JPH11221534A - 超音波洗浄機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 固定式の超音波振動子のみならず、可動式の
超音波振動子を併用することによって、洗浄むらを十分
に解消することができるようにする。 【解決手段】 固定式の超音波振動子２を底面１ａに固
定した洗浄槽１を備え、その洗浄槽１内の洗浄液３に洗
浄物Ａが浸漬された状態で、その洗浄物Ａに付着した汚
垢粒子を超音波振動によって乖離させる超音波洗浄機で
あって、上記固定式の超音波振動子２とは別に、洗浄槽
１に対して可動式の超音波振動子４を備え、その可動式
の超音波振動子４に洗浄物Ａが保持された状態で、固定
式および可動式の両超音波振動子２，４から超音波振動
を発生させている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本願発明は、たとえば精密電
子部品や半導体デバイス、あるいはシリコンウェハなど
といった洗浄物を超音波によって洗浄する超音波洗浄機
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、超音波洗浄機は、各種の産業
分野で利用されており、その一例としては、たとえば精
密電子部品や半導体デバイス、あるいはシリコンウェハ
などといった洗浄物を洗浄するために利用されているも
のがある。

【０００３】この種の代表的な超音波洗浄機は、水など
の洗浄液が大量に満たされた洗浄槽を備えており、この
洗浄槽の底面外部などに超音波振動子が固定して取り付
けられている。洗浄物は、洗浄液に浸漬された状態で静
止され、超音波振動子から発せられる超音波振動によっ
て洗浄されている。

【０００４】このような超音波洗浄機における超音波洗
浄の原理について説明すると、まず、固定式の超音波振
動子から発せられた超音波振動は、洗浄槽内の洗浄液中
に伝播する。また、超音波は、疎密波（縦波）であるた
め、洗浄槽内の底面から液面に向かって一定した位相の
定常波となり、その振動による影響がほぼλ／４ごと現
れることが知られている。つまり、底面から液面に向け
て超音波振動が進行すると、その進行方向にそって超音
波振動が強く作用する部位と弱い部位とが交互に生じ、
液面付近は、自由端となることから超音波作用が小さい
非活性界面部（節）となっている。これに対し、底面付
近は、超音波作用が大きい活性界面部（腹）となり、底
面から液面に向かってλ／４進行するごとに、非活性界
面部と活性界面部とが交互に出現する状況となってい
る。このような超音波作用が大きい活性界面部において
は、キャビテーションによる気泡の圧壊現象が活発に生
じており、この気泡の圧壊にともなう衝撃波によって、
洗浄物の表面に付着した微小な汚垢粒子が効果的に剥離
・粉砕されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の超
音波洗浄機では、以下に述べる理由によって洗浄むらを
生じるという不具合があった。

【０００６】すなわち、図２に示すように、従来の超音
波洗浄機では、従来技術の項でも説明したように、キャ
ビテーションの活発な活性界面部Ｃが浄化槽９０の超音
波振動子９１が固定された底面９０ａから液面９０ｂに
そって一定間隔（λ／２）おきに出現することとなる。
そのため、洗浄液９２中に浸漬されて静止された状態の
洗浄物Ａに対しては、超音波作用の強い部位と弱い部位
が交互に影響を及ぼすこととなり、固定式の超音波振動
子から発せられた超音波振動の伝播方向にそって洗浄む
らが発生していた。

【０００７】本願発明は、上記した事情のもとで考え出
されたものであって、固定式の超音波振動子のみなら
ず、可動式の超音波振動子を併用することによって、洗
浄むらを十分に解消することができる超音波洗浄機を提
供することをその課題とする。

【０００８】

【発明の開示】上記課題を解決するため、本願発明で
は、次の技術的手段を講じている。

【０００９】すなわち、本願発明により提供される超音
波洗浄機は、超音波振動子を所定箇所に固定した洗浄槽
を備え、その洗浄槽内の洗浄液に洗浄物が浸漬された状
態で、その洗浄物に付着した汚垢粒子を超音波振動によ
って乖離させる超音波洗浄機であって、上記固定式の超
音波振動子とは別に、上記洗浄槽に対して可動式の超音
波振動子を備え、その可動式の超音波振動子に上記洗浄
物が連接する状態で、上記固定式および可動式の両超音
波振動子から超音波振動を発生させることを特徴として
いる。

