JPH111516A - 高分子化合物、液晶性組成物、および該組成物を用いた液晶素子 - Google Patents

高分子化合物、液晶性組成物、および該組成物を用いた液晶素子

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JPH111516A
JPH111516A JP15557197A JP15557197A JPH111516A JP H111516 A JPH111516 A JP H111516A JP 15557197 A JP15557197 A JP 15557197A JP 15557197 A JP15557197 A JP 15557197A JP H111516 A JPH111516 A JP H111516A
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polymer compound
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JP15557197A
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English (en)
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Sadahiro Sakou
禎裕 酒匂
Akira Sakaigawa
亮 境川
Mitsuhiro Kouden
充浩 向殿
Honami Mizobe
帆洋 溝部
Masahiko Yoshida
昌彦 吉田
Kenji Suzuki
賢治 鈴木
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Kanto Chemical Co Inc
Sharp Corp
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Kanto Chemical Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 階調性を有する液晶素子およびその製造方
法、ならびにそのような液晶素子を実現し得る高分子化
合物および液晶性組成物を提供すること。 【解決手段】 本発明の高分子化合物は、化学式(I)
で表される: 【化1】 ここで、Xは水素原子またはメチル基であり;Y1
2、Y3およびY4は、それぞれ独立して水素原子また
はフッ素原子であり;lは2〜10000の整数であ
り;mおよびnは、それぞれ独立して0〜14の整数で
あり;pおよびqは、それぞれ独立して0または1であ
り;そして、rは0〜9の整数であり;m=0の場合に
はp=0であり;r=0の場合にはn=q=0でありか
つZは水素原子であり;そして、r≠0の場合にはZは
フッ素原子である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物、液
晶性組成物、およびそれを用いた液晶素子ならびに液晶
素子の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、階
調表示が可能な液晶表示素子およびその製造方法、なら
びにそのような液晶表示素子を実現し得る高分子化合物
および液晶性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、例えば、ネマティック液晶を用い
たTN(Twisted Nematic)型およびSTN(Super-Twis
ted Nematic)型の液晶表示素子が知られている。しか
し、これらの液晶表示素子は、電気光学効果の応答速度
がmsオーダーと遅いため、高速駆動を行おうとする
と、画面に乱れが生じたり、コントラストが低下したり
するという欠点がある。このため、これらの液晶表示素
子は、表示可能な容量が不十分であり、動画表示に適さ
ないという問題点がある。さらに、これらの液晶表示素
子は視野角が狭いので、大画面用途には適していない。
そこで近年、次世代の液晶表示素子として、強誘電性ま
たは反強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の実用化が検
討されている。
【0003】1975年、R.B.Meyerらは、分子の対称性の
議論から、光学活性な分子が分子長軸に対して垂直な方
向に双極子モーメントを有していればカイラルスメクテ
ィックC相(SmC*相)で強誘電性を示すことを予想
して、DOBAMBC(2-methylbutyl p-[p-(decyloxybenzyli
dene)-amino]-cinnamate)を合成し、液晶においてはじ
めて強誘電性を確認することに成功した(R.B.Meyer,L.
Liebert,L.Strzeleckiand P.keller:J.Phys.(Paris)3
6 (1975) L69参照)。
【0004】図8(a)は、強誘電性を示すSmC*
のスメクティック層構造と分子配列とを説明するための
模式図である。スメクティック層内における分子の重心
位置は無秩序であるが、液晶分子の長軸(ダイレクタ)
102はスメクティック層を区切る層面103の法線
(層法線)zに対して一定の角度θだけ傾いている。こ
のようなダイレクタ102の傾きは、コーン101とし
て模式的に示される。ダイレクタ102の傾く方向は、
各層で少しずつずれる。その結果、液晶の配向は螺旋構
造となる。螺旋のピッチ(ヘリカルピッチ)は1μm程
度であり、層間隔(約1nm)よりはるかに大きい。
【0005】ClarkおよびLagerwallは、液晶表示素子の
セル厚が1μm程度(螺旋のピッチと同程度)の厚さに
なるとこの螺旋構造が消滅して、各層の分子104が印
加される電界の方向に応じて2つの安定な状態(双安定
状態)のうちのいずれかをとることを発見し、表面安定
化型強誘電性液晶表示素子(SSFLC:Surface Stab
ilized Ferroelectric Liquid Crystal)を提案した。
図8(b)は、双安定状態のうちの1つの状態におけ
る、各層の分子の配列を示す模式図である。図8(b)
においては、分子104に印加されている電界の向きは
紙面に対して垂直かつ紙面裏側から表側に向かう方向で
あり、分子104の電気双極子モーメントは印加電界の
向きにすべて揃う。SSFLCは、例えば、特開昭56
