抑制することができると共に、全体で強度
を有するリング溝部材を使用するため、特に鋳鉄から成
るピストンにおいて焼入れ深さに限界があった従来技術
に比べてリング溝部分全体の強度を向上させることがで
き、従って、リング溝の強度を充分に向上させることが
でき、充分な強度を有する鋳包み型ピストンを製造する
ことができる実益がある。
【0074】同様に、この場合において、本発明によれ
ば、上記のように、リング溝部材を空冷で焼入れ硬化す
るSNCMから形成し、リング溝部材をピストン本体の
凝固後、その自然冷却と共に空気焼入れしているため、
空冷で適切に焼きが入るので、鋳包み工程とは別に焼入
れ工程、特に焼入れのための加熱工程は勿論のこと、特
別な冷却工程も設定する必要がなくなると共に、残留応
力の発生も抑制することができ、簡易に、かつ低コスト
で、充分な強度を有するピストンを製造することができ
る実益がある。
【0075】更に、本発明によれば、上記のように、ピ
ストン本体を形成する溶融金属の凝固後の冷却速度に合
致した焼入れ条件を有する材料から形成された鋳包み材
であるリング溝部材の表面に予熱により酸化被膜を生成
させた後、リング溝部材を鋳型内に配置して、リング溝
部材の表面の酸化被膜が活性状態にある間に、鋳型内に
溶融しているピストン本体を形成する高温の溶融金属を
流し込んだ後、リング溝部材をこの溶融金属が凝固した
後に冷却して焼入れするため、溶湯流により酸化被膜が
除去されると共に鋳包みと同時に適切に熱処理を行うこ
とができるので、中間層の形成や別工程での面倒な熱処
理等をすることなく、より一層、簡易に、かつ、低コス
トで、ピストン本体とリング溝部材との結合強度及びリ
ング溝部分の強度が高い充分な強度を有する鋳包み型ピ
ストンを製造することができる実益がある。
【0076】この場合、本発明によれば、上記のよう
に、リング溝部材を空冷で焼入れ硬化するSNCMから
形成し、リング溝部材を、350℃から450℃で予め
加熱してリング溝部材の表面に酸化被膜を生成させると
共に、リング溝部材をピストン本体を形成する溶融金属
の自然冷却と共に冷却して空気焼入れしているため、酸
化被膜を適切に生成させることができると共に、鋳包み
工程とは別途に、焼入れのための加熱、冷却工程を設け
る必要がなく、より一層簡易に充分な強度を有するピス
トンを製造することができる実益がある。
【0077】加えて、本発明によれば、上記のように、
ピストン本体を形成する溶融金属の材料としてFCDを
使用した場合には、特に鋳鉄から成る従来技術のピスト
ンと異なり、リング溝部材の鋳包みを行うことにより、
この従来技術と比べて、中間層の形成や焼入れ等の面倒
な熱処理を要することなく、ピストンの更なる強度の向
上を図ることができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製造されたピストンの
概略斜視図である。
【図2】本発明の製造方法により製造されたピストンの
概略断面図である。
【図3】本発明に用いられるリング溝部材の斜視図であ
る。
【図4】本発明に用いられるリング溝部材を加熱炉によ
り鋳包み前に予め加熱する状態を示す概略図である。
【図5】本発明に用いられるリング溝部材を鋳型内に配
置した状態を示す概略斜視図である。
【図6】本発明に用いられるリング溝部材が配置された
鋳型内にピストン本体を形成する溶融金属を流し込んで
鋳包みする状態を示す概略斜視図である。
【図7】リング溝部材の表面に生成された酸化被膜が剥
離、除去される状態を示す鋳型内の一部断面図である。
【図8】リング溝部材をピストン本体を形成する溶融金
属の凝固と共に冷却して空気焼入れする状態を示した概
略斜視図である。
【図9】従来技術の製造方法により製造されたピストン
の概略断面図である。
【図10】他の従来技術の製造方法により製造されたピ
ストンの概略断面図である。
【符号の説明】
1 ピストンリング 10 ピストン 12 ピストン本体 14 リング溝部材 14a リング溝部材の表面 16 リング溝 30 加熱炉 32 鋳型 40 酸化被膜 42 中間層 M ピストン本体を形成する溶融金属
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16J 1/01 F16J 1/01 9/00 9/00 A

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストンリングが嵌合されるべきリング