【００１０】上記技術的手段が講じられた本願発明によ
り提供される超音波洗浄機では、洗浄槽内の洗浄液に洗
浄物が浸漬された状態で固定式の超音波振動子から超音
波振動が発せられる。それにより、固定式の超音波振動
子から発せられた超音波振動が洗浄液を介して洗浄物に
達することとなる。その一方、洗浄物に連接された可動
式の超音波振動子からも超音波振動が発せられるととも
に、その超音波振動が直接洗浄物に達せられる。これに
より、固定式の超音波振動子による超音波作用と可動式
の超音波振動子による超音波作用との相乗作用が発揮さ
れる。つまり、固定式および可動式の両超音波振動子か
ら発せられた超音波振動は、それぞれ異なる間接的また
は直接的な伝播形態をもって洗浄物に達することとな
り、そのような異なる伝播形態の超音波振動によって相
互に超音波作用の不十分な点が補われることとなる。

【００１１】したがって、本願発明により提供される超
音波洗浄機によれば、固定式および可動式の超音波振動
子による超音波作用が相乗効果をもって発揮され、異な
る伝播形態の超音波振動によって相互に超音波作用の不
十分な点が補われるので、元来固定式の超音波振動子の
みによる超音波振動の伝播形態を原因とした洗浄むらを
十分に解消することができる。

【００１２】なお、上記洗浄物としては、たとえば精密
電子部品や半導体デバイス、あるいはシリコンウェハな
どといったものが挙げられるが、特にそのようなものに
限ることはない。

【００１３】上記超音波振動子としては、圧電素子の両
端部に金属ブロックを裏打ちした構造で、その圧電素子
に対して交流電流を加えることにより超音波振動を発生
させるものが適しているが、特にそのようなものに限る
ことはなく、超音波振動の発振源となり得るものであれ
ばよい。

【００１４】また、固定式の超音波振動子としては、洗
浄槽に対して固定された個数が単数または複数のいずれ
であってもよい。可動式の超音波振動子としては、単数
個による使用が好適であるが、複数個を用いて使用して
もよい。

【００１５】洗浄液としては、一般的に水が用いられる
が、その他各種の溶液であってもよい。

【００１６】好ましい実施の形態においては、上記可動
式の超音波振動子は、上記洗浄物と一体となって揺動自
在とされている。

【００１７】この超音波洗浄機によれば、可動式の超音
波振動子が洗浄物と一体となって揺動自在とされている
ので、固定式の超音波振動子を原因とした洗浄むらを解
消するために、洗浄物を洗浄液に浸漬させた状態で揺動
させることができ、その際、可動式の超音波振動子を洗
浄物に連接一体として、その洗浄物に対して直接超音波
振動を伝播させることもできる。

【００１８】他の好ましい実施の形態においては、上記
固定式の超音波振動子および／または上記可動式の超音
波振動子は、発振周波数を変化させつつ超音波振動を発
生している。

【００１９】この超音波洗浄機によれば、固定式の超音
波振動子および／または可動式の超音波振動子が発振周
波数を変化させつつ超音波振動を発生しているので、固
定式の超音波振動子および可動式の超音波振動子それぞ
れからの各超音波振動が、相対的に変化することとな
り、その結果、両超音波振動子による超音波作用を洗浄
物全体にわたって一様に及ぼすことができる。

【００２０】本願発明のその他の特徴および利点は、添
付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より
明らかとなろう。

