JPH11183823A - 共振光学装置 - Google Patents

共振光学装置

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JPH11183823A
JPH11183823A JP9354544A JP35454497A JPH11183823A JP H11183823 A JPH11183823 A JP H11183823A JP 9354544 A JP9354544 A JP 9354544A JP 35454497 A JP35454497 A JP 35454497A JP H11183823 A JPH11183823 A JP H11183823A
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JP
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resonator
optical device
vibration
base
reflection mirror
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JP9354544A
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Yasushi Tanijiri
靖 谷尻
Hiroaki Ueda
裕昭 上田
Kenji Ishibashi
賢司 石橋
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Minolta Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きさと形状のみならず材質に起因するねじ
りばねの特性を考慮して、高速でかつ広範囲に光を走査
することが可能な共振光学装置を提供する。 【解決手段】 先端に反射ミラーを有し基端を基台に固
定されたロッド状の共振子に、磁石およびコイルより振
動子を介して周方向の振動を与えてねじり共振させる。
共振子を周方向に繊維を配した炭素繊維強化樹脂で形成
して、密度に対する横弾性率と横弾性率に対するねじり
許容応力とを高めて、固有振動数と振幅限界を大きくす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ミラーにより光を
走査する光学装置に関し、より具体的には、ミラーを保
持する部材を共振させて高速で光走査を行う共振光学装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ミラーを回動させるガルバノ
メータによって光を走査することが行われている。ガル
バノメータは光を広範囲に走査し得るという特長を有す
る反面、モータ等により機械的に駆動されるため、駆動
機構を含めた全体構成が大きくなる上、駆動に大きなエ
ネルギーが必要になって、広い範囲を高速で走査するこ
とは困難であった。
【0003】そこで、共振現象を利用してミラーを高速
で回動させる共振光学装置が提案されている。共振光学
装置の例を図19に示す。この共振光学装置は、ロッド
状の鉄製の共振子51と、共振子51の先端に取り付け
られた反射ミラー52と、共振子51の基端を固定する
不動の基台53と、共振子51から水平に突出する同材
質の振動子54と、振動子54の端部を上下方向から挟
む永久磁石55a、55bと、振動子54が貫通するコ
イル56a、56bより成る。磁石55a、55bおよ
びコイル56a、56bは基台53に固定保持されてい
る。
【0004】鉄製の振動子54はコイル56a、56b
への通電により磁化するが、コイル56a、56bの巻
き方向および通電方向は、振動子54の一方の端部と他
方の端部が互いに逆極性になるように設定されている。
また、磁石55a、55bは図示した極性を有してお
り、磁化した振動子54の両端部は、互いに上下逆方向
の力を受けることになる。したがって、コイル56a、
56bに交流を通じることにより、振動子54は、ロッ
ド状の共振子51をその軸の回りにねじるように振動す
る。
【0005】振動子54を振動させる交流の周波数を共
振子51の固有振動数に略一致させることにより、共振
子51は振動子54の振動に共振し、その先端に取り付
けられたミラー52も振動することになる。共振子51
の基端は、基台53によって固定されているから、共振
子51の振動の振幅(振動角)は先端で最大となり、ミ
ラー52もこれと同じ振幅で振動する。ミラー52の振
