JPH11131154A - エンジン補機用転がり軸受 - Google Patents

エンジン補機用転がり軸受

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JPH11131154A
JPH11131154A JP29110497A JP29110497A JPH11131154A JP H11131154 A JPH11131154 A JP H11131154A JP 29110497 A JP29110497 A JP 29110497A JP 29110497 A JP29110497 A JP 29110497A JP H11131154 A JPH11131154 A JP H11131154A
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JP
Japan
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bearing
ppm
segregation
life
steel
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JP29110497A
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English (en)
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Hiromichi Takemura
浩道 武村
Yasuo Murakami
保夫 村上
Yoichi Matsumura
洋一 松村
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高振動・高荷重に起因する早期剥離を有効に
防止し、かつ、高温下での組織変化の進行を抑制し、寿
命を大幅に延長することができるエンジン補機用転がり
軸受を提供する。 【構成】 固定輪と回転輪との間に複数の転動体を配置
して用いられるエンジン補機用転がり軸受において、少
なくとも固定輪が、C;0.65〜1.10重量%、S
i;0.1〜0.50重量%、Mn;0.2〜1.1重
量%、Cr;0.3〜1.6重量%、P;150ppm
以下、S;50ppm以下、O;15ppm以下および
不可避的不純物元素を含み残部がFeからなる合金組成
成分の軸受用鋼を、エレクトロスラグ再溶解法または真
空アーク再溶解法により製造されたものであり、C,
P,Sの各成分の偏析度としてRc≦15%、Rp≦3
0%、Rs≦50%とそれぞれ規定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高振動、高荷重、
高温が作用するオルタネータ、電磁クラッチ、中間プー
リ等のエンジン補機用転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から転がり軸受の寿命向上を目的と
して軸受材料中に含まれる介在物の低減化がなされてい
る。軸受材料中には例えばアルミナのような酸化物系介
在物が生成されやすいが、これを低減化するためには鋼
中の酸素含有量を減らすことが最も有効とされている。
【0003】近年、軸受材料を溶解する手段として真空
脱ガスでの取鍋精錬法(LF)が導入され、従来からの
造塊法により製造される材料(IC)に代わって、連続
鋳造法によって製造される材料(CC)が採用されるよ
うになった。この連続鋳造法では、軸受鋼材中に含まれ
る炭素の濃度が高いために、鋼の凝固開始から凝固完了
までの間の温度差が大きくなり、鋳塊の中心部にC,C
r,Mn,P,Sなどの元素が濃化偏析し、これが転が
り寿命の低下の原因となっていた。
【0004】このため、近時、中心偏析、介在物の浮
上、凝固組織の安定などの品質を向上させるために、軸
受材料を溶解する手段としてエレクトロスラグ再溶解法
(ESR法)や真空アーク再溶解法(VAR法)、真空
誘導溶解法(VIM)、プラズマアーク溶解法(PA
M)、電子ビーム再溶解法(EBR)などが開発されて
いる。
【0005】これらの研究報告の一例として、「NSK
テクニカルジャーナルNO.652(1992)p1〜
8;長寿命・高信頼性軸受鋼(以下、EP鋼という)」
があげられる。この先行文献の表2および図8〜図10
では従来材、真空溶解材、EP鋼の画像解析結果を比較
している。これによればEP鋼が他の溶解材より清浄度
において優れており、同文献の図11と図12では酸化
物系介在物の総量と大型介在物を低減することにより、
EP鋼では従来鋼より寿命を大幅に延長することが報告
