JPH11199967A - 被削性に優れた高強度・低延性非調質鋼材 - Google Patents
被削性に優れた高強度・低延性非調質鋼材Info
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Abstract
分割加工が可能でその分割破面がフラットな脆性破面を
呈する鋼材を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.20〜0.70%、Si≦1.50
%、Mn:0.3〜2.0%、P≦0.15%、S:0.002〜0.2%、C
u:0〜0.2%、Ni:0〜0.5%、Cr:0.02〜2.0%、Mo:0
〜0.50%、V:0〜0.50%、Nb:0〜0.17%、Ti:0.20超
〜0.50%、B:0〜0.010%、Al:0〜0.10%、N≦0.008
%、Pb:0.01〜0.30%、Si+2V−0.5≧0、Si+2V+5P−
0.8≧0の少なくとも一方を満たすとともにC+(Si/10)
+(Mn/5)+(5Cr/22)+1.65V−(5S/7)-0.8≧0をも
満たし、残部はFeと不純物の組成で、Ti炭硫化物の最大
直径が10μm以下、その量が清浄度で0.05%以上である
被削性に優れた高強度・低延性非調質鋼材。但し、式中
の元素記号はその元素の重量%での含有量を表す。
Description
強度・低延性非調質鋼材に関し、より詳しくは、高い強
度が要求されるものの延性は必要とせず、むしろ常温で
の冷間分割加工が可能でその破断面がフラットな脆性破
面を呈し、自動車エンジンなどのコネクティングロッド
やコネクティングロッドキャップ用の材料として好適な
被削性に優れた高強度・低延性非調質鋼材に関する。
示すコネクティングロッド(通称コンロッド)の本体1
及びコネクティングロッドキャプ(通称コンロッドキャ
ップ)2は、従来、別の工程で熱間鍛造された後で焼入
れ焼戻しの調質処理が施され、次いで、切削加工による
ボルト穴の加工と仕上げ整形加工を受け、その後でボル
ト3によって形状の複雑なクランクシャフトに結合して
組み立てられていた。
映して、各種自動車部品の製造コスト低減の動きが活発
化しており、この動きはエンジン部品においても例外で
はなくなってきている。
体1及びコネクティングロッドキャプ2に関しては、製
造コスト低減対策として、両者を熱間鍛造にて一体成形
しこれに焼入れ焼戻しの熱処理を施すか、あるいは熱間
鍛造後放冷し、その後でコネクティングロッド本体1及
びコネクティングロッドキャプ2に分割し、接合部(接
合面どうし)に対する仕上げ整形のための機械加工は施
すことなく、ボルト3でクランクシャフトに結合して組
み立てるという方法が検討されている。この方法では、
ボルト穴の切削加工は前記の一体成形材を分割する前あ
るいは後に行われる。
本体1及びコネクティングロッドキャプ2を分割する方
法としては、例えば治具を挿入することによって図1中
に矢印で示した方向に働く力を与えて分割する方法が考
えられる。この方法ではコネクティングロッド本体1及
びコネクティングロッドキャプ2に分割した分割面をフ
ラットにすることが極めて重要となる。
IS規格のS45CやS48C相当鋼など)をそのまま
用いて熱間鍛造で一体成形し、その後常温でコネクティ
ングロッド本体1及びコネクティングロッドキャプ2に
分割すると、分割面がアメやガムを千切ったような所謂
「延性破断面」となってフラットな「脆性破面」が得ら
れず、切削加工による仕上げ整形加工を行わなければな
らないという問題がある。上記の分割を低温(例えば液
体窒素温度)で行えば脆性破壊が生じて容易にフラット
な脆性破面が得られるが、大量の製品が流れる実操業ラ
インにおいて低温状態とすることは技術的に容易ではな
