JPH11210410A - 蒸気機関プラント及び蒸気システムの水処理方法 - Google Patents

蒸気機関プラント及び蒸気システムの水処理方法

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JPH11210410A
JPH11210410A JP1012398A JP1012398A JPH11210410A JP H11210410 A JPH11210410 A JP H11210410A JP 1012398 A JP1012398 A JP 1012398A JP 1012398 A JP1012398 A JP 1012398A JP H11210410 A JPH11210410 A JP H11210410A
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steam
water
chemical
boiler
hmo
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Application number
JP1012398A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Yamauchi
博史 山内
Toshio Kawakami
寿雄 川上
Mamoru Hirota
広田  守
Takeshi Onoda
武志 小野田
Taku Honda
卓 本田
Shigeto Murata
重人 村田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、水蒸気に接する金属部材の腐
食を防止する蒸気機関プラント及び蒸気システムの水処
理方法。 【解決手段】低圧タービンに抽気管を設け、蒸気を抽気
蒸気復水器で水に戻して分析装置へ導く。前記水に含ま
れる化学成分を液体クロマトグラフで分析し、解析機で
定性,定量する。解析機はさらに所定の化学種の量に応
じて電気信号を発し、薬品注入制御装置へ送る。薬品注
入装置にはMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩の少な
くとも一つを溶液の形態で保存するための薬注タンクが
設置されている。薬品注入制御装置は解析機の信号の強
弱に応じて薬注ポンプを制御し、給水に注入する薬品の
量が所定の値になるように制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な蒸気機関プラ
ントに係り、特に発電用蒸気タービン,船舶用蒸気ター
ビン、その他各種回転機器駆動用蒸気タービンにおける
腐食損傷防止に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば蒸気を扱う火力プラントにおいて
はプラントの形式に応じて種々の給水の水質管理方法が
設定されている。その一例として、火力プラントのAV
T(AllVolatile Treatment:全揮発性処理)では、給水
の電気伝導度,溶存酸素濃度,pHを測定して基準値
(例えば一般的にpH9.5,溶存酸素濃度<10ppb)
に収まるようにイオン交換樹脂による給水中イオン成分
の除去,脱気器による溶存酸素の除去,アンモニアおよ
びヒドラジンの給水への注入等で水質制御している。
【0003】最近になって、CWT(Combined Water T
reatment)と呼ばれる水処理法が従来のAVT法に代わ
り、採用されようとしている。AVT処理法では次に述
べる問題点があったためである。AVT処理した給水の
場合、給水系,ボイラ等で生成した腐食生成物がボイラ
の蒸発細管内に波状に堆積する。この波状堆積物が水の
移動の障害となり、ボイラ差圧を上昇させ、結果的に発
電効率を悪化させた。また、ボイラ差圧上昇を避けるた
めに前出の腐食生成物を定期的に脱スケール処理するた
めの費用など、経済的に問題があった。
【0004】CWT法はpHを中性から9.3、DO濃
度を20から250ppbに制御する方法で、これら諸問
題に対し、効果的に働く。しかし、この手法もAVT法