動により、これに入射する光の反射方向は変化し、これ
により光の走査が行われる。
【0006】共振子51の縦断面を図20に示す。共振
子51は稠密に形成されており、基端から先端に向かっ
て次第に細くなる形状とされている。共振子51の基端
近傍には貫通孔51aが、先端部には溝51bが形成さ
れている。振動子54は貫通孔51aに通して固定さ
れ、反射ミラー52は、溝51bに取り付けられて上下
両側から挟むようにして固定されている。
【0007】このような共振光学装置は、機械的に駆動
されるガルバノメータに比べて高速で光を走査すること
が可能である上、小型軽量に構成することができるか
ら、その用途は広い。例えば、光を網膜に導き網膜上で
光を走査することにより映像を提示する走査式の頭部装
着型表示装置(HMD)が近年提案されているいるが、
光の高速走査が必須でしかも小型軽量であることが望ま
れるこのような表示装置の走査部として、適していると
いえる。共振光学装置は、走査速度が高いほど、また、
走査幅が広いほど好ましいものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】先端にミラーを取り付
け基端を固定した太さ均一のねじりばねの場合、その固
有振動数fnは、ばね定数をk、ミラーの慣性モーメン
トをIとし、ばね自体の慣性モーメントを無視すると、
式(1)で表される。 fn = 1/(2・π)・(k/I)1/2 = 1/(2・π)・{(π・G・d4)/(32・I・L)}1/2 ・・・(1)
【0009】ここで、Gはばねの横弾性率、dはばねの
直径、Lはばねの長さである。式(1)は、固有振動数
fnが、ばね径dの2乗に比例し、ばね長Lの平方根に
反比例することを表している。ミラーを高速で振動させ
る、すなわち、ばねの固有振動数fnを大きくするため
には、ばね径dを大きくし、ばね長Lを短くすることが
有効である。
【0010】一方、ばねの振幅限界θlimは、許容ねじ
り応力をτとすると、式(2)で表される。 θlim = 2・L・τ/(G・d) ・・・(2)
【0011】式(2)は、振幅限界θlimが、ばね長L
に比例し、ばね径dに反比例することを表している。し
たがって、ミラーを大きく振動させる、すなわち、ばね
の振幅限界θlimを大きくするためには、ばね長Lを長
くし、ばね径dを小さくすることが有効である。
【0012】このように、固有振動数fnを高めるため
に満たすべき条件と、振幅限界θlimを大きくするため
に満たすべき条件は、ばねの大きさに関しては相反して
いる。この制約の下で固有振動数fnを高めかつ振幅限
界θlimを大きくするために、図20に示した従来の共
振子は、基端から先端に向かって次第に細くなる形状と
されている。しかしながら、ばねの大きさと形状だけで
固有振動数fnを高め振幅限界θlimを大きくすることに
は自ずと限界がある。
【0013】ねじりばね自体の慣性モーメントを考慮す
ると、その固有振動数fnは式(3)となる。 tan{2・π・fn・L/(G/ρ)1/2}=d4・(ρ・G)1/2/(64・I・fn) ・・・(3) ここで、ρはバネの密度であり、式(3)は、ばね径
d、ばね長L、横弾性率Gのみならず、密度ρも固有振
動数fnを規定する因子であることを表している。
【0014】本発明は、大きさと形状のみならず材質に
起因するねじりばねの特性を考慮して、高速でかつ広範
囲に光を走査することが可能な共振光学装置を提供する
ことを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、与えられる振動に共振するロッド状の
共振子と、共振子の先端に保持された反射ミラーと、共
振子に周方向の振動を与える駆動部と、不動の基台とを
備え、共振子の基端を基台に固定し、共振子を駆動部か
らの振動に共振させてねじり振動させることにより反射
ミラーを振動させて、反射ミラーに入射する光を走査す
る共振光学装置において、共振子は、その横弾性率を
G、密度をρで表すとき、式(4)を満たすものとす
る。 G/ρ ≧ 12×106 ・・・(4) ただし、単位はPa・kg-1・m3である。
【0016】G/ρの値を大きくしてこの範囲に設定す
ると、式(3)より、共振子の固有振動数fnは大きく
なり、反射ミラーを高速で振動させることができる。上
記範囲は、鉄等の金属材料のG/ρ値を上回るものであ
り、従来の共振光学装置を超える振動数が得られること
になる。G/ρ値を大きくすることは、密度ρを一定と
して横弾性率Gを大きくすることにより、また、横弾性
率Gを一定として密度ρを小さくすることにより達成さ