されている。例えば、高荷重の6206クリーン試験で
は、L10寿命が従来鋼より約5倍以上延長している。同
様にESR材、VAR材に関してもL10寿命が2〜3倍
程度に延長できる。
【0006】一方、自動車の小型・軽量化に伴い、エン
ジン補機類にも小型・軽量化と共に高性能・高出力化が
求められ、エンジンの作動時にあたって、例えばオルタ
ネータ用の軸受には、使用条件が従来より厳しい高速回
転に伴う高振動、高荷重(重力加速度で4G〜20G
位)がベルトを介して同時に作用し、かつ、高温条件下
(約90〜130℃)で使用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような高振動、高
荷重、高温の厳しい環境下では、従来の軸受鋼は、特に
固定輪である外輪軌道輪負荷圏の最大せん断応力位置近
傍に白色組織変化が発生し、この白色組織が起点とな
り、軸受設計寿命の約1/5〜1/20で早期はくりを
生じてしまう。このようにエンジン補機類に用いられる
転がり軸受は、その寿命が短期間で尽きてしまうことが
問題となっていた。
【0008】特開平5−255809号公報は、軌道輪
の早期はくり対策として、C含有量を低下させ、更に、
主に2〜5%Crによる炭素原子の拡散効果により、有
害な白色組織変化の生成を防止して転動寿命を向上さ
せ、Al,Nb及びNによりオーステナイト結晶粒の粗
大化を防止することが有効であることを開示している。
【0009】ここで、このエンジン補機用軸受の早期剥
離を防止する対策として、「SAEテクニカルペーパ
ー:SAE950944(開催日1995年2月27日
〜3月2日)」の第1〜第14項には、オルタネータ用
軸受の疲労メカニズムを解明し、軸受材料に超高清浄軸
受鋼を使用することなく、封入グリースをEグリースか
らダンパー効果の高いMグリースに変更することによ
り、このMグリースで高振動・高荷重を吸収して、軸受
外輪の早期はくりを防止する技術が開示されている。
【0010】本発明は上記の課題を解決するためになさ
れたものであり、高振動・高荷重に起因する早期剥離を
有効に防止し、かつ、高温下での組織変化の進行を抑制
し、寿命を大幅に延長することができるエンジン補機用
転がり軸受を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは高振動、高
荷重、高温の厳しい環境下で使用されるエンジン補機用
転がり軸受の早期剥離につき次のように種々検討を重ね
た。例えば特開平5−255809号公報には、Al,
Nb,Ni,V,Moなどの高級元素を添加し、オース
テナイト結晶粒度を11番程度とすることにより、早期
剥離を防止することが開示されている。本発明者らは、
そのような組成の軸受鋼供試材につき試験し、オーステ
ナイト結晶粒度で9番程度までが確認されたが、これで
もなお軸受の寿命は十分ではないことが判明した。
【0012】また、本発明者らは、固定輪の早期はくり
対策として、使用軸受に超高清浄度鋼であるSUJ2E
P鋼を用い、材料面から検討を重ねた結果、上記使用条
件下(高振動・高荷重・高温)において従来の材料と比
較して2〜3倍の長寿命が得られることが判明した。し
かし、将来的な使用環境の悪化を考慮すれば、更に長寿
命の軸受を提供する必要がある。そこで、本発明者らは
鋭意研究の結果、下記構成の発明を完成させるに至っ
た。
【0013】本発明に係るエンジン補機用転がり軸受
は、固定輪と回転輪との間に複数の転動体を配置して用
いられるエンジン補機用転がり軸受において、少なくと
も固定輪が、C;0.65〜1.10重量%、Si;
0.1〜0.50重量%、Mn;0.2〜1.1重量
%、Cr;0.3〜1.6重量%、P;150ppm以
下、S;50ppm以下、O;15ppm以下および不
可避的不純物元素を含み残部がFeからなる合金組成成
分の軸受用鋼を、エレクトロスラグ再溶解法または真空
アーク再溶解法により製造されたものであり、C,P,
Sの各成分の偏析度としてRc≦15%、Rp≦30
%、Rs≦50%とそれぞれ規定されることを特徴とす
る。
【0014】本発明においては、Pを150ppm以
下、Sを50ppm以下、酸素を15ppm以下からな
る軸受用鋼を、エレクトロスラグ再溶解法または真空ア
ーク再溶解法により溶解し製造することにより、C,
P,Sの成分偏析を少なくし、炭化物を微細に均一分散
させ、また介在物を低減させ、均一なマトリックス組織
とすることができる。すなわち、C偏析度を15%以
下、P偏析度を30%以下、P偏析度を50%以下
(C、P、Sの偏析度に関しては後述する)と規定し、
スラグ精錬による脱硫、介在物の低減、積層凝固による
偏析の低減、鋼塊の緻密化が可能となり、熱処理後の炭
