JP4310716B2 - 複合軽金属部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のエンジン用ピストン等の一部に金属繊維材等を複合化する複合軽金属部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金は軽量で熱伝導性が良好なため、自動車用エンジン部品に多く用いられている。
【0003】
例えば、特開昭60−119348号公報には、ディーゼルエンジン用ピストンのピストン頂面に形成される燃焼室を断熱化して熱効率を改善するために、ピストン頂面に0.5mm以下の直径を有するニッケル合金等の金属繊維を含有し、10〜40%の気孔率の予備成形体を複合化する手法が開示されている。また、特開昭59−108849号公報には、ディーゼルエンジン用ピストンのピストン頂面に形成されるホットスポット部の耐熱衝撃性や耐熱疲労性を改善するために、プラズマ等を用いて再溶融処理することにより組織を微細化させる手法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示すように、ディーゼルエンジンが高出力化される程、ディーゼルエンジン用ピストンの頂面部に形成される燃焼室には、高サイクル疲労として爆発力が燃焼室を拡げるように作用することにより選択的にピストンピン側に引張応力F1が繰り返し作用する。また、燃焼室は300℃程度に加熱されるが、爆発により燃焼室が拡径方向に膨張しようとしても周囲温度がそれほど高くないためその膨張が規制されて逆にピストンピンに直交する方向に圧縮応力F2が作用し、この圧縮応力F2により熱疲労として円周方向の部位K1に圧縮応力F3が繰り返し作用する。そして、高サイクル疲労に対して引張強度、熱疲労に対して伸びが夫々不足していると、特にピストンピンにより径方向への動きが規制されたピストンピンに直交する部位K1に亀裂が生じる虞がある。
【0005】
そして、燃焼室の高サイクル疲労や熱疲労に対して強度を高めるためには、上記従来技術に実施例として開示されたような0.2mm程度の太いステンレス鋼等の金属繊維材を複合化させたり、カーボン繊維等をピストン軸方向と径方向に配向させたり、再溶融処理により組織を微細化させただけでは、特に高温下で高サイクル疲労強度や熱疲労強度を高めるのに十分とは言えない。
【0006】
本発明は、熱疲労に対して伸び特性の高い複合軽金属部材の製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明の複合軽金属部材の製造方法は、金属繊維材を含有する複合化用予備成形体を型内に配置させ、軽金属材料からなる溶湯を型内に充填することにより複合化用予備成形体に含浸充填させて複合軽金属部材を複合化させ、前記複合化した部位のうち、少なくとも熱疲労強度を要する部位に溶体化処理を施し、前記溶体化処理を施した部位に前記金属繊維材を含めて過時効処理を施す。
【0008】
また、好ましくは、前記溶体化処理及び過時効処理が施される部位は、該複合軽金属部材に熱応力が作用することにより圧縮応力が作用する部位である。
【0009】
また、好ましくは、前記複合化用予備成形体は略環状である。
【0010】
また、好ましくは、前記軽金属材料はアルミニウム合金であり、500〜510℃で3〜6時間溶体化処理を行う。
【0011】
また、好ましくは、前記軽金属材料はアルミニウム合金であり、220〜300℃で4〜12時間過時効処理を行う。
【0012】
また、好ましくは、前記過時効処理前後に再溶融処理を行う。
【0013】
また、好ましくは、前記金属繊維はステンレス繊維である。
【0014】
また、好ましくは、前記複合化用予備成形体は自動車のエンジン用ピストン頂部に形成される燃焼室のリップ部に複合化され、前記熱疲労強度はピストンピンに直交する部位に作用する熱応力に対する強度である。
【0015】
また、本発明の複合軽金属部材の製造方法は、金属繊維材を含有する略環状の自動車のエンジン用ピストン頂部に形成される燃焼室のリップ部に複合化される複合化用予備成形体を型内に配置させ、アルミニウム合金材料からなる溶湯を型内に充填することにより複合化用予備成形体に含浸充填させて複合軽金属部材を複合化させ、前記複合化した部位のうち、少なくともピストンピンに直交する部位に作用する熱応力に対する熱疲労強度を要する部位に500〜510℃で3〜6時間溶体化処理を施し、前記溶体化処理を施した部位に前記金属繊維材を含めて220〜300℃で4〜12時間過時効処理を施す。