同様にタービン材料を積極的に防食しようとするもので
はない。また、タービン材料の腐食性からこの水処理方
法を考えた場合、逆にAVT法より腐食環境が厳しくな
ると考えられる。これらAVT,CWTの水質条件は日
本工業規格「ボイラの給水及びボイラ水の水質」B82
23−1989により規定さている。
【0005】以上述べた従来の給水処理方法は主に蒸気
を発生させるボイラ部の構造材の腐食損傷防止を目的と
しているため、給水はボイラ入口側からサンプリングし
た水の水質を測定し、測定値が基準値に収まるように管
理されてきた。
【0006】このような状況の中で、動翼,静翼及びロ
ータ等、タービン材料の腐食損傷が発生することがあ
る。特に高圧,中圧及び低圧タービンで構成される火力
発電プラントでは蒸気の乾湿交播域にあたる低圧タービ
ンの後段で蒸気が凝縮して液滴が発生し、これに腐食媒
が混入して腐食を進行させることがある。さらにプラン
トの起動及び停止時において主タービン(高,中,低圧
タービン)および給水ポンプ駆動用タービンに凝縮水が
発生し、低圧タービン同様、腐食損傷が発生する懸念が
ある。AVTからCWTへの水処理法の移行が進む中
で、AVTのpH9.5から耐食性が劣るpHの低いC
WTのpH8.5への移行により、ますますタービン材
の腐食損傷を引き起こす懸念が生じる。
【0007】そこで、湿り蒸気または腐食防止用薬品と
タービンに吹き付けることにより、タービンに付着した
腐食媒対を洗い流しかつ、防食するようにした蒸気ター
ビンが特開平3−121202 号公報に提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これまで、環境および
材料面からの種々の対策にも関わらず蒸気タービン材の
腐食損傷が発生する問題がある。なかでも、動翼および
ロータのダブテイル部で発生する腐食疲労,応力腐食割
れが顕著である。
【0009】従来は「従来の技術」で述べたように給水
をサンプリングした水の水質を代表して管理してきてお
り、主に給水系の給水加熱器やボイラの水壁管といった
部位の防食を念頭に置いた給水処理方法である。タービ
ン側については大きな注意が払われておらず、給水系,
タービン系全ての領域に対し効果的な給水処理方法が必
要であり、これによってプラント全体の腐食損傷を防止
することができる。
【0010】本発明の目的は、水蒸気に接する部材の腐
食を防止する蒸気機関プラント及び水蒸気システムの水
処理方法を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、ボイラにおい
て給水を熱エネルギにより気化させ、気化した水蒸気の
内部エネルギを蒸気機関で機械的エネルギに変換させ、
前記蒸気を復水して給水として再度利用する蒸気機関プ
ラントにおいて、前記給水中にMOn x- あるいはHMO
n x- からなる塩のいずれか少なくとも一種類の薬品を注
入する薬品注入装置、給水および前記給水を加熱するこ
とによって生成する蒸気に接する金属材料の酸化皮膜中
にMOn x-あるいはHMOn x-が含まれていることを特徴
とする。また、本発明は、ボイラにおいて給水を熱エネ
ルギにより気化させ、気化した水である蒸気の内部エネ
ルギを蒸気機関で機械的エネルギに変換させ、前記蒸気
を復水して給水として再度利用する蒸気機関プラントに
おいて、前記給水中にMOn x-あるいはHMOn x-からな
る塩のいずれか少なくとも一種類の薬品を注入する薬品
注入装置を有し、前記ボイラの出口の水蒸気中にMOn
x- あるいはHMOn x- からなる塩の組成が含有するよ
うに薬品注入制御装置を備えたことを特徴とする。
【0012】さらに、本発明は、ボイラにおいて給水を
熱エネルギにより気化させ、気化した水である蒸気の内
部エネルギを蒸気機関で機械的エネルギに変換させ、前
記蒸気を復水して給水として再度利用する蒸気機関シス
テムにおいて、前記給水中にMOn x-あるいはHMOn x-
からなる塩のいずれか少なくとも一種類の薬品を注入す
る薬品注入装置を有し、前記ボイラで前記給水とともに
前記化学薬品を蒸気機関へ移行させ、前記蒸気機関から