化物を微細均一に析出させ、PやSなど偏析が少ない良
好なマトリックス組織が形成される。このため、本発明
の軸受は、高振動・高荷重に起因する早期剥離が防止さ
れ、かつ、高温状態(90〜130℃)においてもC偏
析が少ないため白色組織変化の進行が抑制されるので、
その寿命が大幅に延長される。
【0015】本発明の軸受は、上記のように、通常のク
リーン耐久試験においてはESR材、VAR材はEP鋼
より長寿命効果を有することはないが、エンジン補機用
軸受に作用する高荷重・高振動・高温に関しては、C,
P,Sの成分偏析が少なく微細な炭化物を析出させたマ
トリックス組織をつくるESR材、VAR材は、衝撃的
な応力を均一なマトリックス組織により緩和し、高温に
伴う組織変化の促進を抑え、転がり寿命を向上させるも
のである。
【0016】本発明の軸受は、エレクトロンスラグ再溶
解法、および真空アーク再溶解法により製造される。E
SR法やVAR法の代わりとして真空誘導溶解法(VI
M)、プラズマアーク溶解法(PAM)、電子ビーム再
溶解法(EBR)などの他の溶解製造方法も考えられる
が、これらの特殊製鋼溶解設備は高コストであるため実
用的ではない。
【0017】次に、本発明における軸受鋼の組成を上記
範囲とした理由につき各成分ごとに説明する。 1)C;0.65〜1.10重量% Cは転がり軸受として要求される硬さを付与する元素で
あるが、0.65%未満だと、転がり軸受として要求さ
れる硬さHRC59以上を確保できない場合があり、一
方、1.10%を越えて含有させると、巨大炭化物が生
成し易くなって、均一なマトリックス組織の生成が困難
となり、疲労寿命及び衝撃荷重が低下する場合があるの
で、C=0.65〜1.10%とした。 2)Si;0.1〜0.50重量% Siは、転がり疲労下にて見られる白色組織変化の遅延
効果、及び焼入れ性を向上させる元素であるが、0.1
%未満では脱酸効果が十分ではなく、0.1%を越える
と加工性が著しく低下するため、Si=0.1〜0.5
0%とした。 3)Mn;0.2〜1.1重量% Mnは鋼の焼入れ性に効果のある元素であるが、0.2
%未満では焼入れ性が不足し、1.1%を超えると加工
性が低下するため、Mn=0.2〜1.1%とした。 4)Cr;0.3〜1.6重量% Crは焼入れ性を向上させ且つ炭化物球状化を促進させ
る元素であり、少なくとも0.3%以上を含有させる必
要があるが、1.6%を超えて含有させると、炭化物が
粗大化して平均結晶粒が大きくなり、また被削性を劣化
させる場合があるので、Cr=0.3〜1.6%とし
た。 5)P;150ppm以下 Pは結晶粒界に偏析しやすい元素であるため、靭性を低
下させたり割れの起点になりやすく、その上限を0.0
15%とした。 6)S;50ppm以下 Sは被削性を向上させる元素であるが、Mnと結合して
転がり寿命を低下させる硫化系介在物を形成しやすい。
また、結晶粒界と粒内とに区別なくランダムに析出する
傾向があり、凝固偏析の原因となりやすく割れの起点に
なりやすいため、その上限を0.005%とした。 7)O;15ppm以下 酸素は鋼中において酸化物系の介在物を生成し転がり寿
命を低下させる元素であるので、その上限を0.001
5%とした。 8)その他の不可避的不純物元素 ESR法およびVAR法により再溶解された材料中には
上記以外の不可避的不純物元素は実質的に含まれていな
いものといえる。しかし、比較的はいりやすいとされる
窒素(N)や水素(H)などのガス成分元素は総量で
0.02重量%(200ppm)以下とすることが望ま
しい。 9)C,P,Sの偏析度;Rc≦15%、Rp≦30
%、Rs≦50% 表2に示した寿命試験結果から、C,P,Sの各成分の
偏析度はRc≦15%、Rp≦30%、Rs≦50%と
それぞれ規定する。なお、偏析度は次のようにして求め
る。完成品におけるC,P,S成分の軌道輪中心部濃度
を(C,P,S)と、その平均濃度を(Cm,Pm,C
m)とした場合に、各成分の偏析度(%)は下式
(1),(2),(3)で求めた数値の絶対値で与えら
れる。
【0018】Rc=(C−Cm)/Cm …(1) Rp=(P−Pm)/Pm …(2) Rs=(S−Sm)/Sm …(3)
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面と表を参照しな
がら本発明の好ましい実施の形態について説明する。図
1は本発明の実施の形態の一例である転がり軸受を説明
するための説明的断面図である。
【0020】図1において、符号1は、内輪回転用の深
みぞ玉軸受を示したものである。この軸受1は、外輪2
がハウジング8に固定され、内輪3はシャフト7に組み