く、更に設備を建設し維持する費用が嵩むため必ずしも
コスト低減には結びつかないといった問題がある。
はコストが嵩むため、熱処理を省略できる新しいタイプ
の鋼に対する要望も生じている。
の調質処理を省略できる非調質鋼としては、例えば特開
平5−195140号公報に「非調質高強度鋼」が提案
されている。しかし、この公報に記載された非調質鋼
は、連続鋳造時にブルーム表面に生ずる割れを防止した
タイプの高強度非調質鋼である。そのため、上記の提案
鋼をコネクティングロッド本体1及びコネクティングロ
ッドキャプ2用鋼として用いた場合、所望の強度は得ら
れるものの、前記した一体成形した後でコネクティング
ロッド本体1及びコネクティングロッドキャプ2に常温
で分割する方法に対しては、延性が大き過ぎて脆性破面
が得られない。したがって、切削加工による仕上げ整形
加工を行う必要がある。
エンジンを稼働させた場合でも、コネクティングロッド
に座屈を生じることがないように、座屈強度に優れた非
調質鋼に対する要望も大きくなっている。
9−176785号公報、特開平9−176786号公
報及び特開平9−176787号公報で高強度・低延性
非調質鋼を提案した。しかし、上記の各公報で提案した
鋼はいずれも800MPa以上の引張強度を有するもの
であるため、Pbを添加した場合でも必ずしも充分な被
削性が得られず、ボルト穴の切削加工が困難なこともあ
った。更に、Te、BiやCaなどの快削元素として知
られている元素を単独あるいは複合添加した場合にも充
分な被削性が得られず、ボルト穴の切削加工が困難なこ
とがあった。
84)には、脱酸調整快削鋼にTiを添加すれば被削性
が高まる場合のあることが報告されている。しかし、T
iの多量の添加はTiNが多量に生成することもあって
工具摩耗を増大させ、被削性の点からは好ましくないこ
とも述べられている。例えば、C:0.45%、Si:
0.29%、Mn:0.78%、P:0.017%、
S:0.041%、Al:0.006%、N:0.00
87%、Ti:0.228%、O:0.004%及びC
a:0.001%を含有する鋼では却ってドリル寿命が
低下して被削性が劣っている。このように、鋼に単にT
iを添加するだけでは被削性は向上するものではない。
従来鋼と同等以上であって、且つ熱間鍛造した一体成形
材を前記したような方法によって常温で分割した時の破
面が、フラットな脆性破面を呈する被削性に優れた高強
度・低延性非調質鋼材を提供することを目的とする。本
発明にあっては前記の特性に加えて、更に、高い座屈強
度を有する非調質鋼材を提供することをも目的とする。
被削性に優れた高強度・低延性非調質鋼材にある。
0.70%、Si:1.50%以下、Mn:0.3〜
2.0%、P:0.15%以下、S:0.002〜0.
2%、Cu:0.2%以下、Ni:0.5%以下、C
r:0.02〜2.0%、Mo:0.50%以下、V:
0.50%以下、Nb:0.17%以下、Ti:0.2
0%を超えて0.50%以下、B:0.010%以下、
Al:0.10%以下、N:0.008%以下、Pb:
0.01〜0.30%、式中の元素記号をその元素の重
量%での含有量として下記の〜式で表されるfn1
〜fn3に関して、fn1≧0及びfn2≧0の少なく
とも一つを満たすとともにfn3≧0をも満たし、残部
はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中のTi炭硫
化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量が清浄
度で0.05%以上であることを特徴とする被削性に優
れた高強度・低延性非調質鋼材。fn1=Si+2V−
0.5・・・・・、fn2=Si+2V+5P−0.
