JPH11117172A - エレクトレット体の製造方法及びその製造装置 - Google Patents

エレクトレット体の製造方法及びその製造装置

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JPH11117172A
JPH11117172A JP29350197A JP29350197A JPH11117172A JP H11117172 A JPH11117172 A JP H11117172A JP 29350197 A JP29350197 A JP 29350197A JP 29350197 A JP29350197 A JP 29350197A JP H11117172 A JPH11117172 A JP H11117172A
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JP
Japan
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ionizing radiation
electret
electrode
ions
electric field
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JP29350197A
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English (en)
Inventor
Masaaki Kawabe
雅章 川部
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Japan Vilene Co Ltd
Original Assignee
Japan Vilene Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 (1)被処理体の形状に左右されることなく
エレクトレット化することができ、(2)スパーク放電
により被処理体を損傷することがなく、(3)帯電量を
多くすることができ、(4)オゾンの発生のほとんどな
い、エレクトレット体の製造方法及びその製造装置を提
供すること。 【解決手段】 本発明のエレクトレット体の製造方法
は、電離放射線によりイオンを発生させた後、発生させ
たイオンに電場を作用させることにより、このイオンを
被処理体に付着させる方法である。また、本発明のエレ
クトレット体の製造装置は、電離放射線発生装置と、こ
の電離放射線発生装置により発生させたイオンに電場を
作用させることのできる手段、とを備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気などの気体フィ
ルタ、オイルや水などの液体フィルタ、マスク(成形マ
スクを含む)、ワイピング材、防塵衣料、マイクロホン
などの音響素子、或は電位計、電圧計、放射線量計、高
電圧の電源、静電発電機、交流発電機、静電的記憶装
置、湿度測定器などに利用できるエレクトレット体の製
造方法、及びその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エレクトレット化する方法とし
て、例えば、直流コロナ放電による方法や沿面コロナ放
電による方法が知られていた。前者の直流コロナ放電に
よる方法は、放電極と対電極との間に、ある一定以上の
電圧を印加して、放電を発生させる方法である。この直
流コロナ放電の場合、次のような欠点があった。 (1)被処理体は対電極に密着させた状態で処理する必
要があるため、シート状の被処理体しかエレクトレット
化することができなかった。つまり、ジグザグ状や波型
形状などの立体形状を有する被処理体をエレクトレット
化することができなかった。そのため、シート状の被処
理体をエレクトレット化した後、所望形状に成形する手
段が採られていた。しかしながら、この方法によると成
形する際に帯電量が低下するという問題があった。 (2)コロナ放電を発生させるために高い電界強度を必
要とし、著しい不平等電界となるため、スパーク放電が
発生しやすく、被処理体を損傷しやすいという問題があ
った。 (3)高い電界強度程、帯電量を多くすることができる
が、(2)に記載のように、電界強度を高くするとスパ
ーク放電が発生しやすいため、帯電量を多くすることが
できない、という問題があった。 (4)コロナ放電を生じる際にオゾンが発生する、とい
う問題があった。
【0003】他方、沿面コロナ放電による方法は、誘電
体を介して対向するように配置された誘導電極と放電極
との間に、ある値以上の交流電圧を印加して、放電を発
生させる方法である。この沿面コロナ放電の場合も直流
コロナ放電と同様に、(1)被処理体の形状がシート
状、又は比較的単純な成形形状のものでなければエレク
トレット化できない、(2)スパーク放電が発生する可
能性がある、(3)帯電量を多くすることができない、
(4)オゾンが多量に発生する、という問題を有してい
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点
を解決するためになされたものであり、(1)被処理体
の形状に左右されることなくエレクトレット化すること
ができ、(2)スパーク放電により被処理体を損傷する
ことがなく、(3)帯電量を多くすることができ、
(4)オゾンの発生のほとんどない、エレクトレット体
の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のエレクトレット
体の製造方法は、電離放射線によりイオンを発生させた
後、発生させたイオンに電場を作用させることにより、
このイオンを被処理体に付着させる方法である。このよ
うに、被処理体を電極に密着させる必要がないため、被
処理体の形状に左右されることなく被処理体をエレクト
レット化することができる。
【0006】また、本発明においてはイオンの発生源が
電離放射線であり、イオンを発生させるために放電極を
使用する必要がないため、発生したイオンに対して電場
を作用させる際に、ほぼ完全な平等電界を作用させるこ
とができる。したがって、スパーク放電により被処理体
を損傷したり、オゾンが発生することがほとんどない。
また、高い電界強度としても、スパーク放電が生じにく
いため、被処理体の帯電量を多くすることができる。
【0007】本発明のエレクトレット体の製造装置は、
電離放射線発生装置と、この電離放射線発生装置により
発生させたイオンに電場を作用させることのできる手
段、とを備えている。したがって、上述のエレクトレッ
ト体の製造方法を実施することができるため、(1)被
処理体の形状に左右されることなくエレクトレット化す
ることができ、(2)スパーク放電により被処理体を損
傷することがなく、(3)帯電量を多くすることがで
き、(4)オゾンの発生のほとんどない、エレクトレッ
ト体の製造装置である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明においては、電離放射線に
