JPH11127537A - 距離継電器 - Google Patents

距離継電器

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JPH11127537A
JPH11127537A JP29098297A JP29098297A JPH11127537A JP H11127537 A JPH11127537 A JP H11127537A JP 29098297 A JP29098297 A JP 29098297A JP 29098297 A JP29098297 A JP 29098297A JP H11127537 A JPH11127537 A JP H11127537A
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浩 斎藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】判定周期タイミングによらず励磁突入電流か否
かを識別することで協調タイマも短縮でき、事故時には
高速動作できる距離継電器を提供すること。 【解決手段】励磁突入電流におけるインピーダンス変化
量である互いに直交する抵抗(R)成分とインダクタン
ス(L)成分の各変化量に用い、R−X座標上で周期性
を持つ励磁突入電流でのインピーダンス変化に対して、
縦方向の変化(L成分)と横方向の変化(R成分)の双
方の4方向の変化を検出することで、演算周期に依らず
常に安定した判定結果を得ることができる。この結果、
時間協調用タイマの短縮化が図られ、また、電圧振幅値
レベルを励磁突入電流検出の判定条件に加えることで、
事故時の過渡応答中のインピーダンス変化による励磁突
入電流検出が抑えられ継電器の高速動作が実現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変圧器に電圧を印
加した際に発生する励磁突入電流に対しても不要応動を
しない距離継電器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常の送電開始のためにしゃ断器を投入
すると、変圧器に電圧が印加され、図23に示すような
励磁突入電流が流れることは従来から周知である。この
励磁突入電流は、 (1) 基本波成分が印加電圧に対し、およそ90度遅れの
位相となる。 (2) 電圧投入条件や系統側線路条件によっては、遠方事
故時の事故電流ほどの大きさになる。 (3) 電圧印加後、減衰まで数秒間継続して流れる。 といった特徴が挙げられる。
【0003】一般に、後備保護として遠方事故検出を目
的として多用されている距離継電器では、その動作責務
上、広範囲な保護区間を必要としている。このため、図
24に示すように後備保護距離継電器の第4段の動作域
に励磁突入電流発生時のインピーダンスが入り、距離継
電器が不要応動する恐れがある。この励磁突入電流は系
統事故ではないので、不要動作しないことも距離継電器
に課せられた責務の一つである。この励磁突入電流対策
としては、従来より高調波成分含有量を検出する方式や
インピーダンス変化を検出する方式が知られている。
【0004】前者の高調波成分含有量検出方式は、例え
ば電気学会「保護継電工学」P182にも記載されてい
るように、第2調波成分の含有量に応じて継電器動作を
阻止するものである。しかしながら、近年の電力系統の
大容量化や長距離化、ケーブル系統の拡大化により充電
容量が増大し、事故時に発生する過渡高調波が低次数化
する傾向にあり、2倍調波が含まれる変圧器事故電流と
励磁突入電流の識別が極めて困難である(特願平8−2
275号参照)。また、電流成分のみに応動するこの方
式は、インピーダンス量で動作判定を行う距離継電器と
は基本的に判定量が異なるため、双方の時間協調を十分
考慮する必要があり、この結果、タイマ等で協調をとる
場合には、距離継電器の動作時間性能に大きく影響する
ことになる。
【0005】また、後者のインピーダンス変化検出方式
は、電気学会雑誌105巻12号、P11などでも紹介
されているように励磁突入電流でのインピーダンスの周
期変化に着目したものであり、例えば特公昭61−26
6018号公報ではインピーダンスの最大値と最小値を
求め、この差分量を動作量として用いる方式や、あるい
は図25に示すように、インピーダンスのうちインダク
タンス成分の絶対値の差分量を用いて検出する方式など
がある(特許第P2533186号参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図6は図23で示した
波形でのインピーダンス軌跡の1周期毎の変化と距離継
電器動作域特性をR−X座標軸上にプロットした一例で
ある。インピーダンス量を用いることは、距離継電器と
の応動面で考えた場合、演算電気量が同じこともあり、
同一平面上で評価できる点で有効であるが、上記の従来
方式では次のような問題がある。
【0007】(1) 算出したインピーダンス値の他に一定
期間内の最大値、最小値をさらに抽出・保持する必要が
あり、演算処理、メモリ使用の実行効率面で不利とな
る。 (2) インピーダンス変化検出のうち、インダクタンス成
分のみの変化分で判定する場合には、周期性を有する励
磁突入電流より演算周期タイミングによっては、図26
に示すように無変化期間が生じるために判定結果が断続
動作となる。また、インダクタンス成分の絶対値の差分
方式では、動作量は正/負で変化することになるため、
正の定数値との比較を行う場合には、常に正となるイン
ダクタンス成分の差分の絶対値方式よりも動作継続期間
がおのずと短くなる。従って、図25に示すように判定
結果に対しては動作出力協調として変化分監視期間を広
く持たせたり、あるいは動作判定結果を長期間保持する
ため引き延ばしタイマTが必要であるが、この協調時間
によっては系統事故時の継電器動作を必要以上に遅延さ
せることになる。
【0008】したがって、算出したインピーダンス値の
みで効率良く判定ができ、かつ演算タイミングに依らず
判定結果が安定し協調タイマ制御も短縮できる、より高
速で確実な励磁突入電流の検出ができる距離継電器の開
発が望まれていた。
【0009】本発明は、上記状況に鑑みてなされたもの
であり、判定周期タイミングによらず励磁突入電流か否
かを安定して識別することで協調タイマも短縮でき、こ
の結果、事故時には高速動作できる距離継電器を提供す
ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の各請求項に共通する点は、励磁突入電流に
おけるインピーダンス変化量を検出する手段には、互い
に直交し合う抵抗(R)成分の変化とインダクタンス
(L)成分の変化の両者を動作量に用いており、図6に
示したようR−X座標上で周期性を持つ励磁突入電流で
のインピーダンス変化に対して、縦方向の変化(L成分
方向)と横方向の変化(R成分の変化)の双方、つまり
4方向の変化を検出するようにしている点である。
【0011】本発明の各請求項の特徴を示すと下記のと
おりである。すなわち、本発明の請求項1は、電力系統
の電圧および電流を入力してインピーダンス測距演算を
行い、この測距値を基に系統における励磁突入電流か事
故電流かの識別をする距離継電器において、前記インピ
ーダンスには、抵抗値(R)成分とインダクタンス値
(L)成分のそれぞれ連続変化量として、一定期間内の
異なる2時刻(m,n)にて得た前記インピーダンス測
距値Rm,Rn,Lm,Lnから、抵抗分の差分量の絶
対値|ΔR|=|Rm−Rn|を求める第1の手段と、
インダクタンス成分の差分量の絶対値|ΔL|=|Lm
−Ln|を求める第2の手段と、前記第1の手段および
前記第2の手段より得た両者の加算値ΔZのレベル確認
として、|ΔZ|=|ΔR|+|ΔL|>KZ(KZ:
定数値)なる大小比較判定を行う第3の手段と、前記第
3の手段にて判定成立時には前記励磁突入電流にて誤動
作のおそれがある継電器動作を阻止するような出力制御
を行う第4の手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】この請求項1では、1周期内の|ΔR|と
|ΔL|の変化を加算した動作量|ΔZ|は、演算タイ
ミングに依らず常に得られることになり、このレベル判
定結果は断続動作にはならず連続動作で安定する。した
がって、励磁突入電流の判定結果に対しては協調タイマ
は不要となり、系統事故時に生じる入力急変にてインピ
ーダンス演算値が変化し事故点で収束するまでの過渡応
答時間とこの間の継電器応動のみを考慮した時間協調を
とれば良く、演算判定タイミングに依らずインピーダン
ス変化を確実に検出できる。
【0013】本発明の請求項2は、電力系統の電圧およ
び電流を入力してインピーダンス測距演算を行い、この
測距値を基に系統における励磁突入電流か事故電流かの
識別をする距離継電器において、前記インピーダンスに
は、抵抗値(R)成分とインダクタンス値(L)成分の
それぞれ連続変化量として、一定期間内の異なる2時刻
(m,n)にて得た前記インピーダンス測距値Rm,R
n,Lm,Lnから、抵抗分の差分量の絶対値|ΔR|
=|Rm−Rn|を求める第1の手段と、インダクタン
ス成分の差分量の絶対値|ΔL|=|Lm−Ln|を求
める第2の手段と、前記第1の手段および前記第2の手
段より得た両者のレベル確認として、それぞれ|ΔR|
>KR,|ΔL|>KL(KR,KL:定数値)なる大
小比較のOR論理判定を行う第3の手段と、前記第3の
手段にていずれか一方でも判定成立時には前記励磁突入
電流にて誤動作のおそれがある継電器動作を阻止するよ
