JPH11149834A - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材およびその製造方法

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JPH11149834A
JPH11149834A JP9315359A JP31535997A JPH11149834A JP H11149834 A JPH11149834 A JP H11149834A JP 9315359 A JP9315359 A JP 9315359A JP 31535997 A JP31535997 A JP 31535997A JP H11149834 A JPH11149834 A JP H11149834A
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Japan
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wire
oxide
center
outermost layer
composite material
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JP9315359A
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English (en)
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Takaaki Sasaoka
高明 笹岡
Akira Nomoto
明 野本
Junichi Sato
淳一 佐藤
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Hitachi Cable Ltd
Original Assignee
Hitachi Cable Ltd
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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Abstract

(57)【要約】 【課題】酸化物超電導線材の曲げに対して臨界電流密度
Jcの劣化の少ない酸化物超電導線材およびその製造方
法を提供する 【解決手段】マルチフィラメント型酸化物超電導線材
は、18本の断面円形の酸化物超電導体1が被覆材2内
で分割されて2層に配置される。各超電導体1は、ツイ
スト加工により、断面円形の酸化物超電導線材3の中心
に対し、螺旋に配置される一方、中心部は被覆材で満た
されている。そして、少なくとも最外層に位置する超電
導体1のほぼ中心と超電導線材3の中心との距離aと、
図示されていない螺旋ピッチPとの比は、所定範囲内に
なるよう構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物超電導線
材、特に線材曲げに対して臨界電流密度の劣化が少ない
酸化物超電導線材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導体を複数に分割してフィラ
メント状とし、銀または銀合金をマトリックスで被覆し
た銀シース多芯酸化物超電導線材の開発が進められてい
る。この線材は、酸化物超電導体として、例えば、Bi-2
212, Bi-2223, Tl-1223, Tl-2223, Y123, Nd-123, 等の
酸化物粉末を出発原料として、銀パイプ中に粉末を充填
し、その銀パイプを複数本束ねて伸線することで銀被覆
材と複合させた後、超電導化熱処理を施し、多芯の超電
導線材を得ている。
【0003】従来の多芯酸化物超電導線材としては、図
6に示すような、被覆材との複合化の際に酸化物超電導
体組織を複数に分割し、マルチフィラメント型超電導線
材とした構造(特開平4−292809号)のほか、図
7に示すような、複数本の超電導体で構成される素線群
を分割して配置するサブマルチフィラメント型超電導線
材とした構造が用いられる。通常これらは、超電導線材
として要求される臨界電流密度(以下、Jcという)を
確保ために不可欠な構造と考えられている。
【0004】また、最終的な超電導線材の形状として
は、テープ状に構成することが多い。これもJc確保の
ための手段である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
これら酸化物超電導線材は、線材の曲げに対してJcが