れるが、後者は式(2)で規定される振幅限界θlimに
影響を及ぼすことがない。
【0017】上記目的を達成するために、本発明ではま
た、与えられる振動に共振するロッド状の共振子と、共
振子の先端に保持された反射ミラーと、共振子に周方向
の振動を与える駆動部と、不動の基台とを備え、共振子
の基端を基台に固定し、共振子を駆動部からの振動に共
振させてねじり振動させることにより反射ミラーを振動
させて、反射ミラーに入射する光を走査する共振光学装
置において、共振子は、その横弾性率をG、ねじり許容
応力をτで表すとき、式(5)を満たすものとする。 τ/G ≧ 0.01 ・・・(5) τおよびGは同次元の物理量であるから、τ/Gは無次
元数である。
【0018】τ/Gの値を大きくしてこの範囲に設定す
ると、式(2)より、共振子の振幅限界θlimは大きく
なり、共振子の破壊を招くことなく、反射ミラーを大き
い振幅で振動させることができる。上記範囲は鉄等の金
属材料のτ/G値を上回るものであり、従来の装置より
も大きな振幅限界を有する共振光学装置となる。
【0019】共振子を、繊維強化樹脂で形成されその繊
維で周方向に強化されたねじりばねとするとよい。力の
加わる方向を強化することで、共振子の横弾性率を金属
並みかそれ以上にすることが可能になり、しかも樹脂で
あって密度が小さいから、式(4)が容易に満たされ
る。また、同一種の繊維強化樹脂でも様々な特性に設定
することが可能であり、式(5)を満たすねじり許容応
力と横弾性率の樹脂の選択も容易である。共振子を中空
とすることも可能であり、これにより共振子自体の慣性
モーメントを小さくすることができて、より固有振動数
を高めることができる。
【0020】繊維強化樹脂として炭素繊維強化樹脂を用
いるとよい。この樹脂は、密度が小さい上、横弾性率や
ねじり許容応力を容易に大きくすることができるから、
式(4)、(5)を満足するのに適している。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の共振光学装置の実施形態
について図面を参照して説明する。本発明の共振光学装
置の共振子は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)、ガラス
繊維強化樹脂(GFRP)、ボロン繊維強化樹脂(BF
RP)等の繊維で強化された樹脂で形成することができ
る。以下に述べる各実施形態では、このうちCFRPを
使用している。まず、ねじりばねとしてのCFRPの特
性について説明する。
【0022】図1に、CFRPの密度ρと横弾性率Gの
関係を示す。図1には、従来のばね材料との比較のため
に、いくつかの金属の密度と横弾性率も示している。一
般に金属は、密度ρと横弾性率Gが1対1に対応し、密
度が増大すればこれに略比例して横弾性率が増大する傾
向にある。例えば、アルミニウム(Al)、鉄(F
e)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)および
イリジウム(Ir)はこの順に密度ρが大きくなるが、
横弾性率Gもこの順で略直線的に大きくなっている。図
示した金属材料のうちG/ρ値が最大のものはモリブデ
ンであるが、その値は11.8×106Pa・kg-1・m3
である。
【0023】これに対し、CFRPは密度ρがほぼ一定
でありながら、その横弾性率Gは、炭素繊維の含有率や
特性あるいは配向に応じて様々な値をとる。具体的に
は、密度ρは1.3×103〜2.2×103kg・m-3
度であって、アルミニウムの2.7×103kg・m-3
りも小さい。横弾性率Gは、30×109〜500×1
9Pa以上であってきわめて広範囲にわたり、密度2
2×103kg・m-3のイリジウムの値230×109
aを超えるものも多い。CFRPのG/ρ値は12×1
6Pa・kg-1・m3以上であり、モリブデンや鉄よりも
大きい。
【0024】図2に、CFPRの横弾性率Gとねじり許
容応力τの関係を示す。図2には、従来のばね材料との
比較のために、ねじりばね材料として最も広く用いられ
ている焼入れ鋼(Fe)も示している。鉄は横弾性率G
が83×109Pa、ねじり許容応力τが600×106
Paであり、τ/G値は0.0072である。一般に、
金属の許容応力は弾性率に比例するので、モリブデンや
イリジウム等の図示しない他の金属でもτ/G値に大き
な差異はない。
【0025】一方、CFRPのねじり許容応力τは、横
弾性率と同様に、炭素繊維の含有率や特性あるいは配向
に応じて様々な値をとる。例えば、横弾性率Gが30×
109Paであっても、ねじり許容応力τは370×1