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、軽金属材料からなる溶湯を型内に充填することにより複合化用予備成形体に含浸充填させて複合軽金属部材を複合化させ、複合化した部位のうち、少なくとも熱疲労強度を要する部位に溶体化処理を施し、溶体化処理を施した部位に金属繊維材を含めて過時効処理を施すことにより、熱疲労に対して伸び特性を高めることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、溶体化処理及び過時効処理が施される部位は、該複合軽金属部材の熱膨張が規制されることにより熱応力が作用する部位であることにより、熱疲労強度が要求される部位を高めることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、複合化用予備成形体は略環状であることにより、引張強度を高めつつ、熱疲労強度の向上を図ることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、軽金属材料はアルミニウム合金であり、500〜510℃で3〜6時間溶体化処理を行うことにより、軽量で安価な合金に対して熱疲労強度を高めることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、軽金属材料はアルミニウム合金であり、220〜300℃で4〜12時間過時効処理を行うことにより、軽量で安価な合金に対して伸びを高めることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、過時効処理前後に再溶融処理を行うことにより、更に伸びを高めることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、金属繊維はステンレス繊維であることにより、部材コストを安価にできる。
【0026】
請求項8の発明によれば、複合化用予備成形体は自動車のエンジン用ピストン頂部に形成される燃焼室のリップ部に複合化され、熱疲労強度はピストンピンに直交する方向に作用する熱応力に対する強度であることにより、リップ部の熱疲労に対して伸びを高めて、エンジンの高出力化を図ることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、アルミニウム合金材料からなる溶湯を型内に充填することにより複合化用予備成形体に含浸充填させて複合軽金属部材を複合化させ、複合化した部位のうち、少なくともピストンピンに直交する部位に作用する熱応力に対する熱疲労強度を要する部位に500〜510℃で3〜6時間溶体化処理を施し、溶体化処理を施した部位に前記金属繊維材を含めて220〜300℃で4〜12時間過時効処理を施すことにより、引張強度を高めつつ、熱疲労強度の向上を図ることができ、軽量で安価な合金に対して熱疲労強度を高めることができ、リップ部の熱疲労に対して伸びを高めて、エンジンの高出力化を図ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
[複合軽金属部材]
図1は、本実施形態の複合化されたディーゼルエンジン用ピストンの部分断面図である。
【0032】
図1に示すように、本発明の複合軽金属部材として例示されたアルミニウム合金製ピストン1(以下、ピストン1と略称)は後述する気体加圧鋳造装置により製造され、ピストン本体2の外周部には、トップリングを嵌装するトップリング溝3と、セカンダリリングを嵌装するセカンダリリング溝4と、オイルリングを嵌装するオイルリング溝5とが夫々形成されている。また、ピストン1は直噴式ディーゼルエンジン用であり、ピストン頂面部には軸心部分が突出され、この軸心を中心に環状に一様に所定形状の溝が形成された燃焼室30が形成されている。また、燃焼室30には、その開口端縁が軸心方向にわずかに突設された燃焼室30への出入口を規定する環状のリップ部31が形成されている。ピストン1には、直径方向に沿ってピストン本体2を貫通するピストンピン挿入孔8が形成されている。
【0033】
ピストン1のトップリング溝3は、後述のように複合化部6として環状の複合化用予備成形体と一体的に複合化され、ピストン1のリップ部31も後述のように複合化部32として環状の複合化用予備成形体と一体的に複合化され、トップリング溝3とリップ部31以外のピストン本体2はアルミニウム合金によって鋳造される。
【0034】
トップリング溝3の複合化部6は、ニッケル多孔体(住友電工製セルメット:体積率=約5%、平均気孔径0.8mm)から構成された複合化用予備成形体を型内に配置してアルミニウム合金溶湯を含浸させて凝固させることにより形成される。
【0035】
