JPH11153140A - 特殊環境用軸受 - Google Patents

特殊環境用軸受

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JPH11153140A
JPH11153140A JP31824497A JP31824497A JPH11153140A JP H11153140 A JPH11153140 A JP H11153140A JP 31824497 A JP31824497 A JP 31824497A JP 31824497 A JP31824497 A JP 31824497A JP H11153140 A JPH11153140 A JP H11153140A
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JP
Japan
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martensite
hardness
bearing
phase
titanium alloy
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JP31824497A
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English (en)
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Setsuo Takagi
節雄 高木
Koji Ueda
光司 植田
Manabu Ohori
学 大堀
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】著しく硬化したα´マルテンサイト組織を有す
るチタン合金を得ることができ、かつ水中等の特殊環境
下で長寿命であることを課題とする。 【解決手段】軌道輪と転動体とを具備した特殊環境用軸
受において、前記軌道輪及び転動体の少なくとも一つ
は、その成分がCr:1.0〜5.0重量%を含有し、
更にO(酸素):0.2〜0.9重量%、N(窒素):
0.1〜0.5重量%、C(炭素):0.1〜0.5重
量%の1種あるいは2種以上及び残部Ti並びに不可避
不純物を含有したチタン合金について、組織が体積比で
80%以上のα´マルテンサイトからなることを特徴と
する特殊環境用軸受。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は特殊環境用軸受に関
し、特に食品機械、半導体製造機器や化学繊維製造機
等、水や海水、化学薬品等の腐食性の環境下で用いられ
る特殊環境用軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】周知の如く、チタン合金は、比強度が鉄
鋼材料に比べ大きく、また耐食性に関してもステンレス
鋼のそれを大きく上回り、特殊環境用軸受材料として期
待されていた。
【0003】一般に、α+β型、β型チタン合金に代表
される高強度チタン合金の強化方法としては、β相領域
あるいはα+β二相領域で溶体化処理後、時効処理によ
り、βマトリックス中にα相を微細に析出させた析出強
化が主になされており、高強度β型チタン合金では引張
強さで150kg/mm2 以上に達する合金が開発され
ている。
【0004】しかしながら、これらの合金において上述
した熱処理を施しても硬さはHRC35〜45程度が限
界で、転がり軸受として適用するには表面硬化処理を施
して表面硬さを向上させる必要があった。
【0005】例えば、特公昭61−2747には、浸
炭、浸炭窒化あるいは窒化処理によりチタンまたはチタ
ン合金の表面層にC,N,Oを固溶させ、軸受として必
要な硬さを得る熱処理法が開示されている。しかし、長
時間処理を施しても硬化層深さが浅く、また素材のチタ
ン合金の硬さが低いため、心部の硬さが不足し寿命延長
の硬化が小さく、軸受としての適用は進んでいないのが
実情である。即ち、チタン合金を軸受に適用するには、
現在実用化されているチタン合金の硬さを大幅に引き上
げる必要があった。
【0006】一般に、軸受用鋼として使用されているS
UJ2やSUS440Cは、焼入によって非常に硬質な
マルテンサイトが形成され、高い硬さが得られる。これ
は、鉄鋼材料のマルテンサイトが侵入型元素であるCの
固溶により、マルテンサイト変態時に極めて多量の格子
歪が蓄えられるためである。
【0007】一方、チタン合金についても鉄鋼材料と同
様に急冷すると、合金組成によりHCP構造(hexagona