6〜2000×106Pa以上の範囲となる。また、横
弾性率Gが増大するにつれてねじり許容応力τの最低値
も増大する。CFRPのτ/G値を0.01以上とする
ことも容易である。
【0026】G/ρ値が12×106Pa・kg-1・m3
上でτ/G値が0.01以上のCFRP製の共振子は、
従来の金属製の共振子と比べて、より大きな固有振動数
fnと、より大きな振幅限界θlimを有することにな
り、大きさや形状が同じであっても、より高い振動数で
振動し、より大きく振動させることが可能である。各実
施形態の共振子は、この条件を満たすものである。GF
RP、BFRP等の他の繊維強化樹脂もCFRPに類似
する特性を有しており、上記条件を満たすことができ
る。
【0027】図3に第1の実施形態の共振光学装置1の
外観を示す。共振光学装置1は、CFRP製のロッド状
の共振子11、共振子11の先端に保持された反射ミラ
ー12、共振子11の基端を固定する基台13、共振子
11に水平方向に取り付けられた細い棒状の振動子14
a、14b、振動子14a、14bの端部を上下方向か
ら挟む永久磁石15a、15b、および振動子14a、
14bが貫通するコイル16a、16bより成る。
【0028】磁石15a、15bおよびコイル16a、
16bは基台13に固定保持されており、振動子14
a、14bと離間している。振動子14a、14bは鉄
等の磁性体材料から成り、同材質のリング14cによっ
て共振子11の外周に固定されている。共振光学装置1
の動作原理は、図19の従来の装置と同じであり、重複
する説明は省略する。
【0029】共振子11は基端から先端まで中空に形成
されており、円筒形である。前述のように、共振子11
はその材料特性により大きな固有振動数fnと大きな振
幅限界θlimを有するが、このように中空にして慣性モ
ーメントを小さくしたことで、さらに固有振動数fnが
高められている。
【0030】第2の実施形態の共振光学装置2の外観を
図4に示す。共振光学装置2は、1つの反射ミラー12
を、2つの共振子11で両側から保持するものである。
それぞれの共振子11に振動子14a、14bが設けら
れ、駆動用の磁石15a、15bおよびコイル16a、
16bも各々に対して備えられている。単一の共振子1
1を用いる場合に比べて、バネ定数が略2倍になり固有
振動数fnが略1.4(平方根2)倍になって、より高速
で光を走査することができる。
【0031】第3の実施形態の共振光学装置3の外観を
図5に示す。共振光学装置3は、上記共振光学装置2と
同様に、1つの反射ミラー12を、2つの共振子11で
両側から保持するものであるが、共振子11に振動を与
える構成が異なっている。共振光学装置3は、2つの永
久磁石17a、17b、および2つのコイル18a、1
8bを備え、基台13の一部を成す磁石17a、17b
の上部で共振子11の基端を固定している。
【0032】2つの磁石17a、17bの極性は、図示
したように、上下方向かつ同じ向きに設定されている。
反射ミラー12の下面から磁石17a、17bまでの各
部の表面には、酸化鉄等の磁性体が連続して塗着されて
おり、磁石17a、17bの磁力はミラー12の下面に
まで伝わる。
【0033】コイル18a、18bは、ミラー12の下
方に、共振子11の軸に対して垂直な方向に並べて配置
されている。コイル18a、18bの巻き方向および通
電方向は、磁界が上下方向かつ互いに逆向きに生じるよ
うに設定されており、ミラー12には、一方の側部を押
し上げ他方の側部を引き下げる力が働く。したがって、
コイル18a、18bに交流を通じることにより、ミラ
ー12は2つの共振子11を軸回りにねじるように振動
する。すなわち、共振光学装置3では、ミラー12が振
動子を兼ねている。
【0034】第4の実施形態の共振光学装置4の外観を
図6に示す。共振光学装置4では、共振子11の外形を
四角柱とした点で第1の実施形態の共振光学装置1と異
なっている。この共振子11も中空とされており、内周
面も四角柱状である。なお、小さな反射ミラー12を取
り付けた例を図示しているが、より大きな反射ミラーを
取り付けるようにしても構わない。
【0035】第1〜第3の実施形態の共振光学装置1、
2、3の共振子11の構造を模式的に図7に示す。円筒
の中心軸に対して略+45゜および略−45゜の傾きと
なるように、炭素繊維25が螺旋状に多重に巻かれてい
る。炭素繊維25を円筒の周方向に配したことにより、
共振子51はねじり振動方向に強化されている。共振子
51をねじる力は炭素繊維を引張る力となるが、炭素繊