リップ部31の複合化部32は、ステンレス等からなる金属繊維材を含有する複合化用予備成形体を型内に配置してアルミニウム合金溶湯を含浸させて凝固させることにより形成される。金属繊維材は10〜100μmの繊維径、好ましくは10〜70μmの繊維径を有し、アスペクト比(繊維長/繊維径)が1000以上の長繊維で、3〜35%の体積率、好ましくは10〜25%の体積率を有する。
【0036】
尚、トップリング溝3の複合化部6を金属繊維材を含有する複合化用予備成形体により複合化してもよい。
【0037】
また、金属繊維材としてはステンレス以外に、タングステン、モリブデン、炭素鋼等もあるが、ステンレス繊維材が最も強度が高くしかも安価なので実用的である。
[気体加圧鋳造装置]
上記ピストン1は、図2及び図3に示す気体加圧鋳造装置により製造される。
図2及び図3は本実施形態の気体加圧鋳造装置の互いに直交する方向の概略断面図である。
【0038】
図2及び図3に示すように、本実施形態の気体加圧鋳造装置10は、鋳型11として左右に分割される割型である外型12L、12Rと、下方に配置された中型13と、上方に配置された押湯部14aを有する上型14とを備え、内部に製品部キャビティ15が形成されている。この鋳型11内のトップリング溝3に対応する部位に図6に示す複合化用予備成形体7、リップ部31に対応する部位に図7に示す複合化用予備成形体33が夫々配置され、上型14に形成された押湯部14aには、エアによる加圧をこの押湯部14aから行なう場合のパイプ16が取り付けられている。17はピストンピン挿入孔を形成する鋳抜きピンである。
【0039】
また、外型12L、12Rは外型用シリンダ18L、18Rによって、中型13は中型用シリンダ19によって、上型14は上型用シリンダ20によってそれぞれ駆動可能とされる。
【0040】
パイプ16の途中には、押湯部14aを加圧エア源と大気とに選択的に連通させるバルブ27が設けられ、押湯部14aをバルブ27を通じて大気に開放した状態で、湯口22からアルミニウム合金の溶湯を注湯後、水冷銅塊28のような冷却機構を設けたカバー23を下げて湯口22を密閉すると同時に、バルブ27を操作してパイプ16を加圧エア源に連通させ、パイプ16から、工場エアを注入して溶湯を加圧するようにすればよい。この構成では複合化部付近を効果的に加圧できる利点がある。
【0041】
尚、25は湯口22から製品部キャビティ15に通じる湯道、26はピストン内に冷却用オイル通路を形成するために、図示しない支持手段により支持されて配置された塩中子である。
【0042】
以上の構成において、湯口22からアルミニウム合金(例えば、JIS規格のAC8A)の溶湯を注湯後、カバー23を下げて湯口22を密閉すると同時に、カバー23に設けられたパイプ16から10気圧以下(例えば、0.5〜10kg/cm2)の圧力を有する工場エアを注入して溶湯を約50秒〜1分間加圧する。このエアによる加圧時には、エア抜き溝21内に溶湯の一部が流れ込み、エア抜き溝21内で冷却凝固されて、エア抜き溝21がシールされる。そして、エア抜き溝21内で凝固した溶湯は、鋳型11の分割に伴ってバリとして除去される。尚、上記エアによる加圧は、注湯後10〜30秒以内に開始する必要があるが、この時間範囲は、一般的には、溶湯凝固前の有効に圧力がかけられる時間範囲に設定すればよい。
[上型の詳細構成]
図4及び図5は、上型14の詳細構成を示す断面図である。
【0043】
図5に示すように、上型14の下端面に突出部14bを形成し、この突出部14bの高さを複合化用予備成形体33の厚さに設定することにより、複合化用予備成形体33の位置決めができる。ところが、図5の構成では、複合化用予備成形体33が上型14の突出部14bに当接しているために含浸されるアルミニウム合金溶湯が冷却され易く、複合化が悪いという欠点もある。そこで、図4に示すように、複合化用予備成形体7と複合化用予備成形体33とをキャビティ内で重ね合わせて配置することにより冷却を抑制でき、またエア抜き溝21の代わりに、外型12L又は12Rと上型14との分割面からエア抜きできる。
[複合化予備成形体]
図6は、トップリング溝3に複合化される複合化予備成形体の外観図である。図7はリップ部31に複合化される複合化予備成形体の外観図であり、金属繊維材の配向方向を示す図である。
【0044】
図6に示すように、トップリング溝3に複合化される複合化予備成形体7は、単なる環状のニッケル多孔体(住友電工製セルメット:体積率=約5%、平均気孔径0.8mm)である。
【0045】