よりイオンを発生させているため、コロナ放電を発生さ
せる際に必要な不平等電界を必要としない。したがっ
て、スパーク放電やオゾンの発生がほとんどない。この
電離放射線としては、例えば、X線、β線、α線などを
使用できる。これらの中でもX線はイオンを発生しやす
く、またオゾンを発生しないため、好適に使用できる。
【0009】このX線の中でも、エネルギーが0.1k
eV〜100keVのものが好ましい。エネルギーが
0.1keV未満であると、空気中における吸収が大き
過ぎて、広範囲にわたって空気をイオン化することが困
難になる傾向があり、他方、エネルギーが100keV
を越えると、空気中における透過能力が高過ぎ、イオン
生成能が低い場合があったり、大掛かりな遮蔽手段が必
要となる場合があり、また、X線を発生させるために高
電圧が必要となり、装置が大型化する傾向があるため
で、より好ましくは1keV〜50keVである。
【0010】次いで、電離放射線から発生したイオンに
電場を作用させることにより、イオンを移動させて被処
理体に付着させる。このように、コロナ放電によりエレ
クトレット化する場合のように、被処理体を電極に密着
させる必要がないため、被処理体の形状に左右されるこ
となく被処理体をエレクトレット化できる。したがっ
て、被処理体を成形した後にエレクトレット化すれば良
く、エレクトレット化した後に成形する必要がないの
で、成形による帯電量の低下がなく、帯電量を多くする
ことができる。なお、本発明においては、被処理体を電
極に密着させてエレクトレット化しても良い。
【0011】また、発生したイオンに対して作用させる
電場は平等電場であることができるため、スパーク放電
が発生しにくい。そのため、従来のコロナ放電を発生さ
せる場合の電界強度よりも高い電界強度とすることがで
き、この点からも被処理体の帯電量を多くすることがで
きる。
【0012】より具体的には、直流コロナ放電の場合、
安定して放電が生じるように、電極間の電界強度が2〜
5kV/cm程度の条件下でエレクトレット化を行なっ
ている。これに対して、本発明の方法によれば、0〜3
0kV/cm(0kV/cmは除く)程度の電極間の電
界強度でエレクトレット化することができ、1〜20k
V/cm程度の電極間の電界強度であれば、より安定し
てエレクトレット化できる。また、本発明は前記のよう
な電界強度の広い範囲で被処理体をエレクトレット化で
きるため、帯電量を多くすることも少なくすることもで
き、自由に帯電量を設計できる。
【0013】更に、電界強度を低くすることもできるた
め、電極間の距離を広くすることが可能となり、大きな
被処理体であってもエレクトレット化できるという効果
も奏する。
【0014】なお、エレクトレット化の程度は電極間の
電界強度に依存するのではなく、被処理体の両端にかか
る電界強度に依存するため、電極間の電界強度は低くし
ておき、被処理体の両端にかかる電界強度のみを高くす
ることにより、安定してエレクトレット化でき、しかも
被処理体の帯電量を増やすことができる。例えば、被処
理体の電極と対向する表面を、イオンを透過させない物
質(例えば、フィルム)で被覆することによって、被処
理体の両端にかかる電界強度のみを高くすることができ
る。つまり、電極間における電界強度が低くても、時間
の経過とともにイオンを透過させない物質表面に透過す
ることのできないイオンが蓄積されるため、被処理体の
両端にかかる電界強度のみが高くなる。この場合、被処
理体の両端部にかかる電界強度が30kV/cmを越え
ても、安定してエレクトレット化できる。
【0015】この電場を作用させる方法としては、例え
ば、一対の平板状電極、一対のロール状電極、平板状電
極とロール状電極を使用することができる。これらの中
でも、より高い電界強度を作用させることのできる一対
の平板状電極であるのが好ましい。この平板状電極を使
用する場合、平板状電極の周囲を曲面状としたり、ビニ
ールテープなどの誘電性のテープで平板状電極の周囲を
被覆して、スパーク放電が生じにくいようにするのが好
ましい。なお、これらの電極は直流電源に接続されてい
るか、接地されている。また、これらの電極は、例え
ば、表面に導電性塗料を塗布したり、金属層や導電性樹
脂層を形成することにより導電性をもたせたもの、或い
はアルミニウム、銅、ステンレススチール、タングステ
ンなどの金属から構成することができる。
【0016】なお、この電極の配置によって電界構造を
自由に設計することができるため、様々なエレクトレッ
ト化状態の被処理体を製造することができる。例えば、
マイナスに印加した電極と接地電極とを、縦縞状に交互
に配置することにより、プラスにエレクトレット化され
た領域とマイナスにエレクトレット化された領域とを、
交互に縦縞状に有するエレクトレット体を製造できる。
また、マイナスに印加した電極と接地電極とを碁盤の目
状に配置することにより、プラスにエレクトレット化さ
れた領域とマイナスにエレクトレット化された領域と
を、交互に碁盤の目状に有するエレクトレット体を製造
できる。
【0017】本発明の方法によりエレクトレット化でき
る被処理体としては、電場の作用により移動するイオン
と接触できる位置に配置することのできるものであれ
ば、どのような形状のものであってもエレクトレット化
することができる。例えば、繊維状、糸状、ネット状、
不織布状、織物状、編物状、フィルム状、発泡体状、樹
脂粉体状、樹脂成形物状、顔面に沿うように成形された
成形マスク形状、ジグザグ状に折り加工された形状、波
型形状に加工された形状、中空体形状のものをエレクト
レット化することができる。
【0018】なお、被処理体が不織布からなる場合に
は、繊維油剤や接着剤の付着がほとんどなく、エレクト
レット化しやすい、メルトブロー不織布や水流絡合不織
布が好適である。
【0019】また、被処理体を構成する樹脂成分として
は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリ塩化
ビニル系などの誘電性のものが適しており、長期間にわ
たり安定したエレクトレット体を製造できる、体積固有
抵抗が1014Ω・cm以上のものが好ましい。
【0020】なお、電離放射線が透過可能、かつ中空繊
維などのように内部に孔を有する中空体を、本発明の方
法によりエレクトレット化すると、中空体の外側表面が
エレクトレット化されるばかりでなく、中空体の孔内に
おける空気もイオン化されるため、中空体の孔の壁面も
エレクトレット化される。また、不織布などの多孔質体
を本発明の方法によりエレクトレット化した場合、多孔
質体の両表面近傍がエレクトレット化されるばかりでな
く、多孔質体の内部空隙における空気もイオン化される
ため、多孔質体の内部空隙の壁面もエレクトレット化さ
れる。更に、電離放射線が透過可能な中空体の集合体か
らなる多孔質体(例えば、中空繊維からなる不織布)