劣化することが問題となる。これは、線材の曲げによっ
て超電導体に加わる歪みが大きくなり、超電導体組織の
歪破壊を招くからである。従来の酸化物超電導線材で
は、0.2%以上の歪みによりJcが劣化する。
【0006】そこで、本発明の目的は、酸化物超電導線
材の曲げに対してJcの劣化の少ない酸化物超電導線材
およびその製造方法を提供することにある。本発明の他
の目的は、線材の許容曲げ半径を小さくできる酸化物超
電導線材およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、少なくともn本(nは3以上の整数)の
分割されたフィラメント状の酸化物超電導体と被覆材か
らなるマルチフィラメント型酸化物超電導複合材であっ
て、その複合材の長さz内に含まれる各酸化物超電導体
の経路長lを、l>zとしたことを特徴とする酸化物超
電導線材を提供する。
【0008】この場合、前記分割された酸化物超電導体
が前記複合材中に配置された螺旋状の素線であり、最外
層に位置する素線の螺旋軌道が2<P/a<100の範
囲(Pは螺旋ピッチ、aは複合材中の最外層に位置する
素線のほぼ中心と複合材中心との距離)であることが好
ましい。
【0009】また、前記分割された各酸化物超電導体
が、複数本の酸化物超電導体の素線群からなり、当該素
線群の最外層を構成する素線の螺旋軌道が2<P1/a
1<100の範囲(P1は最外層素線の螺旋ピッチ、a
1は最外層素線のほぼ中心と当該酸化物超電導体素線群
の中心との距離)であり、かつ、前記複合材中の最外層
に配置された素線群の螺旋軌道が2<P2/a2<10
0の範囲(P2は素線群の螺旋ピッチ、a2は複合材中
の最外層に位置する素線群のほぼ中心と複合材中心との
距離)にあるようにしてもよい。
【0010】本発明は、更に、少なくともn本(nは3
以上の整数)に分割されたフィラメント状の酸化物超電
導体と被覆材からなるマルチフィラメント型酸化物超電
導複合材を含む酸化物超電導線材の製造方法において、
n本の酸化物超電導体原料を含む素線を、酸化物超電導
体以外の金属線を中心として一層または複数層配置し、
かつ最外層に位置する前記酸化物超電導体原料を含む素
線の螺旋軌道が2<P/a<100の範囲(Pは螺旋ピ
ッチ、aは複合材中の最外層に位置する素線のほぼ中心
と複合材中心との距離)になるよう螺旋状に構成し、そ
の後超電導化熱処理を行うことを特徴とする酸化物超電
導線材の製造方法を提供する。
【0011】また、本発明では、少なくともn本(nは
3以上の整数)に分割されたフィラメント状の酸化物超
電導体と被覆材からなるマルチフィラメント型酸化物超
電導複合材を含む酸化物超電導線材の製造方法におい
て、n本の酸化物超電導体原料を含む素線を、酸化物超
電導体以外の金属線を中心にして一層または複数層配置
し、かつ最外層に位置する前記酸化物超電導体を含む素
線の螺旋軌道が2<P/a<100の範囲(Pは螺旋ピ
ッチ、aは複合材中の最外層に位置する素線のほぼ中心
と複合材中心との距離)になるよう螺旋状に構成し、そ
れらを減面加工後に超電導化熱処理を行うことを特徴と
する酸化物超電導線材の製造方法も併せて提供する。
【0012】本発明はさらに、複数本の酸化物超電導体
原料を含む素線を束ねて素線群となし、当該素線群のn
本以上(nは3以上)を、酸化物超電導体以外の金属線
を中心にして一層または複数層配置し、その外周に金属
を被覆して断面円形の複合材を構成し、その後当該複合
材を減面加工し、当該複合材にツイスト加工を施して、
複合材内で最外層に位置する前記素線群の螺旋軌道が2
<P2/a2<100の範囲(P2は素線群の螺旋ピッ
チ、a2は最外層に位置する素線群のほぼ中心と複合材
中心との距離)となるよう構成し、その後超電導化熱処
理を施すことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法
を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の酸化物超電導線材
およびその製造方法について、実施の形態を説明する。
【0014】本発明は、超電導線材の複合材内に含まれ
る個々の酸化物超電導体の経路長sを線材長lより長く
することを基本構成とする。この条件を満たす好ましい
態様の一つは、個々の超電導体を被覆材内で螺旋状に配
置した複合材とすることである。超電導体の曲げによっ
て加わる曲率は、超電導体の経路長を複合超電導線材の
線材長より長くすることで小さくできる。その結果、超
電導体の歪破壊を抑止し、曲げによるJc劣化の少ない