うな出力制御を行う第4の手段とを備えていることを特
徴とする。
【0014】この請求項2では、|ΔR|及び|ΔL|
の変化量を直接動作量としてレベル判定し、このOR論
理を励磁突入電流検出に使用していることから請求項1
と同じく演算判定タイミングに依らずインピーダンス変
化を確実に検出できる。
【0015】本発明の請求項3は、電力系統の電圧およ
び電流を入力してインピーダンス測距演算を行い、この
測距値を基に系統における励磁突入電流か事故電流かの
識別をする距離継電器において、前記インピーダンスに
は、抵抗値(R)成分とインダクタンス値(L)成分の
それぞれ連続変化量として、一定期間内の異なる2時刻
(m,n)にて得た前記インピーダンス測距値Rm,R
n,Lm,Lnから、抵抗分の差分値ΔR=Rm−Rn
を求める第1の手段と、インダクタンス成分の差分値Δ
L=Lm−Lnを求める第2の手段と、前記第1の手段
および前記第2の手段より得た両者のレベル確認とし
て、次の4つの大小比較のOR論理判定ΔR>KR,Δ
L>KL,ΔR<−KR,ΔL<−KL(KR,KL:
定数値)を行う第3の手段と、前記第3の手段にて少な
くともいずれか一つでも判定成立時には前記励磁突入電
流にて誤動作のおそれがある継電器動作を阻止するよう
な出力制御を行う第4の手段とを備えていることを特徴
とする。
【0016】この請求項3では、請求項2の動作量がス
カラ量であるのに対して、抵抗分の差分値ΔRとインダ
クタンス分の差分値ΔLを用いる点で、動作量はベクト
ル量になる。よって、インピーダンス変化の方向識別に
は、ΔRおよびΔLでそれぞれ正方向と負方向の4方向
変化を検出する構成としており、請求項2と同様の作用
がある。
【0017】本発明の請求項4は、電力系統の電圧およ
び電流を入力してインピーダンス測距演算を行い、この
測距値を基に系統における励磁突入電流か事故電流かの
識別をする距離継電器において、前記インピーダンスに
は、抵抗値(R)成分とインダクタンス値(L)成分の
それぞれ連続変化量として、一定期間内の異なる3時刻
(l,m,n)以上で得た前記インピーダンス測距値R
l,Rm,Rn,Ll,Lm,Lnから、抵抗分の差分
量の絶対値|ΔR1 |=|Rl−Rm|および|ΔR2
|=|Rl−Rn|を求める第1の手段と、インダクタ
ンス成分の差分量の絶対値|ΔL1 |=|Ll−Lm|
および|ΔL2 |=|Ll−Ln|を求める第2の手段
と、前記第1の手段および前記第2の手段より得た両者
のレベル確認として、次の大小比較のAND条件 ΔR1 >KR1 and ΔR2 >KR2 ΔL1 >KL1 and ΔL2 >KL2 (KR1 ,KR2 ,KL1 ,KL2 :定数,KR1 >K
R2 ,KL1 >KL2 ) のOR論理判定を行う第3の手段と、前記第3の手段に
ていずれか一方でも判定成立時には前記励磁突入電流に
て誤動作のおそれがある継電器動作を阻止するような出
力制御を行う第4の手段とを備えていることを特徴とす
る。
【0018】この請求項4では、請求項2に対してイン
ピーダンス変化分の検出ベースとなる時間幅を2つ以上
設け、同一方向での検出を多重化しており、3時刻間で
の2重判定例を表したものである。すなわち、縦方向の
動作量としては、インダクタンス分の差分の絶対値とし
て|ΔL1 |と|ΔL2 |,横方向の動作量としては抵
抗分の差分の絶対値として|ΔR1 |と|ΔR2 |の2
量づつを用いており、一方向の動作にはこの2量の判定
結果のAND論理とすることで、請求項1と同様に周期
的なインピーダンス変動時の検出能力の向上に加え、ラ
ンダム的なインピーダンスの振動変化には励磁突入電流
を検出し難い傾向となるように構成されている。よっ
て、同一方向の連続したインピーダンス変化の検出判定
を複数回照合することにより、周期的変化である励磁突
入電流についての検出能力をより確実にするとともに、
不連続のインピーダンス変動については励磁突入電流の
検出を抑える作用となり、この結果、事故時に不要な継
電器阻止を回避でき、より安定した継電器応動が得られ
る。
【0019】本発明の請求項5は、電力系統の電圧およ
び電流を入力してインピーダンス測距演算を行い、この
測距値を基に系統における励磁突入電流か事故電流かの
識別をする距離継電器において、前記インピーダンスに
は、抵抗値(R)成分とインダクタンス値(L)成分の
それぞれ連続変化量として、一定期間内の異なる少なく
とも3時刻(l,m,n)以上で得た前記インピーダン
ス測距値Rl,Rm,Rn,Ll,Lm,Lnから抵抗
分の差分値ΔR1 =Rl−RmおよびΔR2 =Rl−R
nを求める第1の手段と、インダクタンス成分の差分値
ΔL1 =Ll−LmおよびΔL2 =Ll−Lnを求める
第2の手段と、前記第1の手段および前記第2の手段よ
り得た両者のレベル確認として、次の4つの大小比較の
AND条件 ΔR1 >KR1 and ΔR2 >KR2 ΔL1 >KL1 and ΔL2 >KL2 ΔR1 <−KR1 and ΔR2 <−KR2 ΔL1 <−KL1 and ΔL2 <−KL2 (KR1 ,KR2 ,KL1 ,KL2 :定数,KR1 >K
R2 ,KL1 >KL2 ) のOR論理判定を行う第3の手段と、前記第3の手段に
て少なくともいずれか1つでも判定成立時には前記励磁
突入電流にて誤動作のおそれがある継電器動作を阻止す
るような出力制御を行う第4の手段とを備えていること
を特徴とする。
【0020】この請求項5では、請求項4に対して、同
一方向で検出する動作量には縦方向はインダクタンス分
の差分値ΔL1 とΔL2 ,横方向は抵抗分の差分値ΔR
1 とΔR2 の2量ずつをそれぞれ用いており、かつ一方
向の動作判定にはこのベクトル量の正/負のAND論理
により、請求項4と同様の作用が得られる。
【0021】本発明の請求項6は、請求項1乃至請求項
5記載の距離継電器において、前記継電器動作の出力制
御には、入力電圧のレベル判定として不足電圧継電器の
3相分不動作条件を付加していることを特徴とする。
【0022】この請求項6では、不足電圧継電器を用い
て、電圧振幅値の3相分がともに定格状態か否かを所定
の感度定数値にて高速に判定し、この判定結果とインピ
ーダンス変化の検出結果のAND条件にて継電器応動を
制御する。つまり、3相とも定格電圧値付近で、かつイ
ンピーダンス変化を検出した場合のみ励磁突入電流であ
ると判別し、継電器動作を阻止する。系統事故発生時の
過渡応答中、入力急変期間にインピーダンス変化分を検
出しても、電圧値は3相のうちいずれか1相は定格電圧
状態から低下するため、電圧振幅値判定結果は成立せ
ず、不要に励磁突入電流と判定することなく継電器阻止
には至らない。この結果、継電器はインピーダンスが事
故点で収束するまでの過渡変動期間においても継電器の
ゾーン内であれば即時動作が期待できる。よって、協調
時間をさらに短縮でき、かつ事故時の継電器動作時間の
高速性も兼ね備えた作用を有する。
【0023】本発明の請求項7は、請求項1乃至請求項
5記載の距離継電器において、前記継電器動作の出力制
御には、入力電圧のレベル判定として過電圧継電器の3
相分動作条件を付加していることを特徴とする。
【0024】この請求項7では、過電圧継電器を用い
て、電圧振幅値の3相分がともに定格状態か否かを所定
の感度定数値にて高速に判定し、この判定結果とインピ
ーダンス変化の検出結果のAND条件にて継電器応動を
制御する。つまり、3相とも定格電圧値付近で、かつイ
ンピーダンス変化を検出した場合のみ励磁突入電流であ
ると判別し、継電器動作を阻止する。系統事故発生時の
過渡応答中、入力急変期間にインピーダンス変化分を検
出しても、この場合は、電圧値は3相のうちいずれか1
相は定格電圧状態から低下するため、電圧振幅値判定結
果は成立せず、不要に励磁突入電流と判定することなく
継電器阻止には至らない。この結果、継電器はインピー
ダンスが事故点で収束するまでの過渡変動期間において
も継電器のゾーン内であれば即時動作が期待できる。よ
って、協調時間をさらに短縮でき、かつ事故時の継電器
動作時間の高速性も兼ね備えた作用を有する。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を
参照して説明する。図1は本発明の第1実施例(請求項
1対応)である距離継電器のブロック図である。
【0026】同図において、1はインピーダンス測距と
して、抵抗(R)およびインダクタンス(L)を演算す
る演算手段,2は距離継電器の動作判定を行う第1判定
手段,11はR値成分の変化分の絶対量を算出する第1
算出手段,12はL値成分の変化分の絶対値を算出する
第2算出手段,13は加算した変化分量の大きさを比較
判定する第2判定手段,14は継電器の動作出力を制御
する制御手段であり、この制御手段14は、AND論理
とT1 ,T2 遅延タイマとNAND論理とから構成され
ている。
【0027】演算手段1では電力系統の電気量である電
圧v,電流iよりインピーダンス値を求めている。イン
ピーダンス演算の基本原理については本発明の主旨では
ないため詳述はさけるが、例えば、電気学会発行「保護
継電工学」テキストP113〜P115に紹介されてい
るように、基本波ベースのベクトルを利用した絶対値比
較方式や、インピーダンスを直接計算する方式などがあ
る。なお、演算方式によりインピーダンス電気量表現が
異なるが、本実施例でのインピーダンスはR,Lで表記
している。また、第1判定手段2は演算手段1で求めた
インピーダンス値が整定値以下の場合に動作信号を出力
させる距離継電器の動作判定を行うものである。この距