−107216号公報、および米国特許第436792
4号明細書に開示されている。
【0006】図9を参照して、SSFLCの動作原理に
ついて説明する。図9に示すように、セル厚が1μm程
度の薄いSSFLCセル中の分子104は、印加される
電界の方向に応じて、状態Aおよび状態Bの2つの安定
状態のいずれかをとる。(図9において、状態Aでは、
分子104に印加されている電界の向きは、紙面に対し
て垂直かつ紙面表側から裏側に向かう方向であり、状態
Bでは、紙面に対して垂直かつ紙面裏側から表側に向か
う方向である。)従って、互いの偏光軸が直交する2枚
の偏光子の間に、例えば状態Bにおける分子長軸が偏光
子の一方の偏光軸方向111と平行になるようにSSF
LCセルを配置すると、状態Bでは光が透過して明状態
となり、状態Aでは光が遮断されて暗状態となる。すな
わち、印加電界の方向を切り換えることにより、白黒の
表示を行うことが可能となる。
【0007】SSFLCでは、液晶分子の自発分極と印
加電界とが直接相互作用して液晶分子の駆動トルクが発
生するので、通常のネマティック液晶における誘電異方
性を用いたスイッチングとは異なり、電界に対してμs
オーダーの高速応答が可能である。さらに、SSFLC
は、双安定状態のいずれかに一旦スイッチすると電界が
消滅してもその状態を保持する(すなわち、メモリー性
を有する)ので、常に電圧(電界)を印加し続ける必要
はない。
【0008】以上のように、 SSFLC型の液晶表示
素子は、高速応答性とメモリ性という特徴を有するの
で、1走査線ごとに高速で表示内容を書き込むことが可
能である。その結果、 SSFLC型の液晶表示素子に
よれば、単純マトリックス駆動で大容量のディスプレイ
を実現することが可能となり、壁掛けテレビヘの応用も
期待されている。
【0009】強誘電性液晶を用いた液晶表示素子は、S
mC*相における液晶分子が有する双安定性のため、厳
密な意味では明および暗の2階調表示しかできないが、
印加電界を高速変調させることにより、または面積分割
法を利用することにより、ある程度の階調表示を実現す
ることができる。しかし、これらの方法を用いる場合に
は、駆動系の構成および液晶表示素子の作製工程が複雑
になり、その結果、製造コスト等が多大になってしま
う。
【0010】強誘電性液晶を用いる階調表示に関する技
術としては、例えば、特開平6−194635号公報
に、重合物質からなる異方性の3次元網状構造体中に非
反応性キラル液晶分子を捕捉した構造体を形成する技術
が開示されている。この技術によれば、網状構造体によ
って相互に反対の分極方向を有するドメインを安定して
維持することにより、電界無印加時においても中間調を
維持することが意図されている。
【0011】しかし、この技術においては、均一なサイ
ズのドメインを形成することが困難であるため、電界印
加時のドメインサイズを一定に保つことができないとい
う問題がある。さらに、この技術においては、ドメイン
サイズ自体を画素の大きさ(例えば、約0.3mm×約0.3m
m)に対して十分小さくすることが困難であるので、こ
の技術を用いて階調表示を行うことは実質的に困難であ
る。しかも、3次元網状構造体が液晶分子を束縛するた
め、印加電界に対する応答速度が非常に遅くなる、ある
いは単一の安定状態しか有さない領域が生じるといった
問題がある。さらに、この技術においては、非反応性キ
ラル液晶の割合が大きくなると、液晶全体の配向性が悪
くなり、その結果、液晶表示素子の表示品位が不十分に
なるという問題もある。
【0012】あるいは、特開平7−248489号公報
に、液晶と合成樹脂材料との混合溶液がネマティック相
を示す温度において紫外線を照射し、配向処理方向に延
びる微細な3次元網目状合成樹脂を形成する技術が開示
されている。この技術は、個々に異なるしきい値電圧を
有するドメインを形成し、分割し、中間調を得ることを
意図している。
【0013】しかし、この技術においても、特開平6−
194635号公報に記載の技術と同様に、ドメインの
均一性が不十分であり、ドメインサイズ自体が階調表示
に不適切であり、そして、3次元網状合成樹脂により液
晶分子が束縛されるという問題がある。さらに、この技
術によれば、液晶の配向性が不十分なため、液晶表示素
子のコントラストが低下する。
【0014】以上のように、階調表示が可能な強誘電性
液晶表示素子が望まれている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題を解決するためになされたものであり、その目的と
するところは、階調性を有する強誘電性液晶素子ならび
にそのような液晶素子を実現し得る高分子化合物および
液晶性組成物を提供することにある。さらに、本発明の
高分子化合物は、その他のスメクティック液晶素子(例
えば、反強誘電性液晶表示素子)にも有用であり、他の
モード(例えば、 TN、STN、ECB)の液晶素子
においても、耐衝撃性および耐熱性の向上、視野角特性
の改善、印加電圧−透過光特性の制御などに効果的であ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、特定の構造を有する高分子化合物が上記目的
を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】本発明の高分子化合物は、化学式(I)で
表される:
【0018】
【化2】
【0019】ここで、Xは水素原子またはメチル基であ
り;Y1、Y2、Y3およびY4は、それぞれ独立して水素
原子またはフッ素原子であり;lは2〜10000の整
数であり;mおよびnは、それぞれ独立して0〜14の
整数であり;pおよびqは、それぞれ独立して0または
1であり;そして、rは0〜9の整数であり;m=0の
場合にはp=0であり;r=0の場合にはn=q=0で
ありかつZは水素原子であり;そして、r≠0の場合に
はZはフッ素原子である。
【0020】本発明の液晶性組成物は、少なくとも1種
の上記高分子化合物と液晶とを含有する。
【0021】好適な実施態様においては、上記液晶はス
メクティック相を示す液晶である。
【0022】好適な実施態様においては、上記液晶は強
誘電性液晶である。
【0023】好適な実施態様においては、上記高分子化
合物は、上記化学式(I)においてX、Y1、Y2および
Zが水素原子であり;Y3およびY4がフッ素原子であ