蒸気を抽気し、前記蒸気を凝縮させる抽気蒸気凝縮設備
を設置し、前記抽気蒸気凝縮設備から排する凝縮水の化
学成分を分析する分析装置からなり、前記分析設備にお
いて測定される前記薬品注入装置から注入される化学薬
品の濃度が所定の値になるように前記薬品注入装置の注
入量を制御することを特徴とする。
【0013】また、本発明は、給水加熱器において給水
をタービン抽気蒸気を用いて加熱し、さらにボイラにお
いて給水を熱エネルギにより気化させ、気化した水であ
る蒸気の内部エネルギをタービンにより機械的エネルギ
に変換させ、前記蒸気を復水して給水として再度利用す
る蒸気発電プラントにおいて、前記給水中にMOn x-
るいはHMOn x- からなる塩のいずれか少なくとも一種
類の薬品を注入する薬品注入装置を有し、前記タービン
から抽気した水蒸気中に注入した塩を含むように薬品注
入制御装置を備えたことを特徴とする。
【0014】また、本発明は、ボイラによって発生した
熱エネルギにより給水を気化させ、気化した水蒸気の内
部エネルギを用いる蒸気システムの水処理方法におい
て、給水に含まれるハロゲン化物イオンのモル濃度に対
し前記モル濃度の等倍以上のMOn x-あるいはHMOn x-
からなる塩を注入させることを特徴とする。
【0015】また、前述のプラントにおいて検出される
ハロゲン化物イオンのモル濃度に対し、等倍以上のMO
n x-あるいはHMOn x-からなる塩を薬品注入装置で注入
することを特徴とする。本発明のMOn x-あるいはHM
n x-からなる塩が硝酸イオン,リン酸イオンあるいは
モリブデン酸イオンであることを特徴とする。
【0016】本発明は給水系、特に復水器出口側から、
あるいは復水ろ過脱塩器が備わっているプラントではこ
の出口側からMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩のい
ずれか少なくとも一種類の薬品を注入する薬品注入装置
を設置する。前記MOn x- あるいはHMOn x- からなる
塩は構造材料の不動皮膜を強化し、防食効果を上げるは
たらきを有する。そのため、給水加熱器等の腐食が抑制
され、構造材からの腐食生成物である鉄クラッドのボイ
ラへの持ち込み量を低減させることが可能となる。ボイ
ラへの鉄クラッドへの持ち込み量が減るとボイラ水壁管
への付着が少なくなり、ボイラの熱効率が上昇するだけ
でなく、ボイラの化学洗浄の実施期間を延長させること
が可能となり、運転コストを低く抑えることができるよ
うになる。
【0017】給水加熱器を通過した前記MOn x- あるい
はHMOn x- からなる塩はさらにボイラまで持ち込ま
れ、ここにおいても水壁管の防食効果が得られる。さら
に貫流型ボイラでは前記MOn x- あるいはHMOn x-
らなる塩の多くはタービン系へ蒸気とともに移行する。
蒸気はタービンにおいて内部エネルギを機械エネルギに
変換しながら温度および圧力が次第に低下していく。こ
れに応じて蒸気中の前記MOn x-あるいはHMOn x-から
なる塩はタービンへ析出する。前記MOn x- あるいはH
MOn x- からなる塩はタービン材に対しても防食効果を
有するため、タービンの腐食損傷を抑制することができ
る。
【0018】ただし、タービン材への前記MOn x-ある
いはHMOn x-からなる塩が析出しすぎると蒸気の流れ
が妨げられ、効率を落とすことになるので、タービン側
に移行するMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩の量や
析出する量を測定して把握しながら、給水系への注入量
を制御することが必要である。そこで次のように給水へ
の前記MOn x-あるいはHMOn x-からなる塩の注入量を
制御する。蒸気を抽気する管をタービンに設置する。こ
こから蒸気を抽気した後、この蒸気を抽気蒸気凝縮設備
で水に戻し、分析装置へ送る。前記分析装置では注入し
た前記MOn x- あるいはHMOn x-からなる塩を定量で
きる機能を有し、定量した前記MOn x-あるいはHMOn
x- からなる塩の量が所定の値になるように前記薬品注