8・・・・・、fn3=C+(Si/10)+(Mn
/5)+(5Cr/22)+1.65V−(5S/7)
−0.8・・・・・」である。
単なるTi硫化物をも含むものとする。又、「(Tiの
炭硫化物の)最大直径」とは「個々のTiの炭硫化物に
おける最も長い径」のことを指す。Ti炭硫化物の清浄
度は、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G 0555
に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」に
よって60視野測定した値をいう。
壊形態及び被削性に関する課題を解決するため種々検討
を重ねた。その結果、下記(a)〜(h)の強度、常温
における破壊形態に関する知見に加えて、(i)の被削
性に関する知見を得た。
る非調質鋼材の常温における破壊形態は、前記、式
で表されるfn1、fn2と相関を有する。そして、
「fn1≧0」、「fn2≧0」の少なくとも一つを満
たす場合に脆性破壊が促進される。
少なくとも一つを満たし、且つ、常温引張試験した時の
鋼材の伸び値が10%以下である場合に、熱間鍛造した
一体成形材の常温分割面はフラットな脆性破面となる。
2≧0の少なくとも一つを満たし、且つ、常温引張試験
した時の鋼材の伸び値が10%以下)に加えて、熱間鍛
造した一体成形材の分割したい部位の少なくとも一部に
0.5mmR以下の切り欠きを設けておけば、僅かな力
を加えるだけで容易に当該一体成形材の常温分割が可能
で、且つその分割面は一層確実にフラットな脆性破面と
なる。
る時、非調質鋼材の引張強度は前記式で表されるfn
3で整理でき、この値が0以上の場合に800MPa以
上の引張強度が得られる。
で、上記(b)のfn1≧0及びfn2≧0の少なくと
も一つと常温引張試験した時の鋼材の伸び値≦10%、
並びに上記(d)で述べたfn3≧0の条件を満足でき
れば、常温での分割でフラットな脆性破面となり、且つ
高強度が得られる。したがって、前記した新しいプロセ
スによって所望強度である800MPa以上の引張強度
を有するコネクティングロッド本体1及びコネクティン
グロッドキャプ2を製造することができる。この場合、
(c)の一体成形材の分割したい部位である大端部穴の
内側(図1におけるN部)の少なくとも一部に0.5m
mR以下の切り欠きを設けておけば、上記のコネクティ
ングロッド本体1及びコネクティングロッドキャプ2を
一層容易、且つ、確実に製造することができる。
強度を高めることが有効である。
(a)に記載したfn2≧0を満たせば、鋼材の脆性破
壊が促進されるだけでなく降伏比(降伏強度/引張強
度)が高まり、非調質鋼材でも0.7以上の降伏比が得
られる。
調整した上で、fn2≧0と常温引張試験した時の鋼材
の伸び値が10%以下、並びにfn3≧0の条件を満足
できれば、高い降伏比が得られると共に常温での分割で
フラットな脆性破面となり、且つ高強度が得られる。こ
の場合、引張強度が800MPa以上であるため560
MPa以上の高い降伏強度が得られることとなって、前
記した新しいプロセスによって座屈強度にも優れたコネ
クティングロッド本体1及びコネクティングロッドキャ
プ2を製造することができる。
介在物制御として硫化物をTi炭硫化物に変え、Ti炭
硫化物を鋼材に微細に分散させれば、鋼材の被削性が飛
躍的に向上する。そこで、更に研究を続けた結果、下記
の事項を見いだした。
を積極的に添加して行くと、鋼中にTi炭硫化物が形成
される。
ると、MnSの生成量が減少する。
i炭硫化物はMnSよりも大きな被削性改善効果を有す
る。これは、Ti炭硫化物の融点がMnSのそれよりも
低いため、切削加工時に工具のすくい面での潤滑作用が
大きくなることに基づく。
るためには、N含有量を低く制限することが重要であ
る。これは、N含有量が多いとTiNとしてTiが固定
されてしまい、Ti炭硫化物の生成が抑制されてしまう
ためである。
通常の熱間加工のための加熱温度及び調質処理や表面硬
化処理における通常の加熱温度では基地に固溶しない。
したがって、オーステナイト領域において所謂「ピン止
め作用」が発揮されるので、オーステナイト粒の粗大化
防止がなされて均質な組織が得られる。
るためには、Ti炭硫化物のサイズと、その清浄度で表
される量(以下、単に「清浄度」という)を適正化して
おくことが重要である。
たものである。
しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重
量%」を意味する。
成し、被削性を高める作用を有する。更に、Cは、鋼に
所望の強度を付与するのに必要な元素であるが、反面熱
間加工性を低下させる元素でもある。最低限の静的強度
(引張強度で800MPa以上)とTi炭硫化物形成に
よる被削性向上効果を得るには、Cの含有量は0.20
%以上が必要である。一方、0.70%を超えて含有さ
せると、鋼の熱間加工性が低下して、成分系によっては
熱間での加工時に割れを生じる場合がある。したがっ
て、Cの含有量を、0.20〜0.70%とした。な
お、より安定した強度(引張強度や座屈強度)を確保す
るために、Cの含有量は0.25%以上とすることが好
ましい。C含有量が0.30%以上であれば一層好まし
い。
れば鋼の脱酸を促進するとともに、焼入れ性を向上させ
る作用も有する。これらの効果を確実に得るには、Si
は0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しか
し、その含有量が1.50%を超えると熱間加工性が極
めて低下し、熱間での加工時に割れが生じ易くなる。し
たがって、Siの含有量を1.50%以下とした。な
お、一層の安定した熱間加工性を確保するために、Si
含有量の上限は1.00%とすることが望ましい。
鋼の焼入れ性を高めて静的強度を向上させる作用があ
る。しかし、その含有量が0.3%未満では所望の効果
が得られず、2.0%を超えると熱間加工性が劣化する
ようになる。したがって、Mnの含有量を0.3〜2.