を、本発明の方法によりエレクトレット化した場合、多
孔質体の両表面近傍、多孔質体の内部空隙の壁面(中空
体の外側表面)、及び中空体の孔の内壁がそれぞれエレ
クトレット化される。
【0021】以下、本発明のエレクトレット体の製造方
法及び製造装置について、図1〜図11をもとに、より
具体的に説明する。
【0022】図1は本発明のエレクトレット体製造装置
1の概念的な側面図である。このエレクトレット体製造
装置1は電離放射線発生装置2と、発生したイオンに対
して電場を作用させるためのメッシュ状電極3aと平板
状電極3bとを備えている。図1においては、これら電
極3a、3b間に電離放射線を透過させない被処理体4
を配置している。
【0023】なお、エレクトレット体製造装置1は電離
放射線がエレクトレット体製造装置1の外へ透過しない
ように、エレクトレット体製造装置1の内壁(図示せ
ず)は鉛などの金属によって被覆されているのが好まし
い。なお、電離放射線が軟X線のように比較的低エネル
ギーの場合には、塩化ビニル板などの樹脂板で被覆され
ていても良い。
【0024】この電離放射線発生装置2は電離放射線が
電場の作用する領域に到達できるのであれば、どのよう
に配置されていても良い。
【0025】図1の態様においては、電離放射線が電場
の作用する領域に到達できるように、一方の電極(電離
放射線照射側の電極)としてメッシュ状電極3aを使用
している。しかしながら、いずれの電極3a、3bも平
板状電極とし、平板状電極により妨害されない位置から
電離放射線を照射することもできる。つまり、図1の紙
面上、上側や下側、図1の紙面に対して上側や下側の、
少なくとも一方向から電離放射線を照射することによ
り、電極による妨害を避けることができる。このよう
に、電極3a、3bの組合わせは特に限定されない。
【0026】図1における態様のように、一方の電極を
メッシュ状電極とすると、被処理体4に対して、直角に
電離放射線発生装置2を配置することができるため、被
処理体全体に均一にイオンを付着させることができる、
という効果を奏する。なお、このメッシュ状電極に代え
て、蒸着フィルムやアルミ箔などからなる電極を使用し
た場合においても、この電極を電離放射線が透過するこ
とができるため、メッシュ状電極の場合と同様の作用効
果を奏するばかりでなく、表面はメッシュ状電極よりも
均一であるため、より電界強度を高くすることができ
る、という効果も奏する。
【0027】また、被処理体4はいずれかの電極3a、
3bと接触するように配置しても良いし、両方の電極3
a、3bと接触するように配置しても良いし、或はいず
れの電極3a、3bとも接触しないように配置しても良
く、被処理体4の材質や形状などによって適宜配置され
る。
【0028】図1のエレクトレット体製造装置1は上述
のような構造を有するため、次のように作用する。ま
ず、電離放射線発生装置2から電離放射線を発生する
と、電離放射線が通過した全領域における空気がイオン
化される。次いで、この電離放射線が通過した領域(つ
まり、イオンの発生した領域)に電場をかけると、電場
に沿ってプラスイオンとマイナスイオンに分離し、電極
3a及び電極3bに引き寄せられる。そして、イオンが
電極3a、3bに引き寄せられて移動する際に、イオン
の移動経路に配置された被処理体4に付着して、被処理
体4をエレクトレット化する。
【0029】なお、このエレクトレット化された状態は
被処理体4の種類によって異なる。例えば、被処理体4
が電離放射線を透過させないものである場合(図1の場
合)、被処理体4よりも電離放射線発生装置2側の領域
でのみイオンが発生することになるため、被処理体4は
電離放射線発生装置2側の表面近傍のみがプラスにエレ
クトレット化される。
【0030】他方、被処理体4が電離放射線を透過させ
るものである場合には、被処理体4の電極3b側の領域
においてもイオンが発生するため、被処理体4は電離放
射線発生装置2側の表面近傍がプラスにエレクトレット
化され、電極3b側の表面近傍がマイナスにエレクトレ
ット化される。
【0031】なお、被処理体4が電離放射線が透過可
能、かつ中空繊維などのように内部に孔を有する中空体
である場合には、電離放射線発生装置2側の表面がプラ
スにエレクトレット化され、電極3b側の表面がマイナ
スにエレクトレット化されると同時に、中空体の孔内に
おいて発生したイオンにより、電離放射線発生装置2側
の孔の壁面がマイナスにエレクトレット化され、電極3
b側の孔の壁面がプラスにエレクトレット化される。
【0032】また、被処理体4が不織布などの多孔質体
である場合には、電離放射線発生装置2側の表面近傍が
プラスにエレクトレット化され、電極3b側の表面近傍
がマイナスにエレクトレット化されると同時に、多孔質
体の内部空隙において発生したイオンにより、電離放射
線発生装置2側の内部空隙の壁面がマイナスにエレクト
レット化され、電極3b側の内部空隙の壁面がプラスに
エレクトレット化される。
【0033】更に、被処理体4が電離放射線が透過可能
な中空体の集合体からなる多孔質体(例えば、中空繊維
からなる不織布)である場合、多孔質体の電離放射線発
生装置2側の表面近傍がプラスにエレクトレット化さ
れ、電極3b側の表面近傍がマイナスにエレクトレット
化され、電離放射線発生装置2側の内部空隙の壁面がマ
イナスにエレクトレット化され、電極3b側の内部空隙
の壁面がプラスにエレクトレット化され、及び電離放射
線発生装置2側の孔の壁面がマイナスにエレクトレット
化され、電極3b側の孔の壁面がプラスにエレクトレッ
ト化される。
【0034】更に、被処理体4を電極3a又は電極3b
と接触させてエレクトレット化する場合、例えば、電離
放射線発生装置2とは反対側の電極3bに被処理体4を
接触させてエレクトレット化した場合、電離放射線発生
装置2側表面近傍はプラスにエレクトレット化され、電
極3b側表面近傍は逆電離によりマイナスにエレクトレ
ット化される。
【0035】図2は本発明の別のエレクトレット体製造
装置1の概念的な側面図である。このエレクトレット体
製造装置1は、電極3a、3b同士の対向方向に対して
直角に電離放射線発生装置2を配置し、両方の電極3
a、3bを平板状電極とした点のみが図1のエレクトレ
ット体製造装置1と相違するが、他の点については図1
のエレクトレット体製造装置1と全く同じである。この
ように、本発明のエレクトレット体製造装置1において
は、電離放射線が電場の作用する領域に到達できるよう
に配置されていれば、どのように、いくつ配置されてい
ても良い。
【0036】図2のエレクトレット体製造装置1のよう
に、電極がいずれも平板状電極3a、3bからなると、
一方の電極3a(又は3b)から他方の電極3b(又は
3a)にわたって、ほぼ完全な平等電界を形成すること
ができる。したがって、スパーク放電を生じる電界強度
が高くなるため、従来よりも高い電界強度を作用させる
ことができる。したがって、従来よりも帯電量を多くす
ることができる、という効果を奏する。