り;lが20〜500であり;mが4〜14であり;p
が1であり;そして、q、nおよびrが0である化合物
である。
【0024】好適な実施態様においては、上記組成物中
の上記高分子化合物の含有量は、0.005〜5重量%
である。
【0025】本発明の液晶表示素子は、少なくとも電極
を有する一対の基板と、該基板間に挟持された液晶層と
を備え、該液晶層が、上記液晶性組成物を含む。
【0026】好適な実施態様においては、上記液晶はス
メクティック相を示す液晶である。
【0027】好適な実施態様においては、上記液晶は強
誘電性液晶である。
【0028】好適な実施態様においては、上記液晶は、
メモリパルス幅−電圧曲線が極小値を有する特性を有す
る。
【0029】好適な実施態様においては、強誘電性液晶
の強誘電層において、液晶層と基板との界面近傍でプレ
チルトが付与された液晶分子が界面から離れていく側に
折れ曲がるシェブロン層構造が、基板全面にわたってほ
ぼ同一に形成されている。
【0030】本発明の液晶素子の製造方法は、少なくと
も電極を有する一対の基板と該基板間に挟持された液晶
層とを備える液晶素子の製造方法であって、少なくとも
1種の上記高分子化合物と液晶とを混合して液晶性組成
物を得る工程と、該液晶性組成物を該一対の基板間に注
入する工程とを包含する。
【0031】好適な実施態様においては、上記液晶はス
メクティック相を示す。
【0032】好適な実施態様においては、上記液晶性組
成物は、該液晶性組成物がスメクティック相を示す温度
域よりも高い温度で上記一対の基板間に注入される。
【0033】好適な実施態様においては、本発明の液晶
素子の製造方法は、上記一対の基板間に注入された上記
液晶性組成物を、該液晶性組成物が等方相を示す温度ま
で加熱し、そして冷却する工程をさらに包含する。
【0034】
【発明の実施の形態】
A.高分子化合物 本発明の高分子化合物は、化学式(I)で表される:
【0035】
【化3】
【0036】ここで、Xは水素原子またはメチル基であ
り;Y1、Y2、Y3およびY4は、それぞれ独立して水素
原子またはフッ素原子であり;lは2〜10000の整
数であり;mおよびnは、それぞれ独立して0〜14の
整数であり;pおよびqは、それぞれ独立して0または
1であり;そして、rは0〜9の整数であり、m=0の
場合にはp=0であり;r=0の場合にはn=q=0で
ありかつZは水素原子であり;そして、r≠0の場合に
はZはフッ素原子である。
【0037】好ましくは、化学式(I)において、X、
1、Y2およびZが水素原子であり;Y3およびY4がフ
ッ素原子であり;lが20〜500であり;mが4〜1
4であり;pが1であり;そして、q、nおよびrが0
である 本発明の高分子化合物は、対応する重合性化合物から任
意の適切な重合方法を用いて得られ得る。対応する重合
性化合物は、化学式(II)で表される:
【0038】
【化4】
【0039】ここで、X、Y1、Y2、Y3、Y4、m、
n、p、q、rおよびZは、化学式(I)において定義
した通りである。
【0040】この重合性化合物は、当該分野における任
意の適切な方法により合成され得る。この重合性化合物
の合成の具体的手順は、例えば、特願平6−13228
8号および特願平7−175264号に記載されてい
る。
【0041】本発明の高分子化合物の重合方法として
は、例えば、以下の方法が挙げられる:上記重合性化合
物をそのまま、または上記重合性化合物を適切な溶媒
(例えば、トルエン、テトラヒドロフラン)に適切な濃
度で溶解し、これらを加熱して、あるいはこれらにγ線
または電子線を照射して重合する方法;上記重合性化合
物を適切な溶媒(例えば、トルエン、テトラヒドロフラ
ン)に適切な濃度で溶解し、重合開始剤を添加し、次い
で、加熱または光照射により重合する方法。加熱により
重合を開始させる開始剤としては、例えば、2,2'-アゾ
ビス(イソブチロニトリル)、アゾビスイソ酪酸メチル
などのアゾ化合物類、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-
ブチルなどの過酸化物類が挙げられる。光により重合を
開始させる開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-
メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピ
ルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、
1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-
2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキ
シルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル
エタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]
-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン
類が挙げられる。重合開始剤の添加量は、重合性化合物
の総量の10重量%以下が好ましく、5重量%以下が特
に好ましい;適切な反応開始剤(例えば、ナトリウム−
ナフタレン錯体などのアルカリ金属と芳香族炭化水素化
合物とのアニオンラジカル錯体類、n−ブチルリチウム
などのアルカリ金属化合物類、臭化ブチルマグネシウム
などのグリニャール試薬類)を用いて、上記重合性化合
物を適切な溶媒(例えば、トルエン、テトラヒドロフラ
ン)中に適切な濃度で溶解した溶液中で重合を進行させ
るアニオン重合法;適切な反応開始剤(例えば、1-メト
キシ-1-トリメチルシロキシ-2-メチル-1-プロペンなど
のシリルケテンアセタール類)、ならびに、適切な触媒
(例えば、フッ化水素トリス(ジメチルアミノ)スルホニ
ウム、テトラ(ブチル)アンモニウムビベンゾエートなど
の求核剤、臭化亜鉛、イソブチルアルミニウムクロライ
ドなどのルイス酸)を用いて、上記重合性化合物を適切
な溶媒(例えば、トルエン、テトラヒドロフラン)中に
適切な濃度で溶解した溶液中で重合を進行させるグルー
プトランスファー重合法。
【0042】B.液晶性組成物 本発明の液晶性組成物は、少なくとも1種の本発明の高