入装置のポンプを制御する。これによって適切な給水水
質を管理することができる。
【0019】本発明は給水に注入したMOn x-あるいは
HMOn x-を含む給水や蒸気が構造物と接触するとその
接触面に存在する皮膜中に前記MOn x-あるいはHMOn
x-が含まれる。前記MOn x-あるいはHMOn x-は皮膜を
強化するはたらきがあり、耐食性が向上する。
【0020】本発明の第3の態様はMOn x- あるいはH
MOn x- が給水中に存在すると貫流型ボイラにおいて蒸
気中にMOn x- あるいはHMOn x- が移行する。蒸気中
のMOn x- あるいはHMOn x- はタービンで析出し、タ
ービン材の耐食性を向上させる。
【0021】本発明は一般蒸気発電プラントにおいて給
水にMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩を注入する。
給水を加熱するためにタービンから蒸気を抽気し、この
蒸気を給水加熱器へ輸送している。前記タービンから抽
気した蒸気中にMOn x- あるいはHMOn x- からなる塩
が含まれていれば、給水系からタービンまで腐食抑制作
用を有する前記塩が存在していることにつながる。
【0022】本発明は腐食損傷の加速要因となる給水中
のハロゲン化物イオン(主に塩化物イオン)の腐食性を
抑制させるために前記ハロゲン化物イオンのモル濃度に
対し等倍以上のMOn x-あるいはHMOn x-のイオンを共
存させる。前記MOn x- あるいはHMOn x- は金属上の
不動態皮膜を強固にし、一旦破壊された不動態皮膜を再
生するはたらきを有する。この時のMOn x-あるいはH
MOn x-のモル濃度はハロゲン化物イオンのモル濃度の
等倍以上存在すれば腐食は抑制される。また、10倍以
上であれば、ハロゲン化物イオンによる孔食の発生が完
全に停止する。本発明は第一の態様記載の分析装置で腐
食の加速要因であるハロゲン化物イオンの濃度を定量
し、このモル濃度の等倍以上MOn x-あるいはHMOn x-
からなる塩を薬品注入装置で注入することにより腐食を
抑制する。
【0023】本発明はMOn x-あるいはHMOn x-からな
る塩のなかでもモリブデン酸イオンが最も効果が大き
い。硝酸イオンやリン酸イオンもモリブデン酸イオンに
引き続いて腐食抑制作用が強いが、前記硝酸イオンやリ
ン酸イオンは非金属なので廃棄物等の環境面で有利であ
る。
【0024】
【発明の実施の形態】図1は本発明による火力発電プラ
ントの構成図である。この発電プラントには高圧タービ
ン14,中圧タービン16,低圧タービン17が設けら
れ、給水のpHおよび溶存酸素濃度を制御できるように
なっている。また、ボイラ5は貫流型水管ボイラであ
る。図1に示すように発電プラントは給水系(細実線で
示した経路),蒸気系(破線で示した経路),薬品注入
系および、分析系(一点鎖線)の4つの系からなる。
【0025】初めに給水系および蒸気系の動作について
説明し、次いで薬品注入系および分析系を説明する。
【0026】給水は復水ポンプ1,復水昇圧ポンプ2,
給水ポンプ3の各ポンプにより昇圧され、復水器4から
ボイラ5へ供給される。復水ポンプ1から復水昇圧ポン
プ2までの途中にはグランドコンデンサ6,復水ろ過器
7および復水脱塩器8が設けられている。また復水昇圧
ポンプ2から給水ポンプ3までの間には給水のpHを調
整するためにアンモニアを注入するアンモニア注入装置
9,低圧給水加熱器10,給水に溶存している気体(主
に酸素)を除去するための脱気器11,給水に酸素注入
する酸素注入装置12が設けられている。また、給水ポ
ンプ3からボイラ5までの間には高圧給水加熱器13が
設けられている。なお給水ポンプ3は給水駆動用タービ
ン15を用いて駆動する。
【0027】給水はボイラ5により蒸気となり、高圧タ
ービン14と給水ポンプ3を駆動する給水駆動用タービ
ン15へ供給される。高圧タービン14に供給された蒸
気は高圧タービン14を回転させる運動エネルギを放出
した後、ボイラ5へ戻され再加熱される。その後蒸気は
中圧タービン16,低圧タービン17の順に通過してタ
ービンを回転させ、最終的に復水器4で水に戻る。この