酸化物超電導線材が得られる。
【0015】超電導体の経路長を線材長より長くするた
めの手法としては、a)超電導体と被覆材を含む複合材
のツイスト加工、b)超電導体の撚線集合線材化、c)
超電導体の転位集合線材化、d)超電導体のソレノイド
化が挙げられる。
【0016】これらa),b),c),d)の手法のう
ち、一つまたは2種以上を組み合わせて、超電導体の経
路長を長くすることができる。いずれの手法も所定の経
路長を確保するのに有効な手法であるが、以下、a)超
電導体と被覆材を含む複合材のツイスト加工の手法を例
にとり、以下詳細に説明する。
【0017】ツイスト加工法のねらいは、複合材にねじ
りを加えたときに、以下に述べる複合材のねじり加工の
限界近くでおこる超電導体組織の破壊を抑止することに
ある。ツイスト加工は、超電導線材のJc特性とトレー
ドオフの関係にあり、ねじられる超電導線材の螺旋ピッ
チと線材径との比が約2倍でねじり加工の限界に達す
る。それ以上ねじると、超電導体組織にミクロなクラッ
クが生じ、Jcが低下する。
【0018】そこで、ねじり加工の制約の範囲で、複合
材内で超電導体を螺旋配置とし、超電導線材の線材長よ
り長い超電導体の経路長を確保するために、好ましく
は、超電導体以外の金属線を中心としてその周囲に超電
導体を配置した状態でツイスト加工を施す。これは、金
属は酸化物超電導材に比べると展延性を有しているた
め、ツイスト加工の際、中心に金属線を配置することで
超電導体の引張破壊歪を大きくする役目をはたすからで
ある。
【0019】本発明の製造方法に用いる超電導体素線
は、酸化物超電導体原料を含む素線であり、金属のパイ
プ、例えば、銀または銀合金のパイプ中に酸化物超電導
体の原料粉末を充填したもののほか、原料粉末を焼成後
に粉砕した粉末を充填したものも含む。金属パイプは、
スエージングあるいはドローイングによる減面加工、伸
線、圧延または押し出し等の機械加工処理を経ること
で、最終的に複数の超電導体を取り囲む被覆材となる。
【0020】被覆材は、銀または銀合金が好ましく、特
に銀合金としては、主成分をAgとし、Au,Mg,Ni,Mn,
Zr,Ti,Pd,等の少なくとも一種を添加した合金材を用
いることができる。
【0021】必要に応じ、ツイスト加工の前にアニール
処理を施す。これは、中心に配置された金属線および/
または被覆材となる金属の展延性を大きくするためであ
る。ツイスト加工を施した後に、超電導化熱処理を行
い、最終複合線材とする。
【0022】本発明では、ツイスト加工後の形状は特に
問わないが、ツイスト加工後の形状を丸線とし、これを
伸線、押出し、または圧延の機械加工処理を行い、所望
の形状(例えば、テープ材、平角材、6角材、丸線)に
成形した後に、超電導熱処理を行うことも可能である。
【0023】一例を挙げると、酸化物超電導原料粉末を
金属パイプ内に充填し、当該金属パイプの18本を1本
の金属線の周囲に平行に配置して束ね、これらを別の金
属パイプ内に挿入した後、伸線して複合材とする。その
複合材をツイストした後、通常の超電導化熱処理を施す
ことにより、酸化物超電導線材が得られる。
【0024】図1は、そのように製造したマルチフィラ
メント型酸化物超電導線材の一例を示し、18本の断面
円形の酸化物超電導体1が被覆材2内で分割されて2層
に配置される。各超電導体1は、ツイスト加工により、
断面円形の酸化物超電導線材3の中心に対し、螺旋に配
置される一方、中心部は被覆材で満たされている。そし
て、少なくとも最外層に位置する超電導体1のほぼ中心
と超電導線材3の中心との距離aと、図示されていない
螺旋ピッチPとの比は、後述する所定範囲内になるよう
構成されている。
【0025】本発明の別の実施の形態では、超電導体を
複数の超電導体素線の素線群で構成し、当該素線群の最
外層を構成する素線の螺旋軌道を、ねじり加工の制約範
囲内で1回目のツイスト加工し、次いで、ツイスト加工
後の素線群を超電導体以外の金属線の周囲に配置して、
同様にねじり加工の制約範囲内で2回目のツイスト加工
を施した後に超電導化熱処理を行い、最終複合線材とす
る、ダブル螺旋配置も含む。
【0026】図2は、そのように製造されるサブマルチ
フィラメント型酸化物超電導線材の一例を示し、7本の
超電導体素線11よりなる素線群12は、1回目のツイ
ストにより、1本の素線11を中心として外層に位置す
る6本の素線11が螺旋状に配置されている。そして、
外層に位置する素線11のほぼ中心と素線群12の中心
との距離a2と、図示されていない螺旋ピッチP2との
