JPH11197796A - 溶鋼の造塊装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 得られる鋼塊の介在物不良を低減し、鋼塊肌
状態を改善し、更にはパイプ状欠陥の発生を抑制する溶
鋼の造塊装置を提供する。 【解決手段】 真空チャンバ１の中に、鋳型５と溶鋼注
入管４を備えた鋳込定盤３がロードセル９を介して架台
２に載置され、溶鋼注入管４の上方には、上部が開口
し、底部に溶鋼流出口１０ｂを有し、かつその溶鋼流出
口１０ｂは上下動自在のストッパロッド１１で密閉され
ている容器１０が配置され、容器１０の上部開口１０ａ
の付近には、溶鋼８を容器１０に注入する傾動可能な真
空誘導溶解炉７が配置されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は溶鋼の造塊装置に関
し、更に詳しくは、真空誘導溶解炉で溶製した溶鋼を鋳
型に鋳込んで造塊する際に、溶鋼の鋳込速度の制御が可
能であり、そのため、得られた鋼塊における介在物不良
の低減、また鋼塊肌状態の改善、更には、押湯部におけ
るパイプ状の欠陥不良の低減を可能にする溶鋼の造塊装
置に関する。

【０００２】

【従来の技術】真空誘導溶解法で精錬された溶鋼は真空
下で造塊されるが、従来からその造塊に用いられている
装置例を概略図として図３に示す。図３において、真空
チャンバ１の底部には架台２が設置され、その架台２の
上には、溶鋼注入管４と鋳型５が立設されている鋳込定
盤３が配置されている。そして前記した溶鋼注入管４と
鋳型５の間は、鋳込定盤３の中に形成されている湯道３
ａを介して接続され、溶鋼注入管の湯口４ａから注入さ
れた溶鋼は溶鋼注入管４を通り、更に湯道３ａを通り、
鋳型５の下部から上部に向かって湯上がりしていく。

【０００３】溶鋼注入管４の上方には、通常、タンディ
ッシュまたはレードルと呼ばれる溶鋼の受け容器６が配
設され、その受け容器６の底部には所定口径の溶鋼流出
ノズル６ａが形成されている。そして、この溶鋼流出ノ
ズル６ａと前記した溶鋼注入管の湯口４ａは位置合わせ
されている。受け容器６の上方には、傾動可能な真空誘
導溶解炉７が配置され、ここから所定の溶鋼が受け容器
６に注入できるようになっている。

【０００４】この装置を用いた造塊は次のようにして行
われている。まず、原料装入口１ａから溶解炉７に所定
の原料を装入したのち、所定の真空度下において、装入
原料の溶解および精錬を行う。ついで、図のように溶解
炉７を傾動して溶製されている溶鋼８を受け容器６に注
入する。このとき、覗き窓１ｂから溶鋼８の注入状態を
観察し、溶解炉７の傾動を調節することにより、受け容
器６内における溶鋼の深さを一定とするような操作が行
われる。

【０００５】受け容器６に注入された溶鋼８は溶鋼流出
ノズル６ａから順次流出していき、湯口４ａから溶鋼注
入管４に流入し、鋳込定盤３の湯道３ａを通って鋳型５
に流入していく。そして、溶鋼は鋳型５内を満たしたの
ち冷却されて鋼塊になる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来装置で造塊した鋼塊には次のような問題がある。
その１つは、溶鋼中に含まれている酸化物，窒化物、お
よび鋼塊肌を改善するために鋳型５の中で使用されるフ
ラックスが介在物として鋼塊に混在して介在物不良を引
き起こしやすいことである。また、そのことの派生現象
として得られる鋼塊肌の状態も悪くなることである。

【０００７】他の問題は次のことである。すなわち、鋳
型５を満たした溶鋼は、その後、冷却していくのである
が、この冷却時に収縮挙動を示すので、最終的に得られ
た鋼塊の上層中心部である押湯部には、いわゆる“ひ
け”と称するパイプ状の凹没欠陥が発生する。そして、
この部分は切断除去することが必要であるため、結果と
して、鋼塊の歩留まり低下が引き起こされることにな
る。

【０００８】このような問題に対しては、鋳型の最上部
に発熱材などを配置して溶鋼を保温することにより上記
パイプ状欠陥の発生を防止しているが、そのような処置
を施しても必ずしも満足すべき結果は得られていない。
本発明は、従来装置を用いた造塊時における上記した問
題を解決することができ、造塊した鋼塊における介在物
不良を低減し、また鋼塊肌を改善し、更には押湯部にお
けるパイプ状欠陥の発生を抑制することができる新規な
溶鋼の造塊装置の提供を目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成するために、図３で示した従来装置に関して検討を
加え、次のような問題点を抽出するに至った。まず、従
来装置における溶鋼の受け容器６、すなわち通常タンデ
ィッシュと呼ばれる容器は、溶解炉７から注入された溶
鋼８を貯留する機能を備えていないことである。

