JPH11225455A - 回転電機の固定子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】固定子鉄心押え板の温度上昇を抑制しながら、
コストダウンを可能にする回転電機の固定子を提供する
ことを目的とする。 【解決手段】端絡環１と端絡環２を導棒４で接続したシ
ールド装置１０ｂを固定子鉄心押え板９の軸方向端面に
配置する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は回転電機の固定子に
関するものであり、特に、固定子鉄心を締め付け固定す
るために固定子鉄心の軸方向端部に設けられた固定子鉄
心押え板の温度上昇を抑制する固定子端部構造に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】一般に、回転電機の固定子鉄心は薄鉄板
を積層して形成され、これらを固定子鉄心押え板を用い
て、固定子枠に締め付け固定されている。

【０００３】ところで、この固定子鉄心押え板が設けら
れている固定子鉄心端部付近は、界磁起磁力および電機
子起磁力による漏れ磁束が複雑な形で存在し、軸方向磁
束が鉄心端面に入射する。したがって、軸方向入射磁束
によって、鉄心端部の歯部の端面には渦電流が流れ、固
定子鉄心端部に渦電流損が発生し、局部的な加熱を引き
起こしている。そこで、これを極力小さくするため、鉄
心端部の歯部の端面にはスリットが設けられている。ま
た、径方向および軸方向の入射磁束の集中を緩和するた
めに、鉄心端部の歯部先端には段落しが設けられてい
る。

【０００４】一方、固定子鉄心を固定子枠に固定するた
め設けられた固定子鉄心押え板は機械的強度の点から、
一般に鉄の塊で製作する。しかし、軸方向入射磁束によ
って、固定子鉄心押え板の端面には渦電流が流れ、局部
的な加熱が生じる。そこで、固定子鉄心押え板の端面に
銅の遮蔽板を設け、固定子鉄心押え板の端面に入射する
磁束を減衰させている。遮蔽板の例として、特開平6−2
92334 号公報や実開昭56−63245 号公報に記載されてい
るものがある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、銅製
の遮蔽板を固定子鉄心押え板の端面に設け、固定子鉄心
押え板の端面に入射する磁束を減衰させるもので、固定
子鉄心押え板に磁束が入射しないように遮蔽板表面には
渦電流が流れる。遮蔽板は、中心孔を有する円筒形の銅
板を固定子鉄心押え板の端面形状に合わせて加工したも
ので、固定子鉄心押え板より抵抗が小さいため、渦電流
損も小さくなり、固定子端部の加熱を緩和することがで
きる。しかし、この遮蔽板の周方向に流れる渦電流は、
遮蔽板の極内径側と極外径側に集中して流れ、遮蔽板中
央にはほとんど流れないため、円筒形の銅板にする必要
性がないことを見い出した。

【０００６】また、固定子鉄心押え板に入射する磁束
は、軸方向の端部側から入射する磁束が主であるが、固
定子端部付近の磁束の流れは複雑であるため、その他の
方向から入射する成分も存在すること、遮蔽板により軸
方向端部側から入射する磁束は減衰するものの、零にな
るわけではないことから、固定子鉄心押え板にも渦電流
が流れ、加熱される。

【０００７】一般に、回転電機では固定子及び回転子の
温度が高くならないように、回転子端部にファンを設
け、機内の空気または水素等を循環させて冷却してい
る。しかし、現行構造では固定子鉄心押え板の軸方向端
面を遮蔽板で覆ってしまうため、固定子鉄心押え板には
風があたらず、温度を下げることが困難であった。

【０００８】本発明の目的は、固定子鉄心押え板の軸方
向端面を覆うことなく、固定子鉄心押え板に入射する磁
束を減衰させると共に、コスト低減に効果がある回転電
機の固定子を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、鉄心歯部と鉄心背部によって構成されて
いる固定子鉄心と固定子鉄心を締め付け固定する固定子
鉄心押さえ板と固定子巻線から成る回転電機の固定子に
おいて、前記固定子鉄心押え板の軸方向端面に、複数の
導体の環を設け、該複数の導体の環を複数の導棒で接続
したことを特徴とするものである。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を用
いて詳細に説明する。

【００１１】図１に本発明の一実施例を示す回転電機の
固定子端部縦断面について、図２に本発明に関わる図１
のシールド装置の斜視図、図３に従来構造の固定子端部
縦断面、図４に遮蔽板に流れる渦電流、図５に回転電機
の端部における風の流れを示す。

【００１２】回転電機は固定子５と回転子６から成り、
例えば、タービン発電機のような円筒形回転子ではシャ
フト，界磁極および鉄心を一塊の鍛鋼から製作し、回転
子６のスロット内に界磁巻線１５を分布巻にして納め
る。この界磁巻線１５は胴部では回転子ウェッジ（図示
せず）で保持され、端部では保持環１４によって支持さ
れている。