図7に示すように、リップ部31に複合化される複合化用予備成形体33は、環状の金属繊維材の集合体を一方向(ピストン軸心方向)に圧縮して少なくとも2次元の方向性を持たせる。即ち、図7の矢印で示すように、金属繊維材の繊維配向方向が、リップ部31の高サイクル疲労として爆発時に選択的にピストンピン側に作用する引張応力F1や熱疲労として爆発によりピストンピンに直交する円周方向に作用する圧縮応力F3等の作用方向(図8参照)に並列に配向され、金属繊維材の繊維配向方向が環状方向に配向されている。
【0046】
トップリング溝3及びリップ部31は後加工で切削されるので、複合化用予備成形体7、33は単に環状であれば十分である。
【0047】
複合化用予備成形体33は、ステンレス、タングステン、モリブデン、炭素鋼等からなる金属繊維材を含有し、10〜100μmの繊維径、好ましくは10〜70μmの繊維径を有し、アスペクト比(繊維長/繊維径)が1000以上で、3〜35%の体積率、好ましくは10〜25%の体積率を有する。
【0048】
尚、複合化用予備成形体33として、ステンレス、タングステン、モリブデン、炭素鋼等からなる金属繊維材とアルミナ短繊維材等からなるセラミック繊維材とを混成した複合体を用いることもできる。
[複合軽金属部材の引張強度]
図9はステンレス繊維の繊維径と複合化されたリップ部の高温引張強度との関係を示す図である。図10はステンレス繊維材の繊維体積率と複合化されたリップ部の高温引張強度との関係を示す図である。図11は、アルミニウム合金のみの鋳造品、繊維径の異なる2種類のステンレス繊維を複合化した部材、アルミナ繊維を複合化した部材の夫々の高温引張強度について繊維体積率に基づいて比較して示す図である。図12は、アルミニウム合金のみの鋳造品、繊維径の異なる2種類のステンレス繊維を複合化した部材、アルミナ繊維を複合化した部材の夫々の高温疲労強度について繊維体積率に基づいて比較して示す図である。
【0049】
図9に示すように、繊維体積率が10%の金属繊維材で、10〜100μmの繊維径のステンレス繊維材を含有する複合化予備成形体を複合化させた場合、300℃での複合部材の引張強度が約80〜130MPaとなり、好ましくは10〜70μmの繊維径のステンレス繊維材を含有する複合化予備成形体で300℃での引張強度が約110〜130MPaと高い強度を保持でき、繊維径が小さい程高サイクル疲労強度を向上できる。
【0050】
また、図10に示すように、繊維径が12μmのステンレス繊維材で、3〜35%の繊維体積率のステンレス繊維材を含有する複合化予備成形体を複合化させた場合、300℃での複合部材の引張強度が約90〜250MPa以上となり、好ましくは10〜25%の繊維体積率のステンレス繊維材を含有する複合化予備成形体で300℃での引張強度が約120〜230MPaとなるため、繊維体積率が大きくなるほど高サイクル疲労強度を向上できる。
【0051】
例えば、図11に示すように、繊維径が12μmで、3〜20%の繊維体積率のステンレス繊維材を含有する複合化予備成形体を複合化させた複合部材は、アルミニウム合金のみの鋳造品にJISのT6熱処理を施したもの、アルミナ短繊維を複合化させたもの、繊維径が150μmのステンレス繊維材を複合化させたものと比較しても300℃での引張強度が優れており、繊維体積率が大きくなる程高サイクル疲労強度が向上できることは明らかである。
【0052】
また、図12に示すように、繊維径が12μmで、3〜20%の繊維体積率のステンレス繊維材を含有する複合化予備成形体を複合化させた複合部材は、アルミニウム合金のみの鋳造品にJISのT6熱処理を施したもの、アルミナ短繊維を複合化させたもの、繊維径が150μmのステンレス繊維材を複合化させたものと比較しても300℃での高温疲労強度が優れており、繊維体積率が大きくなる程高温疲労強度が高くなる。
[複合軽金属部材の熱処理]
上記図2及び図3に示す気体加圧鋳造装置によりピストン本体2のトップリング溝3とリップ部31に複合化用予備成形体7、33を複合化させた(鋳ぐるんだ)複合アルミニウム合金部材は、熱疲労強度を高めるために後述する熱処理が施される。
【0053】
図13は、複合アルミニウム合金部材の熱処理手順を示す図である。図14は、複合アルミニウム合金部材の熱処理条件を示す図である。図15は、熱処理温度により変化するアルミニウム合金と複合アルミニウム合金の伸び特性を比較して示す図である。
【0054】
従来のように、ニッケル多孔体が複合化されたアルミニウム合金部材は、JIS規格のT6熱処理として、加熱炉に投入して温度500°Cで4.5時間加熱することにより、ニッケル多孔体とアルミニウム合金との境界に金属間化合物層を生成させると共に、アルミニウム合金部材に溶体化処理を施した後、水焼入れを行ない、さらに温度180°Cで5時間焼戻し処理を施している。
【0055】