込まれている。外輪2と内輪3との間には保持器5によ
り保持された多数の転動体4が配置され、またシール6
によって囲まれる空間にはEグリースが封入されてい
る。このような軸受1においては、シャフト7の回転に
伴い内輪3も回転し、その回転による振動および荷重は
シャフト7から内輪3及び転動体4を介して外輪2の負
荷圏に作用する。
【0021】表1に実施例1〜6および比較例1〜6に
用いた各供試材の化学成分をそれぞれ示す。なお、表中
の数値はすべて重量%である。実施例1〜6および比較
例1〜6の寿命試験に際し、軸受外輪のみを、表1の供
試材から製作した。この供試材料において、冷間加工を
施し、通常熱処理(840℃で焼入れ加熱、油冷却後、
180℃にて焼戻し)を行った。なお、外輪の表面硬さ
はロックウェルCスケール(HRC)59〜64、残留
オーステナイト量は5〜20%、軌道表面粗さは0.0
1〜0.05μmRaである。さらに、実施例および比
較例ともに内輪及び転動体は同じ軸受鋼2種を用い、通
常熱処理を施し、内輪及び転動体の表面硬さをHRC5
9〜64、内輪の表面粗さを0.01〜0.05μmR
a、転動体の表面粗さを0.003〜0.010μmR
aとした。
【0022】また、今回試験を行う軸受外輪について
は、完成品におけるC,P,Sの偏析度をそれぞれ求め
た。ここで、C,P,S成分の軌道輪中心部濃度(C,
P,S)と平均濃度(Cm,Pm,Cm)との関係を、
Rc=(C−Cm)/Cm、Rp=(P−Pm)/P
m、Rs=(S−Sm)/Smの絶対値(以下、偏析度
という)とおいて、各材料を比較した。
【0023】C,P,S成分濃度の測定は次のようにし
て行った。完成品の軸受を軸方向に10個所切断し、そ
の切断面にEPMA(電子線マイクロアナライザー)を
直角方向に移動させ、線分析を行い、最も濃度差のある
位置の濃度を求めた。さらに平均濃度に関しては、切断
した10面に関して任意に1断面10点ずつ合計100
点における平均濃度を求めた。
【0024】次に、実施形態例の軸受と比較例の軸受と
の寿命試験結果について述べる。試験機としては、回転
数を所定時間毎(例えば9秒毎)に9000rpmと1
8000rpmとに切り換えるベンチ急加減速試験(S
AEテクニカルペーパー:SAE950944記載)を
用いた。また、実施例および比較例ともに試験軸受には
JIS呼び番号6303を用い、荷重条件はP(負荷荷
重)/C(動定格荷重)=0.10とし、封入グリース
にはEグリースを用いた。また、試験軸受のみ、ヒータ
ーにて110℃に加熱した。この時の軸受の計算寿命は
1350時間であり、従って、試験打ち切り時間を15
00時間とした。試験は各々10回ずつ行った。
【0025】表2に、実施例1〜6および比較例1〜6
の各供試材におけるC,P,Sの各成分の偏析率と寿命
試験結果を示す。この表2から明らかなように、実施例
2〜5の軸受寿命L10はすべて1500時間以上を超え
ても軌道輪に剥離を生じなかったので、それ以後は試験
を打ち切った。
【0026】また、実施例1と実施例6の軸受寿命L10
に関しても、10個中2個はくりを生じたが、それぞれ
10寿命が1412時間と1455時間と、設計寿命の
1350時間を超えていたので、長寿命であることが確
認できた。なお、実施例1および実施例6では、Pの含
有量がそれぞれ0.015%、0.014%と若干高め
に設定したため、マトリックス粒界にP偏析を生じやす
くなった結果、Rp偏析度が30%程度となり、剥離を
起こしたものと考えられる。
【0027】このように実施例1〜6では、軸受材料を
エレクトロンスラグ再溶解法、真空アーク再溶解法にて
製鋼され、Pを0.015%以下、Sを0.005%以
下、OをO.0015%以下とすることにより、CやP
やSなどの偏析を抑え、偏析度としてRc≦15%、R
p≦30%、Rs≦50%と規定することにより、従来
鋼と比較して、格段にマトリックス組織が均一となり、
高振動・高荷重が作用した場合においても、この均一な
組織が衝撃荷重を吸収する効果が認められた。
【0028】また、高温状態における組織変化の発生抑
制においても、C偏析を抑えかつ介在物を低減すること
により、組織変化を遅延させ、転がり軸受の疲労寿命に
到達する時間を遅らせることができる。この結果、固定
輪の早期剥離が良好に防止され、従来に比べて大幅に転
がり寿命を延長することができた。
【0029】一方、比較例1〜3においては、すべての
軸受のL10寿命が計算寿命の1/4〜1/5の結果とな
っており、剥離を生じた部位は10個中10個すべて軸
受外輪であった。これは比較例1〜3では、C,P,S
などの成分偏析が、3種すべてあるいは2種が規定の範