0%とした。
粒界脆化を引き起こし延性を低下させる作用があるの
で、前記したような常温での分割方法でフラットな脆性
破面を得るのに有効である。この効果を確実に得るに
は、Pは0.005%以上の含有量とすることが好まし
い。しかし、その含有量が0.15%を超えると熱間加
工性が著しく劣化する。したがって、Pの含有量は0.
15%以下とした。なお、安定した熱間加工性確保のた
めに、Pの含有量は0.10%以下とすることがより好
ましい。
炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。しか
し、その含有量が0.002%未満では所望の効果が得
られない。
Sを形成させて被削性を改善させることにあった。しか
し、本発明者らの検討によると、上記のMnSの被削性
向上作用は、切削時の切り屑と工具表面との潤滑性を高
める機能に基づくことが判明した。しかもMnSは巨大
化し、鋼材本体の地疵を大きくし、欠陥となる場合があ
る。本発明におけるSの被削性改善作用は、適正量のC
とTiとの複合添加によってTiの炭硫化物を形成させ
ることで初めて得られる。このためには、上記したよう
に0.002%以上のSの含有量が必要である。一方、
Sを0.2%を超えて含有させても被削性に与える効果
に変化はないが、鋼中に粗大なMnSが再び生じるよう
になり、地疵等の問題が生じる。更に、熱間での加工性
が著しく劣化し熱間加工が困難になる。したがって、S
の含有量を0.002〜0.2%とした。なお、Sの好
ましい含有量は0.02〜0.1%である。
れば焼入れ性を高めて静的強度を向上させる効果を有す
る。この効果を確実に得るには、Cuは0.01%以上
の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が
0.2%を超えると熱間加工性の劣化をもたらし、熱間
圧延時や熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、
Cuの含有量は0.2%以下とした。
れば焼入れ性を高めて静的強度を向上させる効果を有す
る。この効果を確実に得るには、Niは0.01%以上
の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が
0.5%を超えると延性と靭性の増加をきたして、フラ
ットな脆性破面が得られなくなる。したがって、Niの
含有量を0.5%以下とした。
度を高める効果がある。しかし、その含有量が0.02
%未満では所望の効果が得られず、2.0%を超えて含
有させてもその効果は飽和し、コストのみが上昇し経済
性を損うことになるので、その含有量を0.02〜2.
0%とした。なお、Cr含有量は0.1%以上とするこ
とが好ましい。
れば焼入れ性を高めて強度を向上させる効果を有する。
この効果を確実に得るには、Moは0.01%以上の含
有量とすることが好ましい。しかし、Moを0.50%
を超えて含有させても前記の効果は飽和するのでコスト
のみが上昇し、経済性を損うことになる。したがって、
Moの含有量を0.50%以下とした。なお、Moを添
加する場合、その含有量は0.05%以上とすることが
一層好ましい。
強度を高める効果を有する。この効果を確実に得るに
は、Vは0.005%以上の含有量とすることが好まし
い。しかし、0.50%を超えて含有させても前記の効
果は飽和し、コストのみが上昇して経済性を損う。更
に、熱間加工性の劣化を招く。したがって、Vの含有量
を0.50%以下とした。
れば強度を高める効果を有する。この効果を確実に得る
には、Nbは0.003%以上の含有量とすることが好
ましい。しかし、0.17%を超えて含有させても前記
の効果は飽和し、コストのみが上昇し経済性を損うこと
になる。更に、熱間加工性の劣化を招くようになる。し
たがって、Nbの含有量を0.17%以下とした。な
お、安定した熱間加工性を確保するためには、Nb含有
量の上限を0.10%とすることが好ましい。
御するための重要な合金元素である。その含有量が0.