そして、T6熱処理の施された複合アルミニウム合金部材に対して、機械切削加工を行なって、複合化部を含むピストン本体2の外周面を切削するとともに、図1に示すように、複合化部6にトップリング溝3を形成し、且つセカンダリリング溝4およびオイルリング溝5を形成している。
【0056】
この従来に対して、本実施形態では、図15に示すように、T6熱処理よりも優れた伸び特性を得て、複合化されたアルミニウム合金の熱疲労強度を高めるために、例えば図13の方法及び図14の熱処理条件で、複合化されないアルミニウム合金部(或いは複合化部に比べて合金割合が大きい部分)或いは複合化部のうち、少なくともリップ部のピストンピンに直交する方向に圧縮応力F3が作用する部位(熱疲労強度を要する部位)に500〜510℃で3〜6時間溶体化処理(焼入れ処理)を施し、溶体化処理を施した部位にステンレス繊維材を含めて220〜300℃で4〜12時間過時効処理を施している。過時効処理とは、T6熱処理温度(180℃)より高温で焼き戻しする処理であり、材料が軟化して伸び特性を高くできる。
【0057】
過時効処理を施すことにより、複合化されない合金部位(或いは複合化部位に比べて合金割合が大きい部分)と複合化部位の伸び特性(例えば、JIS規格2241の伸び試験に準拠)が共に高められ、図16に示すようにT6熱処理を施したものよりも熱疲労寿命が高くなると共に、図17に示すように高温域では高サイクル疲労強度がT6熱処理を施したものと同等かそれ以上の強度を保持できる。
【0058】
更に、図18及び図19に示すように、複合化されない合金部位(或いは複合化部位に比べて合金割合が大きい部分)や複合化部位のうち、熱疲労強度を要する部位に過時効処理前後に再溶融処理(リメルト処理)を施すことにより、室温ではT6熱処理した部材に比べて高サイクル疲労強度が格段に向上し、300℃でもT6熱処理した部材と略同等の高サイクル疲労強度を得ることができる。
【0059】
図20〜図22は本実施形態の複合化及び熱処理の趣旨を説明する図である。図23は、図22のA−A断面図である。
【0060】
本実施形態の熱処理方法をまとめると下記▲1▼〜▲3▼のようになる。即ち、
▲1▼図20に示すように、ピストン1のリップ部31の少なくともピストンピン方向を複合化し(環状に複合化してもよい)、且つ過時効処理することにより、金属繊維材がなまされて(軟化されて)ピストンピン方向の変形を許容し、高サイクル疲労強度が高められる。
【0061】
▲2▼図21に示すように、ピストン1のリップ部31の少なくともピストンピン方向を複合化し(環状に複合化してもよい)、ピストンピンに直交する方向を再溶融処理することにより、合金部分の結晶粒が細かくなって伸び特性が増加することから熱疲労強度が高められる。
【0062】
▲3▼図22ピストン1のリップ部31の少なくともピストンピン方向を複合化し(環状に複合化してもよい)、ピストンピンに直交する方向を再溶融処理し、更に過時効処理することにより(過時効処理後に再溶融処理してもよい)、合金部分の結晶粒が細かくなって伸び特性が増加することから熱疲労強度が高められ、金属繊維材がなまされてピストンピン方向の変形を許容し、高サイクル疲労強度が高められる。
【0063】
尚、上記▲2▼、▲3▼において部分的に再溶融処理を行う場合に、図23に示すように、再溶融処理部が複合化部32と重なる部分は複合化部32が再溶融部分の下方に入り込むように斜めに配置することで広い範囲で伸び特性を高くできる。
【0064】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明により製造される複合アルミニウム合金部材は、上述した実施の形態のようなディーゼルエンジン用ピストンに限られず、ベアリングキャップ、コンロッド、シリンダヘッドの製造にも勿論適用できる。また、本発明によれば、アルミニウム合金以外に、例えばマグネシウム合金等の他の軽合金鋳物も製造可能である。
【0065】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の複合化されたディーゼルエンジン用ピストンの部分断面図である。
【図2】本実施形態の気体加圧鋳造装置の互いに直交する方向の概略断面図である。
【図3】本実施形態の気体加圧鋳造装置の互いに直交する方向の概略断面図である。
【図4】上型14の詳細構成を示す断面図である。
【図5】上型14の詳細構成を示す断面図である。
【図6】トップリング溝3に複合化される複合化予備成形体の外観図である。
【図7】リップ部31に複合化される複合化予備成形体の外観図であり、金属繊維材の配向方向を示す図である。
【図8】ディーゼルエンジン用ピストンの燃焼室に作用する引張応力F1や拡大応力及び収縮応力F2を説明する図である。