水は再び給水となってボイラ5へ供給されるサイクルを
繰り返す。
【0028】次に薬品注入系および分析系をそれぞれ図
2および図3を用いて説明する。復水脱塩器8の出口側
に薬品を注入する薬品注入装置18が設置されている。
薬品注入装置18は復水脱塩器出口側に設置されてい
る。薬品注入装置は薬品を水溶液として貯蔵するための
薬注タンク19とこれを給水へ注入するための高圧かつ
定量性を有する薬注ポンプ20から構成されている。ま
た、薬注タンク19の水位を検出したり、薬注ポンプ2
0の注入量を制御するための薬品注入制御装置21が備
わっている。前述したように給水系へ注入する薬品は水
溶液の形態とし、これを薬注タンク19に保存する。低
圧タービン17には蒸気の組成を調べるために、抽気管
22が設けられ、抽気蒸気復水器23へ導かれる。ここ
で抽気された蒸気は水に戻り、さらに分析装置24へ移
動する。分析装置24は水に含まれる微量の成分の化学
組成を定性,定量できる機能を有している。この目的に
は液体クロマトグラフ25が用いられる。解析機26は
液体クロマトグラフ25から送られてくる電気信号を解
析してイオンを同定しするとともに濃度を定量する。さ
らに所定のイオンを選びその濃度を電気信号に変換し、
前記薬品注入制御装置21へ連絡する。前記薬品注入制
御装置21では前記解析機26からの信号をもとに注入
を開始,停止、あるいは注入速度をポンプの回転数を変
えて変更する。
【0029】本実施例では給水に注入する薬品としてモ
リブデン酸ナトリウムを選んだ。モリブデン酸ナトリウ
ムを水に溶かしたものを前記薬注タンク19に入れ、薬
注ポンプ20を用いて給水に注入する。注入された前記
モリブデン酸ナトリウムは低圧給水加熱器10,脱気器
11,高圧給水加熱13を通過してボイラ5へ移送され
る。ボイラ5では給水は熱により蒸気化し、タービン系
へ移動する。この時、モリブデン酸ナトリウムもボイラ
5において蒸気とともにタービンへ移動する。本実施例
におけるボイラ5は貫流型水管ボイラであるので、モリ
ブデン酸ナトリウムは蒸気中に溶解するか、あるいは微
少な固体状態で蒸気の流れにしたがって飛行するか不明
であるが、多くのモリブデン酸ナトリウムはボイラ5の
水壁管内に析出せず、蒸気相へ移行する。
【0030】蒸気はタービンにおいてその内部エネルギ
をロータを回転させる機械エネルギに変化させ、次第に
圧力及び温度が低下する。この過程で蒸気相のモリブデ
ン酸ナトリウムはタービン面に析出,付着するようにな
る。いくらかのモリブデン酸ナトリウムは図4に示すよ
うにロータディスク28と動翼27の接合面であるダブ
テイル部29に蓄積される。タービンにおける腐食損傷
は主に前記ダブテイル部29に面するロータディスク2
8と動翼27から発生し、給水から持ち込まれた塩化ナ
トリウムがプラントの起動,停止あるいは負荷変動,停
止時の復水器4の真空保持などにより蒸発乾固し、結果
として濃縮,蓄積して腐食損傷を加速させていると考え
られる。この時の塩化ナトリウムの濃度は飽和濃度まで
に達すると推定される。本発明ではモリブデン酸ナトリ
ウムを含む蒸気が前記ダブテイル部29に進入し、ここ
でモリブデン酸ナトリウムが析出する。モリブデン酸ナ
トリウムは腐食抑制のはたらきがあり、ある程度の量が
存在していれば塩化ナトリウムがあっても孔食等の腐食
を抑えることができる。これはモリブデン酸ナトリウム
が金属表面の不動態皮膜を強固にし、さらに、不動態皮
膜が破れた部分の再生を助ける力があるためと考えられ
ている。
【0031】本発明を用いたことによる実際のプラント
の腐食損傷防止効果は数年におよんで判断されるべきも
のであるので、本実施例では効果のほどを述べることは
できないが、間接的に実験室でその効果を得ることがで
きる。例えば動翼27の材料としてクロムが約12%含
むマルテンサイト系ステンレス鋼が多用されており、こ
の材料の孔食発生電位はモリブデン酸ナトリウムが存在
することで飛躍的に向上させることが可能である。一例
を挙げると、90℃,1Mの濃度の塩化ナトリウム水溶
液(pHをアンモニアを用いて9.5 に調整)における前