離継電器の動作判定についても同「保護継電工学」テキ
ストP114,P115やP121,P122に記述さ
れており、ここでの説明は省略する。
【0028】次に、励磁突入電流における算出したR,
Lの変化について述べる。非線形現象である励磁突入電
流でのインピーダンス変化は、図6に示すように、時間
経過とともに変動するため、インピーダンス軌跡が1サ
イクル期間中連続してある一定位置で停滞することがな
い。しかし、このインピーダンス変化としては、R成分
の横方向変化とL成分の縦方向変化を用いることで演算
タイミングに依らず励磁突入電流を捕捉することができ
る。
【0029】本実施例では、このインピーダンス変化検
出をR成分とL成分の加算量で判定している。第1算出
手段11及び第2算出手段12では、時刻m,nで求め
た前記R,L値の変化量の絶対値として|ΔR|=|R
m−Rn|及び|ΔL|=|Lm−Ln|をそれぞれ求
めている。図2は、この両者の加算値|ΔZ|=|ΔR
|+|ΔL|の時間変動推移を連続的に表したものであ
る。この図2から|ΔZ|は正の値で常にある感度以上
のレベルで変動していることが確認できる。なお、ここ
ではm,nの時間差の例としては半サイクル間を表して
いる。
【0030】また、図3は、励磁突入電流での|ΔR|
と|ΔL|の瞬時値ベースの時間変化と、この時に所定
値以上あるか否かの判定結果をある周期毎に示したもの
である。例えば|ΔL|の縦方向のインピーダンス変化
が少ない期間には、|ΔR|の横方向の変化で検出する
ことができる。逆に横方向のインピーダンス変化が少な
い期間には、|ΔL|の縦方向の変化で検出できること
が分る。従って、1周期内の|ΔR|と|ΔL|の変化
を加算した動作量|ΔZ|は、演算タイミングに依らず
常に得られることになり、このレベル判定結果は断続動
作にはならず連続動作で安定する。このことは、励磁突
入電流の判定結果に対しては協調タイマは不要となり、
系統事故時に生じる入力急変にてインピーダンス演算値
が変化し事故点で収束するまでの過渡応答時間とこの間
の継電器応動のみを考慮した時間協調をとれば良いこと
を意味している。
【0031】さらに、図4(a)および図5(a)は、
図6の変化を1/4サイクル(電気角90度)周期で演
算した場合のインピーダンス軌跡であり、図4(b)お
よび図5(b)は、|ΔZ|の最大変化と最小変化をそ
れぞれプロットしており、○印が判定周期捕捉タイミン
グを示している。図5の最小変化となるタイミングから
励磁突入電流によるインピーダンス変動が常時継電器動
作域内となるケースでも確実にインピーダンス変化を検
出できることが分かる。図1の第2判定手段13がこの
動作判定を行うものであり、|ΔZ|を動作量に予め設
定しておいた定数KZ と比較し、判定成立時には動作信
号を出力して制御手段14のロジックで継電器動作を阻
止する。この制御手段14の継電器動作阻止回路の協調
タイマT1,T2は、それぞれ系統事故時のインピーダ
ンス変化により生じる過渡時の励磁突入電流検出と継電
器動作との時間協調用ON遅延用タイマT1と、系統事
故にてしゃ断器動作による事故除去により継電器動作ゾ
ーン内でインピーダンスが変化する場合の継電器誤復帰
対策協調用OFF遅延用タイマT2であり、従来の技術
によるインダクタンスの無変化期間分のタイマとは主旨
が異なる。
【0032】以上説明したように、本実施例によると、
励磁突入電流の検出を|ΔZ|による演算量で判定する
ことで、演算タイミングによらず、常に連続した動作量
が安定して得られる。このことは、励磁突入電流の判定
結果に対しても協調タイマは不要となり、系統事故時の
インピーダンス演算値が収束するまでの過渡応答時間と
この間の継電器応動のみ考慮すれば良いことになる。
【0033】この結果、本実施例は上述の構成とするこ
とで、T1タイマ値は、励磁突入電流判定結果に対して
の遅延処置は不要となり、継電器動作と励磁突入電流判
定との時間協調のみを考慮した値にすることが可能とな
る。つまり、T1タイマ値としては、継電器の最速動作
時間と事故時の過渡応答期間の最大時間より適正値を設
定でき、従来のタイマTより短縮した時間協調タイマで
実現できる。
【0034】図9は本発明の第2実施例(請求項2対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図1の第1実施例と異なる構成は、第2判定手段13の
代りに第2判定手段23を用いた点のみであり、その他
の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付し
て説明する。
【0035】同図に示すように、本実施例では、第1実
施例における変化分の加算量|ΔZ|の代りに、|ΔR
|及び|ΔL|の変化量を直接動作量に使用している。
すなわち、第1算出手段11及び第2算出手段12でそ
れぞれ|ΔR|及び|ΔL|を求めた後、第2判定手段
23で予め設定しておいた定数KR及びKLでそれぞれ
大きさを比較し、この判定結果のOR論理条件を継電器
動作阻止として用いている。このインピーダンス変化判
定は、図3からも明らかなように|ΔR|または|ΔL
|検出のいずれか一方は常に成立するので、安定した判
定結果を常時得ることができ、第1実施例と同様の作
用、効果が得られる。
【0036】上述したように、第1実施例では、インピ
ーダンスの変化分検出として差分量の絶対値を動作判定
に使用しているが、本実施例では差分量そのものを動作
判定に用いている。この場合の各手段は、|ΔR|及び
|ΔL|の変化量を直接動作量としてレベル判定し、こ
のOR論理を励磁突入電流検出に使用していることか
ら、第1実施例と同じく演算判定タイミングに依らずイ
ンピーダンス変化を確実に検出できる。
【0037】この結果、本実施例は第1実施例と同様
に、T1タイマ値は継電器の最速動作時間と事故時の過
渡応答期間の最大時間より適正値を設定できるので、従
来のタイマTより短縮した時間協調タイマで実現でき
る。
【0038】図10は本発明の第3実施例(請求項3対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図9の第2実施例と異なる構成は、第1算出手段11及
び第2算出手段12の代りに第1算出手段31及び第2
算出手段32を用いた点と、第2判定手段23の代りに
第2判定手段33を用いた点であり、その他の構成は同
一であるので、同一部分には同一符号を付して説明す
る。
【0039】同図において、第1算出手段31及び第2
算出手段32では、時刻m,nで求めたR,L値の変化
量としてΔR=Rm−Rn及びΔL=Lm−Lnの差分
をそれぞれ求めている。この差分量を基に、第2判定手
段33ではΔRの正/負変化の検出とΔLの正/負変化
の検出を行うと共にこれら全ての検出のOR論理を制御
手段14のAND論理に入力するように構成されてい
る。
【0040】この場合、インピーダンス差分量は演算周
期によって正/負の極性で変動することになるが、図9
の第2実施例と同様に定数KR,KLとの大きさの比較
として、正方向の変化を検出すると共に定数値の極性反
転で負方向の変化を検出しており、R−X座標上の上下
左右の4方向検出結果のうち成立条件が1つでもあれ
ば、制御手段14で継電器の動作を阻止することから、
演算タイミングに依らずインピーダンス変化のいずれか
は確実に捕捉できるので、第2実施例と同様の作用、効
果が得られる。
【0041】この結果、本実施例の場合、第2実施例の
動作量がスカラ量であるのに対して、抵抗分の差分値Δ
Rとインダクタンス分の差分値ΔLを用いる点で、動作
量はベクトル量になる。よって、インピーダンス変化の
方向識別には、ΔRおよびΔLでそれぞれ正方向と負方
向の4方向変化を検出する構成としており、この場合も
第2実施例と同様の作用、効果がある。
【0042】ところで、インピーダンス変化を抽出する
時間幅を同一方向で2つ以上設けることで多重判定化
し、励磁突入電流での周期的インピーダンス変化の検出
と併せ、ランダム的な振動に対しては影響を受けにくい
構成とすることもできる。この場合、演算手段における
インピーダンス算出を例えば、電気角表現で90度の時
刻毎で行うと、1周期間のインピーダンス変化の検出と
しては4時刻間で実施することになる。以下説明する実
施例では、このうち連続した3時刻のインピーダンス変
化を用いた場合について説明する。
【0043】図11は本発明の第4実施例(請求項4対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図9の第2実施例と異なる構成は、第1算出手段11及
び第2算出手段12の代りに第1算出手段41及び第2
算出手段42を用いた点と、第2判定手段23の代りに
第2判定手段43を用いた点であり、その他の構成は同
一であるので、同一部分には同一符号を付して説明す
る。
【0044】同図に示すように、第1算出手段41及び
第2算出手段42はそれぞれ連続した3時刻l,m,n
で求めたR,L値の変化量として、時刻幅l−m間での
抵抗分変化の絶対値量|ΔR1 |と、インダクタンス分
変化の絶対値量|ΔL1 |と、時刻幅l,m間より短い
時間幅であるl,n間での抵抗分変化の絶対値量|ΔR
2 |とインダクタンス変化の絶対値量|ΔL2 |を求め
ている。
【0045】また、第2判定手段43は、第1算出手段
41及び第2算出手段42で得た|ΔR1 |,|ΔR2
|及び|ΔL1 |,|ΔL2 |の4量を予め設定してお
いた定数KR1 ,KL1 と、このKR1 ,KL1 より小
さい値である定数KR2 ,KL2 でそれぞれ大小比較を