維の縦弾性率は1×1011〜8×1011Pa程度であ
り、引張り許容応力は1×109Pa以上であるから、
G/ρ値およびτ/G値を前述の条件を満たすように設
定することは容易である。
【0036】なお、円筒の中心軸に対する炭素繊維の傾
きの大きさは任意であり、例えば、略垂直にして円周を
成すようにしてもよく、多重の層ごとに傾きを変化させ
るようにしてもよい。円筒の中心軸に対する炭素繊維の
傾きを大きくして垂直に近づけるほど周方向の強化の度
合いが高まり、小さくして平行に近づけるほど軸方向の
強化の度合いが高まることになる。
【0037】円筒形の共振子11は、円柱状の仮心材に
炭素繊維25を巻き付けつつ溶融状態の樹脂を加えて形
成し、樹脂を硬化させた後に仮心材を引き抜くことによ
って製造する。仮心材を溶かして除去するようにしても
よい。多角柱の仮心材を使用すれば、多角柱形の筒状の
共振子とすることも可能であり、第4の実施形態の共振
光学装置4はこの方法で製造したものである。
【0038】均一な太さの仮心材を用いることに代え
て、一端から他端に向かって次第に細くなる仮心材を用
いて、基台13に固定される基端が太く、反射ミラー1
2を固定する先端が細い共振子としてもよい。そのよう
な形状の共振子では、慣性モーメントが低下して、固有
振動数fnを一層高めることができる。
【0039】中央部が円柱で、一端部が中央部よりも太
い多角柱、他端部が中央部よりも細い多角柱の仮心材を
用いて、共振子を製造してもよい。仮心材は太い側の端
部から引き抜く。こうして製造した共振子は外形は円柱
状でありながら、両端部の内周面が円柱面でなくなっ
て、以下に述べるように、反射ミラー12や基台13と
の結合が確実になる。
【0040】共振子11と反射ミラー12の結合につい
て説明する。結合された状態の共振子11とミラー12
の縦断面を図8に例示する。(a)は、ミラー12に結
合部12aを形成しておき、この結合部12aを共振子
11の先端部に挿入して、接着剤26により内周面に固
着したものである。(b)は、結合部12aの外径を共
振子11の先端部の内径よりも僅かに大きく形成してお
き、結合部12aを共振子11の先端部に圧入すること
により、両者を嵌合させたものである。(c)は、結合
部12aを圧入した共振子11の先端部を、さらに外側
からリング12bで締め付けて固定したものである。
【0041】このようにして共振子11とミラー12を
固く結合することにより、共振子11の先端部に対する
ミラー12の振動方向への動きが完全に防止されて、ミ
ラー12を共振子11の先端と同じ振動数かつ同じ振幅
で振動させることができる。共振子11の先端部の内周
面を角柱面とし、結合部12aをこれと相補的な形状と
しておけば、振動方向の滑りが皆無となり結合はより確
実になる。
【0042】図9に、共振子11と反射ミラー12の結
合の他の例の外観を示す。(a)は、ミラー12の背面
を共振子11の先端部の外周面と同じ曲率の凹面にし
て、接着剤26により固着したものである。(b)は、
共振子11の先端部を締め付けるリング12cによっ
て、ミラー12をその外周面に固定したものである。
【0043】ここで用いる反射ミラー12の構造を模式
的に図10に示す。ミラー12は、アモルファスガラス
12dに結晶化ガラス12eを混入した強化ガラスで形
成されており、表面に反射剤27がコートされている。
強化ガラスは外力により歪み難く、高速で振動させても
撓まず、光学的性能が損なわれる恐れがない。
【0044】共振子11と基台13の結合について説明
する。結合された状態の共振子11と基台13の縦断面
を図11に例示する。(a)は、基台13に結合部13
aとなる突起を形成しておき、この結合部13aを共振
子11の基端部に挿入して、接着剤26により内周面に
固着したものである。(b)は、結合部13aの外径を
共振子11の基端部の内径よりも僅かに大きく形成して
おき、結合部13aを共振子11の基端部に圧入するこ
とにより、両者を嵌合させたものである。(c)は、結
合部13aを圧入した共振子11の基端部を、さらに外
側から広幅のリング13bで締め付けて固定したもので
ある。
【0045】(d)は、基台13に、共振子11の基端
部の外径よりも僅かに小さい口径の貫通孔を形成してお
き、これに共振子11の基端部を圧入するとともに、結
合部材21を基端部に挿入し、結合補助部材22を用い
て結合部材21を内側から共振子11に押圧して固定し
たものである。結合部材21の外観を図12に示す。結
合部材21は、共振子11に挿入される前部21a、基
台13の後面に平行なフランジ部21c、および後部2