    溝部材をピストン本体に鋳包みしてピストンを製造する
    方法において、前記リング溝部材を予め加熱して前記リ
    ング溝部材の表面に酸化被膜を生成させた後、前記リン
    グ溝部材を鋳型内に配置して前記リング溝部材の表面の
    酸化被膜が活性状態にある間に前記ピストン本体を形成
    する溶融金属を前記鋳型内に流し込んで、前記リング溝
    部材が前記ピストン本体により鋳包みされたピストンを
    製造することを特徴とするピストンの製造方法。
  2. 【請求項2】 ピストンリングが嵌合されるべきリング
    溝部材をピストン本体に鋳包みしてピストンを製造する
    方法において、前記ピストン本体を形成する溶融金属の
    凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材料か
    ら形成された前記リング溝部材を鋳型内に配置して前記
    ピストン本体を形成する溶融金属を前記鋳型内に流し込
    み、前記鋳型内に流し込まれた前記ピストン本体を形成
    する溶融金属により前記リング溝部材を加熱した後、前
    記リング溝部材を前記ピストン本体を形成する溶融金属
    が凝固した後に冷却して焼入れして、前記リング溝部材
    が前記ピストン本体により鋳包みされたピストンを製造
    することを特徴とするピストンの製造方法。
  3. 【請求項3】 ピストンリングが嵌合されるべきリング
    溝部材をピストン本体に鋳包みしてピストンを製造する
    方法において、前記ピストン本体を形成する溶融金属の
    凝固後の冷却速度に合致した焼入れ条件を有する材料か
    ら形成された前記リング溝部材を予め加熱して前記リン
    グ溝部材の表面に酸化被膜を生成させた後、前記リング
    溝部材を鋳型内に配置して前記リング溝部材の表面の酸
    化被膜が活性状態にある間に前記ピストン本体を形成す
    る溶融金属を前記鋳型内に流し込み、その後、前記リン
    グ溝部材を前記ピストン本体を形成する溶融金属が凝固
    した後に冷却して焼入れして、前記リング溝部材が前記
    ピストン本体により鋳包みされたピストンを製造するこ
    とを特徴とするピストンの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のピストンの製造方法で
    あって、前記リング溝部材をニッケルクロムモリブデン
    鋼から形成し、前記リング溝部材を、350℃から45
    0℃で予め加熱して前記リング溝部材の表面に酸化被膜
    を生成させることを特徴とするピストンの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項2に記載のピストンの製造方法で
    あって、前記リング溝部材をニッケルクロムモリブデン
    鋼から形成して、前記リング溝部材を前記ピストン本体
    を形成する溶融金属の自然冷却と共に冷却して空気焼入
    れすることを特徴とするピストンの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項3に記載のピストンの製造方法で
    あって、前記リング溝部材をニッケルクロムモリブデン
    鋼から形成し、前記リング溝部材を、350℃から45
    0℃で予め加熱して前記リング溝部材の表面に酸化被膜
    を生成させ、前記リング溝部材を前記ピストン本体を形
    成する溶融金属の自然冷却と共に冷却して空気焼入れす
    ることを特徴とするピストンの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載
    のピストンの製造方法において、前記ピストン本体を形
    成する溶融金属として球状黒鉛鋳鉄を使用することを特
    徴とするピストンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20190073918A (ko) * 2017-12-19 2019-06-27 동양피스톤 주식회사 인서트 링 일체형 피스톤 제조 장치

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