行う。この場合、検出感度は変化分検出時間幅に応じて
変えており、狭い時間幅での動作量ほど感度値は小さく
している。この4量の動作判定には、同一方向の連続し
たインピーダンス変化検出を|ΔR1 |>KR1 及び|
ΔR2 |>KR2 と、|ΔL1 |>KL1 及び|ΔL2
|>KL2 のそれぞれのAND論理で2重化し、この両
者の判定結果のOR論理で励磁突入電流を判定する構成
である。このことは、周期的なインピーダンス変化につ
いては検出条件が成立するのに対して、系統事故のよう
にインピーダンス変化がランダム的に変化するような場
合には励磁突入電流を検出しにくいものとなる。
【0046】図7(a)は事故時に他回線、他分岐線な
どから高調波成分、過渡直流成分を含む電流が非同期で
流入するような系統構成図であり、図7(b)はこのと
きの測距インピーダンス変化を示したものである。図3
同様に○印が演算周期捕捉タイミングを表している。
【0047】一般に、事故時の測距インピーダンスは過
渡期間後には事故点距離を示すある値で収束するもので
あるが、このような系統の事故の場合は、演算判定毎に
測距インピーダンス値は振動変化が生じてしまう。
【0048】本実施例ではこのようなランダム的なイン
ピーダンス変動現象に対しては、同一方向のインピーダ
ンス変化の検出を2重化して不要に励磁突入電流を検出
し継電器が不動作とならないようにするものである。
【0049】図8(a)は図7(b)の測距インピーダ
ンスの前記|ΔR|,|ΔL|の変化を示す図、同図
(b)は動作判定出力の時間変化を示す図である。ここ
で、出力信号名の第1文字目のA,Bおよび第2文字目
の1,2は、それぞれ次の意味を持つ。Aは本実施例で
ある2つの時刻で変化を検出した判定結果を示したもの
であり、Bは前記実施例である1時刻で検出した判定結
果を示したものである。また、第2文字目の1,2はそ
れぞれ前記l,m,nの時間幅、すなわち、変化分検出
時刻を変えたものである。Bのケースでは動作となって
いるが、Aの場合には最適なインピーダンス変化を検出
する時刻を選ぶようにすれば、A1 出力のように正不動
作となることが分る。
【0050】このように、異なる時間幅による複数回の
インピーダンス変化検出を行うことで励磁突入電流時の
周期的なインピーダンス変化の検出能力の向上と共に、
系統事故時のランダム的なインピーダンス変化が生じて
も不要に継電器出力を阻止することなく、より安定した
継電器動作を実現できる。
【0051】本実施例は、図9の第2実施例に対して、
インピーダンス変化分の検出ベースとなる時間幅を2つ
以上設け、同一方向での検出を多重化したものであり、
3時刻間での2重判定例を表したものである。すなわ
ち、縦方向の動作量としては、インダクタンス分の差分
の絶対値として|ΔL1 |と|ΔL2 |,横方向の動作
量としては抵抗分の差分の絶対値として|ΔR1 |と|
ΔR2 |の2量づつを用いており、一方向の動作にはこ
の2量の判定結果のAND論理とすることで、図1の第
1実施例と同様に周期的なインピーダンス変動時の検出
能力の向上に加え、ランダム的なインピーダンスの振動
変化には励磁突入電流を検出し難い傾向となるように構
成されている。
【0052】一般に、事故発生時の過渡応答期間後は、
事故点距離でインピーダンス値は収束するが、系統構成
の影響によっては入力条件により、測距インピーダンス
は常に安定せずランダム的な変化を生じる場合もある。
このような場合に動作判定を2重化することで励磁突入
電流検出を抑えるようにしている。
【0053】以上説明したように、本実施例によると、
同一方向の連続したインピーダンス変化の検出判定を複
数回照合することにより、周期的変化である励磁突入電
流についての検出能力をより確実にするとともに、不連
続のインピーダンス変動については励磁突入電流の検出
を抑える作用となり、この結果、事故時に不要な継電器
阻止を回避でき、より安定した継電器応動が得られるこ
とになる。
【0054】次に、以下説明する実施例は、上記第4実
施例と同様に連続した異なる3時刻以上の時間幅で変動
したインピーダンス変化分を検出するものであり、ベク
トル量で扱う判定である。ここでは、変化分検出時刻と
しては3時刻による2つの時刻幅で説明する。
【0055】図12は本発明の第5実施例(請求項5対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図11の第4実施例と異なる構成は、第1算出手段41
及び第2算出手段42の代りに第1算出手段51及び第
2算出手段52を用いた点と、第2判定手段43の代り
に第2判定手段53を用いた点であり、その他の構成は
同一であるので、同一部分には同一符号を付して説明す
る。
【0056】同図において、第1算出手段51及び第2
算出手段52はそれぞれ連続した3時刻l,m,nで求
めたR,L値の変化量として、時刻幅l−m間での抵抗
分の変化量ΔR1 とインダクタンス分の変化量ΔL1
と、時刻幅l,m間より短い時間幅であるl,n間での
抵抗分の変化量ΔR2 とインダクタンスの変化量ΔL2
を求めている。また第2判定手段53は、第1算出手段
51及び第2算出手段52で得た極性をもつΔR1 ,Δ
R2 ,ΔL1 ,ΔL2 を予め設定しておいた定数KR1
,KL1 と、このKR1 ,KL1 より小さい値である
定数KR2 ,KL2でそれぞれ大小比較を行う。この場
合、検出感度は変化分検出時間幅に応じて変えており、
狭い時間幅での動作量ほど感度値は小さくしている。そ
して、この動作判定には、同一方向の連続したインピー
ダンス変化検出をΔR1 >KR1 及びΔR2 >KR2
と、ΔR1 <−KR1 及びΔR2 <−KR2 と、ΔL1
>KL1及びΔL2 >KL2 と、ΔL1 <−KL1 及び
ΔL2 <−KL2 のそれぞれのAND論理で2重化し、
この4判定結果のOR論理で励磁突入電流を判定する構
成としている。このことは、周期的なインピーダンス変
化については検出条件が成立するのに対して、系統事故
のようにインピーダンス変化がランダム的に変化するよ
うな場合には励磁突入電流を検出しにくい構成となり、
第4実施例と同様の作用、効果を得るものである。
【0057】これは図11の第4実施例に対して、同一
方向で検出する動作量には縦方向はインダクタンス分の
差分値ΔL1 とΔL2 ,横方向は抵抗分の差分値ΔR1
とΔR2 の2量ずつをそれぞれ用いており、かつ一方向
の動作判定にはこのベクトル量の正/負のAND論理に
より、第4実施例と同様の作用、効果が得られる。
【0058】以上説明した他に、励磁突入電流検出時の
継電器の阻止として電圧振幅値の判定結果を加えた構成
について以下に述べる。
【0059】図13は本発明の第6実施例(請求項6対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図1の第1実施例と異なる構成は、電圧振幅値を算出す
る第2演算手段3と不足電圧継電器の動作を判定する第
3判定手段4を追加し、制御手段14の代りに継電器の
動作出力を制御する制御手段15を用いた点のみであ
り、その他の構成は同一であるので、同一部分には同一
符号を付して説明する。
【0060】同図において、電圧振幅値を算出する第2
演算手段3は入力された電圧vの振幅値を演算する。振
幅値演算アルゴリズム自体としては、例えば特公昭61
−89561号公報に基本技術が紹介されているよう
に、(A)面積法,(B)2乗法,(C)2値加算法な
どがある。不足電圧継電器の動作を判定する第3判定手
段4は、電圧振幅値を算出する第2演算手段3にて得た
振幅値がVK なる定数より小さいか否かを確認し、所定
値以下の場合には動作となる不足電圧継電器(UVR)
の判定処理をするものである。
【0061】継電器の動作出力を制御する制御手段15
は、図1の第1実施例の制御手段14に対して、不足電
圧継電器の動作を判定する第3判定手段4よりの入力が
1相でも所定値以下の場合には継電器の動作を阻止する
NAND論理のロジックを追加した構成である。この制
御手段15により励磁突入電流発生時の電圧レベルは定
格付近であり、例えば定格×80%程度の電圧感度とす
れば、この時UVRは3相とも動作しない。つまり、U
VRの3相動作のOR論理のインヒビット論理を加える
ことにより、定格電圧値付近の振幅値である励磁突入電
流時には動作判定有効となり、事故に1相でも定格×8
0%以下となる場合には、急変時の過渡応答期間にイン
ピーダンス変化が仮に継電器動作域内で検出中であって
も、励磁突入電流の判定結果は無効となり、継電器は動
作阻止とならず高速動作することになる。
【0062】また、事故時に電圧降下分が定格×80%
以下とならないケースでは、一般に相手母線以遠の時限
動作ゾーンであるため継電器の高速動作の必要性はない
と言える。さらに、系統電圧投入時点では、UVRは3
相とも動作状態となり得るが、これを振幅値演算に必要
なデータが全て整う時点まではUVR出力は不動作側に
処置しておくことで、この間の励磁突入電流検出結果は
有効となる。
【0063】このように、本実施例によると、継電器の
動作阻止の有効条件に不足電圧継電器の3相不動作条件
を設けることにより、事故時の過渡応答中で生じるイン
ピーダンス変化については、不要な継電器阻止がなくな
り、より確実な励磁突入電流検出でかつ高速動作となる
継電器が実現できる。
【0064】図14は本発明の第7実施例(請求項6対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図13の第6実施例と異なる構成は、第2判定手段13