20%を超えると前記の作用が充分に発揮されて被削性
が大きく高まるとともに、熱間鍛造した一体成形材の常
温分割面を容易にフラットな脆性破面とすることができ
る。一方、0.50%を超えて含有させても、被削性改
善効果は高まるものの、常温での破壊特性に変化が見ら
れずコストが嵩む。したがって、Ti含有量を0.20
%を超えて0.50%以下とした。
鋼の焼入れ性を向上させて強度を高める効果がある。こ
の効果を確実に得るには、Bは0.0003%以上の含
有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.
010%を超えると、焼入れ性向上効果が飽和するばか
りか、熱間加工性が著しく劣化するようになる。したが
って、Bの含有量を0.010%以下とした。
れば鋼の脱酸の安定化及び均質化を図るとともに、窒化
物を生成して結晶粒を微細化し、強度を高める作用を有
する。この効果を確実に得るには、Alは0.005%
以上の含有量とすることが望ましい。しかし、0.10
%を超えて含有させると、熱間加工性の劣化を招くよう
になる。したがって、Alの含有量を0.10%以下と
した。なお、Ti炭硫化物のサイズと清浄度を所定の値
とするためにはTiの酸化物が過剰に生成することを防
ぐことが重要であるので、Siを添加しない場合には、
少なくとも0.005%のAlを含有させることとする
のが良い。
御することが極めて重要である。すなわち、NはTiと
の親和力が大きいために容易にTiと結合してTiNを
形成し、Tiを固定してしまうので、Nを多量に含有す
る場合には前記したTiの炭硫化物の被削性向上効果が
充分に発揮できないこととなる。更に、粗大なTiNは
靭性及び被削性を低下させてしまう。したがって、N含
有量を0.008%以下とした。
高める効果を有する。しかし、その含有量が0.01%
未満では充分な効果が得られない場合がある。一方、P
bを0.30%を超えて含有させると熱間加工性が劣化
して熱間圧延時や熱間鍛造時に割れの発生を招く。した
がって、Pbの含有量を0.01〜0.30%とした。
0.30%以上のMn及び0.02%以上のCrを含有
する非調質鋼材の常温における破壊形態は前記、式
で表されるfn1、fn2で整理でき、fn1≧0及び
fn2≧0の少なくとも一つを満たす場合に脆性破壊が
促進される。そしてfn1≧0及びfn2≧0の少なく
とも一つを満たし、且つ常温引張試験した時の鋼材の伸
び値が10%以下の場合に、熱間鍛造した一体成形材の
常温分割破面がフラットな脆性破面となって、前記した
ような新しいプロセスによって、所望強度である800
MPa以上の引張強度を有するコネクティングロッド本
体及びコネクティングロッドキャプを製造することがで
きる。したがって、fn1≧0及びfn2≧0の少なく
とも一つを満たすように規定する。
進されるだけでなく0.7以上の降伏比が安定して得ら
れる。したがって、fn2≧0、且つ常温引張試験した
時の鋼材の伸び値が10%以下の場合には、降伏強度も
高い、換言すれば座屈強度にも優れた、800MPa以
上の引張強度を有するコネクティングロッド本体及びコ
ネクティングロッドキャプを製造することができる。
はなく、前記式で表されるfn1から求められる上限
値の2.0であっても良い。
はなく、前記式で表されるfn2から求められる上限
値の2.45であっても良い。
つ、前記fn3の値を0以上とした場合に始めて、コネ
クティングロッド本体及びコネクティングロッドキャプ
として必要な800MPa以上の引張強度を非調質鋼材
に付与できる。したがって、fn3≧0とする。この値
の上限には特に制限はなく、fn3から求められる最大
値(1.73に近い値)であっても良い。
よって高めるとともに、熱間鍛造した一体成形材の常温
分割面を容易にフラットな脆性破面とするためには、T
i炭硫化物のサイズと清浄度を適正化しておくことが重
要である。
ると熱間鍛造した一体成形材の常温分割面がフラットな