【0037】図2のエレクトレット体製造装置1は上記
のような構造を有するため、図1のエレクトレット体製
造装置1と同様に作用する。つまり、電離放射線発生装
置2から電離放射線を発生すると、電離放射線が通過し
た全領域において、空気がイオン化される。次いで、こ
の電離放射線が通過した領域(つまり、イオンの発生し
た領域)に電場をかけると、電場に沿ってプラスイオン
とマイナスイオンに分離し、電極3a及び電極3bに引
き寄せられる。そして、イオンが電極3a、3bに引き
寄せられて移動する際に、イオンの移動経路に配置され
た被処理体4に付着して、被処理体4をエレクトレット
化する。
【0038】なお、図2の被処理体4は電離放射線の照
射方向と平行に配置されているため、被処理体4を電離
放射線が透過可能であるか不可能であるかに関係なく、
被処理体4の電極3a側表面近傍はプラスにエレクトレ
ット化され、電極3b側表面近傍はマイナスにエレクト
レット化される。なお、被処理体4が電離放射線を透過
可能な中空体、多孔質体、或は中空体の集合体からなる
多孔質体の場合や、被処理体4を電極3a又は電極3b
と接触させてエレクトレット化する場合は、図1の場合
と全く同様にエレクトレット化される。
【0039】図3は本発明の更に別のエレクトレット体
製造装置1の概念的な側面図である。このエレクトレッ
ト体製造装置1はいずれの電極3a、3bもメッシュ状
電極からなること、及び電離放射線発生装置を電極3a
の外側及び電極3bの外側の計2つ配置したこと以外
は、図1のエレクトレット体製造装置1と全く同じであ
る。
【0040】このように電離放射線発生装置を2つ配置
することにより、被処理体4が電離放射線を透過させな
いものであっても、被処理体4の両面をエレクトレット
化することができる。また、電離放射線発生装置2の数
が多ければ多い程、より発生するイオンの量が増加する
ため、それだけ早くエレクトレット化できたり、帯電量
を増やすことができる、という効果を奏する。
【0041】なお、電離放射線発生装置は図1のように
1つ、又は図3のように2つである必要はなく、3つ以
上配置しても良い。また、2つ以上の電離放射線発生装
置を配置する場合、いずれの電離放射線も電場の作用す
る領域に到達できるのであれば、どのような位置関係で
電離放射線発生装置を配置しても良い。
【0042】このエレクトレット体製造装置1は上述の
ような構造を有するため、次のように作用する。まず、
電離放射線発生装置2a、2bからそれぞれ電離放射線
を発生すると、電離放射線が通過したそれぞれの全領域
における空気がイオン化される。次いで、この電離放射
線が通過した領域(つまり、イオンの発生した領域)に
電場をかけると、電場に沿ってプラスイオンとマイナス
イオンに分離し、電極3a、3bに引き寄せられる。そ
して、イオンが電極3a、3bに引き寄せられて移動す
る際に、イオンの移動経路に配置された被処理体4に付
着して、被処理体4をエレクトレット化する。
【0043】前述のように、図3のエレクトレット体製
造装置1においては、2つの電離放射線発生装置2a、
2bを備えているため、被処理体4が電離放射線を透過
可能であるか不可能であるかに関係なく、被処理体4の
電極3a側表面近傍はプラスにエレクトレット化され、
電極3b側表面近傍はマイナスにエレクトレット化され
る。なお、被処理体4が電離放射線を透過可能な中空
体、多孔質体、或は中空体の集合体からなる多孔質体の
場合や、被処理体4を電極3a又は電極3bと接触させ
てエレクトレット化する場合は、図1のエレクトレット
体製造装置1の場合と全く同様にエレクトレット化され
る。
【0044】図4は本発明の更に別のエレクトレット体
製造装置1の概念的な側面図である。このエレクトレッ
ト体製造装置1は電離放射線発生装置2側とは反対側の
電極3bとして、表面に凹凸のあるものを使用したこ
と、及びこの電極3bと密着させて被処理体4を配置し
たこと以外は図1のエレクトレット体製造装置1と全く
同じである。
【0045】このように、電極3a、3bの表面形状は
特に限定されるものではない。しかしながら、電極3
a、3b間を高い電界強度とし、帯電量を多くするよう
な場合には、スパーク放電がより生じにくいように、他
方の電極と対向する電極表面が平滑な平板状電極である
のが好ましく、電極の周囲を曲面状としたり、ビニール
テープなどの誘電性のテープで周囲を被覆した、よりス
パーク放電の生じにくい平板状電極であるのがより好ま
しい。
【0046】このエレクトレット体製造装置1は上述の
ような構造を有するため、次のように作用する。まず、
電離放射線発生装置2から電離放射線を発生すると、電
離放射線が通過した全領域における空気がイオン化され
る。次いで、この電離放射線が通過した領域(つまり、
イオンの発生した領域)に電場をかけると、電場に沿っ
てプラスイオンとマイナスイオンに分離し、電極3a、
3bに引き寄せられる。そして、イオンが電極3a、3
bに引き寄せられて移動する際に、電極3b上に配置さ
れた被処理体4に付着して、被処理体4をエレクトレッ
ト化する。
【0047】図4の場合、被処理体4が電離放射線を透
過可能であるか不可能であるかに関係なく、被処理体4
の電極3a側表面近傍はプラスにエレクトレット化さ
れ、電極3b側表面近傍は逆電離によりマイナスにエレ
クトレット化される。なお、被処理体4が電離放射線を
透過可能な中空体、多孔質体、或は中空体の集合体から
なる多孔質体の場合は、図1の場合と全く同様にエレク
トレット化される。
【0048】図5は図1のエレクトレット体製造装置1
を用いて、電離放射線を透過可能な材料からなる中空の
被処理体4をエレクトレット化した状態を表す概念的な
側面図である。
【0049】このように、被処理体4が電離放射線を透
過可能な中空体である場合、電離放射線は中空体の外壁
を透過し、中空体の孔内における空気もイオン化される
ため、中空体の孔内で発生したイオンも電場に沿って、
プラスイオンとマイナスイオンに分離し、電極3a及び
電極3bに引き寄せられる。そして、イオンが電極3
a、3bに引き寄せられて移動する際に、中空体の孔の
壁面にイオンが付着して、中空体の孔の壁面もエレクト
レット化される。
【0050】つまり、被処理体4の電離放射線発生装置
2側の表面がプラスにエレクトレット化され、電極3b
側の表面がマイナスにエレクトレット化されると同時
に、電離放射線発生装置2側の孔の壁面がマイナスにエ
レクトレット化され、電極3b側の孔の壁面がプラスに
エレクトレット化される。
【0051】なお、図5は1つの中空体のみを図示して
いるが、被処理体4が中空体の集合体(例えば、中空繊
維を含む不織布)からなる場合には、各々の中空体の孔
の壁面が上記と同様にエレクトレット化される。
【0052】図6は本発明の更に別のエレクトレット体
製造装置1の概念的な側面図である。このエレクトレッ
ト体製造装置1は、電離放射線が外部に漏れず、かつ電
場の作用によりイオンが通過可能な開口部5a、5bを