l colse-packed structure :六方最密充填構造)のα´
マルテンサイトと斜方晶構造のα”マルテンサイトのい
ずれかが生成されることが知られている。前述したチタ
ン合金のマルテンサイトは、置換型元素の作用により形
成されるため、格子歪量が少なく、一般的に鋼で形成さ
れるマルテンサイトより硬さが低い。このため、鋼のよ
うにマルテンサイト組織のままで利用されるケースは少
なく、特にマルテンサイト組織を有するチタン合金を転
がり軸受用材料として適用するのは事実上不可能と考え
らていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情を考
慮してなされたもので、置換型固溶元素であるCrと侵
入型固溶元素であるO,N,Cの添加量を最適化するこ
とにより、従来チタン合金では得られなかった著しく硬
化したα´マルテンサイト組織を有するチタン合金を得
ることができ、更にα´マルテンサイトの量比を制御し
て転がり軸受に用いることにより、水中等の特殊環境下
で長寿命な特殊環境用軸受を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、軌道輪と転動
体とを具備した特殊環境用軸受において、前記軌道輪及
び転動体の少なくとも一つは、その成分が Cr:1.0〜5.0重量% を含有し、更に O :0.2〜0.9重量% N :0.1〜0.5重量% C :0.1〜0.5重量% の1種あるいは2種以上及び残部Ti並びに不可避不純
物を含有したチタン合金について、組織が体積比で80
%以上のα´マルテサイトからなるなることを特徴とす
る特殊環境用軸受である。
【0010】[作用]以下、本発明に係る合金の作用及
び特性値の臨界的意義について詳述する。 [Cr含有量]チタンに置換型で固溶するCr(クロ
ム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバル
ト)等の合金元素を添加し、β相領域から急冷するとα
´マルテンサイトが形成される。本発明者等は、これら
の置換型元素を添加して得られるマルテンサイトと強度
の関係について研究を重ねた結果、Crを含有したマル
テンサイト組織が最も硬いことを見いだした。この理由
として、通常、マルテンサイト変態により硬さが向上す
るのは、変態の際に導入される多量の内部歪によるもの
であるが、CrとTiの原子半径の差が他の合金元素に
比べて大きく、マルテンサイト変態した際の格子歪が他
の合金元素を添加した場合に比べて大きくなり、これに
付随して導入される内部歪量が増加して硬化したものと
考えられる。
【0011】一方、Crはチタンに対して置換型に固溶
し、強度,硬さを向上させ、さらに状態図において高温
相であるβ相領域を拡大するβ相安定化元素であり、C
r含有量の増加によりMs点が降下する作用を有してい
る。従って、添加量が過剰であるとMs点が室温以下に
低下し、急冷してもマルテンサイト変態が生じなくな
り、軟質なβ相が室温で残留し十分な硬さが得られな
い。そこで、本発明者等は急冷後の組織に及ぼすCr含
有量の影響を調査し、急冷によりマルテンサイト組織が
得られるCr含有量を明らかにするため以下の実験を行
った。
【0012】Cr含有量を1〜10重量%含有した合金
について、φ30×10mmの試験片をそれぞれ作製し
た。なお、これらの合金中には後述するように合金元素
としてOが約0.7%含有されている。これらの試験片
は、いずれの合金もβ単相域となる900〜1100℃
で1時間溶体化処理後、水冷した。これら試験片につい
てマルテンサイトの体積率及び硬さを測定した。
【0013】マルテンサイトの体積率の定量は、試験片
を60%過酸化水素−10%ふっ化水素酸水溶液で化学
研摩を施して表面の加工層を除去した後、CoKα線を
用いたX線回折法(日本理化学製のX線回折装置、商品
名:ガイガーフレックスRAD−lll )により行った。
【0014】図1は、Cr含有量とマルテンサイト体積
率変化及び硬さとの関係を示す。Cr含有量が1.0%
未満ではマルテンサイト単相となるが、Crの固溶強化
の寄与が小さく、硬さが小さくなるため好ましくない。
これに対し、Cr含有量が1.0〜4.0%ではマルテ
ンサイト単相組織が得られ、非常に高い硬さを示してい
る。更に、Cr含有量が4.0%以上では残留β相が形
成されるようになるが、Cr含有量が4.0〜5.0%
の範囲では残留β相量は少なく、硬さの低下はわずかで
ある。
【0015】しかし、Cr含有量が5.0%を超えると
軟質なβ相が急激に増加し、特にマルテンサイト体積比
が80%未満では、硬さは大きく低下する。更に、6.