比は、後述する所定範囲内となるよう構成される。18
本の素線群12は2回目のツイストにより、断面円形の
超電導線材3の中心に対して螺旋状に配置される。素線
群12は2層をなし、少なくともその最外層に位置する
素線群のほぼ中心と超電導線材3の中心との距離a1
と、図示されていない螺旋ピッチP1との比が、後述す
る所定範囲内になるよう構成される。
【0027】次に、被覆材内の酸化物超電導体の経路長
sを超電導線材長lより長くすることで曲げによって加
わる歪を低減できる理由を、以下詳細に説明する。
【0028】超電導線材の円形断面内で螺旋状に配置さ
れた一本の超電導体素線に着目した時の超電導体素線の
螺旋配置を図3に、ダブル螺旋配置を図4にそれぞれ示
す。
【0029】この場合、図3、図4両ケースともに、螺
旋ピッチが小さくなるほど線材長さあたりの超電導体の
経路長sが大きくなるのがわかる。これを数式で表現す
ると、図5に示す螺旋配置において、超電導体の螺旋ピ
ッチはP1、螺旋の半径はa1であり、この時の経路長
sについては、次のようになる。
【0030】
【数1】
【0031】一方、図6のダブル螺旋配置においては、
超電導体は螺旋状に構成した素線群内の1本であり、そ
の螺旋のピッチはP2、螺旋の半径はa2である。そし
て、素線群は、螺旋ピッチP1、螺旋半径a1で螺旋状
に配置されている。したがって、この時の経路長sは、
【0032】
【数2】
【0033】である。
【0034】ここで、(1)および(2)式からも明ら
かなように螺旋ピッチが小さくなるほど線材単位長さあ
たりの経路長sは長くなる。
【0035】なお、実際には超電導線材を得る工程中
で、超電導体および/または被覆材となる銀、銀合金が
変形したり、両者に滑りが生じたりするので、数学的螺
旋軌道から大きく外れた形態となる。特に、テープ材、
6角材に成形するときは、その傾向が顕著となり、むし
ろ楕円螺旋のような軌道となる。しかしながら、超電導
体が、後述する楕円も含む螺旋軌道の範囲に入ることを
狙いに最終複合線材を製造するときは、本発明の利点が
得られることは言うまでもない。
【0036】次に、超電導体を図7に示すように曲げ半
径Rで曲げたことによって超電導体に加わる曲率κは、
【0037】
【数3】
【0038】で表される。この(3)式から、曲率κを
歪εに変換すると、
【0039】
【数4】
【0040】となる。(4)式より、経路長sが大きく
なるほど超電導体へ加わる歪を低減できることがわか
る。
【0041】更に、ダブル螺旋配置については、(1)
式と(2)式の違いから明らかなように、経路長sが更
に長くなるので、歪低減効果も大きくなる。
【0042】図2に示したダブル螺旋配置の超電導体素
線群を含む複合体を複数本用意し、それらを撚り合せる
か、それらを束ねた後にツイスト加工することで、トリ
プル螺旋配置とすることも可能であり、最終的には何度
も撚り合わせるか、ツイスト加工することで、n次螺旋
配置構成の超電導線材を得ることもできる。撚り合わせ
またはツイストを繰り返すことで、最終複合線材の単位
長さあたりの超電導体の経路長をより長くすることがで
きる。
【0043】前述したように、超電導体をツイスト加工
する場合は、ねじり加工の限界として、螺旋ピッチと螺
旋半径との比(P/a)の最小値が存在し、その値は約
2と考えられている。このため、無制限に経路長を長く
することはできない。限界値をP1/a1=2とする
と、図5の螺旋配置の場合、(1)式より、s=3.3
なので、超電導体に加わる歪を約3分1まで低減でき
る。これは、超電導線材の許容曲げ半径を3分の1まで
小さくできることを示している。
【0044】耐曲歪性を更に改善するには、図4に示す
ようなダブル螺旋配置とする方法がある。この場合は、
同様に限界値をP1/a1=P2/a2=2とすると、
(2)式より、s=10.4となり、歪を約10分の1
まで低減でき、その結果、許容曲げ半径を約10分の1
まで小さくできる。
【0045】このように、本発明は、超電導体の歪破壊
を抑止できるねじり限界として螺旋ピッチと螺旋半径と
の比(p/d)を2より大きく規定する一方、定量的に
歪抑制効果の現れる限界値として上限を100より小さ
く規定した。
【0046】ここで、超電導体素線群を分割してサブマ
ルチフィラメント構成の超電導線材を製造する場合にお
いては、素線群の螺旋ピッチP1を有限にする一方、素
線群を構成する超電導体素線は螺旋ピッチP2を無限大
とする構成、すなわち、サブフィラメントにおける親側
の素線群のみをツイストし、素線群を構成する素線はツ