有するイオン発生室5を設置していること、及びこの開
口部5a、5bの外側に2つの被処理体4a、4bを配
置したこと以外は図2のエレクトレット体製造装置1と
全く同じである。このようにイオン発生室5を設置する
と、このイオン発生室5内から同極性のイオンのみを引
き出すことができ、被処理体4を同極性に帯電すること
ができる。
【0053】このようにイオン発生室5を設置する場
合、電離放射線発生装置2はイオン発生室5の外部に設
置しても良いが、イオン発生室5の外部に漏れないよう
に、イオン発生室5の中に設置するのが好ましい。ま
た、電離放射線発生装置2は電離放射線がイオン発生室
5の外部に漏れないのであれば、図6の紙面に対して直
角に配置するなど、どのように、何台設置しても良い。
【0054】図6におけるイオン発生室5においては、
発生したイオンが電場の作用により通過可能な開口部を
2つ有する態様であるが、2つである必要はなく、1つ
でも3つ以上有していても良い。
【0055】このイオン発生室5は電離放射線が透過し
ないように、その内壁は鉛などの金属によって被覆され
ているのが好ましい。なお、電離放射線が軟X線のよう
に比較的低エネルギーの場合には、塩化ビニル板などの
樹脂板で被覆されていても良い。
【0056】また、イオン発生室5の形状は特に限定す
るものではないが、円柱状、円錐状、角柱状、角錐状な
どを例示できる。また、イオン発生室5の大きさは電離
放射線発生装置2の大きさやエレクトレット化処理の実
施規模などによって適宜設定される。
【0057】図6においては、イオン発生室5の開口部
5aの外側に接地電極3aと、開口部5bの外側にマイ
ナスに印加した電極3bとを設置しているが、逆にイオ
ン発生室5の開口部5aの外側にマイナスに印加した電
極と、開口部5bの外側に接地電極とを設置しても良
い。或いは、イオン発生室5の開口部5aの外側にプラ
スに印加又は接地した電極と、開口部5bの外側に接地
又はプラスに印加した電極とを設置しても良い。更に
は、いずれの開口部5a、5bからも同極性のイオンの
みを引き出すことができるように、電極3aと電極3b
の電位を同程度の電位とし、イオン発生室5内に接地電
極を設けたり、逆に、電極3a及び電極3bを接地電極
とし、イオン発生室5内に印加電極を設置しても良い。
また、イオン発生室5内に接地電極を設置し、電極3a
と電極3bとの間に電位差を設けることによりイオンを
引き出すこともできる。
【0058】図6のエレクトレット体製造装置1は上述
のような構造からなるため、次のように作用する。ま
ず、電離放射線発生装置2から電離放射線を発生する
と、イオン発生室5内における空気がイオン化される。
次いで、このイオン発生室5の開口部5a、5bの外側
に位置する電極間に電場をかけると、電場に沿ってプラ
スイオンとマイナスイオンに分離し、イオン発生室5の
開口部5a、5bを通過して同じ開口部からは同極性の
イオンのみが引き出される。図6の場合、開口部5aを
通ってマイナスイオンのみが電極3a側に引き出され、
他方、開口部5bを通ってプラスイオンのみが電極3b
側に引き出される。そして、イオンが電極3a、3bに
引き寄せられて移動する際に、イオンの移動経路に配置
された被処理体に付着して、被処理体をエレクトレット
化する。図6の場合、電極3a側に配置した被処理体4
aはマイナスイオンによってのみエレクトレット化さ
れ、電極3b側に配置した被処理体4bはプラスイオン
によってのみエレクトレット化される。
【0059】なお、図6のエレクトレット体製造装置1
においては、イオン発生室5から同極性のイオンのみを
引き出しており、被処理体4a、4bに電離放射線が照
射されていないため、被処理体4a、4bが電離放射線
を透過可能であるか不可能であるかに関係なく、被処理
体4a、4bはプラス又はマイナスの同極性にエレクト
レット化される。
【0060】また、被処理体4a、4bが電離放射線を
透過可能な中空体、多孔質体、又は中空体の集合体から
なる多孔質体であったとしても、この中空体又は多孔質
体には電離放射線が照射されていないため、被処理体4
の孔内及び/又は内部空隙においてイオンは発生しな
い。したがって、イオン発生室5の開口部5a、5bか
ら引き出された同極性のイオンの付着により、被処理体
4a、4bの表面近傍のみがプラス又はマイナスの同極
性にエレクトレット化される。
【0061】更に、被処理体4a、4bをいずれかの電
極3a、3bと接触させてエレクトレット化する場合、
例えば、被処理体4bを電極3bと接触させて配置した
場合、イオン発生室5側表面近傍はプラスにエレクトレ
ット化され、電極3b側表面近傍は逆電離によりマイナ
スにエレクトレット化される。
【0062】なお、図6はイオン発生室5を設置した場
合であるが、イオン発生室5を設置せず、電離放射線が
被処理体に照射されないように電離放射線発生装置2、
及び被処理体を配置することにより、同様の効果を得る
ことができる。例えば、電極間距離を長くし、被処理体
をいずれか一方の電極と接触又は近傍に配置し、電離放
射線を被処理体に照射せず、他方の電極近傍に照射でき
るように電離放射線発生装置2を配置したエレクトレッ
ト体製造装置1は、同極性のみのイオンでエレクトレッ
ト化することができる。特に本発明においては、電極間
の距離を長くすることができるため、イオン発生室5を
設置しない場合であっても、同極性のみのイオンでエレ
クトレット化することができる。
【0063】図7は本発明の更に別のエレクトレット体
製造装置1の概念的な側面図である。このエレクトレッ
ト体製造装置1は電離放射線発生装置2と、発生したイ
オンに対して電場を作用させるためのロール状接地電極
31a、32a、33aと、ロール状印加電極31b、
32b、33bとを互いに交互に略直線状に配置してい
る。
【0064】なお、図7におけるエレクトレット体製造
装置1においても、電離放射線がエレクトレット体製造
装置1の外部に透過しないように、エレクトレット体製
造装置1の内壁は鉛などの金属によって被覆されている
のが好ましい。なお、電離放射線が軟X線のように比較
的低エネルギーの場合には、塩化ビニル板などの樹脂板
で被覆されていても良い。
【0065】図7において電離放射線発生装置2は、紙
面上、右側に配置されているが、電離放射線が電場の作
用する領域に到達できるように配置されていれば良く、
図7の紙面上、左側から、上側から、下側から、或いは
図7の紙面に対して上側から、下側から、の少なくとも
一方向から電離放射線を照射すれば良い。
【0066】図7においては、隣接するロール状接地電
極31a、32a、33aと、ロール状印加電極31
b、32b、33bとの間で電位差が生じるように、互
いに交互に略直線状に配置している。
【0067】また、被処理体4はロール状接地電極31
a、32a、33a、及びロール状印加電極31b、3
2b、33bと接触しないように波状に設置され、隣接