記動翼27の孔食発生電位は−0.3V vs.銀/銀塩
化銀(飽和KCl)である。これに対し、1M塩化ナト
リウム+1Mモリブデン酸ナトリウム溶液では孔食発生
電位は−0.1V vs.銀/銀塩化銀(飽和KCl)ま
で向上する。更に0.1M塩化ナトリウム+1Mモリブ
デン酸ナトリウム溶液では孔食発生電位は0.5V v
s.銀/銀塩化銀(飽和KCl)まで増加し、孔食の発
生が完全になくなる。このように環境中に塩化ナトリウ
ムが存在していてもモリブデン酸ナトリウムが塩化ナト
リウムの等倍以上の量が存在すれば孔食発生が抑制され
ることがわかる。したがって、給水に注入するモリブデ
ン酸ナトリウムの量は給水あるいは蒸気中の塩化ナトリ
ウムのモル濃度の等倍以上を注入すればよいことにな
る。この方法として、分析装置24で塩化ナトリウムお
よびモリブデン酸ナトリウムを定性,定量し、塩化ナト
リウムの濃度に対し、所定の濃度になるように解析機2
6が電気信号を介して薬品注入装置18に指示する。あ
るいは別途給水系の任意の水の塩化ナトリウム濃度を測
定する手段を設け、この信号をもとに薬品注入装置18
を制御しても良い。
【0032】さらに本発明はタービン材だけでなく、給
水系の構造材、例えば、低圧給水加熱器10といった加
熱器、ボイラ5の水壁管といったものの腐食を抑制させ
ることが可能である。通常の火力プラントのAVT処理
(pH9.5 ,溶存酸素濃度7ppb 以下)での150℃
における炭素鋼の腐食量は1.2mg/dm2/h であ
るが、モリブデン酸ナトリウムが1ppm 共存すると腐食
量はおおよそ1割低下する。以上のようにモリブデン酸
塩の添加効果はタービンおよび給水系の材料にとって腐
食を低減するはたらきを有する。
【0033】以上の実施例は一例にすぎず、目的を達成
するものであればいずれであっても良い。例えば薬品の
注入試薬としてモリブデン酸ナトリウムを用いたが、MO
n x-あるいはHMOn x- からなる塩であれば、腐食の効
果の違いがあるが、同じ様なはたらきをする。ただし、
モリブデン酸イオンは皮膜を強固にするはたらきである
が、硝酸イオン等は競争吸着によるハロゲン化物イオン
の金属表面への進入を妨害するものと考えられる。なか
でも腐食抑制効果が大きい薬品はモリブデン酸塩であ
る。また、蒸気を抽気する場所は低圧タービン17に限
ったものでなく、ボイラ5で発生する蒸気を採取できる
のであればいずれであってもかまわないし、また、ボイ
ラ入口手前の給水系のいずれであっても良い。また、M
n x- あるいはHMOn x-からなる塩を注入すると、こ
れと接する金属面にはMOn x-あるいはHMOn x-を含ん
だ層が生成するようになるので、注入制御方法としてM
n x-あるいはHMOn x- が金属面に生成するようにし
ても良い。また、ボイラやその出口、あるいはタービン
系における蒸気中にもMOn x-あるいはHMOn x-からな
る塩が含まれるので蒸気をサンプリングして所定量MO
n x-あるいはHMOn x-が含まれるように注入しても良
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による蒸気火力発電プラントシ
ステムの構成図である。
【図2】薬品注入装置18の詳細を示す図である。
【図3】分析装置24の詳細を示す図である。
【図4】タービンの動翼およびロータディスクの構造を
示す図である。
【符号の説明】
1…復水ポンプ、2…復水昇圧ポンプ、3…給水ポン
プ、4…復水器、5…ボイラ、6…グランドコンデン
サ、7…復水ろ過器、8…復水脱塩器、9…アンモニア
注入装置、10…低圧給水加熱器、11…脱気器、12
…酸素注入装置、13…高圧給水加熱器、14…高圧タ
ービン、15…給水駆動用タービン、16…中圧タービ
ン、17…低圧タービン、18…薬品注入装置、19…
薬注タンク、20…薬注ポンプ、21…薬品注入制御装
置、22…抽気管、23…抽気蒸気復水器、24…分析
装置、25…液体クロマトグラフ、26…解析機、27