1bより成る。前部21aは筒状で、複数個所に共振子
11の軸方向に沿う切り込み21dが形成されており、
その内周面は先端に向かって細くなる円錐面とされてい
る。後部21bは内周面にねじ溝が形成されており、フ
ランジ部21cは基台13にねじ止めされる。
【0046】結合補助部材22の前部22aは先端に向
かって細くなる円錐面とされており、後部22bの外周
面にはねじ山が形成されている。結合補助部材22を結
合部材21にねじ係合させて深く進入させることによ
り、結合補助部材22の前部22aが結合部材21の前
部21aを押し拡げる。これにより共振子11の基端部
の内周面が押圧され、共振子11は外周面と内周面の双
方で基台13に固定されることになる。
【0047】(a)〜(d)のようにして共振子11と
基台13を固く結合することにより、基台13に対する
共振子11の基端の動きが完全に止められる。したがっ
て、共振子11の先端の振幅が小さくなる恐れがなく、
また、振動のエネルギーが共振子11と基台13との間
で失われることもない。なお、反射ミラー12の固定の
場合と同様に、共振子11の基端部の内周面を角柱面と
し、結合部13aをこれと相補的な形状として、結合の
確実性をさらに高めるようにしてもよい。
【0048】共振子11と振動子14a、14bの結合
部位の縦断面を図13に示す。振動子14a、14bは
図に現れていないが、リング14cと一体に形成され
て、紙面の前後方向に配設されている。リング14c
は、その内径が室温で共振子11の外径よりも少し小さ
くなるように設定されており、共振子11を外側から締
め付けるようにして共振子11の外周面に固定されてい
る。リング14cを熱して膨張させ、内径が大きくなっ
た状態にあるときに共振子11を通し、室温まで冷却し
て収縮させることにより、両者を結合する。
【0049】筒状の共振子11に、振動子14a、14
bを通すための貫通孔を設けると、その部位の強度が低
下してしまい共振子11の耐久性が損なわれるが、振動
子14a、14bをリング14cと一体化して共振子1
1の外周面に固定したことで、その不都合が防止され
る。共振子11を基端から先端に向けて細くなる形状と
するときは、共振子11を先端からリング14cに圧入
することにより、両者を結合してもよい。また、接着剤
で固着することも可能である。リング14cの内周面に
突起を形成して、結合をより確実にしてもよい。その場
合、炭素繊維を切断して強度低下を招くことがないよう
に、突起の大きさや形状を設定する。
【0050】第5の実施形態の共振光学装置5の外観を
図14に示す。この共振光学装置5は、上記各実施形態
の共振光学装置のように、共振子11に振動子14a、
14bを取り付けるのではなく、CFRP製の筒状の共
振子11と基台13の間に振動部19を設けてこれに振
動子14を取り付け、振動子14により振動部19を振
動させてその振動を共振子11に伝達して共振させるよ
うにしたものである。
【0051】振動部19から反射ミラー12までの縦断
面を図15に示す。振動部19は鉄等の金属製であり、
内部は中空とされていない。振動部19には貫通孔19
aが形成されており、これに磁性体材料から成る振動子
14を通して固定する。振動部19は、稠密であって貫
通孔19aの全体にわたって振動子14の外周面に接す
るから、貫通孔19aを形成することにより強度が低下
する恐れはない。
【0052】反射ミラー12は結合部12aを有してお
り、結合部12aに形成された溝に圧入されて固定され
ている。結合部12aは、前述の図8(b)に示した方
法で共振子11の先端に結合されているが、同図の
(a)や(c)の方法によって結合することもできる。
振動部19は、結合部19bとなる四角柱状の突起が後
端に形成されており、これと相補的な形状の凹部を基台
13に形成して両者を嵌合させることにより、基台13
に固定されている。振動部19は稠密であって強度が高
いから、ねじ止め等の他の方法によって基台に固定する
ようにしてもよい。
【0053】共振子11と振動部19の結合について説
明する。結合前の共振子11と振動部19の外観を図1
6に、結合された状態の両者の縦断面を図17に例示す
る。いずれの例でも、共振子11の基端部の内周面を断
面が多角形となるように形成しておき、振動部19の前
端に結合部19cとなる突起を形成して、両者を係合さ
せて接着剤により結合する。
【0054】図16の(a)は、結合部19cを四角柱
とし、共振子11の内周面を結合部19と同じかそれよ
りも僅かに大きい形状としたものである。図16の