分子化合物と液晶とを含有する。液晶としては、任意の
適切な液晶が用いられ得るが、好ましくはスメクティッ
ク相を示す液晶、より好ましくは強誘電性液晶が用いら
れ得る。このような液晶と本発明の高分子化合物とを組
み合わせて用いることにより、従来は困難であった中間
調表示が可能となるからである。さらに、本発明の液晶
組成物が少なくとも1種の本発明の高分子化合物を含有
することにより、本発明の液晶性組成物を用いると、他
のモード(例えば、TN、STN、ECB )の液晶素
子においても、耐衝撃性および耐熱性が向上し、視野角
特性が改善され、そして印加電圧−透過光特性が良好に
制御され得る。
【0043】液晶性組成物中の高分子化合物の含有量
は、組成物が用いられる液晶素子の用途に応じて適宜変
化し得るが、好ましくは液晶性組成物の全重量に対して
0.005〜5重量%であり、より好ましくは0.01〜
0.5重量%である。含有量が0.005重量%を下回
ると、液晶素子の液晶層に本発明の高分子化合物を用い
ることによる効果が不十分である場合が多い。含有量が
5重量%を上回ると、液晶の配向が大きく乱れてコント
ラストが低下したり、応答速度が非常に遅くなるなどの
弊害が生じる恐れがある。
【0044】C.液晶素子の基本構成 本発明の液晶素子の好ましい実施形態である強誘電性液
晶素子について、図1を参照して説明する。この液晶素
子100は、対向する一対の電極基板13および14
と、該電極基板間に挟持された液晶層9とを備える。電
極基板13は、基板1と、該基板1上にストライプ状に
形成された信号電極3と、該信号電極を覆って基板全面
に形成された絶縁膜4と、該絶縁膜上に形成された配向
膜7と、信号電極と反対側の基板表面に配置された偏光
板11とを有する。電極基板14は、基板2と、該基板
2上にストライプ状に形成された走査電極5と、該走査
電極を覆って基板全面に形成された絶縁膜6と、該絶縁
膜上に形成された配向膜8と、走査電極と反対側の基板
表面に配置された偏光板12とを有する。電極基板13
および14は、信号電極3と走査電極5とが互いに直交
するように、かつ、偏光板11および12が液晶素子の
外側に位置しその偏光軸が互いに直交するように対向し
て配置される。電極基板13および14は、スペーサー
(図示せず)を介して所定の間隔(例えば、1.4μ
m)で対向配置される。基板の周縁部は、シール材10
により封止されている。
【0045】基板1および2は、透明基板または不透明
基板であり得る。透明基板としては、例えば、ガラス基
板、高分子フィルムなどのプラスティック基板が使用さ
れ得る。不透明基板としては、例えば、金属薄膜が形成
された基板、Si基板が使用され得る。不透明基板は、
反射型の液晶素子などに有効である。
【0046】信号電極3および走査電極5は任意の適切
な材料(例えば、ITO)からなる。信号電極3および
走査電極5は、任意の適切な厚み(例えば、100n
m)で形成される。絶縁膜4および6は、任意の適切な
材料(例えば、SiOX、SiNX)からなる。絶縁膜4および
6の厚みは、例えば30nmである。配向膜7および8
もまた、任意の適切な材料(例えば、ポリイミド)から
なる。配向膜7および8の厚みは、例えば30nmであ
る。配向膜表面には所定の配向処理(例えば、ラビング
処理)が施される。
【0047】液晶層9は、少なくとも1種の本発明の高
分子化合物(上記化学式(I)で表される化合物)と液
晶(好ましくはスメクティック液晶、さらに好ましくは
強誘電性液晶)とを含有する液晶性組成物を含む。液晶
層9においては、本発明の高分子化合物がほぼ均一に分
布している。従って、強誘電性液晶分子のスイッチング
に必要な電圧波高値(または印加電圧のパルス幅)のし
きい値が、液晶層の場所によって適切に異なり、その結
果、1画素(約0.3mm×0.3mm)に対して十分小さいスイ
ッチングドメインを均一に形成することが可能となる。
液晶層中の高分子化合物の均一な分散に基づく縞状のス
イッチングドメイン形成について、以下に詳細に説明す
る。
【0048】縞状のスイッチングドメインの形成は、相
転移点近傍における相分離現象に基づいていると考えら
れる。液晶性組成物をアイソトロピック(Iso)相〜
キラルネマティック(N*)相〜スメクティックA(S
mA)相〜キラルスメクティックC( SmC*)相へと
温度降下させながら偏光顕微鏡で観察すると、アイソト
ロピック−キラルネマティック相転移温度TIN*の近
傍、およびスメクティックA−キラルスメクティックC
相転移温度TAC*の近傍で相分離現象が確認できる(図
2参照)。
【0049】TIN*近傍ではポリマー近傍領域がIso
相としてN*相から分離して散在し、その領域は温度低
下にともない徐々に小さくなる。また、周囲が完全にN
*相に相転移した後も黒い粒状領域として残ることが多
い。さらに温度降下させると、SmA相ではその粒状領
域は確認されなくなる。液晶性組成物中の高分子化合物
の含有量が多すぎる場合には、粒状領域が比較的大きく
なるので、SmA相に粒状領域が残ってしまう。この残
った粒状領域により、SmA相において液晶分子の層の
方向がずれるので、液晶分子の配向が乱れ、その結果、
コントラストが低下したり、応答速度が非常に遅くなっ
たりする場合が多い。
【0050】さらに温度を降下させると、TAC*近傍で
はSmA相とSmC*相とが層方向に沿って縞状に共存
する。これは、降温過程において、高分子化合物がスメ
クティック層間にはさまれるように配置しているためで
あると考えられる。さらに低温では、すべての領域がS
mC*相へと転移する。このような相分離現象は、特
に、再配向過程(すなわち、液晶性組成物をアイソトロ
ピック相を示す温度まで再度加熱した後、冷却する過
程)において顕著である。
【0051】このような相分離現象は、本発明の液晶性
組成物(すなわち、上記化学式(I)で表される本発明
の高分子化合物と液晶とを含有する液晶性組成物)にお
いて特に顕著に観測される。さらに、このような相分離
のサイズ(例えば、縞状の相分離構造の場合には、その
縞と縞との距離)は、画素サイズに比べて十分に小さ
い。従って、本発明の液晶性組成物がSmC*相を示す
温度で、該組成物を含む液晶層を備える液晶表示素子に
電圧を印加すると、スイッチングに要するしきい値電圧
が液晶層の場所によって異なるため、画素サイズに比べ
て十分に小さい縞状の細かいスイッチングドメインが出