の代りに第2判定手段23を用いた点のみであり、その
他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付
して説明する。
【0065】同図に示すように、本実施例では第6実施
例における変化分の加算量|ΔZ|の代りに、|ΔR|
及び|ΔL|の変化量を直接動作量に使用している。す
なわち、第1算出手段11及び第2算出手段12でそれ
ぞれ|ΔR|及び|ΔL|を求めた後、第2判定手段2
3で予め設定しておいた定数KR及びKLでそれぞれ大
きさを比較し、この判定結果のOR論理を制御手段15
のAND論理に入力して継電器動作阻止とするように構
成されている。このインピーダンス変化判定は、|ΔR
|または|ΔL|検出のいずれか一方は常に成立するの
で、安定した判定結果を常時得ることができる。
【0066】このように、本実施例は第6実施例と同様
に、励磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レ
ベルが所定値以上か否かの判定結果を付加している。前
述したとおり励磁突入電流は変圧器の電圧印加時に発生
することから、この時の電圧レベルは3相とも定格電圧
値近くで定常状態にある。従って、不足電圧継電器を用
いて電圧振幅値の3相分がともに定格状態か否かを所定
の感度定数値にて高速に判定し、この判定結果と前記イ
ンピーダンス変化の検出結果のAND条件にて継電器応
動を制御する。つまり、3相とも定格電圧値付近で、か
つインピーダンス変化を検出した場合のみ励磁突入電流
であると判別し、継電器動作を阻止する。このように、
系統事故発生時の過渡応答中、入力急変期間にインピー
ダンス変化分を検出しても、この場合は、電圧値は3相
のうちいずれか1相は定格電圧状態から低下するため、
前記電圧振幅値判定結果は成立せず、不要に励磁突入電
流と判定することなく継電器阻止には至らない。この結
果、継電器はインピーダンスが事故点で収束するまでの
過渡変動期間においても、継電器のゾーン内であれば即
時動作が期待できる。このことは、前記協調時間をさら
に短縮できることを意味しており、事故時の継電器動作
時間の高速性も兼ね備えた作用を有することになる。
【0067】図15は本発明の第8実施例(請求項6対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図13の第6実施例と異なる構成は、第1算出手段11
及び第2算出手段12の代りに第1算出手段31及び第
2算出手段32を用いた点と、第2判定手段13の代り
に第2判定手段33を用いた点のみであり、その他の構
成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して説
明する。
【0068】同図に示すように、第1算出手段31及び
第2算出手段32は、時刻m,nで求めたR,L値の変
化量として、ΔR=Rm−Rn及びΔL=Lm−Lnの
差分をそれぞれ求めている。この差分量を基に、第2判
定手段33ではΔRの正/負変化の検出とΔLの正/負
変化の検出を行うと共に、これら全ての検出のOR論理
を制御手段15のAND論理に入力するように構成され
ている。
【0069】この場合、インピーダンス差分量は演算周
期によって正/負の極性で変動することになるが、定数
KR,KLとの大きさの比較として、正方向の変化を検
出すると共に定数値の極性反転で負方向の変化を検出し
ており、R−X座標上の上下左右の4方向検出結果のう
ち成立条件が1つでもあれば、制御手段15で継電器の
動作を阻止することから、演算タイミングに依らずイン
ピーダンス変化のいずれかは確実に捕捉できる。
【0070】また、本実施例は第6実施例と同様に、励
磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベルが
所定値以上か否かの判定結果を付加している。励磁突入
電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この時
の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態にあ
る。従って、不足電圧継電器を用いて電圧振幅値の3相
分がともに定格状態か否かを所定の感度定数値にて高速
に判定し、この判定結果と前記インピーダンス変化の検
出結果のAND条件にて継電器応動を制御する。つま
り、3相とも定格電圧値付近で、かつインピーダンス変
化を検出した場合のみ励磁突入電流であると判別し、継
電器動作を阻止する。このように、系統事故発生時の過
渡応答中、入力急変期間にインピーダンス変化分を検出
しても、この場合は、電圧値は3相のうちいずれか1相
は定格電圧状態から低下するため、前記電圧振幅値判定
結果は成立せず、不要に励磁突入電流と判定することな
く継電器阻止には至らない。この結果、継電器はインピ
ーダンスが事故点で収束するまでの過渡変動期間におい
ても、継電器のゾーン内であれば即時動作が期待でき
る。このことは、前記協調時間をさらに短縮できること
を意味しており、事故時の継電器動作時間の高速性も兼
ね備えた作用を有する。
【0071】図16は本発明の第9実施例(請求項6対
応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例が
図13の第6実施例と異なる構成は、第1算出手段11
及び第2算出手段12の代りに第1算出手段41及び第
2算出手段42を用いた点と、第2判定手段13の代り
に第2判定手段43を用いた点であり、その他の構成は
同一であるので、同一部分には同一符号を付して説明す
る。
【0072】同図に示すように、第1算出手段41及び
第2算出手段42は、それぞれ連続した3時刻l,m,
nで求めたR,L値の変化量として、時刻幅l−m間で
の抵抗分変化の絶対値量|ΔR1 |と、インダクタンス
分変化の絶対値量|ΔL1 |と、時刻幅l,m間より短
い時間幅であるl,n間での抵抗分変化の絶対値量|Δ
R2 |とインダクタンス変化の絶対値量|ΔL2 |を求
めている。
【0073】また、第2判定手段43は、第1算出手段
41及び第2算出手段42で得た|ΔR1 |,|ΔR2
|及び|ΔL1 |,|ΔL2 |の4量を予め設定してお
いた定数KR1 ,KL1 と、このKR1 ,KL1 より小
さい値である定数KR2 ,KL2 でそれぞれ大小比較を
行う。この場合、検出感度は変化分検出時間幅に応じて
変えており、狭い時間幅での動作量ほど感度値は小さく
している。この4量の動作判定には、同一方向の連続し
たインピーダンス変化検出を|ΔR1 |>KR1 及び|
ΔR2 |>KR2 と、|ΔL1 |>KL1 及び|ΔL2
|>KL2 のそれぞれのAND論理で2重化し、この両
者の判定結果のOR論理で励磁突入電流を判定する構成
である。このことは、周期的なインピーダンス変化につ
いては検出条件が成立するのに対して、系統事故のよう
にインピーダンス変化がランダム的に変化するような場
合には励磁突入電流を検出しにくいものとなる。
【0074】また、本実施例は第6実施例と同様に、励
磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベルが
所定値以上か否かの判定結果を付加している。励磁突入
電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この時
の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態にあ
る。従って、不足電圧継電器を用いて電圧振幅値の3相
分がともに定格状態か否かを所定の感度定数値にて高速
に判定し、この判定結果と前記インピーダンス変化の検
出結果のAND条件にて継電器応動を制御する。つま
り、3相とも定格電圧値付近で、かつインピーダンス変
化を検出した場合のみ励磁突入電流であると判別し、継
電器動作を阻止する。このように、系統事故発生時の過
渡応答中、入力急変期間にインピーダンス変化分を検出
しても、この場合は、電圧値は3相のうちいずれか1相
は定格電圧状態から低下するため、前記電圧振幅値判定
結果は成立せず、不要に励磁突入電流と判定することな
く継電器阻止には至らない。この結果、継電器はインピ
ーダンスが事故点で収束するまでの過渡変動期間におい
ても、継電器のゾーン内であれば即時動作が期待でき
る。このことは、前記協調時間をさらに短縮できること
を意味しており、事故時の継電器動作時間の高速性も兼
ね備えた作用を有していることになる。
【0075】図17は本発明の第10実施例(請求項6
対応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例
が図13の第6実施例と異なる構成は、第1算出手段1
1及び第2算出手段12の代りに第1算出手段51及び
第2算出手段52を用いた点と、第2判定手段13の代
りに第2判定手段53を用いた点であり、その他の構成
は同一であるので、同一部分には同一符号を付して説明
する。
【0076】同図において、第1算出手段51及び第2
算出手段52は、それぞれ連続した3時刻l,m,nで
求めたR,L値の変化量として、時刻幅l−m間での抵
抗分の変化量ΔR1 とインダクタンス分の変化量ΔL1
と、時刻幅l,m間より短い時間幅であるl,n間での
抵抗分の変化量ΔR2 とインダクタンスの変化量ΔL2
を求めている。また第2判定手段53は、第1算出手段
51及び第2算出手段52で得た極性をもつΔR1 ,Δ
R2 ,ΔL1 ,ΔL2 を予め設定しておいた定数KR1