脆性破面とならない場合がある。なお、Ti炭硫化物の
最大直径は7μm以下とすることが好ましい。このTi
炭硫化物の最大直径が小さすぎると被削性向上効果が小
さくなってしまうので、Ti炭硫化物の最大直径の下限
値は0.5μm程度とすることが好ましい。
量が清浄度で0.05%未満の場合には、Ti炭硫化物
による被削性向上効果が発揮できない。前記の清浄度は
0.08%以上とすることが好ましい。上記のTi炭硫
化物の清浄度の値が大きすぎると熱間加工性が低下する
場合があるので、上記のTi炭硫化物の清浄度の上限値
は2.0%程度とすることが好ましい。
とするためには、Tiの酸化物が過剰に生成することを
防ぐことが重要である。このための製鋼法としては、例
えば、Si及びAlで充分脱酸し、最後にTiを添加す
る方法がある。
試験片を鏡面研磨し、その研磨面を被検面として倍率4
00倍以上で光学顕微鏡観察すれば、色と形状から容易
に他の介在物と識別できる。すなわち、前記の条件で光
学顕微鏡観察すれば、Ti炭硫化物の「色」は極めて薄
い灰色で、「形状」はJISのB系介在物に相当する粒
状(球状)として認められる。Ti炭硫化物の詳細判定
は前記の被検面をEDX(エネルギ−分散型X線分析装
置)などの分析機能を備えた電子顕微鏡で観察すること
によって行うこともできる。
たように、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G
0555に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方
法」によって60視野測定した値をいう。
えば、上記したような方法で溶製された後、通常の方法
による熱間での圧延及び鍛造によって、コネクティング
ロッド本体1とコネクティングロッドキャプ2がつなが
った一体物に成形された後、切削加工によるボルト穴の
加工が施される。その後、コネクティングロッド本体1
及びコネクティングロッドキャプ2に前記したような方
法によって常温で分割される。なお、必要に応じて当該
一体物の分割しようとする部位である大端部穴の内側
(図1におけるN部)の少なくとも一部に0.5mmR
以下の切り欠きが設けられることもある。次いで、分割
されたコネクティングロッド本体1及びコネクティング
ロッドキャプ2はボルト3でクランクシャフトに結合さ
れて組み立てられる。
の方法により試験炉を用いて真空溶製した。なお、Ti
酸化物の生成を防ぐために、Si及びAlで充分脱酸し
種々の元素を添加した最後にTiを添加して、Ti炭硫
化物のサイズと清浄度を調整するようにした。
明で規定する範囲内にある本発明例の鋼であり、表2に
おける鋼12〜24はその化学組成のいずれかが本発明
で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
の鋼を通常の方法によって鋼片とした後、1250℃に
加熱してから1200〜950℃の温度で直径30mm
の丸棒及び厚さ12mmで幅が60mmの鋼板に熱間鍛
造し、その後常温まで空冷した。
JIS4号試験片を切り出し、常温で引張試験を行っ
た。更に、常温引張試験後の破面の状態を走査型電子顕
微鏡(SEM)で観察した。
0555の図1に則って試験片を採取し、鏡面研磨した幅が
15mmで高さが20mmの被検面を、倍率が400倍
の光学顕微鏡で60視野観察して、Ti炭硫化物を他の
介在物と区分しながらその清浄度も測定した。Ti炭硫
化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60
視野観察して調査した。
した。すなわち、前記した熱間鍛造した厚さ12mmで
幅が60mmの鋼板を用いて、その厚さ方向に貫通孔を
開け、刃先摩損により穿孔不能となったときの貫通孔の
個数を数え、被削性の評価を行った。貫通孔の個数が1
000個に達したものはその時点で穿孔試験を中止し
た。穿孔条件は、JIS高速度工具鋼SKH51のφ8
mmストレ−トシャンクドリルを使用し、水溶性の潤滑