【００１３】一方、固定子５の鉄心７は０.５mm 程度の
けい素鋼板を積層して形成され、エンドフィンガー１
３，固定子鉄心押え板９を介し、締め付けボルト８を用
いて固定されている。また、固定子鉄心７の内径側には
スロットが設けられ、電機子巻線１１および１２が納め
られている。

【００１４】ところで、この固定子鉄心押え板９が設け
られている固定子鉄心端部付近は、界磁起磁力および電
機子起磁力による漏れ磁束１６が複雑な形で存在し、軸
方向磁束が鉄心端面に入射する。固定子鉄心を固定子枠
に固定するため設けられた固定子鉄心押え板９は機械的
強度の点から、一般に鉄の塊で製作されるが、軸方向に
入射する漏れ磁束１６によって、固定子鉄心押え板９の
端面には渦電流が流れ、局部的な加熱が生じる。

【００１５】そこで、図３に示すように、従来は固定子
鉄心押え板９の端面に銅の遮蔽板１０ａを設け、固定子
鉄心押え板９の端面に入射する磁束１６を減衰させてい
る。この遮蔽板１０ａは固定子鉄心押え板９の端面形状
に合わせて作られ、固定子鉄心押え板９を全周にわたっ
て覆っている。

【００１６】固定子鉄心押え板に入射する磁束１６の流
れは複雑であるが、主に軸方向端部側から入射する。図
３に示したように、漏れ磁束１６が軸端部側から軸胴部
側に入射しようとする磁束（矢印１７）であるとする
と、遮蔽板１０ａには磁束１６を遮蔽するように渦電流
１８が流れる。

【００１７】図４は遮蔽板１０ａに流れる渦電流１８，
２１を示したものである。磁束１６を遮蔽するように遮
蔽板１０ａに渦電流１８，２１が流れるため、渦電流１
８，２１の流れは図４に示したようになる。すなわち、
遮蔽板１０ａを周方向に流れる渦電流１８，２１は遮蔽
板１０ａの極内径側と極外径側だけであり、遮蔽板１０
ａの中央部において周方向に流れる渦電流１８，２１は
ほとんど無く、漏れ磁束１６を遮蔽するためのシールド
装置１０は板状にする必要性がないことを見い出した。
なお、図４は２極機の場合について示した図であり、渦
電流１８と渦電流２１の流れる方向が逆になっている。

【００１８】したがって、図１に示したように、渦電流
１８が周方向に集中して流れる位置に端絡環１と２を配
置して、端絡環１と端絡環２を導棒４で接続し、かご形
状のシールド装置１０ｂにする。なお、シールド装置１
０ｂを構成する端絡環１，２および導棒４は渦電流が流
れるように金属で作る必要がある。このかご形状のシー
ルド装置１０ｂの斜視図が図２であり、このような構造
にすれば、渦電流１８が流れる回路としては現行構造と
同じである。したがって、シールド装置１０ｂに使用す
る材料は現行構造の遮蔽板１０ａより大幅に削減するこ
とができる。

【００１９】また、図５に示したように、回転電機では
固定子５及び回転子６の温度が高くならないように、回
転子端部にファン１９を設け、機内の空気または水素等
を循環させて冷却している。（風向きの一例が２２であ
る。）しかし、現行構造では固定子鉄心押え板９の軸方
向端面を遮蔽板１０ａで覆ってしまうため、固定子鉄心
押え板９には風があたらず、冷却が困難であった。しか
し、シールド装置１０をかご形状のシールド装置１０ｂ
のような形状にすれば、固定子鉄心押え板９の軸方向端
面を覆っていないため、通風により固定子鉄心押え板９
を冷却することができる。

【００２０】したがって、本発明によれば、固定子鉄心
押え板９の加熱を抑制すると共に、現行構造のマシンよ
り安価にすることができる。

【００２１】図６に本発明の他の実施例を示す回転電機
の固定子端部縦断面について、図７に本発明に関わる図
６のシールド装置の斜視図を示す。図１のように、端絡
環１と端絡環２を直接、導棒４で接続すると導棒４が長
くなり、機械的強度の面から問題となると共に、電機子
巻線底コイル１１のコイルエンドで導棒４が邪魔になる
可能性がある。

【００２２】このような場合は、図６および図７に示し
たように、端絡環１と端絡環２との間にサポートリング
３を設け、端絡環１とサポートリング３，端絡環２とサ
ポートリング３をそれぞれ導棒４で接続すればよい。