【００１０】したがって、受け容器６に注入された溶鋼
８は、そのまま、溶鋼流出ノズル６ａから溶鋼注入管４
の湯口４ａに流入する。そのため、溶鋼８の鋳型５への
鋳込速度を制御することは困難であり、同時に、前記鋳
込速度で規定される鋳型５内における湯上がり速度を制
御することは困難である。この装置の場合、溶鋼の鋳込
速度は溶鋼流出ノズル６ａの口径と受け容器６内に注入
された溶鋼８の溶鋼レベルで規定されることになる。そ
の場合、前者の規定要因は用いる受け容器６の仕様によ
って一義的に決まってくるが、後者の規定要因は溶解炉
７からの注入量の多寡によって決まる。操業に即してい
えば、溶解炉７の傾動の度合によって規定されることに
なる。

【００１１】そのため、実際の操業時においては、作業
者は覗き窓１ｂから溶鋼８の溶鋼レベルを観察し、それ
が一定となるように溶解炉７の傾動を調節しながら鋳込
み操作は進められている。しかしながら、溶解炉７の傾
動を微調節するということは可成り困難であり、例え
ば、受け容器６に最初に溶鋼８を注入するときは、一度
に多量の溶鋼が注入されるので、鋳込み操作の初期段階
では溶鋼の鋳込速度は大きくなってしまう。すなわち、
鋳型５内の湯上がり速度も大きくなってしまう。

【００１２】そのため、溶鋼の介在物は大きな鋳込速度
で湯口４ａに流入していく溶鋼に巻込まれた状態で鋳型
５に鋳込まれることになり、鋳型５内においても介在物
は溶湯の中に混在した状態になる。その結果、鋳型５で
得られた鋼塊の介在物不良の発生頻度は多くなりやすく
なるのである。本発明者らは、従来装置に関する上記し
た検討に踏まえ、従来装置の問題点は、受け容器６が溶
鋼の貯留機能を備えていないので注入された溶鋼の介在
物に対するキリング効果を発揮しないこと、また、溶鋼
の鋳込速度の制御が事実上不可能であるため、鋳込速度
が大きい場合には鋳込み時に介在物の巻込みを引き起こ
しやすいこと、更には押湯部における溶鋼の湯上がり速
度を調節できないのでパイプ状欠陥を引き起こしやすい
ことの３点に絞り込み、これら問題点の解決に関し鋭意
研究を行い、本発明の溶鋼の造塊装置を開発するに至っ
た。

【００１３】すなわち、本発明の溶鋼の造塊装置は、真
空チャンバの中に、鋳型と溶鋼注入管を備えた鋳込定盤
がロードセルを介して架台に載置され、前記溶鋼注入管
の上方には、上部が開口し、底部に溶鋼流出口を有し、
かつ前記溶鋼流出口は上下動自在のストッパロッドで密
閉されている容器が配置され、前記容器の上部開口の付
近には、溶鋼を前記容器に注入する傾動可能な真空誘導
溶解炉が配置されていることを特徴とする。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１は、本発明装置の基本構成を
示す概略図である。図１において、真空チャンバ１の中
には架台２が設置され、このうえに、溶鋼注入管４と鋳
型５を備えた鋳込定盤３が載置されている。そして、上
記架台２と鋳込定盤３の間にはロードセル９が介装され
ていて鋳込定盤３における重量変化を測定することがで
きるようになっている。

【００１５】このロードセル９の介装箇所は格別限定さ
れるものではないが、鋳込定盤３に立設されている溶鋼
注入管４や鋳型５の直下であることが好ましい。後述す
る溶鋼の鋳込み量の測定精度が高まるからである。ま
た、ロードセル９からの重量信号は後述するストッパロ
ッドの作動装置１２に入力されている。溶鋼注入管４の
上方には、容器１０が配置されている。この容器１０は
上部が開口部１０ａになっていて、底部には溶鋼流出口
１０ｂが形成されている。そして、この溶鋼流出口１０
ｂには、例えば黒鉛やアルミナなどから成るストッパロ
ッド１１が栓体として嵌め込まれており、このストッパ
ロッド１１は、その作動装置１２からの動作信号で上下
動できるようになっている。

【００１６】そして、上記容器１０の近辺には、真空誘
導溶解炉７が配置され、前記溶解炉７を傾動することに
より、溶製された溶鋼８が容器１０の上部開口１０ａか
ら容器１０内に注入できるようになっている。この装置
による造塊は次のようにして進められる。それを以下に
詳細に説明する。