現する。従って、強誘電性液晶表示素子において階調表
示が可能となる。
【0052】好ましくは、本発明に用いられる液晶は、
メモリパルス幅−電圧曲線が極小値を有する液晶(好ま
しくは、強誘電性液晶)である。メモリパルス幅−電圧
曲線が極小値を有する特性は、通常τ−Vmin特性とよ
ばれる。具体的には、τ−Vmin特性は、例えば図3に
示すように強誘電性液晶組成物にモノパルス電圧を印加
した場合に、パルス電圧とそのパルス電圧によってすべ
ての液晶分子が完全にスイッチするために必要なパルス
幅との関係を示す曲線(いわゆるτ−V曲線)が極小値
を有する特性を意味する。負の誘電異方性を有する液晶
性組成物、あるいは大きな正の二軸誘電異方性を有する
液晶性組成物が、τ−Vmin特性を示すことが知られて
いる。τ−Vmin特性について、図3を参照して詳細を
説明する。簡単のため、負の誘電異方性を有する液晶性
組成物がτ−Vmin特性を示すメカニズムについてのみ
説明する。
【0053】τ−Vmin特性とは、上記のように、パル
ス電圧(パルス波高値)(V)とそのパルス電圧によっ
てすべての液晶分子が完全にスイッチするために必要な
パルス幅(τ)との関係を示す曲線が、図3のように極
小値を有する特性を意味する。さらに、誘電異方性と
は、液晶分子の配向べクトルに平行および垂直な方向の
誘電率をそれぞれεおよびεとしたときの差△ε=ε
−εを意味する。
【0054】電界Eを印加したとき、液晶分子の配向ベ
クトル方向と電界とがなす角度をθとすると、自発分極
Psと電界との相互作用によって生じる自発分極トルク
Pは、下記の数式(A)で表され、誘電率異方性と電
界とによって液晶分子に働く誘電トルクTEは、下記の
数式(B)で表される(ここでは、二軸誘電異方性の項
は無視する)。
【0055】
【数1】
【0056】
【数2】
【0057】数式(A)および(B)から明らかなよう
に、自発分極トルクTPは電界Eの1乗に比例し、誘電
トルクTEは電界Eの2乗に比例する。さらに、誘電異
方性が負(△ε<0)の場合には、誘電異方性の定義か
ら明らかなように、誘電トルクは液晶分子がセル界面に
平行(すなわち、基板に平行)となるように作用する
(すなわち、自発分極トルクによるスイッチングを抑制
するように作用する)。従って、印加される電界の大き
さが変化するにしたがって、スイッチに必要なパルス幅
が以下のように変化する。印加される電界(パルス電
圧)が小さい場合には、自発分極トルクは小さく、スイ
ッチに必要なパルス幅は大きい。電界の大きさが一定の
範囲内である場合には、自発分極トルクが支配的となる
ため、印加される電界が大きくなるにしたがってスイッ
チに必要なパルス幅は小さくなる。印加される電界がさ
らに大きくなると、誘電トルクが支配的となって、自発
電極トルクによるスイッチングが抑制される。従って、
印加される電界が一定の大きさを超えると、スイッチに
必要なパルス幅が大きくなる。以上のようにして、誘電
異方性が負の場合には、τ−V曲線は、例えば図3に示
すような極小値(Vmin、τmin)を有する。このような
特性を利用した駆動は、τ−Vminモードと称される。
【0058】τ−Vminモードによれば、次のような利
点が得られる。例えば、図3に示すようにパルス幅τSW
のパルス電界を印加する場合について説明する。図3に
示すように、αの領域ではスイッチングは起こらない
が、しきい値電圧Vαβ以上の領域βではスイッチング
が起こる。τ−V曲線が極小値を有さない場合には、し
きい値電圧Vαβのみでしかスイッチングを制御できな
いが、τ−V曲線が極小値を有する場合には、しきい値
電圧VαβおよびVβγの両方でスイッチングを制御す
ることが可能となる。すなわち、しきい値電圧Vαβ
行っていたスイッチング制御をしきい値電圧Vβγでの
スイッチング制御に変えることが可能となる。さらに、
しきい値電圧Vβγでのスイッチング制御は、しきい値
電圧Vαβでのスイッチング制御に比較して、駆動マー
ジンが広いという利点を有する。
【0059】さらに、誘電異方性が負(または二軸誘電
異方性が大)である液晶性組成物は、非スイッチング時
にAC電界を印加して双安定状態を安定させるというA
Cスタビライズ効果(J.C.Jones,M.J.Towler and E.P.R
aynes:Ferroelectrics121(1991)91.参照)が
利用できるという利点を有する。ACスタビライズ効果
を利用することにより、メモリ角が大きく、かつ、高コ
ントラストおよび高明度の液晶表示素子が得られ得る。
【0060】好ましくは、本発明の液晶素子(好ましく
は、強誘電性液晶素子)においては、強誘電性液晶の強
誘電層において、液晶層と基板との界面近傍でプレチル
トが付与された液晶分子が界面から離れていく側に折れ
曲がるシェブロン層構造が、基板全面にわたってほぼ同
一に形成されている。ここで、シェブロン層構造とは、
液晶層と基板との界面近傍でプレチルトされた液晶分子
が界面から離れていく方向にスメクティック層が折れ曲
がる構造をいう(図4参照)。シェブロン層構造が形成
される配向は、一般にC2配向と称される。C2配向の
中でも、基板法線方向に液晶分子がねじれてないC2ユ
ニフォーム(C2U)配向が最も好ましい。C2配向
は、C1配向(スメクティック層の折れ曲がる方向がC
2配向とは逆方向である配向)に比べて、低温度域およ
び広温度範囲で安定であり、液晶分子の応答速度が速
く、高コントラストの液晶表示素子が得られる等の利点
を有する。代表的には、C2配向は、3〜8°程度のプ
レチルト角が形成されるように配向処理(例えば、ラビ
ング処理)された配向膜を用いることによって得られ
る。
【0061】D.液晶素子の製造方法 本発明の液晶素子の製造方法の好ましい一例について説
明する。
【0062】最初に、少なくとも1種の本発明の高分子
化合物(上記化学式(I)で表される化合物)と液晶
(好ましくは、スメクティック相を示す液晶)とを混合
し、液晶性組成物を調製する。次に、この液晶性組成物
を、所定の一対の基板(例えば、上記B項で説明した電
極基板13および14)間に任意の適切な方法により注
入して液晶セルを得る。注入時の温度は、用いられる液
晶に応じて変化し得る。例えば、スメクティック相を示
す液晶を用いる場合には、液晶性組成物がスメクティッ
ク相を示す温度域よりも高い温度で注入することが好ま