イストすることなく平行に配置した構成も可能である。
または、その逆で、素線群内における超電導体の螺旋ピ
ッチP2を有限にし、素線群の螺旋ピッチP1を無限大
とする構成も可能である。
【0047】なお、(3)式で示される超電導体の曲率
は、実際の曲げの際に生じる超電導体および被覆材の変
形および滑りを考慮していない。超電導体が螺旋配置の
場合、超電導体に加わる歪は長手方向に沿って圧縮から
引張りへと交互に変動する。これらの変形ないし滑り
は、歪の最大値が最小となるように起こるものと予想さ
れる。つまり、実際の曲率は、(3)式で計算される曲
率より小さな値になることが予想される。このような効
果は、超電導体を螺旋配置にすることで起こる現象であ
る。
【0048】本発明の方法により製造される超電導線材
は、超電導体が螺旋配置、またはダブル螺旋配置された
状態で、機械加工処理や熱処理を経て超電導線となる。
機械加工後および熱処理後の断面内の超電導体配置(螺
旋半径a1,a2、超電導体相互間の距離)の均一性、
およびソーセージングと呼ばれる長手方向の寸法変動
は、超電導体を螺旋配置したときの方が改善されてお
り、これも、超電導体を螺旋配置したときの効果の一つ
である。
【0049】以下、本発明の実施例を具体的に説明す
る。
【0050】
【実施例】<実施例1>Bi-2212 相主相のBi2Sr2Ca1Cu2
Ox組成の前駆体粉末を用意した。外径12mm内径10mm
長さ500mmの銀合金パイプに粉末を充填し、直径2mm
まで伸線加工し、素線Aを得た。次に、素線Aと同サイ
ズの銀合金丸線Bを用意し、銀合金線Bを1本中心に配
置し周囲に素線Aを18本平行に配置して計19本を束
ね、別の銀合金パイプ内に組み込み、直径2mmまで伸線
し複合体Cを得た。複合体Cを480℃で30分アニー
ル処理を行った後にピッチ20mmにツイスト加工を施
し、複合体Dを得た。複合体Dに、880〜850℃の
溶融状態から800℃の固相状態へ1℃/分の割合で酸
素雰囲気中で徐冷する超電導化熱処理を施し、超電導線
材とした。
【0051】<実施例2>実施例1における超電導化熱
処理前の複合体Dを圧延によりテープ状(厚さ0.4m
m、幅7mm)に加工後、同様の超電導化熱処理を施し、
超電導線とした。
【0052】<実施例3>実施例1における超電導化熱
処理前の複合体Dを18本と銀合金丸線1本の計19本
を、中心に銀合金丸線が位置するように束ねた後、別の
銀合金パイプ内に組み込み、これを直径2mmまで伸線加
工を施し複合体Eを得た。複合体Eを480℃で30分
アニール処理を行った後に、ピッチ30mmにツイスト加
工を施し、複合体Fを得た。その後、複合体Fに同様の
超電導化熱処理を施し、超電導線材とした。
【0053】<実施例4>実施例3における超電導化熱
処理前の複合体Fを圧延によりテープ状(厚さ0.5m
m、幅6mm)に加工後、同様の超電導化熱処理を施し、
超電導線材とした。
【0054】<実施例5>実施例3における超電導化熱
処理前の複合体Fを外径1mmまで伸線加工後に、同様の
超電導化熱処理を施し、超電導線とした。
【0055】<実施例6>実施例1における超電導化熱
処理前の複合線Dを6角ダイスで対辺寸法1.4mmにな
るように加工し、それを54本とそれと同じ6角断面形
状の銀合金線1本の計55本を、中心に銀合金線が位置
するように平行に束ねた後、別の銀合金パイプ内に組み
込み、その後押出し加工を経て直径2mmまで伸線加工を
施し複合体Gを得た。複合体Gを480℃で30分アニ
ール処理を行った後に、ピッチ50mmにツイスト加工を
施し、複合体Hを得た。その後、複合体Hに同様の超電
導化熱処理を施し、超電導線材とした。
【0056】<実施例7>実施例1における超電導化熱
処理前の複合体Cを18本と銀合金丸線1本の計19本
を、中心に銀合金丸線が位置するように平行に束ねた
後、別の銀合金パイプ内に組み込み、その後直径2mmま
で伸線加工を施し複合体Iを得た。複合体Iを480℃
で30分アニール処理を行った後に、ピッチ30mmにツ
イスト加工を施し、複合体Jを得た。その後、素線Jに
同様の超電導化熱処理を施し、超電導線材とした。
【0057】<実施例8>実施例1における素線Aを1
9本を束ねて、銀合金パイプに組み込み、直径2mmまで
伸線し複合体Kを得た。次いで、複合体Kを18本と銀
合金丸線1本の計19本を、中心に銀合金丸線が位置す
るように平行に束ねた後、別の銀合金パイプ内に組み込
み、直径2mmまで伸線加工を施し複合体Lを得た。複合
体Lを480℃で30分アニール処理を行った後に、ピ