するロール状接地電極31a、32a、33a及びロー
ル状印加電極31b、32b、33bからの距離が連続
的に変化している。なお、被処理体4はロール状接地電
極31a、32a、33a及びロール状印加電極31
b、32b、33bの中の、少なくとも1つのロール状
電極と接触していても良い。
【0068】図7のエレクトレット体の製造装置1は上
述のような構造を有するため、次のように作用する。ま
ず、電離放射線発生装置2から電離放射線を発生する
と、電離放射線が通過した全領域において、空気がイオ
ン化される。次いで、この電離放射線が通過した領域
(つまり、イオンが発生した領域)に電場をかけると、
電場に沿ってプラスイオンとマイナスイオンに分離し、
電極31a、32a、33a及び31b、32b、33
bに引き寄せられる。そして、イオンが電極31a、3
2a、33a及び31b、32b、33bに引き寄せら
れて移動する際に、イオンの移動経路に配置された被処
理体4に付着して、被処理体4をエレクトレット化す
る。
【0069】図7のエレクトレット体の製造装置1によ
り、不織布のような多孔性でイオン透過性の高い多孔質
体(被処理体4)をエレクトレット化する場合、例え
ば、接地電極31aと印加電極32bとからの距離がほ
ぼ同じであるM部分は、これら電極間の電界強度が最も
強いため、このM部分近傍は最も強くエレクトレット化
される。一方、図7の紙面上、印加電極32bの真上に
位置するF部分はこれら電極間の電界強度が最も弱いた
め、このF部分近傍は最も弱くエレクトレット化され
る。したがって、図7に示すエレクトレット体製造装置
1により製造されるエレクトレット体は、電荷量の多い
領域と少ない領域とを交互に縞状に有する。
【0070】図7のエレクトレット体製造装置1におい
ては、被処理体4が電離放射線を透過させるものであっ
ても、透過させないものであっても、上述と同様にエレ
クトレット化できる。また、被処理体4がイオンを透過
しない場合には、被処理体4全体がほぼ同程度にエレク
トレット化される。更に、被処理体4が電離放射線を透
過可能な中空体の集合体からなる多孔質体からなる場合
には、多孔質体の表面近傍が電荷量の多い領域と少ない
領域とに、交互に縞状にエレクトレット化されるのと同
時に、表面の電荷量の多い領域と少ない領域とに対応し
て、電荷量の多い内部空隙の壁面及び孔の壁面と、電荷
量の少ない内部空隙の壁面及び孔の壁面とにエレクトレ
ット化される。
【0071】図8は本発明の更に別のエレクトレット体
製造装置1の概念的な側面図である。このエレクトレッ
ト体製造装置1は電離放射線発生装置2と、発生したイ
オンに対して電場を作用させるための直方体状接地電極
31a、32a、33a、34aと、直方体状印加電極
31b、32b、33b、34b、35bとが互いに交
互に隣接するように設置したものである。図8において
は、これら電極31a〜34a及び電極31b〜35b
上に被処理体4を配置している。
【0072】なお、図8におけるエレクトレット体製造
装置1においても、エレクトレット体製造装置1の外部
に電離放射線が透過しないように、装置1の内壁は鉛な
どの金属によって被覆されているのが好ましい。なお、
電離放射線が軟X線のように比較的低エネルギーの場合
には、塩化ビニル板などの樹脂板で被覆されていても良
い。
【0073】図8において電離放射線発生装置2は、紙
面上、右側に配置されているが、電離放射線が電場の作
用する領域に到達できるように配置されていれば良く、
図8の紙面上、上側から、下側から、左側から、或いは
図8の紙面に対して上側から、下側から、の少なくとも
一方向から電離放射線を照射すれば良い。
【0074】また、図8においては、被処理体4は電極
31a〜34a及び電極31b〜35bと接触させて配
置しているが、電極31a〜34a及び電極31b〜3
5bの中の、少なくとも1つの電極と離間させて配置し
ても良い。
【0075】本発明のエレクトレット体の製造装置1は
上述のような構造を有するため、次のように作用する。
まず、電離放射線発生装置2から電離放射線を発生する
と、電離放射線が通過した全領域において、空気がイオ
ン化される。次いで、この電離放射線が通過した領域
(つまり、イオンの発生した領域)に電場をかけると、
電場に沿ってプラスイオンとマイナスイオンに分離し、
マイナスイオンは接地電極31a〜34aへ、他方、プ
ラスイオンは印加電極31b〜35bへと、それぞれ引
き寄せられる。そして、イオンが電極31a〜34a及
び電極31b〜35bに引き寄せられて移動する際に、
電極上の被処理体4に付着して、被処理体4をエレクト
レット化する。図8における態様においては、接地電極
31a〜34aと印加電極31b〜35bとを交互に配
置しているため、プラスにエレクトレット化された領域
とマイナスにエレクトレット化された領域とを交互に縞
状に有するエレクトレット体を製造できる。このエレク
トレット体の状態は被処理体4が電離放射線を透過させ
るものであっても、透過させないものであっても、同様
にエレクトレット化できる。
【0076】このように、本発明においては、電極の配
置状態を適宜設定することにより、所望通りにエレクト
レット化することができる。例えば、マイナスに印加し
た電極と接地電極とを碁盤の目状に配置することによ
り、プラスにエレクトレット化した領域とマイナスにエ
レクトレット化した領域とを碁盤の目状に形成すること
ができる。
【0077】図9は図2のエレクトレット体製造装置1
を用いて、断面が四角形の孔を有するハニカム状被処理
体4をエレクトレット化した状態を表す概念的な斜視図
である。このように、被処理体4がハニカム状である場
合、電離放射線発生装置2から発生した電離放射線はハ
ニカム状被処理体4の孔内における空気もイオン化し、
この発生したイオンは電場の作用によってプラスイオン
とマイナスイオンに分離し、電極3a、3bに引き寄せ
られる。そして、このイオンが電極3a、3bに引き寄
せられて移動する際に、ハニカム状被処理体4の孔の壁
面にイオンが付着して、ハニカム状被処理体4の孔の壁
面をエレクトレット化する。
【0078】図9の場合、ハニカム状被処理体4の接地
電極3a側の孔の壁面が主としてマイナスにエレクトレ
ット化され、印加電極3b側の孔の壁面が主としてプラ
スにエレクトレット化される。このように、成形後にエ
レクトレット化することができるため、成形時における
帯電量の低下がなく、帯電量の多い成形体を製造でき
る。
【0079】図10は本発明の更に別のエレクトレット
体製造装置1の概念的な斜視図である。このエレクトレ
ット体製造装置1はハニカム状の被処理体4をエレクト
レット化する装置であり、電離放射線発生装置2と、発
生したイオンに対して電場を作用させるためのロール状
接地電極31a〜36a及びロール状印加電極31b〜
36bとを、ハニカム状被処理体4の各々の孔内に、互
いに隣接するように交互に挿入したものである。
【0080】なお、図10におけるエレクトレット体製