0%以上の添加ではβ相の安定度が高まり、β相域から
の急冷により残留β単相となるため硬さは低い。なお、
マルテンサイトはX線回折結果より、全て最密六方晶の
α´マルテンサイトであることを確認した。
【0016】つまり、Cr含有量が1.0〜4.0%で
あれば、β相領域からの急冷によりα´マルテンサイト
単相となり、軸受として必要な硬さを得ることができ
る。一方、Cr含有量が4.0〜5.0%の範囲ではマ
ルテンサイトと軟質な残留β相の混合組織となり、マル
テンサイト単相状態と比較して硬さが若干低下するが、
マルテンサイトが体積率で80%以上であれば、硬さに
及ぼす影響はさほど認められない。
【0017】以上の結果より、Crの含有量は1.0%
以上5.0%以下とし、α´マルテンサイトを体積比で
80%以上とした。上述したように、Crを添加して得
られるマルテンサイトは他の置換型合金元素を添加した
場合に比べ硬質であるが、最も硬さが高いCr含有量2
〜4%組成においてもHvで400程度で、Cr添加の
みでは軸受として必要とされる硬さが得られない。強化
元素として他の合金元素を添加する場合、置換型元素の
大部分はMs点を低下させ、残留β相が形成されやすく
なるため好ましくない。従って、マルテンサイトを強化
する元素としては、チタンに侵入型で固溶する元素の添
加が極めて有効であり、侵入型固溶元素としてO,N,
Cが好適である。いずれの元素の状態図においてもα相
領域を拡大すα相安定化元素であり、α/β変態点を上
昇させる作用を有する。
【0018】[O含有量]O(酸素)は、固溶限がN
(窒素),C(炭素)と比べ非常に大きく、固溶して強
度,硬さ,耐食性,耐摩耗性を増大する作用があり、そ
の効果は0.2%以上の添加で顕著となり、添加量に比
例して増大する。しかしながら、添加量が0.9%を超
えると著しく靭性が低下するので、Oのが含有量は0.
2%以上0.9%以下とする。
【0019】[N含有量]Nは固溶して強度,硬さ,耐
食性,耐磨耗性を増大する作用があり、特にNは固溶強
化の程度が上述した元素のうちで上記特性が最も大き
く、0.1%以上の添加で著しい。しかし、固溶限がO
より小さく、添加量が0.5%を超えると強度が低下
し、さらにα/β変態点の上昇の程度がOの約2倍あ
り、過剰な添加は容体化処理温度を著しく高くする必要
が生じるので添加量は0.1%以上0.5%以下とす
る。
【0020】[C含有量]C(炭素)は、添加効果(硬
さ向上)は少ないが、添加する場合はO,Nの補充元素
として添加する。O,Nを入れるともろくなるので、C
で緩和する、その場合、Cは、固溶して強度,硬さ,耐
磨耗性を増大し、また強度の増加に伴う延性の低下が
O,Nに比べて小さく、その効果は0.1%以上の添加
で著しい。しかしながら、添加量が0.5%を超えると
硬さ,強度上昇させる効果が飽和するため、添加量は
0.1%以上0.5%以下とする。
【0021】O,N,Cの侵入型固溶元素を添加して強
化を計る場合、O及びNは固溶強化能が非常に大きいの
で、単独添加で軸受として必要な硬さを得ることがで
き、この場合、Oは0.6%以上0.9%以下、Nは
0.2%以上0.5%以下が望ましい。一方、Cは固溶
限が小さく、また強化能がO,Nに比べて小さく、強化
元素としての効果が小さいため、Cの単独添加では軸受
として必要な硬さが得られ難い。従って、Cを添加する
場合には、OあるいはNまたはO,Nの両元素との複合
添加が望ましい。複合添加する場合には各元素の添加量
の総和が0.5%以上となるとその効果は著しい。しか
しながら、添加量の総和が0.9%を超えると、遠征,
靭性が著しく低下するため、望ましくはO,N,Cの添
加量の総和を0.9%以下とする。
【0022】[熱処理条件]本願発明は、軸受として必
要な硬さを得るために体積比で80%以上のマルテンサ
イト組織で構成されることを特徴としている。従って、
溶体化処理温度は、βトランザスより高い温度、即ちβ
相単相域で加熱保持を行うかα+β二相領域となるβト
ランザス以下ではβ相とα相の量比が8:2となる温度
に加熱保持しても良い。なお、上記「βトランザス」と