しい。注入時の温度が低すぎる場合には、液晶と高分子
化合物とが相分離してしまい、高分子化合物が液晶層内
に均等に配置されない恐れがあるからである。液晶セル
は、任意の適切な速度(例えば、2.0℃/min)で
冷却され、画素サイズに比べて十分に小さいスイッチン
グドメインが形成される。このようにして、液晶素子が
作製される。
【0063】好ましくは、液晶セルは、液晶組成物が等
方相(アイソトロピック相)を示す温度まで再度加熱さ
れ、そして冷却される。このように加熱および冷却を繰
り返すことにより、一旦スメクティック相の層方向にあ
る程度凝集した高分子化合物が、冷却によってさらに顕
著に相分離を引き起こす。その結果、より均一で細かい
スイッチングドメインが形成され、より優れた階調表示
が可能となる。
【0064】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【0065】(実施例1)液晶素子を以下の手順で作製
した。
【0066】まず、下記化学式で表わされる高分子化合
物Aを以下のようにして得た:
【0067】
【化5】
【0068】50mlの2口フラスコに、アルゴン置換
下、4'-[12-(プロペノイルオキシ)ドデシルオキシ]-2,3
-ジフルオロビフェニル1.0g(2.25mmol)、
AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)3.70mg
(0.0225mmol)および無水テトラヒドロフラ
ン2.5mlを仕込んだ。反応液を60℃で7時間攪拌
した後、減圧下で濃縮した。残渣を良溶媒にテトラヒド
ロフラン、貧溶媒にメタノールを用いる再沈殿法(4回
繰り返した)により精製し、目的とする高分子化合物A
0.4gを得た。
【0069】この化合物をDSCを用いて測定したとこ
ろ、透明点56.5℃およびガラス転移点15.9℃であ
った。GPCによる分子量測定によれば、Mn(数平均
分子量)9336、Mw(重量平均分子量)1368
3、D(=Mw/Mn;分散度)1.47およびPn
(平均重合度;すなわち化学式におけるl)21.0で
あった。
【0070】次に、上記高分子化合物A0.2重量部と
強誘電性液晶A99.8重量部とを混合して液晶性組成
物A”を調製した。一方、通常の方法で一対の電極基板
を作製し、スペーサーを介して基板間距離1.4μmで
対向させた。液晶性組成物A”を基板間に100℃で真
空注入して液晶セルを作製した。次いで、この液晶セル
を2.0℃/minの速度で室温まで徐冷し、基板周縁
部を封止した。さらに、液晶セルを100℃に再度加熱
し、2.0℃/minの速度で室温まで徐冷した。以上
のようにして、液晶素子を作製した。
【0071】ここで、上記強誘電性液晶Aはτ−Vmin
特性を示す強誘電性液晶である。強誘電性液晶Aの相系
列および相転移温度は下記の通りである: SmC*相−(56.6℃)−SmA相−(75.1℃)
−N*相−(85.0℃)−I相。
【0072】(実施例2)液晶素子を以下の手順で作製
した。
【0073】まず、下記化学式で表わされる高分子化合
物Bを以下のようにして得た:
【0074】
【化6】
【0075】50mlの2口フラスコに、アルゴン置換
下、4'-[12-(2-メチルプロペノイルオキシ)ドデシルオ
キシ]-2,3-ジフルオロビフェニル1.0g(2.18mm
ol)、および無水テトラヒドロフラン2.0mlを仕
込んだ。この混合物に、0.01M濃度の酢酸テトラブ
チルアンモニウムのテトラヒドロフラン溶液0.5ml
(0.005mmol)および0.5M濃度の1-メトキシ
-2-メチル-1-プロペニルオキシトリメチルシランのテト
ラヒドロフラン溶液1ml(0.5mmol)を順次滴
下し、室温で100時間攪拌した。反応液にテトラヒド
ロフラン6.5mlを加えて希釈した。希釈した反応液
にメタノール30mlを加え、一昼夜静置して上澄み液
を除去した。得られた残渣をさらにメタノール5mlで
2度洗浄し、目的とする高分子化合物B0.82gを得
た。
【0076】この化合物をDSCで測定したところ透明
点26.8℃であった。偏光顕微鏡による観察では、こ
の化合物は室温でネマティック相の液晶相を有すること
が確認された。さらに、GPCによる分子量測定によれ
ば、Mn(数平均分子量)4095、Mw(重量平均分
子量)4766、D(=Mw/Mn;分散度)1.16
およびPn(平均重合度)8.9であった。
【0077】次に、上記高分子化合物B0.2重量部と
強誘電性液晶B99.8重量部とを混合して液晶性組成
物B”を調製した。一方、通常の方法で一対の電極基板
を作製し、スペーサーを介して基板間距離1.4μmで
対向させた。液晶性組成物B”を基板間に110℃で真
空注入して液晶セルを作製した。次いで、この液晶セル
を2.0℃/minの速度で室温まで徐冷し、基板周縁
部を封止した。さらに、液晶セルを110℃に再度加熱
し、2.0℃/minの速度で室温まで徐冷した。以上
のようにして、液晶素子を作製した。
【0078】ここで、上記強誘電性液晶Bはτ−Vmin
特性を示す強誘電性液晶である。強誘電性液晶Bの相系
列および相転移温渡は下記のとおりである: SmC*相−(72.0℃)−SmA相−(92.3℃)
−N*相−(103℃)−I相。
【0079】(実施例3)液晶素子を以下の手順で作製
した。
【0080】まず、下記化学式で表わされる高分子化合
物Cを以下のようにして得た:
【0081】
【化7】
【0082】4'-[6-(プロペノイルオキシ)ヘキシルオキ
シ]-2,3-ジフルオロビフェニル99.5重量部と光重合
開始剤Irgacure651(チバガイギー社製)0.5重量部
との混合物に、窒素雰囲気下、70℃の温度で、3.0
mW/cm2の強度の紫外線を2分照射して、目的とす
る高分子化合物Cを得た。
【0083】ここでは未重合の4'-[6-(プロペノイルオ
キシ)ヘキシルオキシ]-2,3-ジフルオロビフェニルも存
在していたが、重合した部分の重合度はおおよそ30〜
9300で、分散度は3.3であった。
【0084】次に、上記高分子化合物C1.0重量部と
強誘電性液晶B99.0重量部とを混合して液晶性組成
物C”を調製した。一方、通常の方法で一対の電極基板
を作製し、スペーサーを介して基板間距離1.4μmで
対向させた。液晶性組成物C”を基板間に110℃で真
空注入して液晶セルを作製した。次いで、この液晶セル