造装置1においても、電離放射線がエレクトレット体製
造装置1の外部に透過しないように、装置1の内壁は鉛
などの金属によって被覆されているのが好ましい。な
お、電離放射線が軟X線のように比較的低エネルギーの
場合には、塩化ビニル板などの樹脂板で被覆されていて
も良い。
【0081】図10において電離放射線発生装置2は、
紙面上、手前に配置されているが、電離放射線がハニカ
ム状被処理体4の各々の孔内に到達することができるの
であれば、どのように、何台設置されていても良い。
【0082】本発明のエレクトレット体の製造装置1は
上述のような構造を有するため、次のように作用する。
まず、電離放射線発生装置2から発生した電離放射線は
ハニカム状被処理体4の孔内における空気もイオン化さ
れる。次いで、電場の作用によってプラスイオンとマイ
ナスイオンに分離し、電極31a〜36a及び電極31
b〜36bに引き寄せられる。そして、イオンが電極3
1a〜36a及び電極31b〜36bに引き寄せられて
移動する際に、ハニカム状被処理体4の孔の壁面にイオ
ンが付着して、ハニカム状被処理体4の孔の壁面がエレ
クトレット化される。
【0083】図10の場合、接地電極31a〜36aと
印加電極31b〜36bとが、隣接する上下左右の孔に
おいて、互いに交互に設置されているため、壁面全体が
プラスに帯電される孔と、壁面全体がマイナスに帯電さ
れる孔とが、上下左右において交互に存在するようにエ
レクトレット化される。
【0084】このように、成形後にエレクトレット化す
ることができるため、成形時における帯電量の低下がな
く、帯電量の多い成形体を製造できる。なお、接地電極
と印加電極の配置は上下左右に、互いに交互である必要
はなく、自由に配置することができる。
【0085】図11は図1のエレクトレット体製造装置
1を用いて、電離放射線透過性かつイオン不透過性物質
(以下、単に「イオン不透過性物質」という)6a、6
bで挟んだ、多孔質体(被処理体4)をエレクトレット
化した状態を表す概念的な側面図である。このように、
被処理体4をイオン不透過性物質6a、6bで挟むと、
電極間における電界強度が低くても、被処理体4の両端
にかかる電界強度のみを高くすることができるため、安
定してエレクトレット化でき、しかも帯電量を多くする
ことができる。つまり、電極間における電界強度が低く
ても、時間の経過とともにイオン不透過性物質6a、6
bの表面に、イオン不透過性物質6a、6bの外側で発
生したイオン不透過性物質6a、6bを透過することの
できないイオンが蓄積され、被処理体4の両端にかかる
電界強度のみが高くなるため、帯電量を多くすることが
できる。
【0086】このイオン不透過性物質6a、6bは電離
放射線透過性かつイオン不透過性のものであれば良い。
例えば、体積固有抵抗値が109Ω・cm以上の絶縁性
のフィルムからなるのが好ましい。また、フィルムとし
ては10μm〜2mm程度の厚さのものを使用できる。
このフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィル
ム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピ
レンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニル
フィルム、アセテートフィルム、ポリスチレンフィル
ム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、
ポリイミドフィルム、セロハン、ポリテトラフルオロエ
チレンフィルムなどを使用できる。
【0087】なお、このようにイオン不透過性物質6
a、6bにより挟んだ被処理体4はどこに配置しても良
く、いずれの電極とも接触しないように配置しても良い
し、いずれか一方又は両方の電極と接触するように配置
しても良い。
【0088】図11のエレクトレット体製造装置1は上
述のような構成からなるため、次のように作用する。ま
ず、電離放射線発生装置2から電離放射線を発生する
と、図11の紙面上、イオン不透過性物質6aの右側、
多孔質体(被処理体4)の内部空隙、及びイオン不透過
性物質6bの左側において、空気がイオン化される。次
いで、電極3a、3b間に電場をかけると、イオン不透
過性物質6aの右側で発生したイオンのうち、プラスイ
オンは電極3bに引き寄せられて移動する際にイオン不
透過性物質6aに付着し、マイナスイオンは電極3aに
引き寄せられて移動する。また、イオン不透過性物質6
bの左側で発生したイオンのうち、プラスイオンは電極
3bに引き寄せられ、マイナスイオンは電極3aに引き
寄せられて移動する際にイオン不透過性物質6bに付着
する。更に、多孔質体(被処理体4)の内部空隙で発生
したイオンのうち、プラスイオンは電極3bに引き寄せ
られ、マイナスイオンは電極3aに引き寄せられて移動
する際に、多孔質体構成物(例えば、不織布の場合には
構成繊維)に付着する。したがって、電極3a側の内部
空隙の壁面がマイナスにエレクトレット化され、電極3
b側の内部空隙の壁面がプラスにエレクトレット化され
る。このように被処理体4の両側に配置されたイオン不
透過性物質6a、6bに透過できないイオンが蓄積し
て、被処理体4の両端にかかる電界強度が高くなるた
め、被処理体4の内部空隙で発生したイオンの分離性が
高く、しかも電離も生じるため、被処理体4は高度にエ
レクトレット化される。
【0089】なお、被処理体4が中空体からなる場合に
は、中空体の電極3a側の表面が逆電離によりプラスに
エレクトレット化され、電極3b側の表面が逆電離によ
りマイナスにエレクトレット化されるばかりでなく、孔
内において発生したイオンにより、電極3a側の孔の壁
面がマイナスにエレクトレット化され、電極3b側の孔
の壁面がプラスにエレクトレット化される。更に、被処
理体4が中空体の集合体からなる多孔質体(例えば、中
空繊維を含む不織布)の場合、被処理体4の電極3a側
の表面近傍が逆電離によりプラスにエレクトレット化さ
れ、電極3b側の表面近傍が逆電離によりマイナスにエ
レクトレット化されるばかりでなく、内部空隙において
発生したイオンにより、電極3a側の内部空隙の壁面が
マイナスにエレクトレット化され、電極3b側の内部空
隙の壁面がプラスにエレクトレット化され、更には、中
空体の孔内で発生したイオンにより、電極3a側の孔の
壁面がマイナスにエレクトレット化され、電極3b側の
孔の壁面がプラスにエレクトレット化される。
【0090】なお、イオン不透過性物質6a、6bは被
処理体4と接触している必要はなく、被処理体4と離し
て配置することもできる。また、被処理体4が独立気泡
の発泡体からなる場合には、イオン不透過性物質6a、
6bを特に使用しなくても、内部空隙の壁面を高度にエ
レクトレット化することができる。
【0091】
【実施例】
(実施例1〜3)線径0.15mmのステンレスワイヤ
ーからなる目開き1mmのメッシュ状電極3aを接地電