(b)は、結合部19cを四角錐台とし、共振子11の
内周面も同じ傾斜の四角錐台状としたものである。図1
7の(a)はこの結合の断面を示す。結合部19cの先
端は共振子11の基端面の開口よりも小さく、結合部1
9cの基部は共振子11の基端面の開口よりも大きく形
成されており、結合部19cを共振子11の基端部に押
し込むことで、結合部19cの外周面が共振子11の内
周面に密接する。したがって、結合部19cや共振子1
1の基端部の内周面の大きさに作製誤差があったとして
も、両者はがたつきなく強固に固定される。
【0055】図16の(c)は、結合部19cを四角錐
台とし、共振子11の内周面を結合部19cよりも僅か
に小さい四角錐台状とするとともに、結合部19cに共
振子の中心軸に沿う深い溝19dを形成したものであ
る。図17の(b)はこの結合の断面を示す。共振子1
1の基端部の内周面が結合部19cを上下方向から挟み
つけることになり、両者はがたつきなく強固に固定され
る。なお、ここでは溝19dを水平方向に形成してして
いるが、垂直方向に形成してもよい。
【0056】このようにして、振動部19を共振子11
に結合することにより、振動部19の振動が失われるこ
となく共振子11に伝達される。特に、図16(c)お
よび図17(b)のように溝19dを形成すると、振動
部19がそれだけ軽量になってより小さなエネルギーで
振動させることが可能になり、好ましい。
【0057】本発明の共振光学装置を、走査式のHMD
に適用した例を図18に示す。図18において、(a)
はHMD30の概略構成を示す側面図であり、(b)は
その一部を示す平面図である。HMD30は、レーザ3
1、集光レンズ32、主走査部33、副走査部34、ハ
ーフミラー35、凹面ミラー36および不図示の制御部
より成る。
【0058】レーザ31は可視領域のレーザ光を発し、
主走査部33はそのレーザ光を観察者の眼Eに対して水
平方向に走査する。副走査部34は主走査部33によっ
て走査されるレーザ光をさらに観察者の眼Eに対して垂
直方向に走査する。ハーフミラー35は、副走査部34
からのレーザ光を凹面ミラー36に向けて反射し、凹面
ミラー36による反射光を透過させて観察者の眼Eに導
く。集光レンズ32は、上記光路を進むレーザ31から
のレーザ光を、観察者の眼Eの網膜に点状光として結像
させる。
【0059】制御部が、映像信号に基づいてレーザ31
の発する光を変調させ、主走査部33と副走査部34に
よる走査と変調を同期させることにより、観察者の眼E
の網膜に2次元の映像が形成される。これにより、観察
者には前方に映像Vが表示されているように観察され
る。
【0060】主走査部33は、精細度が高くフリッカの
ない高品位の映像を提供するためには、数十kHz程度
以上の周波数で走査する必要があり、広画角の映像を提
供するためには、10゜程度以上の走査角を有すること
が望ましい。第1、第4、第5の実施形態の共振光学装
置1、4、5はこれらの要求を満足するものであり、H
MD30では主走査部33としてこれらの装置のうちの
1つを採用している。走査周波数をより高くする場合に
は、第2または第3の実施形態の共振光学装置2または
3を用いることができる。
【0061】副走査部34は、主走査部33と同程度の
走査角を有することが望まれるが、その走査周波数は、
主走査部33の数百分の1程度でよい。この条件は図1
9に示した従来の共振光学装置でも満たし得るが、ここ
では共振光学装置1、4または5を使用している。これ
らの装置1、4、5は従来の装置に比べて軽量であり、
人の身体に装着する装置としてより好ましいからであ
る。
【0062】HMD30は様々な映像分野で利用するこ
とができるが、高速で広範囲の走査を行い得るから、特
に、バーチャルリアリティやフライトシミュレーション
のように、現実感の高い動画を提供するのに有用であ
る。
【0063】
【発明の効果】請求項1の共振光学装置によるときは、
共振子の固有振動数を大きくすることが可能であり、光
を高速で走査することができる。しかも、固有振動数を
大きくすることに伴って振幅限界が小さくなることを避
けることができるから、高速走査と広範囲の走査の両立
が可能になる。また、固有振動数を高めるために共振子
を太く形成する必要がなく、装置全体を小型かつ軽量に
することができる。
【0064】請求項2の共振光学装置によるときは、共
振子を大きく振動させることが可能になって、光を広範
囲に走査することができる。しかも、固有振動数の低下
を伴うことなく振幅限界を大きくすることができるか
ら、高速走査と広範囲の走査の両立が可能である。ま