…動翼、28…ロータディスク、29…ダブテイル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野田 武志 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 本田 卓 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 村田 重人 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ボイラにおいて給水を熱エネルギにより気
    化させ、気化した水蒸気の内部エネルギを蒸気機関で機
    械的エネルギに変換させ、前記水蒸気を復水して給水と
    して再度利用する蒸気機関プラントにおいて、 前記給水中にMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩のい
    ずれか少なくとも一種類の薬品を注入する薬品注入装
    置、前記蒸気機関から水蒸気を抽気し、前記水蒸気を凝
    縮させる抽気蒸気凝縮設備、 前記抽気蒸気凝縮設備から排する凝縮水の化学成分を分
    析する分析装置及び、 前記分析設備によって測定される前記薬品の濃度が所定
    の値になるように前記薬品注入装置の注入量を制御する
    薬品注入制御装置を備えたことを特徴とする蒸気機関プ
    ラント。
  2. 【請求項2】ボイラにおいて給水を熱エネルギにより気
    化させ、気化した水蒸気の内部エネルギを蒸気機関で機
    械的エネルギに変換させ、前記水蒸気を復水して給水と
    して再度利用する蒸気機関プラントにおいて、 前記水蒸気に接する金属材料の酸化皮膜中にMOn x-
    るいはHMOn x-が含まれていることを特徴とする蒸気
    機関プラント。
  3. 【請求項3】ボイラにおいて給水を熱エネルギにより気
    化させ、気化した水蒸気の内部エネルギを蒸気機関で機
    械的エネルギに変換させ、前記水蒸気を復水して給水と
    して再度利用する蒸気機関プラントにおいて、 前記給水中にMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩のい
    ずれか少なくとも一種類の薬品を注入する薬品注入装置
    及び、 前記ボイラの出口の水蒸気中にMOn x-あるいはHMOn
    x-からなる塩を有するように薬品制御装置を備えたこと
    を特徴とする蒸気機関プラント。
  4. 【請求項4】給水加熱器において給水をタービン抽気蒸
    気を用いて加熱し、さらにボイラにおいて給水を熱エネ
    ルギにより気化させ、気化した水蒸気の内部エネルギを
    タービンにより機械的エネルギに変換させ、前記蒸気を
    復水して給水として再度利用する蒸気発電プラントにお
    いて、 前記給水中にMOn x-あるいはHMOn x-からなる塩のい
    ずれか少なくとも一種類の薬品を注入する薬品注入装置
    及び、 前記タービンから蒸気を抽気した水蒸気中に前記注入し
    た前記塩を含むように薬品注入制御装置を備えたことを
    特徴とした蒸気発電プラント。
  5. 【請求項5】ボイラによって発生した熱エネルギにより
    給水を気化させ、気化した水蒸気の内部エネルギを用い
    る蒸気システムの水処理方法において、 給水に含まれるハロゲン化物イオンのモル濃度に対し前
    記モル濃度の等倍以上のMOn x-あるいはHMOn x-から
    なる塩を注入させることを特徴とする蒸気システムの水
    処理方法。
  6. 【請求項6】請求項1において、前記塩は 検出されるハロゲン化物イオンのモル濃度に対し、等倍
    以上の注入量を有することを特徴とする蒸気機関プラン
    ト。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれかにおいて、前記M
    n x-あるいはHMOn x-からなる塩がモリブデン酸イオ
    ン,リン酸イオン、あるいは硝酸イオンであることを特
    徴とする蒸気機関プラント。
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