極として使用し、ステンレス製平板状電極3bを印加電
極として使用し、互いに平行となるように配置した。次
いで、電離放射線発生装置2として、IRISYS−S
X(高砂熱学工業(株)製)を、前記メッシュ状電極3
aに対して直角、かつ前記メッシュ状電極3aから平板
状電極3bとは反対方向に2cm離れた位置に配置し
た。これら電極3a、3bと電離放射線発生装置2とを
塩化ビニル樹脂板で覆い囲って、エレクトレット体製造
装置1(図1を参照)を作製した。
【0092】他方、ポリプロピレン繊維からなるメルト
ブロー不織布シート(面密度20g/m2)を用意し
た。次いで、このメルトブロー不織布シートをステンレ
ス製平板状電極3b上に載置した状態で、最大エネルギ
ー9.5keVの電離放射線を照射しながら、1分間、
表1に示すような各種電界強度により、メルトブロー不
織布シートをエレクトレット化した。
【0093】次いで、このエレクトレット化したシート
のエレクトレット化の程度を比較するために、パーティ
クルカウンターKC−18(リオン(株)製)を用い
て、0.3〜0.5μmの大気塵を10cm/secの
条件で通気して、大気塵の捕集効率を3回測定した。こ
の捕集効率の平均値は表1に示す通りであった。この結
果から、電界強度が高いほど、高度にエレクトレット化
できることがわかる。
【0094】
【表1】
【0095】(実施例4)ポリプロピレン繊維85ma
ss%と、ポリエチレン樹脂を鞘成分とし、ポリプロピ
レン樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維15mass%
とからなる、面密度120g/m2の水流絡合不織布を
用意した。また、ポリプロピレン繊維からなる、面密度
80g/m2のメルトブロー不織布を用意した。更に、
ポリプロピレン繊維40mass%と、ポリエチレン樹
脂を鞘成分とし、ポリプロピレン樹脂を芯成分とする芯
鞘型複合繊維60mass%とからなる、面密度120
g/m2のニードルパンチ不織布を用意した。
【0096】次いで、水流絡合不織布、メルトブロー不
織布、ニードルパンチ不織布の順に積層した後、加熱し
た金型によりプレスし、そのまま冷却して、水流絡合不
織布が内側(装着者側)となるように、顔の表面形状に
沿うお碗形状となるように成形すると同時に、その周囲
を熱接着した。この成形したものを被処理体4とした。
【0097】次いで、電極間距離を13cmとしたこと
以外は実施例1と全く同じエレクトレット体製造装置1
を用いて、前記成形した被処理体4をエレクトレット化
した。なお、成形した被処理体4はいずれの電極とも接
触しないように配置し、最大エネルギー9.5keVの
電離放射線を照射しながら、1分間、20kVの直流を
印加して行なった。
【0098】このエレクトレット体のエレクトレット化
の程度をみるために、労働省告示第19号(防塵マスク
の規格)に基づいて、捕集効率を4回測定した。この捕
集効率の平均値は99.55であった。この結果から、
成形されたエレクトレット体は高度にエレクトレット化
されていることがわかる。
【0099】
【発明の効果】本発明のエレクトレット体の製造方法
は、電離放射線によりイオンを発生させた後、発生させ
たイオンに電場を作用させることにより、このイオンを
被処理体に付着させる方法である。このように、被処理
体を電極に密着させる必要がないため、被処理体の形状
に左右されることなく被処理体をエレクトレット化する
ことができる。
【0100】また、本発明においてはイオンの発生源が
電離放射線であり、イオンを発生させるために放電極を
使用する必要がないため、発生したイオンに対して電場
を作用させる際に、ほぼ完全な平等電界を作用させるこ
とができる。したがって、スパーク放電により被処理体
を損傷したり、オゾンが発生することがほとんどない。
また、高い電界強度としても、スパーク放電が生じにく
いため、被処理体の帯電量を多くすることができる。
【0101】本発明のエレクトレット体の製造装置は、
電離放射線発生装置と、この電離放射線発生装置により
発生させたイオンに電場を作用させることのできる手
段、とを備えている。したがって、上述のエレクトレッ
ト体の製造方法を実施することができるため、(1)被
処理体の形状に左右されることなくエレクトレット化す
ることができ、(2)スパーク放電により被処理体を損
傷することがなく、(3)帯電量を多くすることがで
き、(4)オゾンの発生のほとんどない、エレクトレッ
ト体の製造装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のエレクトレット体製造装置の概念的
な側面図
【図2】 本発明の別のエレクトレット体製造装置の概
念的な側面図
【図3】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な側面図
【図4】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な側面図
【図5】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な側面図
【図6】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な側面図
【図7】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な側面図
【図8】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な側面図
【図9】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装置
の概念的な斜視図
【図10】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装
置の概念的な斜視図
【図11】 本発明の更に別のエレクトレット体製造装
置の概念的な側面図
【符号の説明】
1 エレクトレット体製造装置 2、2a、2b 電離放射線発生装置 3a、31a〜36a、3b、31b〜36b 電極 4、4a、4b 被処理体 5 イオン発生室 5a、5b 開口部 6a、6b 電離放射線透過性かつイオン不透過性物質

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電離放射線によりイオンを発生させた
    後、発生させたイオンに電場を作用させることにより、
    該イオンを被処理体に付着させることを特徴とする、エ
    レクトレット体の製造方法。
  2. 【請求項2】 電離放射線発生装置と、該電離放射線発
    生装置により発生させたイオンに電場を作用させること
    のできる手段、とを備えてなることを特徴とする、エレ
    クトレット体の製造装置。
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