,KL1 と、このKR1 ,KL1 より小さい値である
定数KR2 ,KL2 でそれぞれ大小比較を行う。この場
合、検出感度は変化分検出時間幅に応じて変えており、
狭い時間幅での動作量ほど感度値は小さくしている。こ
の動作判定には、同一方向の連続したインピーダンス変
化検出をΔR1 >KR1 及びΔR2>KR2 と、ΔR1
<−KR1 及びΔR2 <−KR2 と、ΔL1 >KL1 及
びΔL2 >KL2 と、ΔL1 <−KL1 及びΔL2 <−
KL2 のそれぞれのAND論理で2重化し、この4判定
結果のOR論理で励磁突入電流を判定する構成としてい
る。このことは、周期的なインピーダンス変化について
は検出条件が成立するのに対して、系統事故のようにイ
ンピーダンス変化がランダム的に変化するような場合に
は励磁突入電流を検出しにくい構成となっている。
【0077】また、本実施例は第6実施例と同様に、励
磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベルが
所定値以上か否かの判定結果を付加している。励磁突入
電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この時
の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態にあ
る。従って、不足電圧継電器を用いて電圧振幅値の3相
分がともに定格状態か否かを所定の感度定数値にて高速
に判定し、この判定結果と前記インピーダンス変化の検
出結果のAND条件にて継電器応動を制御する。つま
り、3相とも定格電圧値付近で、かつインピーダンス変
化を検出した場合のみ励磁突入電流であると判別し、継
電器動作を阻止する。このように、系統事故発生時の過
渡応答中、入力急変期間にインピーダンス変化分を検出
しても、この場合は、電圧値は3相のうちいずれか1相
は定格電圧状態から低下するため、前記電圧振幅値判定
結果は成立せず、不要に励磁突入電流と判定することな
く継電器阻止には至らない。この結果、継電器はインピ
ーダンスが事故点で収束するまでの過渡変動期間におい
ても、継電器のゾーン内であれば即時動作が期待でき
る。このことは、前記協調時間をさらに短縮できること
を意味しており、事故時の継電器動作時間の高速性も兼
ね備えている。
【0078】以上説明した第6実施例乃至第10実施例
(請求項6対応)では、励磁突入電流検出の有効条件と
して、電圧振幅値判定に不足電圧継電器を用い、3相共
に不動作条件で判定する構成であるのに対し、以下に述
べる第11実施例乃至第15実施例(請求項7対応)
は、電圧振幅値判定に過電圧継電器を用い、3相共に動
作条件で判定する構成である。
【0079】図18は本発明の第11実施例(請求項7
対応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例
が図13の第6実施例と異なる構成は、不足電圧継電器
の動作を判定する第3判定手段4の代わりに過電圧継電
器の動作を判定する第3判定手段5を用いた点と、第3
判定手段4の出力を制御する制御装置15の代わりに第
4判定手段5の出力を制御する制御装置16を用いた点
のみであり、その他の構成は同一であるので、同一部分
には同一符号を付して説明する。
【0080】同図において、過電圧継電器の動作を判定
する第3判定手段5は、電圧振幅値を算出する第2演算
手段3にて得た振幅値がVK なる定数より大きいか否か
を確認し、所定値以上の場合には動作となる過電圧継電
器(OVR)の判定処理をするものである。ここで、例
えば検出感度を第6実施例と同様に定格×80%程度の
電圧値とすれば、OVRは励磁突入電流検出時は3相と
も動作となり、事故時には少なくとも1相は不動作とな
る。この条件を制御装置16にて継電器の阻止ロジック
に加えている。従って、OVRの3相動作のAND論理
を加えることにより第6実施例と同様の作用・効果が得
られる。
【0081】以上説明したように、本実施例によれば、
励磁突入電流でのインピーダンス変化分を演算判定周期
に依らず常に安定して検出することができるので、判定
結果に対する時間協調は、励磁突入電流検出と継電器動
作との時間協調のみで済み、また、電圧振幅値レベルの
判定結果を継電器の動作阻止条件に加えることで、事故
発生時のインピーダンス変化により生じる不要な励磁突
入電流検出は抑えることができ、高速動作を有する距離
継電器を提供できる。
【0082】図19は本発明の第12実施例(請求項7
対応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例
が図18の第11実施例と異なる構成は、第2判定手段
13の代りに第2判定手段23を用いた点のみであり、
その他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号
を付して説明する。
【0083】同図に示すように、本実施例では図18の
第11実施例における変化分の加算量|ΔZ|の代り
に、|ΔR|及び|ΔL|の変化量を直接動作量に使用
している。すなわち、第1算出手段11及び第2算出手
段12でそれぞれ|ΔR|及び|ΔL|を求めた後、第
2判定手段23で予め設定しておいた定数KR及びKL
でそれぞれ大きさを比較し、この判定結果のOR論理を
制御手段16のAND論理に入力して継電器動作阻止と
するように構成されている。このインピーダンス変化判
定は、|ΔR|または|ΔL|検出のいずれか一方は常
に成立するので、安定した判定結果を常時得ることがで
きる。
【0084】また、本実施例は第11実施例と同様に、
励磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベル
が所定値以下か否かの判定結果を付加している。励磁突
入電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この
時の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態に
ある。従って、電圧振幅値の3相分がともに定格状態か
否かを所定の感度定数値にて高速に判定し、この判定結
果と前記インピーダンス変化の検出結果のAND条件に
て継電器応動を制御する。つまり、3相とも定格電圧値
付近で、かつインピーダンス変化を検出した場合のみ励
磁突入電流であると判別し、継電器動作を阻止する。こ
のように、系統事故発生時の過渡応答中、入力急変期間
にインピーダンス変化分を検出しても、この場合は、電
圧値は3相のうちいずれか1相は定格電圧状態から低下
するため、前記電圧振幅値判定結果は成立せず、不要に
励磁突入電流と判定することなく継電器阻止には至らな
い。この結果、継電器はインピーダンスが事故点で収束
するまでの過渡変動期間においても、継電器のゾーン内
であれば即時動作が期待できる。このことは、前記協調
時間をさらに短縮できることを意味しており、事故時の
継電器動作時間の高速性も兼ね備えた作用を有すること
になる。
【0085】図20は本発明の第13実施例(請求項7
対応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例
が図18の第11実施例と異なる構成は、第1算出手段
11及び第2算出手段12の代りに第1算出手段31及
び第2算出手段32を用いた点と、第2判定手段13の
代りに第2判定手段33を用いた点のみであり、その他
の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付し
て説明する。
【0086】同図に示すように、第1算出手段31及び
第2算出手段32は、時刻m,nで求めたR,L値の変
化量として、ΔR=Rm−Rn及びΔL=Lm−Lnの
差分をそれぞれ求めている。この差分量を基に、第2判
定手段33ではΔRの正/負変化の検出とΔLの正/負
変化の検出を行うと共に、これら全ての検出のOR論理
を制御手段16のAND論理に入力するように構成され
ている。
【0087】この場合、インピーダンス差分量は演算周
期によって正/負の極性で変動することになるが、定数
KR,KLとの大きさの比較として、正方向の変化を検
出すると共に定数値の極性反転で負方向の変化を検出し
ており、R−X座標上の上下左右の4方向検出結果のう
ち成立条件が1つでもあれば、制御手段16で継電器の
動作を阻止することから、演算タイミングに依らずイン
ピーダンス変化のいずれかは確実に捕捉できる。
【0088】また、本実施例は第11実施例と同様に、
励磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベル
が所定値以上か否かの判定結果を付加している。励磁突
入電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この
時の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態に
ある。従って、電圧振幅値の3相分がともに定格状態か
否かを所定の感度定数値にて高速に判定し、この判定結
果と前記インピーダンス変化の検出結果のAND条件に
て継電器応動を制御する。つまり、3相とも定格電圧値
付近で、かつインピーダンス変化を検出した場合のみ励
磁突入電流であると判別し、継電器動作を阻止する。こ
のように、系統事故発生時の過渡応答中、入力急変期間
にインピーダンス変化分を検出しても、この場合は、電
圧値は3相のうちいずれか1相は定格電圧状態から低下