を2.0℃/minの速度で室温まで徐冷し、基板周縁
部を封止した。さらに、液晶セルを110℃に再度加熱
し、2.0℃/minの速度で室温まで徐冷した。以上
のようにして、液晶素子を作製した。
【0085】(比較例1)通常の方法で一対の電極基板
を作製し、スペーサーを介して基板間距離1.4μmで
対向させた。強誘電性液晶Aのみを基板間に100℃で
真空注入して液晶セルを作製した。次いで、この液晶セ
ルを2.0℃/minの速度で室温まで徐冷し、基板周
縁部を封止して、液晶素子を作製した。
【0086】(比較例2)通常の方法で一対の電極基板
を作製し、スペーサーを介して基板間距離1.4μmで
対向させた。強誘電性液晶Bのみを基板間に110℃で
真空注入して液晶セルを作製した。次いで、この液晶セ
ルを2.0℃/minの速度で室温まで徐冷し、基板周
縁部を封止して、液晶素子を作製した。
【0087】以下、本発明の実施例の液晶素子および比
較例の液晶素子の特性について調べた結果を説明する。
【0088】図5は、実施例の液晶素子および比較例の
液晶素子の各々に、パルス幅を増加させながらモノパル
ス電圧を印加したときのスイッチングドメインの変化の
様子を示す模式図である。スイッチングドメインはラビ
ング方向と垂直に縞状に出現する。比較例1および2に
おいて得られるスイッチングドメインは不均一であり、
しかもドメインサイズは1画素の幅(実際には、約0.
3mm)に対して大きすぎる。これに対して、実施例1
〜3ではスイッチングドメインはラビング方向と垂直に
縞状に出現し、その幅および問隔も1画素に対して十分
に細い。このことは、本発明の実施例の液晶素子によれ
ば良好な階調性が得られることを示している。図5に示
すような細かなスイッチングドメインは、実施例1およ
び3において顕著であった。これは、実施例1および3
の高分子化合物と液晶との相溶性が、より優れているた
めであると考えられる。
【0089】次に、実施例の液晶素子および比較例の液
晶素子の透過光強度のパルス幅(または波高値)依存性
を図6に示す。実施例1および比較例1はV=20V
(constant)および25℃で、実施例3および
比較例2はτ=12μs(constant)および2
5℃で、それぞれ測定した。図6から明らかなように、
実施例の透過光曲線は比較例のものに比べてなだらかで
ある。このことは、実施例の液晶素子が階調表示を行い
やすいことを示している。実施例2の結果は図示してい
ないが、実施例1と同様の結果が得られた。
【0090】図5および図6に示す結果から明らかなよ
うに、本発明の液晶素子においては、パルス幅に応じて
1画素中のスイッチングドメインの割合が変化する。従
って、本発明の液晶素子によれば、所望のパルス幅で電
界を印加することにより、所望の明るさの階調表示が可
能となる。同様に、パルス幅を一定にして所望のパルス
波高値で電界を印加することによっても、所望の明るさ
の階調表示が可能となる。
【0091】図7は、実施例1および比較例1の液晶素
子において、パルス電圧を印加したときのスイッチング
に要するパルス幅τとパルス波高値(印加電圧)Vとの
関係(τ−V特性)を示すグラフである。S0は顕微鏡
視野内でスイッチングドメインが出現するパルス幅であ
り、S100は視野内のすべてがスイッチングするパルス
幅である。
【0092】図7に示すように、実施例1の液晶素子の
0−S100の幅は、比較例1の液晶素子に比べて非常に
広くなっている。このことは、実施例1の液晶素子が階
調表示を良好に行い得ることを示している。さらに、こ
のことは、パルス電圧の波高値に対するスイッチングド
メインの面積の変化率がより小さくなっていることを示
しており、セル厚の不均一性や周辺温度の変化に伴うτ
−V特性の変化を補償することができるという点でも好
ましい。しかも、実施例1の液晶素子のS0は、比較例
1の液晶素子に比べてそれほど大きくない。このこと
は、実施例1の液晶素子の応答速度がそれほど遅くなら
ないことを示している。実施例2および3においても、
実施例1と同様の結果が得られる。中間調表示における
スイッチングドメインは、高分子化合物と液晶との組合
せによって若干異なるが、いずれの実施例においても画
素サイズに対して十分細かく、かつ均一である。
【0093】(実施例4)下記化学式で表される高分子
化合物D(l=2〜10)を用いたこと以外は実施例3
と同様にして液晶素子を作製し、実施例1と同様にして
その特性を評価した。その結果、実施例1には若干劣る
ものの、実施例1と同様の優れた効果が確認された。
【0094】
【化8】
【0095】
【発明の効果】本発明によれば、少なくとも1種の本発
明の化合物(上記化学式(I)で表される化合物)と液
晶(好ましくは、強誘電性液晶)とを組み合わせて用い
ることにより、階調性を有する液晶素子(好ましくは、
強誘電性液晶表示素子)が得られ得る。
【0096】一般に、強誘電性液晶のスイッチングドメ
インは不均一であり、しかもドメインサイズは1画素
(例えば、約0.3mm×0.3mm)に対して大きすぎるので、
階調表示に不適当である。これに対して、本発明の高分
子化合物を用いることにより、強誘電性液晶分子のスイ
ッチングに必要な電圧波高値(または印加電圧のパルス
幅)のしきい値が、液晶層の場所によって適切に異なる
ようになる。その結果、1画素(約0.3mm×0.3mm)に対
して十分小さいスイッチングドメインを均一に形成する
ことが可能となる。従って、階調性を有する強誘電性液
晶素子が得られる。さらに、本発明によれば、液晶素子
において、電圧波高値(または印加電圧のパルス幅)に
対する透過光の変化がなだらかになる。従って、セル厚
の不均一性や周辺温度の変化に伴うτ−V特性の変化を
補償することができる。
【0097】さらに、本発明の高分子化合物は、その他
のスメクティック液晶素子(例えば、反強誘電性液晶表
示素子)にも有用であり、他のモード(例えば、 T
N、STN、ECB )の液晶素子においても、耐衝撃
性および耐熱性の向上、視野角特性の改善、印加電圧−
透過光特性の制御などに効果的である。
【0098】本発明の高分子化合物、液晶性組成物およ
び液晶素子は、例えば、通常のディスプレイ、光シャッ
タ、光学フィルタ、光センサなどに好適に使用され得
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の好ましい実施形態である強