【００２３】このような構造にすれば、機械的強度が増
すと共に、固定子鉄心押え板９の端面に合わせた形状に
できるため、電機子巻線底コイル１１のコイルエンドで
邪魔になることはない。このようなシールド装置１０ｂ
を固定子端部に設けたときの効果は、図１の場合と同様
である。

【００２４】図８に本発明の他の実施例を示す回転電機
の固定子端部縦断面を示す。容量の大きい回転電機で
は、固定子鉄心押え板９の縦断面は図１に示したように
Ｔ形となるが、容量の小さいマシンでは図８に示したよ
うな形状となる。このような場合においても、端絡環１
と２を配置して、端絡環１と端絡環２を導棒４で接続
し、かご形状のシールド装置１０ｂを設ければよいのは
いうまでもない。

【００２５】なお、先に述べたように、かご形状のシー
ルド装置１０ｂを構成する端絡環１，２および導棒４は
金属であればよいが、鉄（鋼）やアルミ（アルミ合金）
などよりも導電率の高い銅（銅合金）でシールド装置１
０ｂを製作すれば、渦電流損が減少し、シールド装置１
０ｂの温度上昇が小さくなる。

【００２６】また、渦電流１８はかご形状のシールド装
置１０ｂを構成する短絡環１，２および導棒４の表面を
流れるのだから、短絡環１，２および導棒４を中が空洞
の管状のものにしても損失が増えることはない。また、
このように短絡環１，２および導棒４を管状のもので製
作すれば、水などのような冷却媒体を短絡環１，２およ
び導棒４中に流すことが可能となるため、シールド装置
１０ｂの冷却がよくなる。

【００２７】

【発明の効果】上述のように、本発明によれば、現行構
造よりも使用する材料を削減しながら、固定子鉄心押え
板に入射する磁束を遮蔽することができる。更に、固定
子鉄心押え板の軸方向端面を遮蔽装置で覆っていないた
め、固定子鉄心押え板を通風によって冷却することが可
能となる。したがって、コストが低減できると共に、固
定子鉄心押え板の温度上昇を抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す回転電機の固定子端部
縦断面図。

【図２】本発明に関わる図１のかご形巻線の斜視図。

【図３】本発明に関わる従来構造の固定子端部縦断面
図。

【図４】本発明に関わる遮蔽板に流れる渦電流の模式
図。

【図５】本発明に関わる回転電機端部の風の流れを示す
部分断面図。

【図６】本発明の他の実施例を示す回転電機の固定子端
部縦断面図。

【図７】本発明に関わる図６のかご形巻線の斜視図。

【図８】本発明の他の実施例を示す回転電機の固定子端
部縦断面図。

【符号の説明】

１〜２…端絡環、３…サポートリング、４…導棒、５…
固定子、６…回転子、７…固定子鉄心、８…締め付けボ
ルト、９…固定子鉄心押え板、１０…シールド装置、１
０ａ…遮蔽板、１０ｂ…かご形のシールド装置、１１…
電機子巻線底コイル、１２…電機子巻線上コイル、１３
…エンドフィンガー、１４…保持環、１５…界磁巻線、
１６…漏れ磁束、１７…磁束の方向、１８…渦電流、１
９…ファン、２０…固定子フレーム、２１…渦電流、２
２…風の向き。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 身佳 茨城県日立市大みか町七丁目１番１号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 桧山 太 茨城県日立市幸町三丁目１番１号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】鉄心歯部と鉄心背部によって構成されてい
   る固定子鉄心と固定子鉄心を締め付け固定する固定子鉄
   心押さえ板と固定子巻線から成る回転電機の固定子にお
   いて、前記固定子鉄心押え板の軸方向端面に、複数の導
   体の環を設け、該複数の導体の環を複数の導棒で接続し
   たことを特徴とする回転電機の固定子。
2. 【請求項２】前記複数の導体の環において、前記回転電
   機の軸胴部に近いほど、該複数の導体の環の径を小さく
   したことを特徴とする請求項１記載の回転電機の固定
   子。
3. 【請求項３】前記かご形の巻線は、２つの端絡環と、該
   ２つの端絡環の間に設けた金属製の環と、該２つの端絡
   環と該端絡環の間に設けた金属製の環をそれぞれ接続す
   る複数の導棒により構成されたことを特徴とする請求項
   １記載の回転電機の固定子。
4. 【請求項４】前記複数の導体の環と該複数の導体の環を
   接続する複数の導棒を導電性の管としたことを特徴とす
   る請求項１記載の回転電機の固定子。
5. 【請求項５】前記複数の導体の環と該複数の導体の環を
   接続する複数の導棒の内部に冷却媒体を流したことを特
   徴とする請求項６記載の回転電機の固定子。