【００２１】

【発明の実施の形態】以下、本願発明の好ましい実施の
形態について、図面を参照して具体的に説明する。

【００２２】図１は、本願発明にかかる超音波洗浄機の
一実施形態を示した概略断面図であって、この図に示す
ように、超音波洗浄機は、洗浄槽１の底面１ａ外部に固
定式の超音波振動子２を取り付けた構造を有しており、
その洗浄槽１の内部には、洗浄液３が満たされている。
また、この超音波洗浄機には、固定式の超音波振動子２
とは別に、洗浄槽１に対して可動式の超音波振動子４が
備えられており、その可動式の超音波振動子４に洗浄物
Ａが保持された状態とされている。洗浄物Ａは、洗浄が
行われる際、可動式の超音波振動子４に保持されつつ、
洗浄槽１内の洗浄液２に浸漬されるとともに、その可動
式の超音波振動子４と一体となって上下方向Ｖに揺動自
在とされている。このような洗浄物Ａとしては、たとえ
ば精密電子部品や半導体デバイス、あるいはシリコンウ
ェハなどといったものが適用可能である。

【００２３】洗浄槽１は、たとえばプラスチック製の収
容体であって、洗浄物Ａの大きさに見合った大きさに形
成され、上面１ｂのみが開口された形状とされている。

【００２４】洗浄液３は、たとえば水であって、洗浄物
Ａを浸漬させるのに十分な量をもって洗浄槽１の内部に
満たされている。

【００２５】固定式の超音波振動子２は、従来より周知
のものであるためその詳細な図示説明を省略するが、た
とえばセラミックスなどからなる圧電素子に交流電流を
加えることによって、発振周波数が数十ｋＨｚ程度の超
音波振動を発生するものである。この固定式の超音波振
動子２における超音波振動の放射面２ａは、洗浄槽１の
底面１ａ外部に直接接合されており、その放射面２ａか
ら底面１ａに対して超音波振動が放射されている。具体
的に、超音波振動は、疎密波（縦波）であることから、
洗浄槽１の底面１ａから洗浄液３の液面３ａに向かって
一定した位相の定常波となって伝播することとなる。こ
のような固定式の超音波振動子２には、第１の可変発振
器５が接続されており、この第１の可変発振器５は、超
音波振動の発振周波数を所定範囲で連続的あるいは断続
的に可変制御している。

【００２６】可動式の超音波振動子４は、上記固定式の
超音波振動子２と同様の原理、構成を有して数十ｋＨｚ
程度の超音波振動を発生するものである。この可動式の
超音波振動子４における超音波振動の放射面４ａは、ク
ランプ状に形成されており、その放射面４ａに洗浄物Ａ
の一端が嵌め外し可能に保持される。なお、放射面４ａ
のクランプ形状は、従来より周知のボルト締め付けに連
動して狭持動作するクランプ継手などと同様とすること
から、その詳細な図示説明を省略する。放射面４ａから
放射された超音波振動は、洗浄物Ａに対して直接伝播す
ることとなる。このような可動式の超音波振動子４に
は、第２の可変発振器６が接続されており、この第２の
可変発振器６は、上記第１の可変発振器５と同様に、超
音波振動の発振周波数を所定範囲で連続的あるいは断続
的に可変制御している。また、可動式の超音波振動子４
は、図示しない機械的な揺動機構によって上下方向Ｖに
揺動可能とされている。

【００２７】次に、上記構成を有する超音波洗浄機の作
用、動作について説明する。

【００２８】まず、洗浄物Ａが可動式の超音波振動子４
に保持された状態で、洗浄槽１内の洗浄液３に浸漬され
る。この際、可動式の超音波振動子４が上下方向Ｖに揺
動されることにより、洗浄物Ａも洗浄液３中で上下方向
Ｖに揺動する。それにより、洗浄物Ａと洗浄槽１の底面
１ａに取り付けられた固定式の超音波振動子２との距離
が変動することとなる。

【００２９】そして、固定式および可動式の超音波振動
子２，４から超音波振動がそれぞれ発せられると、両超
音波振動子２，４の超音波作用によって洗浄物Ａの表面
が洗浄されることとなる。

【００３０】この際、固定式の超音波振動子２から発せ
られた超音波振動は、洗浄液３を介して洗浄物Ａに達
し、その一方、可動式の超音波振動子４から発せられた
超音波振動は、直接洗浄物Ａに達することとなり、両超
音波振動子２，４による超音波作用が相乗効果をもって
発揮されることとなる。