誘電性液晶素子の概略断面図である。
【図2】降温過程における液晶性組成物の相分離を説明
するための模式図である。
【図3】負の誘電異方性を有する強誘電性液晶のτ−V
特性を示すグラフである。
【図4】C1配向およびC2配向(シェブロン層構造)
を説明するための模式図である。
【図5】実施例の液晶素子および比較例の液晶素子の各
々に、パルス幅を増加させながらモノパルス電圧を印加
したときのスイッチングドメインの変化の様子を示す模
式図である。
【図6】実施例1および3、ならびに比較例1および2
の液晶素子の透過光強度のパルス幅依存性または波高値
依存性を示すグラフである。
【図7】実施例1および比較例1の液晶素子におけるτ
−V特性を示すグラフである。
【図8】(a)は、強誘電性を示すSmC*相のスメク
ティック層構造と分子配列とを説明するための模式図で
あり;(b)は、双安定状態のうちの1つの状態におけ
る、各層の分子の配列を示す模式図である。
【図9】表面安定化型強誘電性液晶表示素子の動作原理
を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1、2 ガラス基板 3 信号電極 4、6 絶縁膜 5 走査電極 7、8 配向膜 9 液晶(液晶層) 11、12 偏光板 13、14 電極基板
フロントページの続き (72)発明者 向殿 充浩 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 溝部 帆洋 埼玉県草加市稲荷1丁目7番1号 関東化 学株式会社中央研究所内 (72)発明者 吉田 昌彦 埼玉県草加市稲荷1丁目7番1号 関東化 学株式会社中央研究所内 (72)発明者 鈴木 賢治 埼玉県草加市稲荷1丁目7番1号 関東化 学株式会社中央研究所内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学式(I)で表される高分子化合物: 【化1】 ここで、Xは水素原子またはメチル基であり;Y1
    2、Y3およびY4は、それぞれ独立して水素原子また
    はフッ素原子であり;lは2〜10000の整数であ
    り;mおよびnは、それぞれ独立して0〜14の整数で
    あり;pおよびqは、それぞれ独立して0または1であ
    り;そして、rは0〜9の整数であり、 m=0の場合にはp=0であり;r=0の場合にはn=
    q=0でありかつZは水素原子であり;そして、r≠0
    の場合にはZはフッ素原子である。
  2. 【請求項2】 少なくとも1種の請求項1に記載の高分
    子化合物と液晶とを含有する、液晶性組成物。
  3. 【請求項3】 前記液晶がスメクティック相を示す液晶
    である、請求項2に記載の液晶性組成物。
  4. 【請求項4】 前記液晶が強誘電性液晶である、請求項
    2または3に記載の液晶性組成物。
  5. 【請求項5】 前記高分子化合物が、前記化学式(I)
    においてX、Y1、Y2およびZが水素原子であり;Y3
    およびY4がフッ素原子であり;lが20〜500であ
    り;mが4〜14であり;pが1であり;そして、q、
    nおよびrが0である化合物である、請求項2から4の
    いずれかに記載の液晶性組成物。
  6. 【請求項6】 前記高分子化合物の含有量が0.005
    〜5重量%である、請求項2から5のいずれかに記載の
    液晶性組成物。
  7. 【請求項7】 少なくとも電極を有する一対の基板と、
    該基板間に挟持された液晶層とを備え、該液晶層が、請
    求項2に記載の液晶性組成物を含む、液晶素子。
  8. 【請求項8】 前記液晶がスメクティック相を示す液晶
    である、請求項7に記載の液晶素子。
  9. 【請求項9】 前記液晶が強誘電性液晶である、請求項
    7または8に記載の液晶素子。
  10. 【請求項10】 前記液晶が、メモリパルス幅−電圧曲
    線が極小値を有する特性を有する、請求項7から9のい
    ずれかに記載の液晶素子。
  11. 【請求項11】 強誘電性液晶の強誘電層において、液
    晶層と基板との界面近傍でプレチルトが付与された液晶
    分子が界面から離れていく側に折れ曲がるシェブロン層
    構造が、基板全面にわたってほぼ同一に形成されてい
    る、請求項7から10のいずれかに記載の液晶素子。
  12. 【請求項12】 少なくとも電極を有する一対の基板と
    該基板間に挟持された液晶層とを備える液晶素子の製造
    方法であって、 少なくとも1種の請求項1に記載の高分子化合物と液晶
    とを混合して液晶性組成物を得る工程と、 該液晶性組成物を該一対の基板間に注入する工程とを包
    含する、液晶素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記液晶がスメクティック相を示す、
    請求項12に記載の液晶素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記液晶性組成物が、該液晶性組成物
    がスメクティック相を示す温度域よりも高い温度で前記
    一対の基板間に注入される、請求項12または13に記
    載の液晶素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記一対の基板間に注入された前記液
    晶性組成物を、該液晶性組成物が等方相を示す温度まで
    加熱し、そして冷却する工程をさらに包含する、請求項
    12から14のいずれかに記載の液晶素子の製造方法。
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JP (1) JPH111516A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003027060A (ja) * 2001-07-13 2003-01-29 Shunsuke Kobayashi 液晶表示素子およびその製造方法
JP2016193869A (ja) * 2015-04-01 2016-11-17 Dic株式会社 重合性化合物及び光学異方体

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