ッチ30mmにツイスト加工を施し、複合体Mを得た。そ
の後、複合体Mに同様の超電導化熱処理を施し、超電導
線材とした。
【0058】<実施例9>実施例1における超電導化熱
処理前の複合体Dを19本を束ね、別の銀合金パイプ内
に組み込み、直径2mmまで伸線加工を施して複合体Lを
得た。その後、複合体Lに同様の超電導化熱処理を施
し、超電導線材とした。
【0059】<実施例10>実施例1における超電導化
熱処理前の複合体Dを19本を束ね、別の銀合金パイプ
内に組み込み、直径2mmまで伸線加工を施し複合体Mを
得た。その後、複合体Mを圧延によりテープ状(厚さ
0.4mm)に加工後、同様の超電導化熱処理を施し、超
電導線材とした。
【0060】<実施例11>中心に外径2mmの銀合金丸
線を配置し、その周囲に実施例1における超電導化熱処
理前の複合体Dを18本束ねてピッチ60mmで撚線加工
を施し、その後同様の超電導化熱処理を経て超電導線材
とした。
【0061】各実施例で得られた酸化物超電導線材につ
いて、曲げ応力を加えたときのJcの変化を測定した。
その結果、0.6%の歪みまでJcの劣化は起こらず、
耐歪劣化特性が大きく改善していることを確認した。
【0062】更に、最終超電導線材を切り出し、光学顕
微鏡にて横断面組織および縦断面組織を調査した。その
結果、超電導体のフィラメントサイズの線材断面内にお
けるバラツキは5%以下、長手方向でのバラツキは10
%以下と良好な形状配置であることを確認した。
【0063】なお、本発明の超電導線材は、種々の応用
が可能であり、例えば、マグネット、コイル、ケーブ
ル、ブスバー、電流リード、磁気シールド、永久電流ス
イッチ等の超電導デバイスにおける超電導導体としての
用途があげられる。
【0064】この場合、超電導線材の最終形態がコイル
状になるときは、その作製法は、公知のReact&Wind法あ
るいはWind&React法のいずれであってもよい。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、超電導線材の線材長さ
lあたりの超電導体の経路長sを長くすることで、線材
曲げに対する超電導体の受ける歪を低減できる。その結
果、線材の許容曲げ半径を小さくすることができる。従
って、本発明の酸化物超電導線材は、曲げが問題となる
使用環境下でその取り扱いが容易であり、コイルその他
の用途に広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマルチフィラメント型酸化物超電
導線材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るサブマルチフィラメント型酸化物
超電導線材の一例を示す断面図である。
【図3】酸化物超電導体の螺旋配置の軌跡を示す説明図
である。
【図4】酸化物超電導体のダブル螺旋配置の軌跡を示す
説明図である。
【図5】酸化物超電導体の螺旋配置の説明図である。
【図6】従来のマルチフィラメント型酸化物超電導線材
の一例を示す断面図である。
【図7】従来のサブマルチフィラメント型酸化物超電導
線材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 酸化物超電導体 2 被覆材 3 酸化物超電導線材 11 酸化物超電導体素線 12 素線群

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくともn本(nは3以上の整数)の分
    割されたフィラメント状の酸化物超電導体と被覆材から
    なるマルチフィラメント型酸化物超電導複合材であっ
    て、前記複合材の長さz内に含まれる各酸化物超電導体
    の経路長lを、l>zとしたことを特徴とする酸化物超
    電導線材。
  2. 【請求項2】前記分割された酸化物超電導体が前記複合
    材中に配置された螺旋状の素線であり、少なくとも最外
    層に位置する素線の螺旋軌道が2<P/a<100の範
    囲(Pは螺旋ピッチ、aは複合材中の最外層に位置する
    素線のほぼ中心と複合材中心との距離)であることを特
    徴とする請求項1記載の酸化物超電導線材。
  3. 【請求項3】前記分割された各酸化物超電導体が、複数
    本の酸化物超電導体の素線群からなり、当該素線群の最
    外層を構成する素線の螺旋軌道が2<P1/a1<10
    0の範囲(P1は最外層素線の螺旋ピッチ、a1は最外
    層素線のほぼ中心と当該酸化物超電導体素線群の中心と
    の距離)であり、かつ、前記複合材中の最外層に配置さ