剤を用いて、穴の中心間隔10mm、送り0.15mm
/rev、回転数745rpmの条件で行った。
び厚さ12mmで幅が60mmの鋼板の表面は目視で観
察して鍛造割れの有無を確認した。
m以下のTi炭硫化物の清浄度が本発明で規定する範囲
内にある本発明例の鋼1〜11を素材とするものにあっ
ては、いずれも鍛造割れを生ずることもなく、良好な被
削性とともに、所望の800MPa以上の引張強度と1
0%以下の伸びとが得られており、常温引張試験後の破
面はすべてフラットな脆性破面であった。本発明例の鋼
のうちでもfn2≧0を満たすものは0.7以上の降伏
比を有し、降伏強度が高いことがわかる。
規定する含有量の範囲から外れた比較鋼のうち、C量と
fn3がそれぞれ規定値から低目に外れた鋼12及び鋼
24では引張強度が800MPaに達していない。
Nb量、B量、Al量及びPb量がそれぞれ規定値に対
して高目に外れた鋼13〜16、鋼18〜22には熱間
での鍛造割れが認められた。
れた鋼17では常温伸びが10%を超え、常温引張試験
後の破面は延性破面であった。
いずれも本発明で規定した条件から外れ、且つ、常温伸
びが10%を超えるため、常温引張試験後の破面は延性
破面であった。
23、及び、Nの含有量が本発明で規定する量を上回る
鋼14、鋼18の被削性は劣るものであった。更に、T
iの含有量が本発明で規定する量を下回るとともにNの
含有量が本発明で規定する量を上回る鋼20の被削性も
劣るものであった。
ある鋼3及び鋼11を素材として通常の熱間鍛造法によ
って、コネクティングロッド本体1とコネクティングロ
ッドキャプ2がつながった一体物を各々20体ずつ熱間
成形した。なお、各20体のうち5体には熱間成形の
後、図1のN部に0.3mmRの切り欠きを付けた。次
いで、前記した方法によって常温でコネクティングロッ
ド本体1及びコネクティングロッドキャプ2への分割テ
ストを行った。この結果、両方の鋼とも20体すべてに
フラットな脆性破面が得られ、切削加工による仕上げ整
形なしで使用できることが分かった。なお、両方の鋼と
も切り欠きを付けた各5体の分割は特に容易であった。
延性非調質鋼材を用いれば、コネクティングロッド本体
及びコネクティングロッドキャプをコストの低い新プロ
セスで製造することが可能で、産業上の効果は大きい。
Claims (1)
- 【請求項1】重量%で、C:0.20〜0.70%、S
i:1.50%以下、Mn:0.3〜2.0%、P:
0.15%以下、S:0.002〜0.2%、Cu:
0.2%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.02〜
2.0%、Mo:0.50%以下、V:0.50%以
下、Nb:0.17%以下、Ti:0.20%を超えて
0.50%以下、B:0.010%以下、Al:0.1
0%以下、N:0.008%以下、Pb:0.01〜
0.30%、下記の〜式で表されるfn1〜fn3
に関して、fn1≧0及びfn2≧0の少なくとも一つ
を満たすとともにfn3≧0をも満たし、残部はFe及
び不可避不純物の化学組成で、鋼中のTi炭硫化物の最
大直径が10μm以下で、且つ、その量が清浄度で0.
05%以上であることを特徴とする被削性に優れた高強
度・低延性非調質鋼材。 fn1=Si+2V−0.5・・・・・ fn2=Si+2V+5P−0.8・・・・・ fn3=C+(Si/10)+(Mn/5)+(5Cr/22)+1.65V −(5S/7)−0.8・・・・・ なお、上記式中の元素記号はその元素の重量%での含有
量を表す。
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- 1998-01-07 JP JP00185498A patent/JP3416868B2/ja not_active Expired - Fee Related
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