【００１７】まず、作動装置１２からの動作信号でスト
ッパロッド１１を降下して容器１０の溶鋼流出口１０ｂ
を当該ストッパロッド１１で密閉する。ついで、溶解炉
７を傾動して溶製されている溶鋼８を容器１０に注入す
る。注入された溶鋼８は流出することなく容器１０に貯
留された状態になる。そして所定時間放置してキリング
処理を行う。その結果、溶解炉７から溶鋼とともに注入
された介在物は溶鋼の上に浮上分離する。

【００１８】そして、作動装置１２からの動作信号でス
トッパロッド１１を上方に移動させる。容器１０の溶鋼
流出口１０ｂは開となり、ここから、既に介在物が浮上
分離している溶鋼が溶鋼注入管４に流入し、鋳込定盤３
の湯道３ａを通って鋳型５を満たしていく。流入してい
く溶鋼の重量は、鋳込定盤３の下に設置されているロー
ドセル９によって時々刻々測定される。すなわち、この
ロードセル９の働きにより、流入する溶鋼の鋳込速度、
別言すれば、鋳型５における湯上がり速度を経時的に把
握することができる。

【００１９】そして、ロードセル９からの重量信号は作
動装置１２に入力され、ここでその時点での鋳込速度が
演算され、目的とする鋳込速度との偏奇が演算され、そ
の演算値に基づく動作信号がストッパロッド１１に出力
され、そのことによってストッパロッド１１の移動量が
微調整されて、溶鋼流出口１０ｂからの溶鋼流出量、ひ
いては鋳込速度が調整される。

【００２０】図２に、本発明装置を用いた鋳込速度の制
御例を示す。図中、実線は本発明装置例の場合、破線は
図３で示した従来装置例の場合をそれぞれ示している。
本発明装置例の場合は、ストッパロッド１１の上方への
移動量を小さくして鋳込みを開始することにより小さい
鋳込速度のままで鋳込みが継続される。容器１０内の溶
鋼では前記したようにそもそも介在物が浮上分離してい
るので介在物の鋳込みは抑制されているのみならず、鋳
込速度が小さいので、介在物が溶鋼に巻込まれてくると
いう事態の発生も抑制されているので、得られた鋼塊の
介在物不良や鋼塊肌状態の悪化も起こらない。

【００２１】そして、鋳型５に鋳込まれた溶鋼の溶鋼レ
ベルが押湯部に接近してくる時点で、ストッパロッド１
１の動作で溶鋼流出口１０ｂの開度を絞って鋳込速度、
すなわち鋳型５における湯上がり速度を図２のＡで示し
たように小さくする。その結果、押湯面近傍における冷
却はそこに徐々に供給されてくる溶鋼の熱で緩徐に進
み、そのためパイプ状欠陥の発生は抑制されるようにな
る。

【００２２】このような鋳込速度の制御により、本発明
装置で造塊した鋼塊では、その不良率は１.０％以下で
あった。しかし、図２の破線で示した鋳込み挙動を示す
従来装置の場合、得られた鋼塊の不良率は４.５％程度
であった。

【００２３】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明装
置は、まず、溶鋼を受ける容器が貯留機能を備えている
のでここで溶鋼中の介在物を浮上分離して清浄な溶鋼の
鋳込みが可能となる。また前記容器に配設されているス
トッパロッドと鋳込定盤の下に設置されているロードセ
ルから鋳型への溶鋼の鋳込速度を任意に調節することが
できるので、介在物の巻込みを防止できるとともに、押
湯部におけるパイプ状欠陥の発生を抑制することができ
る。

【００２４】したがって、本発明装置は、従来の装置に
比べて、鋼塊の介在物不良を低減し、鋼塊肌状態を改善
し、またパイプ状欠陥の発生を抑制する溶鋼の造塊装置
としてその工業的価値は大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置の基本構成を示す概略図である。

【図２】鋳込速度の制御例を示すグラフである。

【図３】従来の装置例を示す概略図である。

【符号の説明】

１ 真空チャンバ １ａ 原料装入口 １ｂ 覗き窓 ２ 架台 ３ 鋳込定盤 ４ 溶鋼注入管 ４ａ 溶鋼注入管４の湯口 ５ 鋳型 ６ 溶鋼の受け容器 ６ａ 溶鋼流出ノズル ７ 真空誘導溶解炉 ８ 溶鋼 ９ ロードセル １０ 容器 １０ａ 容器１０の上部開口 １０ｂ 溶鋼流出口 １１ ストッパロッド １２ ストッパロッド１１の作動装置

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 真空チャンバの中に、鋳型と溶鋼注入管
   を備えた鋳込定盤がロードセルを介して架台に載置さ
   れ、前記溶鋼注入管の上方には、上部が開口し、底部に
   溶鋼流出口を有し、かつ前記溶鋼流出口は上下動自在の
   ストッパロッドで密閉されている容器が配置され、前記
   容器の上部開口の付近には、溶鋼を前記容器に注入する
   傾動可能な真空誘導溶解炉が配置されていることを特徴
   とする溶鋼の造塊装置。