た、振幅限界を大きくするために共振子を長く形成する
必要がなく、装置全体を小型かつ軽量にすることができ
る。
【0065】請求項3や請求項4の共振光学装置は、高
速で広範囲を走査することが可能である上、小型できわ
めて軽量である。したがって、走査式のHMDの走査部
として用いるのに適している。また、耐久性の高い装置
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 炭素繊維強化樹脂および金属の密度と横弾性
率の関係を示す図。
【図2】 炭素繊維強化樹脂および金属の横弾性率とね
じり許容応力の関係を示す図。
【図3】 第1の実施形態の共振光学装置の外観を示す
斜視図。
【図4】 第2の実施形態の共振光学装置の外観を示す
斜視図。
【図5】 第3の実施形態の共振光学装置の外観を示す
斜視図。
【図6】 第4の実施形態の共振光学装置の外観を示す
斜視図。
【図7】 共振子の構造を模式的に示す破断斜視図。
【図8】 共振子と反射ミラーの結合の例を示す縦断面
図。
【図9】 共振子と反射ミラーの結合の他の例を示す斜
視図。
【図10】 反射ミラーの構造の例を模式的に示す断面
図。
【図11】 共振子と基台の結合の例を示す縦断面図。
【図12】 共振子と基台を結合する結合部材の斜視
図。
【図13】 共振子と振動子の結合を示す縦断面図。
【図14】 第5の実施形態の共振光学装置の外観を示
す斜視図。
【図15】 振動部、共振子および反射ミラーの縦断面
図。
【図16】 共振子と振動部の結合の例を示す斜視図。
【図17】 共振子と振動部の結合の例を示す縦断面
図。
【図18】 本発明の共振光学装置を用いた走査式HM
Dの概略構成を示す図。
【図19】 従来の共振光学装置の外観を示す斜視図。
【図20】 従来の共振子の縦断面図。
【符号の説明】
1、2、3、4、5 共振光学装置 11 共振子 12 反射ミラー 12a 結合部 12b、12c リング 12d アモルファスガラス 12e 結晶化ガラス 13 基台 13a 結合部 13b リング 14、14a、14b 振動子 (駆動部) 14c リング 15a、15b 永久磁石 (駆動部) 16a、16b コイル (駆動部) 17a、17b 永久磁石 (駆動部) 18a、18b コイル (駆動部) 19 振動部 (駆動部) 19a 貫通孔 19b、19c 結合部 19d 溝 21 結合部材 22 結合補助部材 25 炭素繊維 26 接着剤 27 反射剤 30 走査式HMD 31 レーザ 32 集光レンズ 33 主走査部 34 副走査部 35 ハーフミラー 36 凹面ミラー

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 与えられる振動に共振するロッド状の共
    振子と、前記共振子の先端に保持された反射ミラーと、
    前記共振子に周方向の振動を与える駆動部と、不動の基
    台とを備え、前記共振子の基端を前記基台に固定し、前
    記共振子を前記駆動部からの振動に共振させてねじり振
    動させることにより前記反射ミラーを振動させて、前記
    反射ミラーに入射する光を走査する共振光学装置におい
    て、 前記共振子は、その横弾性率をG、密度をρで表すと
    き、 G/ρ ≧ 12×106 Pa・kg-1・m3 を満たすことを特徴とする共振光学装置。
  2. 【請求項2】 与えられる振動に共振するロッド状の共
    振子と、前記共振子の先端に保持された反射ミラーと、
    前記共振子に周方向の振動を与える駆動部と、不動の基
    台とを備え、前記共振子の基端を前記基台に固定し、前
    記共振子を前記駆動部からの振動に共振させてねじり振
    動させることにより前記反射ミラーを振動させて、前記
    反射ミラーに入射する光を走査する共振光学装置におい
    て、 前記共振子は、その横弾性率をG、ねじり許容応力をτ
    で表すとき、 τ/G ≧ 0.01 を満たすことを特徴とする共振光学装置。
  3. 【請求項3】 前記共振子は、繊維強化樹脂で形成され
    その繊維で周方向に強化されたねじりばねであることを
    特徴とする請求項1または請求項2に記載の共振光学装
    置。
  4. 【請求項4】 前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化樹脂で
    あることを特徴とする請求項3に記載の共振光学装置。
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