【００３１】具体的に説明すると、固定式の超音波振動
子２からの超音波振動は、洗浄槽１の底面１ａから洗浄
液３の液面３ａに向かって一定した位相の定常波とな
り、その振動による影響がほぼλ／４ごとに現れる。す
なわち、底面１ａから液面３ａに向けて超音波振動が進
行すると、その進行方向にそって超音波作用の強い部位
と弱い部位とが交互に生じ、液面３ａ付近は、超音波作
用が弱い部位とされている。これに対し、底面１ａ付近
は、超音波作用が強い部位となり、底面１ａから液面３
ａに向かってλ／４進行するごとに、超音波作用の強弱
が交互に出現する状況となっている。

【００３２】そのような状況下、洗浄物Ａは、可動式の
超音波振動子４からも直接超音波振動を受けることか
ら、固定式の超音波振動子２によっては超音波作用の不
十分とされる部位が、可動式の超音波振動子４による超
音波作用によって補われることとなる。

【００３３】しかも、洗浄物Ａが可動式の超音波振動子
４と一体となって上下方向Ｖに揺動されているので、固
定式の超音波振動子２による超音波作用の影響が低減さ
れている。

【００３４】さらに、両超音波振動子２，４からは、発
振周波数を変化しつつ超音波振動が発生しているので、
両超音波振動子２，４それぞれからの各超音波振動が、
相対的に変化することとなり、その結果、両超音波振動
子２，４による超音波作用を洗浄物Ａ全体にわたって一
様に及ぼされている。

【００３５】このような両超音波振動子２，４からの超
音波振動による超音波作用を受ける洗浄物Ａの表面全体
においては、キャビテーションによる気泡の圧壊現象が
微視的に確認され、この気泡の圧壊にともなう衝撃波に
よって、洗浄物Ａの表面に付着した微小な汚垢粒子が効
果的に剥離・粉砕されている。

【００３６】したがって、上記構成、作用動作を有する
超音波洗浄機によれば、固定式および可動式の超音波振
動子２，４による超音波作用が相乗効果をもって発揮さ
れ、洗浄物Ａに対して間接的および直接的に伝わる異な
る伝播形態の超音波振動によって相互に超音波作用の不
十分な点が補われるので、固定式の超音波振動子２のみ
によっては得ることができない洗浄むらを十分に解消す
るという問題を解決することができた。

【００３７】なお、本実施形態においては、洗浄物Ａを
保持するために可動式の超音波振動子４の放射面４ａを
クランプ状としたが、その他の保持形態であってもよ
い。たとえば、対象となる洗浄物Ａが磁性体である場合
は、放射面４ａを励磁させることで磁力によって付着さ
せるようにしてもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本願発明にかかる超音波洗浄機の一実施形態を
示した概略断面図である。

【図２】従来の超音波洗浄機における超音波洗浄の原理
を説明するために示した断面図である。

【符号の説明】

１ 洗浄槽 ２ 固定式の超音波振動子 ３ 洗浄液 ４ 可動式の超音波振動子 ５ 第１の可変発振器 ６ 第２の可変発振器 Ａ 洗浄物

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 超音波振動子を所定箇所に固定した洗浄
   槽を備え、その洗浄槽内の洗浄液に洗浄物が浸漬された
   状態で、その洗浄物に付着した汚垢粒子を超音波振動に
   よって乖離させる超音波洗浄機であって、 上記固定式の超音波振動子とは別に、上記洗浄槽に対し
   て可動式の超音波振動子を備え、その可動式の超音波振
   動子に上記洗浄物が連接する状態で、上記固定式および
   可動式の両超音波振動子から超音波振動を発生させるこ
   とを特徴とする、超音波洗浄機。
2. 【請求項２】 上記可動式の超音波振動子は、上記洗浄
   物と一体となって揺動自在とされている、請求項１に記
   載の超音波洗浄機。
3. 【請求項３】 上記固定式の超音波振動子および／また
   は上記可動式の超音波振動子は、発振周波数を変化させ
   つつ超音波振動を発生している、請求項１または請求項
   ２に記載の超音波洗浄機。