【図9】ステンレス繊維の繊維径と複合化されたリップ部の高温引張強度との関係を示す図である。
【図10】ステンレス繊維材の繊維体積率と複合化されたリップ部の高温引張強度との関係を示す図である。
【図11】アルミニウム合金のみの鋳造品、繊維径の異なる2種類のステンレス繊維を複合化した部材、アルミナ繊維を複合化した部材の夫々の高温引張強度について繊維体積率に基づいて比較して示す図である。
【図12】アルミニウム合金のみの鋳造品、繊維径の異なる2種類のステンレス繊維を複合化した部材、アルミナ繊維を複合化した部材の夫々の高温疲労強度について繊維体積率に基づいて比較して示す図である。
【図13】複合アルミニウム合金部材の熱処理手順を示す図である。
【図14】複合アルミニウム合金部材の熱処理条件を示す図である。
【図15】熱処理温度により変化するアルミニウム合金と複合アルミニウム合金の伸び特性を比較して示す図である。
【図16】時効温度と熱疲労寿命との関係を示す図である。
【図17】高サイクル疲労強度と熱処理温度との関係を示す図である。
【図18】室温でのT6熱処理部材と再溶融処理部材との高サイクル疲労寿命を比較して示す図である。
【図19】300℃でのT6熱処理部材と再溶融処理部材との高サイクル疲労寿命を比較して示す図である。
【図20】本実施形態の複合化及び熱処理の概念を説明する図である。
【図21】本実施形態の複合化及び熱処理の概念を説明する図である。
【図22】本実施形態の複合化及び熱処理の概念を説明する図である。
【図23】図22のA−A断面図である。
【符号の説明】
1…アルミニウム合金製ピストン
2…ピストン本体
3…トップリング溝
6、32…複合化部
7、33…複合化用予備成形体
11…鋳型
12L、12R…外型
12b、14a…押湯部
14…上型
15…製品部キャビティ
16…パイプ
21、24…エア抜き溝
22…湯口
23…カバー
30…燃焼室
31…リップ部
Claims (9)
- 金属繊維材を含有する複合化用予備成形体を型内に配置させ、軽金属材料からなる溶湯を型内に充填することにより複合化用予備成形体に含浸充填させて複合軽金属部材を複合化させ、
前記複合化した部位のうち、少なくとも熱疲労強度を要する部位に溶体化処理を施し、
前記溶体化処理を施した部位に前記金属繊維材を含めて過時効処理を施すことを特徴とする複合軽金属部材の製造方法。 - 前記溶体化処理及び過時効処理が施される部位は、該複合軽金属部材に熱応力が作用する部位であることを特徴とする請求項1に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 前記複合化用予備成形体は略環状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 前記軽金属材料はアルミニウム合金であり、500〜510℃で3〜6時間溶体化処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 前記軽金属材料はアルミニウム合金であり、220〜300℃で4〜12時間過時効処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 前記過時効処理前後に再溶融処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 前記金属繊維はステンレス繊維であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 前記複合化用予備成形体は自動車のエンジン用ピストン頂部に形成される燃焼室のリップ部に複合化され、前記熱疲労強度はピストンピンに直交する部位に作用する熱応力に対する強度であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合軽金属部材の製造方法。
- 金属繊維材を含有する略環状の自動車のエンジン用ピストン頂部に形成される燃焼室のリップ部に複合化される複合化用予備成形体を型内に配置させ、アルミニウム合金材料からなる溶湯を型内に充填することにより複合化用予備成形体に含浸充填させて複合軽金属部材を複合化させ、
前記複合化した部位のうち、少なくともピストンピンに直交する部位に作用する熱応力に対する熱疲労強度を要する部位に500〜510℃で3〜6時間溶体化処理を施し、
前記溶体化処理を施した部位に前記金属繊維材を含めて220〜300℃で4〜12時間過時効処理を施すことを特徴とする複合軽金属部材の製造方法。
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