    れた素線群の螺旋軌道が2<P2/a2<100の範囲
    (P2は素線群の螺旋ピッチ、a2は複合材中の最外層
    に位置する素線群のほぼ中心と複合材中心との距離)で
    あることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導線
    材。
  4. 【請求項4】少なくともn本(nは3以上の整数)に分
    割されたフィラメント状の酸化物超電導体と被覆材から
    なるマルチフィラメント型酸化物超電導複合材を含む酸
    化物超電導線材の製造方法において、n本の酸化物超電
    導体原料を含む素線を、酸化物超電導体以外の金属線を
    中心として一層または複数層配置し、かつ最外層に位置
    する前記酸化物超電導体原料を含む素線の螺旋軌道が2
    <P/a<100の範囲(Pは螺旋ピッチ、aは複合材
    中の最外層に位置する素線のほぼ中心と複合材中心との
    距離)になるよう螺旋状に構成し、その後超電導化熱処
    理を行うことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方
    法。
  5. 【請求項5】少なくともn本(nは3以上の整数)に分
    割されたフィラメント状の酸化物超電導体と被覆材から
    なるマルチフィラメント型酸化物超電導複合材を含む酸
    化物超電導線材の製造方法において、n本の酸化物超電
    導体原料を含む素線を、酸化物超電導体以外の金属線を
    中心にして一層または複数層配置し、かつ最外層に位置
    する前記酸化物超電導体を含む素線の螺旋軌道が2<P
    /a<100の範囲(Pは螺旋ピッチ、aは複合材中の
    最外層に位置する素線のほぼ中心と複合材中心との距
    離)になるよう螺旋状に構成し、それらを減面加工後に
    超電導化熱処理を行うことを特徴とする酸化物超電導線
    材の製造方法。
  6. 【請求項6】前記酸化物超電導体原料を含む素線が断面
    円形であり、その複数本を酸化物超電導以外の断面円形
    の金属線を中心にして束ねた後、その外周に金属を被覆
    して断面円形の複合材を構成し、当該複合材に150〜
    850度温度でアニール処理を施し、当該複合材にツイ
    スト加工を施して、複合材内で最外層に位置する線材の
    螺旋軌道が2<P/a<100の範囲となるよう構成
    し、その後超電導化熱処理を施すことを特徴とする請求
    項4または5記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 【請求項7】複数本の酸化物超電導体原料を含む素線を
    束ねて素線群となし、当該素線群のn本以上(nは3以
    上)を、酸化物超電導体以外の金属線を中心にして一層
    または複数層配置し、その外周に金属を被覆して断面円
    形の複合材を構成し、その後当該複合材を減面加工し、
    当該複合材にツイスト加工を施して、複合材内で最外層
    に位置する前記素線群の螺旋軌道が2<P2/a2<1
    00の範囲(P2は素線群の螺旋ピッチ、a2は最外層
    に位置する素線群のほぼ中心と複合材中心との距離)と
    なるよう構成し、その後超電導化熱処理を施すことを特
    徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 【請求項8】前記複数本の酸化物超電導体原料を含む素
    線を束ねて構成した素線群が、当該線材群の最外層に位
    置する素線の螺旋軌道が2<P1/a1<100の範囲
    (P1は螺旋ピッチ、a1は線材のほぼ中心と当該線材
    群の中心との距離)となるようにツイストした構成であ
    ることを特徴とする請求項7記載の酸化物超電導線材の
    製造方法。
  9. 【請求項9】前記超電導化熱処理前に施す減面加工が、
    伸線、押出し、または圧延の機械加工であることを特徴
    とする請求項5記載の酸化物超電導線材の製法。
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CN108735388B (zh) * 2018-05-31 2020-02-18 西部超导材料科技股份有限公司 一种提高NbTi/Cu超导线材芯丝变形均匀性的方法

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