するため、前記電圧振幅値判定結果は成立せず、不要に
励磁突入電流と判定することなく継電器阻止には至らな
い。この結果、継電器はインピーダンスが事故点で収束
するまでの過渡変動期間においても、継電器のゾーン内
であれば即時動作が期待できる。このことは、前記協調
時間をさらに短縮できることを意味しており、事故時の
継電器動作時間の高速性も兼ね備えた作用を有する。
【0089】図21は本発明の第14実施例(請求項7
対応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例
が図18の第11実施例と異なる構成は、第1算出手段
11及び第2算出手段12の代りに第1算出手段41及
び第2算出手段42を用いた点と、第2判定手段13の
代りに第2判定手段43を用いた点であり、その他の構
成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して説
明する。
【0090】同図に示すように、第1算出手段41及び
第2算出手段42は、それぞれ連続した3時刻l,m,
nで求めたR,L値の変化量として、時刻幅l−m間で
の抵抗分変化の絶対値量|ΔR1 |と、インダクタンス
分変化の絶対値量|ΔL1 |と、時刻幅l,m間より短
い時間幅であるl,n間での抵抗分変化の絶対値量|Δ
R2 |とインダクタンス変化の絶対値量|ΔL2 |を求
めている。
【0091】また、第2判定手段43は、第1算出手段
41及び第2算出手段42で得た|ΔR1 |,|ΔR2
|及び|ΔL1 |,|ΔL2 |の4量を予め設定してお
いた定数KR1 ,KL1 と、このKR1 ,KL1 より小
さい値である定数KR2 ,KL2 でそれぞれ大小比較を
行う。この場合、検出感度は変化分検出時間幅に応じて
変えており、狭い時間幅での動作量ほど感度値は小さく
している。この4量の動作判定には、同一方向の連続し
たインピーダンス変化検出を|ΔR1 |>KR1 及び|
ΔR2 |>KR2 と、|ΔL1 |>KL1 及び|ΔL2
|>KL2 のそれぞれのAND論理で2重化し、この両
者の判定結果のOR論理で励磁突入電流を判定する構成
である。このことは、周期的なインピーダンス変化につ
いては検出条件が成立するのに対して、系統事故のよう
にインピーダンス変化がランダム的に変化するような場
合には励磁突入電流を検出しにくいものとなる。
【0092】また、本実施例は第11実施例と同様に、
励磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベル
が所定値以上か否かの判定結果を付加している。励磁突
入電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この
時の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態に
ある。従って、電圧振幅値の3相分がともに定格状態か
否かを所定の感度定数値にて高速に判定し、この判定結
果と前記インピーダンス変化の検出結果のAND条件に
て継電器応動を制御する。つまり、3相とも定格電圧値
付近で、かつインピーダンス変化を検出した場合のみ励
磁突入電流であると判別し、継電器動作を阻止する。こ
のように、系統事故発生時の過渡応答中、入力急変期間
にインピーダンス変化分を検出しても、この場合は、電
圧値は3相のうちいずれか1相は定格電圧状態から低下
するため、前記電圧振幅値判定結果は成立せず、不要に
励磁突入電流と判定することなく継電器阻止には至らな
い。この結果、継電器はインピーダンスが事故点で収束
するまでの過渡変動期間においても、継電器のゾーン内
であれば即時動作が期待できる。このことは、前記協調
時間をさらに短縮できることを意味しており、事故時の
継電器動作時間の高速性も兼ね備えた作用を有している
ことになる。
【0093】図22は本発明の第15実施例(請求項7
対応)である距離継電器のブロック図であり、本実施例
が図18の第11実施例と異なる構成は、第1算出手段
11及び第2算出手段12の代りに第1算出手段51及
び第2算出手段52を用いた点と、第2判定手段13の
代りに第2判定手段53を用いた点であり、その他の構
成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して説
明する。
【0094】同図において、第1算出手段51及び第2
算出手段52は、それぞれ連続した3時刻l,m,nで
求めたR,L値の変化量として、時刻幅l−m間での抵
抗分の変化量ΔR1 とインダクタンス分の変化量ΔL1
と、時刻幅l,m間より短い時間幅であるl,n間での
抵抗分の変化量ΔR2 とインダクタンスの変化量ΔL2
を求めている。また第2判定手段53は、第1算出手段
51及び第2算出手段52で得た極性をもつΔR1 ,Δ
R2 ,ΔL1 ,ΔL2 を予め設定しておいた定数KR1
,KL1 と、このKR1 ,KL1 より小さい値である
定数KR2 ,KL2 でそれぞれ大小比較を行う。この場
合、検出感度は変化分検出時間幅に応じて変えており、
狭い時間幅での動作量ほど感度値は小さくしている。こ
の動作判定には、同一方向の連続したインピーダンス変
化検出をΔR1 >KR1 及びΔR2>KR2 と、ΔR1
<−KR1 及びΔR2 <−KR2 と、ΔL1 >KL1 及
びΔL2 >KL2 と、ΔL1 <−KL1 及びΔL2 <−
KL2 のそれぞれのAND論理で2重化し、この4判定
結果のOR論理で励磁突入電流を判定する構成としてい
る。このことは、周期的なインピーダンス変化について
は検出条件が成立するのに対して、系統事故のようにイ
ンピーダンス変化がランダム的に変化するような場合に
は励磁突入電流を検出しにくい構成となっている。
【0095】また、本実施例は第11実施例と同様に、
励磁突入電流を判定する各手段の出力条件に電圧レベル
が所定値以上か否かの判定結果を付加している。励磁突
入電流は変圧器の電圧印加時に発生することから、この
時の電圧レベルは3相とも定格電圧値近くで定常状態に
ある。従って、電圧振幅値の3相分がともに定格状態か
否かを所定の感度定数値にて高速に判定し、この判定結
果と前記インピーダンス変化の検出結果のAND条件に
て継電器応動を制御する。つまり、3相とも定格電圧値
付近で、かつインピーダンス変化を検出した場合のみ励
磁突入電流であると判別し、継電器動作を阻止する。こ
のように、系統事故発生時の過渡応答中、入力急変期間
にインピーダンス変化分を検出しても、この場合は、電
圧値は3相のうちいずれか1相は定格電圧状態から低下
するため、前記電圧振幅値判定結果は成立せず、不要に
励磁突入電流と判定することなく継電器阻止には至らな
い。この結果、継電器はインピーダンスが事故点で収束
するまでの過渡変動期間においても、継電器のゾーン内
であれば即時動作が期待できる。このことは、前記協調
時間をさらに短縮できることを意味しており、事故時の
継電器動作時間の高速性も兼ね備えている。
【0096】(本発明の他の実施の形態)以上説明した
本発明の各実施例では、励磁突入電流検出の動作判定に
抵抗分とインダクタンス分で説明したが、本発明の他の
実施の形態として、インピーダンス値を算出する除算処
理前の分子、分母を用いた場合について以下説明する。
【0097】前述の電気学会「保護継電工学」テキスト
を例にベクトル計算の場合、P114の第6.3表から
引用すれば、m,nにて得たインピーダンス演算の変化
分の判定は分母、分子値で表すとそれぞれ(1) 式,(2)
式のように置換できる。
【0098】 ΔR=Rm−Rn>KR ≒VIcos θm−VIcos θn>KVR(Im2 −In2 )…(1) ΔL=Lm−Ln>KL (リアクタンスX=ωL) ≒VIsin θm−VIsin θn>KVL(Im2 −In2 )…(2) ここで、 VIcos θm,VIcos θn:m,n時点で演算した
v,iの内積値(R分分子) VIsin θm,VIsin θn:m,n時点で演算した
v,iの外積値(L分分子) Im2 ,In2 :m,n時点で演算したiの振幅値、 θm,θn:m,n時点でのv,iの位相、 KVR,KVL:定数値(KVR≒KVL) したがって、一定時間内の変化分の大きさを検出するイ
ンピーダンス量の代わりに本分子、分母値で励磁突入電
流時の変化分を抽出しても算出結果は等価で扱うことが
でき、上記各実施例と同様の作用、効果を得ることがで
きる。
【0099】また、|ΔR|,|ΔL|など変化分の絶
対値実現には、前記各実施例では関数的に扱ったが、こ
れを(3) 式,(4) 式のように乗算計算による2次の値で
求めても同様である。
【0100】 |ΔR|=|Rm−Rn|>KR =(Rm−Rn)×(Rm−Rn)>KR2 ≒|VIcos θm−VIcos θn|>KVR(Im2 −In2 ) =(VIcos θm−VIcos θn)×(VIcos θm −VIcos θn)>KVR2 (Im2 −In2 2 ……(3) |ΔL|=|Lm−Ln|+KL =(Lm−Ln)×(Lm−Ln)>KL2 ≒|VIsin θm−VIsin θn|>KVL(Im2 −In2 ) =(VIsin θm−VIsin θn)×(VIsin θm −VIsin θn)>KVL2 (Im2 −In2 2 ……(4)
【0101】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
励磁突入電流の検出をインピーダンス測距値の4方向変
化から検出することにより、演算周期に依らず常に安定
した判定結果を得ることができる。この結果、時間協調