は、図3の状態図において、β単相領域からα+β二相
領域に変化する温度の線(直線(イ))上の点を示す。
【0023】冷却速度については、冷却速度が遅い場
合、例えば空冷より遅い速度では、マルテンサイト組織
が得られず、冷却中に結晶粒界にα相が多量に析出して
室温でα+β二相組織となり強度が低下し、軸受として
必要な硬さが得られなくなる。マルテンサイト組織を得
るには、溶体化処理温度から油冷以上の速度で急冷する
ことが必要で、水冷処理とすることが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について説
明する。まず、下記表1の組成を有するチタン合金及び
鋼材についてφ30mm×10mmの円盤状試験片及び
スラスト玉軸受51305を作製した。これらの試験片
は、以下の熱処理を施した。
【0025】熱処理条件(1):900〜1100℃で
1時間Ar雰囲気中で溶体化処理を施し、25℃の水中
に水冷した。 熱処理条件(2):900〜1100℃で1時間Ar雰
囲気中で溶体化処理を施し、30〜60℃の油中に油冷
した。 熱処理条件(3):900〜1100℃で1時間Ar雰
囲気中で溶体化処理を施し、大気中に空冷した。
【0026】
【表1】
【0027】比較例のTi−6Al−4V合金、Ti−
15V−3−Cr−3Sn−3Al合金、SUS440
C、SUJ2の試験片については、下記表2、表3に併
示した条件で溶体化・時効処理あるいは焼入・焼戻を施
した。これらの試験片については、マルテンサイト体積
率、硬さ測定、塩水噴霧試験及び水中寿命試験を行って
性能を比較した。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】塩水噴霧試験は35℃、5%NaCl水溶
液を用いて試験時間150時間で行い、試験後の供試片
の腐食性生物を除去後、重量変化を測定し、腐食速度を
mm/年で評価した。なお、評価基準としては、0.1
3mm/年以下の場合を○、0.13〜1.3mm/年
の場合を△、1.3mm/年以上の場合を×とした。
【0031】水中寿命試験は、図2に示すような水中ス
ラスト寿命試験機を用い、スラスト転がり軸受1を被試
験体として水中に保持し、水道水をオーバーフローさせ
ながら行った。なお、図2において、付番2は水道水の
供給口3、排出口4を供えた容器である。また、付番
5、6、7は、夫々前記軸受1を構成する軌道輪、軌道
輪5の内側に配置された窒化珪素製の転動体、該転動体
6を保持するフッ素樹脂製の保持器である。前記軸受1
は、上下のシャフト8により容器2内の水中に押圧した
状態で保持されている。
【0032】寿命判定は、加速度ピックアップにより検
出した振動レベルが初期値の5倍程度に達した時点を軸
受寿命とした。以下に試験条件を示す。 荷重:150kgf 回転数:1000rpm 試験軸受:スラスト玉軸受51305 また、マルテンサイト体積率は上述の方法を用いて測定
した。
【0033】上記表2には、マルテンサイト体積率、硬
さ、塩水噴霧試験及び水中寿命試験結果も示した。表2
の試験片である本発明の実施例1〜16の場合、いずれ
もマルテンサイト体積率が80%以上で、HRC57以
上の硬さを有しており、また耐食性も良好で水中寿命試
験結果より寿命延長の効果が著しいことが判明した。但
し、実施例9〜16の油冷の場合、マルテンサイト体積
率及び硬さが若干低下して寿命がわずかに低下している
ことが確認できた。これは、溶体化処理後の冷却が油冷
で水冷よりも冷却速度が小さく、冷却中に微量のα相の
析出が生じたためで、この結果から溶体化処理後の冷却
方法としては水冷が望ましいと考えられる。
【0034】表3の試験片のうち比較例1は、マルテン
サイト単相組織であるが、Cr含有量が過少であるた
め、Crの固溶強化の寄与が小さく、十分な硬さが得ら
れていない。比較例2、比較例3はCr含有量が過大で
あり、β相の安定度が高くなり冷却時に多量の残留β相
が形成されてしまうためマルテンサイトが体積比が80
%以下に低下してしまい硬さが低い。特に、比較例3
は、マルテンサイト体積率が0%、即ち残留β単相組織