囲を外れており、特にRcが19%以上、Rpが32%
以上、Rsが52%以上となり、マトリックス組織が均
一とならないため、短時間で剥離を生じたものである。
【0030】また、比較例4〜6では、それぞれ10個
中9個、9個、8個に外輪はくりを生じ、軸受のL10寿
命は計算寿命の約1/2程度となった。これは比較例4
〜6においては、C、P、S偏析度のうち少なくとも一
種の偏析度が既定値より大きかったことに起因してい
る。
【0031】比較例4の材料に関して、エレクトロスラ
グ再溶解法での製鋼であったが、S偏析が多かった(R
sが51%であった)ことによりマトリックス組織の均
一化が完全に図れず、またO量が0.0019%と多か
ったため酸化物系介在物起点のはくりが多くなり、白色
組織変化によるはくりと介在物起点はくりが混在した結
果となった。
【0032】比較例5の材料に関しては、真空アーク再
溶解法での製鋼であったが、C偏析が若干多かった(R
cが17%であった)ことによりマトリックス組織の均
一化が完全に図れなかったため、早期剥離を生じたもの
である。
【0033】比較例6のSUJ2EP鋼に関しては、比
較例1〜2と比較して酸化物系介在物が少ないため、従
来鋼より3倍程度長くなったが、若干P偏析が多かった
こと(Rpが33%であった)に起因して実施例1〜6
と比較してみるとその効果は小さかった。
【0034】なお、上記の実施例1〜6では、供試材料
として軸受鋼の通常熱処理を行い、軸受の残留オーステ
ナイト量を5〜20%としたが、さらに軸受の残留オー
ステナイト量を5%以下とした寸法安定処理を施した軸
受に関しても同様な効果を有する。例えば、実施例1と
実施例6の各材料を用いた軸受の残留オーステナイト量
を0%とすると、先のベンチ急加減速試験において15
00時間に至っても剥離は生じなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、少なくとも固定輪を、
P;150ppm以下、S;50ppm以下、O;15
ppm以下を含む軸受用鋼をエレクトロスラグ再溶解法
または真空アーク再溶解法により製造することにより、
C,P,Sなどの成分偏析を低減し、かつ、硫化物や酸
化物などの非金属介在物を低減し、偏析度(Rc、R
p、Rs)をある規定範囲内に収めることができ、マト
リックス組織の均一化を図ることができる。
【0038】このようなC,P,S偏析の少ない均一な
組織によって高荷重・高振動を緩和し、転がり疲労中の
白色組織変化を遅延させ、かつ、高温状態における組織
変化の促進要因となりうるC偏析を抑制することによ
り、転がり軸受の疲労寿命に到達する時間を遅らせるこ
とができる。この結果、エンジン補機用転がり軸受にお
ける固定輪の早期剥離が良好に防止され、従来に比べて
大幅に転がり寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン補機用転がり軸受の一例を示す断面図
である。
【符号の説明】
1…転がり軸受、 2…外輪(固定輪)、 3…内輪(回転輪)、 4…転動体、 5…保持器、 6…シール、 7…シャフト、 8…ハウジング、 9…加速度ピックアップ。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定輪と回転輪との間に複数の転動体を
    配置して用いられるエンジン補機用転がり軸受におい
    て、少なくとも固定輪が、C;0.65〜1.10重量
    %、Si;0.1〜0.50重量%、Mn;0.2〜
    1.1重量%、Cr;0.3〜1.6重量%、P;15
    0ppm以下、S;50ppm以下、O;15ppm以
    下および不可避的不純物元素を含み残部がFeからなる
    合金組成成分の軸受用鋼を、エレクトロスラグ再溶解法
    または真空アーク再溶解法により製造されたものであ
    り、C,P,Sの各成分の偏析度としてRc≦15%、
    Rp≦30%、Rs≦50%とそれぞれ規定されること
    を特徴とするエンジン補機用転がり軸受。
JP29110497A 1997-10-23 1997-10-23 エンジン補機用転がり軸受 Pending JPH11131154A (ja)

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WO2002040730A1 (fr) * 2000-11-15 2002-05-23 Nsk Ltd. Piece pour machine
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