用タイマの短縮化が図られることになる。また、電圧振
幅値レベルを励磁突入電流検出の判定条件に加えること
で、事故時の過渡応答中のインピーダンス変化による励
磁突入電流検出が抑えられ継電器の高速動作が実現でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のブロック図。
【図2】励磁突入電流時のインピーダンス絶対値の時刻
変化と判定結果を示す図。
【図3】励磁突入電流時の抵抗とインダクタンスの変化
分の時刻変化と判定結果を示す図。
【図4】同図(a)は励磁突入電流時のインピーダンス
軌跡を示す図、同図(b)は判定結果を示す図。
【図5】同図(a)は励磁突入電流時のインピーダンス
軌跡を示す図、同図(b)は判定結果を示す図。
【図6】励磁突入電流時のインピーダンス軌跡を示す
図。
【図7】同図(a)は事故時他回線から電流が流入する
系統構成を示す図、同図(b)は事故時のインピーダン
ス軌跡を示す図。
【図8】事故時のインピーダンス絶対値の時刻変化と判
定結果を示す図。
【図9】本発明の第2実施例のブロック図。
【図10】本発明の第3実施例のブロック図。
【図11】本発明の第4実施例のブロック図。
【図12】本発明の第5実施例のブロック図。
【図13】本発明の第6実施例のブロック図。
【図14】本発明の第7実施例のブロック図。
【図15】本発明の第8実施例のブロック図。
【図16】本発明の第9実施例のブロック図。
【図17】本発明の第10実施例のブロック図。
【図18】本発明の第11実施例のブロック図。
【図19】本発明の第12実施例のブロック図。
【図20】本発明の第13実施例のブロック図。
【図21】本発明の第14実施例のブロック図。
【図22】本発明の第15実施例のブロック図。
【図23】励磁突入電流時の電圧、電流波形図。
【図24】距離継電器特性に対する励磁突入電流時の影
響を示す図。
【図25】従来方式の励磁突入電流を検出する構成図。
【図26】従来方式のインダクタンス変化量と判定結果
を示す図。
【符号の説明】
1…演算手段、2…第1判定手段、3…第2演算手段、
4,5…第3判定手段、11,31,41,51…第1
算出手段、12,32,42,52…第2算出手段、1
3,23,33,43,53…第2判定手段、14,1
5,16…制御手段。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電力系統の電圧および電流を入力してイ
    ンピーダンス測距演算を行い、この測距値を基に系統に
    おける励磁突入電流か事故電流かの識別をする距離継電
    器において、前記インピーダンスには、抵抗値(R)成
    分とインダクタンス値(L)成分のそれぞれ連続変化量
    として、一定期間内の異なる2時刻(m,n)にて得た
    前記インピーダンス測距値Rm,Rn,Lm,Lnか
    ら、抵抗分の差分量の絶対値|ΔR|=|Rm−Rn|
    を求める第1の手段と、インダクタンス成分の差分量の
    絶対値|ΔL|=|Lm−Ln|を求める第2の手段
    と、前記第1の手段および前記第2の手段より得た両者
    の加算値ΔZのレベル確認として、|ΔZ|=|ΔR|
    +|ΔL|>KZ(KZ:定数値)なる大小比較判定を
    行う第3の手段と、前記第3の手段にて判定成立時には
    前記励磁突入電流にて誤動作のおそれがある継電器動作
    を阻止するような出力制御を行う第4の手段とを備えて
    いることを特徴とする距離継電器。
  2. 【請求項2】 電力系統の電圧および電流を入力してイ
    ンピーダンス測距演算を行い、この測距値を基に系統に
    おける励磁突入電流か事故電流かの識別をする距離継電
    器において、前記インピーダンスには、抵抗値(R)成
    分とインダクタンス値(L)成分のそれぞれ連続変化量
    として、一定期間内の異なる2時刻(m,n)にて得た
    前記インピーダンス測距値Rm,Rn,Lm,Lnか
    ら、抵抗分の差分量の絶対値|ΔR|=|Rm−Rn|
    を求める第1の手段と、インダクタンス成分の差分量の
    絶対値|ΔL|=|Lm−Ln|を求める第2の手段
    と、前記第1の手段および前記第2の手段より得た両者
    のレベル確認として、それぞれ|ΔR|>KR,|ΔL
    |>KL(KR,KL:定数値)なる大小比較のOR論
    理判定を行う第3の手段と、前記第3の手段にていずれ
    か一方でも判定成立時には前記励磁突入電流にて誤動作
    のおそれがある継電器動作を阻止するような出力制御を
    行う第4の手段とを備えていることを特徴とする距離継
    電器。
  3. 【請求項3】 電力系統の電圧および電流を入力してイ
    ンピーダンス測距演算を行い、この測距値を基に系統に
    おける励磁突入電流か事故電流かの識別をする距離継電
    器において、前記インピーダンスには、抵抗値(R)成
    分とインダクタンス値(L)成分のそれぞれ連続変化量
    として、一定期間内の異なる2時刻(m,n)にて得た
    前記インピーダンス測距値Rm,Rn,Lm,Lnか
    ら、抵抗分の差分値ΔR=Rm−Rnを求める第1の手
    段と、インダクタンス成分の差分値ΔL=Lm−Lnを
    求める第2の手段と、前記第1の手段および前記第2の
    手段より得た両者のレベル確認として、次の4つの大小
    比較のOR論理判定 ΔR>KR,ΔL>KL,ΔR<−KR,ΔL<−KL (KR,KL:定数値) を行う第3の手段と、前記第3の手段にて少なくともい
    ずれか一つでも判定成立時には前記励磁突入電流にて誤
    動作のおそれがある継電器動作を阻止するような出力制
    御を行う第4の手段とを備えていることを特徴とする距
    離継電器。
  4. 【請求項4】 電力系統の電圧および電流を入力してイ
    ンピーダンス測距演算を行い、この測距値を基に系統に
    おける励磁突入電流か事故電流かの識別をする距離継電
    器において、前記インピーダンスには、抵抗値(R)成
    分とインダクタンス値(L)成分のそれぞれ連続変化量
    として、一定期間内の異なる3時刻(l,m,n)以上
    で得た前記インピーダンス測距値Rl,Rm,Rn,L
    l,Lm,Lnから、抵抗分の差分量の絶対値|ΔR1
    |=|Rl−Rm|および|ΔR2 |=|Rl−Rn|
    を求める第1の手段と、インダクタンス成分の差分量の
    絶対値|ΔL1 |=|Ll−Lm|および|ΔL2 |=
    |Ll−Ln|を求める第2の手段と、前記第1の手段
    および前記第2の手段より得た両者のレベル確認とし
    て、次の大小比較のAND条件 ΔR1 >KR1 and ΔR2 >KR2 ΔL1 >KL1 and ΔL2 >KL2 (KR1 ,KR2 ,KL1 ,KL2 :定数,KR1 >K
    R2 ,KL1 >KL2 ) のOR論理判定を行う第3の手段と、前記第3の手段に
    ていずれか一方でも判定成立時には前記励磁突入電流に
    て誤動作のおそれがある継電器動作を阻止するような出
    力制御を行う第4の手段とを備えていることを特徴とす
    る距離継電器。
  5. 【請求項5】 電力系統の電圧および電流を入力してイ
    ンピーダンス測距演算を行い、この測距値を基に系統に
    おける励磁突入電流か事故電流かの識別をする距離継電
    器において、前記インピーダンスには、抵抗値(R)成
    分とインダクタンス値(L)成分のそれぞれ連続変化量
    として、一定期間内の異なる少なくとも3時刻(l,
    m,n)以上で得た前記インピーダンス測距値Rl,R
    m,Rn,Ll,Lm,Lnから抵抗分の差分値ΔR1
    =Rl−RmおよびΔR2 =Rl−Rnを求める第1の
    手段と、インダクタンス成分の差分値ΔL1 =Ll−L
    mおよびΔL2 =Ll−Lnを求める第2の手段と、前
    記第1の手段および前記第2の手段より得た両者のレベ
    ル確認として、次の4つの大小比較のAND条件 ΔR1 >KR1 and ΔR2 >KR2 ΔL1 >KL1 and ΔL2 >KL2 ΔR1 <−KR1 and ΔR2 <−KR2 ΔL1 <−KL1 and ΔL2 <−KL2 (KR1 ,KR2 ,KL1 ,KL2 :定数,KR1 >K
    R2 ,KL1 >KL2 ) のOR論理判定を行う第3の手段と、前記第3の手段に
    て少なくともいずれか1つでも判定成立時には前記励磁
    突入電流にて誤動作のおそれがある継電器動作を阻止す
    るような出力制御を行う第4の手段とを備えていること
    を特徴とする距離継電器。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至請求項5記載の距離継電器
    において、前記継電器動作の出力制御には、入力電圧の
    レベル判定として不足電圧継電器の3相分不動作条件を
    付加していることを特徴とする距離継電器。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至請求項5記載の距離継電器
    において、前記継電器動作の出力制御には、入力電圧の
    レベル判定として過電圧継電器の3相分動作条件を付加
    していることを特徴とする距離継電器。
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