であり、硬さが低く単寿命となった。
【0035】表3の試験片のうち比較例4〜9は、O,
N,Cの各侵入型元素を単独に添加した場合で、いずれ
もマルテンサイト単相組織である。しかし、比較例4,
比較例6は添加量が過少なため、硬さが低く短寿命とな
っている。また、比較例5,比較例7は添加量が過剰な
ため、硬さは高いが脆化しており、寿命延長の効果は小
さい。
【0036】比較例8は、侵入型固溶強化元素としてC
を単独に添加した場合であるが、添加量は請求項の範囲
内であるにもかかわらず、寿命が短い。これは、上述し
たようにCの固溶強化能がO,Nに比較して小さく効果
が不十分なためで、Cを添加する場合にはOあるいはN
又はO,Nの両元素と複合添加する必要がある。
【0037】比較例9、比較例10はO,N,Cを複合
添加した場合であるが、比較例9では添加量の総和が
0.5%よりも小さく十分な硬さが得られていない。一
方、比較例10の場合は、添加量の総和が0.9%を超
えているため強化脆化してしまい短寿命となった。
【0038】比較例11、比較例12はいずれも実用チ
タン合金であるが、熱処理として標準的な溶体化処理時
効処理を施し、α+β二相になつているためマルテンサ
イト体積率は0%である。α相の析出強化により溶体化
処理のままの状態よりは硬さは増加しているものの、H
RC40〜45と低いため、短寿命である。
【0039】比較例13、比較例14はいずれも鉄鋼材
料であり、非常に硬いが、塩水噴霧試験では本願発明の
チタン合金より大幅に耐食性に劣っている。したがっ
て、水中寿命試験では腐食により摩耗が急速に進行し、
短寿命である。
【0040】比較例15〜22は本願発明に係る合金を
使用しているが、マルテンサイト体積率及び硬さが低く
短寿命である。これは、溶体化処理後の冷却が空冷であ
るため冷却中にα相が析出し、室温でα+β二相組織と
なったためである。
【0041】つまり、本願発明で体積比で80%以上の
マルテンサイトを得るためには、上述したように溶体化
処理温度から油冷以上の冷却速度で冷却する必要があ
り、理想としては水冷処理するのが望ましい。
【0042】
【発明の効果】以上詳述した如く本発明によれば、置換
型固溶元素であるCrと侵入型固溶元素であるO,N,
Cの添加量を最適化することにより、従来チタン合金で
は得られなかった著しく硬化したα´マルテンサイト組
織を有するチタン合金を得ることができ、更にα´マル
テンサイトの量比を制御して転がり軸受を用いることに
より、水中等の特殊環境下で長寿命な特殊環境用軸受を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cr含有量とマルテンサイト体積率及び硬さと
の関係を示す特性図。
【図2】スラスト転がり軸受の水中寿命試験機の概略を
示す図。
【図3】本発明におけるβトランザスを説明するための
状態図。
【符号の説明】
1…スラスト転がり軸受、 2…容器、 5…軌道輪、 6…転動体、 7…保持器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 640 C22F 1/00 640A 682 682 691 691B 692 692A

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軌道輪と転動体とを具備した特殊環境用
    軸受において、前記軌道輪及び転動体の少なくとも一つ
    は、その成分が Cr:1.0〜5.0重量% を含有し、更に O :0.2〜0.9重量% N :0.1〜0.5重量% C :0.1〜0.5重量% の1種あるいは2種以上及び残部Ti並びに不可避不純
    物を含有したチタン合金について、組織が体積比で80
    %以上のα´マルテンサイトからなることを特徴とする
    特殊環境用軸受。
JP31824497A 1997-11-19 1997-11-19 特殊環境用軸受 Pending JPH11153140A (ja)

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